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特開2024-82478原子炉圧力容器の支持構造体及び原子力プラント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082478
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】原子炉圧力容器の支持構造体及び原子力プラント
(51)【国際特許分類】
   G21C 13/024 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
G21C13/024 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196350
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】丸山 直伴
(72)【発明者】
【氏名】皆川 祐輔
(57)【要約】
【課題】上下方向の変位を拘束できるとともにシヤラグ部材間の隙間を容易に調整することができる原子炉圧力容器の支持構造体及び原子力プラントを提供する。
【解決手段】。支持構造体は、上下方向111Bの2つの部材に分割されたフィメイルシヤラグ101と、フィメイルシヤラグ101に支持されるメイルシヤラグ102と、を備えている。フィメイルシヤラグ101は、第1部材101Aと、メイルシヤラグ102を間に挟んで、第1部材101Aよりも上下方向111Bの下方に配置される第2部材101Bと、を有している。そして、第1部材101A及び第2部材101Bは、メイルシヤラグ102と上下方向111Bにおいて隙間112を空けて配置される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器と円筒形をなす原子炉格納容器との間に配置される支持構造体において、
前記原子炉格納容器の壁面に設置され、少なくとも前記原子炉格納容器の上下方向の2つの部材に分割されたフィメイルシヤラグと、
前記フィメイルシヤラグに支持されるメイルシヤラグと、を備え、
前記メイルシヤラグは、前記原子炉格納容器の壁面に対して前記原子炉格納容器の半径方向に隙間を空けて配置され、
前記フィメイルシヤラグは、
第1部材と、
前記メイルシヤラグを間に挟んで、前記第1部材よりも前記上下方向の下方に配置される第2部材と、を有し、
前記第1部材及び前記第2部材は、前記メイルシヤラグと前記上下方向において隙間を空けて配置される
原子炉圧力容器の支持構造体。
【請求項2】
前記第1部材と前記第2部材は、前記原子炉格納容器の円周方向において前記メイルシヤラグと当接して配置される
請求項1に記載の原子炉圧力容器の支持構造体。
【請求項3】
前記メイルシヤラグは、前記上下方向で切断した断面形状が十字状に形成され、
前記上下方向の上方に向けて突出する第1支持片と、
前記上下方向の下方に向けて突出する第2支持片と、
前記第1支持片及び前記第2支持片の境界部から前記円周方向の一側に向けて突出する第3支持片と、
前記第1支持片及び前記第2支持片の境界部から前記半径方向の他側に向けて突出する第4支持片と、を有し、
前記フィメイルシヤラグの前記第1部材は、前記円周方向において前記第1支持片に当接し、かつ前記上下方向において前記第3支持片又は前記第4支持片と隙間を開けて配置され、
前記フィメイルシヤラグの前記第2部材は、前記円周方向において前記第2支持片に当接し、かつ前記上下方向において前記第3支持片又は前記第4支持片と隙間を開けて配置される
請求項2に記載の原子炉圧力容器の支持構造体。
【請求項4】
前記第1部材及び前記第2部材は、前記原子炉格納容器の壁面に設けたガイドレールにより前記上下方向に移動可能に支持され、
通常時では、前記第1部材及び前記第2部材は、前記メイルシヤラグと前記上下方向において隙間を空けて配置され、
地震発生時では、前記第1部材及び前記第2部材は、前記メイルシヤラグに当接し、前記上下方向の隙間がなくなる
請求項1に記載の原子炉圧力容器の支持構造体。
【請求項5】
前記メイルシヤラグは、矩形の凸形状に形成され、
前記フィメイルシヤラグは、前記第1部材及び前記第2部材によって前記メイルシヤラグを囲み、中空矩形の凹形状に形成される
請求項2に記載の原子炉圧力容器の支持構造体。
【請求項6】
前記メイルシヤラグは、円柱の凸形状に形成され、
前記フィメイルシヤラグは、前記第1部材及び前記第2部材によって前記メイルシヤラグを囲み、中空矩形の凹形状に形成される
請求項2に記載の原子炉圧力容器の支持構造体。
【請求項7】
前記メイルシヤラグは、円柱の凸形状に形成され、
前記フィメイルシヤラグは、前記第1部材及び前記第2部材によって前記メイルシヤラグを囲み、中空長丸形の凹形状に形成される
請求項2に記載の原子炉圧力容器の支持構造体。
【請求項8】
原子炉圧力容器と、
前記原子炉圧力容器を格納する円筒形をなす原子炉格納容器と、
前記原子炉圧力容器と前記原子炉格納容器との間に配置された複数の支持構造体と、を備え、
前記支持構造体は、
前記原子炉格納容器の壁面に設置され、少なくとも前記原子炉格納容器の上下方向の2つの部材に分割されたフィメイルシヤラグと、
前記フィメイルシヤラグに支持されるメイルシヤラグと、を備え、
前記メイルシヤラグは、前記原子炉格納容器の壁面に対して前記原子炉格納容器の半径方向に隙間を空けて配置され、
前記フィメイルシヤラグは、
第1部材と、
前記メイルシヤラグを間に挟んで、前記第1部材よりも前記上下方向の下方に配置される第2部材と、を有し、
前記第1部材及び前記第2部材は、前記メイルシヤラグと前記上下方向において隙間を空けて配置される
原子力プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉圧力容器の支持構造体、及びこの支持構造体を備えた原子力プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力プラントの建屋の内部には、原子炉圧力容器と、この原子炉圧力容器を支持する原子炉圧力容器ペデスタル(以下、「ペデスタル」という。)と、圧力容器及びペデスタルを格納する原子炉格納容器が設置されている。また、原子力プラントでは、耐震性を向上さえるために、ベデスタルや原子炉格納容器と原子炉格納容器間を、支持構造体により接続している。
【0003】
この支持構造体としては、原子炉格納容器の熱膨張による半径方向および上下方向の変位を拘束せず、円周方向の変位のみを抑制するような荷重伝達機構として、シヤラグ構造が用いられてきた。シヤラグ構造は、支持構造体側に取り付けられる凸形状のメイルシヤラグと、原子炉格納容器側に取り付けられ、メイルシヤラグを両側からはさむように2個の突起部からなる凹形状のフィメイルシヤラグにより構成される。通常、フィメイルシヤラグとメイルシヤラグは、原子炉格納容器の円周方向で接触し、水平方向の変位を抑制している。
【0004】
従来の支持構造体としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。特許文献1には、トップスラブの開口部に面する側面に取り付けられた第1シヤラグ部材と、原子炉遮へい壁の上端部に取り付けられて上方に向かって伸び、第1シヤラグ部材の先端部に側面が対向する第2シヤラグ部材とを備えた技術が記載されている。
【0005】
また、従来の他の支持構造体としては、例えば、特許文献2に記載されているようなものがある。特許文献2には、上下方向および半径方向の相対移動を許容するとともに周方向の相対移動を拘束するシヤラグ機構が周方向に相互間隔をおいて複数配設されていることが記載されている。また、特許文献2に記載された技術では、凸部材と凹部材の穴との上下方向の間隔の範囲で上下方向の相対変位がそれぞれ可能になるとともに、凹部材のガイド板と凸部材との接触によって筒状体の周方向の相対移動が拘束されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-205126号公報
【特許文献2】実開昭63-129900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された技術は、原子炉格納容器の円周方向の変形のみ拘束し、半径方向と上下方向の変形は拘束せず、地震時の支持機能は水平方向だけに限定している。また、特許文献2に記載された技術では、上下方向の変位を拘束することはできるが、予め原子炉格納容器の壁面に設置された凹部材の穴に凸部材を挿入する必要があり、シヤラグ部材間の隙間を精度良く調整することが困難であった。
【0008】
本目的は、上記の問題点を考慮し、上下方向の変位を拘束できるとともにシヤラグ部材間の隙間を容易に調整することができる原子炉圧力容器の支持構造体及び原子力プラントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決し、目的を達成するため、原子炉圧力容器の支持構造体は、原子炉圧力容器と円筒形をなす原子炉格納容器との間に配置される。支持構造体は、原子炉格納容器の壁面に設置され、少なくとも原子炉格納容器の上下方向の2つの部材に分割されたフィメイルシヤラグと、フィメイルシヤラグに支持されるメイルシヤラグと、を備えている。
メイルシヤラグは、原子炉格納容器の壁面に対して原子炉格納容器の半径方向に隙間を空けて配置される。フィメイルシヤラグは、第1部材と、メイルシヤラグを間に挟んで、第1部材よりも上下方向の下方に配置される第2部材と、を有している。そして、第1部材及び第2部材は、メイルシヤラグと上下方向において隙間を空けて配置される。
【0010】
また、原子力プラントは、原子炉圧力容器と、原子炉圧力容器を格納する円筒形をなす原子炉格納容器と、原子炉圧力容器と原子炉格納容器との間に配置された複数の支持構造体と、を備えている。そして、支持構造体は、上述した支持構造体が適用される。
【発明の効果】
【0011】
上記構成の原子炉圧力容器の支持構造体及び原子力プラントによれば、上下方向の変位を拘束できるとともにシヤラグ部材間の隙間を容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施の形態例にかかる原子力プラントにおける原子炉建屋の全体を示す断面図である。
図2】第1の実施の形態例にかかる原子力プラントの支持構造体の端部を拡大して示す拡大図である。
図3図2に示すC-C線断面図である。
図4】第2の実施の形態例にかかる原子力プラントの支持構造体を示す断面図である。
図5】第3の実施の形態例にかかる原子力プラントの支持構造体を示す断面図である。
図6】第4の実施の形態例にかかる原子力プラントの支持構造体を示す断面図である。
図7】第5の実施の形態例にかかる原子力プラントの支持構造体を示す概略構成図である。
図8図7に示すC-C線断面図であり、通常時の状態を示す図である。
図9図7に示すC-C線断面図であり、地震発生時の状態を示す図である。
図10】通常時における支持構造体の上下方向荷重-変位特性を示すグラフである。
図11】地震発生時における支持構造体の上下方向荷重-変位特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態例にかかる原子炉圧力容器の支持構造体及び原子力プラントについて、図1図11を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0014】
1.第1の実施の形態例
1-1.原子力プラントの構成例
まず、第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる原子力プラントの構成について、図1を参照して説明する。
図1は、本例の原子炉建屋を示す断面図である。
【0015】
図1に示すように、原子力プラントは、原子炉建屋内に設置された円筒形をなす原子炉格納容器1と、原子炉圧力容器2と、原子炉圧力容器ペデスタル(以下、「ペデスタル」という。)6と、複数の支持構造体3、4、5とを備えている。
【0016】
原子炉格納容器1は、気密性を有するように円筒状に形成されている。原子炉格納容器1内には、原子炉圧力容器2、ペデスタル6及び複数の支持構造体3、4、5が格納されている。
【0017】
原子炉圧力容器2は、円筒形状に形成されている。また、原子炉圧力容器2は、原子炉格納容器1内においてペデスタル6により支持されている。図1に示すように、ペデスタル6は、原子炉格納容器1の底部に形成された床面から上方に向けて立設されている。また、ペデスタル6の上端部は、第2支持構造体4を介して、原子炉圧力容器2を支持している。
【0018】
第1支持構造体3は、原子炉格納容器1と原子炉圧力容器2の間に配置され、原子炉圧力容器2を支持している。第2支持構造体4は、ペデスタル6の上端部において原子炉格納容器1と原子炉圧力容器2の間に配置されている。また、第3支持構造体5は、ペデスタル6と原子炉格納容器1の間に配置されている。第1支持構造体3、第2支持構造体4及び第3支持構造体5における原子炉格納容器1側の端部は、それぞれシヤラグ構造を有している。そして、第1支持構造体3、第2支持構造体4及び第3支持構造体5は、それぞれ同一の構成を有しているため、以下の説明では第1支持構造体3について説明する。以下、第1支持構造体3を単に支持構造体3と称す。
【0019】
1-2.支持構造体の端部の構成例
次に、支持構造体3の端部の構成について図2及び図3を参照して説明する。
図2は、支持構造体3の端部を拡大して示すもので、図1に示す領域Aを拡大して示す図である。図3は、図2に示すC-C線断面図である。
【0020】
図2及び図3に示すように、支持構造体3は、メイルシヤラグ102と、メイルシヤラグ102を支持するフィメイルシヤラグ101と、を有している。メイルシヤラグ102は、支持構造体3における原子炉格納容器1の壁面と対向する端部に形成されている。図3に示すように、メイルシヤラグ102は、原子炉格納容器1の上下方向111Bで切断した断面が十字状に形成されている。すなわち、メイルシヤラグ102は、第1支持片102Aと、第2支持片102Bと、第3支持片102Cと、第4支持片102Dとを有している。
【0021】
第1支持片102Aは、上下方向111Bの上方に向けて突出し、第2支持片102Bは、上下方向111Bの下方に向けて突出している。また、第3支持片102C及び第4支持片102Dは、第1支持片102Aと第2支持片102Bとの境界部から上下方向111Bと直交する原子炉格納容器1の円周方向111Aに向けて突出している。なお、第3支持片102Cは、円周方向111Aの一側に向けて突出し、第4支持片102Dは、円周方向111Aの他側に向けて突出している。
【0022】
また、メイルシヤラグ102は、後述するフィメイルシヤラグ101に挿入されている。なお、メイルシヤラグ102と原子炉格納容器1の壁面との間には、原子炉格納容器1の半径方向11に沿って隙間12が形成されている。これにより、支持構造体3や原子炉格納容器1、原子炉圧力容器2が熱膨張した際の変位を許容することができる。
【0023】
フィメイルシヤラグ101は、第1部材101Aと、第2部材101Bと、第3部材101Cと、第4部材101Dとを有している。そのため、フィメイルシヤラグ101は、4つの部材101A、101B、101C、101Dに分割されている。そして、フィメイルシヤラグ101は、原子炉格納容器1の壁面に固定されている。
【0024】
第1部材101A及び第3部材101Cは、メイルシヤラグ102の第3支持片102C及び第4支持片102Dよりも上下方向111Bの上方に配置されている。第2部材101B及び第4部材101Dは、メイルシヤラグ102の第3支持片102C及び第4支持片102D、第1部材101A及び第3部材101Cよりも上下方向111Bの下方に配置されている。すなわち、フィメイルシヤラグ101は、メイルシヤラグ102を間に挟んで上下方向111Bに分割されている。
【0025】
また、第1部材101A及び第2部材101Bは、メイルシヤラグ102の第1支持片102A及び第2支持片102Bよりも円周方向111Aの一側に配置されている。そして、第3部材101C及び第4部材101Dは、メイルシヤラグ102の第1支持片102A及び第2支持片102Bよりも円周方向111Aの他側に配置されている。
【0026】
また、メイルシヤラグ102の第1支持片102Aは、円周方向111Aにおいてフィメイルシヤラグ101の第1部材101Aと第3部材101Cにより挟持されている。そして、メイルシヤラグ102の第2支持片102Bは、円周方向111Aにおいてフィメイルシヤラグ101の第2部材101Bと第4部材101Dにより挟持されている。これにより、支持構造体3における円周方向111Aの変位は、フィメイルシヤラグ101とメイルシヤラグ102の支持構造により抑制されている。
【0027】
さらに、メイルシヤラグ102の第3支持片102Cと、フィメイルシヤラグ101の第1部材101A及び第2部材101Bとの間には、上下方向111Bにおいて隙間112が設けられている。同様に、メイルシヤラグ102の第4支持片102Dと、フィメイルシヤラグ101の第3部材101C及び第4部材101Dとの間には、上下方向111Bにおいて隙間112が設けられている。このように、隙間112を設けることで、上下方向111Bの熱膨張を許容できる。
【0028】
なお、上下方向111Bに大きく変位した場合には、メイルシヤラグ102の第3支持片102C及び第4支持片102Dが、フィメイルシヤラグ101に当接する。これにより、本例の支持構造体3によれば、地震時に円周方向111Aの揺れだけでなく上下方向111Bの揺れに対しても対応することができる。その結果、支持構造体3により耐震性を向上させることができる。
【0029】
また、本例の支持構造体3によれば、フィメイルシヤラグ101を4つの部材101A、101B、101C、101Dの分割構造にしている。そのため、メイルシヤラグ102の位置決めを行った後に、フィメイルシヤラグ101を設置することができる。そして、フィメイルシヤラグ101を設置する際に、メイルシヤラグ102の設置位置に応じて、フィメイルシヤラグ101の第1部材101A、101B、101C、101Dを、別々に位置決めすることができる。これにより、フィメイルシヤラグ101とメイルシヤラグ102の位置決めを容易に行うことができるため、隙間112の調整作業の精度を向上させることができる。
【0030】
なお、本例では、フィメイルシヤラグ101を4つの部材101A、101B、101C、101Dの分割した例を説明したが、これに限定されるものではなく、フィメイルシヤラグ101を略U字状の2つの部材に上下に分割してもよい。
【0031】
2.第2の実施の形態例
次に、第2の実施の形態例にかかる支持構造体について図5を参照して説明する。
図5は、第2の実施の形態例にかかる支持構造体を示す断面図である。第1の実施の形態例にかかる支持構造体3と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0032】
図5に示すように、第2の実施の形態例にかかる支持構造体は、メイルシヤラグ202と、メイルシヤラグ202を支持するフィメイルシヤラグ201とを有している。図5に示すように、メイルシヤラグ202は、中実矩形の凸形状に形成されている。メイルシヤラグ202を囲むようにして、フィメイルシヤラグ201が配置される。
【0033】
フィメイルシヤラグ201は、中空矩形の凹形状に形成されている。また、フィメイルシヤラグ201は、第1部材201Aと、第2部材201Bとを有している。すなわち、フィメイルシヤラグ201は、上下方向111Bに2つの部材201A、201Bに分割されている。
【0034】
第1部材201A及び第2部材201Bは、それぞれ略コの字状に形成されている。そして、第1部材201Aは、上下方向111Bの上方に配置されており、開口部が上下方向111Bの下側を向いている。これに対して、第2部材201Bは、上下方向111Bの下方に配置されており、開口部が上下方向の上側を向いている。そして、第1部材201Aと第2部材201Bの間には、メイルシヤラグ202が配置される。
【0035】
また、第1部材201Aとメイルシヤラグ202の上下方向111Bの上端部との間には、隙間112が形成されており、同様に、第2部材201Bとメイルシヤラグ202の上下方向111Bの下端部との間には、隙間112が形成されている。そのため、熱膨張時の変形を隙間112によって許容している。また、上下方向111Bに大きく変位した場合には、メイルシヤラグ202がフィメイルシヤラグ201に当接する。これにより、地震時の上下方向111Bの変位に対しても対応することができる。
【0036】
また、第1部材201A及び第2部材201Bは、メイルシヤラグ202における円周方向111Aの両端部に当接している。これにより、支持構造体における円周方向111Aの変位は、フィメイルシヤラグ201とメイルシヤラグ202の支持構造により抑制されている。
【0037】
なお、第1の実施の形態例にかかる支持構造体3と同様に、メイルシヤラグ202と原子炉格納容器1の壁面との間には、原子炉格納容器1の半径方向11に沿って隙間12が形成されている。
【0038】
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかる支持構造体3と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する支持構造体によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる支持構造体3と同様の作用効果を得ることができる。
【0039】
また、この第2の実施の形態例にかかる支持構造体によれば、メイルシヤラグ202を中実構造とすることで、第1の実施の形態例にかかる支持構造体3よりも剛性を高めることができる。
【0040】
なお、第2の実施の形態例の支持構造体を第1部材201Aと第2部材201Bの2つに分割した例を説明したが、第1の実施の形態例にかかるフィメイルシヤラグ101と同様に4つに分割してもよい。
【0041】
3.第3の実施の形態例
次に、第3の実施の形態例にかかる支持構造体について図6を参照して説明する。
図6は、第3の実施の形態例にかかる支持構造体を示す断面図である。第1の実施の形態例にかかる支持構造体3と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0042】
図6に示すように、第3の実施の形態例にかかる支持構造体は、メイルシヤラグ302と、メイルシヤラグ302を支持するフィメイルシヤラグ301とを有している。フィメイルシヤラグ301は、2つの部材301A、301Bを有しており、その構成は第2の実施の形態例にかかるフィメイルシヤラグ201と同様であるため、その説明は省略する。
【0043】
図6に示すように、メイルシヤラグ302は、中実円柱の凸形状に形成されている。そして、メイルシヤラグ302を囲むようにして、フィメイルシヤラグ301が配置される。また、第1部材301Aとメイルシヤラグ302の上下方向111Bの上端部との間には、隙間112が形成されており、同様に、第2部材301Bとメイルシヤラグ302の上下方向111Bの下端部との間には、隙間112が形成されている。なお、第1部材301A及び第2部材301Bは、メイルシヤラグ302における円周方向111Aの両端部に当接している。
【0044】
なお、第1の実施の形態例にかかる支持構造体3と同様に、メイルシヤラグ302と原子炉格納容器1の壁面との間には、原子炉格納容器1の半径方向11に沿って隙間12が形成されている。
【0045】
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかる支持構造体3及び第2の実施の形態例にかかる支持構造体と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する支持構造体によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる支持構造体3及び第2の実施の形態例にかかる構造体と同様の作用効果を得ることができる。
【0046】
4.第4の実施の形態例
次に、第4の実施の形態例にかかる支持構造体について図6を参照して説明する。
図6は、第4の実施の形態例にかかる支持構造体を示す断面図である。第1の実施の形態例にかかる支持構造体3と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0047】
図6に示すように、第4の実施の形態例にかかる支持構造体は、メイルシヤラグ402と、メイルシヤラグ402を支持するフィメイルシヤラグ401とを有している。メイルシヤラグ402は、中実円柱の凸形状に形成されており、その構成は第3の実施の形態例にかかるフィメイルシヤラグ301と同様であるため、その説明は省略する。そして、メイルシヤラグ402を囲むようにして、フィメイルシヤラグ401が配置される。
【0048】
フィメイルシヤラグ401は、中空長丸形の凹形状に形成されている。また、フィメイルシヤラグ401は、第1部材401Aと、第2部材401Bとを有している。すなわち、フィメイルシヤラグ401は、上下方向111Bに2つの部材401A、401Bに分割されている。
【0049】
第1部材401A及び第2部材401Bは、それぞれ略円弧状をなす略C字状に形成されている。そして、第1部材401Aは、上下方向111Bの上方に配置されており、開口部が上下方向111Bの下側を向いている。これに対して、第2部材401Bは、上下方向111Bの下方に配置されており、開口部が上下方向の上側を向いている。そして、第1部材401Aと第2部材401Bの間には、メイルシヤラグ202が配置される。また、第1部材401A及び第2部材401Bの内径は、メイルシヤラグ402の外径と等しくなるように形成されている。
【0050】
また、第1部材401Aとメイルシヤラグ402の上下方向111Bの上端部との間には、隙間112が形成されており、同様に、第2部材401Bとメイルシヤラグ402の上下方向111Bの下端部との間には、隙間112が形成されている。なお、第1部材401A及び第2部材401Bは、メイルシヤラグ402における円周方向111Aの両端部に当接している。
【0051】
なお、第1の実施の形態例にかかる支持構造体3と同様に、メイルシヤラグ402と原子炉格納容器1の壁面との間には、原子炉格納容器1の半径方向11に沿って隙間12が形成されている。
【0052】
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかる支持構造体3、第2の実施の形態例及び第3の実施の形態例にかかる支持構造体と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する支持構造体によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる支持構造体3、第2の実施の形態例及び第3の実施の形態例にかかる構造体と同様の作用効果を得ることができる。
【0053】
5.第5の実施の形態例
次に、第5の実施の形態例にかかる支持構造体について図7から図11を参照して説明する。
図7は、第5の実施の形態例にかかる支持構造体の端部を示す拡大図である。図8及び図9は、図7に示すC-C線断面図であり、図8は、通常時の状態を示し、図9は、地震発生時の状態を示す図である。第1の実施の形態例にかかる支持構造体3と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0054】
図7及び図8に示すように、支持構造体503の端部には、メイルシヤラグ502と、メイルシヤラグ502を支持するフィメイルシヤラグ501とを有している。なお、メイルシヤラグ502の構成は、第1の実施の形態例にかかるメイルシヤラグ102と同様であるため、その説明は省略する。
【0055】
また、フィメイルシヤラグ501は、第1の実施の形態例にかかるフィメイルシヤラグ101と同様に、第1部材501A、第2部材501B、第3部材501C及び第4部材501Dの4つの部材に分割されている。また、第1部材501A、第2部材501B、第3部材501C及び第4部材501Dは、ガイドレール113を介して原子炉格納容器1の壁面に配置されている。そして、第1部材501A、第2部材501B、第3部材501C及び第4部材501Dは、ガイドレール113により上下方向111Bに沿って移動可能に支持されている。また、第1部材501A、第2部材501B、第3部材501C及び第4部材501Dには、不図示の駆動部が設けられている。
【0056】
駆動部は、制御装置114に接続されている。制御装置114は、地震検知部115Aと、制御部115Bとを有している。地震検知部115Aは、原子炉建屋の揺れ(地震)を検知する。そして、地震検知部115Aが検知した情報は、制御部115Bに出力される。制御部115Bは、地震検知部115Aが検知した情報に基づいて、フィメイルシヤラグ501の第1部材501A、第2部材501B、第3部材501C及び第4部材501Dの移動させる駆動部の駆動を制御する。
【0057】
図8に示すように、通常時では、フィメイルシヤラグ501とメイルシヤラグ502の支持片との間には、上下方向111Bにそって隙間112が形成されている。このとき、フィメイルシヤラグ501の4つの部材501A、501B、501C、501Dは、制御装置114によりガイドレール113上でロックされ、上下方向111Bの移動が規制されている。
【0058】
地震検知部115Aにより地震の発生を検知すると、制御装置114の制御部115Bは、不図示の駆動部に制御信号を出力し、フィメイルシヤラグ501のロックを解除する。次に、図9に示すように、第1部材501A、第2部材501B、第3部材501C及び第4部材501Dは、ガイドレール113に沿って、メイルシヤラグ502に当接する向きに移動する。これにより、地震発生時には、フィメイルシヤラグ501とメイルシヤラグ502の支持片との間の隙間が完全になくなる。そして、制御装置114は、フィメイルシヤラグ501の4つの部材501A、501B、501C、501Dをロックする。
【0059】
図10は、通常時における支持構造体の上下方向荷重-変位特性を示すグラフである。図11は、地震発生時における支持構造体の上下方向荷重-変位特性を示すグラフである。縦軸は荷重Fを示し、横軸は変位Xを示している。
図10に示すように、通常時の隙間112がある場合、シヤラグ構造の剛性をK、隙間量δ、最大変位量δmaxとしたとき、線形系とみなした場合の等価剛性Keqは、以下の数1で表される。
[数1]
【0060】
図10の破線で示す等価剛性Keqは、隙間量δが大きくなるほどシヤラグ構造の剛性Kよりも剛性が低下する。これに対して、地震発生時には、図9に示すように、第1部材501A、第2部材501B、第3部材501C及び第4部材501Dを移動させて、メイルシヤラグ502に当接させている。これにより、隙間量δが0になるため、図11に示すように、等価剛性Keqは、シヤラグ構造の剛性Kと一致し、隙間による剛性低下が発生しない。その結果、第1の実施の形態例の支持構造体3に比べて支持構造体503による上下方向111Bの耐震性を向上させることができる。
【0061】
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかる支持構造体3と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する支持構造体503によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる支持構造体3と同様の作用効果を得ることができる。
【0062】
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0063】
なお、本明細書において、「平行」及び「直交」等の単語を使用したが、これらは厳密な「平行」及び「直交」のみを意味するものではなく、「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」や「略直交」の状態であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…原子炉格納容器、 2…原子炉圧力容器、 3、4、5、503…支持構造体、 6…原子炉圧力容器ペデスタル、 11…半径方向、 12…隙間、 101、201、301、401、501…フィメイルシヤラグ、 101A、201A、301A、401A、501A…第1部材、 101B、201B、301B、401B、501B…第2部材、 101C、501C…第3部材、 101D、501D…第4部材、 102、202、302、402、502…メイルシヤラグ、 102A…第1支持片、 102B…第2支持片、 102C…第3支持片、 102D…第4支持片、 111A…円周方向、 111B…上下方向、 112…隙間、 113…ガイドレール、 114…制御装置、 115A…地震検知部、 115B…制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11