(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082425
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】ゴルフボール用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
A63B 37/00 20060101AFI20240613BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20240613BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20240613BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20240613BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20240613BHJP
C08K 5/37 20060101ALI20240613BHJP
C08K 5/3445 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
A63B37/00 512
C08L21/00
C08K5/09
C08K5/14
C08K3/06
C08K5/37
C08K5/3445
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196268
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】進藤 潤
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC031
4J002DE148
4J002DE288
4J002DG048
4J002DG058
4J002EG047
4J002EK036
4J002EV039
4J002FD079
4J002FD146
4J002FD157
4J002FD208
4J002GC00
(57)【要約】
【課題】コア内部硬度分布における硬度差を大きく設定した場合に、ゴルフボール打撃時の低スピン特性を発揮させて飛び性能を改善し得るだけでなく、割れ耐久性を向上させたゴルフボール用ゴム組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、下記(a)~(d)の各成分、
(a)基材ゴム、
(b)共架橋剤として、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、
(c)有機過酸化物、及び
(d)水分提供剤
を含有し、上記水分提供剤は、その構造中に自由水以外の水成分を含み加熱により水分を脱離する物質、または、加熱による熱分解によって水成分を放出する物質であると共に、上記(b)成分と上記(c)成分との配合比が、下記式
E=(b)成分のモル量/(c)成分の活性酸素のモル量
で表されるEの値で61以上であることを特徴とするゴルフボール用ゴム組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)~(d)の各成分、
(a)基材ゴム、
(b)共架橋剤として、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、
(c)有機過酸化物、及び
(d)水分提供剤
を含有し、上記水分提供剤は、その構造中に自由水以外の水成分を含み加熱により水分を脱離する物質、または、加熱による熱分解によって水成分を放出する物質であると共に、上記(b)成分と上記(c)成分との配合比が、下記式
E=(b)成分のモル量/(c)成分の活性酸素のモル量
で表されるEの値で61以上であることを特徴とするゴルフボール用ゴム組成物。
【請求項2】
上記のE値が71以上である請求項1記載のゴルフボール用ゴム組成物。
【請求項3】
上記(d)成分の配合量が、上記(a)成分100質量部に対して0.1~15質量部である請求項1又は2記載のゴルフボール用ゴム組成物。
【請求項4】
上記(a)成分の基材ゴムが、希土類元素系触媒を用いて合成されたポリブタジエンである請求項1又は2記載のゴルフボール用ゴム組成物。
【請求項5】
更に、(e)成分として、硫黄又は有機硫黄化合物を含む請求項1又は2記載のゴルフボール用ゴム組成物。
【請求項6】
上記(e)成分が、チオール類及びアルキルフェノールジサルファイド重合物から選ばれる有機硫黄化合物である請求項5記載のゴルフボール用ゴム組成物。
【請求項7】
更に、(f)成分として、ヒンダードフェノール、または以下の一般式で表されるベンゾイミダゾール及び/又はその金属塩、
【化1】
(但し、式中Rは水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基であり、mは1~4の整数であり、mが2以上の場合、これらは同一でも互いに異なっていてもよい。)
を含む請求項1又は2記載のゴルフボール用ゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボール用ゴム組成物に関し、特に、1層以上のコア及び1層以上のカバーからなるゴルフボールのコア材料として好適に用いられるゴルフボール用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、コアの断面硬度を適宜調整することで特異なコア硬度傾斜を実現し、ドライバーやアイアンのフルショット時のスピン特性の適正化による飛距離向上を達成する技術が種々提案されている。コアの表面と中心の硬度差をより拡大することがドライバーのフルショット時のスピンを低減させる効果が分かっており、また、従来の知見からフルショット時のスピン低減は、飛距離向上の実現につながることが分かっている。コアの表面と中心の硬度差を拡大する方法の一つして、下記の特許文献1~3には、コア用ゴム組成物において、基材ゴムに水を配合する技術が提案されている。また、下記の特許文献4,5には、コア用ゴム組成物に、水和水を含有する金属塩等の水分提供剤を添加した技術が提案されている。
【0003】
しかしながら、コア内部の硬度勾配を拡大したコアを用いたゴルフボールは打撃耐久性に劣る傾向があり、特に、コアの製造工程において偶然にも未分散の異物がゴム組成物に混入してしまった場合、加硫成型したコアに異物が混入し、該コアが早期に破壊する現象を引き起こすことがあった。この場合、ゴム組成物に混入した異物が少量であっても予想外にも早期破壊を引き起こしていた。このような異物は、コア用ゴム組成物の配合の際に使用される各配合成分、例えば、酸化亜鉛やステアリン酸亜鉛などの物質が凝集した固形物やその粉砕物であることが多い。
【0004】
このため、ゴルフボールの打撃耐久性が劣ることを懸念して、飛距離改善のために行うコア内部の硬度勾配の拡大に制約があった。従って、コア内部の硬度傾斜の拡大による低スピン化を十分に実現でき、コアの早期破壊を防止して打撃耐久性に優れるコアを得ることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-47502号公報
【特許文献2】特開2016-112159号公報
【特許文献3】特開2019-5549号公報
【特許文献4】特開2020-653号公報
【特許文献5】特開2020-654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、コアの内部硬度分布における硬度差を大きく設定してゴルフボール打撃時の低スピン特性を発揮させて飛び性能を改善し得るとともに、打撃耐久性を良好に維持できるゴルフボール用ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、ゴルフボール用コアのゴム組成物の配合成分について、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤として、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、(c)有機過酸化物、及び(d)特定の水分提供剤を含有するゴム配合において、上記(b)成分と上記(c)成分との配合比(モル比)を従来よりも大きく設定すること、具体的には、「E=(b)成分のモル量/(c)成分の活性酸素のモル量」で表されるEの値で61以上となるようにゴム組成物を調製することにより、所望のコア硬度(圧縮変形量)を維持しつつコア内部硬度分布における硬度差を大きく設定してゴルフボール打撃時の低スピン特性を十分に発揮できると共に、コアに異物が混入しても打撃耐久性を改善し得ることを知見し、本発明をなすに至ったものである。その理由は定かではないが、以下のように推察される。
【0008】
通常、ブタジエンゴム(BR)/アクリル酸亜鉛(ZDA)のゴム組成物における有機過酸化物の影響については、ラジカル反応は、BR-BRの架橋反応よりもBR-ZDAのグラフト反応が優先して起きる。従って、有機過酸化物の濃度が低いと、選択的に、「高グラフト/低架橋」ゴムを作製することができる。また、BR-ZDAのグラフト重合物については、その重合過程において、投入するZDAモノマー粒径とは異なる数ナノメートル(nm)のZDAナノ粒子(一次粒子)がBR中で生成され、それらが凝集して数十nmの2次粒子となり、更に、この2次粒子が相互に連結し、ネットワーク構造が形成されることが予想される。このため、上記の「高グラフト/低架橋」のゴム架橋構造において、高伸張時は、低架橋によりゴム部分が伸びるとともに、BRにグラフトしたナノ粒子ネットワークが補強し、その結果、高い強度を示すことが予想される。
【0009】
従って、本発明は、下記のゴルフボール用ゴム組成物を提供する。
1.下記(a)~(d)の各成分、
(a)基材ゴム、
(b)共架橋剤として、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、
(c)有機過酸化物、及び
(d)水分提供剤
を含有し、上記水分提供剤は、その構造中に自由水以外の水成分を含み加熱により水分を脱離する物質、または、加熱による熱分解によって水成分を放出する物質であると共に、上記(b)成分と上記(c)成分との配合比が、下記式
E=(b)成分のモル量/(c)成分の活性酸素のモル量
で表されるEの値で61以上であることを特徴とするゴルフボール用ゴム組成物。
2.上記のE値が71以上である上記1記載のゴルフボール用ゴム組成物。
3.上記(d)成分の配合量が、上記(a)成分100質量部に対して0.1~15質量部である上記1又は2記載のゴルフボール用ゴム組成物。
4.上記(a)成分の基材ゴムが、希土類元素系触媒を用いて合成されたポリブタジエンである上記1又は2記載のゴルフボール用ゴム組成物。
5.更に、(e)成分として、硫黄又は有機硫黄化合物を含む上記1又は2記載のゴルフボール用ゴム組成物。
6.上記(e)成分が、チオール類及びアルキルフェノールジサルファイド重合物から選ばれる有機硫黄化合物である上記5記載のゴルフボール用ゴム組成物。
7.更に、(f)成分として、ヒンダードフェノール、または以下の一般式で表されるベンゾイミダゾール及び/又はその金属塩、
【化1】
(但し、式中Rは水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基であり、mは1~4の整数であり、mが2以上の場合、これらは同一でも互いに異なっていてもよい。)
を含む上記1又は2記載のゴルフボール用ゴム組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明のゴルフボール用ゴム組成物よれば、高グラフト/低架橋の特有のゴム架橋構造を得ることができ、このゴム架橋構造を有するにゴム部材をゴルフボールの各構成部材、特にコアとして適用した場合に、ゴルフボール打撃時の低スピン特性を発揮させて飛び性能を改善することができ、コアに異物が混入しても早期割れを防止し、打撃耐久性を改善することができる。
【0011】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明のゴルフボール用ゴム組成物は、下記(a)~(d)の各成分を必須成分として含有することを特徴とする。
(a)基材ゴム、
(b)共架橋剤として、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、
(c)有機過酸化物、及び
(d)水分提供剤
【0012】
上記(a)成分の基材ゴムについては、特に制限されるものではないが、特にポリブタジエンを用いることが好適である。
【0013】
上記のポリブタジエンは、そのポリマー鎖中に、シス-1,4-結合を60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上有することが好適である。ポリブタジエン分子中の結合に占めるシス-1,4-結合が少なすぎると、反発性が低下する場合がある。
【0014】
また、上記ポリブタジエンに含まれる1,2-ビニル結合の含有量としては、そのポリマー鎖中に、通常2%以下、好ましくは1.7%以下、更に好ましくは1.5%以下である。1,2-ビニル結合の含有量が多すぎると、反発性が低下する場合がある。
【0015】
上記ポリブタジエンは、(ML1+4(100℃))が、好ましくは20以上、より好ましくは30以上であり、上限としては、好ましくは120以下、より好ましくは100以下、更に好ましくは80以下である。
【0016】
なお、本発明でいうムーニー粘度とは、回転可塑度計の1種であるムーニー粘度計で測定される工業的な粘度の指標(JIS K 6300)であり、単位記号としてML1+4(100℃)を用いる。また、Mはムーニー粘度、Lは大ロータ(L型)、1+4は予備加熱時間1分間、ロータの回転時間は4分間を示し、100℃の条件下にて測定したことを示す。
【0017】
上記ポリブタジエンは、希土類元素系触媒やVIII族金属化合物触媒を用いて合成したものを使用することができる。
【0018】
なお、基材ゴム中には、上記ランタン系列希土類元素化合物とは異なる触媒にて合成されたポリブタジエンゴムを配合してもよい。また、スチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等を配合してもよく、これら1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0019】
ゴム全体に占める上記ポリブタジエンの割合は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。また、基材ゴムの100質量%、即ち基材ゴムの全てが上記ポリブタジエンであってもよい。
【0020】
次に、(b)成分は共架橋剤であり、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩である。この不飽和カルボン酸の炭素数は、3~8個であることが好適であり、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸が挙げられる。上記の不飽和カルボン酸の金属として具体的には、亜鉛、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等が挙げられ、特に亜鉛が好ましい。従って、共架橋剤としては、アクリル酸亜鉛が最も好ましい。
【0021】
(c)成分は有機過酸化物であり、この有機過酸化物としては、特に、1分間半減期温度が110~185℃である有機過酸化物を用いることが好適である。このような有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド(日油社製「パークミルD」)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン(日油社製「パーヘキサ25B」)、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(日油社製「パーブチルP」)等が挙げられ、ジクミルパーオキサイドを好適に用いることができる。そのほかの市販品としては、「パーヘキサC-40」、「ナイパーBW」、「パーロイルL」等(いずれも日油社製)、または、Luperco 231XL(アトケム社製)などを例示することができる。これらは1種を単独であるいは2種以上を併用してもよい。
【0022】
ここで、本発明において、上述した(b)成分及び(c)成分の配合量については、高グラフト・低架橋のゴム架橋構造を実現するために、(b)成分と(c)成分との配合比が、下記式
E=(b)成分のモル量/(c)成分の活性酸素のモル量
で表されるEの値で61以上となるように、(b)成分及び(c)成分の配合量がそれぞれ調整される。具体的には、(b)成分の共架橋剤の配合量が30~60質量部、(c)成分の有機過酸化物の配合量が0.05~0.80質量部の範囲内で上記E値が上記範囲であることが好適である。上記E値の好ましい値は71以上であり、より好ましくは81以上、さらに好ましくは91以上である。但し、共架橋剤の配合量が極端に多すぎたり、有機過酸化物の配合量が極端に少ないと、所望の架橋構造に得られず、コア内部硬度勾配を大きくすることによる低スピン化が実現できないおそれがあることから、E値の上限値は1600以下とすることが好ましく、より好ましくは1000以下である。
【0023】
なお、上記E値を計算するに際して用いられる(b)成分及び(c)のモル量とは、(b)成分の共架橋剤や(c)成分の実質的な質量から求められるモル量を意味し、(c)成分の活性酸素のモル量とは、(c)成分の有機過酸化物のモル量に、その有機過酸化物の過酸化結合(-O-O-結合)の数を掛け合わせたモル量を意味する。なお、この過酸化結合(-O-O-結合)の数は、通常、有機過酸化物を選定するに際して、下記式で表される理論活性酸素量の式中の「過酸化結合の数」と同じ意味である。即ち、100%純度の有機過酸化物の活性酸素の理論量は、活性酸素の原子量を、その有機過酸化物の分子量で除した百分率により、それぞれの有機過酸化物について表示されており、遊離ラジカルの数量を示す指針やその商品の濃度や純度を表示するものである。
【0024】
【0025】
(d)成分は水分提供剤である。この水分提供剤は、その構造中に自由水以外の水成分を含み加熱により水分を脱離する物質、または、加熱による熱分解によって水成分を放出する物質であると定義される。水の種類として一般的には、自由水、吸着水、層間水、沸石水、結合水が挙げられる。粘土鉱物には、吸着水、層間水、自由水が存在すると言われており、(d)成分として、このような層間水が含まれる粘土鉱物を採用することができる。
【0026】
上記粘土鉱物としては、例えば、ハイドロタルサイト等の層状複水酸化物が挙げられる。即ち、層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide、以下「LDH」とも言う。)は、複層構造を持つ鉱物であり、層間に化学的な結合を持つ水(層間水)が存在する。例えば、Mg-Al系のLDHの場合、層間水が180~300℃の範囲でほぼ完全に脱離する。また、Zn-Al系のLDHの場合、層間水がより低い170~200℃で脱離する。
【0027】
また、(d)成分として、結合水が含まれる物質が例示される。具体的には、配位子となって錯イオンを形成する水(配位水)を有する物質であり、無機化合物の水和物が挙げられる。上記無機化合物として、例えば、硫酸カルシウム0.5水和物、硫酸カルシウム2水和物、硫酸アルミニウム14~18水和物、硫酸マグネシウム7水和物、硫酸ベリリウム4水和物、硫酸ジルコニウム4水和物、硫酸マンガン5水和物、硫酸鉄7水和物、硫酸コバルト7水和物、硫酸ニッケル6水和物、硫酸第二銅5水和物、硫酸亜鉛7水和物、硫酸カドミウム8水和物、硫酸インジウム9水和物、硫酸亜鉛2水和物等から選択された1種または2種以上を併用して用いることができる。
【0028】
更に、(d)成分として、加熱による熱分解によって水成分を放出する物質が例示される。例えば、物質中には水酸化物イオンとして存在するが、加熱すると水(H2O)となって脱出する物質が挙げられ、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどが例示される。
【0029】
水分提供剤については、ゴム組成物を加硫する温度まで加熱した場合、あるいは加硫時の自己反応熱によりコア内部が最高温度に達した場合の水分の解離率が質量割合で60%以上となっていることが好適である。また、水分の供給効率を高める観点から、質量割合で、水分割合の高い水分提供剤を用いることが好ましい。
【0030】
具体的には例えば、水分提供剤の分子式中の水分の含有割合は、質量割合で6%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましい。水分提供剤の分子式中の水分の含有割合は高い方が好ましく、上限値は特に限定されないが、入手の容易さ等の観点から、例えば質量割合で90%以下とすることができる。
【0031】
水分提供剤としては、ゴム組成物を加硫する際に水分を極力多く放出できることが好ましい。ただし、加硫温度や、加硫時間等の加硫条件は、基材ゴムや、有機過酸化物等のゴム組成物に含まれる成分等により変化する場合もある。このため、水分提供剤を添加するゴム組成物の加硫条件にあわせて、加硫温度等の加硫条件において目的に応じた量の水分を放出できる水分提供剤を選択することが好ましい。
【0032】
また、水分提供剤は、ゴム組成物を混練する際の水分の解離率は低いことが好ましいことから、例えば90℃まで加熱した場合の水分の解離率、すなわち90℃まで加熱した場合の累計水分解離率は質量割合で60%以下であることが好ましい。
【0033】
(d)成分の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上であり、上限値としては、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。(d)成分の配合量が多すぎると、所望の打感や耐久性や反発性が得られず、配合量が少なすぎると、所望のコア硬度分布が得られず、打撃時のボールの低スピン化を十分に実現できなくなるおそれがある。
【0034】
更に、本発明のゴム組成物には、(e)成分として、硫黄又は有機硫黄化合物を含むことができる。
【0035】
硫黄は市販品を用いることができ、例えば、鶴見化学工業社の「サルファックス5」や三新化学工業社製の「サンミックスS-80N」、「サンミックス IS-60N」、更には、Akrochem社製の「AKROFORM S-80/EPR/P」を採用することができる。また、用いる硫黄については、微少量の硫黄の分散性を高めるために、マスターバッチの形態で使用することが望ましい。このような硫黄のマスターバッチとして、上述した商品名「サンミックス S-80N」、「サンミックス IS-60N」及び「AKROFORM S-80/EPR/P」を例示することができる。
【0036】
硫黄の配合量については、特に制限はないが、上記ゴム成分100質量部に対し、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上、最も好ましくは0.05質量部以上である。上限値としては、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは2.0質量部以下、最も好ましくは1.0質量部以下である。硫黄の配合量が多すぎると、硫黄の影響によって有機過酸化物による架橋反応が阻害され、成型物の硬度全体が大きく軟化してしまう傾向になる。一方、硫黄の配合量が少なすぎると、コア内部硬度において表面と中心との硬度差を大きくすることができない場合がある。
【0037】
有機硫黄化合物としては、特に制限はないが、例えばチオフェノール類、チオナフトール類、ジフェニルポリスルフィド類、ハロゲン化チオフェノール類、又はそれらの金属塩等を挙げることができる。具体的には、ペンタクロロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、ペンタブロモチオフェノール、パラクロロチオフェノール等の亜鉛塩、硫黄数が2~4のジフェニルポリスルフィド、ジベンジルポリスルフィド、ジベンゾイルポリスルフィド、ジベンゾチアゾイルポリスルフィド、ジチオベンゾイルポリスルフィド、2-チオナフトール等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。中でも、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、及び/又はジフェニルジスルフィドを好適に用いることができる。
【0038】
上記の有機硫黄化合物の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上であり、上限として、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下であることが推奨される。有機硫黄化合物の配合量が多すぎると、ゴム組成物の加熱成形物の硬さが軟らかくなりすぎてしまう場合があり、一方、少なすぎると反発性の向上が見込めない場合がある。
【0039】
また、有機硫黄化合物としては、上述したチオール類のほか、下記の化学構造を有するアルキルフェノールジサルファイド重合物を採用することもできる。
【化2】
【0040】
上記式(2)において、Rはアルキル基を示し、nは2~20の範囲の重合度を示す。
Rのアルキル基としては炭素数1~6の低級アルキル基であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-アミル基(ペンチル基)、iso-アミル基(ペンチル基)、tert-アミル基(ペンチル基)、sec-イソアミル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、iso-ヘキシル基及びtert-ヘキシル基の群から選ばれるものが挙げられる。より好ましくは、(g-1)成分の有機硫黄化合物がアミルフェノールジサルファイド重合物であり、具体的には、「Sanceler AP」(三新化学工業社製)や「Vultac5」(Arkema ジャパン社製)等の市販品を用いることができる。
【0041】
上記のアルキルフェノールジサルファイド重合物の配合量については、特に制限はないが、上記ゴム成分100質量部に対し、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、最も好ましくは0.3質量部以上である。上限値としては、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下、最も好ましくは2.0質量部以下である。この配合量が多すぎると、硫黄の影響によって有機過酸化物による架橋反応が阻害され、成型物の硬度全体が大きく軟化してしまう傾向になる。
【0042】
更に本発明では、(f)成分として老化防止剤を用いることができる。具体的には、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸などのヒンダードフェノール系老化防止剤が挙げられ、市販品としては、ノクラック200、同M-17、同NS-6(大内新興化学工業社製)、IRGANOX 1010(BASF社製)、アデカスタブ AO-20(ADEKA社製)等を採用することができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。この老化防止剤の配合量については、特に制限はないが、基材ゴム100質量部に対し、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、上限として好ましくは3.0質量部以下、より好ましくは2.0質量部以下、更に好ましくは1.5質量部以下である。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると、適正なコア硬度傾斜が得られずに好適な反発性、耐久性及びフルショット時の低スピン効果を得ることができない場合がある。
【0043】
また、以下の一般式で表されるベンゾイミダゾール及び/又はその金属塩を(f)老化防止剤として用いることができる。
【化3】
【0044】
上記式(1)中のRは、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基であり、mは1~4の整数であり、mが2以上の場合、これらは同一でも互いに異なっていてもよい。上記式(1)を有するベンゾイミダゾールとして、具体的には、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトメチルベンゾイミダゾール及びこれらの金属塩が例示され、金属塩としては、亜鉛塩であることが好適である。
【0045】
上述した(a)~(f)の各成分の他には本発明の効果を妨げない限り、例えば、充填材や加工助剤などの各種添加物を配合することができる。
【0046】
充填材としては、例えば、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を好適に用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。充填材の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上とすることができる。また、この配合の上限は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは100質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは40質量部以下とすることができる。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると適正な質量、及び好適な反発性を得ることができない場合がある。
【0047】
加工助剤としては高級脂肪酸やその金属塩等を好適に用いることができる。高級脂肪酸としては、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸等が挙げられ、特にステアリン酸が好ましい。高級脂肪酸の金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、銅塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩、スズ塩、コバルト塩、ニッケル塩、亜鉛塩、アルミニウム塩等が挙げられ、特にステアリン酸亜鉛が好適に用いられる。加工助剤の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上とすることができる。また、この配合量の上限は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下とすることができる。この配合量が多すぎると、十分な硬度や反発が得られず、少なすぎると添加薬品が十分に分散せず、期待する物性を得ることができない場合がある。加工助剤の添加方法については、他の薬品と同時にミキサーに投入する方法、予め上記(b)成分等の他の薬品と事前混合して添加する方法、上記(b)成分等の他の薬品の表面にコーティングしたり、該薬品のバインダーとして添加する方法、上記(a)成分と共に事前にマスターバッチを作成して添加する方法等があるが、特に限定されるものではない。
【0048】
本発明のゴルフボール用ゴム組成物を加硫硬化させることにより加硫成形物を製造することができる。この加硫成形物は、特に、単層又は複数層のコアの全部又は一部に用いることができる。例えば、バンバリーミキサーやロール等の混練機を用いて混練し、コア用金型を用いて圧縮成形または射出成型し、有機過酸化物や共架橋剤が作用するのに十分な温度として、約100~200℃、10~40分の条件にて成形体を適宜加熱することにより、該成形体を硬化させて、加硫成形物であるコアを製造することができる。
【0049】
ここで、上述した配合により、加硫硬化後のゴルフボール用ゴム成型物は、表面と中心との硬度差が大きな硬度傾斜を有することができる。上記のゴルフボール用ゴム成型物をゴルフボール用コアとして採用することにより、ゴルフボールの良好なスピン特性を維持しつつ、耐久性を高めることができる。
【0050】
コアの中心硬度については、特に制限はないが、JIS-C規格で、好ましくは40以上、より好ましくは45以上、さらに好ましくは50以上であり、上限値としては、好ましくは75以下、より好ましくは70以下、さらに好ましくは65以下である。コアの中心硬度が上記範囲を逸脱すると、打感が悪くなり、または耐久性が低下してしまうことがあり、低スピン効果を得ることができない場合がある。
【0051】
コアの表面硬度については、特に制限はないが、JIS-C規格で、好ましくは65以上、より好ましくは70以上、さらに好ましくは72以上であり、上限値としては、好ましくは95以下、より好ましくは90以下、さらに好ましくは88以下である。コアの表面硬度が上記範囲よりも低すぎると、反発性が低くなり飛距離が十分に得られなくなることがある。また、コアの表面硬度が上記範囲よりも高すぎると、打感が硬くなり過ぎ、また、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。
【0052】
上記コアの硬度分布については、表面と中心との硬度差が十分に大きくなり、具体的には、コアの表面(A)と中心(B)との硬度差(A)-(B)がJIS-C硬度で16以上であることが好ましく、より好ましくは20以上、さらに好ましくは25以上であり、上限としては、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。上記硬度差の値が小さすぎると、W#1打撃時の低スピン効果が足りずに飛距離が出なくなることがある。一方、上記硬度差の値が大きすぎると、ゴルフボールを実打したときのボール初速が低くなり飛距離が出なくなり、または、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。ここで、上記の中心硬度とは、コアを半分に(中心を通るように)切断して得た断面の中心において測定される硬度を意味し、表面硬度は上記コアの表面(球面)において測定される硬度を意味する。また、JIS-C硬度とは、JIS K 6301-1975に規定するスプリング式硬度計(JIS-C形)で測定された硬度を意味する。
【0053】
また、本発明で用いるコアの硬度傾斜は、該コアの中心から表面に向かって、硬度が同等又は増加するものであって減少するものではないことが好適である。
【0054】
また、上記コア(加熱成形物)における初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)を負荷した時の圧縮硬度(変形量)については、特に制限はないが、好ましくは2.0mm以上、より好ましくは2.3mm以上、更に好ましくは2.5mm以上であり、上限としては、好ましくは6.0mm以下、より好ましくは5.5mm以下、更に好ましくは5.0mm以下であることが推奨される。上記の値よりも大きすぎると、コアが軟らかくなりすぎるため、十分な低スピン効果を得られず反発性も低下することがある。また、上記の値よりも小さすぎると、低スピン効果を得られず、打感が硬くなってしまうことがある。
【0055】
コアの直径としては、特に制限はなく製造するゴルフボールの層構造にも依るが、好ましくは30mm以上、より好ましくは35mm以上であり、上限として、好ましくは41mm以下、より好ましくは40mm以下である。コアの直径がこの範囲を逸脱すると、ボールの初速が低くなり、あるいは適切なスピン特性を得られない場合がある。
【0056】
上記ゴム組成物は、上述したようにゴルフボール用コアとして使用することが好適である。また、本発明のゴム組成物をコアに用いる場合、そのゴルフボールは、そのコアに1層または複数層のカバーを具備する構造を有することが好適である。
【0057】
次に、コアを被覆する1層または複数層のカバーについて説明する。
カバー材料については、特に制限はないが、ゴルフボールに用いられている各種のアイオノマー樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー等の公知の材料を使用することができる。
【0058】
また、ボールの低スピン化をより一層実現するために、コアに隣接する層には高度に中和されたアイオノマー材料を用いることが特に好ましい。具体的には、下記(i)~(iv)成分を配合した材料を用いることが好ましい。
(i-1)オレフィン-不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体及び/又はオレフィン-不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体の金属イオン中和物と、
(ii-2)オレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体及び/又はオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体の金属イオン中和物とを質量比で100:0~0:100になるように配合した(i)ベース樹脂と、(ii)非アイオノマー熱可塑性エラストマーとを質量比で100:0~50:50になるように配合した樹脂成分100質量部に対して、
(iii)分子量が228~1500の脂肪酸及び/又はその誘導体 5~80質量部と、
(ix)上記(i)成分及び(iii)成分中の未中和の酸基を中和できる塩基性無機金属化合物 0.1~17質量部
とを配合する混合材料。特に、上記(i)~(ix)成分の混合材料を用いる場合には、酸基が70%以上中和されているものを採用することが好ましい。
【0059】
また、カバーのうち最外層の材料としては、ウレタン材料、特に熱可塑性ポリウレタンエラストマーを主材とすることが好適である。
【0060】
更に、上記コアに隣接する層と最外層カバーとの間には、1層または2層以上のカバー(中間層)を成形してもよい。この場合、中間層材料としては、アイオノマー等の熱可塑性樹脂を用いることが好適である。
【0061】
上記カバーを得るには、例えば、ボールの種類に応じて予め作製した単層又は2層以上の多層コアを金型内に配備し、上記混合物を加熱混合溶融し、射出成形することにより、コアの周囲に所望のカバーを被覆する方法等を採用できる。この場合、カバーの製造は、優れた熱安定性、流動性、成形性が確保された状態で作業でき、これにより、最終的に得られたゴルフボールは、反発性が高く、その上、打感が良く、耐擦過傷性に優れている。また、カバーの形成方法は、上記のほかに、例えば、本発明のカバー材により予め一対の半球状のハーフカップを成形し、このハーフカップでコアを包んで120~170℃、1~5分間、加圧成形する方法などを採用することもできる。
【0062】
上記カバーが1層の場合、その厚さは0.3~3mmとすることができる。上記カバーが2層の場合、その最外層の厚さは0.3~2.0mm、その内層カバー(中間層)の厚さは0.3~2.0mmの範囲とすることができる。また、上記カバーを構成する各層(カバー層)のショアD硬度は、特に制限はないが、40以上とすることが好ましく、より好ましくは45以上であり、上限としては、好ましくは70以下、より好ましくは65以下である。
【0063】
なお、上記カバーの最外層の表面には、多数のディンプルが形成されるものであり、更にカバー上には下地処理、スタンプ、塗装等種々の処理を行うことができる。
【0064】
上記ゴム組成物を少なくとも1層のコア材料として使用されるゴルフボールの種類としては、要するに、コアと少なくとも1層以上のカバー層を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ソリッドコアをカバーで被覆したツーピースやスリーピースソリッドゴルフボール、3層構造以上のマルチピースゴルフボール等のソリッドゴルフボール、更には、糸巻きコアに単層又は2層以上の多層構造のカバーを被覆した糸巻きゴルフボールのコアに使用することもできる。
【実施例0065】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0066】
〔実施例1~4,比較例1,2〕
下記表1に示すポリブタジエンを主成分とするコア材料を用いて、実施例1~4,比較例1,2のゴム配合によりコア組成物を調整する。その後、158℃で20分間加硫を行い、コア表面の研磨工程を経て、直径が約38.6mmのコアを作製する。
した。
【0067】
【0068】
上記の配合についての詳細は下記のとおりである。
・ポリブタジエンゴム:商品名「BR700」
(ENEOS社製、ハイシスポリブタジエンゴム/Nd触媒重合)
・アクリル酸亜鉛:商品名「ZN-DA85S」(日本触媒社製、85%アクリル酸亜鉛/15%ステアリン酸亜鉛)
・有機過酸化物(1):ジクミルパーオキサイド、商品名「パークミルD」(日油社製、純度100%)
・有機過酸化物(2):1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンとシリカの混合物、商品名「パーオキサC-40」(日油社製、純度40%)
・硫酸カルシウム2水和物:関東化学社製の硫酸カルシウム2水和物
・硫酸マグネシウム7水和物:関東化学社製の硫酸マグネシウム7水和物
・水酸化アルミニウム:関東化学社製の水酸化アルミニウム
・ハイドロタルサイト:組成Mg4Al2(OH)12CO3・3H2O、商品名「HT-1」(堺化学工業社製)
・酸化亜鉛:商品名「酸化亜鉛3種」(堺化学社製)
・有機硫黄化合物:ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩、富士フィルム和光純薬工業社製
・老化防止剤:商品名「ノクラックNS-6」(ヒンダードフェノール系老化防止剤:大内新興化学工業社製)
【0069】
(b)成分のモル量/(c)成分の活性酸素のモル量の計算方法
全例において、(b)成分は、アクリル酸亜鉛として、日本触媒社製の商品名「ZN-DA85S」を使用する。この商品は、アクリル酸亜鉛が85質量%、ステアリン酸亜鉛が15質量%の混合品である。例えば、実施例1では、(b)成分の実質的な質量は、「53×0.85=45.05」となる。アクリル酸亜鉛の分子量「207.5」により、(b)成分のモル量は、「45.05/207.5≒0.217」となる。(c-1)成分の有機過酸化物、ジクミルパーオキサイドの分子量は「270.38」であり、この商品の純度は100%であるため、(c-1)成分のモル量は、「0.7/270.38≒0.00259」である。(c-1)成分の有機過酸化物の活性酸素の結合数は1個あるので、この活性酸素のモル量は、有機過酸化物のモル量と同じである。従って、実施例1のE値「(b)成分のモル量/(c)成分の活性酸素のモル量0.217/0.00259≒83.9」となる。
また、実施例3については、上記と同様の計算方法により、(b)成分のモル量は、「(45×0.85)/207.5=0.184」となり、(c-1)成分の有機過酸化物のモル量は、「0.3/270.38≒0.00111」となる。実施例3は、有機過酸化物として(c-2)成分を併用しており、この商品「パーオキサC-40」は純度40%であり、この有機過酸化物、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンの分子量は「260.38」であり、活性酸素の結合数は2個である。従って、(c-2)成分の活性酸素のモル量は、「(0.45×0.4)/260.38×2≒0.00138」となる。よって、実施例3のE値「(b)成分のモル量/(c)成分の活性酸素のモル量=0.184/(0.00111+0.00138)≒74.0」となる。
【0070】
表1中の人工異物の作製方法
各例のゴム組成物に人工異物を混入してコアが割れやすい状況にして打撃耐久性を評価した。打撃耐久性の評価については後述する。
人工異物は、先ず、酸化亜鉛と微粉末ステアリン酸亜鉛とを2:1の質量比で混合し、これを150℃のオーブンで30分加熱し、室温に降温し、その後、この加熱固化物を粗く粉砕する。そして、この粉砕物を1mm、0.5mmのふるいにかけて、0.5~1.0mm径の凝集塊を得る。この凝集塊を人工異物として、表1のゴム配合からなる練ゴムにロールで表1の配合量(1phr)で添加する。
【0071】
コアの中心及び表面との硬度差
上記の各実施例及び各比較例のコアについて、下記の方法により、表面硬度及び中心硬度を測定し、その硬度差を表3に示す。
(1)コアの表面硬度
23±1℃の温度で、球状のコアの表面部分に硬度計の針を垂直になるようにセットし、JIS-C硬度により、コアの表面の4点をランダムに測定し、その平均値を1個のボールの測定値とし、測定個数3個のコアの平均値を求める。
(2)コアの中心硬度
断面がコアの中心を通るようにコアを平面状にカットして、23±1℃の温度で、前記平断面に硬度計の針を垂直になるようにセットし、JIS-C硬度計により、半球コアの中心の硬度を測定し、1個のボールの測定値とし、測定個数3個のコアの平均値を求める。
【0072】
コア及びボールの圧縮硬度
コア及びボールを、23±1℃の温度で、10mm/sの速度で圧縮し、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)に負荷した時までのコア及びボールの圧縮硬度(変形量)(mm)を計測し、測定個数10個の平均値を求める。
【0073】
カバー(中間層及び最外層)の形成
次に、射出成形用金型を用いて、上記のコア表面の周囲に、表2に示す中間層の材料(アイオノマー樹脂材料)を射出成形し、厚さ約1.2mm、ショアD硬度64の中間層を形成した。次いで、別の射出成形用金型を用いて、上記の中間層被覆球体の周囲に、表2に示す最外層材料(ウレタン樹脂材料)を射出成形し、厚さ約0.8mm、ショアD硬度40の最外層を形成する。
【0074】
【0075】
上記表中の配合成分の詳細は下記のとおりである。
・「ハイミラン1706」、「ハイミラン1557」及び「ハイミラン1605」:三井ダウポリケミカル社製のアイオノマー樹脂
・「TPU」:ディーアイシーコベストロポリマー社製の商品名「パンデックス」、エーテルタイプの熱可塑性ポリウレタン「ショアD硬度40」
・「ポリエチレンワックス」:商品名「サンワックス161P」(三洋化成社製)
・イソシアネート化合物:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
【0076】
得られたゴルフボールについて、ドライバースピン量を下記方法で評価し、その結果を表3に示す。
【0077】
ドライバースピン量
各例について、ゴルフ打撃ロボットにドライバー(W#1)をつけて、ヘッドスピード45m/sにて打撃した直後のボールのスピン量を求める。クラブは、ブリヂストンスポーツ社製の「TourB XD-3ドライバー(2016モデル)」(ロフト角9.5°)を用いる。比較例1を基準とし、比較例1のスピン量との差で表3に示す。
【0078】
打撃耐久性
米国Automated Design Corporation製のADC Ball COR Durability Testerにより、ボールの耐久性を評価する。この試験機は、ゴルフボールを空気圧で発射させた後、平行に設置した2枚の金属板に連続的に衝突させる機能を有する。金属板への入射速度は43m/sに設定とする。ゴルフボールが割れるまでに要した発射回数を測定し、ゴルフボール10個の測定値の平均値を算出すると共に、比較例1のボールが割れた平均回数を100(基準値)とした場合の指数を求め、表3に記載する。
【0079】
【0080】
表3に示すように、実施例1~4のゴルフボールは、コア内部硬度差が大きく維持されており、打撃耐久性を十分に確保しながら、ドライバー打撃時のスピン量も低下している。
これに対して、比較例1は、コア内部の硬度差が小さく、他の例と比べてドライバー打撃時のスピン量が十分に低下していない。また、比較例2は、コア内部の硬度差は大きく、ドライバー打撃時のスピン量は低下しているが、打撃耐久性が大きく劣ってしまう。