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特開2024-82426情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082426
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20240613BHJP
   G01S 13/90 20060101ALI20240613BHJP
   G06T 7/90 20170101ALI20240613BHJP
【FI】
G06T7/00 640
G01S13/90 127
G01S13/90 191
G06T7/90 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196269
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】十文字 奈々
(72)【発明者】
【氏名】石井 孝和
(72)【発明者】
【氏名】平田 寛道
(72)【発明者】
【氏名】大野 翔平
【テーマコード(参考)】
5J070
5L096
【Fターム(参考)】
5J070AE07
5J070AF08
5J070AK13
5J070AK39
5J070BE02
5L096AA06
5L096BA18
5L096CA18
5L096DA01
5L096EA14
5L096FA15
5L096FA66
5L096GA51
5L096HA11
(57)【要約】
【課題】解析対象領域を適切に設定することが可能な情報処理装置を提供すること。
【解決手段】本開示にかかる情報処理装置110は、合成開口レーダ(SAR)を用いて地表を撮像することで得られた画像を取得する取得部100と、取得された画像を用いた干渉解析において、解析精度の向上又は低下に影響し得る画像の画像領域を推定する推定部102と、推定された画像領域に基づいて、干渉解析の対象である解析対象領域を設定する設定部103と、解析対象領域に対する干渉解析を行う解析部104と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成開口レーダ(SAR)を用いて地表を撮像することで得られた画像を取得する取得部と、
取得された前記画像を用いた干渉解析において、解析精度の向上又は低下に影響し得る前記画像の画像領域を推定する推定部と、
推定された前記画像領域に基づいて、前記干渉解析の対象である解析対象領域を設定する設定部と、
前記解析対象領域に対する干渉解析を行う解析部と、を備える
情報処理装置。
【請求項2】
前記推定部は、地表周辺の状況を示す周辺情報に基づいて、前記解析精度を向上させ得る第1画像領域を推定する第1推定部を備え、
前記設定部は、前記第1画像領域を含むように前記解析対象領域を設定する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第1推定部は、地表周辺を撮像した光学画像及び地表面の等高線図の少なくとも一方を前記周辺情報として取得し、取得した前記周辺情報に基づいて地表における土砂堆積領域を抽出し、前記土砂堆積領域を前記第1画像領域として推定する
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記推定部は、地表周辺の状況を示す周辺情報に基づいて、前記解析精度を低下させ得る第2画像領域を推定する第2推定部を備え、
前記設定部は、前記第2画像領域を含まないように前記解析対象領域を設定する
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第2推定部は、飛翔体の撮像部から撮像された地表面のマルチスペクトル画像を前記周辺情報として取得し、前記マルチスペクトル画像に基づき算出される植生指標に基づいて植生領域を抽出し、前記植生領域を前記第2画像領域として推定する
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記第2推定部は、前記合成開口レーダから地表面に照射される電波の反射強度を前記周辺情報として取得し、前記反射強度に基づいて水域を抽出し、前記水域を前記第2画像領域として推定する
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記第2推定部は、前記地表の標高を示す数値標高モデルを前記周辺情報として取得し、前記合成開口レーダを有する飛翔体の位置を示す位置情報と、前記数値標高モデルとに基づいて、前記画像における倒れ込み発生領域を抽出し、前記倒れ込み発生領域を前記第2画像領域として推定する
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記干渉解析の結果を表示部に表示させる表示制御部をさらに備え、
前記表示制御部は、設定された解析対象領域における地表面の状態変化を表示させる
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項9】
コンピュータが、
合成開口レーダ(SAR)を用いて地表を撮像することで得られた画像を取得する取得ステップと、
取得された前記画像を用いた干渉解析において、解析精度の向上又は低下に影響し得る前記画像の画像領域を推定する推定ステップと、
推定された前記画像領域に基づいて、前記干渉解析の対象である解析対象領域を設定する設定ステップと、
前記解析対象領域に対する干渉解析を行う解析ステップと、を実行する
情報処理方法。
【請求項10】
合成開口レーダ(SAR)を用いて地表を撮像することで得られた画像を取得する取得ステップと、
取得された前記画像を用いた干渉解析において、解析精度の向上又は低下に影響し得る前記画像の画像領域を推定する推定ステップと、
推定された前記画像領域に基づいて、前記干渉解析の対象である解析対象領域を設定する設定ステップと、
前記解析対象領域に対する干渉解析を行う解析ステップと、をコンピュータに実行させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
衛星などに搭載された合成開口レーダ(SAR::Synthetic Aperture Radar)で撮影された画像(以下、「SAR画像」と称する場合がある)を用いて、地表の標高を計測する技術が知られている。SAR画像には、干渉解析の精度を低下させ得る水域や植生領域が含まれる場合がある。このような領域を含めて解析を行った場合、標高が適切に推定されないおそれがある。
【0003】
関連する技術として、例えば、特許文献1は、植生域や水域などを除いた変化領域(例えば、被災地域)を1枚のコヒーレンス画像から検出することが可能な変化領域特定装置を開示する。また当該装置は、災害発生前のSAR画像と災害発生後のSAR画像とを用いて、観測地域のコヒーレンスを算出し、算出したコヒーレンスの値に応じて地表面の状態変化を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-209780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、河川に設置される砂防堰堤(砂防ダム)は、その機能を十分に発揮させるために、砂防堰堤に堆積している土砂の堆積量を定期的に計測し、計測結果を施設の維持管理計画に反映することが求められる。よって、災害前後のSAR画像に限らず、災害が発生していない平時のSAR画像に対しても、解析対象領域を適切に設定することが望ましい。
【0006】
本開示の目的は、上述した課題を鑑み、解析対象領域を適切に設定することが可能な情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる情報処理装置は、
合成開口レーダ(SAR)を用いて地表を撮像することで得られた画像を取得する取得部と、
取得された前記画像を用いた干渉解析において、解析精度の向上又は低下に影響し得る前記画像の画像領域を推定する推定部と、
推定された前記画像領域に基づいて、前記干渉解析の対象である解析対象領域を設定する設定部と、
前記解析対象領域に対する干渉解析を行う解析部と、を備えるものである。
【0008】
本開示にかかる情報処理方法は、
コンピュータが、
合成開口レーダ(SAR)を用いて地表を撮像することで得られた画像を取得する取得ステップと、
取得された前記画像を用いた干渉解析において、解析精度の向上又は低下に影響し得る前記画像の画像領域を推定する推定ステップと、
推定された前記画像領域に基づいて、前記干渉解析の対象である解析対象領域を設定する設定ステップと、
前記解析対象領域に対する干渉解析を行う解析ステップと、を実行するものである。
【0009】
本開示にかかるプログラムは、
合成開口レーダ(SAR)を用いて地表を撮像することで得られた画像を取得する取得ステップと、
取得された前記画像を用いた干渉解析において、解析精度の向上又は低下に影響し得る前記画像の画像領域を推定する推定ステップと、
推定された前記画像領域に基づいて、前記干渉解析の対象である解析対象領域を設定する設定ステップと、
前記解析対象領域に対する干渉解析を行う解析ステップと、をコンピュータに実行させるものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示にかかる情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムは、解析対象領域を適切に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1にかかる情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図2】実施形態1にかかる情報処理装置が行う処理を示すフローチャートである。
図3】実施形態2にかかる情報処理システムの構成を示すブロック図である。
図4】実施形態2にかかる情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図5】実施形態2にかかる情報処理装置が行う処理を示すフローチャートである。
図6】実施形態2にかかる情報処理装置を実現するコンピュータのハードウエア構成を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されている。説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0013】
<実施形態1>
まず、図1を参照して、実施形態1について説明する。図1は、本実施形態にかかる情報処理装置110の構成を示すブロック図である。情報処理装置110は、取得部100、推定部102、設定部103、及び解析部104を備えている。
【0014】
取得部100は、SARを用いて地表を撮像することで得られたSAR画像を取得する。推定部102は、取得されたSAR画像を用いた干渉解析において、解析精度の向上又は低下に影響し得るSAR画像の画像領域を推定する。設定部103は、推定された画像領域に基づいて、干渉解析の対象である解析対象領域を設定する。解析部104は、解析対象領域に対する干渉解析を行う。
【0015】
情報処理装置110は、図示しない構成としてプロセッサ、メモリ及び記憶装置を備えている。当該記憶装置には、本実施形態にかかる処理が実装されたコンピュータプログラムが記憶されている。プロセッサは、記憶装置からコンピュータプログラムをメモリへ読み込ませ、当該コンピュータプログラムを実行することができる。これにより、プロセッサは、取得部100、推定部102、設定部103、及び解析部104の機能を実現する。
【0016】
続いて、図2を参照して、情報処理装置110が行う処理を説明する。図2は、情報処理装置110が行う処理を示すフローチャートである。
【0017】
まず、取得部100は、SAR画像を取得する(S101)。次に、推定部102は、取得されたSAR画像を用いた干渉解析において、解析精度の向上又は低下に影響し得る画像の画像領域を推定する(S102)。続いて、設定部103は、推定部102で推定された画像領域に基づいて、解析対象領域を設定する(S103)。そして、解析部104は、設定部103で設定された解析対象領域に対する干渉解析を行う(S104)。
【0018】
以上説明したように、本実施形態にかかる情報処理装置110によれば、解析精度の向上又は低下に影響し得る画像の画像領域を推定し、推定結果に基づいて解析対象領域を設定する。これにより、解析対象領域を適切に設定することができる。
【0019】
<実施形態2>
続いて、実施形態2について説明する。実施形態2は、上述した実施形態1の具体例である。図3は、本実施形態にかかる情報処理システム30の構成を示すブロック図である。
【0020】
(情報処理システム30の構成)
情報処理システム30は、SARを用いて地表を撮像することで得られたSAR画像を干渉解析して、地表の標高を計測することが可能な情報処理システムである。情報処理システム30は、SAR画像を複数枚(例えば、2枚)取得し、干渉解析を行うために用いる。情報処理システム30は、干渉解析を行うにあたり、解析精度の向上又は低下に影響し得る画像の画像領域を推定する。情報処理システム30は、当該画像領域に基づいて、干渉解析の対象である解析対象領域を設定し、当該解析対象領域に対して干渉解析を行う。
【0021】
図に示されるように、情報処理システム30は、情報処理装置1及びアンテナ部20を備えている。情報処理装置1は、上述した情報処理装置110の一例である。情報処理装置1は、本実施形態にかかる処理を実行することが可能な情報処理装置である。情報処理装置1は、例えば、PC(Personal Computer)又はタブレット端末などであってよい。
【0022】
アンテナ部20は、衛星5からデータを受信する。アンテナ部20は、衛星5に対してデータを送信してもよい。
【0023】
SARは、飛翔体に搭載されている。飛翔体は、例えば、衛星、航空機、又はドローンなどである。本実施形態では、飛翔体の例として、図に示される衛星5を用いて説明を行う。
【0024】
情報処理装置1とアンテナ部20とは、ネットワークNを介してそれぞれ接続されている。ネットワークNは、有線又は無線の通信回線である。ネットワークNは、例えば、インターネット、専用線、電話回線、移動体通信網、又はその他の通信回線などであってよい。またネットワークNは、これらの組み合わせであってもよい。なお、ここでは情報処理装置1とアンテナ部20とを別個に設けられる例を示しているが、情報処理装置1がアンテナ部20を備えていてもよい。
【0025】
衛星5は、SARを搭載した衛星である。衛星5は、例えば、所定の軌道を移動する人工衛星である。SARは、マイクロ波を地表面に斜めに照射し、地表面からの後方散乱波を受信する能動型センサである。衛星5は、SARを用いてマイクロ波を地表面に対して照射し、地表面からの後方散乱波を受信することで撮像を行う。衛星5は、撮像により得られたSAR画像を情報処理装置1に送信する。
【0026】
SAR画像は、各画素における振幅及び位相の情報を含んでいる。なお、本開示において、「画像」はその画像のデータである画像データを意味する場合も含む。すなわち、衛星5が取得するSAR画像は、「SAR画像の画像データ」を意味する場合も含む。SAR画像は、上述した振幅及び位相を示す情報の他、SARから地表面に照射される電波の反射強度の情報を含み得る。
【0027】
また、衛星5は、SARの他、情報処理装置1に送信するための情報を検出可能なセンサを備えていてもよい。例えば、衛星5は、マルチスペクトル画像を撮影可能なマルチスペクトルセンサを備えている。マルチスペクトルセンサは、例えば、予め設定された複数の波長帯域のそれぞれに対応する画像データを生成するマルチスペクトルカメラ(撮像部)である。マルチスペクトルカメラは、例えば、紫外域、可視域、又は近赤外域などに含まれる複数の波長帯域の画像データを波長帯域ごとに生成したマルチスペクトル画像を生成する。
【0028】
また、衛星5は、光学センサを搭載し得る。光学センサは、例えば、RGBカメラ、赤外線カメラ、又はLiDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)などである。
【0029】
さらに、衛星5は、衛星5自身の位置を検出し、位置情報を取得するための位置センサを搭載し得る。位置センサは、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)等の複数の人工衛星から送信される測位信号を受信し、これらの測位信号に基づいて測位を行う。
【0030】
衛星5は、上述したSAR、マルチスペクトルセンサ、光学センサ、及び位置センサで取得されたデータを情報処理装置1に送信する。すなわち、衛星5は、SAR画像、マルチスペクトル画像、光学画像、及び位置情報を情報処理装置1に送信する。衛星5は、これらのデータに、データの取得日時などを対応付けて送信してもよい。衛星5は、所定の時間間隔でこれらのデータを送信してもよい。
【0031】
なお、ここでは、衛星5がSAR、マルチスペクトルセンサ、光学センサ、及び位置センサを全て備えている例を用いて説明するが、衛星5は、これらの一部を備えるように構成されてもよい。また、各センサはそれぞれ別の飛翔体(例えば、衛星)に設けられてもよい。
【0032】
(情報処理装置1の構成)
続いて、図4を参照して、本実施形態にかかる情報処理装置1の構成を説明する。図4は、情報処理装置1の構成を示すブロック図である。情報処理装置1は、取得部10、推定部2(第1推定部11及び第2推定部12)、設定部13、解析部14、表示制御部15、入力部16、出力部17、及び記憶部19を備えている。
【0033】
取得部10は、上述した取得部100の一例である。取得部10は、SARを用いて地表を撮像することで得られたSAR画像を取得する。例えば、取得部10は、衛星5のSARで撮像された複数の画像の中から2枚の画像を選択することで、干渉解析に用いる画像を取得する。以下では、主に2枚の画像を用いて解析を行う例を用いて説明するが、3枚以上の画像が用いられてもよい。
【0034】
また、取得部10は、衛星5から送信される他のデータを取得し得る。例えば、取得部10は、地表周辺の状況を示す周辺情報を衛星5から取得する。周辺情報は、例えば、衛星5から地表を撮像した画像である。周辺情報は、例えば、光学画像、等高線図、又はマルチスペクトル画像などである。また、周辺情報は、合成開口レーダから地表面に照射される電波の反射強度などを含み得る。
【0035】
取得部10は、ネットワークNを介して、他の情報を周辺情報として取得してもよい。例えば、取得部10は、地表の標高を示す数値標高モデルなどを取得し得る。取得部10は、取得した周辺情報を記憶部19に記憶してもよい。ここでは、取得部10は、取得した周辺情報を周辺情報191として記憶部19に記憶する。
【0036】
推定部2は、上述した推定部102の一例である。推定部2は、取得されたSAR画像を用いた干渉解析において、解析精度の向上又は低下に影響し得る画像の画像領域を推定する。推定部2は、第1推定部11及び第2推定部12を備えている。
【0037】
解析精度は、2枚の画像の干渉性の高さに関連している。干渉性が高いほど、解析精度が向上する。干渉性の高さは、周知の技術を用いて、2枚の画像のコヒーレンスを算出することで求めることができる。例えば、2枚の画像の相互に対応する画素同士の位相を比較し、位相の異なる画素数の全画素数に対する割合を計算することで、2枚の画像のコヒーレンスを算出することができる。2枚の画像が完全に一致する場合、コヒーレンスは1となり、2枚の画像の差異が大きくなるとともに、コヒーレンスは0に近づく。コヒーレンスが1に近いほど干渉性が良好なSAR画像であるということができる。
【0038】
第1推定部11は、地表周辺の状況を示す周辺情報に基づいて、解析精度を向上させ得る第1画像領域を推定する。第1画像領域は、干渉条件のよい画像領域である。
【0039】
第1画像領域は、例えば、地表に土砂が堆積している土砂堆積領域である。第1推定部11は、地表周辺を撮像した光学画像を周辺情報として取得し、取得した光学画像に基づいて、地表における土砂堆積領域を抽出する。第1推定部11は、抽出した土砂堆積領域を第1画像領域として推定する。
【0040】
例えば、第1推定部11は、光学画像が有する色情報に基づいて、土砂堆積領域を抽出し得る。土砂堆積領域の抽出には、周知の画像認識技術などが用いられてよい。第1推定部11は、抽出した土砂堆積領域を第1画像領域として推定する。これにより、第1推定部11は、土砂堆積領域を自動的に抽出することができる。
【0041】
第1推定部11は、所定の機械学習又は人工知能を用いて生成された学習済みモデルを用いて土砂堆積領域を抽出してもよい。学習済みモデルは、例えば、光学画像を入力とし、光学画像に含まれる土砂堆積領域を出力とするニューラルネットワークである。ニューラルネットワークは、例えばCNN(Convolution Neural Network)などであってよい。
【0042】
また、第1推定部11は、地表面の等高線図を周辺情報として取得し、取得した等高線図に基づいて、地表における土砂堆積領域を第1画像領域として推定してもよい。第1推定部11は、周知の画像認識技術などを用いて、等高線図に基づいて土砂堆積領域を抽出する。第1推定部11は、抽出した土砂堆積領域を第1画像領域として推定する。
【0043】
また、第1推定部11は、ユーザからの入力を受け付けて、光学画像などに含まれる河川領域を特定し、河川領域に基づいて土砂堆積領域を抽出してもよい。例えば、第1推定部11は、ユーザから入力された河川の位置に基づいて、河川の周囲にある土砂堆積領域を抽出する。
【0044】
なお、第1推定部11は、SAR画像と光学画像との間の位置ずれを考慮して、土砂堆積領域を抽出し得る。第1推定部11は、例えば、位置合わせの基準となる基準点を用いて、SAR画像と光学画像との位置合わせを行うことで位置ずれを補正し得る。
【0045】
第2推定部12は、周辺情報に基づいて、解析精度を低下させ得る第2画像領域を推定する。第2画像領域は、干渉条件の悪い画像領域である。干渉条件の悪い領域が含まれる場合、解析結果にノイズが混ざることとなり、解析の精度が低下する。第2画像領域は、例えば、植生領域、河川領域(水域)、又は倒れ込み発生領域である。
【0046】
例えば、第2推定部12は、衛星5(飛翔体)の撮像部から撮像された地表面のマルチスペクトル画像を周辺情報として取得し、マルチスペクトル画像に基づいて植生指標(NDVI:Normalized Difference Vegetation Index)を算出する。第2推定部12は、算出結果に基づいて地表における植生領域を抽出し、植生領域を第2画像領域として推定する。
【0047】
第2推定部12は、以下の計算式を用いてNDVIを算出することができる。
NDVI=(IR-R)/(IR+R) ・・・(1)
ここで、IRは、マルチスペクトル画像における近赤外線領域の反射率を示し、Rは可視領域の赤色の反射率を示している。第2推定部12は、上記の式(1)で得られた値を-1から+1の間に正規化することでNDVIを算出することができる。
【0048】
例えば、第2推定部12は、マルチスペクトル画像の各画素についてNDVIを算出する。第2推定部12は、各画素のNDVIが所定の閾値以上であるか否かを判定する。所定の閾値は、予め設定されてもよいし、適宜変更されてもよい。NDVIが所定の閾値以上である場合、第2推定部12は、当該画素に対応する地表面の範囲が植物に覆われている植生領域であると判定する。第2推定部12は、マルチスペクトル画像に含まれる複数の画素のそれぞれについて当該判定を行い、植生領域を抽出する。
【0049】
また、第2推定部12は、SARから地表面に照射される電波の反射強度を周辺情報として取得し、反射強度に基づいて水域を抽出し、抽出した水域を第2画像領域として推定してもよい。SARから地表面に照射される電波の反射強度は、SAR画像に対応付けて取得され得る。
【0050】
第2推定部12は、SAR画像の各画素における反射強度が所定の閾値以上であるか否かを判定する。当該反射強度が所定の閾値未満である場合、第2推定部12は、当該画素が水域であると判定する。第2推定部12は、SAR画像に含まれる複数の画素のそれぞれについて当該判定を行い、水域を抽出する。
【0051】
さらに、第2推定部12は、地表の標高を示す数値標高モデル(DEM:Digital Elevation Model)を周辺情報として取得し、DEMを用いて第2画像領域を推定してもよい。例えば、第2推定部12は、SARを有する衛星5の位置を示す位置情報と、DEMとに基づいて、SAR画像における倒れ込み発生領域を抽出する。なお、倒れ込みは、山や建物などのような高さのある物体を撮像した場合に、物体が実際の位置よりもレーダ側に倒れ込むようにして写る現象である。上述したように、SARは、マイクロ波を地表面に対して斜めに照射するので、このような現象が発生する。
【0052】
例えば、第2推定部12は、ネットワークNを介して、国土地理院が公開しているDEMを取得する。第2推定部12は、周知の技術を用いて、衛星5の位置情報とDEMとに基づいて、倒れ込み発生領域を抽出する。第2推定部12は、抽出した倒れ込み発生領域を第2画像領域として推定する。
【0053】
設定部13は、上述した設定部103の一例である。設定部13は、推定部2で推定された画像領域に基づいて、干渉解析の対象である解析対象領域を設定する。例えば、設定部13は、第1推定部11で推定された第1画像領域を含むように解析対象領域を設定する。また、設定部13は、第2推定部12で推定された第2画像領域を含まないように解析対象領域を設定する。
【0054】
例えば、設定部13は、SAR画像全体のうち、第1画像領域のみを解析対象領域として設定してもよい。また、設定部13は、SAR画像全体から第2画像領域を除外して、残りの画像領域を解析対象領域として設定してもよい。設定部13は、第2画像領域のデータを除去することで、第2画像領域が解析対象領域に含まれないようにしてもよい。
【0055】
設定部13は、第1画像領域及び第2画像領域の両方を用いて解析対象領域を設定してもよい。例えば、設定部13は、SAR画像全体のうち、第1画像領域を解析対象領域として設定し、かつ、第2画像領域を解析対象領域から除外する。設定部13は、第1又は第2画像領域のいずれでもない他の領域については所定の条件を用いて解析対象領域とするか否かを決定してもよい。設定部13は、他の領域を全て解析対象領域として設定してもよいし、全て解析対象領域から除外するようにしてもよい。
【0056】
設定部13は、解析に用いる複数のSAR画像のそれぞれにおいて、解析対象領域を設定し得る。設定部13は、一方の画像に対して解析対象領域を設定し、当該領域と対応する画像領域を他方の画像の解析対象領域として設定するようにしてもよい。
【0057】
解析対象領域は、連続した複数の画素で構成され得る。設定部13は、画素が所定以上連続する領域を解析対象領域として設定してもよい。
【0058】
また、設定部13は、解析対象領域の大きさが所定の範囲内となるように解析対象領域を設定してもよい。所定の範囲は、予め設けられた上限及び下限で定義され得る。例えば、設定部13は、解析対象領域に対応する画素の面積を算出し、当該面積が所定の範囲内になるように解析対象領域を設定する。なお、上限及び下限のいずれか一方のみが設けられてもよい。
【0059】
例えば、解析対象領域が大き過ぎる場合には、標高解析の精度が低下するおそれがある。また、解析対象領域が小さ過ぎる場合には、画像の位置合わせに用いられる基準点が少なくなるので、位置合わせが困難となるおそれがある。設定部13が、解析対象領域の大きさが所定の範囲に収まるように解析対象領域を設定することで、このような問題を解決することができる。
【0060】
また、設定部13は、ユーザの入力を受け付けて解析対象領域を設定してもよい。例えば、設定部13は、入力部16を介してユーザの入力を受け付ける。これにより、自動的に設定された解析対象領域を、ユーザの手動により調整することができる。
【0061】
解析部14は、上述した解析部104の一例である。解析部14は、複数のSAR画像を用いて、設定部13において設定された解析対象領域に対する干渉解析を行う。解析部14は、周知の技術を用いて干渉処理を行い得る。解析部14は、例えば2枚の画像に対して干渉処理を行うことで干渉画像を得る。解析部14は、干渉画像に基づいて、2枚の画像の各画素における位相差を求め、位相差に基づいて地表の標高を算出する。解析部14は、設定された解析対象領域に対応する地表面の標高を算出するので、精度のよい解析結果を得ることができる。
【0062】
また、解析部14は、解析対象領域における地表面の状態変化を算出してもよい。地表面における状態変化は、例えば、地表における土砂の移動である。解析部14は、異なるタイミングで計測された標高に基づいて、土砂移動量を算出する。
【0063】
例えば、時期T1及び時期T2のそれぞれで標高が計測されたとする。解析部14は、時期T1からT2の間の土砂移動量を算出する。解析部14は、定期観測で計測された標高に基づいて平時の土砂移動量を算出してもよい。また解析部14は、例えば大雨などのイベント発生前後に計測された標高に基づいて、イベントに対応する土砂移動量を算出してもよい。土砂の移動には、盛土の造成などを含んでもよい。
【0064】
表示制御部15は、解析部14で処理された干渉解析の結果を出力部17(表示部)に表示させるための制御を行う。例えば、表示制御部15は、SAR画像全体のうち、解析対象領域における地表の標高を出力部17に表示させる。例えば、表示制御部15は、SAR画像全体に対応する地表面を示す地図情報と、解析対象領域に対応する地表の標高と、を重ねて表示させる。表示制御部15は、解析対象領域以外の領域に対応する標高を表示させず、解析対象領域に対応する標高を表示させる。このようにすることで、表示制御部15は、信頼度の高い標高のみを表示させることができる。
【0065】
また、表示制御部15は、解析対象領域における地表面の状態変化を出力部17に表示させてもよい。例えば、表示制御部15は、解析対象領域以外の領域に対応する土砂移動量を表示させず、解析対象領域に対応する土砂移動量を表示させる。このようにすることで、表示制御部15は、信頼度の高い土砂移動量のみを表示させることができる。
【0066】
表示制御部15は、解析対象領域と異なる領域に対して解析結果を表示させてもよい。表示制御部15は、解析対象領域と異なる領域を、解析結果を表示させる解析結果表示領域として設定し得る。例えば、表示制御部15は、解析対象領域よりも小さい領域を解析結果表示領域として設定し、当該解析結果表示領域に対して解析結果を表示させてもよい。
【0067】
例えば、解析対象領域Aと、解析対象領域Aの内側に、解析対象領域Aの一部として画像領域Bがあるとする。例えば、解析対象領域Aは土砂堆積領域であり、画像領域Bは、解析対象領域A内にある水域である。ここでは当該水域も解析対象領域として設定されているものとする。表示制御部15は、解析対象領域Aのうち、画像領域Bについての解析結果を表示させないようにしてもよい。つまり、表示制御部15は、解析対象領域Aから画像領域B部分をくり抜いたドーナツ状の画像領域を解析結果表示領域として設定し、解析結果を表示させてもよい。このようにすることで、設定部13においては、第2画像領域を含む範囲を含めて解析対象領域を広めに設定しておき、表示制御部15においては、精度の低い解析結果を非表示にするという調整ができる。このように、表示制御部15が表示させる解析結果表示領域は、非連続であってもよい。
【0068】
表示制御部15は、解析対象領域あるいは解析対象領域以外の領域に対応させて、解析対象領域である旨、あるいは解析対象領域以外の領域である旨を表示させてもよい。また表示制御部15は、解析対象領域として設定された根拠、あるいは解析対象領域以外の領域として設定された根拠を表示させてもよい。表示制御部15は、様々な表示態様を用いて、上述した表示をさせ得る。例えば、表示制御部15は、解析対象領域である旨などを文字、記号、色、又は網掛けなどを用いて表示させてもよい。
【0069】
表示制御部15は、解析結果表示領域と、解析結果表示領域以外の領域についても、上記と同様にして表示を制御し得る。すなわち、表示制御部15は、解析結果表示領域あるいは解析結果表示領域以外の領域に対応させて、解析結果表示領域である旨、あるいは解析結果表示領域以外の領域である旨を表示させてもよい。また、表示制御部15は、解析結果表示領域として設定された根拠、あるいは解析結果表示領域以外の領域として設定された根拠を表示させてもよい。
【0070】
例えば、上述した解析対象領域A及び画像領域Bの例では、解析対象領域Aの中に、解析結果を非表示とする画像領域Bが含まれている。例えば、表示制御部15は、解析対象領域Aから画像領域B部分をくり抜いたドーナツ状の画像領域に対しては、解析結果表示領域である旨を表示させる。また表示制御部15は、画像領域Bに対しては、解析結果表示領域以外の領域である旨を表示させる。表示制御部15は、ドーナツ状の画像領域に対しては、解析結果表示領域である根拠として、土砂堆積領域である旨を表示させてもよい。また表示制御部15は、画像領域Bに対しては、解析結果表示領域以外の領域である根拠として、水域である旨を表示させてもよい。
【0071】
このようにすることで、ユーザは、解析対象領域、解析対象領域以外の領域、解析結果表示領域、解析結果表示領域以外の領域、及び、これらの領域として設定された根拠を直感的に認識することができる。なお、上述した表示の態様は一例であるので、種々の態様が用いられてよい。
【0072】
入力部16は、ユーザからの入力を受け付ける入力装置である。入力部16は、例えばキーボードなどである。例えば入力部16は、解析対象領域の入力を受け付ける。入力部16は、第1画像領域又は第2画像領域の入力を受け付けてもよい。例えば、入力部16は、地図情報を表示させて、河川の位置をユーザに入力させるなどしてもよい。なお、入力部16は、ネットワークNを介して、ユーザが使用するPCなどの端末から入力を受け付けてもよい。
【0073】
出力部17は、解析結果を出力する出力装置である。出力部17は、例えば、液晶パネルなどの表示装置である。出力部17は、入力部16の機能を備えるタッチパネル付きディスプレイなどであってもよい。また、出力部17は、図示しない他の表示装置に解析結果を出力させるように構成されてもよい。例えば、出力部17は、ネットワークNを介して情報処理装置1以外の装置に解析結果を出力させるように構成され得る。例えば、出力部17は、ユーザが使用する端末に対して解析結果を送信する。これにより、出力部17は当該端末に解析結果を出力させる。
【0074】
記憶部19は、上述した周辺情報191を記憶する。また記憶部19は、解析部14で得られた解析結果を記憶してもよい。また記憶部19は、本実施形態にかかる処理が実装されたコンピュータプログラムを記憶してもよい。
【0075】
以上、情報処理システム30が備える構成について説明した。なお、上述した情報処理システム30の構成は一例に過ぎず、適宜変更され得る。例えば、情報処理装置1の各構成要素の一部又は全部が複数の情報処理装置や回路等により実現される場合には、複数の情報処理装置や回路等は、集中配置されてもよいし、分散配置されてもよい。例えば、情報処理装置や回路等は、クライアントサーバシステム、クラウドコンピューティングシステム等、各々が通信ネットワークを介して接続される形態として実現されてもよい。また、情報処理装置1の機能がSaaS(Software as a Service)形式で提供されてもよい。
【0076】
(情報処理装置1が行う処理)
続いて、図5を参照して、情報処理装置1が行う処理を説明する。図5は、情報処理装置1が行う処理を示すフローチャートである。
【0077】
まず、取得部10は、SAR画像を取得する(S1)。取得部10は、例えば2枚のSAR画像を取得する。SAR画像は、記憶部19に記憶されていてもよいし、ネットワークNを介して取得されてもよい。
【0078】
次に、推定部2は、解析精度の向上又は低下に影響し得る画像の画像領域を推定する。具体的には、まず、第1推定部11は、地表周辺の状況を示す周辺情報に基づいて、解析の精度を向上させ得る第1画像領域を推定する(S2)。周辺情報は、例えば、衛星などの飛翔体から撮像された光学画像、等高線図、又はマルチスペクトル画像などである。
【0079】
例えば、第1推定部11は、光学画像又は等高線図を周辺情報として取得する。第1推定部11は、周辺情報に基づいて、地表における土砂堆積領域を抽出し、土砂堆積領域を第1画像領域として推定する。
【0080】
次に、第2推定部12は、地表周辺の状況を示す周辺情報に基づいて、解析精度を低下させ得る第2画像領域を推定する(S3)。第2推定部12は、例えば、飛翔体から撮像された地表面のマルチスペクトル画像を周辺情報として取得する。第2推定部12は、マルチスペクトル画像に基づいて、上述した式(1)を用いてNDVIを算出する。第2推定部12は、算出したNDVIに基づいて地表における植生領域を抽出し、植生領域を第2画像領域として推定する。
【0081】
また、第2推定部12は、SARから地表面に照射される電波の反射強度に基づいて水域を抽出し、抽出した水域を第2画像領域として推定してもよい。さらに、第2推定部12は、画像における倒れ込み発生領域を抽出し、抽出した倒れ込み発生領域を第2画像領域として推定してもよい。第2推定部12は、地表を撮像する撮像部を有する飛翔体の位置情報と、地表の標高を示すDEMとに基づいて、画像における倒れ込み発生領域を抽出することができる。
【0082】
続いて、設定部13は、推定された第1画像領域及び第2画像領域に基づいて、解析対象領域を設定する(S4)。例えば、設定部13は、第1画像領域を含むように解析対象領域を設定する。また、例えば設定部13は、第2画像領域を含まないように解析対象領域を設定する。設定部13は、第1画像領域を含むように、かつ、第2画像領域を含まないように、解析対象領域を設定してもよい。
【0083】
また、設定部13は、解析対象領域の大きさが所定の範囲内となるように解析対象領域を設定してもよい。例えば、設定部13は、解析対象領域の大きさが予め設定された上限と下限との間に収まるように解析対象領域を設定する。なお、設定部13は、ユーザの入力を受け付けて解析対象領域を設定してもよい。
【0084】
続いて、解析部14は、解析対象領域に対する干渉解析を行う(S5)。干渉解析は、周知の技術が用いられてよい。
【0085】
そして、表示制御部15は、干渉解析の結果を表示部に表示させる(S6)。表示制御部15は、例えば、出力部17やユーザが使用する端末を表示部として用いて、解析結果を表示させる。表示制御部15は、設定された解析対象領域における地表面の状態変化を表示させてもよい。状態変化は、例えば、地表における土砂の移動である。表示制御部15は、異なるタイミングで計測された標高に基づいて算出された土砂移動量を表示させ得る。
【0086】
なお、上述した処理の順序は一例であるので、適宜変更されてもよい。例えば、情報処理装置1は、ステップS2とS3とを逆の順序で行ってもよい。また、情報処理装置1は、ステップS2及びS3のいずれか一方を行うようにしてもよい。
【0087】
以上説明したように、本実施形態にかかる情報処理システム30では、情報処理装置1において、解析精度の向上又は低下に影響し得る画像の画像領域を推定する。例えば、情報処理装置1は、解析精度を向上させ得る第1画像領域と、解析精度を低下させ得る第2画像領域と、を推定する。情報処理装置1は、第1及び第2画像領域に基づいて解析対象領域を設定し、当該解析対象領域に対して干渉解析を行う。このようにすることで、情報処理システム30は、干渉条件の良い画像領域のみを解析対象領域とし、干渉条件の悪い画像領域を解析対象領域外とすることができる。
【0088】
情報処理システム30は、地表周辺の状況を示す周辺情報などに基づいて、解析対象領域を自動的に設定することができる。これにより、ユーザが手動で解析対象領域を設定することなく、効率的に解析対象領域の設定を行うことができる。このように、情報処理システム30は、解析対象領域を適切に設定し、精度よく干渉解析を行うことができる。
【0089】
<ハードウエアの構成例>
情報処理装置1及び110の各機能構成部は、各機能構成部を実現するハードウエア(例:ハードワイヤードされた電子回路など)で実現されてもよいし、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせ(例:電子回路とそれを制御するプログラムの組み合わせなど)で実現されてもよい。以下、情報処理装置1等の各機能構成部がハードウエアとソフトウエアとの組み合わせで実現される場合について、さらに説明する。
【0090】
図6は、情報処理装置1等を実現するコンピュータ900のハードウエア構成を例示するブロック図である。コンピュータ900は、情報処理装置1等を実現するために設計された専用のコンピュータであってもよいし、汎用のコンピュータであってもよい。コンピュータ900は、スマートフォンやタブレット端末などといった可搬型のコンピュータであってもよい。
【0091】
例えば、コンピュータ900に対して所定のアプリケーションをインストールすることにより、コンピュータ900で、情報処理装置1等の各機能が実現される。上記アプリケーションは、情報処理装置1等の機能構成部を実現するためのプログラムで構成される。
【0092】
コンピュータ900は、バス902、プロセッサ904、メモリ906、ストレージデバイス908、入出力インタフェース910、及びネットワークインタフェース912を有する。バス902は、プロセッサ904、メモリ906、ストレージデバイス908、入出力インタフェース910、及びネットワークインタフェース912が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ904などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。
【0093】
プロセッサ904は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は量子プロセッサ(量子コンピュータ制御チップ)などの種々のプロセッサである。メモリ906は、RAM(Random Access Memory)などを用いて実現される主記憶装置である。ストレージデバイス908は、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、メモリカード、又はROM(Read Only Memory)などを用いて実現される補助記憶装置である。
【0094】
入出力インタフェース910は、コンピュータ900と入出力デバイスとを接続するためのインタフェースである。例えば入出力インタフェース910には、キーボードなどの入力装置や、ディスプレイ装置などの出力装置が接続される。
【0095】
ネットワークインタフェース912は、コンピュータ900をネットワークに接続するためのインタフェースである。このネットワークは、LAN(Local Area Network)であってもよいし、WAN(Wide Area Network)であってもよい。
【0096】
ストレージデバイス908は、情報処理装置1等の各機能構成部を実現するプログラム(前述したアプリケーションを実現するプログラム)を記憶している。プロセッサ904は、このプログラムをメモリ906に読み出して実行することで、情報処理装置1等の各機能構成部を実現する。
【0097】
プロセッサの各々は、図面を用いて説明されたアルゴリズムをコンピュータに行わせるための命令群を含む1又はそれ以上のプログラムを実行する。このプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)又は実体のある記憶媒体(tangible storage medium)に格納されてもよい。限定ではなく例として、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、又はその他の形式の伝搬信号を含む。
【0098】
なお、本開示は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0099】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
合成開口レーダ(SAR)を用いて地表を撮像することで得られた画像を取得する取得部と、
取得された前記画像を用いた干渉解析において、解析精度の向上又は低下に影響し得る前記画像の画像領域を推定する推定部と、
推定された前記画像領域に基づいて、前記干渉解析の対象である解析対象領域を設定する設定部と、
前記解析対象領域に対する干渉解析を行う解析部と、を備える
情報処理装置。
(付記2)
前記推定部は、地表周辺の状況を示す周辺情報に基づいて、前記解析精度を向上させ得る第1画像領域を推定する第1推定部を備え、
前記設定部は、前記第1画像領域を含むように前記解析対象領域を設定する
付記1に記載の情報処理装置。
(付記3)
前記第1推定部は、地表周辺を撮像した光学画像及び地表面の等高線図の少なくとも一方を前記周辺情報として取得し、取得した前記周辺情報に基づいて地表における土砂堆積領域を抽出し、前記土砂堆積領域を前記第1画像領域として推定する
付記2に記載の情報処理装置。
(付記4)
前記推定部は、地表周辺の状況を示す周辺情報に基づいて、前記解析精度を低下させ得る第2画像領域を推定する第2推定部を備え、
前記設定部は、前記第2画像領域を含まないように前記解析対象領域を設定する
付記1~3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
(付記5)
前記第2推定部は、飛翔体の撮像部から撮像された地表面のマルチスペクトル画像を前記周辺情報として取得し、前記マルチスペクトル画像に基づき算出される植生指標に基づいて植生領域を抽出し、前記植生領域を前記第2画像領域として推定する
付記4に記載の情報処理装置。
(付記6)
前記第2推定部は、前記合成開口レーダから地表面に照射される電波の反射強度を前記周辺情報として取得し、前記反射強度に基づいて水域を抽出し、前記水域を前記第2画像領域として推定する
付記4又は5に記載の情報処理装置。
(付記7)
前記第2推定部は、前記地表の標高を示す数値標高モデルを前記周辺情報として取得し、前記合成開口レーダを有する飛翔体の位置を示す位置情報と、前記数値標高モデルとに基づいて、前記画像における倒れ込み発生領域を抽出し、前記倒れ込み発生領域を前記第2画像領域として推定する
付記4~6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
(付記8)
前記設定部は、前記解析対象領域の大きさが所定の範囲内となるように前記解析対象領域を設定する
付記1~7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
(付記9)
前記干渉解析の結果を表示部に表示させる表示制御部をさらに備え、
前記表示制御部は、設定された解析対象領域における地表面の状態変化を表示させる
付記1~8のいずれか1項に記載の情報処理装置。
(付記10)
前記設定部は、ユーザの入力を受け付けて前記解析対象領域を設定する
付記1~9のいずれか1項に記載の情報処理装置。
(付記11)
コンピュータが、
合成開口レーダ(SAR)を用いて地表を撮像することで得られた画像を取得する取得ステップと、
取得された前記画像を用いた干渉解析において、解析精度の向上又は低下に影響し得る前記画像の画像領域を推定する推定ステップと、
推定された前記画像領域に基づいて、前記干渉解析の対象である解析対象領域を設定する設定ステップと、
前記解析対象領域に対する干渉解析を行う解析ステップと、を実行する
情報処理方法。
(付記12)
前記推定ステップは、地表周辺の状況を示す周辺情報に基づいて、前記解析精度を向上させ得る第1画像領域を推定する第1推定ステップを含み、
前記設定ステップでは、前記第1画像領域を含むように前記解析対象領域を設定する
付記11に記載の情報処理方法。
(付記13)
合成開口レーダ(SAR)を用いて地表を撮像することで得られた画像を取得する取得ステップと、
取得された前記画像を用いた干渉解析において、解析精度の向上又は低下に影響し得る前記画像の画像領域を推定する推定ステップと、
推定された前記画像領域に基づいて、前記干渉解析の対象である解析対象領域を設定する設定ステップと、
前記解析対象領域に対する干渉解析を行う解析ステップと、をコンピュータに実行させる
プログラム。
(付記14)
前記推定ステップは、地表周辺の状況を示す周辺情報に基づいて、前記解析精度を向上させ得る第1画像領域を推定する第1推定ステップを含み、
前記設定ステップでは、前記第1画像領域を含むように前記解析対象領域を設定する
付記13に記載のプログラム。
【符号の説明】
【0100】
1、110 情報処理装置
2、102 推定部
10、100 取得部
11 第1推定部
12 第2推定部
13、103 設定部
14、104 解析部
15 表示制御部
16 入力部
17 出力部
19 記憶部
191 周辺情報
5 衛星
20 アンテナ部
30 情報処理システム
900 コンピュータ
902 バス
904 プロセッサ
906 メモリ
908 ストレージデバイス
910 入出力インタフェース
912 ネットワークインタフェース
N ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6