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特開2024-82480ロボットハンド、ロボットハンドの制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082480
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】ロボットハンド、ロボットハンドの制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
B25J15/08 W
B25J15/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196353
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大地
(72)【発明者】
【氏名】十都 善行
(72)【発明者】
【氏名】武居 直行
(72)【発明者】
【氏名】アウリア キルミ リズギ
(72)【発明者】
【氏名】倉田 涼平
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707DS01
3C707ES03
3C707ET03
3C707EV02
3C707EV27
3C707EW03
3C707KS30
3C707KS34
3C707KW04
3C707KX08
3C707LV06
(57)【要約】
【課題】ワークを落とすことなく把持したワークを回転することができるロボットハンド、ロボットハンドの制御方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】ロボットハンドは、一対の把持部12と、制御部と、を備えている。把持部12は、指部23と、指部を回転させる回転機構24と、回転機構が設けられた荷重受板22と、把持ベース21と、把持ベース21と荷重受板22との間に配置され、指部23を介して荷重受板22に加わる圧力を検出する複数の圧力センサ41A、41B、41Cと、を備えている。そして、制御部は、複数の圧力センサ41A、41B、41Cが検出した圧力情報に基づいて、圧力中心を演算する圧力中心演算部を有している。制御部は、圧力中心演算部が演算した圧力中心に基づいて、指部23の回転中心を移動させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持する一対の把持部と、
前記一対の把持部を制御する制御部と、を備え、
前記把持部は、
前記ワークに接触する指部と、
前記指部を回転させる回転機構と、
前記回転機構が設けられた荷重受板と、
前記荷重受板が取り付けられる把持ベースと、
前記把持ベースと前記荷重受板との間に配置され、前記指部を介して前記荷重受板に加わる圧力を検出する複数の圧力センサと、を備え、
前記制御部は、複数の前記圧力センサが検出した圧力情報に基づいて、圧力中心を演算する圧力中心演算部を有し、
前記制御部は、前記圧力中心演算部が演算した前記圧力中心に基づいて、前記指部の回転中心を移動させる
ロボットハンド。
【請求項2】
前記把持部を支持し、かつ前記指部の回転中心を移動させる回転中心移動部を備えた
請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記制御部は、前記把持部が設けられるロボットのアームを移動させることで、前記指部の回転中心を移動させる
請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記指部を回転可能に支持する回転軸を備え、
前記回転軸は、複数の前記圧力センサの中心に配置される
請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項5】
前記圧力中心演算部は、前記一対の把持部が前記ワークを把持した際に、前記圧力中心を演算し、
前記制御部は、前記一対の把持部が前記ワークを把持した状態で、前記指部の回転中心が前記圧力中心と一致する位置に、前記指部の回転中心を移動させる
請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項6】
前記圧力中心演算部は、前記一対の把持部が前記ワークを把持した際に、前記圧力中心を演算し、
前記制御部は、前記指部を前記ワークから離し、前記指部の回転中心が前記圧力中心と一致する位置に、前記指部の回転中心を移動させる
請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項7】
前記圧力中心演算部は、前記一対の把持部が前記ワークを把持した際に、前記圧力中心を演算し、
前記制御部は、
前記圧力中心と前記指部の回転中心との差分を算出し、
前記差分が予め設定した閾値よりも大きい場合は、前記指部を前記ワークから離し、前記指部の回転中心が前記圧力中心と一致する位置に、前記指部の回転中心を移動させ、
前記差分が前記閾値よりも小さい場合は、前記一対の把持部が前記ワークを把持した状態で、前記指部の回転中心が前記圧力中心と一致する位置に、前記指部の回転中心を移動させる
請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項8】
一対の把持部によりワークを把持する処理と、
前記一対の把持部が前記ワークを把持した際に、前記把持部に設けた複数の圧力センサにより圧力を検出する処理と、
複数の前記圧力センサが検出した圧力情報に基づいて、圧力中心を圧力中心演算部が演算する処理と、
前記圧力中心演算部が演算した前記圧力中心に基づいて、前記ワークに接触する指部の回転中心を移動させる処理と、
を含むロボットハンドの制御方法。
【請求項9】
一対の把持部によりワークを把持する手順と、
前記一対の把持部が前記ワークを把持した際に、前記把持部に設けた複数の圧力センサにより圧力を検出する手順と、
複数の前記圧力センサが検出した圧力情報に基づいて、圧力中心を圧力中心演算部が演算する手順と、
前記圧力中心演算部が演算した前記圧力中心に基づいて、前記ワークに接触する指部の回転中心を移動させる手順と、
をコンピューターに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンド、ロボットハンドの制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、搬送効率の向上のために、物品(ワーク)を把持して下流側の工程に搬送する際に、物品を把持した状態で回転させて物品の姿勢を所望の姿勢に変更させることが行われている。従来の、この種の技術としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。
【0003】
特許文献1には、部品保持部で部品を保持してワークの所定位置に装着する作業装置が記載されている。また、特許文献1には、部品保持部が、一対の把持部材と、一対の把持部材を開閉する把持部材開閉部と、一対の把持部材に配置され、把持部材の開閉方向に設けられた回転軸を中心に回転自在な一対の接触部と、回転軸を中心に接触部を回転させる接触部駆動部と、を備えた技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-109271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ロボットハンドで搬送するワークには、把持部の指部が接触する箇所に凹凸があるワークもある。このような凹凸があるワークを把持して回転させる場合、ワークが把持部の指部から抜け落ちるおそれがあった。
【0006】
本発明は、上述のような従来の問題点に鑑み、ワークを落とすことなく把持したワークを回転することができるロボットハンド、ロボットハンドの制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、ロボットハンドは、ワークを把持する一対の把持部と、一対の把持部を制御する制御部と、を備えている。把持部は、ワークに接触する指部と、指部を回転させる回転機構と、回転機構が設けられた荷重受板と、荷重受板が取り付けられる把持ベースと、把持ベースと荷重受板との間に配置され、指部を介して荷重受板に加わる圧力を検出する複数の圧力センサと、を備えている。そして、制御部は、複数の圧力センサが検出した圧力情報に基づいて、圧力中心を演算する圧力中心演算部を有している。制御部は、圧力中心演算部が演算した圧力中心に基づいて、指部の回転中心を移動させる。
【0008】
本発明のロボットハンドの制御方法は、以下(1)から(4)に示す処理を含む。
(1)一対の把持部によりワークを把持する処理。
(2)一対の把持部がワークを把持した際に、把持部に設けた複数の圧力センサにより圧力を検出する処理。
(3)複数の圧力センサが検出した圧力情報に基づいて、圧力中心を圧力中心演算部が演算する処理。
(4)圧力中心演算部が演算した圧力中心に基づいて、ワークに接触する指部の回転中心を移動させる処理。
【0009】
また、本発明のプログラムは、次の手順をコンピューターに実行させる。
一対の把持部によりワークを把持する手順。
一対の把持部がワークを把持した際に、把持部に設けた複数の圧力センサにより圧力を検出する手順。
複数の圧力センサが検出した圧力情報に基づいて、圧力中心を圧力中心演算部が演算する手順。
圧力中心演算部が演算した圧力中心に基づいて、ワークに接触する指部の回転中心を移動させる手順。
【発明の効果】
【0010】
上記構成のロボットハンド、ロボットハンドの制御方法及びプログラムによれば、ワークを落とすことなく把持したワークを回転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態例にかかるロボットハンドが用いられる装置の一例を示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態例にかかるロボットハンドを示す斜視図である。
図3】本発明の実施の形態例にかかるロボットハンドの把持部を示す分解斜視図である。
図4】本発明の実施の形態例にかかるロボットハンドの把持部を示す正面図である。
図5】本発明の実施の形態例にかかるロボットハンドの制御系の構成例を示すブロック図である。
図6】本発明の実施の形態例にかかるロボットハンドの第1の動作例を示すフローチャートである。
図7】本発明の実施の形態例にかかるロボットハンドの第2の動作例を示す説明図である。
図8】本発明の実施の形態例にかかるロボットハンドの第2の動作例を示すフローチャートである。
図9】本発明の実施の形態例にかかるロボットハンドの第3の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について、図1図9を参照しながら説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
【0013】
1.実施の形態例
1-1.部品供給装置の構成
まず、図1を参照して本発明の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかるロボットハンドが用いられる装置の一例について説明する。
図1は、ロボットハンドが用いられる装置の一例を示す斜視図である。
【0014】
図1に示す装置は、部品(ワーク)を下流側の工程に供給する部品供給装置1である。図1に示すように、部品供給装置1は、フレーム2と、2つのホッパー3A、3Bと、2つのピック台5A、5Bと、2つの排出台6A、6Bと、本例のロボットハンド10を有する搬送ロボット4と、を備えている。ホッパー3A,3B、搬送ロボット4、ピック台5A,5B及び排出台6A,6Bは、フレーム2に取り付けられている。
【0015】
ホッパー3A、3Bには、部品が貯蔵される。ホッパー3A、3Bは、貯蔵された部品を、搬送ロボット4に受け渡す。ピック台5A、5Bには、搬送ロボット4が受け取った部品が一時的に仮置される。そして、搬送ロボット4は、撮像部によりピック台5A、5Bに仮置された部品を撮像し、部品の状態を確認する。
【0016】
さらに、搬送ロボット4は、ピック台5A、5Bに仮置された部品から所定の部品を一つ把持し、排出台6A、6Bに搬送する。このとき、搬送ロボット4は、ロボットハンド10により物品を回転させて、物品を任意の姿勢に変更させて排出台6A、6Bに搬送する。排出台6A、6Bは、搬送ロボット4から搬送された部品を下流側の工程や装置に排出する。
【0017】
1-2.ロボットハンドの構成
次に、ロボットハンド10の構成について、図2から図4を参照して説明する。
図2は、ロボットハンド10を示す斜視図である。
【0018】
図2に示すように、ロボットハンド10は、ハンドベース11と、第1把持部12Aと、第2把持部12Bと、第1駆動部13Aと、第2駆動部13Bと、第1ピニオンギア14Aと、第2ピニオンギア14Bと、第1ラックギア15Aと、第2ラックギア15Bとを有している。また、ロボットハンド10は、第1支持部25Aと、第2支持部25Bと、第1基部26Aと、第2基部26Bと、第1リンク部27Aと、第2リンク部27Bと、を有している。
【0019】
ハンドベース11は、搬送ロボット4のアームに接続される。ハンドベース11には、回転中心移動部を示す第1駆動部13A及び第2駆動部13Bが設けられている。第1駆動部13Aの駆動軸には、第1ピニオンギア14Aが接続されており、第2駆動部13Bの駆動軸には、第2ピニオンギア14Bが接続されている。
【0020】
第1ピニオンギア14Aには、第1スライド部材を示す第1ラックギア15Aが歯合しており、第2ピニオンギア14Bには、第2スライド部材を示す第2ラックギア15Bが歯合している。第1ラックギア15Aにおける第1駆動部13Aとは反対側の端部には、第1基部26Aが設けられている。また、第2ラックギア15Bにおける第2駆動部13Bとは反対側の端部には、第2基部26Bが設けられている。そして、第1駆動部13A又は第2駆動部13Bが駆動すると、第1ラックギア15A又は第2ラックギア15Bは、ハンドベース11に接近又は離反する向きに移動する。
【0021】
第1基部26Aには、リンク軸28を介して第1リンク部27Aが取り付けられており、第2基部26Bには、リンク軸28を介して第2リンク部27Bが取り付けられている。第1基部26A及び第2基部26Bには、開閉駆動部が設けられている。開閉駆動部の駆動軸は、リンク軸28に接続されている。
【0022】
第1リンク部27A及び第2リンク部27Bは、それぞれ2つのリンク片からなる平行リンク機構である。第1リンク部27Aにおける第1基部26Aとは反対側の端部には、リンク軸29を介して第1支持部25Aが取り付けられており、第2リンク部27Bにおける第2基部26Bとは反対側の端部には、リンク軸29を介して第2支持部25Bが取り付けられている。
【0023】
また、第1支持部25Aには、第1把持部12Aが設けられており、第2支持部25Bには、第2把持部12Bが設けられている。第1把持部12A及び第2把持部12Bは、互いに対向して配置される。第1把持部12A及び第2把持部12Bにおける対向する一面には、物品(ワーク)に接触する指部23が設けられている。
【0024】
そして、第1駆動部13A又は第2駆動部13Bが駆動すると、第1ラックギア15A又は第2ラックギア15Bは、ハンドベース11に接近又は離反する向きに移動する。第1ラックギア15Aや第2ラックギア15Bの移動にともなって、第1リンク部27Aや第2リンク部27Bの先端部に設けられた第1把持部12Aや第2把持部12Bが、ハンドベース11に接近又は離反する向きに移動する。
【0025】
また、第1基部26A及び第2基部26Bに設けた開閉駆動部が駆動すると、第1リンク部27A及び第2リンク部27Bの先端部に設けられた第1把持部12A及び第2把持部12Bが、互いに接近及び離反する向きに移動する。これにより、ロボットハンド10による把持動作が行われる。
【0026】
1-3.把持部の構成
次に、図3及び図4を参照して第1把持部12A及び第2把持部12Bの構成について説明する。なお、第1把持部12A及び第2把持部12Bは、それぞれ同一の構成を有しているため、ここでは、第1把持部12Aについて説明する。なお、第1把持部12Aを単に把持部12と称す。
図3は、把持部12を示す分解斜視図であり、図4は、把持部を示す正面図である。
【0027】
図3及び図4に示すように、把持部12は、把持ベース21と、荷重受板22と、指部23と、回転機構24と、回転軸31と、例えば、ロードセルからなる3つの圧力センサ41A、41B、41Cとを有している。
【0028】
把持ベース21は、略平板状に形成されている。把持ベース21は、ロボットハンド10の支持部25A、25B(図2参照)に連続して形成されている。把持ベース21には、3つの取付凹部36A、36B、36Cと、3つの配線凹部37A、37B、37Cが形成されている。3つの取付凹部36A、36B、36Cと3つの配線凹部37A、37B、37Cは、把持ベース21における荷重受板22と対向する対向面部32に形成されている。取付凹部36A、36B、36C及び配線凹部37A、37B、37Cは、対向面部32から荷重受板22と離反する向きに凹んだ凹部である。
【0029】
第1取付凹部36Aには、第1圧力センサ41Aが配置され、第2取付凹部36Bには、第2圧力センサ41Bが配置され、第3取付凹部36Cには、第3圧力センサ41Cが配置される。第1配線凹部37Aは、第1取付凹部36Aに連続して形成され、第2配線凹部37Bは、第2取付凹部36Bに連続して形成され、第3配線凹部37Cは、第3取付凹部36Cに連続して形成されている。そして、第1配線凹部37Aには、第1圧力センサ41Aの配線が配置され、第2配線凹部37Bには、第2圧力センサ41Bの配線が配置され、第3配線凹部37Cには、第3圧力センサ41Cの配線が配置される。
【0030】
また、把持ベース21における支持部25A、25B側の端部には、固定孔34が形成されている。固定孔34には、把持ベース21に荷重受板22を取り付けるための不図示の支持ピンが挿入される。そして、把持ベース21の対向面部32と対向するように荷重受板22が配置される。そのため、3つの圧力センサ41A、41B、41Cは、把持ベース21と荷重受板22の間に挟持される。また、3つの圧力センサ41A、41B、41Cにおける荷重受板22側の端面には、両面テープ39が貼り付けられる。
【0031】
荷重受板22は、略平板状に形成されている。荷重受板22における把持ベース21の固定孔34を臨む位置には、固定孔33が形成されている。固定孔33には、荷重受板22を把持ベース21に取り付けるための不図示の支持ピンが挿入される。そして、荷重受板22は、後述する指部23が物品(ワーク)を把持した際に、把持ベース21に対して接近する向きに移動する。そして、3つの圧力センサ41A、41B、41Cは、指部23を介して荷重受板22に加わる荷重(圧力)を検出する。
【0032】
荷重受板22における把持ベース21と対向する面とは反対側の面には、例えば、サーボモータからなる回転機構24が設けられている。回転機構24の駆動軸には、回転軸31が設けられている。回転軸31は、その軸方向が把持ベース21と荷重受板22が対向する方向と平行に配置されている。回転軸31には、略円板状の指部23が回転可能に支持されている。指部23は、物品(ワーク)に接触する。そして、回転機構24が駆動することで、指部23は、回転軸31を中心に回転する。すなわち、回転軸31が指部23の回転中心Q1である。
【0033】
なお、指部23を略円板状に形成した例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、六角形や矩形をなす平板状に形成してもよい。
【0034】
次に、回転軸31に対する3つの圧力センサ41A、41B、41Cの位置関係について図4を参照して説明する。
ここで、把持ベース21と荷重受板22が対向する方向と直交する平面において、第2圧力センサ41Bと第3圧力センサ41Cが並ぶ方向をX方向とし、このX方向と直交する方向をY方向とする。このとき、第1圧力センサ41A及び回転軸31をX座標のゼロとした場合、第2圧力センサ41BのX座標は、-dx/2の位置となり、第3圧力センサ41CのX座標は、+dx/2の位置となる。すなわち、第1圧力センサ41A及び回転軸31は、第2圧力センサ41Bと第3圧力センサ41CにおけるX方向の中心に配置される。
【0035】
回転軸31のY座標をゼロとした場合、第1圧力センサ41AのY座標は、+dy/2の位置となり、第2圧力センサ41B及び第3圧力センサ41CのY座標は、-dy/2の位置となる。すなわち、回転軸31は、第1圧力センサ41Aと、第2圧力センサ41B及び第3圧力センサ41CにおけるY方向の中心に配置される。
【0036】
1-4.制御系の構成
次に、ロボットハンド10の制御系の構成について、図5を参照して説明する。
図5は、ロボットハンド10における制御系の構成例を示すブロック図である。
【0037】
図5に示すように、ロボットハンド10は、制御部100と、3つの圧力センサ41A、41B、41Cと、回転中心移動部を示す駆動部13A、13Bと、回転機構24とを有している。そして、制御部100と、3つの圧力センサ41A、41B、41C及び回転中心移動部を示す駆動部13A、13B、回転機構24は、情報を送受信可能に接続されている。
【0038】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)とを備えている。制御部100の各種機能は、CPUがROMに格納された所定の処理プログラムを実行することにより実現される。
【0039】
また、制御部100は、圧力中心演算部101と、回転中心制御部102と、回転動作指示部103とを有している。圧力中心演算部101は、3つの圧力センサ41A、41B、41Cから圧力情報(荷重情報)を取得する。そして、圧力中心演算部101は、3つの圧力センサ41A、41B、41Cから取得した圧力情報に基づいて、圧力中心、すなわちモーメントがゼロになる位置を演算する。
【0040】
圧力中心演算部101は、回転中心制御部102に接続されている。圧力中心演算部101は、演算した圧力中心情報を回転中心制御部102に出力する。回転中心制御部102は、圧力中心演算部101から出力された圧力中心情報に基づいて、回転中心移動部である駆動部13A、13Bに動作指示を出力する。これにより、2つの駆動部13A、13Bが駆動することで、第1把持部12Aと第2把持部12Bがハンドベース11に接近又は離反する向きに移動する。その結果、第1把持部12A及び第2把持部12Bにおける指部23の回転中心Q1の位置が変化する。
【0041】
また、回転中心制御部102は、回転動作指示部103に接続されている。回転中心制御部102は、把持部12A、12Bの回転中心Q1の調整動作が完了すると、動作完了連絡を回転動作指示部103に送信する。回転動作指示部103は、動作完了連絡を受信すると、回転機構24に動作指示を出力する。これにより、回転機構24が駆動し、指部23が回転軸31を中心に回転する。
【0042】
2.ロボットハンドの動作例
2-1.第1の動作例
次に、ロボットハンド10の動作例について、図6から図9を参照して説明する。
まず、図6を参照した第1の動作例について説明する。
図6は、第1の動作例を示すフローチャートである。
【0043】
図6に示すように、搬送ロボット4の制御部は、アームを動かし、ワークをピックする位置へロボットハンド10を移動させる(ステップS11)。次に、ロボットハンド10は、指を閉じてワークを把持する(ステップS12)。すなわち、ロボットハンド10の制御部100は、第1基部26A及び第2基部26Bに設けた開閉駆動部を駆動させて、第1把持部12Aと第2把持部12Bを互いに接近する向きに移動させる。そして、第1把持部12Aと第2把持部12Bの指部23をワークに接触させる。これにより、把持部12の荷重受板22が把持ベース21に向けて押圧される。このときの圧力(荷重)を3つの圧力センサ41A、41B、41Cで計測する。
【0044】
次に、制御部100の圧力中心演算部101は、圧力中心を計測(演算)する(ステップS13)。具体的には、把持部12に設けた3つの圧力センサ41A、41B、41Cから3つの圧力センサ41A、41B、41Cが計測した圧力情報(荷重情報)を、圧力中心演算部101が取得する。そして、圧力中心演算部101は、モーメントがゼロになる位置を圧力中心として計測する。
【0045】
ここで、第1圧力センサ41Aが計測した圧力(荷重)を第1圧力L、第2圧力センサ41Bが計測した圧力(荷重)を第2圧力L、第3圧力センサ41Cが計測した圧力(荷重)を第3圧力Lとした場合、圧力中心のX座標(Xcop)とY座標(Ycop)は、下記数1、数2から算出される。
[数1]
Xcop=(L-L)dx/2(L+L
[数2]
Ycop=(L-(L+L))dy/2(L+L+L
【0046】
次に、搬送ロボット4の制御部は、アームを動かしワークを持ち上げる(ステップS14)。そして、制御部100の回転中心制御部102は、動作指示を出力し、回転中心移動部によって圧力中心P1と、回転中心Q1の位置を合わせる(ステップS15)。ここで、Y方向の位置合わせは、ロボットハンド10に設けた回転中心移動部を示す駆動部13A、13Bを駆動させて行われる。また、X方向の位置合わせは、例えば、搬送ロボット4のアームを動かすことで行われる。
【0047】
圧力中心P1と回転中心Q1の位置合わせが完了すると、回転中心制御部102は、回転動作指示部103に動作完了連絡を行う。そして、回転動作指示部103は、回転機構24に動作指示を出力する。これにより、回転機構24が駆動し、ワークが回転する(ステップS16)。このとき、圧力中心P1と回転中心Q1が一致しているため、凹凸があるワークを安定した状態で把持することができる。そのため、指部23で回転させて、ワークの姿勢を変更させても、ワークが把持部12A、12Bが落ちることおそれがない。
【0048】
ステップS16の処理によりワークの姿勢が所望の姿勢に変更されると、搬送ロボット4は、アームを動かし、プレース位置(本例では、排出台6A、6B)へ移動させる(ステップS17)。そして、ロボットハンド10の制御部100は、指を開きワークをプレースする(ステップS18)。すなわち、制御部100は、第1基部26A及び第2基部26Bに設けた開閉駆動部を駆動させて、第1把持部12Aと第2把持部12Bを互いに離間する向きに移動させる。これにより、把持部12A、12Bに設けた指部23からワークが離れる。その結果、第1の動作例が完了する。
【0049】
2-2.第2の動作例
次に、図7及び図8を参照して第2の動作例について説明する。
図7は、第2の動作例を示す説明図、図8は、第2の動作例を示すフローチャートである。なお、第1の動作例では、ワークを把持した状態で圧力中心P1と回転中心Q1の位置合わせを行っていたのに対して、第2の動作例は、一度ワークを離した状態で圧力中心P1と回転中心Q1の位置合わせを行う動作である。
【0050】
図7(a)及び図8に示すように、搬送ロボット4の制御部は、アームを動かし、ワークM1をピックする位置へロボットハンド10を移動させる(ステップS21)。次に、図7(b)に示すように、ロボットハンド10は、指を閉じてワークM1を把持する(ステップS22)。このとき、把持部12の荷重受板22が把持ベース21に向けて押圧される。このときの圧力(荷重)を3つの圧力センサ41A、41B、41Cで計測する。
【0051】
次に、制御部100の圧力中心演算部101は、圧力中心P1、P2を計測(演算)する(ステップS23)。なお、圧力中心の演算方法は、第1の動作例と同様であるため、その説明は省略する。また、図7(b)に示すように、ワークM1に凹凸がある場合、指部23の回転中心Q1、Q2と圧力中心P1、P2の位置が一致しない。
【0052】
次に、制御部100は、図7(c)に示すように、指を開きワークM1を離す(ステップS24)。そして、制御部100の回転中心制御部102は、動作指示を出力し、回転中心移動部によって圧力中心P1、P2と、回転中心Q1、Q2の位置を合わせる(ステップS25)。ここで、回転中心Q1、Q2は、指部23の中心であり、その位置は予め分かっているため、計測した圧力中心P1、P2の位置に合わせることができる。
【0053】
圧力中心P1と回転中心Q1の位置合わせが完了すると、図7(d)に示すように、ロボットハンド10は、指を閉じてワークM1を把持する(ステップS26)。次に、搬送ロボット4の制御部は、アームを動かしワークM1を持ち上げる(ステップS27)。そして、図7(e)に示すように、制御部100の回転中心制御部102は、動作指示を出力し、回転中心移動部によって第1把持部12Aの回転中心Q1と第2把持部12Bの回転中心Q2の位置を合わせる(ステップS28)。これにより、図7(f)に示すように、左右の回転中心Q1、Q2を結ぶ線(回転軸)R1は、ワークM1を把持する位置を結んだ対角線上に配置される。
【0054】
次に、回転動作指示部103は、回転機構24に動作指示を出力する。これにより、図7(g)に示すように、回転機構24が駆動し、ワークが回転する(ステップS29)。このとき、圧力中心P1と回転中心Q1が一致し、左右の回転中心Q1、Q2を結ぶ線(回転軸)R1は、ワークM1を把持する位置を結んだ対角線上に配置されている。そのため、凹凸があるワークM1を安定した状態で把持することができる。そのため、指部23で回転させて、ワークM1の姿勢を変更させても、ワークが把持部12A、12Bが落ちることおそれがない。
【0055】
次に、搬送ロボット4は、アームを動かし、プレース位置(本例では、排出台6A、6B)へ移動させる(ステップS30)。そして、ロボットハンド10の制御部100は、指を開きワークM1をプレースする(ステップS31)。これにより、把持部12A、12Bに設けた指部23からワークM1が離れ、第2の動作例が完了する。
【0056】
なお、第1の動作例では、ワークM1を把持した状態で回転中心と圧力中心の位置合わせを行っているため、ワークM1の掴み直し動作を行う第2の動作例よりもワークM1の搬送動作にかかる時間の短縮を図ることができる。
【0057】
また、第2の動作例では、左右の回転中心Q1、Q2が一致した状態で、ワークM1を回転させることができるため、ワークM1を第1の動作例に比べてより安定した状態で回転させることができる。
【0058】
2-3.第3の動作例
次に、図9を参照して第3の動作例について説明する。
図9は、第3の動作例を示すフローチャートである。
【0059】
図9に示すように、搬送ロボット4の制御部は、アームを動かし、ワークM1をピックする位置へロボットハンド10を移動させる(ステップS41)。ロボットハンド10は、指を閉じてワークM1を把持する(ステップS42)。このとき、把持部12の荷重受板22が把持ベース21に向けて押圧される。このときの圧力(荷重)を3つの圧力センサ41A、41B、41Cで計測する。
【0060】
次に、制御部100の圧力中心演算部101は、圧力中心P1を計測(演算)する(ステップS43)。なお、圧力中心の演算方法は、第1の動作例と同様であるため、その説明は省略する。次に、制御部100は、圧力中心P1と回転中心Q1の差分が予め設定した閾値よりも大きいか否かを判断する(ステップS44)。
【0061】
ステップS44の処理において、圧力中心P1と回転中心Q1の差分が閾値よりも小さいと判断した場合(ステップS44のNO判定)、搬送ロボット4の制御部は、アームを動かしワークを持ち上げる(ステップS45)。そして、制御部100の回転中心制御部102は、動作指示を出力し、回転中心移動部によって圧力中心P1と、回転中心Q1の位置を合わせる(ステップS46)。ステップS46の処理が完了すると、上述するステップS51の処理に移行する。
【0062】
これに対して、ステップS44の処理において、圧力中心P1と回転中心Q1の差分が閾値よりも大きいと制御部100が判断した場合(ステップS44のYES判定)、制御部100は、指を開きワークM1を離す(ステップS47)。そして、制御部100の回転中心制御部102は、動作指示を出力し、回転中心移動部によって圧力中心P1と、回転中心Q1の位置を合わせる(ステップS48)。
【0063】
圧力中心P1と回転中心Q1の位置合わせが完了すると、ロボットハンド10は、指を閉じてワークM1を把持する(ステップS49)。次に、搬送ロボット4の制御部は、アームを動かしワークM1を持ち上げる(ステップS50)。ステップS50の処理が完了すると、上述するステップS51の処理に移行する。なお、ステップS50の処理からステップS51の処理に移行する前に、第2の動作例のステップS28の処理と同様に、第1把持部12Aの回転中心Q1と第2把持部12Bの回転中心Q2の位置を合わせてもよい。
【0064】
次に、回転動作指示部103は、回転機構24に動作指示を出力して、回転機構24を駆動させて、ワークを回転させる(ステップS51)。次に、搬送ロボット4は、アームを動かし、プレース位置(本例では、排出台6A、6B)へ移動させる(ステップS52)。そして、ロボットハンド10の制御部100は、指を開きワークM1をプレースする(ステップS53)。これにより、把持部12A、12Bに設けた指部23からワークM1が離れ、第3の動作例が完了する。
【0065】
以上、実施の形態例について、その作用効果も含めて説明した。しかしながら、上述の実施の形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0066】
上述した実施の形態例では、把持部12A、12Bに3つの圧力センサ41A、41B、41Cを設けた例を説明したが、これに限定されるものではなく、圧力センサを4つ以上設けてもよい。なお、圧力センサの数は、1つの把持部に対して少なくとも2つあればよい。
【0067】
また、上述した実施の形態例では、回転中心と圧力中心の位置を合わせるための回転中心移動部として、X方向では搬送ロボット4のアームを用いて、Y方向ではロボットハンド10の駆動部13A、13Bを用いる例を説明したがこれに限定されるものではない。回転中心移動部としては、例えば、X方向及びY方向とも搬送ロボット4のアームを適用してもよい。また、ロボットハンド10にX方向に移動させるために機構を新たに設けてもよい。さらに、把持部12全体を移動させる例を説明したが、これに限定されるものではなく、回転中心移動部として指部23及び回転軸31のみを移動させる機構を把持部12に設けてもよい。
【0068】
また、上記の各構成要素、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路の設計などによりハードウエアで実現してもよい。また、上記の各構成要素、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウエアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又はICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0069】
なお、本明細書において、「平行」及び「直交」等の単語を使用したが、これらは厳密な「平行」及び「直交」のみを意味するものではなく、「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」や「略直交」の状態であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…部品供給装置、 2…フレーム、 3A、3B…ホッパー、 4…搬送ロボット、 5A、5B…ピック台、 6A、6B…排出台、 10…ロボットハンド、 11…ハンドベース、 12、12A、12B…把持部、 13A、13B…駆動部(回転中心移動部)、 14A、14B…ピニオンギア、 15A、15B…第1ラックギア、 21…把持ベース、 22…荷重受板、 23…指部、 24…回転機構、 25A、25B…支持部、 26A、26B…基部、 27A、27B…リンク部、 28、29…リンク軸、 31…回転軸、 32…対向面部、 33、34…固定孔、 36A、36B、36C…取付凹部、 37A、37B、37C…配線凹部、 39…両面テープ、 41A、41B、41C…圧力センサ、 100…制御部、 101…圧力中心演算部、 102…回転中心制御部、 103…回転動作指示部、 L1…第1圧力、 L2…第2圧力、 L3…第3圧力、 M1…ワーク(物品)、 P1、P2…圧力中心、 Q1、Q2…回転中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9