(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082475
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 13/00 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
B60C13/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196347
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 芳樹
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC17
3D131BC35
3D131BC47
3D131GA01
(57)【要約】
【課題】標章に泥詰まりが生じ難く、標章を際立たせることができるタイヤを提供すること。
【解決手段】タイヤ1のサイドウォールに、1以上の標章4を設ける。標章4の外面を、谷折りされた2つの斜面11,12構成される1つのみの凹み19の底面で構成する。標章4の全縁に軸方向の外側に突出する環状の突起15,16を設けてもよく、標章4が環状の突起15,16で縁取りされてもよい。また、凹み19の底(交線17)が、径方向に10°以下の角度傾斜する方向に延在してもよい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の標章をサイドウォールに設けた空気入りタイヤにおいて、
前記標章の外面が、谷折りされた2つの斜面で構成される1つのみの凹みの底面で構成される、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記標章の全縁に軸方向の外側に突出する環状の突起が設けられて、前記標章が前記環状の突起で縁取りされている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記サイドウォールが、基準面と、前記基準面に設けられた窪みと、を有し、
前記標章が、前記窪みの底面に設けられている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記凹みの底が、径方向に10°以下の角度傾斜する方向に延在する、請求項1から3のずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤとしては、特許文献1に記載されているものがある。この空気入りタイヤは、タイヤのサイドウォールの表面に設けた標章の少なくとも一部に複数のリッジを並列に配置した鋸の歯の形状のセレーションが設けられている。この空気入りタイヤは、ピッチが短くて角度が異なるセレーションを標章に設けることで、光が照射された際、光の反射方向を変更させる事で標章に明暗をつけ、標章を際立たせるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記空気入りタイヤでは、標章にピッチが短いセレーションが設けられているので、泥濘路を走行した際に、標章に泥詰まりが起き易く、文字視認性が悪化し、更には、汚れが落ちにくいという課題がある。そこで、本発明の目的は、標章に泥詰まりが生じ難く、しかも標章を際立たせることができる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本開示に係る空気入りタイヤは、1以上の標章をサイドウォールに設けた空気入りタイヤにおいて、前記標章の外面が、谷折りされた2つの斜面で構成される1つのみの凹みの底面で構成される。
【発明の効果】
【0006】
本開示に係る空気入りタイヤによれば、標章に泥詰まりが生じ難く、しかも標章を際立たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一実施形態に係るタイヤの片側側方を斜め上側から見たときの斜視図である。
【
図2】標章表示領域を軸方向外側の斜め下側から見たときの斜視図である
【
図3】標章の一部を第1斜面と第2斜面との交線とタイヤの軸方向とを含む平面に直交する平面で切断したときの模式断面図である。
【
図4】
図2のA-A線斜視断面図であり、標章表示領域に設けられた各標章の周方向の一端側(紙面における左側)に位置する直線延在箇所の延在方向の中心を通過すると共に当該直線延在箇所に直交する各平面を含む結合平面で標章表示領域を切断したときに生成される構造を、軸方向に僅かに傾斜する方向から見たときの斜視断面図である。
【
図5】第1変形例のタイヤにおけるEを表す標章周辺の斜視図である。
【
図6】第2の変形例のタイヤにおける
図2に対応する斜視図である。
【
図7】第3の変形例のタイヤにおける
図3に対応する模式断面図である。
【
図8】第4の変形例のタイヤにおける
図3に対応する模式断面図である。
【
図9】第5の変形例のタイヤにおける
図3に対応する模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の実施例では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、複数の図面には、模式図が含まれ、異なる図間において、標章における、縦、横、高さ等の寸法比は、必ずしも一致しない。また、以下で説明される構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素であり、必須の構成要素ではない。また、以下では、空気入りタイヤを単にタイヤと言及する。
【0009】
図1は、本開示の一実施形態に係るタイヤ1の片側側方を斜め上側から見たときの斜視図である。
図1に示すように、タイヤ1のなくとも一方のサイドウォール2には、1以上の標章表示領域3が設けられている。サイドウォール2は、タイヤ側面に存在し、タイヤ1が最も撓む箇所を有する。サイドウォール2は、スムーズに屈曲することで、衝撃や遠心力に耐える役割を担う。
【0010】
標章表示領域3は、サイドウォール2の表面2aに設けられる基準面Xと、この基準面Xに設けられる1以上の標章4とを具える。標章表示領域3は、サイドウォール2の表面2aから一定の高さで突出する台座6を有し、台座6の表面が基準面Xとなっている。台座6の厚さ方向は、タイヤ1の軸方向に略一致している。
【0011】
台座6は存在しなくても良く、この場合、サイドウォール2の表面2aが基準面Xとなる。標章4は、タイヤのメーカ名、ブランド名、サイズ、偏平率、製造年週等を表すための文字、速度記号等の記号、図形等であり、本実施形態では、基準面Xに、複数の標章4からなるブランド名が形成されている。
【0012】
図2は、標章表示領域3を軸方向外側の斜め下側から見たときの斜視図である。
図2に示すように、標章4の外面は、谷折りされた2つの斜面11,12で構成される1つのみの凹み19の底面で構成されている。詳しくは、本実施形態では、第1斜面11と第2斜面12は、両方とも平面で構成され、異なる方向に広がっている。第1斜面11と第2斜面12の交線17は、略径方向に延在し、より厳密には、タイヤ1の径方向に対して10°以下の角度傾斜する方向に延在する。交線17が存在する位置は、凹み19の谷の位置となり、凹み19において最も深さが深い位置になっている。
【0013】
図3は、第1斜面11と第2斜面12との交線17とタイヤ1の軸方向(本実施形態では、台座6の厚さに一致)とを含む平面Pに直交する平面で標章4の一部を切断したときの模式断面図である。
図3に示すように、第1斜面11は、交線17から平面Pに直交する直交方向の一方側に離れるにしたがってタイヤ1の軸方向外側に変位する。また、第2斜面12は、交線17から上記直交方向の他方側に離れるにしたがって軸方向外側に変位する。第1斜面11と第2斜面12は、平面Pに対して略同一の角度で傾斜する。
【0014】
従来、タイヤのサイドウォールに設けられる標章は、標章を目立たせるため、標章を、突出させて表記している。そして、その思想の正反対の思想である、標章4を2つの斜面で表現された凹みで表すという斬新な表記は、知られていない。係る背景において、第1斜面11と第2斜面とがなす角度θは、0°<θ<180°の如何なる角度でもよい。しかし、θが177°以下であれば、人が凹み表記を認識し易く、人がオリジナリティ溢れる凹み表記で表現された標章4に気を引き易く、θが175°以下であれば、更に、人が凹み表記を認識し易く、人がオリジナリティ溢れる凹み表記で表現された標章4に気を引き易い。また、θが171°以上であれば、凹み表記の気を引くことができると共に、良好な排土性を実現でき、θが173°以上であれば、更に、凹み表記の気を引くことができると共に、良好な排土性を実現できる。また、θが174°であれば、人が凹み表記を認識し易くて、人がオリジナリティ溢れる凹み表記で表現された標章4に気を引き易く、しかも、凹み表記の気を引くことができると共に、良好な排土性を実現できる。よって、θが174°であることが最も好ましい。
【0015】
図4は、
図2のA-A線斜視断面図であり、標章表示領域3に設けられた各標章4a,4bの周方向の一端側(紙面における左側)に位置する直線延在箇所5a,5bの延在方向の中心を通過すると共に当該直線延在箇所5a,5bに直交する各平面を含む結合平面Qで標章表示領域3を切断したときに生成される構造を、軸方向に僅かに傾斜する方向から見たときの斜視断面図である。
【0016】
図2に示すように、標章4の全縁には、軸方向の外側に突出して標章4を縁取りする環状の突起15,16が設けられている。Rを示す標章4aは、外側縁15aを全周に亘って縁取る外側環状突起15と、内側縁16aを全周に亘って縁取る内側環状突起16を有する。
図2を参照して、環状の突起15,16において最も軸方向外側に位置する箇所の軸方向位置から、標章4において最も深さが深い交線17の軸方向位置を引いた値は、如何なる値でもよい。しかし、当該値が、1mm以上であれば、美観を優れたものにできて、斬新でスタイリッシュな標章4を実現し易く、当該値が、3mm以下であれば、排土性を良好なものにできる。
【0017】
なお、Rを表す標章4aのように環状の内側縁16aが存在する場合、その内側縁16aで囲まれた領域29の外面の軸方向位置は、標章4において最も深さが深い交線17の軸方向位置よりも軸方向外側にあればよい。しかし、内側縁16aで囲まれた領域29の外面の軸方向位置は、基準面Xの軸方向位置と略同一であると好ましい。
【0018】
また、本実施形態では、第1斜面11と第2斜面12との交線17付近に尖ったV字形状の溝が形成される場合について説明した。しかし、平面形状の第1斜面と平面形状の第2斜面とを谷位置付近に設けた軸方向内側に凸の湾曲面を介して滑らかなに接続してもよい。
【0019】
図5は、第1変形例のタイヤ101におけるEを表す標章4b周辺の斜視図である。
図4に示すように、サイドウォールに設けられた標章表示領域103は、サイドウォールの表面から一定の高さで突出する台座106を有し、台座106の表面が基準面Yとなっている。
【0020】
台座106には、深さが略一定の窪み138が設けられ、窪み138の底面に1以上の標章4が設けられている。なお、台座106は存在しなくても良く、この場合、サイドウォールの表面が基準面Yとなり、サイドウォールの表面に深さが略一定の窪み138が設けられ、その窪み138の底面に1以上の標章4,4bが設けられる。変形例のタイヤ101では、標章4bが窪み138の底面に設けられ、しかも、標章4,4b自体も、凹み19の底面で構成されるので、標章4,4bの独創性を顕著なものにでき、魅力的な標章4,4bを実現できる。
【0021】
図6は、第2の変形例のタイヤ201における
図2に対応する斜視図である。
図6に示すように、
図2に示すタイヤ1における標章4において周方向に沿うように延在する直線形状の縁をタイヤ1の周方向に平行に延びる円弧状の縁215に取り換えてもよい。
【0022】
図7は、第3の変形例のタイヤ301における
図3に対応する模式断面図であり、
図8は、第4の変形例のタイヤ401における
図3に対応する模式断面図である。
図7に示すように、標章304の外面を構成する谷折りされた2つの斜面311,312の夫々は、軸方向内側に凸であって軸方向外側に隆起する突起が存在しない1つの湾曲面で構成されてもよい。そして、2つの斜面311,312を交線(谷位置)317で滑らかに接続してなると共に2つの斜面311,312が相俟って構成される標章304が、1つの湾曲面で構成されてもよい。
【0023】
また、
図8に示すように、標章404の外面を構成する谷折りされた2つの斜面411,412の夫々は、軸方向外側に凸であって、軸方向外側に隆起する突起が存在しない1つの湾曲面で構成されてもよい。そして、2つの湾曲面の交線417周辺に溝428を形成してもよい。また、この場合において、
図9、すなわち、第5の変形例のタイヤ501における
図3に対応する模式断面図に示すように、溝528の底の箇所を軸方向内側に凸の湾曲面で構成して溝528の底周辺に角が存在しないようにしてもよい。
【0024】
第4,第5の変形例のタイヤ401,501によれば、2つの斜面411,412,511,512の連結箇所の周辺に溝428,528を生成することができ、その溝428,528の箇所に影を生成することができる。よって、更に斬新でスタイリッシュな標章404,504を実現できる。更には、第5の変形例のタイヤ501によれば、溝528の底周辺に角が存在しないので、溝528周辺の耐クラック性を高くすることができる。
【0025】
<本開示の必須の構成と、その作用効果>
タイヤ1,101,201,301,401,501のサイドウォール2に、1以上の標章4,4a,4b,304,404,504を設ける。標章4,4a,4b,304,404,504の外面を、谷折りされた2つの斜面11,12,311,312,411,412,511,512で構成される1つのみの凹み19の底面で構成する。
【0026】
本開示によれば、標章4,4a,4b,304,404,504が、谷折りされた2つの斜面11,12,311,312,411,412,511,512で構成されるので、特許文献1の標章、すなわち、ピッチが短くて角度が異なるセレーションを有する標章と比較して、面の数が極端に少ない。よって、標章4,204への泥詰まりを効果的に抑制できる。
【0027】
更には、標章4,4a,4b,304,404,504が、谷折りされた2つの斜面11,12,311,312,411,412,511,512で構成される。したがって、標章4,4a,4b,304,404,504が、突出させて表記する従来の手法とは逆の凹み19で表されるので、標章4,4a,4b,304,404,504を独創的で斬新なものとできる。よって、人の注意を喚起することができ、標章4,4a,4b,304,404,504を際立たせることができる。
【0028】
<本開示において採用してもよい構成と、その作用効果>
図1,2,4,6に示すように、標章4,304の全縁に軸方向の外側に突出する環状の突起15,16が設けられて、標章4,304が環状の突起15,16で縁取りされてもよい。
【0029】
本構成によれば、標章4,304の全縁が環状の突起15,16で縁取りされているため、環状の突起15,16の標章4,304側の内面で段差を形成することができ、その段差で、標章4,304を際立たせることができる。よって、標章4,304の視認性を良好なものにできる。
【0030】
また、
図5に示すように、サイドウォールが、基準面Yと、基準面Yに設けられた窪み138と、を有し、標章4,4bが、窪み138の底面に設けられてもよい。
【0031】
本構成によれば、標章4,4bが窪み138の底面に設けられ、しかも、標章4,4b自体も、凹み19の底面で構成されるので、標章4,4bの独創性を顕著なものにでき、魅力的な標章4,4bを実現できる。
【0032】
また、凹み19の底(交線17)が、径方向に10°以下の角度傾斜する方向に延在してもよい。
【0033】
本構成によれば、谷折りされた2つの斜面11,12,311,312,411,412,511,512を、周方向に平行に延在させるか、又は周方向のいずれかの位置で周方向に接する接線に対して僅かな角度傾斜する直線方向に延在させることができる。よって、人が谷折りの底(交線17,317,417)を認識し易く、標章の独創性を顕著なものとできる。
【0034】
また、
図6に示すように、
図2に示すタイヤ1における標章4において周方向に沿うように延在する直線形状の縁を、タイヤ1の周方向に平行に延びる円弧状の縁215に取り換えてもよい。このようにすると、標章304のデザイン性を高くでき、標章304の美観を優れたものにし易い。
【0035】
<他の変形例>
本開示は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0036】
例えば、交線(谷位置)17,317,417が、径方向に10°以下の角度傾斜する方向に延在する場合について説明した。しかし、交線(谷位置)は、如何なる方向に延在してもよい。交線(谷位置)は、例えば、タイヤの周方向に平行な方向に延在してもよく、又は周方向のいずれかの位置で周方向に接する接線に10°以下の角度で傾斜する直線方向に延在してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1,101,201,301,401,501 タイヤ、 2 サイドウォール、 2a 表面、 3,103 標章表示領域、 4,4a,4b,204,304,404,504 標章、 5a,5b 直線延在箇所、 6,106 台座、 11 第1斜面、 12 第2斜面、 15 外側環状突起、 15a 外側縁、 16 内側環状突起、 16a 内側縁、 17,317,417 交線、 19 凹み、 29 内側縁で囲まれた領域、 138 窪み、 311,312,411,412,511,512 斜面、 215 円弧状の縁、 428,528 溝、 P 平面、 Q 結合平面、 X,Y 基準面、 θ 第1斜面と第2斜面がなす角。