(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082432
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】フィルム切断装置、フィルム切断方法、及び非水電解質二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
B26D 3/00 20060101AFI20240613BHJP
B26D 7/14 20060101ALI20240613BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20240613BHJP
B26D 1/08 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B26D3/00 601B
B26D7/14
H01M10/058
B26D1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196279
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】小川 浩
(72)【発明者】
【氏名】村上 天志
(72)【発明者】
【氏名】安井 大吉
【テーマコード(参考)】
3C027
5H029
【Fターム(参考)】
3C027AA06
3C027AA09
3C027AA18
5H029AJ14
5H029CJ04
5H029CJ30
5H029DJ04
5H029EJ12
5H029HJ00
5H029HJ04
(57)【要約】
【課題】装置部品及びフィルムへの異物等が付着するのを抑制でき、頻繁なメンテナンスが不要になるとともに、切断後のフィルム品質に優れたフィルム切断装置、フィルム切断方法、及び当該方法を用いた非水電解質二次電池の製造方法を提供する。
【解決手段】フィルム2の切断予定ラインLに沿った位置で、切断予定ラインLの両側でフィルム2を支持する一対の支持部3,3と、フィルム2の一面2a側に接する先端4a側に複数の鋸歯体からなる鋸刃41を有し、切断予定ラインLに沿ってフィルム2を切断する押切刃4と、一対の支持部3,3に支持されたフィルム2に張力を付加する張力付加部5と、を備え、張力付加部5によってフィルム2に張力を付加した状態で、押切刃4が、フィルム2の切断予定ラインLに鋸刃41を突き通すことにより、フィルム2を切断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムを切断予定ラインに沿って切断するフィルム切断装置であって、
前記フィルムの前記切断予定ラインに沿った位置で、該切断予定ラインの両側で前記フィルムを支持する一対の支持部と、
前記フィルムの一面側に接する先端側に複数の鋸歯体からなる鋸刃を有し、前記切断予定ラインに沿って前記フィルムを切断する押切刃と、
前記一対の支持部に支持された前記フィルムに張力を付加する張力付加部と、を備え、
前記張力付加部によって前記フィルムに張力を付加した状態で、前記押切刃が、前記フィルムの前記切断予定ラインに前記鋸刃を突き通すことにより、前記フィルムを切断することを特徴とするフィルム切断装置。
【請求項2】
前記押切刃は、前記鋸刃における前記複数の鋸歯体の各々の刃先角度が90°以下であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム切断装置。
【請求項3】
前記押切刃は、前記鋸刃における前記複数の鋸歯体の配列ピッチが0.6~3.9mmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフィルム切断装置。
【請求項4】
前記押切刃は、前記鋸刃の刃先長が0.6~3.9mmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフィルム切断装置。
【請求項5】
前記押切刃は、少なくとも前記鋸刃の位置に表面コーティングが施されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフィルム切断装置。
【請求項6】
前記押切刃における前記表面コーティングが、ダイヤモンドコーティング、フッ素コーティング又はシリコンコーティングであることを特徴とする請求項5に記載のフィルム切断装置。
【請求項7】
前記張力付加部は、ダンサーロール、パウダブレーキ、パウダクラッチ、ばね機構、磁力反発機構及びねじ離間機構のうちの何れかの手段により、前記一対の支持部に支持された前記フィルムに張力を付加することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフィルム切断装置。
【請求項8】
前記フィルムが、一軸延伸フィルムであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフィルム切断装置。
【請求項9】
前記フィルムが、ポリオレフィンフィルムであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフィルム切断装置。
【請求項10】
前記押切刃による切断後の前記フィルムにおける切断部の断面形状が、前記フィルムの両面側から見た形状で、谷部の角度が90°以上の鋸歯状であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフィルム切断装置。
【請求項11】
フィルムを切断予定ラインに沿って切断するフィルム切断方法であって、
前記フィルムの前記切断予定ラインに沿った位置で、該切断予定ラインの両側で前記フィルムを一対の支持部で支持し、前記一対の支持部で支持した前記フィルムに張力を付加した状態で、押切刃の先端側に位置する鋸刃を前記フィルムの前記切断予定ラインに突き通すことにより、前記フィルムを切断することを特徴とするフィルム切断方法。
【請求項12】
正極と負極との間にセパレータ及び非水電解質を介在させた非水電解質二次電池を製造する方法であって、
フィルムをセル単位のサイズに切断することで前記セパレータを得るセパレータ加工工程を含み、
前記セパレータ加工工程は、請求項1に記載のフィルム切断装置、又は、請求項11に記載のフィルム切断方法により、前記フィルムを切断することを特徴とする非水電解質二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム切断装置、フィルム切断方法、及び非水電解質二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、非水電解質二次電池等に用いられるセパレータとしては、一般的に、一軸延伸フィルムや二軸延伸フィルム等のポリオレフィンからなるフィルムが用いられる。これらのうち、一軸延伸フィルムは、溶融させた原料樹脂をフラットな状態で押し出し、冷却することで成形したフィルムを、さらに、縦方向に引っ張ることで分子が伸びて整列した状態とすることによって製造される。このような一軸延伸フィルムは、上記のように分子が伸びきっているため、この延伸方向では伸びがほとんど生じず、優れた強度を有する一方、延伸方向に沿った方向で引き裂け易いという特徴を有する。
【0003】
電子デバイスに用いられるセパレータを製造する方法として、例えば、刃先が直線状とされた鋭利な刃を加熱し、この刃を用いてセパレータ用の樹脂基材を切断する方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、特許文献1に開示された技術では、溶融した樹脂が刃先やセパレータに付着し、定期的な清掃やメンテナンスが必要になるとともに、切断後のセパレータ品質に劣るという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非水電解質二次電池等のセパレータの材料として用いられることの多い一軸延伸フィルムは、上述したように、一方向に引き裂け易いという特徴がある。このため、一軸延伸フィルムを切断して、例えば、非水電解質二次電池のセパレータ等に加工する場合には、一般的に、溶断、熱溶断、電熱線カット又はニクロム線等の手段によるヒートカットが採用されている。しかしながら、ヒートカットによる方法では、フィルムを構成する樹脂がヒーター線に付着しやすいため、上記同様、切断装置の定期的な清掃やメンテナンスが必要となり、清掃やメンテナンスを怠った場合には、切断後のフィルム品質が劣化するという問題がある。
【0006】
また、シャーカット(剪断)によって一軸延伸フィルム等の樹脂フィルムを切断することで、非水電解質二次電池等に用いられるセパレータを製造することも考えられる。しかしながら、シャーカットは、刃物同士を擦り合わせることで被切断物を切断する方法なので、金属摩耗が生じるため、定期的な刃物間の当接調整や、刃物の交換が必要となることから、運転コストが増大するという問題がある。また、金属摩耗によって金属異物が発生し、これがセパレータに付着した場合には、電池特性の低下を招く懸念もある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、装置部品及びフィルムへの異物等が付着するのを抑制でき、頻繁なメンテナンスが不要になるとともに、切断後のフィルム品質に優れたフィルム切断装置、フィルム切断方法、及び当該方法を用いた非水電解質二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の態様を有する。
[1] フィルムを切断予定ラインに沿って切断するフィルム切断装置であって、前記フィルムの前記切断予定ラインに沿った位置で、該切断予定ラインの両側で前記フィルムを支持する一対の支持部と、前記フィルムの一面側に接する先端側に複数の鋸歯体からなる鋸刃を有し、前記切断予定ラインに沿って前記フィルムを切断する押切刃と、前記一対の支持部に支持された前記フィルムに張力を付加する張力付加部と、を備え、前記張力付加部によって前記フィルムに張力を付加した状態で、前記押切刃が、前記フィルムの前記切断予定ラインに前記鋸刃を突き通すことにより、前記フィルムを切断することを特徴とするフィルム切断装置。
[2] 前記押切刃は、前記鋸刃における前記複数の鋸歯体の各々の刃先角度が90°以下であることを特徴とする上記[1]に記載のフィルム切断装置。
[3] 前記押切刃は、前記鋸刃における前記複数の鋸歯体の配列ピッチが0.6~3.9mmであることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のフィルム切断装置。
[4] 前記押切刃は、前記鋸刃の刃先長が0.6~3.9mmであることを特徴とする上記[1]~[3]の何れかに記載のフィルム切断装置。
[5] 前記押切刃は、少なくとも前記鋸刃の位置に表面コーティングが施されていることを特徴とする上記[1]~[4]の何れかに記載のフィルム切断装置。
[6] 前記押切刃における前記表面コーティングが、ダイヤモンドコーティング、フッ素コーティング又はシリコンコーティングであることを特徴とする上記[5]に記載のフィルム切断装置。
[7] 前記張力付加部は、ダンサーロール、パウダブレーキ、パウダクラッチ、ばね機構、磁力反発機構及びねじ離間機構のうちの何れかの手段により、前記一対の支持部に支持された前記フィルムに張力を付加することを特徴とする上記[1]~[6]の何れかに記載のフィルム切断装置。
[8] 前記フィルムが、一軸延伸フィルムであることを特徴とする上記[1]~[7]の何れかに記載のフィルム切断装置。
[9] 前記フィルムが、ポリオレフィンフィルムであることを特徴とする上記[1]~[8]の何れかに記載のフィルム切断装置。
[10] 前記押切刃による切断後の前記フィルムにおける切断部の断面形状が、前記フィルムの両面側から見た形状で、谷部の角度が90°以上の鋸歯状であることを特徴とする上記[1]~[9]の何れかに記載のフィルム切断装置。
[11] フィルムを切断予定ラインに沿って切断するフィルム切断方法であって、前記フィルムの前記切断予定ラインに沿った位置で、該切断予定ラインの両側で前記フィルムを一対の支持部で支持し、前記一対の支持部で支持した前記フィルムに張力を付加した状態で、押切刃の先端側に位置する鋸刃を前記フィルムの前記切断予定ラインに突き通すことにより、前記フィルムを切断することを特徴とするフィルム切断方法。
[12] 正極と負極との間にセパレータ及び非水電解質を介在させた非水電解質二次電池を製造する方法であって、フィルムをセル単位のサイズに切断することで前記セパレータを得るセパレータ加工工程を含み、前記セパレータ加工工程は、上記[1]に記載のフィルム切断装置、又は、上記[11]に記載のフィルム切断方法により、前記フィルムを切断することを特徴とする非水電解質二次電池の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るフィルム切断装置によれば、上記のように、フィルムを支持する一対の支持部と、フィルムの一面側に接する鋸刃を有した押切刃と、フィルムに張力を付加する張力付加部とを備えた構成を採用している。これにより、鋸刃が接触するのはフィルムのみとなることから、押切刃の摩耗等の発生が抑制されるので、押切刃や切断後のフィルムに摩耗粉等が付着するのを防止できる。また、加熱手段が不要なので、溶融した樹脂が押切刃や切断後のフィルムに付着することがない。
従って、装置部品及びフィルムへの異物等が付着するのを抑制でき、頻繁なメンテナンスが不要になるとともに、切断後のフィルム品質に優れたフィルム切断装置が実現できる。
【0010】
また、本発明に係るフィルム切断方法によれば、上記のように、フィルムを一対の支持部で支持し、フィルムに張力を付加した状態で、押切刃の先端側に位置する鋸刃をフィルムの切断予定ラインに突き通す方法を採用している。これにより、上記同様、装置部品及びフィルムに異物等が付着するのを抑制でき、製造時における装置の頻繁なメンテナンスが不要になるとともに、優れたフィルム品質が得られる。
【0011】
また、本発明の非水電解質二次電池の製造方法によれば、上述した本発明に係るフィルム切断装置又はフィルム切断方法によってフィルムを切断するセパレータ加工工程を備えた方法である。これにより、頻繁なメンテナンスを必要とすることなく、切断後のフィルム品質に優れたセパレータが得られるので、電池特性にも優れた非水電解質二次電池を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態であるフィルム切断装置、フィルム切断方法、及び非水電解質二次電池の製造方法について模式的に説明する図であり、フィルムの切断予定ラインの両側に配置した一対の支持部によってフィルムを支持し、張力付加部によってフィルムに張力を付加しながら、フィルムの切断予定ラインに向けて押切刃の鋸刃を押しつける動作を示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態であるフィルム切断装置、フィルム切断方法、及び非水電解質二次電池の製造方法について模式的に説明する図であり、先端側に複数の鋸歯体からなる鋸刃を有した押切刃全体の構成を示す平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態であるフィルム切断装置、フィルム切断方法、及び非水電解質二次電池の製造方法について模式的に説明する図であり、押切刃の先端側の鋸刃を拡大して示す図で、複数の鋸歯体の配列ピッチ、刃先長及び刃先角度について説明する平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態であるフィルム切断装置、フィルム切断方法、及び非水電解質二次電池の製造方法について模式的に説明する図であり、押切刃による切断後のフィルムの形状を拡大して示す部分平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態であるフィルム切断装置、フィルム切断方法、及び非水電解質二次電池の製造方法の実施例について説明する図であり、押切刃の鋸刃における複数の鋸歯体の配列ピッチ及び刃先長を変更しながら、切断部の断面形状を観察するための試験装置を示す概略図である。
【
図6】本発明の一実施形態であるフィルム切断装置、フィルム切断方法、及び非水電解質二次電池の製造方法の実施例について説明する図であり、
図5に示した試験装置で条件を変更しながら切断処理を実施した各フィルムの断面形状を示す写真である。
【
図7】本発明の一実施形態であるフィルム切断装置、フィルム切断方法、及び非水電解質二次電池の製造方法の実施例について説明する図であり、フィルムを切断した後に、切断面を横幅方向で引っ張ることで断裂の発生の有無を確認するための試験装置を示す概略図である。
【
図8】本発明の一実施形態であるフィルム切断装置、フィルム切断方法、及び非水電解質二次電池の製造方法の実施例について説明する図であり、
図8(a),(b)は、
図5に示した試験装置で条件を変更しながら切断処理を実施した各フィルムの断面形状と、押切刃の鋸刃を構成する複数の鋸歯体の配列ピッチ及び刃先長との関係を示した模式図である。
【
図9】本発明の一実施形態であるフィルム切断装置、フィルム切断方法、及び非水電解質二次電池の製造方法について模式的に説明する図であり、本発明に係る切断装置及び切断方法によってフィルムを切断することで得られたセパレータを含む非水電解質二次電池の構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るフィルム切断装置、フィルム切断方法、及び非水電解質二次電池の製造方法の実施形態について説明する。
【0014】
<フィルム>
まず、本実施形態のフィルム切断装置、フィルム切断方法、及び非水電解質二次電池の製造方法における被切断物(ワーク)であるフィルムについて説明する。
【0015】
本実施形態における被切断物であるフィルムは、例えば、ポリオレフィンフィルム等からなり、非水電解質二次電池等の電子デバイスを構成するセパレータ等の材料に用いられるものである(
図1等に示すフィルム2、及び、
図9中に示した非水電解質二次電池100に備えられるセパレータ102も参照)。
【0016】
上記のようなフィルム2としては、例えば、乾式法によって得られたポリエチレン又はポリプロピレン等からなる単層の一軸延伸フィルムや、上記同様に乾式法で得られたポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層構造からなる一軸延伸フィルム等が挙げられる。
また、フィルム2としては、湿式法によって得られたポリエチレン又はポリプロピレン等からなる単層の二軸延伸フィルム等も挙げられる。
さらに、フィルム2の厚さとしても、特に限定されず、例えば、電子デバイス等のセパレータに適用可能な8~30μm程度の厚さを有するものが挙げられる。
【0017】
なお、本実施形態のフィルム切断装置及びフィルム切断方法(並びに非水電解質二次電池の製造方法)が適用可能なフィルムは、上記にのみ限定されるものではなく、他の材料や層構造、延伸構造からなる樹脂フィルムの切断加工にも用いることが可能なものである。
【0018】
<フィルム切断装置>
以下、本実施形態のフィルム切断装置の構成について、
図1~
図4を適宜参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のフィルム切断装置1を示す模式図であり、フィルム2の切断予定ラインLの両側に配置した一対の支持部3,3によってフィルム2を支持し、張力付加部5によってフィルム2に張力を付加しながら、フィルム2の切断予定ラインLに向けて押切刃4の鋸刃41を押しつける動作を示す概略図である。
また、
図2は、先端4a側に複数の鋸歯体41aからなる鋸刃41を有した押切刃4全体の構成を示す平面図であり、
図3は、押切刃4の先端4a側の鋸刃41の拡大図で、複数の鋸歯体41aの配列ピッチP、刃先長D及び刃先角度θについて説明する平面図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態のフィルム切断装置1は、フィルム2を切断予定ラインLに沿って切断するものである。このフィルム切断装置1は、フィルム2を支持する一対の支持部3,3と、フィルム2を切断する押切刃4と、フィルム2に張力を付加する張力付加部5とを備え、概略構成される。
【0020】
そして、本実施形態のフィルム切断装置1は、一対の支持部3及び張力付加部5によってフィルム2に張力を付加した状態で、押切刃4が、フィルム2の切断予定ラインLに鋸刃41を突き通すことにより、フィルム2を切断する。
【0021】
一対の支持部3,3は、フィルム2の切断予定ラインLに沿った位置で、切断予定ラインLの両側でフィルム2を支持する。
図1に示す例の一対の支持部3,3は、それぞれ、第1部材31及び第2部材32を備え、これらの間でフィルム2を支持できる構成とされている。また、
図1中では図示を省略しているが、これら第1部材31及び第2部材32は、図示略のばね機構や電磁機構等により、図中において上下方向に移動することで、フィルム2を支持したり、開放したりすることが可能な構成とされている。
【0022】
また、一対の支持部3,3は、詳細を後述する張力付加部5により、支持したフィルム2を引っ張る方向で張力を付加することが可能な構成とされている。
【0023】
一対の支持部3の材質や形状としては、特に限定されず、例えば、鉄鋼材料等の高強度材料からなるブロック状の部材等を用い、図示略の支持機構で支持したもの等を何ら制限無く採用できる。
【0024】
押切刃4は、上述したように、切断予定ラインLに沿ってフィルム2を切断するものであり、
図1~
図3に示すように、フィルム2の一面2a側に接する先端4a側に複数の鋸歯体41aからなる鋸刃41を有してなる。
【0025】
図2及び
図3に示すように、押切刃4が有する鋸刃41は、先端41b側が頂点とされた概略三角形状の複数の鋸歯体41aが、均一なピッチで配列されている。また、
図1~
図3に示す例の鋸刃41は、基端41c側から先端41b側に向かうに従って漸次薄肉となり、先端41bが尖った形状を有している。
【0026】
図3中に示した複数の鋸歯体41aの刃先角度θは、特に限定されないが、それぞれ90°以下であることが好ましい。
また、複数の鋸歯体41aの配列ピッチPとしても、特に限定されないが、0.6~3.9mmであることが好ましい。
さらに、鋸刃41の刃先長、即ち、複数の鋸歯体41aの刃先長Dとしても、特に限定されないが、0.6~3.9mmであることが好ましい。
【0027】
本実施形態においては、押切刃4が複数の鋸歯体41aを有する鋸刃41を備え、さらに、複数の鋸歯体41aの刃先角度θ、配列ピッチP及び刃先長Dを上記の最適範囲に調整することで、張力付加部5でフィルム2に付加する張力を低めに設定した場合であっても、安定した切断処理が可能となる。
これにより、フィルム2として一軸延伸フィルムを用い、このフィルム2を切断した場合であっても、引き裂きが生じるのを防止することが可能となる。
【0028】
また、上記範囲の刃先角度θ、配列ピッチP及び刃先長Dを有する鋸刃41を備えた押切刃4の全体の刃厚(全厚み)としては、特に限定されず、薄いフィルム2を切断するのに最適な刃厚のものを採用すればよく、例えば、0.1~10mm程度とすることができる。
【0029】
押切刃4は、さらに、少なくとも鋸刃41の位置に表面コーティングが施されていることが好ましい。鋸刃41の位置が表面コーティングされていることで、フィルム2を切断する際の摩擦が低減され、耐久性がより高められる。
【0030】
押切刃4における上記の表面コーティングの種類としては、特に限定されず、フィルム2を構成する樹脂材料の種類等を考慮しながら適宜採用することができる。このような表面コーティングとしては、例えば、ダイヤモンドコーティング、フッ素コーティング又はシリコンコーティング等を採用することが可能である。
【0031】
また、上記の表面コーティングは、少なくとも鋸刃41の位置に施されていればよいが、例えば、押切刃4全体に施されていても構わない。
【0032】
なお、押切刃4の後端4b側は、
図1中における上下方向で押切刃4を移動させることでフィルム2の切断動作を行うための、図示略の切断駆動機構に取り付けられている。
【0033】
押切刃4は、上記構成により、フィルム2に対して、一面2a側から複数の鋸歯体41aが突き通すように入り込むことで、フィルム2を押し切るように切断する。
【0034】
張力付加部5は、一対の支持部3,3で支持したフィルム2に対し、切断予定ラインLの両側からフィルム2を引っ張る方向で張力を付加する。具体的には、張力付加部5は、詳細な図示は省略するが、
図1中に示す矢印の方向で一対の支持部3,3を離間させるか、あるいは、一対の支持部3,3の外側からフィルム2を引っ張る力を印加することにより、フィルム2に所定の張力を付加する。
【0035】
張力付加部5において、一対の支持部3,3に支持されたフィルム2に張力を付与する手段としては、特に限定されず、適宜採用することが可能である。このような手段としては、例えば、ダンサーロール、パウダブレーキ、パウダクラッチ、ばね機構、磁力反発機構及びねじ離間機構のうちの何れかの手段を採用することが可能である。
【0036】
上記のうち、張力付加部5にダンサーロールを採用する場合には、図示は省略するが、例えば、フィルム2を上下に移動させる従動ロールを一対の支持部3,3の外部に配置し、従動ロールの位置を上下左右に変更することでフィルム2に張力を付加する構成とすればよい。
張力付加部5にダンサーロールを採用する場合、上記の従動ロールを移動させる手段として、例えば、空圧シリンダー、スプリング、重り、又は磁気制御等の手段を採用でき、これらの手段によって従動ロールの位置を適宜変更することで、フィルム2に付加される張力を調整できる。
なお、このような構成を採用する場合には、一対の支持部3,3を構成する第1部材31と第2部材32との間に若干の隙間を設け、フィルム2を弛緩状態とする必要がある。
【0037】
また、張力付加部5にトルク制御を採用する場合には、図示は省略するが、例えば、パウダブレーキやパウダクラッチ等の手段により、フィルム2に対して直接負荷を加え、張力を負荷する構成とすればよい。この場合には、例えば、パウダブレーキ又はパウダクラッチに印加する電流値を変更することで、フィルム2に付加される張力を調整できる。
このような構成を採用する場合においても、ダンサーロールを採用した場合と同様、一対の支持部3,3を構成する第1部材31と第2部材32との間に若干の隙間を設け、フィルム2を弛緩状態とする必要がある。
【0038】
また、上記のばね機構を採用する場合には、例えば、一対の支持部3,3の間にばねを配置することで、一対の支持部3,3が離間する方向のばね力を付与する構成とすればよい。この場合には、例えば、ねじ等によってばねの有効長を変更する等の方法で、フィルム2に付加される張力を調整する構成を採用できる。
【0039】
また、上記の磁力反発機構を採用する場合には、例えば、一対の支持部3,3におけるそれぞれ対向する面に磁気コイルを配置することで、一対の支持部3,3が離間する方向の磁力を付与する構成とすればよい。この場合には、例えば、磁気コイルに印加する電流値を変更することで、フィルム2に付加される張力を調整できる。
【0040】
また、上記のねじ離間機構を採用する場合には、例えば、一対の支持部3,3の両方にねじ孔を設け、これらねじ孔にねじを螺入することで、一対の支持部3,3を離間させる方向で移動させる構成とすればよい。この場合には、ねじ山のピッチ等にもよるが、例えば、ねじを回転させることで一対の支持部3,3の離間距離を変更することで、フィルム2に付加される張力を調整できる。
【0041】
張力付加部5によってフィルム2に生じさせる張力(N)としては、特に限定されず、例えば、フィルム2が弛むことなく適正に張られた状態となるよう、調整された張力であればよい。このような張力としては、上記のような、厚さが8~30μmのポリオレフィンフィルムをフィルム2に用いた場合には、例えば、0.1~50N程度とすることができる。
【0042】
なお、詳細な図示は省略するが、本実施形態のフィルム切断装置1を用い、例えば、フィルム2の張力(N)を可能な限り高張力に設定した場合には、一方の支持部3のみでフィルム2を片持ち支持した場合でも、フィルム2を切断することが可能である。
【0043】
また、例えば、一対の支持部3,3構成する第1部材31及び第2部材32のうち、フィルム2の下方に配置される一対の第2部材32の上端のみでフィルム2をした場合であっても、フィルム2の張力(N)を一定以上に保持することで、押切刃4による切断が可能である。
【0044】
また、本実施形態では、上述した一対の支持部3,3及び張力付加部5に加え、さらに、例えば、図示略の第2支持部を設けた構成を採用してもよい。この場合、図示略の第2支持部を、一対の支持部3,3よりも押切刃4に近い位置に配置することが好ましい。また、第2支持部は、押切刃4の両面側に配置されていてもよいし、片面側にのみ配置された構成であってもよい。
【0045】
上記のような第2支持部を設けた構成を採用する場合、押切刃4と、一対の支持部3,3のうちの一方の支持部3との間の距離は、特に限定されず、押切刃4と第2支持部とが接触しない程度の距離とすればよい。一方、フィルム2を可能な限り切断し易くする観点からは、フィルム2の張力(N)を一定以上に保持する必要が生じる可能性もあるため、押切刃4と一方の支持部3との間の距離は、離れすぎないことが好ましい。このような押切刃4と一方の支持部3との間の距離は、例えば、0.1~100mmの範囲とすることができる。また、押切刃4と一方の支持部3との間の距離は、0.5~20mmの範囲がより好ましく、1~5mmの範囲がさらに好ましい。
【0046】
また、本実施形態では、例えば、一対の支持部3,3を構成する第1部材31の上下方向の移動と、押切刃4の上下方向の移動とを同期させた場合には、第1部材31に刃物カバーとしての機能を付加することが可能となる。
【0047】
ここで、
図1中において、一対の支持部3,3の外側にはみ出るフィルム2の端部付近の長さは、特に限定されないが、例えば、切断後のフィルム2の端部を、図示略の把持部で把持できる程度の長さとすればよい。
【0048】
なお、本実施形態のフィルム切断装置1においては、
図4の平面図に示すように、押切刃4による切断後のフィルム2における切断部の断面形状が、フィルム2の両面側から見た形状で、谷部の角度が90°以上の鋸歯状となるように、押切刃4の鋸刃41の形状及び寸法を最適化することが好ましい。即ち、上述した押切刃4の鋸刃41における複数の鋸歯体41aの刃先角度θ、配列ピッチP及び刃先長D等を適宜調整することで、切断後のフィルム2における切断部の断面形状を調整することが好ましい。
【0049】
フィルム2における切断部の谷部を上記角度とすることで、断面がフラットに近づいた良好なものとなるので、特に、非水電解質二次電池等の電子デバイスに用いられるセパレータに適用した場合に、良好なデバイス特性が得られる。
【0050】
本実施形態のフィルム切断装置1によれば、上記構成により、押切刃4の鋸刃41が接触するのがフィルム2のみとなることから、押切刃4の摩耗等の発生が抑制されるので、押切刃4や切断後のフィルム2に摩耗粉等が付着するのを防止できる。また、加熱手段が不要なので、溶融した樹脂が押切刃4や切断後のフィルム2に付着することがない。これにより、フィルム切断装置1を構成する部品やフィルム2への異物等が付着するのを抑制できるので、頻繁なメンテナンスが不要になり、また、切断後の優れたフィルム品質が確保できる。
【0051】
<フィルム切断方法>
以下、本実施形態のフィルム切断方法について説明する。
なお、以下の説明においては、
図1~
図3に示した本実施形態のフィルム切断装置1を使用してフィルム2を切断する方法を例に挙げて説明するとともに、既に説明したフィルム切断装置1の詳細な構成及び動作形態等については、その説明を省略する場合がある。
【0052】
本実施形態のフィルム切断方法は、フィルム2を切断予定ラインLに沿って切断する方法である。
本実施形態の切断方法においては、フィルム切断装置1を用い、フィルム2の切断予定ラインLに沿った位置で、この切断予定ラインLの両側でフィルム2を一対の支持部3,3で支持し、一対の支持部3,3で支持したフィルム2に張力を付加した状態とする。この状態で、押切刃4の先端4a側に位置する鋸刃41をフィルム2の切断予定ラインLに突き通すことにより、フィルム2を押し切って切断する。
【0053】
本実施形態のフィルム切断方法においては、フィルム切断装置1を用い、上記のように、フィルム2に張力を付加した状態で、押切刃4の鋸刃41をフィルム2の切断予定ラインLに突き通す方法なので、上記同様、フィルム切断装置1を構成する部品や切断後のフィルム2に異物等が付着するのを抑制できる。これにより、製造時におけるフィルム切断装置1の頻繁なメンテナンスが不要になるとともに、優れたフィルム品質が得られる。
【0054】
<非水電解質二次電池の製造方法>
以下、本実施形態の非水電解質二次電池の製造方法について説明する。
なお、以下の説明においても、
図1~
図3に示した本実施形態のフィルム切断装置1を使用してフィルム2を切断し、セパレータを得る方法を例に挙げて説明するとともに、既に説明したフィルム切断装置1の詳細な構成及び動作形態等については、その説明を省略する。
【0055】
[非水電解質二次電池の構成]
本実施形態の製造方法によって得られる非水電解質二次電池としては、例えば、
図9に示したような、正極101と負極103との間にセパレータ102及び非水電解質104を介在させた構造を有した、定置型の非水電解質二次電池100が挙げられる。
以下、非水電解質二次電池100の概略構成について説明する。
【0056】
図9に例示した非水電解質二次電池100は、外装体105の内部に、上記の正極101、負極103、セパレータ102及び非水電解質104が収容されてなる。
正極101は、板状の正極集電体111と、その両面上に設けられた正極活物質層112とを有する。正極活物質層112は、正極集電体111の表面の一部に存在する。正極集電体111の表面の縁部は、正極活物質層112が存在しない正極集電体露出部113である。正極集電体露出部113の表面には、図示略の集電体被覆層が存在していてもよいし、集電体被覆層が存在しなくてもよい。また、正極集電体露出部113の任意の箇所には、図示略の端子用タブが電気的に接続する。
【0057】
負極103は、板状の負極集電体131と、その両面上に設けられた負極活物質層132とを有する。負極活物質層132は負極集電体131の表面の一部に存在する。負極集電体131の表面の縁部は、負極活物質層132が存在しない負極集電体露出部133である。負極集電体露出部133の任意の箇所には、図示略の端子用タブが電気的に接続する。
【0058】
セパレータ102は、負極103と正極1011との間に位置することで、両電極間の短絡等を防止する。
本実施形態のセパレータ102は、上述したフィルム2を切断して得られるものであり、フィルム2と同様、例えば、ポリオレフィンフィルム等から構成される。
セパレータ102の一方又は両方の表面上には、図示略の絶縁層を設けてもよい。
【0059】
正極101、負極103及びセパレータ102の形状は特に限定されず、例えば、平面視矩形状とされる。
【0060】
ここで、
図9においては、非水電解質二次電池の一例として、負極/セパレータ/正極/セパレータ/負極の順に積層した構造を示しているが、これに限定されるものではなく、電極及びセパレータの数は適宜変更可能である。例えば、正極101は1枚以上で設けてあればよく、目的とする電池容量に応じて任意の数の正極101を設けることができる。
なお、負極103及びセパレータ102は、正極101の数よりも1枚多く設け、最外層が負極103となるように積層する。
【0061】
非水電解質104は、正極101と負極103との間を満たすように、外装体105の内部に収容する。非水電解質104としては、例えば、リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタ等において用いられる公知の非水電解液を使用できる。
非水電解質104は、有機溶媒と電解質塩とを含み、さらに、その他の添加剤を含んでもよく、添加剤に由来する残留物又は痕跡を含んでも構わない。
【0062】
また、本実施形態では、上述した本実施形態のフィルム切断装置1を使用し、フィルム2を切断して得られるセパレータを適用可能な非水電解質二次電池として、
図9に示すようなパウチ型の非水電解質二次電池100を例示しているが、これには限定されない。詳細な図示は省略するが、例えば、円筒型や楕円型の構造を有する捲回式の非水電解質二次電池に対しても、上記のフィルム切断装置1でフィルム2を切断して得られるセパレータを適用することが可能である。
【0063】
[製造方法]
本実施形態の製造方法は、上記のような非水電解質二次電池100を製造する方法である。
即ち、本実施形態の製造方法は、正極101と負極103との間にセパレータ102及び非水電解質104を介在させた非水電解質二次電池100を製造する方法である。本実施形態の製造方法は、フィルム2をセル単位のサイズに切断することでセパレータ102を得るセパレータ加工工程を含む。
そして、セパレータ加工工程は、上述した本実施形態のフィルム切断装置1、又は、本実施形態のフィルム切断方法により、フィルム2を切断してセパレータ102を得る。
【0064】
本実施形態の製造方法においては、上記のセパレータ加工工程に加え、さらに、正極101、負極103及び外装体105等を公知の方法で組み立てる工程や、非水電解質104を調製する工程等を含む。
【0065】
そして、本実施形態の製造方法においては、例えば、正極101と負極103とを、セパレータ1022を介して交互に積層した電極積層体を作製する。
次いで、上記で得られた電極積層体を、アルミラミネート袋等からなる外装体(筐体)105に封入する。
次いで、非水電解質104を外装体105の内部に注入し、外装体105を密閉することで非水電解質二次電池100を得る。
【0066】
本実施形態の製造方法によれば、セパレータ加工工程が、上述した本実施形態のフィルム切断装置1又はフィルム切断方法により、フィルム2を切断してセパレータ102を得る方法なので、頻繁なメンテナンスが不要となる。
また、本実施形態の製造方法によって得られる非水電解質二次電池100は、上記のセパレータ加工工程で得られた、フィルム品質に優れたセパレータ102を備えてなることから、電池特性に優れたものとなる。
【0067】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態のフィルム切断装置1によれば、上記のように、フィルム2を支持する一対の支持部3,3と、フィルム2の一面2a側に接する鋸刃41を有した押切刃4と、フィルム2に張力を付加する張力付加部5とを備えた構成を採用している。これにより、鋸刃41が接触するのはフィルム2のみとなることから、押切刃4の摩耗等の発生が抑制されるので、押切刃4や切断後のフィルム2に摩耗粉等が付着するのを防止できる。また、加熱手段が不要なので、溶融した樹脂が押切刃4や切断後のフィルム2に付着することがない。従って、装置部品及びフィルム2への異物等が付着するのを抑制でき、頻繁なメンテナンスが不要になるとともに、切断後のフィルム品質に優れたフィルム切断装置1が実現できる。
【0068】
また、本発明に係るフィルム切断方法によれば、上記のように、フィルム2を一対の支持部3,3で支持し、フィルム2に張力を付加した状態で、押切刃4の先端側に位置する鋸刃41をフィルム2の切断予定ラインLに突き通す方法を採用している。これにより、上記同様、装置部品及びフィルム2に異物等が付着するのを抑制でき、製造時の頻繁なメンテナンスが不要になるとともに、優れたフィルム品質が得られる。
【0069】
また、本発明の非水電解質二次電池の製造方法によれば、上述した本発明に係るフィルム切断装置又はフィルム切断方法によってフィルム2を切断するセパレータ加工工程を備えた方法である。これにより、頻繁なメンテナンスを必要とすることなく、切断後のフィルム品質に優れたセパレータ102が得られるので、電池特性にも優れた非水電解質二次電池100を製造することが可能となる。
【0070】
<本発明の他の形態>
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は上記のような特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【実施例0071】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
また、本実施例で採用した各条件は、あくまで一例であり、上記同様、本発明を限定するものではない。
【0072】
<フィルム>
本実施例では、被切断物であるフィルム2として、乾式法によって得られた、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層構造からなる、厚さが20μmの一軸延伸フィルムを用いた。
【0073】
<切断面形状の評価>
本実施例においては、フィルム2を切断したときの切断面の形状について、以下に説明する条件及び方法で評価した。
【0074】
[押切刃の仕様]
本実施例では、
図2及び
図3に示したような鋸刃41を備え、複数の鋸歯体41aの配列ピッチP及び刃先長Dが下記表1に示した仕様を有する4種類の押切刃4を準備した。即ち、本実施例では、鋸刃41における複数の鋸歯体41aの配列ピッチP及び刃先長Dをそれぞれ変更しながら組み合わせることで、下記表1中に示した水準1~水準4の押切刃4を準備した。また、これら水準1~水準4の押切刃4の刃厚は3mmとした。
なお、表1中に示した配列ピッチP及び刃先長Dの数値は、何れも単位はmmである。
【0075】
【0076】
[評価方法]
水準1~水準4の押切刃4を用い、
図5中に示すように、フィルム2に押切刃4の鋸刃41を突き通すようにして、フィルム2の切断処理を実施した。
この際、
図5においては図示を省略しているが、フィルム2に対して、ダンサーロール機構を用いて、フィルム2の長さ方向で張力を付加した。このときのフィルム2に付加する張力は0.2Nとした。
【0077】
そして、フィルム2の切断面形状を顕微鏡写真で確認し、その結果を
図6の写真及び下記表2に示した。
【0078】
【0079】
[評価結果]
図6の顕微鏡写真及び表2に示したように、水準1及び水準3の押切刃を用いた場合には、鋸刃の形状に起因する山谷形状が、山の裾野部分が非常に大きな形状となるか(水準1)、あるいは、山谷の高低差が非常に大きい形状となった(水準3)。また、水準2の押切刃を用いた場合には、谷底の部分からの裂け目が生じていることを確認した(
図5及び
図7の模式図中に示した裂け目Sも参照)。
【0080】
一方、水準4の押切刃を用いた場合には、鋸刃の形状に起因する山谷形状の高低差が小さく、非常に滑らかな断面形状であることが確認できた。これにより、優れたフィルムの断面品質を得るためには、鋸刃を構成する複数の鋸歯体の配列ピッチPを2.0mmとし、且つ、刃先長Dを1.0mmとすることが最適であることが確認できた。
【0081】
<引き裂きの発生の評価>
本実施例においては、フィルム2を切断した後、切断面を引っ張ったときの引き裂きの発生の有無について、以下に説明する条件及び方法で評価した。
【0082】
[押切刃の仕様]
本実施例では、
図2及び
図3に示したような鋸刃41を備え、複数の鋸歯体41aの配列ピッチP及び刃先長Dが下記表3中に示したような組み合わせとされた16種類の押切刃4を準備した。
【0083】
[評価方法]
まず、下記表3に示す仕様の押切刃を用い、
図5中に示すように、フィルム2に押切刃4の鋸刃41を突き通すようにして、フィルム2の切断処理を実施した。
次いで、切断後のフィルム2を用い、
図7に示すように、切断面を横方向(
図7中の矢印を参照)に引っ張ることで、一軸延伸フィルムの延伸方向に沿った方向での引き裂きの発生の有無を確認し、結果を下記表3に示した。
【0084】
【0085】
[評価結果]
表3に示したように、複数の鋸歯体の配列ピッチPが0.5mm、1.0mm又は2.0mmで、且つ、刃先長Dが1.0mm又は2.0mmである鋸刃を有する押切刃を用いた場合には、一軸延伸フィルムの延伸方向に沿った方向での引き裂きが生じないことを確認した。これらの中でも、複数の鋸歯体の配列ピッチPが2.0mm、刃先長Dが1.0mmである場合(上記の水準4の押切刃)には、上記のように、切断面形状が滑らかであり、実使用上、最適で好ましいと考えられる。
【0086】
なお、複数の鋸歯体の配列ピッチPが0.5mmである場合には、切断面形状に問題は無いものの、押切刃の寿命が短くなると考えられる。
【0087】
<押切刃の最適化検討>
上記結果を踏まえ、押切刃の鋸刃を構成する複数の鋸歯体の配列ピッチP及び刃先長Dの最適な範囲について検討した結果を
図8(a),(b)の模式図に示す。
図8(a)に示すように、刃先長Dを一定とし、配列ピッチPを変化させた場合、配列ピッチPが狭くなるほど、切断面をフィルムの一面側からみた平面視形状において、山谷形状の寸法が細かくなる。このため、この谷の箇所の角度が鋭角になることから、この箇所が裂け易くなると考えられる。
一方、
図8(b)に示すように、配列ピッチPを一定とし、刃先長Dを変化させて場合、刃先長Dが短いほど、切断面をフィルムの一面側からみた平面視形状において、山谷形状の起伏が小さくなり、直線に近い形状となる。しかしながら、刃先長を短すぎると、フィルムに対して刃先が入り込み難くなり、切断不良が発生する可能性が高くなる。また、刃先長Dが長すぎると、上記の山谷形状の角度が鋭角になることから、この箇所が裂け易くなると考えられる。
【0088】
本発明に係るフィルム切断装置は、押切刃の鋸刃を構成する複数の鋸歯体の配列ピッチP及び刃先長Dに関わらず、装置部品及びフィルムへの異物等の付着防止や、メンテナンス頻度の抑制、切断後のフィルム品質の確保等、本発明による十分な効果が得られる。一方、上記の実施例の結果より、切断面の形状をさらに良好なものとし、切断後のフィルム品質をさらに高める観点からは、上記の配列ピッチP及び刃先長Dを最適な範囲に設計することが、より好ましいと考えられる。
本発明のフィルム切断装置は、装置部品及びフィルムへの異物等が付着するのを抑制でき、頻繁なメンテナンスが不要になるとともに、切断後のフィルム品質に優れるものである。従って、本発明のフィルム切断装置は、例えば、非水電解質二次電池に用いられるセパレータ等、種々のフィルム状部品の製造プロセスにおいて非常に好適である。