(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008247
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】観察システム、観察装置
(51)【国際特許分類】
G02B 21/06 20060101AFI20240112BHJP
G02B 21/26 20060101ALI20240112BHJP
G02B 21/36 20060101ALI20240112BHJP
G02B 3/06 20060101ALI20240112BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20240112BHJP
G01N 21/01 20060101ALI20240112BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G02B21/06
G02B21/26
G02B21/36
G02B3/06
G02B3/00 A
G01N21/01 D
G01N21/17 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109955
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】322004393
【氏名又は名称】株式会社エビデント
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】平田 唯史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 晋太郎
【テーマコード(参考)】
2G059
2H052
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB06
2G059BB14
2G059DD13
2G059DD17
2G059EE01
2G059FF01
2G059FF03
2G059FF06
2G059GG03
2G059GG06
2G059GG10
2G059JJ11
2G059KK04
2G059LL01
2G059LL02
2G059MM01
2H052AC05
2H052AC08
2H052AC09
2H052AC18
2H052AC28
2H052AC30
2H052AD18
2H052AF14
(57)【要約】
【課題】容器の広い範囲で容器中の試料を高いコントラストで観察可能とする。
【解決手段】システム100は、試料容器が置かれる載置台と、載置台によって区分される2領域の一方に配置された発光平面を有する面光源と、2領域の他方に配置された観察光学系と、観察光学系を観察光学系の光軸と直交する方向に動かして試料容器の収容部底面と光軸とが交わる観察位置を変更する搬送機構と、発光平面上の発光している領域である発光領域によって定義される発光パターンを制御する制御装置120を備える。制御装置120は、発光パターンを観察位置に応じて変更する第1の発光パターン制御、又は、発光パターンを互いに位相が異なる複数の周期発光パターンの間で切り替える第2の発光パターン制御を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料容器が置かれる載置台と、
前記載置台によって区分される2領域の一方に配置された、発光平面を有する面光源と、
前記2領域の他方に配置された観察光学系と、
前記観察光学系を前記観察光学系の光軸と直交する方向に動かして前記試料容器の収容部底面と前記光軸とが交わる観察位置を変更する搬送機構と、
前記発光平面上の発光している領域である発光領域によって定義される発光パターンを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記発光パターンを前記観察位置に応じて変更する第1の発光パターン制御、又は、
前記発光パターンを互いに位相が異なる複数の周期発光パターンの間で切り替える第2の発光パターン制御を実行する
ことを特徴とする観察システム。
【請求項2】
請求項1に記載の観察システムにおいて、
前記制御部は、前記観察位置に応じて前記発光領域の位置又は幅の少なくとも一方を変更するように、前記第1の発光パターン制御を実行する
ことを特徴とする観察システム。
【請求項3】
請求項2に記載の観察システムにおいて、
前記発光領域の端部のうちの前記光軸に最も近い部分が正の領域に位置するとき、前記発光領域の以下の条件式を満たし、
【数40】
前記発光領域の端部のうちの前記光軸に最も近い部分が負の領域に位置するとき、前記発光領域の以下の条件式を満たす
【数41】
ことを特徴とする観察システム。
但し、S
minは、前記発光領域の一端から前記観察位置への照明光の入射角の正弦である。S
maxは、前記一端よりも正側に位置する前記発光領域の他端から前記観察位置への照明光の入射角の正弦である。NAは、前記観察光学系の物体側の開口数である。
【請求項4】
請求項3に記載の観察システムにおいて、
前記発光領域の端部のうちの前記光軸に最も近い部分が正の領域に位置するとき、前記発光領域の以下の条件式を満たし、
【数42】
前記発光領域の端部のうちの前記光軸に最も近い部分が負の領域に位置するとき、前記発光領域の以下の条件式を満たす
【数43】
ことを特徴とする観察システム。
【請求項5】
請求項1に記載の観察システムにおいて、さらに、
前記複数の周期発光パターンの各々に対応する前記発光領域は、第1の方向に周期的に整列した複数の縞領域からなり、
前記制御部は、前記発光パターンを前記複数の周期発光パターンへ順番に切り替えるように、前記第2の発光パターン制御を実行する
ことを特徴とする観察システム。
【請求項6】
請求項5に記載の観察システムにおいて、
以下の条件式を満たすことを特徴とする観察システム。
【数44】
但し、NAは、前記観察光学系の物体側の開口数である。Pは、前記複数の縞領域のピッチである。dは、前記複数の縞領域の各々の幅である。Hは、前記発光平面と前記観察位置との間の距離の空気換算長である。δは、前記複数の周期発光パターン間の位相差に対応する前記発光平面上における距離である。
【請求項7】
請求項6に記載の観察システムにおいて、
以下の条件式を満たすことを特徴とする観察システム。
【数45】
【請求項8】
請求項7に記載の観察システムにおいて、
以下の条件式を満たすことを特徴とする観察システム。
【数46】
但し、Nは、1以上の整数である。
【請求項9】
請求項5に記載の観察システムにおいて、さらに、
前記載置台と前記面光源との間に配置されたレンチキュラーレンズであって、前記複数の縞領域と同じ周期で前記第1の方向に整列した複数のシリンドリカルレンズ要素を有する、レンチキュラーレンズを備える
ことを特徴とする観察システム。
【請求項10】
請求項9に記載の観察システムにおいて、
以下の条件式を満たすことを特徴とする観察システム。
【数47】
但し、NAは、前記観察光学系の物体側の開口数である。Pは、前記複数の縞領域のピッチである。dは、前記複数の縞領域の各々の幅である。Dは、前記発光平面と前記レンチキュラーレンズの間の距離の空気換算長である。F
lは、前記レンチキュラーレンズの焦点距離である。
【請求項11】
請求項1に記載の観察システムにおいて、
前記複数の周期発光パターンは、互いに位相が異なる複数の第1の周期発光パターンと、互いに位相が異なる複数の第2の周期発光パターンと、を含み、
前記複数の第1の周期発光パターンの各々に対応する前記発光領域は、第1の方向に周期的に整列した複数の第1の縞領域からなり、
前記複数の第2の周期発光パターンの各々に対応する前記発光領域は、前記第1の方向とは異なる第2の方向に周期的に整列した複数の第2の縞領域からなり、
前記制御部は、前記発光パターンを前記複数の周期発光パターンへ順番に切り替えるように、前記第2の発光パターン制御を実行する
ことを特徴とする観察システム。
【請求項12】
請求項11に記載の観察システムにおいて、
以下の条件式を満たすことを特徴とする観察システム。
【数48】
但し、NAは、前記観察光学系の物体側の開口数である。P
xは、前記複数の第1の縞領域のピッチである。P
yは、前記複数の第2の縞領域のピッチである。d
xは、前記複数の第1の縞領域の各々の幅である。d
yは、前記複数の第2の縞領域の各々の幅である。Hは、前記発光平面と前記観察位置との間の距離の空気換算長である。δ
xは、前記複数の周期発光パターン間の位相差に対応する前記発光平面上における距離である。δ
yは、前記複数の周期発光パターン間の位相差に対応する前記発光平面上における距離である。
【請求項13】
請求項12に記載の観察システムにおいて、
以下の条件式を満たすことを特徴とする観察システム。
【数49】
【請求項14】
請求項13に記載の観察システムにおいて、
以下の条件式を満たすことを特徴とする観察システム。
【数50】
但し、N
xは、1以上の整数である。N
yは、1以上の整数である。
【請求項15】
請求項11に記載の観察システムにおいて、さらに、
前記載置台と前記面光源との間に配置されたフライアイレンズであって、前記複数の第1の縞領域と同じ周期で前記第1の方向に整列し、且つ、前記複数の第2の縞領域と同じ周期で前記第2の方向に整列した複数のレンズ要素を有する、フライアイレンズを備える
ことを特徴とする観察システム。
【請求項16】
請求項15に記載の観察システムにおいて、
以下の条件式を満たすことを特徴とする観察システム。
【数51】
但し、NAは、前記観察光学系の物体側の開口数である。Pは、前記複数の縞領域のピッチである。dは、前記複数の縞領域の各々の幅である。Dは、前記発光平面と前記フライアイレンズの間の距離の空気換算長である。F
lは、前記フライアイレンズの焦点距離である。
【請求項17】
請求項5乃至請求項16のいずれか1項に記載の観察システムにおいて、さらに、
前記観察光学系で集光した光が入射する撮像素子と、
前記撮像素子で取得した画像を処理する画像処理部と、を備え、
前記画像処理部は、前記複数の周期発光パターンで取得した複数の画像に基づいて、偏射照明画像を出力する
ことを特徴とする観察システム。
【請求項18】
請求項17に記載の観察システムにおいて、
前記画像処理部は、前記複数の画像の強度を規格化した複数の規格化画像を合成して、前記偏射照明画像を生成する
ことを特徴とする観察システム。
【請求項19】
請求項17に記載の観察システムにおいて、
前記画像処理部は、前記複数の画像の強度の分散に基づいて、前記複数の画像から前記偏射照明画像を選択する
ことを特徴とする観察システム。
【請求項20】
試料容器が置かれる載置台と、
前記載置台によって区分される2領域の一方に配置された発光部であって、出射面に第1方向に周期的に整列した複数の縞領域からなる発光領域を形成する発光部と、
前記2領域の他方に配置された観察光学系と、
前記観察光学系を前記2領域の前記他方内で前記観察光学系の光軸と直交する方向に動かして前記試料容器の収容部底面と前記光軸とが交わる観察位置を変更する搬送機構と、を備え、
前記発光部は、
発光平面を有する面光源と、
前記載置台と前記面光源との間に配置されたレンチキュラーレンズであって、前記複数の縞領域と同じ周期で前記第1方向に整列した複数のシリンドリカルレンズ要素を有する、レンチキュラーレンズと、を備え、
以下の条件式を満たすことを特徴とする観察装置。
【数52】
但し、Y
1は、前記シリンドリカルレンズ要素の曲面中心軸と前記シリンドリカルレンズ要素に最も近い前記縞領域との間の前記第1方向の最短距離である。Y
2は、前記シリンドリカルレンズ要素の曲面中心軸と前記シリンドリカルレンズ要素に最も近い前記縞領域との間の前記第1方向の最大距離である。NAは、前記観察光学系の物体側の開口数である。Pは、前記複数の縞領域のピッチである。Dは、前記出射面と前記レンチキュラーレンズの間の距離の空気換算長である。F
lは、前記レンチキュラーレンズの焦点距離である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、観察システム、観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されるような、培養容器に収容されている細胞を観察する観察装置が知られている。この観察装置では、容器を観察装置のステージに配置するだけで、容器中の細胞を撮影して観察することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/158782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
位相物体である細胞を高いコントラストで観察するためには、偏射照明を採用することが望ましい。しかしながら、通常、偏射照明は容器全体の大きさに対して比較的狭い範囲でしか成立しない。このため、容器中の様々な領域を観察するために観察光学系を移動すると、観察位置は偏射照明が成立する領域から容易にはみ出してしまう。
【0005】
このような課題に対しては、観察光学系の移動に合わせて照明光学系も移動させて、偏射照明が成立する領域自体を動かすといった対応が考えられる。しかしながら、この対応では、透過照明によって偏射照明を実現する場合には、容器を挟んで互いに反対側に配置された観察光学系と照明光学系の移動を連動させる機械的な構造が複雑になり、観察装置の大型化などの別の課題が生じてしまう。
【0006】
以上のような実情を踏まえ、本発明の一側面に係る目的は、容器の広い範囲で容器中の試料を高いコントラストで観察可能とする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る観察システムは、試料容器が置かれる載置台と、前記載置台によって区分される2領域の一方に配置された、発光平面を有する面光源と、前記2領域の他方に配置された観察光学系と、前記観察光学系を前記観察光学系の光軸と直交する方向に動かして前記試料容器の収容部底面と前記光軸とが交わる観察位置を変更する搬送機構と、前記発光平面上の発光している領域である発光領域によって定義される発光パターンを制御する制御部と、を備える。前記制御部は、前記発光パターンを前記観察位置に応じて変更する第1の発光パターン制御、又は、前記発光パターンを互いに位相が異なる複数の周期発光パターンの間で切り替える第2の発光パターン制御を実行する。
【0008】
本発明の一態様に係る観察装置は、試料容器が置かれる載置台と、前記載置台によって区分される2領域の一方に配置された発光部であって、出射面に第1方向に周期的に整列した複数の縞領域からなる発光領域を形成する発光部と、前記2領域の他方に配置された観察光学系と、前記観察光学系を前記2領域の前記他方内で前記観察光学系の光軸と直交する方向に動かして前記試料容器の収容部底面と前記光軸とが交わる観察位置を変更する搬送機構と、を備える。前記発光部は、発光平面を有する面光源と、前記載置台と前記面光源との間に配置されたレンチキュラーレンズであって、前記複数の縞領域と同じ周期で前記第1方向に整列した複数のシリンドリカルレンズ要素を有する、レンチキュラーレンズと、を備える。前記観察装置は、以下の条件式を満たす。
【数1】
【0009】
但し、Y1は、前記シリンドリカルレンズ要素の曲面中心軸と前記シリンドリカルレンズ要素に最も近い前記縞領域との間の前記第1方向の最短距離である。Y2は、前記シリンドリカルレンズ要素の曲面中心軸と前記シリンドリカルレンズ要素に最も近い前記縞領域との間の前記第1方向の最大距離である。NAは、前記観察光学系の物体側の開口数である。Pは、前記複数の縞領域のピッチである。Dは、前記出射面と前記レンチキュラーレンズの間の距離の空気換算長である。Flは、前記レンチキュラーレンズの焦点距離である。
【発明の効果】
【0010】
上記の態様によれば、容器の広い範囲で容器中の試料を高いコントラストで観察可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係るシステムの構成を例示した図である。
【
図2】第1の実施形態に係る観察装置の構成を例示した図である。
【
図4】観察位置に応じて変化する瞳面の照明状態と画像について説明するための図である。
【
図5】観察位置に応じた発光領域の移動について説明するための図である。
【
図6】観察位置に応じた発光パターンの切替について説明するための図である。
【
図7】観察位置毎に取得される画像を例示した図である。
【
図8】パラメータについて説明するための図である。
【
図10】観察位置に応じた発光領域の位置の具体例を示した図である。
【
図11】
図10に示す各発光パターンにおけるシステムのパラメータ値と所定条件の該非を示すテーブルである。
【
図12】観察位置に応じた発光領域の位置の別の具体例を示した図である。
【
図13】
図12に示す各発光パターンにおけるシステムのパラメータ値と所定条件の該非を示すテーブルである。
【
図14】観察位置に応じた発光領域の位置のさらに別の具体例を示した図である。
【
図16】
図14に示す各発光パターンにおけるシステムのパラメータ値と所定条件の該非を示すテーブルである。
【
図17】第2の実施形態に係るシステムにおける発光制御について説明するための図である。
【
図18】複数の周期発光パターンの切替について説明するための図である。
【
図19】パラメータについて説明するための図である。
【
図20】複数の周期発光パターン間の関係について説明するための図である。
【
図21】システムで行われる多点撮影処理のフローチャートである。
【
図22】システムで行われる画像処理のフローチャートである。
【
図23】
図22に示す画像処理で生成される偏射照明画像を例示した図である。
【
図24】第2の実施形態に係る観察装置におけるXY座標について説明するための図である。
【
図25】第2の実施形態に係る観察位置の配置を説明するための図である。
【
図26】複数の周期発光パターンの具体例を示した図である。
【
図27】システムのパラメータ値を示すテーブルである。
【
図28】
図27に示す複数の周期発光パターンの詳細を示すテーブルである。
【
図29】
図27に示す複数の周期発光パターンのそれぞれにおける標本面での照明状態を説明するグラフである。
【
図30】システムの所定条件の該非を示すテーブルである。
【
図31】第3の実施形態に係る複数の周期発光パターンの切替について説明するための図である。
【
図32】第1の周期発光パターンのパラメータについて説明するための図である。
【
図33】第1の周期発光パターン間の関係について説明するための図である。
【
図34】第2の周期発光パターンのパラメータについて説明するための図である。
【
図35】画像処理で生成される偏射照明画像を例示した図である。
【
図36】複数の周期発光パターンの具体例を示した図である。
【
図37】システムのパラメータ値を示すテーブルである。
【
図38】
図36に示す複数の周期発光パターンのうちの複数の第1の周期発光パターンの詳細を示すテーブルである。
【
図39】
図36に示す複数の周期発光パターンのうちの複数の第2の周期発光パターンの詳細を示すテーブルである。
【
図40】
図36に示す複数の第1の周期発光パターンのそれぞれにおける標本面での照明状態を説明するグラフである。
【
図41】システムの第1の周期発光パターンに関する所定条件の該非を示すテーブルである。
【
図42】システムの第2の周期発光パターンに関する所定条件の該非を示すテーブルである。
【
図43】第4の実施形態で用いられる容器について説明するための図である。
【
図44】観察光学系の光軸に沿った断面における観察光学系と容器と光源の断面図である。
【
図45】第2の周期発光パターンの縞発光領域からウェルへ入射する光の光線図である。
【
図46】第2の周期発光パターンの縞発光領域からウェルへ入射する光の光線図である。
【
図47】複数の第2の周期発光パターンのそれぞれにおける標本面での照明状態を説明するグラフである。
【
図48】複数の第1の周期発光パターンのそれぞれにおける標本面での照明状態を説明するグラフである。
【
図49】ウェル内の各位置について生成される偏射照明画像のコントラストを説明するための図である。
【
図50】第5の実施形態に係る観察装置の構成について説明するための図である。
【
図51】発光部の構成について説明するための図である。
【
図52】スリット板の構成について説明するための図である。
【
図53】レンチキュラーレンズの構成について説明するための図である。
【
図54】発光部のパラメータについて説明するための図である。
【
図55】レンチキュラーレンズの焦点距離と出射光の関係について説明するための図である。
【
図56】容器とレンチキュラーレンズの配置関係について説明するための図である。
【
図57】発光部の具体的なパラメータ値を示した図である。
【
図58】観察装置の所定条件の該非を示すテーブルである。
【
図59】第6の実施形態に係る観察装置の発光部の構成について説明するための図である。
【
図60】縞領域の位置に応じた出射光の状態変化について説明するための図である。
【
図61】発光部のパラメータについて説明するための図である。
【
図62】発光部の具体的なパラメータ値を示した図である。
【
図63】複数の周期発光パターンの具体例を示した図である。
【
図64】周期発光パターンにおけるシステムの所定条件の該非を示すテーブルである。
【
図65】第7の実施形態に係る観察装置の発光部に含まれるフライアイレンズの構成について説明するための図である。
【
図66】発光部のパラメータについて説明するための図である。
【
図67】複数の周期発光パターンの具体例を示した図である。
【
図68】第1の周期発光パターンにおけるシステムの所定条件の該非を示すテーブルである。
【
図69】第2の周期発光パターンにおけるシステムの所定条件の該非を示すテーブルである。
【
図70】制御装置を実現するためのコンピュータのハードウェア構成を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係るシステム100の構成を例示した図である。
図2は、本実施形態に係る観察装置1の構成を例示した図である。
図3は、発光パターンを例示した図である。
図4は、観察位置に応じて変化する瞳面の照明状態と画像について説明するための図である。
図5は、観察位置に応じた発光領域の移動について説明するための図である。
図6は、観察位置に応じた発光パターンの切替について説明するための図である。
図7は、観察位置毎に取得される画像を例示した図である。以下、
図1から
図7を参照しながら、システム100について説明する。
【0013】
図1に示すシステム100は、容器2に収容された試料を培養しながら観察する観察システムである。観察対象の試料は、透明な位相物体であり、例えば、任意の培養細胞である。容器2は、試料を収容する容器(以降、試料容器ともいう。)であればよく、例えば、ペトリディッシュであるが、フラスコ、マルチウェルプレートなど他の培養容器であってもよい。
【0014】
システム100は、容器2内で培養されている試料の画像を取得する1つ以上の観察装置1と、観察装置1を制御する制御装置120と、を備えている。観察装置1の各々と制御装置120は、互いにデータをやり取りできればよい。従って、観察装置1の各々と制御装置120は、
図1に示すように有線で通信可能に接続されてもよく、無線で通信可能に接続されてもよい。
【0015】
観察装置1は、容器2に収容された試料を、容器2の下方から撮像する撮像装置である。試料をインキュベータ110から取り出すことなく撮像するために、観察装置1は、例えば、
図1に示すように、インキュベータ110内に配置された状態で使用される。より詳細には、観察装置1は、
図2に示すように、容器2が観察装置1の載置台11に載置された状態でインキュベータ110内に配置され、制御装置120からの指示に従って容器2内に収容された試料の画像を取得する。
【0016】
観察装置1は、
図2に示すように、容器2が配置される透明な載置台11を上面とする箱型の筐体10と、載置台11上で容器2を観察装置1に対して所定の位置へ位置決めする位置決め部材12を備えている。観察装置1は、さらに、観察光学系20と撮像素子30を含む観察ユニット40と、搬送機構50と、面光源60を備えている。
【0017】
観察ユニット40と搬送機構50は、筐体10内部に設けられている。これに対して、面光源60は、筐体10の外部に設けられる。即ち、面光源60は、載置台11によって区分される2領域の一方に配置されているのに対して、観察ユニット40に含まれる観察光学系20は、2領域の他方に配置されている。
【0018】
観察ユニット40は、観察光学系20と撮像素子30を一体化したユニットである。観察光学系20は、容器2の収容部の底面3からの光を撮像素子30に集光する光学系であり、瞳位置に開口絞り21を備えている。また、観察光学系20は、フォーカス位置が変わっても撮影倍率が変わらないように物体側がテレセントリックの光学系になっている。撮像素子30は、イメージセンサであり、特に限定しないが、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary MOS)イメージセンサなどである。
【0019】
搬送機構50は、観察ユニット40を筐体10内で動かす装置であり、観察ユニット40は、搬送機構50に固定されている。搬送機構50は、観察ユニット40を容器2に対して観察光学系20の光軸AXと直交する方向に相対的に移動させる。搬送機構50は、容器2に対する観察ユニット40の相対位置を変更することで、容器2の収容部の底面3と観察光学系20の光軸とが交わる位置(以降、観察位置と記す。)を変更する。
【0020】
観察ユニット40は、観察光学系20の光軸AXと直交する方向、より具体的には、載置台11と平行で且つ互いに直交しているX方向とY方向に移動可能であるが、さらに、X方向とY方向の両方に直交するZ方向にも移動してもよい。
【0021】
面光源60は、発光平面61を有する面光源である。面光源60は、例えば、複数の画素を有するディスプレイデバイスであり、複数の画素の各々からの発光を制御することで様々な発光パターンを形成する。
【0022】
観察装置1は、制御装置120の制御下で各部が動作することで、試料の画像を取得する。具体的には、制御装置120からの指示に従って面光源60が発光し、面光源60が容器2の上方から底面3上の試料を照明する。試料を透過した光は、観察光学系20によって撮像素子30上に集光する。制御装置120からの指示に従って撮像素子30が試料を撮像し試料の画像を取得する。観察装置1が取得した画像は、制御装置120へ出力される。
【0023】
制御装置120は、観察装置1を制御する装置である。観察装置1は、1つ以上のプロセッサと、1つ以上の非一時的なコンピュータ読取可能媒体と、を含んでいればよく、例えば、一般的なコンピュータであってもよい。1つ以上のプロセッサのそれぞれは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)などを含むハードウェアからなる電気回路であり、1つ以上の非一時的なコンピュータ読取可能媒体に記憶されているプログラムを実行することで、プログラムされた処理を行う。また、1つ以上のプロセッサは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などを含んでもよい。
【0024】
以上のように構成された制御装置120は、インキュベータ110内に置かれた観察装置1へ画像取得指示を送信し、観察装置1によって取得された画像を受信する。制御装置120は、制御装置120が備える表示装置に、観察装置1で取得した画像を表示してもよく、これにより、システム100は、利用者が培養中の試料を観察するための観察システムとして機能してもよい。
【0025】
なお、制御装置120は、
図1に示すクライアント端末(クライアント端末130、クライアント端末140)と通信してもよく、クライアント端末が備える表示装置に、観察装置1で取得した画像を表示してもよい。クライアント端末は、表示部を備えていればよく、例えば、デスクトップ型やノート型のコンピュータ、タブレット、スマートフォンなどであってもよい。
【0026】
ところで、細胞などの位相物体である試料を高いコントラストで可視化し、認識可能とするためには、適切な角度で試料に入射した光を集光して試料の像を形成すること、つまり、偏射照明を成立させることが望ましい。しかしながら、一般に、偏射照明は比較的狭い範囲でしか成立しない。このため、ある一定の照明環境下(例えば、特定の発光パターン)では、観察位置を変更すると変更した観察位置では偏射照明が成立範囲から容易に逸脱してしまう。従って、容器内の広い範囲をコントラスト良く観察することができない。
【0027】
例えば、制御装置120が面光源60を制御して、
図3に示すような発光平面61の凡そ真ん中あたりに矩形の発光領域62を有する発光パターンP0で面光源60を発光させた場合を例に説明する。なお、発光パターンとは、発光平面61上の発光している領域である発光領域62によって定義される空間的パターンのことである。発光パターンは、制御装置120によって制御される。
【0028】
この場合、
図4に示すように、発光領域62の真下に観察ユニット40(つまり、観察位置)が位置する場合には、開口絞り21が置かれている瞳面において、瞳の中心部分に照明領域22が形成され、明視野照明が成立する。このため、位相物体である試料の画像に陰影が生じず、試料をコントラスト良く観察することができない。観察ユニット40(観察位置)を発光領域62の真下からある程度ずらすことで、偏射照明が成立し試料の画像に陰影が生じるため、試料を観察することができる。しかしながら、観察ユニット40(観察位置)を発光領域62の真下からずらしすぎると瞳面に光が入射せず暗視野照明となってしまい、再び試料を観察することができなくなってしまう。
【0029】
そこで、システム100では、制御装置120が、観察ユニット40の位置によって定まる観察位置で偏射照明が成立するように、発光パターンを観察位置に応じて変更する発光パターン制御を実行する。具体的には、制御装置120は、観察位置に応じて、面光源60の発光領域62の位置又は幅の少なくとも一方を変更するように、発光パターン制御を実行する。以降では、観察位置に応じて発光パターンを制御する発光パターン制御を第1の発光パターン制御と記し、後述する観察位置に拠らない発光パターン制御(第2の発光パターン制御)と区別する。
【0030】
図5に示す例で説明すると、観察ユニット40が左側から1番目の位置に移動すると、制御装置120は、発光領域62の位置を
図5に示す位置Aに変更することで、面光源60の発光パターンを
図6(a)に示す発光パターンP1へ変更する。同様に、左側から2番目、3番目、4番目、5番目の位置に観察ユニット40が移動すると、制御装置120は、発光領域62の位置を
図5に示す位置B、位置C、位置D、位置Eに変更することで、面光源60の発光パターンを
図6(b)から
図6(e)に示す発光パターンP2、発光パターンP3、発光パターンP4、発光パターンP5へ変更する。
【0031】
これにより、システム100では、各観察位置においてそれぞれ偏射照明が成立することになるため、
図7(a)から
図7(e)に示す画像M1から画像M5のような、コントラストの高い画像を得ることができる。画像M1から画像M5は、それぞれ、左側から1番目から5番目の位置で取得した試料の画像である。試料は例えば光軸上に置かれた円形の細胞であり、背景31に対して明部32と暗部33が生じることで細胞の形状が認識可能となっている。なお、画像M1、画像M2、画像M4は、正側からの偏射照明で得られる画像であり、画像M3、画像M5は、負側からの偏射照明で得られる画像である。
【0032】
図8は、パラメータについて説明するための図である。以下、
図8を参照しながら、第1の発光パターン制御においてシステム100が満たすことが望ましい条件について説明する。
【0033】
まず、第1の発光パターン制御に関連するパラメータの定義について説明する。NAは、観察光学系20の物体側の開口数である。Hは、発光平面61と観察位置との間の距離の空気換算長である。Ysは、観察位置のY座標である。Ymin、Ymaxは、それぞれ発光領域62の両端部のY座標であり、Ymin<Ymaxである。即ち、Ymaxは、Yminに対応する発光領域62の一端よりも正側に位置する発光領域62の他端のY座標であり、発光領域62の正側端部のY座標である。Yminは、発光領域62の負側端部のY座標である。なお、Y座標は、この例では、観察位置が変化するY方向の座標である。
【0034】
Sminは、Yminに対応する発光領域62の一端(負側端部)から観察位置への照明光の入射角の正弦である。Smaxは、Ymaxに対応する発光領域62の他端(正側端部)から観察位置への照明光の入射角の正弦である。
【0035】
観察位置に対して正側から偏射照明を行うとき、システム100は、以下の条件式を満たすことが望ましい。
【数2】
【0036】
これにより、瞳の中心からずれた位置に照明領域22が形成されることになるため、観察位置において偏射照明を成立させることができる。そして、この場合、システム100は、さらに、以下の条件式を満たすことが望ましい。
【数3】
【0037】
これにより、照明領域22が瞳の端まで到達することになるため、観察光学系20が実現可能な最大の入射角で試料を照明することができる。従って、試料を高いコントラストで可視化することができる。
【0038】
また、観察位置に対して負側から偏射照明を行うとき、システム100は、以下の条件式を満たすことが望ましい。
【数4】
【0039】
これにより、瞳の中心からずれた位置に照明領域22が形成されることになるため、観察位置において偏射照明を成立させることができる。そして、この場合、システム100は、さらに、以下の条件式を満たすことが望ましい。
【数5】
【0040】
これにより、照明領域22が瞳の端まで到達することになるため、観察光学系20が実現可能な最大の入射角で試料を照明することができる。従って、試料を高いコントラストで可視化することができる。
【0041】
なお、入射角は、照明光が光軸に対して正側から入射する場合を正の値で表し、照明光が光軸に対して負側から入射する場合を負の値で表す。従って、S
min、S
maxは、以下の式で定義される。
【数6】
【0042】
図9は、観察位置の配置を説明するための図である。
図9に示す容器2は、角型のペトリディッシュであり、87mm×87mmのサイズを有している。容器2中の4×5の計20の観察位置(sp11~sp15、sp21~sp25、sp31~sp35、sp41~sp45)で試料の画像を取得する場合についてシステム100で行われる、第1の発光パターン制御の3つの具体例を示す。なお、いずれの具体例でも、Hは60mm、NAは0.25、実視野のサイズは2.8mm×2.1mmである。
【0043】
図10は、観察位置に応じた発光領域の位置の具体例を示した図である。
図11は、
図10に示す各発光パターンにおけるシステムのパラメータ値と所定条件の該非を示すテーブルT1である。
図10及び
図11は、1つ目の具体例であり、発光領域62の位置を変更する例を示している。
【0044】
図10に示す発光領域62の位置A、B、C、Dは、
図11に示す明部位置1、2、3、4に対応する。
図11に示すように、1つ目の具体例では、観察位置(sp11~sp15、sp21~sp25、sp31~sp35)を観察するときには、システム100は、条件式(1)及び条件式(2)を満たし、正側から偏射照明が成立している。また、観察位置(sp41~sp45)を観察するときには、システム100は、条件式(3)及び条件式(4)を満たし、負側から偏射照明が成立している。
【0045】
図12は、観察位置に応じた発光領域の位置の別の具体例を示した図である。
図13は、
図12に示す各発光パターンにおけるシステムのパラメータ値と所定条件の該非を示すテーブルT2である。
図12及び
図13は、2つ目の具体例であり、発光領域62の位置を変更する例を示している。2つ目の具体例は、負側からの偏射照明を優先している点が1つ目の具体例とは異なっている。
【0046】
図12に示す発光領域62の位置A、B、C、Dは、
図13に示す明部位置1、2、3、4に対応する。
図13に示すように、2つ目の具体例では、観察位置(sp11~sp15、)を観察するときには、システム100は、条件式(1)及び条件式(2)を満たし、正側から偏射照明が成立している。また、観察位置(sp21~sp25、sp31~sp35、sp41~sp45)を観察するときには、システム100は、条件式(3)及び条件式(4)を満たし、負側から偏射照明が成立している。
【0047】
図14は、観察位置に応じた発光領域の位置のさらに別の具体例を示した図である。
図15は、
図14に対応する発光パターンを示した図である。
図16は、
図14に示す各発光パターンにおけるシステムのパラメータ値と所定条件の該非を示すテーブルT3である。
図14から
図16は、3つ目の具体例であり、発光領域62の位置と幅を変更する例を示している。なお、3つ目の具体例は、瞳でケラレる照明光の制御を極力省略している点が1つ目の具体例とは異なっている。
【0048】
図14に示す発光領域62の位置A、B、C、Dは、
図15に示す発光パターンP6、発光パターンP7、発光パターンP8、発光パターンP9に対応し、
図16に示す明部位置1、2、3、4に対応する。
図16に示すように、3つ目の具体例では、1つ目の具体例と同様に、観察位置(sp11~sp15、sp21~sp25、sp31~sp35)を観察するときには、システム100は、条件式(1)及び条件式(2)を満たし、正側から偏射照明が成立している。また、観察位置(sp41~sp45)を観察するときには、システム100は、条件式(3)及び条件式(4)を満たし、負側から偏射照明が成立している。
【0049】
上述した3つの具体例のどれも、観察位置(sp11~sp15)では、正側から偏射照明を成立させ、観察位置(sp41~sp45)では、負側から偏射照明を成立させている。これは、容器2の壁面で照明光がケラレることがないようにするためである。従って、壁面で照明光がケラレない限り、正側、負側の何れから偏射照明が行われてもよい。
【0050】
第1の実施形態に係るシステム100によれば、観察位置によらず、少なくとも観察位置において偏射照明が成立するため、容器の広い範囲で試料を高いコントラストで観察することができる。
【0051】
(第2の実施形態)
本実施形態に係るシステム(以降、単に本システムとも記す。)は、観察装置1と制御装置120を含む点はシステム100と同様である。本システムは、制御装置120が観察位置に応じて発光パターン制御(第1の発光パターン制御)を実行する代わりに、発光パターンを互いに位相が異なる複数の周期発光パターンの間で切り替える発光パターン制御(以降、第2の発光パターン制御と記す。)を実行する点が、システム100とは異なっている。
【0052】
図17は、本実施形態に係るシステムにおける発光制御について説明するための図である。
図18は、複数の周期発光パターンの切替について説明するための図である。以下、
図17及び
図18を参照しながら、第2の発光パターン制御について説明する。
【0053】
本実施形態に係るシステムでは、制御装置120は、各観察位置において、発光平面61に形成する発光パターンを複数の周期発光パターンへ順番に切り替えるように、第2の発光パターン制御を実行する。この第2の発光パターン制御は、観察位置によらずに制御装置120によって行われる。なお、周期発光パターンとは、
図17及び
図18に示すように、一方向(例えば、Y方向)に周期的に整列した複数の縞領域64からなる発光領域63で定義される空間的パターンのことである。
【0054】
制御装置120が、
図18に示すように、互いに位相が異なる複数の周期発光パターン(発光パターンP10~発光パターンP15)を切り替えることで、異なる照明状態において観察装置1が取得した、複数の試料の画像を得ることができる。なお、ここで、位相が異なるとは、縞領域64の基準位置(例えば、1番目の縞の位置)が異なることを意味している。
【0055】
そして、後述するように、切り替える複数の周期発光パターンを適切に設計することで、取得した複数の画像には、観察位置によらず、偏射照明が成立した状態で取得した1枚以上の画像が含まれることになる。従って、本システムでは、観察位置毎に異なる制御を実行する必要がなく、観察位置によらず一定の発光パターン制御(つまり、第2の発光パターン制御)を実行するだけで、コントラストの高い画像を得ることができる。
【0056】
図19は、パラメータについて説明するための図である。
図20は、複数の周期発光パターン間の関係について説明するための図である。以下、
図19及び
図20を参照しながら、第2の発光パターン制御において本システムが満たすことが望ましい条件について説明する。
【0057】
まず、第2の発光パターン制御に関連するパラメータの定義について説明する。NAは、観察光学系20の物体側の開口数である。Pは、複数の縞領域64のピッチである。dは、複数の縞領域64の各々の幅である。Hは、発光平面61と観察位置との間の距離の空気換算長である。δは、複数の周期発光パターン間の位相差に対応する発光平面61上における距離である。つまり、δは、周期発光パターンの切替時に生じる縞領域64の移動量に相当する。
【0058】
この場合、
図19に示す周期発光パターン(発光パターンP16)の各縞領域64の負側端部のY座標Y
M,k,minと正側端部のY座標Y
M,k,maxは、以下の式で定義される。
【数7】
【0059】
ここで、Mは、周期発光パターンに含まれる複数の縞領域64のうちのどの縞領域64かを特定するものであり、縞領域の番号である。kは、複数の周期発光パターン(例えば、
図20に示す発光パターンP17から発光パターンP19)のうちのどの周期発光パターンかを特定するものであり、周期発光パターンの番号である。δ
0は、1つ目の周期発光パターンの1つ目の縞領域の負側端部のY座標である。なお、Y
dmin、Y
dmaxは、発光平面61の最小Y座標と最大Y座標であり、Y
dmin<Y
M,k,min<Y
dmax、Y
dmin<Y
M,k,max<Y
dmaxが成立している。
【0060】
本システムは、以下の条件式を満たすことが望ましい。
【数8】
【0061】
これにより、縞領域64の間隔(P-d)が狭くなりすぎることなく適切に設定される。このため、隣接する2つの縞領域64からの照明光により正側、負側の2方向から観察位置が同時に偏射照明されることを回避することができる。このため、偏射照明で高いコントラストの画像を得ることができる。なお、正側と負側の両方から偏射照明が成立すると、互いに陰影を打ち消してしまい、高いコントラストの画像を得ることが困難になる。
【0062】
本システムは、さらに、以下の条件式を満たすことが望ましい。
【数9】
【0063】
これにより、周期発光パターンの切替によって生じる縞領域64の移動量が制限されて適切に設定される。このため、複数の周期発光パターンのいずれかにおいて必ず偏射照明が成立することになる。なお、縞領域64の移動量が大きすぎると、どの周期発光パターンでも偏射照明が成立しない場合があり、高いコントラストの画像を得ることが困難になる。
【0064】
本システムは、さらに、以下の条件式を満たすことが望ましい。
【数10】
【0065】
これにより、縞領域64の幅が広くなりすぎることなく適切に設定される。このため、複数の周期発光パターンの切替により観察位置における照明状態が変化するため、同じ画像が複数回取得されてしまうといった無駄な撮影を回避することができる。
【0066】
本システムは、さらに、以下の条件式を満たすことが望ましい。Nは、1以上の整数である。
【数11】
【0067】
これにより、
図20に示すように、同じ周期発光パターンがN+1回毎(
図20の例では、4回毎)に生じることになる。このため、少なくともN回(
図20の例では3回)の切替を行うことで、どの周期発光パターンから開始した場合であっても同じ条件で観察位置の画像を取得することができる。
【0068】
図21は、システムで行われる多点撮影処理のフローチャートである。
図22は、システムで行われる画像処理のフローチャートである。
図23は、
図22に示す画像処理で生成される偏射照明画像を例示した図である。以下、
図21から
図23を参照しながら、本システムで行われる多点撮影処理について説明する。
【0069】
本システムでは、
図21に示す多点撮影処理が開始されると、制御装置120は、まずはプロジェクト設定を取得する(ステップS1)。ここで、プロジェクトとはいつどこでどのような条件で撮影を行うかなどの計画のことであり、プロジェクト設定には、少なくとも多点撮影の撮影点(観察位置)の情報が含まれている。また、プロジェクト設定には、撮影点(観察位置)の情報に加えて、撮影予定時刻の情報などが含まれてもよい。
【0070】
制御装置120は、観察光学系20を移動する(ステップS2)。ここでは、ステップS1で取得したプロジェクト設定で指定された位置へ観察光学系20を移動して、観察位置を変更する。
【0071】
その後、制御装置120は、周期発光パターンで面光源60を発光させ(ステップS3)、撮像素子30で試料を撮像し(ステップS4)、さらに、取得した画像を保存する(ステップS5)。ステップS3からステップS5の処理を周期発光パターンの数だけ繰り返す。周期発光パターン数の繰返し処理が終了すると(ステップS6YES)、制御装置120は、
図22に示す画像処理を実行する(ステップS7)。
【0072】
図22に示す画像処理では、制御装置120は、上述した繰り返し処理によって複数の周期発光パターンで取得した複数の画像に基づいて、偏射照明画像を出力する。なお、偏射照明画像とは、位相物体である試料をコントラスト良く可視化した画像であり、偏射照明が成立した状態で取得した画像そのものであってもよい。偏射照明が成立した状態で取得した画像の様に画像処理された画像であってもよく、例えば、偏射照明が成立した状態で取得した少なくとも1つの画像を含む複数の画像に基づいて生成された新たな画像であってもよい。
【0073】
具体的には、制御装置120は、
図22に示すように、照明ムラを除去する処理(ステップS11)と、画像の強度を規格化する処理(ステップS12)と、画像を合成する処理(ステップS13)を行う。
【0074】
ステップS11では、制御装置120は、複数の画像のそれぞれに対して、低周波カット成分をカットするフィルタ処理を行う。このフィルタ処理は、画像領域全体に対して行われる。これにより、撮影により得られた複数の画像(以降、複数のオリジナル画像とも記す。)が、照明ムラが除去された複数の画像(以降、複数のフィルタ済画像と記す。)に変換される。なお、以降では、複数のオリジナル画像の各画素の強度をIo,k,x,yで参照し、複数のフィルタ済画像の各画素の強度をILCF,k,x,yで参照する。kは画像の番号、xは画素の行番号、yは画素の列番号である。
【0075】
ステップS12では、制御装置120は、複数のフィルタ済画像を規格化して、平均強度の等しい複数の規格化画像に変換する。具体的には、制御装置120は、例えば、複数の規格化画像の各画素が以下の式で計算される強度を有するように、複数の規格化画像を生成すればよい。
【数12】
【0076】
ここでは、Inml,k,x,yは複数の規格化画像の各画素の強度である。Iaveは複数の規格化画像の平均画素強度である。nはフィルタ済画像の画素数である。
【0077】
ステップS13では、制御装置120は、複数の規格化画像を合成して、偏射照明画像を生成する。具体的には、制御装置120は、例えば、偏射照明画像の各画素が以下の式で計算される強度を有するように、偏射照明画像を生成すればよい。つまり、各画素が、複数の規格化画像の画素強度と画素平均強度の差分の合計に比例した値だけ背景強度とは異なる強度を有するように、偏射照明画像が生成される。
【数13】
【0078】
ここでは、Idm,x,yは偏射照明画像の各画素の強度である。Ibgは背景強度である。Aはコントラスト調整値である。Nは規格化画像の枚数である。
【0079】
図22に示す画像処理を行うことで、実質的に複数のオリジナル画像に生じていたコントラストが合算されることになるため、
図23(a)に示す画像M6や
図23(b)に示す画像M7に示すような、強いコントラストを有する偏射照明画像を生成することができる。なお、A>0のとき、偏射照明画像は、画像M6のような明部32により試料が表されるポジティブコントラスト画像となる。一方、A<0のとき、偏射照明画像は、画像M7のような暗部33により試料が表されるネガティブコントラスト画像となる。
【0080】
図24は、本実施形態に係る観察装置におけるXY座標について説明するための図である。
図25は、本実施形態に係る観察位置の配置を説明するための図である。
図24に示すように、容器2の四隅のうち位置決め部材12に接している隅を原点とする座標系が定義される。
図25に示す容器2は、角型のペトリディッシュであり、87mm×87mmのサイズを有している。このため、容器2の原点から最も離れた隅の座標は(87,87)である。
【0081】
以下では、
図24に示す座標系において、
図25に示す容器2中の4×5の計20の観察位置(sp11~sp15、sp21~sp25、sp31~sp35、sp41~sp45)で試料の画像を取得する場合について本システムで行われる、第2の発光パターン制御の具体例を示す。なお、いずれの具体例でも、Hは50mm、NAは0.25、実視野のサイズは2.8mm×2.1mmである。
【0082】
図26は、複数の周期発光パターンの具体例を示した図である。
図27は、システムのパラメータ値を示すテーブルT4である。
図28は、
図27に示す複数の周期発光パターンの詳細を示すテーブルT5である。
図29は、
図27に示す複数の周期発光パターンのそれぞれにおける標本面での照明状態を説明するグラフである。
図30は、システムの所定条件の該非を示すテーブルT6である。
【0083】
本実施形態に係るシステムは、
図26に示すように、各観察位置において、6つの周期発光パターン(発光パターンP21から発光パターンP26)を切り替えながら画像を取得する。各周期発光パターンは、
図26に示すように、6つの縞領域64からなる発光領域63を有している。なお、本システムの詳細なパラメータは、
図27に示すとおりである。また、各周期発光パターンの縞領域64のY座標は、
図28に示すとおりである。また、本システムは、
図30に示すように、条件式(9)から条件式(12)をすべて満たしている。
【0084】
以上の条件で、各周期発光パターンを切り替える第2の発光パターン制御を実行することで、
図29(a)から
図29(f)に示すように、周期発光パターンの切替毎に偏射照明が成立する領域がY方向に移動し、全ての周期発光パターンを実行することで容器の全体が偏射照明が成立する領域として網羅される。これにより、任意の観察位置をコントラスト良く観察することができる。
【0085】
なお、
図29に示すグラフの横軸は、観察位置(Y座標)であり、縦軸は、観察位置における照明光の入射角の正弦である。実線はS
minを示し、破線はS
maxを示す。実線と破線で囲まれた網掛け領域が照明光の入射角範囲を示している。さらに、実線の矢印は正側からの偏射照明が成立する観察位置の範囲を示し、破線の矢印は負側からの偏射照明が成立する観察位置の範囲を示している。
【0086】
本システムでも、第1の実施形態に係るシステム100と同様に、観察位置によらず、偏射照明が成立するため、容器の広い範囲で試料を高いコントラストで観察することができる。また、本システムによれば、制御装置120は、観察位置毎に制御内容を変更する必要がなく、任意の観察位置において、高いコントラストの画像を得ることができる。さらに、本システムによれば、観察位置毎の調整が不要なため、高いロバスト性を実現することができる。
【0087】
なお、以上では、ステップS7の画像処理として、
図22に示すような画像合成を含む処理を例示したが、画像処理の内容は、
図22に示す例に限らない。制御装置120は、複数の画像から偏射照明画像を選択する処理を含んでもよい。
【0088】
その場合、ステップS12において、制御装置120は、複数のフィルタ済画像を規格化して、平均強度の等しい複数の規格化画像に変換する。具体的には、制御装置120は、例えば、複数の規格化画像の各画素が以下の式で計算される強度を有するように、複数の規格化画像を生成すればよい。I´
nml,k,x,yは複数の規格化画像の各画素の強度である。
【数14】
【0089】
その後、制御装置120は、以下の式を用いて各規格化画像の強度の分散を算出する。s
2
kは、規格化画像の強度の分散である。
【数15】
【0090】
最後に、制御装置120は、算出した分散に基づいて、偏射照明画像を選択する。具体的には、分散が最大の画像を偏射照明画像として選択すればよい。なお、偏射照明画像は、分散が最大の規格化画像そのものであってもよく、分散が最大の規格化画像に対応するフィルタ済画像であってもよく、分散が最大の規格化画像に対応するオリジナル画像であってもよい。例えば、細胞数や細胞密度などを解析する場合であれば、解析結果の安定性という観点から、分散が最大の規格化画像に対応するフィルタ済画像が最も望ましい。
【0091】
本システムでは、第2の発光パターン制御により、複数の周期発光パターンの少なくともいずれかにおいて観察位置で偏射照明が成立している。従って、画像処理として、上述した画像選択を含む処理を行った場合であっても、偏射照明画像を得ることが可能であり、
図22に示す画像合成を含む処理を行った場合と類似の効果を得ることができる。
【0092】
(第3の実施形態)
図31は、本実施形態に係る複数の周期発光パターンの切替について説明するための図である。本実施形態に係るシステム(以降、単に本システムと記す。)は、制御装置120が第2の発光パターン制御を実行する点は、第2の実施形態に係るシステムと同様である。本システムは、複数の周期発光パターンが、
図31に示すように、互いに位相が異なる複数の第1の周期発光パターン(発光パターンP27から発光パターンP31)と、互いに位相が異なる複数の第2の周期発光パターン(発光パターンP32から発光パターンP36)と、を含んでいる点が、第2の実施形態に係るシステムとは異なっている。
【0093】
なお、複数の第1の周期発光パターンの各々に対応する発光領域63は、第1の方向(例えば、X方向)に周期的に整列した複数の第1の縞領域(縞領域64)からなるのに対して、複数の第2の周期発光パターンの各々に対応する発光領域63は、第1の方向とは異なる第2の方向(例えば、Y方向)に周期的に整列した複数の第2の縞領域(縞領域64)からなっている。この例では、第1の方向と第2の方向は直交している。
【0094】
図32は、第1の周期発光パターンのパラメータについて説明するための図である。
図33は、第1の周期発光パターン間の関係について説明するための図である。
図34は、第2の周期発光パターンのパラメータについて説明するための図である。
図35は、画像処理で生成される偏射照明画像を例示した図である。以下、
図32から
図35を参照しながら、第2の発光パターン制御においてシステムが満たすことが望ましい条件について説明する。
【0095】
まず、第1の周期発光パターンに関連するパラメータの定義について説明する。NAは、観察光学系20の物体側の開口数である。Pxは、第1の周期発光パターンに含まれる複数の縞領域64のピッチである。dxは、第1の周期発光パターンに含まれる複数の縞領域64の各々の幅である。Hは、発光平面61と観察位置との間の距離の空気換算長である。δxは、複数の第1の周期発光パターン間の位相差に対応する発光平面61上における距離である。つまり、δxは、第1の周期発光パターンの切替時に生じる縞領域64の移動量に相当する。
【0096】
この場合、
図32に示す第1の周期発光パターン(発光パターンP37)の各縞領域64の負側端部のX座標X
L,kx,minと正側端部のX座標X
L,kx,maxは、以下の式で定義される。
【数16】
【0097】
ここで、Lは、第1の周期発光パターンに含まれる複数の縞領域64のうちのどの縞領域64かを特定するものであり、縞領域の番号である。kxは、複数の第1の周期発光パターン(例えば、
図33に示す発光パターンP38から発光パターンP41)のうちのどの第1の周期発光パターンかを特定するものであり、第1の周期発光パターンの番号である。δ
x0は、1つ目の第1の周期発光パターンの1つ目の縞領域の負側端部のX座標である。なお、X
dmin、X
dmaxは、発光平面61の最小X座標と最大Y座標であり、X
dmin<X
L,kx,min<X
dmax、X
dmin<X
L,kx,max<X
dmaxが成立している。
【0098】
本システムは、以下の条件式を満たすことが望ましい。
【数17】
【0099】
なお、条件式(19)から条件式(22)は、上述した条件式(9)から条件式(12)に対応するものであり、その意味合いについても同様である。なお、条件式(23)については、条件式(20)と条件式(22)から導出される。
【0100】
次に、第2の周期発光パターンに関連するパラメータの定義について説明する。Pyは、第2の周期発光パターンに含まれる複数の縞領域64のピッチである。dyは、第2の周期発光パターンに含まれる複数の縞領域64の各々の幅である。δyは、複数の第2の周期発光パターン間の位相差に対応する発光平面61上における距離である。つまり、δyは、第2の周期発光パターンの切替時に生じる縞領域64の移動量に相当する。
【0101】
この場合、
図34に示す第2の周期発光パターン(発光パターンP42)の各縞領域64の負側端部のY座標Y
M,ky,minと正側端部のY座標Y
M,ky,maxは、以下の式で定義される。
【数18】
【0102】
ここで、Mは、第2の周期発光パターンに含まれる複数の縞領域64のうちのどの縞領域64かを特定するものであり、縞領域の番号である。kyは、複数の第2の周期発光パターンのうちのどの第2の周期発光パターンかを特定するものであり、第2の周期発光パターンの番号である。δy0は、1つ目の第2の周期発光パターンの1つ目の縞領域の負側端部のY座標である。なお、Ydmin、Ydmaxは、発光平面61の最小Y座標と最大Y座標であり、Ydmin<YM,ky,min<Ydmax、Ydmin<YM,ky,min<Ydmaxが成立している。
【0103】
本システムは、以下の条件式を満たすことが望ましい。
【数19】
【0104】
なお、条件式(26)から条件式(29)は、上述した条件式(9)から条件式(12)に対応するものであり、その意味合いについても同様である。なお、条件式(30)については、条件式(27)と条件式(29)から導出される。
【0105】
本実施形態でも、制御装置120は、
図22に示すように、照明ムラを除去する処理(ステップS11)と、画像の強度を規格化する処理(ステップS12)と、画像を合成する処理(ステップS13)を行う点は、第2の実施形態と同様である。
【0106】
ステップS11では、制御装置120は、複数の第1の周期発光パターンで取得した複数の第1の画像と複数の第2の周期発光パターンで取得した複数の第2の画像のそれぞれに対して、低周波カット成分をカットするフィルタ処理を行う。このフィルタ処理は、画像領域全体に対して行われる。これにより、複数の第1の画像(以降、複数の第1のオリジナル画像とも記す。)と複数の第2の画像(以降、複数の第2のオリジナル画像とも記す。)が、照明ムラが除去された複数の第1の画像と複数の第2の画像(以降、複数の第1のフィルタ済画像と複数の第2のフィルタ済画像と記す。)に変換される。
【0107】
なお、以降では、複数の第1のオリジナル画像の各画素の強度をIo,kx,x,yで参照し、複数の第1のフィルタ済画像の各画素の強度をILCF,kx,x,yで参照する。また、複数の第2のオリジナル画像の各画素の強度をIo,ky,x,yで参照し、複数の第2のフィルタ済画像の各画素の強度をILCF,ky,x,yで参照する。kxは第1の画像の番号、kyは第2の画像の番号、xは画素の行番号、yは画素の列番号である。
【0108】
ステップS12では、制御装置120は、複数の第1のフィルタ済画像と複数の第2のフィルタ済画像を規格化して、平均強度の等しい複数の第1の規格化画像と複数の第2の規格化画像に変換する。
【0109】
具体的には、制御装置120は、例えば、複数の第1の規格化画像の各画素が以下の式で計算される強度を有するように、複数の第1の規格化画像を生成すればよい。
【数20】
【0110】
ここでは、Inml,kx,x,yは複数の第1の規格化画像の各画素の強度である。Iaveは複数の第1の規格化画像(第2の規格化画像)の平均画素強度である。nは第1のフィルタ済画像(第2のフィルタ済画像)の画素数である。
【0111】
また、制御装置120は、複数の第2の規格化画像の各画素が以下の式で計算される強度を有するように、複数の第2の規格化画像を生成すればよい。
【数21】
【0112】
ここでは、Inml,ky,x,yは複数の第2の規格化画像の各画素の強度である。
【0113】
ステップS13では、制御装置120は、複数の第1の規格化画像と複数の第2の規格化画像とを合成して、偏射照明画像を生成する。具体的には、制御装置120は、例えば、偏射照明画像の各画素が以下の式で計算される強度を有するように、偏射照明画像を生成すればよい。つまり、各画素が、複数の規格化画像(第1の規格化画像と第2の規格化画像)の画素強度と画素平均強度の差分の合計に比例した値だけ背景強度とは異なる強度を有するように、偏射照明画像が生成される。
【数22】
【0114】
ここでは、Idm,x,yは偏射照明画像の各画素の強度である。Ibgは背景強度である。Aはコントラスト調整値である。Nxは第1の規格化画像の枚数である。Nyは第2の規格化画像の枚数である。
【0115】
以上の画像処理を行うことで、実質的に複数の第1のオリジナル画像と複数の第2のオリジナル画像に生じていたコントラストが合算されることになる。このため、本実施形態においても、
図35(a)に示す画像M8や
図35(b)に示す画像M9に示すような、強いコントラストを有する偏射照明画像を生成することができる。また、本実施形態では、X方向からの照明で得られた画像とY方向からの照明で得られた画像を合成することで、第2の実施形態と比較して対称性が改善された偏射照明画像を得ることができる。なお、A>0のとき、偏射照明画像は、画像M8のような明部32により試料が表されるポジティブコントラスト画像となる。一方、A<0のとき、偏射照明画像は、画像M9のような暗部33により試料が表されるネガティブコントラスト画像となる。
【0116】
図36は、複数の周期発光パターンの具体例を示した図である。
図37は、システムのパラメータ値を示すテーブルT7である。
図38は、
図36に示す複数の周期発光パターンのうちの複数の第1の周期発光パターンの詳細を示すテーブルT8である。
図39は、
図36に示す複数の周期発光パターンのうちの複数の第2の周期発光パターンの詳細を示すテーブルT9である。
図40は、
図36に示す複数の第1の周期発光パターンのそれぞれにおける標本面での照明状態を説明するグラフである。
図41は、システムの第1の周期発光パターンに関する所定条件の該非を示すテーブルT10である。
図42は、システムの第2の周期発光パターンに関する所定条件の該非を示すテーブルT11である。
【0117】
本実施形態に係るシステムは、
図36に示すように、各観察位置において、12つの周期発光パターン(発光パターンP43から発光パターンP54)を切り替えながら画像を取得する。12つの周期発光パターンは、X方向に周期的な6つの第1の周期発光パターン(発光パターンP43から発光パターンP48)とY方向に周期的な6つの第2の周期発光パターン(発光パターンP49から発光パターンP54)を含んでいる。第1の周期発光パターンは、3つの縞領域64からなる発光領域63を有している。第2の周期発光パターンは、6つの縞領域64からなる発光領域63を有している。
【0118】
なお、本システムの詳細なパラメータは、
図37に示すとおりである。また、各第1の周期発光パターンの縞領域64のX座標は、
図38に示すとおりであり、各第2の周期発光パターンの縞領域64のY座標は、
図39に示すとおりである。また、本システムは、
図41及び
図42に示すように、条件式(19)から条件式(21)、条件式(23)、条件式(26)から条件式(28)、及び、条件式(30)をすべて満たしている。
【0119】
以上の条件で、第2の発光パターン制御を実行することで、第1の周期発光パターンを切り替える毎に偏射照明が成立する領域がX方向に移動し、全ての第1の周期発光パターンを実行することで容器の全体が偏射照明が成立する領域として網羅され、さらに、第2の周期発光パターンを切り替える毎に偏射照明が成立する領域がY方向に移動し、全ての第2の周期発光パターンを実行することで容器の全体が偏射照明が成立する領域として網羅される。なお、
図40(a)から
図40(f)は、このうちのX方向の移動について示している。
図40のグラフの見方は、
図29のグラフと同様である。これにより、任意の観察位置をコントラスト良く観察することができる。
【0120】
本システムでも、上述した実施形態に係るシステムと同様に、観察位置によらず偏射照明が成立するため、容器の広い範囲で試料を高いコントラストで観察することができる。また、本システムは、観察位置毎に制御内容を変更する必要がない点、高いロバスト性を実現することができる点も、第2の実施形態に係るシステムと同様である。さらに、本実施形態に係るシステムによれば、上述した実施形態に係るシステムよりも対称性の高い画像を得ることができる。
【0121】
(第4の実施形態)
図43は、本実施形態で用いられる容器について説明するための図である。
図44は、観察光学系の光軸に沿った断面における観察光学系と容器と光源の断面図である。本実施形態に係るシステム(以降、単に本システムと記す。)は、ペトリディッシュである容器2の代わりに、
図43及び
図44に示すマイクロプレートである容器4を用いる点が、第3の実施形態に係るシステムと異なる。照明パターンの制御を含むその他の点は、第3の実施形態に係るシステムと同様である。なお、容器4は、96ウェルマイクロプレートであり、ウェル上部直径は7mm、ウェル底直径は6.45mm、ウェルの中心間距離は9mmである。
【0122】
図45及び
図46は、第2の周期発光パターンの縞発光領域からウェルへ入射する光の光線図である。より詳細には、ウェル中心座標(X、Y)=(38.1,59.3)を観察位置としたときの様子を示している。
図47は、複数の第2の周期発光パターンのそれぞれにおける標本面での照明状態を説明するグラフである。
図48は、複数の第1の周期発光パターンのそれぞれにおける標本面での照明状態を説明するグラフである。
図49は、ウェル内の各位置について生成される偏射照明画像のコントラストを説明するための図である。
【0123】
図45及び
図46を参照することで、96ウェルマイクロプレートでは照明光がウェルの壁面でケラレたり(破線で示した光線)、培養液の表面張力による照明光が液面で大きく曲がってしまうなどの影響が確認できる。また、その結果として、
図47に示されるように、瞳面における照明領域22(つまり、S
minとS
max)が第2の周期発光パターンの切替に応じて規則的には移動せず、太くなったり狭くなったりする。従って、偏射照明が成立する領域も第2の周期発光パターンの切替によって規則的には変化しない。しかしながら、このように規則性が乱されるものの、複数の第2の周期発光パターンを切り替えることで、ウェルの負端から正端までの全領域で偏射照明を成立させることが可能である。また、X方向についても、
図48に示すように、複数の第1の周期発光パターンを切り替えることで、ウェルの負端から正端までの全領域で偏射照明を成立させることが可能である。
【0124】
従って、本システムによれば、従来のシステムとは異なり、96ウェルマイクロプレートのような収容部が狭い容器であっても、観察できない位置を生じさせることなく、任意の観察位置をコントラスト良く観察することができる。なお、ウェル端付近(ウェル周辺部分)ではウェルWの壁での照明光がケラレや液面の曲がりによって照明方向に乱されて偏ってしまう。その結果、
図49に示すように、中心部分で取得した画像(画像M10から画像M12)と比較して、ウェル周辺部分で取得した画像(画像M13から画像M19)では、コントラストが付く方向が制限されてしまう。ただし、ウェルWの全周にわたって高いコントラストで画像を取得することできる点は、従来システムと比較した大きなメリットである。
【0125】
(第5の実施形態)
図50は、本実施形態に係る観察装置の構成について説明するための図である。
図51は、発光部の構成について説明するための図である。
図52は、スリット板の構成について説明するための図である。
図53は、レンチキュラーレンズの構成について説明するための図である。以下、
図50から
図53を参照しながら、本実施形態に係るシステムの構成について説明する。なお、本実施形態に係るシステムは、観察装置1の代わりに
図50に示す観察装置5を含む点と、制御装置120が空間的な発光パターンの制御を行わない点が上述した他の実施形態に係るシステムとは異なっている。
【0126】
観察装置5は、
図50に示すように、面光源60の代わりに発光部80を備える点が、観察装置1とは異なっている。その他の点は、観察装置1と同様である。即ち、載置台11によって区分される2領域の一方に、観察ユニット40及び図示しない搬送機構50が配置され、その他方に発光部80が配置されている。
【0127】
発光部80は、
図51に示すように、面光源81と、スリット板82と、レンチキュラーレンズ83を備えている。スリット板82は、面光源81とレンチキュラーレンズ83の間に配置され、レンチキュラーレンズ83は、面光源81と載置台11との間に配置されている。なお、
図51は、
図50の破線で示す領域の構成を示している。
【0128】
面光源81は、発光平面を有する任意の光源であるが、上述した面光源60と同様に、例えば、複数の画素を有するディスプレイデバイスであってもよい。スリット板82は、
図52に示すように、一定の方向(第1方向、例えば、Y方向)に周期的に矩形の開口82aを有している。発光部80に含まれる面光源81とスリット板82は、出射面に第1方向に周期的に整列した複数の縞領域からなる発光領域を形成する周期発光パターン形成部を構成する。レンチキュラーレンズ83は、
図53に示すように、周期発光パターン形成部が形成する複数の縞領域と同じ周期で第1方向に整列した複数のシリンドリカルレンズ要素84を有している。
【0129】
観察装置5では、複数の縞領域(開口82a)とシリンドリカルレンズ要素84を適切に設定することで、
図51に示すように、スリット板82の開口82aから出射した照明光は、開口82a内の位置毎に、レンチキュラーレンズ83によってほぼ同じ角度で出射する。
図51に示す光線L1は、開口82aの負側端部から出射する照明光の光線を、光線L2は、開口82aの正側端部から出射する照明光の光線を示している。
【0130】
このため、観察装置5は、ほぼ同じ条件の偏射照明を容器の広い範囲に成立させることが可能であり、観察位置によらず高いコントラストの画像を得ることができる。なお、観察装置5では、様々な試料の高さにおいて高さ毎にほぼ同じ条件の偏射照明が成立する。このため、底面3の高さが異なる様々な容器を使用した場合であっても、観察位置によらず高いコントラストの画像を得ることができる。
【0131】
図54は、発光部のパラメータについて説明するための図である。
図55は、レンチキュラーレンズの焦点距離と出射光の関係について説明するための図である。以下、
図54及び
図55を参照しながら、観察装置5が満たすことが望ましい条件について説明する。
【0132】
まず、観察装置5のパラメータの定義について説明する。NAは、観察光学系20の物体側の開口数である。Dは、スリット板82の出射面とレンチキュラーレンズ83の間の距離の空気換算長である。より詳細には、出射面からシリンドリカルレンズ要素84の面頂までの距離の空気換算長である。Pは、複数の開口82aのピッチであり、また、複数のシリンドリカルレンズ要素84のピッチでもある。即ち、複数の縞領域のピッチである。Y1は、シリンドリカルレンズ要素84の曲面中心軸CXとシリンドリカルレンズ要素84に最も近い縞領域との間の第1方向(この場合、Y方向)の最短距離である。Y2は、シリンドリカルレンズ要素84の曲面中心軸CXとシリンドリカルレンズ要素84に最も近い縞領域との間の第1方向の最大距離である。
【0133】
この場合、レンチキュラーレンズ83の各シリンドリカルレンズ要素84の曲面中心軸CXのY座標Y
ax,Nと、各シリンドリカルレンズ要素84のY方向の有効範囲Y
ef,Nは、以下の式で定義される。ここで、Nは、任意の整数である。Y
ax0は、基準となるシリンドリカルレンズ要素84の曲面中心軸CのY座標である。
【数23】
【0134】
そして、正側から偏射照明を行う場合と負側から偏射照明を行う場合のそれぞれについて、N番目の縞領域のY方向の範囲は以下の式で表される。
(負側からの偏射照明)
【数24】
(正側からの偏射照明)
【数25】
【0135】
観察装置5は、以下の条件式を満たすことが望ましい。
【数26】
【0136】
これにより、縞領域からの照明光が少なくとも瞳面内に入射することになる。なお、Y1の絶対値が上限値を上回ると、照明光が観察光学系20の瞳内に入らず、すべてケラレてしまい、偏射照明が成立しなくなる。また、Y1の絶対値が下限値を下回ると偏射照明の効果小さくなり、画像のコントラストが低下する。
【0137】
本システムは、さらに、以下の条件式を満たすことが望ましい。
【数27】
【0138】
これにより、縞領域からの照明光が瞳の外縁を跨って分布する。なお、Y2の絶対値が上限値を上回ると、隣接する縞領域(開口82a)からの照明光が観察光学系20の瞳に入ってしまう。この場合、照明光の入射方向が正規のものとは逆になるため、画像のコントラストを低下してしまう。また、Y2の絶対値が下限値を下回ると、縞領域からの照明光全体が観察光学系20の瞳内に収まってしまう。このため、良好な偏射照明とはならず、画像に受分なコントラストが付かなくなる。
【0139】
観察装置5は、さらに、以下の条件式を満たすことが望ましい。ここで、F
lは、レンチキュラーレンズの焦点距離である。
【数28】
【0140】
なお、レンチキュラーレンズ83の焦点距離は、以下の式で定義される。ここで、Rは、シリンドリカルレンズ要素84の円筒面の曲率半径である。nはレンチキュラーレンズ83の屈折率である。
【数29】
【0141】
これにより、縞領域からの照明光の光束の過度な収束と発散を回避することができる。
図55(a)に示すように、D/F
lが上限値を上回ると、レンチキュラーレンズ83のパワーが強くなりすぎるため、光束が収束してしまい、観察位置によって照明状態がばらついてしまう。また、
図55(d)に示すように、D/F
lが下限値を下回ると、レンチキュラーレンズ83のパワーが弱くなりすぎるため、光束が発散してしまい、この場合も、観察位置によって照明状態がばらついてしまう。これに対して、
図55(b)及び
図55(c)に示すように、条件式を満たすことで、照明光束の過度な収束・発散を避けることができるため、観察位置に拠らず安定した照明状態を実現することができる。
【0142】
図56は、容器とレンチキュラーレンズの配置関係について説明するための図である。
図57は、発光部の具体的なパラメータ値を示した図である。
図58は、観察装置5の所定条件の該非を示すテーブルT12である。
【0143】
本実施形態に係る観察装置5は、
図56に示すように、容器2が配置される領域よりも広い範囲に亘ってレンチキュラーレンズ83が設けられている。また、観察装置5の詳細なパラメータは、以下のとおりである。なお、βは、観察光学系20の倍率である。Lは、レンチキュラーレンズ83の面頂から下平面までの距離である。
NA=0.25、β=2.2、H=70mm、D=0.6mm、P=0.5mm、Y
1=0.1mm、Y
2=0.2mm、R=0.5mm、L=2mm、n=1.493、F
l=1.014mm
【0144】
また、観察装置5は、
図58に示すように、条件式(38)から条件式(40)をすべて満たしている。従って、観察位置によらずほぼ同じ偏射照明が実現されている。従って、観察装置5及び本システムでも、上述した実施形態に係るシステムと同様に、観察位置によらず、偏射照明が成立するため、容器の広い範囲で試料を高いコントラストで観察することができる。また、観察装置5及び本システムによれば、制御装置120が発光パターンを制御することなく、任意の観察位置において、高いコントラストの画像を得ることができる。
【0145】
(第6の実施形態)
図59は、本実施形態に係る観察装置の発光部の構成について説明するための図である。
図60は、縞領域の位置に応じた出射光の状態変化について説明するための図である。本実施形態に係るシステム(以降、単に本システムと記す。)は、
図59に示すように、観察装置5の発光部80が面光源81とスリット板82の代わりに面光源60を備える点と、制御装置120が第2の発光パターン制御を実行する点が、第5の実施形態に係るシステムとは異なっている。
【0146】
本システムでも、第5の実施形態に係るシステムと同様に、レンチキュラーレンズ83の前側に、第1方向(Y方向)に周期的に整列した複数の縞領域64からなる発光領域を形成する。本システムは、縞領域64を少しずつ第1方向に移動させることで、第2の発光パターン制御を行うという点で、第5の実施形態に係るシステムとは異なっている。
【0147】
レンチキュラーレンズ83の前側で縞領域64を移動させると、
図60に示すように、縞領域64の位置によって、照明状態が変化する。具体的には、
図60(a)に示すような暗視野照明状態、
図60(b)に示すような負側偏射照明状態、
図60(c)に示すような明視野照明状態、
図60(d)に示すような正側偏射照明状態が、順番に発生する。従って、複数の照明状態で取得した複数の画像を用いて第2の実施形態と同様の画像処理を行うことで、高いコントラストの偏射照明画像を得ることができる。
【0148】
図61は、発光部のパラメータについて説明するための図である。以下、
図61を参照しながら、本システムが満たすことが望ましい条件について説明する。
【0149】
まず、本システムのパラメータの定義について説明する。本システムでは、Y1とY2の代わりに、Y0とdが定義される。Y0は、シリンドリカルレンズ要素84の曲面中心軸CXから縞領域の中心までの距離である。なお、Y0は、曲面中心軸CXに対して正側にあるときには特にY0+と記し、負側にあるときには特にY0-と記す。dは、複数の縞領域の各々の幅である。
【0150】
この場合、レンチキュラーレンズ83の各シリンドリカルレンズ要素84の曲面中心軸CXのY座標Yax,Nと、各シリンドリカルレンズ要素84のY方向の有効範囲Yef,Nは、第5の実施形態で記載したとおりである。
【0151】
そして、正側から偏射照明を行う場合と負側から偏射照明を行う場合のそれぞれについて、N番目の縞領域のY方向の範囲は以下の式で表される。
(正側からの偏射照明)
【数30】
(負側からの偏射照明)
【数31】
【0152】
本システムは、さらに、以下の条件式を満たすことが望ましい。
【数32】
【0153】
これにより、Y0を適切に設定することで、隣の縞領域からの光が観察光学系20の瞳に入らないようにしながら偏射照明を実現することができる。なお、dが上限値を上回ると、縞領域からの照明光により偏射照明が成立したとしても隣接する縞領域からの照明光が観察光学系20の瞳に入ってしまう。隣接する縞領域からの照明光は入射方向が正規のものとは逆になるため、画像のコントラストを低下させてしまう。dが下限値を下回ると、照明光は発生しない。
【0154】
本システムは、さらに、正側から偏射照明を行う場合と負側から偏射照明を行う場合、それぞれ以下の条件式を満たすことが望ましい。
【数33】
【0155】
これにより、偏射照明を実現することができる。Y0+が上限値を上回ると、又は、Y0-が下限値を下回ると、照明光が瞳に入射せず偏射照明が成立しない。また、Y0+が下限値を下回ると、又は、Y0-が上限値を上回ると、縞領域からの照明光がすべて瞳内に収まってしまうため、偏射照明の効果が低下し、画像のコントラストが低くなってしまう。
【0156】
本システムは、さらに、正側から偏射照明を行う場合と負側から偏射照明を行う場合、以下の条件式を満たすことが望ましい。
【数34】
【0157】
これにより、隣接する縞領域からの照明光が瞳に入射することを回避できる。Y0+が上限値を上回ると、又は、Y0-が下限値を下回ると、隣接する縞領域からの照明光が瞳に入射してしまう。隣接する縞領域からの照明光は入射方向が正規のものとは逆になるため、画像のコントラストを低下させてしまう。また、Y0+が下限値を下回ると、又は、Y0-が上限値を上回ると、照明光が観察光学系20の瞳中心を跨って広がるため、偏射照明が成立せず、画像にコントラストが付かなくなる。
【0158】
本システムは、さらに、以下の条件式を満たすことが望ましい。この式の意味するところは、第5の実施形態と同様である。
【数35】
【0159】
図62は、発光部の具体的なパラメータ値を示した図である。
図63は、複数の周期発光パターンの具体例を示した図である。
図64は、周期発光パターンにおけるシステムの所定条件の該非を示すテーブルT13である。
【0160】
本実施形態に係るシステムの詳細なパラメータは、以下のとおりである。なお、βは、観察光学系20の倍率である。
NA=0.25、β=2.2、H=70mm、D=6mm、P=4.8mm、d=1mm、R=5mm、L=6mm、n=1.493、Fl=1.014mm
【0161】
本実施形態に係るシステムは、
図63に示すように、各観察位置において、6つの周期発光パターン(発光パターンP55から発光パターンP60)を切り替えながら画像を取得する。各周期発光パターンは、3つの縞領域64からなる発光領域63を有している。発光パターンP55から発光パターンP60のそれぞれのY
0(Y
0,k)は以下の通りである。
Y
0,1=-1.6mm、Y
0,2=-0.8mm、Y
0,3=0.0mm
Y
0,4=0.8mm、Y
0,5=1.6mm、Y
0,6=2.4mm
【0162】
また、本実施形態に係るシステムは、
図64に示すように、1つ目の周期発光パターン(発光パターンP55)において、条件式(44)、条件式(46)、条件式(48)、条件式(49)を満たし、負側からの偏射照明が成立する。また、5つ目の周期発光パターン(発光パターンP59)において、条件式(44)、条件式(45)、条件式(47)、条件式(49)を満たし、正側からの偏射照明が成立する。従って、本システムでも、上述した実施形態に係るシステムと同様に、観察位置によらず、偏射照明が成立するため、容器の広い範囲で試料を高いコントラストで観察することができる。また、第2の実施形態と同様に、制御装置120は、観察位置毎に制御内容を変更する必要がなく、任意の観察位置において、高いコントラストの画像を得ることができる。さらに、本システムによれば、観察位置毎の調整が不要なため、高いロバスト性を実現することができる。
【0163】
(第7の実施形態)
図65は、本実施形態に係る観察装置の発光部に含まれるフライアイレンズの構成について説明するための図である。本実施形態に係るシステム(以降、単に本システムと記す。)は、観察装置5の発光部80にレンチキュラーレンズ83の代わりに、
図65に示すようなフライアイレンズ93を備える点と、制御装置120が切り替える複数の周期発光パターンが複数の第1の周期発光パターンと複数の第2の周期発光パターンを含む点が、第6の実施形態に係るシステムとは異なっている。
【0164】
フライアイレンズ93は、第1の周期発光パターンに含まれる複数の第1の縞領域と同じ周期で第1の方向に整列し、且つ、第2の周期発光パターンに含まれる複数の第2の縞領域と同じ周期で第2の方向に整列した複数のレンズ要素94を有している。
【0165】
図66は、発光部のパラメータについて説明するための図である。以下、
図66を参照しながら、本システムが満たすことが望ましい条件について説明する。
【0166】
まず、本システムのパラメータの定義について説明する。本システムでは、Y0に加えてX0も定義される点が、第6の実施形態とは異なる。X0、Y0は、それぞれレンズ要素94の曲面中心軸CXから縞領域の中心までのX方向、Y方向の距離である。なお、X0は、曲面中心軸CXに対して正側にあるときには特にX0+と記し、負側にあるときには特にX0-と記す。Y0は、曲面中心軸CXに対して正側にあるときには特にY0+と記し、負側にあるときには特にY0-と記す。
【0167】
この場合、フライアイレンズ93の各レンズ要素94の曲面中心軸CXのX座標X
ax,M、Y座標Y
ax,Nと、各レンズ要素94のX方向の有効範囲X
ef,M、Y方向の有効範囲Y
ef,Nは、以下の式で定義される。ここで、M、Nは、任意の整数である。X
ax0、Y
ax0は、基準となるレンズ要素94の曲面中心軸CのX座標、Y座標である。
【数36】
【0168】
そして、正側から偏射照明を行う場合と負側から偏射照明を行う場合のそれぞれについて、第1の周期発光パターンのM番目の縞領域のX方向の範囲X
iLL,M、第2の周期発光パターンのN番目の縞領域のY方向の範囲Y
iLL,Nは以下の式で表される。
(正側からの偏射照明)
【数37】
(負側からの偏射照明)
【数38】
【0169】
本システムは、さらに、以下の条件式を満たすことが望ましい。
【数39】
【0170】
これにより、Y0を適切に設定することで、隣の縞領域からの光が観察光学系20の瞳に入らないようにしながら偏射照明を実現することができる。なお、dが上限値を上回ると、縞領域からの照明光により偏射照明が成立したとしても隣接する縞領域からの照明光が観察光学系20の瞳に入ってしまう。隣接する縞領域からの照明光は入射方向が正規のものとは逆になるため、画像のコントラストを低下させてしまう。dが下限値を下回ると、照明光は発生しない。
【0171】
なお、条件式(58)、条件式(67)は、上述した条件式(44)、条件式(49)と同じものであり、その意味合いについても同様である。なお、Flは、フライアイレンズ93の焦点距離である。なお、X方向に関する条件式(59)から条件式(62)とY方向に関する条件式(63)から条件式(66)は、上述した条件式(45)から条件式(48)に対応するものであり、その意味合いについても同様である。
【0172】
図67は、複数の周期発光パターンの具体例を示した図である。
図68は、第1の周期発光パターンにおけるシステムの所定条件の該非を示すテーブルT14である。
図69は、第2の周期発光パターンにおけるシステムの所定条件の該非を示すテーブルT15である。
【0173】
本実施形態に係るシステムの詳細なパラメータは、以下のとおりである。なお、βは、観察光学系20の倍率である。
NA=0.25、β=2.2、H=70mm、D=6mm、P=4.8mm、d=1mm、R=5mm、L=6mm、n=1.493、Fl=1.014mm
【0174】
本実施形態に係るシステムは、
図67に示すように、各観察位置において、12つの周期発光パターン(発光パターンP61から発光パターンP72)を切り替えながら画像を取得する。12つの周期発光パターンは、X方向に周期的な6つの第1の周期発光パターン(発光パターンP61から発光パターンP66)とY方向に周期的な6つの第2の周期発光パターン(発光パターンP67から発光パターンP72)を含んでいる。第1の周期発光パターンは、3つの縞領域64からなる発光領域63を有している。第2の周期発光パターンは、6つの縞領域64からなる発光領域63を有している。発光パターンP61から発光パターンP66のそれぞれのX
0(X
0,k)は以下の通りである。また、発光パターンP67から発光パターンP72のそれぞれのY
0(Y
0,k)は以下の通りである。
X
0,1=-1.6mm、X
0,2=-0.8mm、X
0,3=0.0mm
X
0,4=0.8mm、X
0,5=1.6mm、X
0,6=2.4mm
Y
0,1=-1.6mm、Y
0,2=-0.8mm、Y
0,3=0.0mm
Y
0,4=0.8mm、Y
0,5=1.6mm、Y
0,6=2.4mm
【0175】
また、本実施形態に係るシステムは、
図68に示すように、1つ目の第1の周期発光パターン(発光パターンP61)において、条件式(58)、条件式(61)、条件式(62)、条件式(67)を満たし、負側からの偏射照明が成立する。また、5つ目の第1の周期発光パターン(発光パターンP65)において、条件式(58)、条件式(59)、条件式(60)、条件式(67)を満たし、正側からの偏射照明が成立する。また、本実施形態に係るシステムは、
図69に示すように、1つ目の第2の周期発光パターン(発光パターンP67)において、条件式(58)、条件式(65)、条件式(66)、条件式(67)を満たし、負側からの偏射照明が成立する。また、5つ目の第2の周期発光パターン(発光パターンP71)において、条件式(58)、条件式(63)、条件式(64)、条件式(67)を満たし、正側からの偏射照明が成立する。従って、本システムでも、上述した実施形態に係るシステムと同様に、観察位置によらず、偏射照明が成立するため、容器の広い範囲で試料を高いコントラストで観察することができる。また、第3の実施形態と同様に、制御装置120は、観察位置毎に制御内容を変更する必要がなく、任意の観察位置において、高いコントラストの画像を得ることができる。さらに、本システムによれば、観察位置毎の調整が不要なため、高いロバスト性を実現することができる。
【0176】
上述した実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。上述の実施形態を変形した変形形態および上述した実施形態に代替する代替形態が包含され得る。つまり、各実施形態は、その趣旨および範囲を逸脱しない範囲で構成要素を変形することが可能である。また、1つ以上の実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより、新たな実施形態を実施することができる。また、各実施形態に示される構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよく、または実施形態に示される構成要素にいくつかの構成要素を追加してもよい。さらに、各実施形態に示す処理手順は、矛盾しない限り順序を入れ替えて行われてもよい。即ち、本発明の観察システム、観察装置は、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0177】
上述した実施形態では、観察装置と制御装置が別々の装置である場合を例示したが、これらは単一の装置として構成されてもよい。即ち、観察装置自身が制御装置として動作してもよく、上述した発光制御を行う制御部、画像処理を行う画像処理部として機能してもよい。また、観察装置とは別の装置である制御装置は、発光制御を行う制御部、画像処理を行う画像処理部のうちの一方の機能のみを実現してもよく、他方の機能については観察装置が実現してもよい。即ち、観察装置単体で上述した観察システムとして動作してもよい。
【0178】
図70は、制御装置を実現するためのコンピュータのハードウェア構成を例示した図である。
図70に示すハードウェア構成は、例えば、プロセッサ1001、メモリ1002、記憶装置1003、読取装置1004、通信インタフェース1006、及び入出力インタフェース1007を備える。なお、プロセッサ1001、メモリ1002、記憶装置1003、読取装置1004、通信インタフェース1006、及び入出力インタフェース1007は、例えば、バス1008を介して互いに接続されている。
【0179】
プロセッサ1001は、任意の電気回路であり、例えば、シングルプロセッサであっても、マルチプロセッサやマルチコアプロセッサであってもよい。プロセッサ1001は、記憶装置1003に格納されているプログラムを読み出して実行することで、上述した発光制御や画像処理を行ってもよい。
【0180】
メモリ1002は、例えば、半導体メモリであり、RAM領域およびROM領域を含んでいてよい。記憶装置1003は、例えばハードディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、または外部記憶装置である。
【0181】
読取装置1004は、例えば、プロセッサ1001の指示に従って記憶媒体1005にアクセスする。記憶媒体1005は、例えば、半導体デバイス、磁気的作用により情報が入出力される媒体、光学的作用により情報が入出力される媒体などにより実現される。なお、半導体デバイスは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリである。また、磁気的作用により情報が入出力される媒体は、例えば、磁気ディスクである。光学的作用により情報が入出力される媒体は、例えば、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disk)、Blu-ray Disc等(Blu-rayは登録商標)である。
【0182】
通信インタフェース1006は、例えば、プロセッサ1001の指示に従って、他の装置と通信する。入出力インタフェース1007は、例えば、入力装置および出力装置との間のインタフェースである。入力装置は、例えば、ユーザからの指示を受け付けるキーボード、マウス、タッチパネルなどのデバイスであってもよい。出力装置は、例えばディスプレイなどの表示装置、およびスピーカなどの音声装置である。
【0183】
プロセッサ1001が実行するプログラムは、例えば、下記の形態でコンピュータ1000に提供される。
(1)記憶装置1003に予めインストールされている。
(2)記憶媒体1005により提供される。
(3)プログラムサーバなどのサーバから提供される。
【0184】
なお、
図70を参照して述べた制御装置を実現するためのコンピュータ1000のハードウェア構成は例示であり、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、上述の構成の一部が、削除されてもよく、また、新たな構成が追加されてもよい。また、別の実施形態では、例えば、上述の電気回路の一部または全部の機能がFPGA(Field Programmable Gate Array)、SoC(System-on-a-Chip)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、およびPLD(Programmable Logic Device)などによるハードウェアとして実装されてもよい。
【0185】
本明細書において、“Aに基づいて”という表現は、“Aのみに基づいて”を意味するものではなく、“少なくともAに基づいて”を意味し、さらに、“少なくともAに部分的に基づいて”をも意味している。即ち、“Aに基づいて”はAに加えてBに基づいてもよく、Aの一部に基づいてよい。
【符号の説明】
【0186】
1、5:観察装置、2、4:容器、3:底面、10:筐体、11:載置台、12:位置決め部材、20:観察光学系、21:開口絞り、22:照明領域、30:撮像素子、31:背景、32:明部、33:暗部、40:観察ユニット、50:搬送機構、60、81:面光源、61:発光平面、62、63:発光領域、64:縞領域、80:発光部、82:スリット板、82a:開口、83:レンチキュラーレンズ、84:シリンドリカルレンズ要素、93:フライアイレンズ、94:レンズ要素、100:システム、110:インキュベータ、120:制御装置、130、140:クライアント端末、1000:コンピュータ、1001:プロセッサ、1002:メモリ、1003:記憶装置、1004:読取装置、1005:記憶媒体、1006:通信インタフェース、1007:入出力インタフェース、1008:バス