(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082458
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240613BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240613BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240613BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
H01L29/78 652B
H01L29/78 652K
H01L29/78 653C
H01L29/78 652J
H01L29/78 658A
H01L29/78 652T
H01L29/78 655A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196318
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】大瀬 直之
(57)【要約】
【課題】トレンチゲート型の炭化珪素半導体装置において、ゲート電極とソース領域との間のリーク電流を抑制することができる炭化珪素半導体装置を提供する。
【解決手段】炭化珪素からなる第1導電型のドリフト層2、第2導電型のベース領域6a,6b及び第1導電型の主領域7a,7bと、主領域7a,7b及びベース領域6a,6bを貫通するトレンチ10の内側に設けられたゲート絶縁膜11及びゲート電極12と、主領域7a,7bに接して設けられた主電極(14,15)を備え、主領域7a,7bは、ベース領域6a,6bに下面が接するソース拡張部71a,71bと、ソース拡張部71a,71bの上面側に設けられ、主電極(14,15)に接し、3C構造を含むソースコンタクト部72a,72bを備え、ゲート電極12の上面は、ソースコンタクト部72a,72bの下面よりも深く、且つソース拡張部71a,71bの下面よりも浅い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素からなる第1導電型のドリフト層と、
前記ドリフト層の上面側に設けられた炭化珪素からなる第2導電型のベース領域と、
前記ベース領域の上面側に設けられた炭化珪素からなる第1導電型の主領域と、
前記主領域及びベース領域を貫通するトレンチの内側に設けられたゲート絶縁膜と、
前記トレンチの内側に前記ゲート絶縁膜を介して埋め込まれたゲート電極と、
前記主領域に接して設けられた主電極と、
を備え、
前記主領域は、
前記ベース領域に下面が接するソース拡張部と、
前記ソース拡張部の上面側に設けられ、前記主電極に接し、3C構造を含むソースコンタクト部と、
を備え、
前記ゲート電極の前記ゲート絶縁膜に接する位置の上面は、前記ソースコンタクト部の下面よりも深く、且つ前記ソース拡張部の下面よりも浅い
炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記ソースコンタクト部に含まれる3C構造の割合は10%以上、100%以下である
請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記ソースコンタクト部は、不純物として燐又は砒素を含む
請求項1又は2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記ソースコンタクト部の不純物濃度は、1×1019/cm3以上、1×1022/cm3以下である
請求項1又は2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記ソースコンタクト部の厚さは、30nm以上、100nm以下である
請求項1又は2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記ソース拡張部は、不純物として窒素又は燐を含む
請求項1又は2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記ソース拡張部の不純物濃度は、1×1016/cm3以上、1×1019/cm3以下である
請求項1又は2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項8】
前記ソース拡張部の厚さは、150nm以上、400nm以下である
請求項1又は2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項9】
前記ソースコンタクト部の上面からの前記ゲート電極の落ち込み量は、100nm以上、300nm以下である
請求項1又は2に記載の炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化珪素(SiC)を用いたSiC半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、六方晶単結晶の炭化珪素基板にリンをイオン注入することでアモルファス層を形成し、熱処理することでアモルファス層を立方晶単結晶のn型炭化珪素に再結晶化させ、n型炭化珪素の上面にニッケルを蒸着することで電極を形成する半導体装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、4H-SiCからなるn+型SiCの第1主面上に形成させたn-型エピタキシャル成長層内において、n+型ソース領域と、n+型ソース領域内に形成されたn+型3C-SiC領域及びp+型電位固定領域とを有し、n+型3C-SiC領域及びp+型電位固定領域と接してバリアメタル膜が形成され、バリアメタル膜上にソース配線用電極が形成される半導体装置が開示されている。
【0004】
特許文献3には、第2導電型のボディ領域の表層にそれぞれ選択的イオン注入で形成される、第2導電型のボディコンタクト領域と第1導電型のソースコンタクト領域を備え、ソースコンタクト領域の下に、さらに選択的イオン注入で、ソースコンタクト領域下のテール部より深くてソースコンタクト領域より低不純物密度のソース拡張領域を有する炭化珪素MOS型半導体装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-49198号公報
【特許文献2】国際公開第2017/042963号
【特許文献3】特許第5369464号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
トレンチゲート型のSiC半導体装置において、ソース電極(主電極)とオーミック接触するためにソース領域(主領域)を3C-SiCで構成することが検討されている。しかし、3C-SiCは4H-SiCと比較して結晶欠陥が多く、且つ表面の凹凸も大きいため、ゲート電極とソース領域との間にリーク電流が流れてしまう恐れがある。
【0007】
本開示は、上記課題を鑑み、トレンチゲート型のSiC半導体装置において、主領域が主電極にオーミック接触することができると共に、ゲート電極と主領域との間のリーク電流を抑制することができるSiC半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の一態様は、SiCからなる第1導電型のドリフト層と、ドリフト層の上面側に設けられたSiCからなる第2導電型のベース領域と、ベース領域の上面側に設けられたSiCからなる第1導電型の主領域と、主領域及びベース領域を貫通するトレンチの内側に設けられたゲート絶縁膜と、トレンチの内側にゲート絶縁膜を介して埋め込まれたゲート電極と、主領域に接して設けられた主電極とを備え、主領域は、ベース領域に下面が接するソース拡張部と、ソース拡張部の上面側に設けられ、主電極に接し、3C構造を含むソースコンタクト部とを備え、ゲート電極のゲート絶縁膜に接する位置の上面は、ソースコンタクト部の下面よりも深く、且つソース拡張部の下面よりも浅いSiC半導体装置であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、トレンチゲート型のSiC半導体装置において、主領域が主電極にオーミック接触することができると共に、ゲート電極と主領域との間のリーク電流を抑制することができるSiC半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係るSiC半導体装置の一例を示す断面概略図である。
【
図2】
図1中の領域Aを拡大した断面概略図である。
【
図3】比較例に係るSiC半導体装置の断面概略図である。
【
図4】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法のフローチャートである。
【
図5】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための断面概略図である。
【
図6】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための
図5に引き続く断面概略図である。
【
図7】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための
図6に引き続く断面概略図である。
【
図8】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための
図7に引き続く断面概略図である。
【
図9】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための
図8に引き続く断面概略図である。
【
図10】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための
図9に引き続く断面概略図である。
【
図11】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための
図10に引き続く断面概略図である。
【
図12】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための
図11に引き続く断面概略図である。
【
図13】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための
図12に引き続く断面概略図である。
【
図14】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための
図13に引き続く断面概略図である。
【
図15】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための
図14に引き続く断面概略図である。
【
図16】第2実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法のフローチャートである。
【
図17】第3実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本開示の第1~第3実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は実際のものとは異なる場合がある。また、図面相互間においても寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。また、以下に示す第1~第3実施形態は、本開示の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本開示の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。
【0012】
本明細書において、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)のソース領域は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)のエミッタ領域として選択可能な「一方の主領域(第1主領域)」である。また、MOS制御静電誘導サイリスタ(SIサイリスタ)等のサイリスタにおいては、「一方の主領域」はカソード領域として選択可能である。MOSFETのドレイン領域は、IGBTにおいてはコレクタ領域を、サイリスタにおいてはアノード領域として選択可能な半導体装置の「他方の主領域(第2主領域)」である。本明細書において単に「主領域」と言うときは、当業者の技術常識から妥当な第1主領域又は第2主領域のいずれかを意味する。
【0013】
また、以下の説明における上下等の方向の定義は、単に説明の便宜上の定義であって、本開示の技術的思想を限定するものではない。例えば、対象を90°回転して観察すれば上下は左右に変換して読まれ、180°回転して観察すれば上下は反転して読まれることは勿論である。また、「上面」は「おもて面」と読み替えてもよく、「下面」は「裏面」と読み替えてもよい。
【0014】
また、以下の説明では、第1導電型がn型、第2導電型がp型の場合について例示的に説明する。しかし、導電型を逆の関係に選択して、第1導電型をp型、第2導電型をn型としても構わない。またnやpに付す+や-は、+及び-が付記されていない半導体領域に比して、それぞれ相対的に不純物濃度が高い又は低い半導体領域であることを意味する。ただし同じnとnとが付された半導体領域であっても、それぞれの半導体領域の不純物濃度が厳密に同じであることを意味するものではない。
【0015】
また、SiC結晶には結晶多形が存在し、主なものは立方晶の3C、及び六方晶の4H、6Hである。室温における禁制帯幅は3C-SiCでは2.23eV、4H-SiCでは3.26eV、6H-SiCでは3.02eVの値が報告されている。以下の説明では、4H-SiC及び3C-SiCを主に用いる場合を例示する。
【0016】
(第1実施形態)
<SiC半導体装置の構造>
第1実施形態に係るSiC半導体装置は、
図1に示すように、活性素子としてトレンチゲート型のMOSFETを含む場合を例示する。なお、
図1では、1つのトレンチ10に埋め込まれた絶縁ゲート電極構造(11,12)を含む単位セルを例示するが、実際には、この単位セルが周期的に多数配列されている。
【0017】
第1実施形態に係るSiC半導体装置は、第1導電型(n-型)のドリフト層2を備える。ドリフト層2は、例えば、4H-SiC等のSiCからなるエピタキシャル成長層で構成されている。ドリフト層2の不純物濃度は、例えば1×1015cm-3以上、5×1016cm-3以下程度である。ドリフト層2の厚さは、例えば1μm以上、100μm以下程度である。ドリフト層2の不純物濃度及び厚さは、耐圧仕様等に応じて適宜調整可能である。
【0018】
ドリフト層2の上面側には、ドリフト層2よりも高不純物濃度の第1導電型(n型)の電流拡散層(CSL)3が選択的に設けられている。電流拡散層3の下面は、ドリフト層2の上面に接している。電流拡散層3は、例えば、4H-SiC等のSiCからなるエピタキシャル成長層で構成されている。電流拡散層3の不純物濃度は、例えば5×1016cm-3以上、5×1017cm-3以下程度である。なお、電流拡散層3は必ずしも設ける必要はなく、電流拡散層3を設けない場合にはドリフト層2が電流拡散層3の領域まで拡張して設けられていてよい。
【0019】
電流拡散層3の上面側には第2導電型(p型)のベース領域6a,6bが設けられている。ベース領域6a,6bの下面は、電流拡散層3の上面に接している。なお、電流拡散層3を設けない場合には、ベース領域6a,6bの下面は、ドリフト層2の上面に接している。ベース領域6a,6bは、例えば、4H-SiC等のSiCからなるエピタキシャル成長層で構成されている。ベース領域6a,6bは、電流拡散層3にp型不純物をイオン注入した領域であってもよい。ベース領域6a,6bの不純物濃度は、例えば1×1016cm-3以上、1×1018cm-3以下程度である。
【0020】
ベース領域6a,6bの上面側には、ドリフト層2よりも高不純物濃度の第1導電型(n+型)の第1主領域(ソース領域)7a,7bが選択的に設けられている。ソース領域7a,7bは、例えば、ベース領域6a,6bにn型不純物をイオン注入したSiCからなる領域である。
【0021】
ソース領域7aは、下層であるn+型のソース拡張部71aと、上層であるn+型のソースコンタクト部72aの2層構造を備える。ソース拡張部71aの下面は、ベース領域6aの上面に接している。ソース拡張部71aの上面は、ソースコンタクト部72aの下面に接している。ソース領域7bは、下層であるn+型のソース拡張部71bと、上層であるn+型のソースコンタクト部72bの2層構造を備える。ソース拡張部71bの下面は、ベース領域6bの上面に接している。ソース拡張部71bの上面は、ソースコンタクト部72bの下面に接している。
【0022】
ソース領域7a,7bの上面からソース領域7a,7bの上面の法線方向(深さ方向)に向かって、ソース領域7a,7b及びベース領域6a,6bを貫通するトレンチ10が設けられている。トレンチ10の下面は電流拡散層3に達する。トレンチ10の幅は例えば1μm以下程度である。トレンチ10の左側の側面には、ソース領域7a及びベース領域6aが接している。トレンチ10の右側の側面には、ソース領域7b及びベース領域6bが接している。トレンチ10は、
図1の紙面の奥行方向及び手前方向にストライプ状に延伸する平面パターンを有していてもよく、ドット状の平面パターンを有していてもよい。
【0023】
トレンチ10の下面及び両側の側面に沿ってゲート絶縁膜11が設けられている。トレンチ10の内側にはゲート絶縁膜11を介してゲート電極12が埋め込まれている。ゲート絶縁膜11及びゲート電極12によりトレンチゲート型の絶縁ゲート型電極構造(11,12)が構成されている。
【0024】
ゲート絶縁膜11としては、シリコン酸化膜(SiO2膜)の他、酸窒化珪素(SiON)膜、ストロンチウム酸化物(SrO)膜、窒化珪素(Si3N4)膜、アルミニウム酸化物(Al2O3)膜、マグネシウム酸化物(MgO)膜、イットリウム酸化物(Y2O3)膜、ハフニウム酸化物(HfO2)膜、ジルコニウム酸化物(ZrO2)膜、タンタル酸化物(Ta2O5)膜、ビスマス酸化物(Bi2O3)膜のいずれか1つの単層膜或いはこれらの複数を積層した複合膜等が採用可能である。ゲート電極12の材料としては、例えばp型不純物又はn型不純物を高不純物濃度に添加したポリシリコン層(ドープドポリシリコン層)や、チタン(Ti)、タングステン(W)又はニッケル(Ni)等の高融点金属が使用可能である。
【0025】
電流拡散層3の内部で、且つトレンチ10の底部には、第2導電型(p+型)のゲート底部保護領域4bが設けられている。ゲート底部保護領域4bの上面はトレンチ10の下面に接している。ゲート底部保護領域4bの上面はトレンチ10の下面に接しなくともよい。ゲート底部保護領域4bの不純物濃度は、例えば1×1017cm-3以上、1×1019cm-3以下程度である。
【0026】
電流拡散層3の内部には、ゲート底部保護領域4bから離間して、第2導電型(p
+型)の第1埋込領域4a,4cが設けられている。第1埋込領域4a,4cは、ゲート底部保護領域4bと同程度の深さに設けられている。第1埋込領域4a,4cの不純物濃度は、例えば1×10
17cm
-3以上、1×10
19cm
-3以下程度である。第1埋込領域4a,4c及びゲート底部保護領域4bは、例えば、電流拡散層3にp型不純物をイオン注入したSiCからなる領域である。なお、
図1の紙面の手前側又は奥行側において、第1埋込領域4a,4cとゲート底部保護領域4bとを接続するp
+型の接続部が選択的に設けられていてよい。
【0027】
電流拡散層3の上部で、且つ第1埋込領域4a,4cの上面側には、第2導電型(p型)の第2埋込領域5a,5bが設けられている。第2埋込領域5a,5bは第1埋込領域4a,4cとベース領域6a,6bとを電気的に接続する。第2埋込領域5a,5bの下面は、第1埋込領域4a,4cの上面に接している。第2埋込領域5a,5bの側面は、電流拡散層3及びベース領域6a,6bに接している。第2埋込領域5a,5bは、例えば、電流拡散層3及びベース領域6a,6bにp型不純物をイオン注入したSiCからなる領域である。第2埋込領域5a,5bの不純物濃度は、第1埋込領域4a,4cの不純物濃度と同程度であってよく、第1埋込領域4a,4cの不純物濃度よりも低くてもよく、或いは高くてもよい。第2埋込領域5a,5bの不純物濃度は、例えば1×1017cm-3以上、1×1019cm-3以下程度である。
【0028】
第2埋込領域5a,5bの上面側には、第2埋込領域5a,5bよりも高不純物濃度のp+型のベースコンタクト領域8a,8bが設けられている。ベースコンタクト領域8a,8bは、例えば、ベース領域6a,6bにp型不純物をイオン注入したSiCからなる領域である。ベースコンタクト領域8a,8bの不純物濃度は、例えば5×1018cm-3以上、5×1020cm-3以下程度である。ベースコンタクト領域8a,8bは、3C-SiCで構成されていてもよく、4H-SiCで構成されていてもよい。
【0029】
ベースコンタクト領域8aの下面は第2埋込領域5aの上面に接し、ベースコンタクト領域8aの側面はソース領域7aのソース拡張部71a及びソースコンタクト部72aに接する。ベースコンタクト領域8bの下面は第2埋込領域5bの上面に接し、ベースコンタクト領域8bの側面はソース領域7bのソース拡張部71b及びソースコンタクト部72bに接する。ベースコンタクト領域8a,8bの下面は、ソース領域7a,7bのソース拡張部71a,71bの下面と同程度の深さであるが、ソース領域7a,7bのソース拡張部71a,71bの下面よりも浅くてもよく、或いは深くてもよい。第2埋込領域5a,5bの上面は、p+型のベースコンタクト領域8a,8bの下面に接していなくともよい。
【0030】
ゲート電極12の上面側には層間絶縁膜13が設けられている。層間絶縁膜13は、例えば硼素(B)及び燐(P)を添加したシリコン酸化膜(BPSG膜)、燐(P)を添加したシリコン酸化膜(PSG膜)、「NSG」と称される燐(P)や硼素(B)を含まないノンドープのシリコン酸化膜、硼素(B)を添加したシリコン酸化膜(BSG膜)、シリコン窒化膜(Si3N4膜)等の単層膜や、これらの積層膜で構成されている。層間絶縁膜13には、ソースコンタクト部72a,72b及びベースコンタクト領域8a,8bの上面を露出するようにコンタクトホール13a,13bが設けられている。
【0031】
層間絶縁膜13と、層間絶縁膜13のコンタクトホール13a,13bから露出したソースコンタクト部72a,72b及びベースコンタクト領域8a,8bの上面を覆うように第1主電極(ソース電極)(14,15)が設けられている。ソース電極(14,15)は、下層のバリアメタル層14と、上層のソース配線電極15を備える。例えば、バリアメタル層14は、例えば窒化チタン(TiN)、チタン(Ti)、又はTiを下層としたTiN/Tiの積層構造等の金属で構成されている。バリアメタル層14は、ソースコンタクト部72a,72b及びベースコンタクト領域8a,8bに直接接し、ソースコンタクト部72a,72b及びベースコンタクト領域8a,8bと低抵抗でオーミック接触している。
【0032】
ソース配線電極15は、バリアメタル層14を介してソース領域7a,7b及びベースコンタクト領域8a,8bに電気的に接続されている。ソース配線電極15は、ゲート電極12に電気的に接続されるゲート配線電極(図示省略)と分離して設けられている。ソース配線電極15は、例えばアルミニウム(Al)、アルミニウム-シリコン(Al-Si)、アルミニウム-銅(Al-Cu)、銅(Cu)等の金属で構成されている。
【0033】
ドリフト層2の下面側には、ドリフト層2よりも高不純物濃度の第1導電型(n+型)の第2主領域(ドレイン領域)1が設けられている。ドレイン領域1は、例えば4H-SiCからなる半導体基板(SiC基板)で構成されている。ドレイン領域1の不純物濃度は、例えば1×1019cm-3以上、3×1020cm-3以下程度である。ドレイン領域1の厚さは、例えば30μm以上、500μm以下程度である。なお、ドリフト層2とドレイン領域1との間には、ドリフト層2よりも高不純物濃度で、且つドレイン領域1よりも低不純物濃度のn型のバッファ層である、転位変換層や再結合促進層が設けられていてもよい。
【0034】
ドレイン領域1の下面側には、第2主電極(ドレイン電極)16が設けられている。ドレイン電極16としては、例えば金(Au)からなる単層膜や、ドレイン領域1側からチタン(Ti)、ニッケル(Ni)、Auの順で積層された金属膜が使用可能であり、更にその最下層にモリブデン(Mo)、タングステン(W)等の金属膜を積層してもよい。また、ドレイン領域1とドレイン電極16との間にオーミック接触のためのニッケルシリサイド(NiSix)膜等のドレインコンタクト層が設けられてもよい。
【0035】
図1に示したソース領域7aのソース拡張部71a及びソースコンタクト部72a、ゲート絶縁膜11及びゲート電極12を含む破線の領域Aを拡大した断面を
図2に示す。
図2を参照して、ソース拡張部71a及びソースコンタクト部72aの構成と、ソース拡張部71a及びソースコンタクト部72aとゲート電極12との位置関係について説明する。
【0036】
ソース拡張部71aは、ソースコンタクト部72aよりも結晶欠陥が少なく、且つ、ソースコンタクト部72aの結晶欠陥を引き継がない領域である。ソース拡張部71aは、4H-SiC(4C構造)で主に構成されている。ソース拡張部71aに含まれる4H-SiCの割合は、例えば90%以上、100%以下程度である。ソース拡張部71aには、4H-SiC以外に、アモルファス構造、3C-SiC等が僅かに含まれていてもよい。
【0037】
ソースコンタクト部72aの上面からソース拡張部71aの下面までの深さd1は、例えば200nm以上、450nm以下程度である。ソース拡張部71aの厚さは、例えば150nm以上、400nm以下程度である。ソース拡張部71aの不純物濃度は、ソースコンタクト部72aの不純物濃度よりも低い。ソース拡張部71aの不純物濃度は、例えば1×1016/cm3以上、1×1019/cm3以下程度である。ソース拡張部71aは、n型不純物として例えば燐(P)又は窒素(N)を含む。ソース拡張部71aは、n型不純物として砒素(As)を含んでいてもよい。
【0038】
ソースコンタクト部72aは、3C-SiC(3C構造)を含む領域である。ソースコンタクト部72aに含まれる3C-SiCの割合は、例えば10%以上、100%以下程度である。ソースコンタクト部72aは、3C-SiCと4H-SiCとの混晶であってよい。ソースコンタクト部72aには、3C-SiC以外に、アモルファス構造、4H-SiC等が含まれていてもよい。3C-SiCは4H-SiCに比べて禁制帯幅が狭いため、ソースコンタクト部72aが3C-SiCを含むことにより、ソース電極(14,15)と低抵抗でオーミック接触することができる。ソース電極(14,15)と良好なオーミック接触を実現するため、ソースコンタクト部72aに含まれる3C-SiCの割合は10%以上であることが好ましい。
【0039】
ソースコンタクト部72aの上面から下面までの深さ(ソースコンタクト部72aの厚さ)d2は、例えば30nm以上、100nm以下程度である。ソースコンタクト部72aの不純物濃度は、ソース拡張部71aの不純物濃度よりも高い。ソースコンタクト部72aの不純物濃度は、例えば1×1019/cm3以上、1×1022/cm3以下程度である。ソースコンタクト部72aは、n型不純物として例えば燐(P)又は砒素(As)を含む。ソースコンタクト部72aは、n型不純物として例えば窒素(N)を含んでいてもよい。ソースコンタクト部72aは、n型不純物として、P、As、Nのうちの複数種を含んでいてもよい。
【0040】
ソース拡張部71a及びソースコンタクト部72aの結晶構造の作り分けは、ソース拡張部71a及びソースコンタクト部72a毎に、イオン注入する元素、イオン注入時の温度、ドーズ量(不純物濃度)、及び活性化温度等を変更することで実現可能である。3C-SiCを含むソースコンタクト部72aの形成方法としては、例えば、4H-SiCに対して、室温で高濃度のn型不純物のイオン注入を行うことにより、イオン注入のダメージを利用して4H-SiCを崩してアモルファス構造を形成する。その後、活性化アニールを行うことにより、アモルファス構造が再結晶化する際に3C-SiCとなることで、3C-SiCを含むソースコンタクト部72aを形成することができる。
【0041】
一方、4H-SiCのソース拡張部71aの形成方法としては、4H-SiCに対して、高温(例えば500℃程度)で、4H-SiCの構造を崩さない程度の濃度でn型不純物のイオン注入を行うことにより、4H-SiCを維持してソース拡張部71aを形成することができる。
【0042】
ソース拡張部71a及びソースコンタクト部72aの結晶構造の測定方法(観察方法)としては、例えば、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)及び後方散乱電子回折(EBSD)により、表面の結晶構造の面積比を測定可能である。一例として、イオン注入する元素、ドーズ量(不純物濃度)及び活性化温度を同一の条件として、イオン注入時の温度を500℃及び室温(25℃)の2種類で変えてそれぞれ作製した試料をFE-SEM及びEBSDで観察した。その結果、500℃の試料では表面における4H-SiCの割合が100%であった。一方、室温の試料では、表面における4H-SiCの割合が86%であり、3C-SiCの割合が14%であった。
【0043】
図2に示すように、ゲート電極12のゲート絶縁膜11と接する端部の位置の上面(上端)12aは、ソースコンタクト部72aのゲート絶縁膜11と接する位置の下面(下端)72xよりも深く、且つ、ソース拡張部71aのゲート絶縁膜11と接する位置の下面(下端)71xよりも浅い位置にある。ゲート電極12のゲート絶縁膜11と接する位置の上面12aは、ゲート電極12の最上面であってよい。例えば、ゲート電極12の上面全体として下側に凸の曲面である場合には、ゲート電極12の中央部の上面は、ゲート電極12の端部の上面12aよりも深い位置にあってもよい。
【0044】
ゲート電極12とソース拡張部71aは、ゲート絶縁膜11を介して互いに対向する。ゲート電極12とソースコンタクト部72aは、ゲート絶縁膜11を介して互いに対向しない。ソースコンタクト部72aは、ゲート絶縁膜11を介して層間絶縁膜13と対向する。ゲート電極12のソースコンタクト部72aの上面からの落ち込み量d0は、例えば100nm以上、300nm以下程度である。ゲート電極12の落ち込み量d0及びゲート電極12のゲート絶縁膜11と接する位置の上面12aの位置は、例えばゲート電極12のエッチング条件を調整することにより制御可能である。
【0045】
図1に示したソース領域7bのソース拡張部71b及びソースコンタクト部72bは、ソース領域7aのソース拡張部71a及びソースコンタクト部72aとそれぞれ同様の構成であるので、重複した説明を省略する。また、ソース領域7bのソース拡張部71b及びソースコンタクト部72bとゲート電極12との位置関係は、ソース領域7aのソース拡張部71a及びソースコンタクト部72aとゲート電極12との位置関係と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0046】
第1実施形態に係るSiC半導体装置の動作時は、ソース電極(14,15)をアース電位として、ドレイン電極16に正電圧を印加し、ゲート電極12に閾値以上の正電圧を印加すると、ベース領域6a,6bのトレンチ10の側面側に反転層(チャネル)が形成されてオン状態となる。オン状態では、ドレイン電極16からドレイン領域1、ドリフト層2、電流拡散層3、ベース領域6a,6bの反転層及びソース領域7a,7bを経由してソース電極(14,15)へ電流が流れる。一方、ゲート電極12に印加される電圧が閾値未満の場合、ベース領域6a,6bに反転層が形成されないため、オフ状態となり、ドレイン電極16からソース電極(14,15)へ電流が流れない。
【0047】
第1実施形態に係るSiC半導体装置によれば、ソース領域7a,7bをソース拡張部71a及びソースコンタクト部72aの2層構造とし、ソース電極(14,15)と接する上層のソース拡張部71aが3C-SiCを含むことにより、ニッケル(Ni)シリサイド等のシリサイド層を形成せずに、ソースコンタクト部72aがソース電極(14,15)と低抵抗でオーミック接触することができる。よって、シリサイド層を形成した場合と比較して、シリサイド層の剥離等の課題を抑制することができる。
【0048】
また、
図3に示すように、仮に、3C-SiCを含むソース領域7xを単層構造で形成し、ソース領域7xがゲート絶縁膜11を介してゲート電極12と対向する場合を考える。この場合、ソース領域7xが3C-SiCを含むため、ソース領域7xがソース電極(14,15)とオーミック接触することはできる。しかし、3C-SiCは4H-SiCと比較して結晶欠陥が多く、表面の凹凸も大きいため、ゲート電極12とソース領域7xの間にリーク電流I1が流れてしまう恐れがある。
【0049】
これに対して、第1実施形態に係るSiC半導体装置によれば、
図2に示すように、ゲート電極12の上面12aを、ソースコンタクト部72aの下面72xよりも深くし、且つソース拡張部71aの下面71xよりも浅くする。これにより、ソース領域7aのうちの結晶欠陥が少ないソース拡張部71aがゲート絶縁膜11を介してゲート電極12と対向し、ソース領域7aのうちの結晶欠陥が多いソースコンタクト部72aがゲート絶縁膜11を介してゲート電極12と対向しない。よって、ソース領域7aとゲート電極12との間のリーク電流の発生を抑制可能となる。
【0050】
<SiC半導体装置の製造方法>
次に、第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明する。なお、以下に述べるSiC半導体装置の製造方法は一例であり、特許請求の範囲に記載した趣旨の範囲であれば、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
図4は、第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一部の手順のフローチャートであり、以下の説明では
図4を適宜参照して説明する。
【0051】
まず、窒素(N)等のn型不純物が添加されたn
+型の4H-SiCからなる半導体基板(SiC基板)1(
図1参照)を用意する。SiC基板1の上面は、例えば{0001}面から3度~8度のオフ角を有する。SiC基板1の上面に、N等のn型不純物が添加され、SiC基板1よりも低不純物濃度のn
-型の4H-SiCからなるドリフト層2(
図1参照)をエピタキシャル成長させる。次に、
図5に示すように、ドリフト層2の上面に、N等のn型不純物が添加され、ドリフト層2よりも高不純物濃度のn型の4H-SiCからなるn型層3aをエピタキシャル成長させる。なお、n型層3aは、ドリフト層2の上部に、窒素(N)等のn型不純物のイオン注入することにより形成してもよい。
【0052】
次に、化学気相成長(CVD)技術等により、n型層3aの上面に酸化膜を堆積する。酸化膜の上面にフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術及びドライエッチング技術等を用いて酸化膜をパターニングする。パターニングされた酸化膜をイオン注入用マスクとして用いて、アルミニウム(Al)等のp型不純物を選択的にイオン注入する。なお、酸化膜の代わりに、フォトレジスト膜をイオン注入用マスクとして用いてもよい。その後、イオン注入用マスクとして用いた酸化膜を除去する。この結果、
図6に示すように、n型層3aの上部にp
+型の第1埋込領域4a,4c及びp
+型のゲート底部保護領域4bが選択的に形成される。
【0053】
次に、n型層3a、第1埋込領域4a,4c及びゲート底部保護領域4bの上面に、n型の4H-SiCからなるn型層3b(
図7参照)をエピタキシャル成長させる。この結果、n型層3a及びn型層3bからなる電流拡散層3が形成される。次に、
図7に示すように、電流拡散層3の上面に、p型の4H-SiCからなるベース領域6をエピタキシャル成長させる。
【0054】
次に、CVD技術等により、ベース領域6の上面に酸化膜を堆積する。酸化膜の上面にフォトレジスト膜を塗布し、及びドライエッチング技術等を用いて酸化膜をパターニングする。パターニングされた酸化膜をイオン注入用マスクとして用いて、アルミニウム(Al)等のp型不純物を選択的にイオン注入する。なお、酸化膜の代わりに、フォトレジスト膜をイオン注入用マスクとして用いてもよい。その後、イオン注入用マスクとして用いた酸化膜を除去する。この結果、
図8に示すように、第1埋込領域4a,4cの上面側にp型の第2埋込領域5a,5bが選択的に形成される。
【0055】
次に、
図4のステップS11のn
+型ソース拡張部形成工程を行う。このn
+型ソース拡張部形成工程では、CVD技術等により、ベース領域6の上面に酸化膜21(
図9参照)を堆積する。酸化膜21の上面にフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術及びドライエッチング技術等を用いて酸化膜21をパターニングする。パターニングされた酸化膜21をイオン注入用マスクとして用いて、
図9に示すように、窒素(N)等のn型不純物をイオン注入する。なお、酸化膜21の代わりに、フォトレジスト膜をイオン注入用マスクとして用いてもよい。この結果、ベース領域6の上部に、n
+型のソース拡張部71が形成される。
【0056】
ソース拡張部71のイオン注入の際、後述するソースコンタクト部72のイオン注入と比較して低ダメージとするため、n型不純物として、原子数が相対的に小さい燐(P)(元素番号15)が好ましく、原子数が相対的により小さいN(元素番号7)がより好ましい。なお、P又はN以外にも、原子数が相対的に大きい砒素(As)(元素番号33)を注入してもよい。イオン注入時の温度は、後述するソースコンタクト部72のイオン注入よりも高く、例えば300℃以上、600℃以下程度に設定する。イオン注入時のドーズ量は、ソース拡張部71の不純物濃度が例えば1×1016/cm3以上、1×1019/cm3以下程度となるように設定する。
【0057】
次に、
図4のステップS12のn
+型ソースコンタクト部形成工程を行う。このn
+型ソースコンタクト部形成工程では、
図10に示すように、引き続き、酸化膜21をイオン注入用マスクとして用いて、燐(P)等のn型不純物を選択的にイオン注入することにより、なお、酸化膜21の代わりに、フォトレジスト膜をイオン注入用マスクとして用いてもよい。この結果、ソース拡張部71の上面側に、n
+型のソースコンタクト部72が形成される。
【0058】
ソースコンタクト部72のイオン注入により、ソース拡張部71の上面側の4C-SiCの構造を崩してアモルファス構造を形成する。前述したソース拡張部71のイオン注入と比較して高ダメージとするため、n型不純物としては、原子数が相対的に大きいP(元素番号15)が好ましく、原子数が相対的により大きい砒素(As)(元素番号33)がより好ましい。なお、原子数が相対的に小さい窒素(N)を注入してもよい。ソースコンタクト部72のイオン注入では、前述したソース拡張部71のイオン注入と同じ不純物を注入してもよく、異なる不純物を注入してもよい。イオン注入時の温度は、前述したソース拡張部71のイオン注入時の温度よりも低く、例えば20℃以上、150℃以下程度に設定する。イオン注入時のドーズ量は、前述したソース拡張部71のイオン注入により注入される不純物との合計として、ソースコンタクト部72の不純物濃度が例えば1×1019/cm3以上、1×1022/cm3以下程度となるように設定する。その後、イオン注入用マスクとして用いた酸化膜21を除去する。
【0059】
次に、
図4のステップS13のp
+型コンタクト領域形成工程を行う。このp
+型コンタクト領域形成工程では、CVD技術等により、ベース領域6の上面に酸化膜22を堆積する。この酸化膜22の上面にフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術及びドライエッチング技術等を用いて酸化膜22をパターニングする。パターニングされた酸化膜22をイオン注入用マスクとして用いて、
図11に示すように、アルミニウム(Al)やボロン(B)等のp型不純物をイオン注入する。なお、酸化膜22の代わりに、フォトレジスト膜をイオン注入用マスクとして用いてもよい。この結果、第2埋込領域5a,5bの上面側にp
+型のベースコンタクト領域8a,8bが選択的に形成される。その後、イオン注入用マスクとして用いた酸化膜22を除去する。
【0060】
次に、
図4のステップS14の活性化アニール(熱処理)工程を行う。この活性化アニール工程では、例えば1600℃以上、1900℃以下程度で活性化アニールを行うことにより、第1埋込領域4a,4c、ゲート底部保護領域4b、第2埋込領域5a,5b、ソース拡張部71、ソースコンタクト部72及びベースコンタクト領域8a,8b等にそれぞれイオン注入されたp型不純物又はn型不純物を一斉に活性化させる。このとき、ソースコンタクト部72のアモルファス構造が再結晶化し、3C-SiCとなることで、3C-SiCを含むソースコンタクト部72が形成される。
【0061】
なお、ここではすべてのイオン注入工程の後に一括して1回の活性化アニールを行う場合を例示するが、各イオン注入工程後に個別に複数回の活性化アニールを行ってもよい。また、活性化アニールの前に、カーボン(C)からなるキャップ膜を成膜し、キャップ膜で被覆した状態で活性化アニールを行い、活性化アニールの後にキャップ膜を除去してもよい。
【0062】
次に、
図4のステップS15のトレンチ形成工程を行う。このトレンチ形成工程では、CVD技術等により、ベースコンタクト領域8a,8b及びソースコンタクト部72の上面に酸化膜23(
図12参照)を堆積する。酸化膜23の上面にフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術及びドライエッチング技術等を用いて酸化膜をパターニングする。パターニングされた酸化膜23をエッチング用マスクとして用いて、反応性イオンエッチング(RIE)等のドライエッチング技術により、
図12に示すように、ソースコンタクト部72の上面から深さ方向にトレンチ10を選択的に形成する。なお、酸化膜23の代わりに、フォトレジスト膜をエッチング用マスクとして用いてもよい。
【0063】
トレンチ10は、ソース拡張部71、ソースコンタクト部72及びベース領域6を貫通し、更に電流拡散層3の上部を掘り込み、ゲート底部保護領域4bに達する。ソース拡張部71はソース拡張部71a,71bに分割され、ソースコンタクト部72はソースコンタクト部72a,72bに分割され、ベース領域6はベース領域6a,6bに分割される。ソース拡張部71a,71b及びソースコンタクト部72a,72bにより、ソース領域7a,7bが形成される。その後、エッチング用マスクとして用いた酸化膜23を除去する。
【0064】
次に、
図4のステップS16のゲート絶縁膜/ゲート電極形成工程を行う。このゲート絶縁膜/ゲート電極形成工程では、CVD技術、高温酸化(HTO)法又は熱酸化法等により、トレンチ10の下面及び側面、並びにソースコンタクト部72a,72b及びベースコンタクト領域8a,8bの上面に、ゲート絶縁膜11(
図13参照)を形成する。ゲート絶縁膜11の形成時には、例えば900℃以上、1350℃以下程度で熱処理(PDA:Post Deposition Annealing)を行う。
【0065】
次に、CVD技術等により、トレンチ10の内側を埋め込むように、燐(P)やボロン(B)等の不純物を高濃度で添加したポリシリコン層(ドープドポリシリコン層)を堆積する。その後、フォトリソグラフィ技術及びドライエッチングにより、ポリシリコン層の一部及びゲート絶縁膜11の一部を選択的に除去する。この結果、
図13に示すように、ゲート絶縁膜11及びゲート電極12からなる絶縁ゲート型電極構造(11,12)が形成される。このとき、
図2に示すように、ゲート電極12のゲート絶縁膜11と接する位置の上面12aが、ソースコンタクト部72aの下面(下端)72xよりも深く、且つソース拡張部71aの下面(下端)71xよりも浅くなるように、ゲート電極12の落ち込み量d0を調整する。
【0066】
次に、CVD技術等により、絶縁ゲート型電極構造(11,12)の上面に層間絶縁膜13(
図14参照)を堆積する。フォトリソグラフィ技術及びドライエッチング技術等により、層間絶縁膜13の一部を選択的に除去し、
図14に示すように、層間絶縁膜13にソースコンタクト部72a,72b及びベースコンタクト領域8a,8bの上面を露出するコンタクトホール13a,13bを開口する。その後、層間絶縁膜13を平坦化するための熱処理(リフロー)を行ってもよい。
【0067】
次に、スパッタリング技術又は蒸着法等により、
図15に示すように、層間絶縁膜13の上面及び側面と、ソースコンタクト部72a,72b及びベースコンタクト領域8a,8bの上面を覆うように、バリアメタル層14及びソース配線電極15を順次形成し、ソース電極(14,15)を形成する。バリアメタル層14は、ソース領域7a,7bのソースコンタクト部72a,72b及びベースコンタクト領域8a,8bと低抵抗でオーミック接触する。
【0068】
次に、研削又は化学機械研磨(CMP)等により、SiC基板1を下面側から薄化して厚さを調整することにより、ドレイン領域1とする。次に、スパッタリング法又は蒸着法等により、ドレイン領域1の下面の全面に金(Au)等からなるドレイン電極16(
図1参照)を形成する。このようにして、
図1に示したSiC半導体装置が完成する。
【0069】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るSiC半導体装置は、
図1に示した第1実施形態に係るSiC半導体装置と同様の構成である。第2実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法は、
図16に示すように、ステップS23のソースコンタクト部72以外のイオン注入領域のための活性化アニール工程と、ステップS25のソースコンタクト部72のための活性化アニール工程とを分けて行う点が、第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法と異なる。
【0070】
図16のステップS21のn
+型ソース拡張部形成工程よりも前の手順は、第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
図16のステップS21のn
+型ソース拡張部形成工程は、
図4のステップS11のn
+型ソース拡張部形成工程と同様であり、
図9に示すように、n型不純物をイオン注入することにより、n
+型のソース拡張部71を形成する。
【0071】
図16のステップS22のp
+型コンタクト領域形成工程は、
図4のステップS13のp
+型コンタクト領域形成工程と同様であり、
図11に示すように、p型不純物をイオン注入することにより、p
+型のベースコンタクト領域8a,8bを形成する。なお、このとき、n
+型のソースコンタクト部72は形成されていない。
【0072】
図16のステップS23の活性化アニール工程は、
図4のステップS14の活性化アニール工程と同様であり、例えば1600℃以上、1900℃以下程度で活性化アニールを行うことにより、第1埋込領域4a,4c、ゲート底部保護領域4b、第2埋込領域5a,5b、ソース拡張部71及びベースコンタクト領域8a,8b等にそれぞれイオン注入されたp型不純物又はn型不純物を一斉に活性化させる。なお、このとき、n
+型のソースコンタクト部72は形成されていない。
【0073】
図16のステップS24のn
+型ソースコンタクト部形成工程は、
図4のステップS12のn
+型ソースコンタクト部形成工程と同様であり、
図10に示すように、n型不純物をイオン注入することにより、n
+型のソースコンタクト部72を形成する。イオン注入のダメージにより、ソースコンタクト部72に含まれる4H-SiCが崩され、アモルファス構造が形成される。
【0074】
図16のステップS25の活性化アニール工程は、
図16のステップS23の活性化アニール工程の温度よりも低い、例えば1300℃以上、1500℃以下程度で活性化アニールを行うことにより、ソースコンタクト部72にイオン注入されたn型不純物を活性化させる。このとき、ソースコンタクト部72のアモルファス構造が再結晶化し、3C-SiCとなることで、3C-SiCを含むソースコンタクト部72が形成される。
【0075】
図16のステップS26のトレンチ形成工程は、
図4のステップS15のトレンチ形成工程と同様であり、
図12に示すように、ドライエッチング技術等により、ソースコンタクト部72の上面から深さ方向にトレンチ10を選択的に形成する。
【0076】
図16のステップS27のゲート絶縁膜/ゲート電極形成工程は、
図4のステップS16のゲート絶縁膜/ゲート電極形成工程と同様であり、
図13に示すように、トレンチ10の内側に、ゲート絶縁膜11及びゲート電極12からなる絶縁ゲート型電極構造(11,12)を埋め込む。
図16のステップS27のゲート絶縁膜/ゲート電極形成工程よりも後の手順は、第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0077】
第2実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法によれば、第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法と同様に、ソース領域7a,7bがソース電極(14,15)にオーミック接触することができると共に、ゲート電極12とソース領域7a,7bとの間のリーク電流を抑制することができるトレンチゲート型のSiC半導体装置を実現可能となる。
【0078】
更に、第2実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法によれば、ステップS23のソースコンタクト部72以外のイオン注入領域のための活性化アニール工程と、ステップS25のソースコンタクト部72のための活性化アニール工程とを分けて行う。ソースコンタクト部72の3C-SiCの結晶欠陥は、活性化アニール時にアモルファス構造が再結晶化する際に発生するが、ステップS25の活性化アニール工程をステップS23の活性化アニール工程よりも低温で行うため、ソースコンタクト部72からソース拡張部71への結晶欠陥の伝搬を低減又は抑制することができる。
【0079】
(第3実施形態)
第3実施形態に係るSiC半導体装置は、
図1に示した第1実施形態に係るSiC半導体装置と同様の構成である。第3実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法は、
図17に示すように、ステップS36のゲート絶縁膜/ゲート電極形成工程における熱処理(PDA)が、ソースコンタクト部72の活性化アニールを兼ねる点が、第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法と異なる。
【0080】
図17のステップS31のn
+型ソース拡張部形成工程よりも前の手順は、第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
図17のステップS31のn
+型ソース拡張部形成工程は、
図4のステップS11のn
+型ソース拡張部形成工程と同様であり、
図9に示すように、n型不純物をイオン注入することにより、n
+型のソース拡張部71を形成する。
【0081】
図17のステップS32のp
+型コンタクト領域形成工程は、
図4のステップS13のp
+型コンタクト領域形成工程と同様であり、
図11に示すように、p型不純物をイオン注入することにより、p
+型のベースコンタクト領域8a,8bを形成する。なお、このとき、n
+型のソースコンタクト部72は形成されていない。
【0082】
図17のステップS33の活性化アニール工程は、
図4のステップS14の活性化アニール工程と同様であり、例えば1600℃以上、1900℃以下程度で活性化アニールを行うことにより、第1埋込領域4a,4c、ゲート底部保護領域4b、第2埋込領域5a,5b、ソース拡張部71及びベースコンタクト領域8a,8b等にそれぞれイオン注入されたp型不純物又はn型不純物を一斉に活性化させる。なお、このとき、n
+型のソースコンタクト部72は形成されていない。
【0083】
図17のステップS34のn
+型ソースコンタクト部形成工程は、
図4のステップS12のn
+型ソースコンタクト部形成工程と同様であり、
図10に示すように、n型不純物をイオン注入することにより、n
+型のソースコンタクト部72を形成する。イオン注入のダメージにより、ソースコンタクト部72に含まれる4H-SiCが崩され、アモルファス構造が形成される。
【0084】
図17のステップS35のトレンチ形成工程は、
図4のステップS15のトレンチ形成工程と同様であり、
図12に示すように、ドライエッチング技術等により、ソースコンタクト部72の上面から深さ方向にトレンチ10を選択的に形成する。
【0085】
図17のステップS36のゲート絶縁膜/ゲート電極形成工程は、
図4のステップS16のゲート絶縁膜/ゲート電極形成工程と同様であり、
図13に示すように、トレンチ10の内側にゲート絶縁膜11を形成する。ゲート絶縁膜11の形成時に、
図17のステップS33の活性化アニール工程の温度よりも低い、例えば900℃以上、1350℃以下程度の熱処理を行う。この熱処理により、ソースコンタクト部72にイオン注入されたn型不純物を活性化させる。このとき、ソースコンタクト部72のアモルファス構造が再結晶化し、3C-SiCとなることで、3C-SiCを含むソースコンタクト部72が形成される。その後、トレンチ10の内側にゲート電極12を埋め込み、ゲート絶縁膜11及びゲート電極12からなる絶縁ゲート型電極構造(11,12)が形成される。
【0086】
図17のステップS36のゲート絶縁膜/ゲート電極形成工程よりも後の手順は、第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0087】
第3実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法によれば、第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法と同様に、ソース領域7a,7bがソース電極(14,15)にオーミック接触することができると共に、ゲート電極12とソース領域7a,7bとの間のリーク電流を抑制することができるトレンチゲート型のSiC半導体装置を実現可能となる。
【0088】
更に、第3実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法によれば、ソースコンタクト部72の3C-SiCの結晶欠陥は、活性化アニール時にアモルファス構造が再結晶化する際に発生するが、ステップS36のゲート絶縁膜/ゲート電極形成工程における熱処理をステップS33の活性化アニール工程よりも低温で行うため、ソースコンタクト部72からソース拡張部71への結晶欠陥の伝搬を低減又は抑制することができる。更に、ステップS36のゲート絶縁膜/ゲート電極形成工程における熱処理が、ソースコンタクト部72の活性化アニールを兼ねるため、工数の増加を抑制することができる。
【0089】
(その他の実施形態)
上記のように、本開示の第1~第3実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本開示を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0090】
例えば、第1~第3実施形態に係る半導体装置としてMOSFETを例示したが、n+型のドレイン領域1の代わりにp+型のコレクタ領域を設けた構成の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)にも適用可能である。また、IGBT単体以外にも、逆導通型IGBT(RC-IGBT)や、逆阻止絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(RB-IGBT)にも適用可能である。
【0091】
また、第1~第3実施形態が開示する構成を、矛盾の生じない範囲で適宜組み合わせることができる。このように、本開示はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本開示の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0092】
1…ドレイン領域(SiC基板)
2…ドリフト層
3…電流拡散層
3a,3b…n型層
4a,4c…第1埋込領域
4b…ゲート底部保護領域
5a,5b…第2埋込領域
6,6a,6b…ベース領域
7a,7b,7x…ソース領域
8a,8b…ベースコンタクト領域
10…トレンチ
11…ゲート絶縁膜
12…ゲート電極
12a…上面
13…層間絶縁膜
13a,13b…コンタクトホール
14…バリアメタル層
15…ソース配線電極
16…ドレイン電極
21~23…酸化膜
71,71a,71b…ソース拡張部
71x…下面
72,72a,72b…ソースコンタクト部
72x…下面