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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082474
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】スイッチング電源
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
H02M3/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196346
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100199864
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 良成
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 省太
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA15
5H730BB43
5H730DD04
5H730EE07
5H730FD24
5H730FF19
5H730VV03
5H730XX03
5H730XX12
5H730XX23
5H730XX32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】出力電圧を切り替えるスイッチング電源においてトランスの2次側に過電圧検出回路を設けることなく外来ノイズの影響を抑制しながら過電圧保護動作を実行するスイッチング電源を提供する。
【解決手段】1次巻線、2次巻線および補助巻線を有するトランスT1と、トランスの1次巻線に接続されたスイッチング回路と、スイッチング回路を制御する制御回路と、2次巻線に誘起された電圧を切り替えて出力電圧として出力する出力電圧切替回路と、フィードバック回路とを備え、補助巻線に誘起された電圧により制御回路を駆動するスイッチング電源であって、補助巻線に誘起された電圧に基づき制御回路の電源電圧端子に印加される電圧を切り替えるVCC切替回路を備える。VCC切替回路は、出力電圧が上昇し異常が発生すると、VCC切替回路が制御回路の電源電圧端子に印加される電圧を制御回路が有する過電圧保護動作を実行する閾値以上の電圧に切り替える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次巻線、2次巻線および補助巻線を有するトランスと、
前記トランスの1次巻線に接続されたスイッチング回路と、
該スイッチング回路を制御する制御回路と、
前記2次巻線に誘起された電圧を直流化する直流化回路と、
前記直流化回路により直流化された電圧を出力抵抗を用いて切り替えて出力電圧として出力する出力電圧切替回路と、
前記出力電圧に応じた信号を前記制御回路にフィードバックするフィードバック回路とを備え、
前記補助巻線に誘起された電圧を前記制御回路の電源電圧端子に印加して前記制御回路を駆動するとともに、前記制御回路が前記フィードバック回路からの前記出力電圧に応じた信号に基づき前記スイッチング回路を制御するスイッチング電源において、
前記補助巻線に誘起された電圧に基づき前記制御回路の電源電圧端子に印加される電圧を切り替えるVCC切替回路をさらに備え、
前記出力電圧が上昇し異常が発生すると、前記VCC切替回路が前記制御回路の電源電圧端子に印加される電圧を、前記制御回路が有する過電圧保護動作を実行する閾値以上の電圧に切り替えることを特徴とするスイッチング電源。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチング電源において、
前記補助巻線は誘起電圧の高い第1の巻線と、誘起電圧の低い第2の巻線とを有し、
前記VCC切替回路はレギュレータ回路を有し、前記第1の巻線に誘起される電圧を前記レギュレータ回路により降圧して前記制御回路に供給する一方、前記第2の巻線に誘起された電圧を用いて前記レギュレータ回路の出力電圧を切り替えることで前記制御回路の電源電圧端子に印加される電圧を切り替えることを特徴とするスイッチング電源。
【請求項3】
請求項2に記載のスイッチング電源において、
前記レギュレータ回路は、降圧レギュレータ素子と、前記降圧レギュレータ素子の制御端子に直列接続された複数のツェナーダイオードとを有し、前記複数のツェナーダイオードの少なくとも一つを前記第2の巻線に誘起された電圧に応じて短絡することで前記レギュレータ回路の出力電圧を切り替えることを特徴とするスイッチング電源。
【請求項4】
請求項3に記載のスイッチング電源において、
前記VCC切替回路は、前記複数のツェナーダイオードの少なくとも一つに並列に接続されたスイッチを有し、前記第2の巻線に誘起された電圧が所定値未満のときは、前記スイッチはオンし、前記第2の巻線に誘起された電圧が所定値以上のときは、前記スイッチをオフするスイッチング電源。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力電圧を切替可能なスイッチング電源の保護回路に関し、詳しくは出力電圧の過電圧を検出して出力を停止するスイッチング電源に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチング電源の1つとして、トランスの1次側コイルに間欠的に電流を流すためのスイッチング素子としてのMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)および該スイッチング素子をオン/オフ制御する制御回路を備え、1次側コイルに電流を流すことで2次側コイルに誘起された電流をダイオードおよびコンデンサにより整流・平滑して出力するスイッチング電源がある。
【0003】
この種のスイッチング電源には、負荷のショートなどによって過大な出力電流が流れたり2次側回路が断線したりして過電圧が発生した場合に、1次側の制御回路へ2次側の異常を知らせてスイッチング動作を停止させる保護機能が設けられているものがある。
例えば、特許文献1には、トランス2次側回路の異常を、フォトカプラを介して1次側の制御回路へ伝達するようにしたスイッチング電源装置が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載されているスイッチング電源装置は、図6に示すように、直流電源電圧Vinを入力電圧として印加してスイッチング素子によりオン/オフして2次側で整流・平滑した後に出力電圧Voutを出力する電源であり、定電圧制御回路で2次側の出力電圧が一定になるように制御し、2次側の出力電圧に応じたフィードバック信号をフォトカプラを介して1次側の制御回路へ伝達するとともに、2次側に異常検出回路を設け、2次側回路に異常が発生したときフィードバック信号をオフする機能を備えている。さらに、2次側で過電圧となったとき、トランスの補助巻線電圧が上昇してスイッチング動作を停止する機能も有している。つまり、特許文献1に記載の発明は、フィードバック信号と補助巻線電圧を併用することで、スイッチング電源制御用ICの動作を停止する発明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020―58166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の特許文献1に記載の発明には次のような問題がある。すなわち、このスイッチング電源は、トランスの補助巻線電圧を整流・平滑しスイッチング回路の制御回路の電源として使用する一方、同じ補助巻線電圧を抵抗で分圧して降下した電圧をスイッチング回路の異常検出用の電圧として制御回路の外部端子(DMG端子)に入力している。このように同じ補助巻線電圧を利用して制御回路の電源電圧を生成するとともに、電圧を降下して異常検出を行った場合、異常電圧の検出値によっては制御回路の電源電圧が定格電圧を超えるおそれがあった。
【0007】
特に、出力電圧が高い電圧(例えば24V)と低い電圧(例えば6V等)を切り替える機能を有しているスイッチング電源のトランス巻数を設計する場合、スイッチング回路の制御回路(スイッチング電源制御用IC)の電源電圧(VCC)をトランスの補助巻線から供給するためにトランス巻数は低い出力電圧を基準に設計する。
しかし、その場合には、出力電圧が高い電圧のときスイッチング電源制御用ICの電源電圧VCCが最大定格以上となるケースが多く、降圧レギュレータでトランスの補助巻線電圧を降圧させてからスイッチング電源制御用ICへ供給する必要がある。
一方、降圧レギュレータを使用した場合には、スイッチング電源制御用ICが備える電源電圧VCC端子の過電圧保護が機能しなくなり、当該VCC端子の過電圧保護機能の代替手段として、トランス2次側にツェナーダイオードとフォトカプラ等で構成する過電圧検出回路を実装する必要がありコスト上昇や実装位置の制限などが課題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するもので、以下のとおりに構成されるスイッチング電源である。
すなわち、1次巻線、2次巻線および補助巻線を有するトランスと、トランスの1次巻線に接続されたスイッチング回路と、該スイッチング回路を制御する制御回路と、2次巻線に誘起された電圧を直流化する直流化回路と、直流化回路により直流化された電圧を出力抵抗を用いて切り替えて出力電圧として出力する出力電圧切替回路と、出力電圧に応じた信号を制御回路にフィードバックするフィードバック回路とを備え、補助巻線に誘起された電圧を制御回路の電源電圧端子に印加して制御回路を駆動するとともに、制御回路がフィードバック回路からの出力電圧に応じた信号に基づきスイッチング回路を制御するスイッチング電源において、補助巻線に誘起された電圧に基づき制御回路の電源電圧端子に印加される電圧を切り替えるVCC切替回路をさらに備え、出力電圧が上昇し異常が発生すると、VCC切替回路が制御回路の電源電圧端子に印加される電圧を、制御回路が有する過電圧保護動作を実行する閾値以上の電圧に切り替えることを特徴とするスイッチング電源である。
【0009】
この構成によれば、制御回路の電源電圧端子(VCC端子)に印加される電圧をVCC切替回路により閾値以上の電圧に切り替えることで過電圧保護動作を実行するので、トランスの2次側に過電圧検出回路を設けることなく、2次側の過電圧を検出しスイッチング動作を停止させて回路の保護を図ることができる。また、制御回路の電源電圧端子の過電圧保護機能を利用するため、従来技術のような制御回路の外部端子(DMG端子)を使用して異常検出しスイッチング動作を停止させる構成と比較して、外来ノイズの影響を抑制することができる。
【0010】
また、本発明は、補助巻線は誘起電圧の高い第1の巻線と、誘起電圧の低い第2の巻線とを有し、VCC切替回路はレギュレータ回路を有し、第1の巻線に誘起される電圧をレギュレータ回路により降圧して制御回路に供給する一方、第2の巻線に誘起された電圧を用いてレギュレータ回路の出力電圧を切り替えることで制御回路の電源電圧端子に印加される電圧を切り替えることを特徴とする。
このような構成により、制御回路の外部端子を使用することなく、過電圧時にスイッチング動作を停止させることができる。
【0011】
また、レギュレータ回路は、降圧レギュレータ素子と、降圧レギュレータ素子の制御端子に直列接続された複数のツェナーダイオードとを有し、複数のツェナーダイオードの少なくとも一つを第2の巻線に誘起された電圧に応じて短絡することでレギュレータ回路の出力電圧を切り替えることを特徴とする。
このような構成により、補助巻線の誘起電圧の電圧値によってレギュレータ回路の出力電圧を簡易な構成で切り替えることができる。
【0012】
また、VCC切替回路は、複数のツェナーダイオードの少なくとも一つに並列に接続されたスイッチを有し、第2の巻線に誘起された電圧が所定値未満のときは、スイッチはオンし、第2の巻線に誘起された電圧が所定値以上のときは、前記スイッチをオフするように構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、過電圧検出回路をトランス2次側に設けることなくトランス2次側の過電圧を検出しスイッチング動作を停止させて回路を保護することができる。また、制御回路の電源電圧端子を利用して出力を停止させるため、電源電圧端子とは別の異常検出用の外部端子を利用して出力を停止させる構成と比較して、外来ノイズの影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るスイッチング電源の構成図である。
図2】出力電圧切替回路の回路図である。
図3】VCC切替回路の回路図である。
図4】VCC切替回路の動作説明図である。
図5】ツェナー電圧の温度係数を説明する図である。
図6】従来回路の過電圧保護機能を備えたスイッチング電源の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係るスイッチング電源について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るスイッチング電源の構成図である。
このスイッチング電源1は、直流電源電圧Vinを入力しオン/オフして電圧変換するスイッチング回路2と、変換されたスイッチング電圧が供給される1次巻線NP、2次巻線NSおよび補助巻線Nsubとを有するトランスT1と、2次巻線NSに誘起されたスイッチング電圧を直流化する、ダイオードD11と平滑コンデンサC11からなる直流化回路(整流・平滑回路)7と、直流化回路7により直流化された出力電圧Voutを切り替えて出力する出力電圧切替回路3と、スイッチング回路2を制御する制御回路4と、制御回路4に電源電圧を供給する補助巻線Nsubに接続されるVCC(制御回路用電源電圧)切替回路5と、出力電圧Voutが所定の電圧となるように、出力電圧切替回路3と接続されフォトカプラPC1で構成されるフィードバック(FB)回路6とから構成されている。FB回路6から制御回路4にフィードバック信号が接続される。
【0016】
制御回路4は、スイッチング回路2を駆動する信号を出力するOUT端子および2次側からのFB回路6の信号を入力するFB端子を有するスイッチング電源制御用IC(図示はしていない)を備える。また、VCC切替回路5から供給される電源電圧VCC端子を備えている。さらに、制御回路4のスイッチング電源制御用ICは、電源電圧VCCが過電圧となったとき、スイッチング回路の制御を停止する過電圧保護動作機能を備えている。
なお、制御回路4は、出力電圧Voutが所定の電圧値となるように、OUT端子よりスイッチング回路2に駆動信号を出力し、スイッチング回路2のオン/オフ周期を制御する周知の回路である。
また、スイッチング回路2も直流電圧をオン/オフするMOSFET(スイッチング素子)と抵抗で構成される周知の回路である。
【0017】
補助巻線Nsubは互いに誘起電圧の異なる2つの巻線出力端子(Nsub1およびNsub2)を有し、2つの巻線出力端子がVCC切替回路5に接続される。VCC切替回路5の出力は電源電圧VCCとして制御回路4に供給される。
【0018】
図2は、出力電圧切替回路の回路図である。
シャントレギュレータIC11と、そのカソードに直列接続された抵抗R11およびR12の直列抵抗回路の一端が接続され、直列抵抗回路の他端は出力電圧+側に接続される。シャントレギュレータIC11のアノードは出力電圧-側に接続される。
シャントレギュレータIC11のレファレンス端子は抵抗R14と抵抗R15の接続点に接続され、抵抗R14の他端は、出力電圧+側に接続され、抵抗R15の他端は出力電圧-側に接続される。
抵抗R14と抵抗R15との接続点とシャントレギュレータIC11のカソードには、直列接続された抵抗R13とコンデンサC12が接続される。
【0019】
抵抗R14と抵抗R15の接続点には、抵抗R16の一端が接続され、抵抗R16の他端はトランジスタ(NPN型)Q11のコレクタに接続され、そのトランジスタQ11のエミッタは出力電圧-側に接続される。トランジスタQ11がオンすると、抵抗R15と抵抗R16が並列接続される。
トランジスタQ11のベースには外部信号である電圧切替信号端子が接続され、この電圧切替信号が入力されると、抵抗R15の抵抗値は抵抗R15と抵抗R16の並列接続の合成抵抗値に切り替わる。抵抗R15と抵抗R16との合成抵抗値は抵抗R15より小さいため、シャントレギュレータIC11のレファレンス(Ref)端子の電圧が一瞬低下する。レファレンス端子電圧が低下すると、シャントレギュレータIC11のカソード電流が増加しフィードバック回路6が働いて出力電圧が上昇し、最終的にはレファレンス端子の電圧は切替前の電圧とほぼ同じ電圧で安定する。このように、電圧切替信号が入力されると、出力電圧は高い電圧に切り替わる。なお、抵抗R14、抵抗R15および抵抗R16は、本発明の「出力抵抗」に相当する。
【0020】
また、抵抗R12には、図1に示すFB回路6のフォトカプラPC1のダイオードが並列に接続され、シャントレギュレータIC11に流れる電流値がフォトカプラPC1を介してフィードバック(FB)信号として1次側の制御回路4に伝達される。
このFB信号により、出力電圧が一定となるように制御回路4およびスイッチング回路2により制御される。
【0021】
図3は、VCC切替回路(制御回路用電圧切替回路)の回路図である。
VCC切替回路5は、トランジスタQ2およびトランジスタQ3、ダイオードD1~D6、コンデンサC4およびC5、抵抗R4~R8で構成される。トランジスタQ3は、抵抗内蔵のデジタルトランジスタ2個で構成される集積回路であり、ダイオードD2~D4はツェナーダイオードである。また、トランジスタQ2およびQ3はNPN型トランジスタである。なお、本発明の降圧レギュレータ素子はトランジスタQ2であり、本発明では「レギュレータ回路」に相当する。
【0022】
トランスT1の補助巻線Nsubの巻き終わりの巻線出力端子Nsub1(以下、本発明では「第1の巻線」という)がダイオードD5のアノードに接続され、ダイオードD5のカソードはコンデンサC5の一端、抵抗R5の一端、トランジスタQ2のコレクタおよびダイオードD1のカソードに接続される。コンデンサC5の他端はGNDに接続され、抵抗R5の他端はトランジスタQ2のベース(本発明の降圧レギュレータ素子の「制御端子」はトランジスタQ2の「ベース」に相当)に接続される。トランジスタQ2のエミッタはダイオードD1のアノード、抵抗R4の一端に接続されて、電源電圧VCCとして出力される。抵抗R4の他端はトランジスタQ2のベースに接続される。
【0023】
トランジスタQ2のベースはツェナーダイオードD2のカソードに接続され、ツェナーダイオードD2およびD3は直列接続される。ツェナーダイオードD3のアノードはGNDに接続される。
トランジスタQ2は、そのコレクタに入力される電圧、すなわち第1の巻線Nsub1の誘起電圧をダイオードD5とコンデンサC5により整流・平滑された電圧を、ツェナーダイオードD2およびD3のツェナー電圧の和にトランジスタQ2のベース・エミッタ間の電圧を加算した電圧値として出力する降圧レギュレータとして機能する。この電圧が制御回路4の電源電圧VCCとして出力される。
【0024】
補助巻線Nsubの途中からの巻線出力端子Nsub2(以下、本発明では「第2の巻線」という)がダイオードD6のアノードに接続され、ダイオードD6のカソードはツェナーダイオードD4のカソード、抵抗R7およびコンデンサC4の一端と接続され、抵抗R7およびコンデンサC4の他端はGNDに接続される。
ツェナーダイオードD4のアノードは、抵抗R6の一端と接続され、抵抗R6の他端は、デジタルトランジスタQ3の一方(図3に示すQ3の右側)のトランジスタのベースに、内蔵の抵抗を介して接続される。デジタルトランジスタQ3の一方のトランジスタのコレクタは他方(図3に示すQ3の左側)のトランジスタのベースに、内蔵の抵抗を介して接続され、抵抗R8の一端と接続される。抵抗R8の他端は、トランジスタQ2のエミッタ、すなわち電源電圧VCCに接続される。
【0025】
デジタルトランジスタQ3の一方および他方のトランジスタの各ベースはデジタルトランジスタに内蔵の抵抗を介してGNDに接続され、各エミッタもGNDに接続される。
また、デジタルトランジスタQ3の他方のトランジスタのコレクタはツェナーダイオードD2およびツェナーダイオードD3の接続点に接続される。
デジタルトランジスタQ3の他方のトランジスタがオンするとツェナーダイオードD3は短絡状態となる。
【0026】
ここで、デジタルトランジスタQ3の他方(図3に示すQ3の左側)のトランジスタは、本発明ではツェナーダイオードD3に並列に接続された「スイッチ」に相当する。このスイッチがオンするとツェナーダイオードD3は短絡状態となり、スイッチがオフするとツェナーダイオードD3としての機能を果たす。また、補助巻線Nsubの巻き始めはGNDに接続される。
なお、第1の巻線(Nsub1)の誘起電圧は第2の巻線(Nsub2)の誘起電圧より高い電圧である。
【0027】
上記で構成されるVCC切替回路5は、補助巻線の出力が通常(異常が発生していない)の状態ではトランジスタQ2のベースに接続された2つのツェナーダイオードD2およびD3のうち、ツェナーダイオードD3は短絡された状態となって電源電圧VCCは低い電圧で出力される。
【0028】
一方、1次巻線の電圧が過電圧となり2次巻線の出力電圧が異常な電圧値となったとき、第2の巻線Nsub2の誘起電圧が上昇し所定値(本発明では、電源電圧VCCが切り替わる第2の巻線Nsub2の誘起電圧)以上になると、デジタルトランジスタQ3の他方(Q3の左側)のトランジスタがオフし、トランジスタQ2のベースに接続されたツェナーダイオードD3はツェナーダイオードとしての機能を果たすようになり、トランジスタQ2のベース電圧が2つのツェナーダイオードのツェナー電圧の和となり、高い出力電圧VCCに切り替わる。
【0029】
これにより、制御回路4の電源電圧VCCが高い電圧に切り替わり、制御回路4の電源電圧VCCが制御回路4の異常検出電圧値以上になるとスイッチング回路の出力を停止する。
すなわち、スイッチング電源1の2次側に異常が発生して過電圧となったときスイッチング電源1の出力を停止することができる。
また、第2の巻線Nsub2の誘起電圧が所定値未満になると、デジタルトランジスタQ3の他方のトランジスタがオンして、電源電圧VCCは通常の電圧値に戻る。
【0030】
以下、VCC切替回路5に接続される補助巻線Nsubの巻数について検討する。
本発明は、出力電圧が切替え可能なスイッチング電源1であり、スイッチング回路2を動作させる制御回路4の電源電圧VCCは、補助巻線Nsubの誘起電圧を整流・平滑化しトランジスタQ2(降圧レギュレータ素子)により制御回路4の動作に必要な電圧に降圧させて使用する。
ここで、補助巻線Nsubの誘起電圧は、出力電圧Voutが切り替わると変化する。変化しても制御回路4の電源電圧VCCは、必ずしも一定に保持する必要はないが、制御回路4の異常検出電圧値未満であること、および動作限界電圧未満にならないことが必要となる。また、2次側に異常が発生して過電圧となれば、その電圧信号を制御回路4に出力する必要がある。
そのため、補助巻線Nsubの巻数の設定が重要となる。
【0031】
補助巻線Nsubの誘起電圧は、Nsub誘起電圧=(Nsub巻数×出力電圧Vout/2次巻線Ns巻数)で、算出される。
本実施形態のスイッチング電源1は、出力電圧Voutが24Vと6Vとを切り替える電源である。第1の巻線Nsub1の電圧は、制御回路の電源電圧VCCとして供給されるためには、推奨電源電圧は16V(最大24Vまで)とし、電源電圧VCCが24.5V以上(最大値26.5Vまで、本発明では「閾値」に相当)になれば、制御回路4は異常検出電圧と判定しスイッチング動作を停止する。
なお、過電圧を検出する機能は出力電圧が24Vの場合のみである。
【0032】
以上の条件で、第1の巻線Nsub1および第2の巻線Nsub2の巻数を検討する。巻数(ターン)は巻き始めからそれぞれの巻線出力端子までのターンとする。また、2次巻線Nsは6ターンとする。なお、第2の巻線Nsub2は補助巻線Nsubの途中に設けられた端子であり、第2の巻線Nsub2の巻数は第1の巻線Nsub1の巻数に含まれる。
出力電圧Voutが6Vのときに、第1の巻線Nsub1の誘起電圧は少なくとも17V(推奨電源電圧16VにトランジスタQ2のベース・エミッタ間の電圧を考慮)を保持するためには、17V=(Nsub1巻数×6V/6ターン)とすると、Nsub1巻数=17ターンとなる。
第2の巻線Nsub2の巻数は、1ターンとすると第2の巻線Nsub2の誘起電圧は1Vとなる。
【0033】
次に、Nsub1巻数は17ターン、Nsub2巻数は1ターンとして、出力電圧が24Vに切替った場合を検討する。
出力電圧が24Vとなるため、Nsub1誘起電圧=(17ターン×24V/6ターン)で、68Vとなる。また、Nsub2誘起電圧=(1ターン×24V/6ターン)で、4Vとなる。
この状態でも、制御回路4の電源電圧VCCは降圧レギュレータにより16Vに維持される。トランジスタQ2の入力電圧は高くなるが、出力は推奨電源電圧16Vに維持されるためトランジスタQ2の損失による温度が上昇しないよう放熱対策を実施する。
【0034】
ここで、出力電圧が異常となった場合の電圧を30Vとすると、Nsub1誘起電圧=(17ターン×30V/6ターン)で、85Vとなり、Nsub2誘起電圧=(1ターン×30V/6ターン)で、5Vとなる。
第2の巻線Nsub2の誘起電圧が5Vとなったときに、電源電圧VCCが切り替わるように回路の条件を設定する。すなわち、ツェナーダイオードD4のツェナー電圧を5Vに設定する。
【0035】
このように設定することにより、出力電圧が6Vのときには第2の巻線Nsub2の誘起電圧は1Vであり、出力電圧が24Vのときには第2の巻線Nsub2の誘起電圧は4Vとなる。これらの電圧ではツェナーダイオードD4は導通せず、トランジスタQ2のベース電圧は変化しないため電源電圧VCCは切り替わらない。
【0036】
出力電圧Voutが30V以上と異常となったときに、第2の巻線Nsub2の誘起電圧は5Vとなり、ツェナーダイオードD4が導通して、ツェナーダイオードD3がスイッチによる短絡状態から解除され通常の機能を果たすようになる。そのため、電源電圧VCCが通常の16Vから24.5V以上となり、制御回路4のスイッチング回路2への動作信号が停止する。
なお、ツェナーダイオードのツェナー電圧は固定されたものではないが、例えば、ツェナーダイオードD2のツェナー電圧は16Vとし、ツェナーダイオードD3のツェナー電圧は8Vとすればよい。
【0037】
以下、図4を参照して、VCC切替回路5の動作を説明する。
図4は、VCC切替回路5の動作説明図である。5つの波形を示しているが、上から順に(A)出力電圧Vout、(B)コンデンサC4電圧、(C)デジタルトランジスタQ3右側素子Vce電圧、(D)同左側素子Vce電圧および(E)電源電圧VCCである。
横軸は時間を示し、(a)時点までの期間は正常レベルであり、異常の発生はない状態である。(a)時点で、例えばシャントレギュレータIC11に異常が発生し、(A)出力電圧Voutが上昇し始める。同時に第2の巻線Nsub2の誘起電圧が上昇し、(B)コンデンサC4電圧も上昇する。
【0038】
(b)時点になると、(B)コンデンサC4電圧がツェナーダイオードD4が導通する電圧に到達する。そうすると、(C)デジタルトランジスタQ3右側素子がオンし、(D)デジタルトランジスタQ3左側素子がオフする。すなわち、ツェナーダイオードD3に並列接続されたスイッチはオンからオフになり、トランジスタQ2のベース電圧は、ツェナーダイオードD2のツェナー電圧から、ツェナーダイオードD3とのツェナー電圧の和電圧に増加する。
【0039】
トランジスタQ2のエミッタ電圧である(E)電源電圧VCCは、高い電圧に切り替わり、制御回路4の電源電圧VCCは異常検出電圧値となる。制御回路4は遅延時間が設けられているため、(c)時点でスイッチング回路2の動作が停止され、以後、(A)出力電圧Voutおよび(B)コンデンサC4電圧は低下していく。(d)時点になると、(B)コンデンサC4電圧が低下し再びツェナーダイオードD4のツェナー電圧未満になるため、(C)~(E)各波形は一旦正常レベルに戻る。その後もスイッチング回路2の動作は停止しているため、(e)時点で、電源電圧VCCが推奨電源電圧を保持できなくなり、さらに電圧が低下していく。(f)時点で、電源電圧VCCが推奨電源電圧の下限まで低下すると動作は不定となる。
以後、異常が解消されれば再び電源が投入されて正常レベルに戻る。
【0040】
ここで、Nsub巻線の誘起電圧は、上記の出力電圧Voutに関係する式を用いて説明したが、実際は2次側の負荷によっても変化する。
この場合、第1の巻線Nsub1および第2の巻線Nsub2の誘起電圧は出力の負荷電流増加によるトランスT1結合度が変化するため、巻線間のサージ電圧が上昇しコンデンサC5およびC4の両端電圧を上昇させる。その結果、過電圧検出レベルも負荷電流により誤差が生じるが、本発明ではコンデンサC4と並列に抵抗R7を実装することでコンデンサC4両端電圧上昇を抑制し過電圧検出レベルを補正する。
また、Nsub1電圧も負荷の増加により上昇するが、トランジスタQ2の降圧レギュレータ素子により電源電圧VCCは一定に維持される。
【0041】
図5は、ツェナー電圧の温度係数を説明する図である。横軸はツェナー電圧(V)であり、縦軸は電圧温度係数である。図に示すグラフAの電圧温度係数の単位は(%/℃)であり、グラフBの電圧温度係数の単位は(mV/℃)である。
VCC切替回路5のツェナーダイオードD4のツェナー電圧を5Vに設定することにより、図5に示すようにツェナーダイオードのツェナー電圧が温度による影響が少なくなる。
【0042】
例えば、ツェナーダイオードの周囲温度が40℃上昇するとして、ツェナー電圧が5Vと30Vの場合を比較すると、巻線を最適化して使用するツェナー電圧が5Vではほとんど変化がないのに比べツェナー電圧30Vでは(25mV/℃)×40℃で1V程度の影響がある。
5Vのツェナー電圧を使用する回路構成により電圧検出の精度向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0043】
1、10・・・スイッチング電源、2・・・スイッチング回路、3・・・出力電圧切替回路、4・・・制御回路、5・・・VCC切替回路(制御回路用電圧切替回路)、6・・・フィードバック(FB)回路、7・・・直流化回路(整流・平滑回路)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6