(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082454
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】搬送設備
(51)【国際特許分類】
B65G 17/20 20060101AFI20240613BHJP
B65G 9/00 20060101ALI20240613BHJP
F25D 13/06 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B65G17/20 A
B65G9/00
F25D13/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196314
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】権藤 卓也
(72)【発明者】
【氏名】浮須 賢一
(72)【発明者】
【氏名】宮本 雅哉
【テーマコード(参考)】
3F034
3L045
【Fターム(参考)】
3F034HA04
3F034HC02
3F034HE10
3L045AA04
3L045BA04
3L045CA05
3L045KA05
3L045PA04
(57)【要約】
【課題】物品が搬送される温度環境による搬送装置の構成の制約を緩和することが可能な技術を実現する。
【解決手段】搬送設備100は、内部の雰囲気温度が規定温度となるように制御される規定温度エリアA1を備える。搬送装置10は、移動部11と、物品2を保持する保持部13と、を備える。移動部11の移動軌跡は、規定温度エリアA1に対して上側V1に隣接する上側エリアA2に配置され、移動部11の移動に伴う保持部13及び当該保持部13に保持された物品2の移動軌跡は、規定温度エリアA1に配置される。規定温度エリアA1と上側エリアA2との境界部であるエリア間境界部Bに、移動経路4に沿った搬送装置10の移動を許容しつつ規定温度エリアA1と上側エリアA2との間での熱の伝達を規制するための、遮熱部が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールと、前記レールによって形成される移動経路に沿って移動して物品を搬送する搬送装置と、を備えた搬送設備であって、
内部の雰囲気温度が規定温度となるように制御される規定温度エリアを更に備え、
前記搬送装置は、前記レールに案内されて前記移動経路に沿って移動する移動部と、前記移動部に対して下側に配置された状態で当該移動部に支持され、前記物品を保持する保持部と、を備え、
前記規定温度エリアに対して上側に隣接するエリアを上側エリアとして、
前記移動部の移動軌跡は、前記上側エリアに配置され、
前記移動部の移動に伴う前記保持部及び当該保持部に保持された前記物品の移動軌跡は、前記規定温度エリアに配置され、
前記規定温度エリアと前記上側エリアとの境界部であるエリア間境界部に、前記移動経路に沿った前記搬送装置の移動を許容しつつ前記規定温度エリアと前記上側エリアとの間での熱の伝達を規制するための、遮熱部が設けられている、搬送設備。
【請求項2】
前記遮熱部は、前記エリア間境界部に沿って気体を噴出して前記規定温度エリアと前記上側エリアとの間に前記気体の層流を形成する気体噴出装置を備えている、請求項1に記載の搬送設備。
【請求項3】
前記搬送装置は、前記移動部と前記保持部とを連結する連結部を備え、
前記遮熱部は、前記エリア間境界部に沿って設けられた壁であって、前記連結部が上下方向に貫通するスリットが前記移動部の移動に伴う前記連結部の移動軌跡に沿って形成された遮熱壁を備えている、請求項1に記載の搬送設備。
【請求項4】
前記搬送装置は、前記移動部と前記保持部とを連結する連結部を備え、
前記遮熱部は、前記エリア間境界部に沿って設けられた壁であって、前記連結部が上下方向に貫通するスリットが前記移動部の移動に伴う前記連結部の移動軌跡に沿って形成された遮熱壁を備え、
前記移動経路は、経路が一直線状に延びる直線区間と、前記直線区間ではない非直線区間とを備え、
前記遮熱部は、前記直線区間に前記遮熱壁を備え、前記非直線区間の少なくとも一部に前記気体噴出装置を備えている、請求項2に記載の搬送設備。
【請求項5】
作業者による前記物品に対する作業が行われる作業エリアと、前記規定温度を第1規定温度として、内部の雰囲気温度が第2規定温度となるように制御され、前記物品が保管される保管エリアと、を更に備え、
前記第1規定温度及び前記第2規定温度の双方が、前記作業エリアの雰囲気温度よりも低く、又は、前記作業エリアの雰囲気温度よりも高く、
前記保管エリアは、前記規定温度エリアに対して下側に隣接して配置され、
前記作業エリアは、前記規定温度エリアと前記上側エリアと前記保管エリアとの少なくともいずれかに対して、水平方向に隣接して配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の搬送設備。
【請求項6】
前記搬送装置は、前記移動部と前記保持部とを連結する連結部を備え、
前記連結部における上下方向の少なくとも一部が、金属よりも熱伝導率が低い材料で形成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールと、レールによって形成される移動経路に沿って移動して物品を搬送する搬送装置と、を備えた搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送設備の一例が、特公昭46-18177号公報(特許文献1)に開示されている。以下、この背景技術の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。特許文献1の搬送設備は、レール(3)によって形成される経路に沿って魚類(18)を搬送する懸垂式コンベヤ装置を備えている。この搬送設備は、魚類(18)を急速凍結するための凍結室(1)において魚類(18)を搬送するように構成されており、氷結防止装置(26)を取り付けたコンベヤチェイン(16)を懸垂式コンベヤ装置に用いることで、極低温の雰囲気内においても氷結による弊害をなくすことを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、特許文献1の搬送設備では、極低温下で物品を搬送するために、極低温に耐え得る構成の搬送装置(特許文献1では、氷結防止装置付きのコンベヤチェインを備えた懸垂式コンベヤ装置)が必要とされる。このように、物品を搬送する搬送装置の構成が、物品が搬送される温度環境(特許文献1では、極低温環境)による制約を受ける場合、搬送装置のコストが増大しやすい。また、搬送設備に用いることが可能な搬送装置が、物品が搬送される温度環境に合わせた設計変更が可能な搬送装置等の、特定の種類の搬送装置に限定されやすい。
【0005】
そこで、物品が搬送される温度環境による搬送装置の構成の制約を緩和することが可能な技術の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る搬送設備は、レールと、前記レールによって形成される移動経路に沿って移動して物品を搬送する搬送装置と、を備えた搬送設備であって、内部の雰囲気温度が規定温度となるように制御される規定温度エリアを更に備え、前記搬送装置は、前記レールに案内されて前記移動経路に沿って移動する移動部と、前記移動部に対して下側に配置された状態で当該移動部に支持され、前記物品を保持する保持部と、を備え、前記規定温度エリアに対して上側に隣接するエリアを上側エリアとして、前記移動部の移動軌跡は、前記上側エリアに配置され、前記移動部の移動に伴う前記保持部及び当該保持部に保持された前記物品の移動軌跡は、前記規定温度エリアに配置され、前記規定温度エリアと前記上側エリアとの境界部であるエリア間境界部に、前記移動経路に沿った前記搬送装置の移動を許容しつつ前記規定温度エリアと前記上側エリアとの間での熱の伝達を規制するための、遮熱部が設けられている。
【0007】
本構成によれば、物品を、雰囲気温度が規定温度となるように制御された規定温度エリアに配置しつつ、搬送装置の移動部は、規定温度エリアとは別のエリアである上側エリアに配置して、搬送装置による物品の搬送を行うことができる。ここで、上側エリアは、遮熱部により規定温度エリアとの間での熱の伝達が規制されたエリアであるため、上側エリアの雰囲気温度は、規定温度エリアの雰囲気温度とは異ならせることができる。よって、搬送装置の移動部も規定温度エリアに配置される場合に比べて、物品が搬送される温度環境による搬送装置の構成の制約を緩和することができる。
【0008】
搬送設備の更なる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図6】搬送設備における各エリアの配置態様の一例を簡略的に示す図
【
図7】搬送設備における各エリアの配置態様の別例を簡略的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
搬送設備の実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、搬送設備100は、レール1と、レール1によって形成される移動経路4に沿って移動して物品2を搬送する搬送装置10と、を備えている。
図1に示すように、本実施形態では、搬送設備100は、複数の搬送装置10を備えている。
図1には、移動経路4に沿って並ぶ3つの搬送装置10が示されている。レール1は、例えば、天井から吊り下げ支持される。
【0011】
搬送装置10は、移動部11と保持部13とを備えている。搬送装置10は、更に、連結部14を備えている。
【0012】
移動部11は、レール1に案内されて移動経路4に沿って移動する。
図1に示す例では、レール1は水平方向(図中左右方向)に沿って配置されており、移動部11は、当該水平方向に延びる移動経路4に沿って移動する。図示は省略するが、移動部11は、レール1に案内される被案内部を備えている。被案内部は、例えば、レール1に接触案内されるローラとされる。本実施形態では、移動部11は、レール1に支持案内される。すなわち、移動部11は、レール1に支持された状態で、レール1に案内されて移動する。例えば、水平方向に沿う軸心回りに回転するローラが移動部11に設けられ、当該ローラがレール1に形成された溝部に嵌合して支持案内されることで、移動部11がレール1に支持案内される構成とすることができる。
【0013】
本実施形態では、移動部11は、他の装置によって移動経路4に沿って移動される。例えば、移動部11は、移動経路4と平行に移動するように駆動される移動部材(ベルトやチェーン等)に連結された状態で、当該移動部材によって移動経路4に沿って移動される。この場合、移動部11が、上記移動部材或いは当該移動部材に固定されたキャリアに対して、ツメの引っ掛けや凸部の噛み合い等により連結される構成とすることができる。なお、移動部11が、当該移動部11に設けられた駆動装置(例えば、電気モータ)が発生する駆動力によって、移動経路4に沿って移動する構成とすることもできる。
【0014】
保持部13は、移動部11に対して下側V2に配置された状態で、当該移動部11に支持されている。そして、保持部13は、物品2を保持する。保持部13の構成はこれに限定されないが、本実施形態では、
図1に示すように、保持部13は、可撓性を有する袋体によって物品2を包み込んで保持するように構成されている。
図1に示す例では、保持部13を構成する上記袋体は、移動部11の移動方向に直交する水平方向(
図1における紙面に直交する方向)に沿う方向視で、保持対象の物品2を囲む環状に形成されている。この場合、例えば、環状に形成された袋体における側方の開口部を通して、保持部13に対する物品2の出し入れが行われる。なお、上方に開口部が形成されるように上記袋体の姿勢が変更可能に構成され、当該開口部を通して保持部13に対する物品2の出し入れが行われる構成等とすることもできる。また、上記の側方の開口部からの物品2の落下を防止するための落下防止部が、上記袋体と一体的に或いは上記袋体とは別部材に設けられる構成とすることもできる。
【0015】
連結部14は、移動部11と保持部13とを連結する。本実施形態では、保持部13は、連結部14を介して、移動部11に吊り下げ支持されている。
図1に示す例では、連結部14は、上下方向Vに延びるように形成されている。そして、連結部14における上側V1の端部が移動部11に連結され、連結部14における下側V2の端部が保持部13に連結されている。本例では、連結部14における上側V1の端部に、移動部11に形成された開口部12に引っ掛けられるフック15が設けられ、連結部14における下側V2の端部に、保持部13を構成する袋体の上端部を支持する支持部16が設けられている。
【0016】
本実施形態の搬送設備100では、上記のように保持部13が移動部11に吊り下げ支持されるため、天井側の空間(上部空間)を有効に活用することが容易となっている。また、本実施形態の搬送設備100では、上述したように、保持部13が、物品2を袋体によって包み込んで保持するように構成されているため、物品2をケースやコンテナに収容して搬送する場合に比べて、複数の物品2を高密度に搬送したり保管したりすることが容易となっている。
【0017】
図1に示すように、搬送設備100は、内部の雰囲気温度が規定温度となるように制御される規定温度エリアA1を備えている。規定温度は、固定値であっても、搬送設備100の運用状態等に応じて変更される可変値であってもよい。後述する第2規定温度についても同様である。搬送設備100は、更に、規定温度エリアA1に対して上側V1に隣接するエリアである上側エリアA2を備えている。ここで、規定温度エリアA1と上側エリアA2との境界部を、エリア間境界部Bとする。本実施形態では、エリア間境界部Bは、水平面に沿うように形成される。
【0018】
上側エリアA2については、内部の雰囲気温度が制御される構成とすることも、内部の雰囲気温度が制御されない構成とすることもできる。いずれの場合でも、上側エリアA2の雰囲気温度は、上記の規定温度とは異なる温度となる。上側エリアA2における温度分布を考慮する場合、上側エリアA2の雰囲気温度は、例えば、上側エリアA2における移動部11の配設箇所の雰囲気温度とし、或いは、上側エリアA2における雰囲気温度の平均値とすることができる。上側エリアA2の雰囲気温度が制御される場合、上側エリアA2の雰囲気温度は、上記の規定温度とは異なる温度となるように制御される。一方、上側エリアA2の雰囲気温度が制御されない場合、上側エリアA2の雰囲気温度は、上側エリアA2に隣接するエリア(規定温度エリアA1等)の雰囲気温度の影響を受けた温度となる。例えば、上側エリアA2の雰囲気温度は、規定温度エリアA1の雰囲気温度と、上側エリアA2に対して上側V1に隣接するエリア(搬送設備100が設けられた建物の外部エリアや、当該建物内における他のエリア)の雰囲気温度との間の温度となる。
【0019】
図1に示すように、移動部11の移動軌跡は、上側エリアA2に配置される。一方、移動部11の移動に伴う保持部13及び当該保持部13に保持された物品2の移動軌跡は、規定温度エリアA1に配置される。そのため、連結部14における上側V1の部分の移動軌跡は、上側エリアA2に配置され、連結部14における下側V2の部分の移動軌跡は、規定温度エリアA1に配置される。なお、「移動軌跡」は、対象となる物体(例えば、移動部11の移動軌跡の場合には、移動部11)が移動する空間(すなわち、当該対象となる物体の各部の移動軌跡の集合)を意味する。
【0020】
本実施形態では、規定温度エリアA1の雰囲気温度の制御目標となる上記の規定温度は、上側エリアA2の雰囲気温度よりも低い温度に設定される。言い換えれば、搬送設備100は、上側エリアA2の雰囲気温度が上記の規定温度よりも高くなるように構成されている。具体的には、本実施形態では、上記の規定温度は、0度以下の温度(例えば、マイナス25度)に設定される。よって、物品2が搬送される規定温度エリアA1内の温度環境は、物品2を凍結した状態で搬送可能な冷凍環境とされる。詳細は省略するが、規定温度エリアA1の雰囲気温度は、例えば、規定温度エリアA1の内部の空気を冷却して循環させる冷凍機によって、上記の規定温度となるように制御される。
【0021】
一方、本実施形態では、上側エリアA2の雰囲気温度は、0度よりも高い温度(例えば、5度以下であって0度よりも高い温度)となる。これにより、移動部11を、規定温度エリアA1の雰囲気温度とは異なる雰囲気温度(本実施形態では、規定温度エリアA1の雰囲気温度よりも高い雰囲気温度)の環境に配置することが可能となっている。なお、搬送設備100が、移動部11或いは移動部11を移動させる部材や装置(例えば、上述したベルトやチェーン等の移動部材やそれを駆動する装置)の少なくとも一部を加熱するヒータを備えていてもよい。
【0022】
図2~
図4に例示するように、エリア間境界部B(
図1参照)には、移動経路4に沿った搬送装置10の移動を許容しつつ規定温度エリアA1と上側エリアA2との間での熱の伝達を規制するための、遮熱部3が設けられている。このような遮熱部3を設けることで、規定温度エリアA1及び上側エリアA2のそれぞれの雰囲気温度を所望の温度とすることが容易となっている。なお、規定温度エリアA1の雰囲気温度の制御効率を高めるためには、連結部14を介した移動部11と保持部13との間での熱の伝達を規制できることが望ましい。この観点から、例えば、連結部14における上下方向Vの少なくとも一部が、金属よりも熱伝導率が低い材料(例えば、樹脂材料)で形成されていると好適である。
【0023】
図2に示す例では、遮熱部3は、エリア間境界部Bに沿って気体Gを噴出して規定温度エリアA1と上側エリアA2との間に気体Gの層流を形成する気体噴出装置20を備えている。気体噴出装置20は、例えば、規定温度エリアA1内の気体Gを吸い込んで噴出するように構成される。気体Gの層流は、規定温度エリアA1と上側エリアA2との間での気体の流通を規制する気流カーテン(気体Gが空気の場合には、エアカーテン)として機能する。
図2に示す例では、気体噴出装置20は、移動部11の移動方向に直交する水平方向(以下、「特定水平方向」という)に沿って流動する気体Gの層流を形成している。また、
図2に示す例では、区画壁5によって特定水平方向(図中左右方向)の両側から囲まれる空間に、移動部11の移動に伴う保持部13の移動軌跡が1つのみ配置されるように、区画壁5が設けられており、気体噴出装置20は、当該空間の上側V1の開口部を特定水平方向に横断する気体Gの層流を形成している。
【0024】
図2に示す例とは異なり、区画壁5によって特定水平方向の両側から囲まれる空間に、移動部11の移動に伴う保持部13の移動軌跡が複数(後に参照する
図3に示す例では、2つ)特定水平方向に並んで配置されるように、区画壁5が設けられ、気体噴出装置20が、当該空間の上側V1の開口部を特定水平方向に横断する気体Gの層流を形成する構成とすることもできる。また、
図2に示す例では、気体噴出装置20は、気体Gを吹き出す吹出部21に加えて、吹出部21から吹き出された気体Gを吸い込む吸込部22を備えているが、気体噴出装置20が吸込部22を備えない構成とすることもできる。また、気体噴出装置20が形成する気体Gの層流は、単層の層流であっても、複数層(例えば、2層)の層流であってもよい。また、気体噴出装置20が、互いに向かい合う気体Gの層流を形成する構成とすることもできる。
【0025】
図3に示す例では、遮熱部3は、エリア間境界部Bに沿って設けられた壁であって、連結部14が上下方向Vに貫通するスリット31が移動部11の移動に伴う連結部14の移動軌跡に沿って形成された遮熱壁30を備えている。遮熱壁30は、例えば、金属よりも熱伝導率が低い材料(例えば、樹脂材料)で形成される。
【0026】
スリット31の特定水平方向(図中左右方向)の幅は、連結部14の特定水平方向の幅よりも大きい。
図3に示す例では、スリット31の特定水平方向の幅は、保持部13の特定水平方向の幅よりも小さい。また、
図3に示す例では、区画壁5によって特定水平方向の両側から囲まれる空間に、移動部11の移動に伴う保持部13の移動軌跡が複数(本例では、2つ)特定水平方向に並んで配置されるように、区画壁5が設けられ、遮熱壁30は、スリット31の形成部を除いて当該空間の上側V1の開口部を覆うように配置されている。本実施形態では、スリット31の特定水平方向の幅は、移動部11の移動に伴う連結部14の移動軌跡を1つのみ含むように設定される。よって、
図3に示す例では、特定水平方向に並ぶ2つのスリット31が遮熱壁30に形成されている。
【0027】
図3に示す例とは異なり、区画壁5によって特定水平方向(図中左右方向)の両側から囲まれる空間に、移動部11の移動に伴う保持部13の移動軌跡が1つのみ配置されるように、区画壁5が設けられ、遮熱壁30が、スリット31の形成部を除いて当該空間の上側V1の開口部を覆うように配置される構成とすることもできる。
図4に示す例は、このような構成に、気体噴出装置20を組み合わせたものである。すなわち、
図4に示す例では、遮熱部3は、気体噴出装置20と遮熱壁30とを備えている。そして、気体噴出装置20は、スリット31の上側V1の開口部を特定水平方向に横断する気体Gの層流を形成している。
【0028】
図5に移動経路4の一部を例示するように、移動経路4が、経路が一直線状に延びる直線区間41と、直線区間41ではない非直線区間42とを備える場合がある。非直線区間42には、例えば、経路が曲線状に延びる曲線区間(カーブ区間)と、経路が分岐する分岐区間と、経路が合流する合流区間と、の少なくともいずれかが含まれる。
図5では、移動経路4における移動部11の移動方向を矢印Mで示している。
【0029】
図5に例示する非直線区間42は、合流区間と分岐区間とが複合した区間とされている。具体的には、この非直線区間42に含まれる合流区間では、直線区間41から直線状に延びる経路と、別の直線区間41から曲線状に延びる経路とが合流している。また、この非直線区間42に含まれる分岐区間では、経路が、直線区間41まで直線状に延びる経路と、別の直線区間41まで曲線状に延びる経路とに分岐している。
【0030】
移動経路4が直線区間41と非直線区間42とを備える場合に、例えば、遮熱部3が、直線区間41に遮熱壁30を備え、非直線区間42の少なくとも一部に気体噴出装置20を備える構成とすることができる。ここで、遮熱部3が「遮熱壁30を備える」とは、遮熱部3が少なくとも遮熱壁30を備えることを意味し、遮熱部3が遮熱壁30に加えて気体噴出装置20を備えていてもよい。また、遮熱部3が「気体噴出装置20を備える」とは、遮熱部3が少なくとも気体噴出装置20を備えることを意味し、遮熱部3が気体噴出装置20に加えて遮熱壁30を備えていてもよい。
【0031】
上記のように、遮熱部3が、非直線区間42の少なくとも一部に気体噴出装置20を備える構成において、例えば、遮熱部3が、非直線区間42における曲率が一定の曲線区間には遮熱壁30を備え、非直線区間42における曲率が一定の曲線区間を除く区間に(すなわち、非直線区間42の一部のみに)、気体噴出装置20を備える構成とすることもできる。
【0032】
図5に示す例では、遮熱部3が、直線区間41に、スリット31が形成された遮熱壁30のみを備え、非直線区間42に、気体噴出装置20のみを備えている。上述したように、本実施形態では、スリット31の幅(移動部11の移動方向に直交する水平方向の幅)は、移動部11の移動に伴う連結部14の移動軌跡を1つのみ含むように設定される。そのため、
図5における非直線区間42に形成された開口は、スリット31には相当しない。
【0033】
なお、移動経路4が直線区間41と非直線区間42とを備える場合に、
図5に示す例とは異なり、直線区間41にのみ遮熱部3(例えば、気体噴出装置20と遮熱壁30との少なくとも一方)が設けられ、非直線区間42には遮熱部3が設けられない構成とすることもできる。或いは、直線区間41と、非直線区間42の一部(例えば、曲率が一定の曲線区間)のみに、遮熱部3が設けられ、非直線区間42の残りの部分(例えば、曲率が一定ではないカーブ区間、分岐区間、及び合流区間)には遮熱部3が設けられない構成とすることもできる。
【0034】
図6及び
図7に簡略化して示すように、搬送設備100が、規定温度エリアA1と上側エリアA2とに加えて、作業エリアA3と保管エリアA4とを備える場合がある。ここで、作業エリアA3は、作業者による物品2に対する作業が行われるエリアである。また、上述した規定温度を第1規定温度として、保管エリアA4は、内部の雰囲気温度が第2規定温度となるように制御され、物品2が保管されるエリアである。第2規定温度は、第1規定温度と同じ温度であっても異なる温度であってもよい。
【0035】
このように搬送設備100が作業エリアA3と保管エリアA4とを備える場合、作業エリアA3と保管エリアA4との間での物品2の搬送が、搬送装置10を用いて行われる構成とすることができる。例えば、作業エリアA3で行われる作業で必要とされる物品2(例えば、出荷オーダーで指定された物品2)が、搬送装置10を用いて保管エリアA4から作業エリアA3に搬送される。また、例えば、保管エリアA4に保管する物品2(例えば、作業エリアA3に入荷された物品2)が、搬送装置10を用いて作業エリアA3から保管エリアA4に搬送される。
【0036】
第1規定温度及び第2規定温度の双方は、作業エリアA3の雰囲気温度よりも低く設定され、或いは、作業エリアA3の雰囲気温度よりも高く設定される。なお、作業エリアA3については、上側エリアA2と同様に、内部の雰囲気温度が制御される構成とすることも、内部の雰囲気温度が制御されない構成とすることもできる。作業エリアA3の雰囲気温度が制御される場合、作業エリアA3の雰囲気温度は、第1規定温度及び第2規定温度とは異なる温度となるように制御される。一方、作業エリアA3の雰囲気温度が制御されない場合、作業エリアA3の雰囲気温度は、作業エリアA3に隣接するエリアの雰囲気温度の影響を受けた温度となる。作業エリアA3の雰囲気温度は、例えば、上側エリアA2の雰囲気温度と同等(同一又は同程度)とされる。
【0037】
本実施形態では、第1規定温度及び第2規定温度の双方が、作業エリアA3の雰囲気温度よりも低く設定される場合、第1規定温度及び第2規定温度の双方は、上側エリアA2の雰囲気温度よりも低く設定される。例えば、上側エリアA2の雰囲気温度及び作業エリアA3の雰囲気温度が、いずれも0度よりも高い温度(例えば、5度以下であって0度よりも高い温度)であり、第1規定温度及び第2規定温度が、いずれも0度以下の温度(例えば、マイナス25度)に設定される構成とすることができる。一方、本実施形態では、第1規定温度及び第2規定温度の双方が、作業エリアA3の雰囲気温度よりも高く設定される場合、第1規定温度及び第2規定温度の双方は、上側エリアA2の雰囲気温度よりも高く設定される。
【0038】
図6に示す例では、保管エリアA4は、規定温度エリアA1に対して下側V2に隣接して配置されている。例えば、規定温度エリアA1が架台の上側V1に配置され、保管エリアA4が当該架台の下側V2に配置される。そして、作業エリアA3は、規定温度エリアA1と上側エリアA2と保管エリアA4との少なくともいずれか(本例では、全て)に対して、水平方向Hに隣接して配置されている。このように、作業エリアA3よりも雰囲気温度が低くなるように制御される規定温度エリアA1及び保管エリアA4の2つのエリアを、或いは、作業エリアA3よりも雰囲気温度が高くなるように制御される規定温度エリアA1及び保管エリアA4の2つのエリアを、上下方向Vに隣接して配置することで、規定温度エリアA1と保管エリアA4との上下方向Vの間に作業エリアA3又は上側エリアA2が配置される場合に比べて、規定温度エリアA1及び保管エリアA4の雰囲気温度の制御効率(例えば、冷房効率或いは暖房効率)を高めやすい。
【0039】
一方、
図7に示す例では、保管エリアA4は、規定温度エリアA1に対して水平方向Hに隣接して配置されている。そして、作業エリアA3は、規定温度エリアA1と保管エリアA4との少なくとも一方(本例では、双方)に対して、下側V2に隣接して配置されている。例えば、規定温度エリアA1及び保管エリアA4が架台の上側V1に配置され、作業エリアA3が当該架台の下側V2に配置される。このように、作業エリアA3よりも雰囲気温度が低くなるように制御される規定温度エリアA1及び保管エリアA4の2つのエリアを、或いは、作業エリアA3よりも雰囲気温度が高くなるように制御される規定温度エリアA1及び保管エリアA4の2つのエリアを、水平方向Hに隣接して配置することで、規定温度エリアA1と保管エリアA4との水平方向Hの間に作業エリアA3又は上側エリアA2が配置される場合に比べて、規定温度エリアA1及び保管エリアA4の雰囲気温度の制御効率(例えば、冷房効率或いは暖房効率)を高めやすい。
【0040】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、規定温度エリアA1の雰囲気温度の制御目標となる規定温度(第1規定温度)が、0度以下の温度に設定される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、規定温度(第1規定温度)が、0度よりも高い温度(例えば、10度以下であって0度よりも高い温度)に設定される構成とすることもできる。このような構成とする場合に、搬送設備100が保管エリアA4(
図6、
図7参照)を備える場合には、第1規定温度に加えて第2規定温度も、0度以下の温度ではなく、0度よりも高い温度に設定される構成とすることができる。
【0041】
(2)上記の実施形態では、規定温度エリアA1の雰囲気温度の制御目標となる規定温度(第1規定温度)が、上側エリアA2の雰囲気温度よりも低い温度に設定される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、規定温度(第1規定温度)が、上側エリアA2の雰囲気温度よりも高い温度(例えば、物品2を乾燥させるための温度)に設定される構成とすることもできる。このような構成とする場合に、搬送設備100が保管エリアA4(
図6、
図7参照)を備える場合には、第1規定温度に加えて第2規定温度も、上側エリアA2の雰囲気温度よりも低い温度ではなく、上側エリアA2の雰囲気温度よりも高い温度に設定される構成とすることができる。
【0042】
(3)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用すること(その他の実施形態として説明した実施形態同士の組み合わせを含む)も可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0043】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した搬送設備の概要について説明する。
【0044】
レールと、前記レールによって形成される移動経路に沿って移動して物品を搬送する搬送装置と、を備えた搬送設備であって、内部の雰囲気温度が規定温度となるように制御される規定温度エリアを更に備え、前記搬送装置は、前記レールに案内されて前記移動経路に沿って移動する移動部と、前記移動部に対して下側に配置された状態で当該移動部に支持され、前記物品を保持する保持部と、を備え、前記規定温度エリアに対して上側に隣接するエリアを上側エリアとして、前記移動部の移動軌跡は、前記上側エリアに配置され、前記移動部の移動に伴う前記保持部及び当該保持部に保持された前記物品の移動軌跡は、前記規定温度エリアに配置され、前記規定温度エリアと前記上側エリアとの境界部であるエリア間境界部に、前記移動経路に沿った前記搬送装置の移動を許容しつつ前記規定温度エリアと前記上側エリアとの間での熱の伝達を規制するための、遮熱部が設けられている。
【0045】
本構成によれば、物品を、雰囲気温度が規定温度となるように制御された規定温度エリアに配置しつつ、搬送装置の移動部は、規定温度エリアとは別のエリアである上側エリアに配置して、搬送装置による物品の搬送を行うことができる。ここで、上側エリアは、遮熱部により規定温度エリアとの間での熱の伝達が規制されたエリアであるため、上側エリアの雰囲気温度は、規定温度エリアの雰囲気温度とは異ならせることができる。よって、搬送装置の移動部も規定温度エリアに配置される場合に比べて、物品が搬送される温度環境による搬送装置の構成の制約を緩和することができる。
【0046】
ここで、前記遮熱部は、前記エリア間境界部に沿って気体を噴出して前記規定温度エリアと前記上側エリアとの間に前記気体の層流を形成する気体噴出装置を備えていると好適である。
【0047】
本構成によれば、規定温度エリアと上側エリアとの境界部であるエリア間境界部に物理的な壁を設けなくても、気体噴出装置によって形成される気体の層流によって、規定温度エリアと上側エリアとの間での気体の流通を規制することができる。よって、搬送装置による物品の搬送を許容しつつ、規定温度エリアと上側エリアとの間での熱の伝達を規制することができる。
【0048】
また、前記搬送装置は、前記移動部と前記保持部とを連結する連結部を備え、前記遮熱部は、前記エリア間境界部に沿って設けられた壁であって、前記連結部が上下方向に貫通するスリットが前記移動部の移動に伴う前記連結部の移動軌跡に沿って形成された遮熱壁を備えていると好適である。
【0049】
本構成によれば、規定温度エリアと上側エリアとの境界部であるエリア間境界部に、連結部の移動を妨げないように物理的な壁を設けて、規定温度エリアと上側エリアとの間での気体の流通を規制することができる。よって、搬送装置による物品の搬送を許容しつつ、規定温度エリアと上側エリアとの間での熱の伝達を規制することができる。
【0050】
上記のように前記遮熱部が前記気体噴出装置を備える構成において、前記搬送装置は、前記移動部と前記保持部とを連結する連結部を備え、前記遮熱部は、前記エリア間境界部に沿って設けられた壁であって、前記連結部が上下方向に貫通するスリットが前記移動部の移動に伴う前記連結部の移動軌跡に沿って形成された遮熱壁を備え、前記移動経路は、経路が一直線状に延びる直線区間と、前記直線区間ではない非直線区間とを備え、前記遮熱部は、前記直線区間に前記遮熱壁を備え、前記非直線区間の少なくとも一部に前記気体噴出装置を備えていると好適である。
【0051】
気体噴出装置の動作には電力等のエネルギが必要となるため、遮熱壁による熱伝達の規制効果が得られやすい箇所には遮熱壁を設け、遮熱壁による熱伝達の規制効果が限定的となりやすい箇所に気体噴出装置を設けることが、設備の運用コストの低減の観点や、停電時等のエネルギの利用が制限される状況下での対応のしやすさの観点から望ましい。移動経路が直線区間と非直線区間とを備える場合、直線区間については、スリットにより形成される開口の面積(上下方向視での面積、以下同様)を比較的小さく抑えやすく、遮熱壁による熱伝達の規制効果が得られやすい。一方、非直線区間については、特に曲率が一定でないカーブ区間や経路が分岐又は合流する区間において、スリットにより形成される開口の面積が直線区間に比べて大きくなりやすく、遮熱壁による熱伝達の規制効果が限定的となりやすい。本構成によれば、直線区間には遮熱壁を設け、非直線区間の少なくとも一部には気体噴出装置を設けることで、上記のように、遮熱壁による熱伝達の規制効果が得られやすい箇所に遮熱壁が設けられ、遮熱壁による熱伝達の規制効果が限定的となりやすい箇所に気体噴出装置が設けられた搬送設備を実現することができる。
【0052】
上記の各構成の搬送設備において、作業者による前記物品に対する作業が行われる作業エリアと、前記規定温度を第1規定温度として、内部の雰囲気温度が第2規定温度となるように制御され、前記物品が保管される保管エリアと、を更に備え、前記第1規定温度及び前記第2規定温度の双方が、前記作業エリアの雰囲気温度よりも低く、又は、前記作業エリアの雰囲気温度よりも高く、前記保管エリアは、前記規定温度エリアに対して下側に隣接して配置され、前記作業エリアは、前記規定温度エリアと前記上側エリアと前記保管エリアとの少なくともいずれかに対して、水平方向に隣接して配置されていると好適である。
【0053】
本構成によれば、作業エリアよりも雰囲気温度が低くなるように制御される規定温度エリア及び保管エリアの2つのエリアを、或いは、作業エリアよりも雰囲気温度が高くなるように制御される規定温度エリア及び保管エリアの2つのエリアを、上下方向に隣接して配置することができる。よって、規定温度エリアと保管エリアとの間に作業エリア又は上側エリアが配置される場合に比べて、規定温度エリア及び保管エリアの雰囲気温度の制御効率(例えば、冷房効率或いは暖房効率)を高めやすい。
【0054】
また、前記搬送装置は、前記移動部と前記保持部とを連結する連結部を備え、前記連結部における上下方向の少なくとも一部が、金属よりも熱伝導率が低い材料で形成されていると好適である。
【0055】
本構成によれば、連結部を介した移動部と保持部との間での熱の伝達を規制することができるため、規定温度エリアの雰囲気温度の制御効率を高めやすい。
【0056】
本開示に係る搬送設備は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができればよい。
【符号の説明】
【0057】
1:レール
2:物品
3:遮熱部
4:移動経路
10:搬送装置
11:移動部
13:保持部
14:連結部
20:気体噴出装置
30:遮熱壁
31:スリット
41:直線区間
42:非直線区間
100:搬送設備
A1:規定温度エリア
A2:上側エリア
A3:作業エリア
A4:保管エリア
B:エリア間境界部
G:気体
H:水平方向
V:上下方向
V1:上側
V2:下側