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特開2024-82492画像処理装置、印刷システムおよび画像処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082492
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】画像処理装置、印刷システムおよび画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/00 20060101AFI20240613BHJP
   B41J 21/00 20060101ALI20240613BHJP
   G06T 19/00 20110101ALI20240613BHJP
【FI】
G06T1/00 500A
B41J21/00 Z
G06T19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196375
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 祐子
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 崇廣
(72)【発明者】
【氏名】大野 拓也
(72)【発明者】
【氏名】山下 充裕
【テーマコード(参考)】
2C187
5B050
5B057
【Fターム(参考)】
2C187AC08
2C187AD14
2C187AE01
2C187AF01
2C187CD12
2C187CD17
2C187DC01
2C187GA03
2C187GA05
5B050AA09
5B050BA09
5B050CA07
5B050DA04
5B050EA07
5B050EA09
5B050EA19
5B050EA27
5B050EA30
5B050FA05
5B057AA11
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB13
5B057CB16
5B057CE16
5B057CE20
5B057DA16
5B057DA17
5B057DB02
5B057DB09
5B057DC30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】印刷媒体の質感を伴った表現で裏抜けが生じている印刷物を表現可能な画像処理装置、画像処理プログラム及び印刷システムを提供する。
【解決手段】印刷システムにおいて、画像処理装置100は、画像データを取得する画像データ取得部、印刷条件を取得する印刷条件取得部、画像データに印刷条件に応じた色変換を施す色変換部、印刷媒体の質感を表す質感パラメーターと浸透度を表す浸透パラメーターとを含む媒体パラメーターを取得するパラメーター取得部、浸透パラメーターを用いて、印刷媒体に印刷される画像の裏抜け度を算出する裏抜け度算出部、色変換された画像データと裏抜け度とを用いて裏抜け画像データを生成する裏抜け画像データ生成部及び印刷媒体の形状を表す3Dオブジェクトの表面と裏面との少なくとも一方に裏抜け画像データを対応付け、表面と裏面とに質感パラメーターを対応付けてレンダリングを実行するレンダリング部を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを取得する画像データ取得部と、
画像が印刷される印刷媒体の種類を含む印刷条件を取得する印刷条件取得部と、
前記画像データに前記印刷条件に応じた色変換を施す色変換部と、
前記印刷媒体の性質を表す媒体パラメーターであって、前記印刷媒体の質感を表す質感パラメーターと前記印刷媒体の浸透度を表す浸透パラメーターとを含む媒体パラメーターを取得するパラメーター取得部と、
前記浸透パラメーターを用いて、前記印刷媒体に印刷される前記画像の裏抜け度を算出する裏抜け度算出部と、
前記色変換が施された前記画像データと前記裏抜け度とを用いて、前記印刷媒体に裏抜けにより形成される裏抜け画像を表す裏抜け画像データを生成する裏抜け画像データ生成部と、
前記印刷媒体の形状を表す3Dオブジェクトの表面と裏面との少なくとも一方に前記裏抜け画像データを対応付け、かつ、前記3Dオブジェクトの表面と裏面とに前記質感パラメーターを対応付けてレンダリングを実行するレンダリング部と、
を備える、画像処理装置。
【請求項2】
前記パラメーター取得部は、前記印刷媒体の表面の質感を表す表面質感パラメーターと、前記印刷媒体の裏面の質感を表す裏面質感パラメーターと、を含む前記媒体パラメーターを取得し、
前記レンダリング部は、前記3Dオブジェクトの表面に前記表面質感パラメーターを対応付け、前記3Dオブジェクトの裏面に前記裏面質感パラメーターを対応付ける、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記浸透パラメーターには、前記印刷媒体の浸透度がスカラー量で表されているか、または、前記印刷媒体における浸透度の分布がマップで表されている、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記裏抜け度算出部は、前記画像データの画素値に応じた浸透度を表す画素値浸透度と前記浸透パラメーターとを用いて前記裏抜け度を算出する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記裏抜け度算出部は、印刷時に前記印刷媒体に供給されるインク量に応じた浸透度を表すインク量浸透度と前記浸透パラメーターとを用いて前記裏抜け度を算出する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記裏抜け度算出部は、前記画像データの画素値と前記インク量との関係を表すテーブルを用いて前記インク量を算出する、
請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記裏抜け度算出部は、前記印刷条件に応じた前記テーブルを用いて前記インク量を算出する、
請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記画像データ取得部は、前記印刷媒体の表面に印刷される画像を表す表面画像データと、前記印刷媒体の裏面に予め表されている画像を表す裏面画像データとを取得し、
前記色変換部は、前記表面画像データには、前記印刷条件に応じた色変換である第1色空間から印刷用機器に依存する第2色空間を介して第3色空間への色変換を施し、前記裏面画像データには、前記第1色空間から前記第2色空間を介さずに前記第3色空間への色変換を施し、 前記裏抜け画像データ生成部は、前記裏面画像データと前記色変換が施された前記表面画像データと前記裏抜け度とを用いて、前記印刷媒体の裏面に裏抜けにより形成される裏抜け画像を表す裏抜け裏面画像データを生成し、
前記レンダリング部は、前記3Dオブジェクトの表面に前記色変換が施された前記表面画像データを対応付け、前記3Dオブジェクトの裏面に前記裏抜け裏面画像データを対応付ける、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記画像データ取得部は、前記印刷媒体の表面に印刷される画像を表す表面画像データと、前記印刷媒体の裏面に印刷される画像を表す裏面画像データとを取得し、
前記色変換部は、前記表面画像データと前記裏面画像データとに前記印刷条件に応じた色変換を施し、
前記裏抜け画像データ生成部は、前記色変換が施された前記表面画像データと前記色変換が施された前記裏面画像データと前記裏抜け度とを用いて、前記印刷媒体の表面に裏抜けにより形成される裏抜け画像を表す裏抜け表面画像データと前記印刷媒体の裏面に裏抜けにより形成される裏抜け画像を表す裏抜け裏面画像データとを生成し、
前記レンダリング部は、前記3Dオブジェクトの表面に前記裏抜け表面画像データを対応付け、前記3Dオブジェクトの裏面に前記裏抜け裏面画像データを対応付ける、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記3Dオブジェクトは、前記3Dオブジェクトの表面と裏面とを構成するポリゴンを備える、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記3Dオブジェクトは、前記3Dオブジェクトの表面を構成する表面用ポリゴンと、前記表面用ポリゴンと背中合わせに配置されており、前記3Dオブジェクトの裏面を構成する裏面用ポリゴンと、を備える、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の画像処理装置と、
前記画像処理装置によって生成されるレンダリング結果を表示する表示装置と、
前記印刷媒体に画像を印刷する印刷装置と、
を備える、印刷システム。
【請求項13】
画像データを取得する画像データ取得機能と、
画像が印刷される印刷媒体の種類を含む印刷条件を取得する印刷条件取得機能と、
前記画像データに前記印刷条件に応じた色変換を施す色変換機能と、
前記印刷媒体の性質を表す媒体パラメーターであって、前記印刷媒体の質感を表す質感パラメーターと前記印刷媒体の浸透度を表す浸透パラメーターとを含む媒体パラメーターを取得するパラメーター取得機能と、
前記浸透パラメーターを用いて、前記印刷媒体に印刷される前記画像の裏抜け度を算出する裏抜け度算出機能と、
前記色変換が施された前記画像データと前記裏抜け度とを用いて、前記印刷媒体に裏抜けにより形成される裏抜け画像を表す裏抜け画像データを生成する裏抜け画像データ生成機能と、
前記印刷媒体の形状を表す3Dオブジェクトの表面と裏面との少なくとも一方に前記裏抜け画像データを対応付け、かつ、前記3Dオブジェクトの表面と裏面とに前記質感パラメーターを対応付けてレンダリングを実行するレンダリング機能と、
をコンピューターに実行させる、画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像処理装置、印刷システムおよび画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷媒体にインクが浸透することにより、印刷媒体に印刷した画像が印刷面の裏側の面に写る裏抜けという現象が生じることがある。裏抜けに関して、特許文献1には、表面に印刷される画像の濃度と、裏面に印刷される画像の濃度と、表面の濃度と裏面の濃度とから裏抜けの影響を予測するための情報とを用いて、裏面から表面への裏抜けの影響を予測して、裏抜けの影響が考慮された印刷物の表面のシミュレーション画像を生成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-241350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、裏抜けが生じている印刷物のシミュレーション画像を生成することはできるが、シミュレーション画像には印刷媒体の質感が表現されていないので、シミュレーション画像に表された印刷物と実際の印刷物とでは見た目の差異が大きい。したがって、印刷媒体の質感を伴った表現で、裏抜けが生じている印刷物を表現可能な技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、画像処理装置が提供される。この画像処理装置は、画像データを取得する画像データ取得部と、画像が印刷される印刷媒体の種類を含む印刷条件を取得する印刷条件取得部と、前記画像データに前記印刷条件に応じた色変換を施す色変換部と、前記印刷媒体の性質を表す媒体パラメーターであって、前記印刷媒体の質感を表す質感パラメーターと前記印刷媒体の浸透度を表す浸透パラメーターとを含む媒体パラメーターを取得するパラメーター取得部と、前記浸透パラメーターを用いて、前記印刷媒体に印刷される前記画像の裏抜け度を算出する裏抜け度算出部と、前記色変換が施された前記画像データと前記裏抜け度とを用いて、前記印刷媒体に裏抜けにより形成される裏抜け画像を表す裏抜け画像データを生成する裏抜け画像データ生成部と、前記印刷媒体の形状を表す3Dオブジェクトの表面と裏面との少なくとも一方に前記裏抜け画像データを対応付け、かつ、前記3Dオブジェクトの表面と裏面とに前記質感パラメーターを対応付けてレンダリングを実行するレンダリング部と、を備える。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、印刷システムが提供される。この印刷システムは、前記第1の形態の前記画像処理装置と、前記画像処理装置によって生成されるレンダリング結果を表示する表示装置と、前記印刷媒体に画像を印刷する印刷装置と、を備える。
【0007】
本開示の第3の形態によれば、画像処理プログラムが提供される。この画像処理プログラムは、画像データを取得する画像データ取得機能と、画像が印刷される印刷媒体の種類を含む印刷条件を取得する印刷条件取得機能と、前記画像データに前記印刷条件に応じた色変換を施す色変換機能と、前記印刷媒体の性質を表す媒体パラメーターであって、前記印刷媒体の質感を表す質感パラメーターと前記印刷媒体の浸透度を表す浸透パラメーターとを含む媒体パラメーターを取得するパラメーター取得機能と、前記浸透パラメーターを用いて、前記印刷媒体に印刷される前記画像の裏抜け度を算出する裏抜け度算出機能と、前記色変換が施された前記画像データと前記裏抜け度とを用いて、前記印刷媒体に裏抜けにより形成される裏抜け画像を表す裏抜け画像データを生成する裏抜け画像データ生成機能と、前記印刷媒体の形状を表す3Dオブジェクトの表面と裏面との少なくとも一方に前記裏抜け画像データを対応付け、かつ、前記3Dオブジェクトの表面と裏面とに前記質感パラメーターを対応付けてレンダリングを実行するレンダリング機能と、をコンピューターに実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の印刷システムの構成を示す説明図。
図2】第1実施形態の画像処理装置の構成を示す説明図。
図3】第1実施形態のレンダリング部の構成を示す説明図。
図4】片面印刷により画像が印刷された印刷媒体の一例を示す説明図。
図5】両面印刷により画像が印刷された印刷媒体の一例を示す説明図。
図6】画像データ入力用のユーザーインターフェースの第1の例を示す説明図。
図7】画像データ入力用のユーザーインターフェースの第2の例を示す説明図。
図8】第1実施形態の裏抜け度算出処理の内容を示すフローチャート。
図9】画素値浸透度テーブルの一例を示す説明図。
図10】媒体浸透度テーブルの一例を示す説明図。
図11】片面印刷時の裏抜け画像データが生成される様子を模式的に示す説明図。
図12】両面印刷時の裏抜け画像データが生成される様子を模式的に示す説明図。
図13】3Dオブジェクトの表面を観察する様子を模式的に示す説明図。
図14】表面観察時に表示されるレンダリング結果を模式的に示す説明図。
図15】3Dオブジェクトの裏面を観察する様子を模式的に示す説明図。
図16】裏面観察時に表示されるレンダリング結果を模式的に示す説明図。
図17】第2実施形態の裏抜け度算出処理の内容を示すフローチャート。
図18】インク量テーブルの一例を示す説明図。
図19】浸透係数テーブルの一例を示す説明図。
図20】第3実施形態の画像処理装置において3Dオブジェクトの表面を観察する様子を模式的に示す説明図。
図21】第3実施形態の画像処理装置において3Dオブジェクトの裏面を観察する様子を模式的に示す説明図。
図22】他の実施形態の媒体浸透度マップの一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態の画像処理装置100を備える印刷システム10の構成を示す説明図である。印刷システム10は、画像処理装置100と、入力装置200と、表示装置300と、印刷装置400とを備えている。画像処理装置100は、物理ベースレンダリング(以下、単にレンダリングという)により、画像が印刷された印刷媒体を表すレンダリング画像を生成して、レンダリング画像を表示装置300に表示させる。印刷媒体は、例えば、普通紙や光沢紙やマット紙などの印刷用紙である。印刷媒体は、印刷用紙に限られず、例えば、布などでもよい。表面の質感と裏面の質感とが異なる印刷媒体が用いられてもよいし、表面の質感と裏面の質感とが同じ印刷媒体が用いられてもよい。
【0010】
画像処理装置100は、プロセッサー101と、メモリー102と、入出力インターフェース103と、内部バス104とを備えている。プロセッサー101、メモリー102、および、入出力インターフェース103は、内部バス104を介して、双方向に通信可能に接続されている。入力装置200、表示装置300、および、印刷装置400は、有線通信あるいは無線通信により画像処理装置100の入出力インターフェース103に接続されている。入力装置200は、例えば、キーボードやマウスであり、表示装置300は、例えば、液晶ディスプレイである。入力装置200および表示装置300は、タッチパネルとして一体化されていてもよい。印刷装置400は、例えば、インクジェットプリンターであり、印刷媒体に画像を印刷する。
【0011】
図2は、画像処理装置100の構成を示す説明図である。画像処理装置100は、画像データ取得部110と、印刷条件取得部120と、入力プロファイル取得部131と、メディアプロファイル取得部132と、共通色空間プロファイル取得部133と、カラーマネージメントシステム140と、パラメーター取得部150と、裏抜け度算出部160と、裏抜け画像データ生成部170と、レンダリング部180とを備えている。画像データ取得部110、印刷条件取得部120、各プロファイル取得部131~133、カラーマネージメントシステム140、パラメーター取得部150、裏抜け度算出部160、裏抜け画像データ生成部170、および、レンダリング部180は、メモリー102に予め記憶されている画像処理プログラムPGをプロセッサー101が実行することによりソフトウェア的に実現される。なお、カラーマネージメントシステム140のことを色変換部140と呼ぶことがある。
【0012】
画像データ取得部110は、画像データを取得する。本実施形態では、画像データには、表面画像データと、裏面画像データとが含まれる。表面画像データは、印刷媒体の表面に印刷される画像を表す画像データである。裏面画像データは、印刷媒体の裏面に印刷される画像、あるいは、印刷媒体の裏面に予め形成されているロゴなどの画像を表す画像データである。印刷媒体の裏面にロゴなどが表されていない場合には、裏面画像データは、印刷媒体の裏地の色を表す画像であってもよい。以下の説明では、印刷媒体に印刷される画像のことを印刷画像と呼び、印刷媒体に予め形成されている画像のことを既成画像と呼び、印刷画像と既成画像とを特に区別せずに説明する場合には単に画像と呼ぶ。画像データ取得部110により取得された画像データは、カラーマネージメントシステム140に送信される。
【0013】
印刷条件取得部120は、印刷媒体の種類を含む印刷条件を取得する。印刷条件には、印刷媒体の種類の他に、例えば、印刷方法や、印刷装置の種類や、インクの種類や、インクの量や、印刷の解像度や、片面印刷で印刷するか両面印刷で印刷するかなどの条件が含まれる。印刷条件取得部120により取得された印刷条件は、各プロファイル取得部131~133、カラーマネージメントシステム140、および、パラメーター取得部150、裏抜け度算出部160、裏抜け画像データ生成部170に送信される。
【0014】
入力プロファイル取得部131は、機器に依存する色空間から機器に非依存の色空間への色変換に用いられるICCプロファイルである入力プロファイルを取得する。機器に依存する色空間は、例えば、RGB色空間などである。機器に非依存の色空間は、例えば、L(以下、単にLabと記載する)色空間や、XYZ色空間などである。メディアプロファイル取得部132は、機器に非依存の色空間から印刷用の機器に依存する色空間への色変換に用いられるICCプロファイルであるメディアプロファイルを取得する。印刷用の機器に依存する色空間は、例えば、CMYK色空間などである。共通色空間プロファイル取得部133は、機器に非依存の色空間からレンダリング用の色空間への色変換に用いられるICCプロファイルである共通色空間プロファイルを取得する。レンダリング用の色空間は、例えば、sRGBや、AdobeRGBや、Display-P3などである。各プロファイル取得部131~133は、メモリー102に予め記憶されている各プロファイルを取得する。各プロファイル取得部131~133によって取得された各プロファイルは、カラーマネージメントシステム140に送信される。なお、各プロファイル取得部131~133は、例えば、ネットワークを介して外部サーバーから各プロファイルを取得してもよい。
【0015】
カラーマネージメントシステム140は、印刷画像の画像データには、入力プロファイルを用いた機器に非依存の色空間への色変換、メディアプロファイルを用いた印刷用の機器に依存する色空間への色変換、メディアプロファイルを用いた機器に非依存の色空間への色変換、共通色空間プロファイルを用いたレンダリング用の色空間への色変換の順に、印刷条件に応じた色変換を施す。印刷用の機器に依存する色空間への色変換が施されることにより、画像データの色彩値は、印刷により表現可能な範囲内に収められ、その後、レンダリング用の色空間への色変換が施されることにより、印刷により表現可能な範囲内に収められた画像データの色彩値は、レンダリングで表現可能な範囲内に収められる。本実施形態では、カラーマネージメントシステム140は、既成画像の画像データには、入力プロファイルを用いた機器に非依存の色空間への色変換、共通色空間プロファイルを用いたレンダリング用の色空間への色変換の順に、色変換を施す。すなわち、カラーマネージメントシステム140は、既成画像を表す画像データには、メディアプロファイルを用いた色変換を施さない。なお、既成画像の画像データの色空間が元々レンダリング用の色空間と同じである場合には、既成画像の画像データには、カラーマネージメントシステム140による色変換が施されなくてもよい。以下の説明では、メディアプロファイルを用いた色変換を経てレンダリング用の色空間への色変換が施された画像データのことをマネージド画像データと呼び、メディアプロファイルを用いた色変換を経ずにレンダリング用の色空間への色変換が施された画像データのこと、および、カラーマネージメントシステム140による色変換が施されていない画像データであって、画像データの色空間がレンダリング用の色空間と同じである画像データのことを原画像データと呼び、マネージド画像データと原画像データとを特に区別せずに説明する場合には単に画像データと呼ぶ。マネージド画像データおよび原画像データは、レンダリング部180に送信される。なお、入力プロファイルを用いた色変換前の色空間のことを第1色空間と呼び、印刷用の機器に依存する色空間のことを第2色空間と呼び、レンダリング用の色空間のことを第3色空間と呼ぶことがある。
【0016】
パラメーター取得部150は、レンダリングに用いられる各種パラメーターを取得する。レンダリングに用いられる各種パラメーターには、例えば、3Dオブジェクト情報や、カメラ情報や、照明情報や、媒体パラメーターなどが含まれる。3Dオブジェクト情報は、仮想空間に配置される3Dオブジェクトに関するパラメーターである。3Dオブジェクトは、印刷媒体の形状を模擬して予め作成されている。3Dオブジェクトは、複数のポリゴンによって構成されている。本実施形態では、3Dオブジェクトは、厚みのない板状に構成されている。各ポリゴンの表面により3Dオブジェクトの表面が構成されており、各ポリゴンの裏面により3Dオブジェクトの裏面が構成されている。ここで、ポリゴンの表面とは、ポリゴンの法線ベクトルが向く側の面であり、3Dオブジェクトの表面とは、印刷媒体の表面に対応する面であり、3Dオブジェクトの裏面とは、印刷媒体の裏面に対応する面である。カメラ情報は、仮想空間に配置されたカメラの位置および向きに関するパラメーターである。照明情報は、仮想空間に配置された光源の種類や位置や向きや色や光度(光量)に関するパラメーターである。光源の種類には、例えば、蛍光灯や、白熱電球などが含まれる。
【0017】
媒体パラメーターは、印刷媒体の性質を表すパラメーターである。本実施形態では、媒体パラメーターには、印刷媒体の質感を表す質感パラメーターと、印刷媒体の浸透度を表す浸透パラメーターとが含まれている。質感パラメーターには、表面質感パラメーターと、裏面質感パラメーターとが含まれている。表面質感パラメーターは、印刷媒体の表面の質感を表す質感パラメーターであり、裏面質感パラメーターは、印刷媒体の裏面の質感を表す質感パラメーターである。表面の質感と裏面の質感とが異なる印刷媒体が用いられる場合には、表面質感パラメーターの内容と裏面質感パラメーターの内容とは、少なくとも一部が互いに異なる。表面の質感と裏面の質感とが同じ印刷媒体が用いられる場合には、表面質感パラメーターの内容と裏面質感パラメーターの内容とが同じであることが好ましい。この場合、表面質感パラメーターと裏面質感パラメーターとが別々ではなく一纏めにされていてもよい。
【0018】
各質感パラメーターには、例えば、印刷媒体の地色に関するベースカラー(Base Color)や、印刷媒体の滑らかさを表す滑らかさ(Smoothness)や、印刷媒体の光沢感を表す金属性(Metallic)や、法線マップ(Normal Map)や、高さマップ(Height Map)などが含まれる。各質感パラメーターには、滑らかさに代えて、印刷媒体の粗さを表す粗さ(Roughness)が含まれてもよい。法線マップ、および、高さマップは、光の反射に影響する印刷媒体の微小な凹凸面(マイクロファセット)を表現するために用いられる。法線マップは、微小な凹凸面の法線ベクトルの分布を表すテクスチャーであり、高さマップは、微小な凹凸面の高さの分布を表すテクスチャーである。微小な凹凸を表現するために3Dオブジェクトを構成するポリゴンのサイズを小さくすると、ポリゴンの数が膨大になり、レンダリングの計算負荷が大きくなる。法線マップや高さマップを用いることにより、ポリゴンのサイズを小さくしなくても、微小な凹凸面による光の反射への影響を表現することが可能になる。
【0019】
本実施形態では、浸透パラメーターには、表面浸透パラメーターと、裏面浸透パラメーターとが含まれている。各浸透パラメーターには、印刷媒体の性質に依存する印刷媒体へのインクの浸透度を表す媒体浸透度が含まれている。表面浸透パラメーターの媒体浸透度は、印刷媒体の表面から裏面へのインクの浸透度を表しており、裏面浸透パラメーターの媒体浸透度は、印刷媒体の裏面から表面へのインクの浸透度を表している。表面から裏面へのインクの浸透度と裏面から表面へのインクの浸透度とが異なる印刷媒体が用いられる場合には、表面浸透パラメーターの内容と裏面浸透パラメーターの内容とが互いに異なる。表面から裏面へのインクの浸透度と裏面から表面へのインクの浸透度とが同じ印刷媒体が用いられる場合には、表面浸透パラメーターの内容と裏面浸透パラメーターの内容とが同じであることが好ましい。この場合、表面浸透パラメーターと裏面浸透パラメーターとが別々ではなく一纏めにされていてもよい。
【0020】
パラメーター取得部150は、メモリー102に予め記憶されている媒体パラメーターを取得する。パラメーター取得部150によって取得された媒体パラメーターのうち、浸透パラメーターは、裏抜け度算出部160に送信され、質感パラメーターは、レンダリング部180に送信される。なお、パラメーター取得部150は、例えば、ネットワークを介して外部サーバーから各種パラメーターを取得してもよい。
【0021】
裏抜け度算出部160は、浸透パラメーターを用いて、裏抜け画像データを生成するための裏抜け度を算出する。裏抜けとは、一方の面から裏側の面にインクが浸透することにより、一方の面に印刷した印刷画像が裏側の面からも見えることである。裏抜け度とは、裏抜けの度合いのことを意味する。裏抜け度算出部160は、後述する裏抜け度算出処理を実行することにより裏抜け度を算出する。裏抜け度は、裏抜け画像データ生成部170に送信される。
【0022】
裏抜け画像データ生成部170は、画像データと裏抜け度とを用いて、印刷媒体に裏抜けにより形成される裏抜け画像を表す裏抜け画像データを生成する。本実施形態では、片面印刷の場合には、裏抜け画像データ生成部170は、表面の印刷画像のマネージド画像データを裏抜け度に応じて裏面の既成画像の原画像データに合成することにより、裏面に形成される裏抜け画像の裏抜け画像データを生成する。両面印刷の場合には、裏抜け画像データ生成部170は、表面の印刷画像のマネージド画像データを裏抜け度に応じて裏面の印刷画像のマネージド画像データに合成することにより、裏面に形成される裏抜け画像の裏抜け画像データを生成し、裏面用の印刷画像のマネージド画像データを裏抜け度に応じて表面の印刷画像のマネージド画像データに合成することにより、表面に形成される裏抜け画像の裏抜け画像データを生成する。以下の説明では、印刷媒体の表面に形成される裏抜け画像の裏抜け画像データのことを裏抜け表面画像データと呼び、印刷媒体の裏面に形成される裏抜け画像の裏抜け画像データのことを裏抜け裏面画像データと呼び、裏抜け表面画像データと裏抜け裏面画像データとのことを特に区別せずに説明する場合には単に裏抜け画像データと呼ぶ。また、裏抜け画像データとマネージド画像データと原画像データとを特に区別せずに説明する場合には単に画像データと呼ぶ。裏抜け画像データは、レンダリング部180に送信される。
【0023】
レンダリング部180は、画像データと各種パラメーターとを用いたレンダリングを実行することにより、画像が印刷された印刷媒体を表すレンダリング画像を生成する。本実施形態では、レンダリング部180は、3Dオブジェクトの表面と裏面との少なくとも一方に裏抜け画像データを対応付け、かつ、3Dオブジェクトの表面と裏面とに質感パラメーターを対応付けてレンダリングを実行する。具体的には、片面印刷の場合には、レンダリング部180は、表面の印刷画像のマネージド画像データと表面質感パラメーターとを3Dオブジェクトの表面に対応付け、かつ、裏抜け裏面画像データと裏面質感パラメーターとを3Dオブジェクトの裏面に対応付けて、レンダリングを実行する。両面印刷の場合には、レンダリング部180は、裏抜け表面画像データと表面質感パラメーターとを3Dオブジェクトの表面に対応付け、かつ、裏抜け裏面画像データと裏面質感パラメーターとを3Dオブジェクトの裏面に対応付けて、レンダリングを実行する。
【0024】
図3は、レンダリング部180の構成を示す説明図である。レンダリング部180は、頂点パイプラインVPLと、ラスタライザーRRZと、ピクセルパイプラインPPLと、ポスト処理部PSTとを備えている。本実施形態では、頂点パイプラインVPLは、頂点シェーダーVSと、ジオメトリーシェーダーGSとを備えており、ピクセルパイプラインPPLは、ピクセルシェーダーPSと、レンダーバックエンドRBEとを備えている。
【0025】
頂点シェーダーVSは、3Dオブジェクト情報とカメラ情報と照明情報とを用いて、3Dオブジェクトを構成する各ポリゴンの頂点の座標変換や、各ポリゴンの法線ベクトルの算出や、陰影処理や、テクスチャーマッピング座標(UV座標)の算出などを実行する。座標変換には、3Dオブジェクトの座標系であるローカル座標系(モデル座標系ともいう)から仮想空間の座標系であるワールド座標系(グローバル座標系ともいう)への座標変換であるモデル変換と、ワールド座標系から仮想空間に配置されたカメラの座標系であるビュー座標系(カメラ座標系ともいう)への座標変換であるビュー変換と、ビュー座標系からカメラから視たシーンが投影されるスクリーンの座標系であるスクリーン座標系(クリッピング座標系ともいう)への座標変換である投影変換とが含まれる。上述した座標変換の一部は、ジオメトリーシェーダーGSによって実行されてもよい。頂点シェーダーVSの処理結果は、ジオメトリーシェーダーGSに送信される。
【0026】
ジオメトリーシェーダーGSは、3Dオブジェクトの頂点の集合を加工する。ジオメトリーシェーダーGSは、頂点数を増減させることにより、ポリゴンを点や線に変換したり、点や線をポリゴンに変換したりすることができる。ジオメトリーシェーダーGSの処理結果は、ラスタライザーRRZに送信される。なお、他の実施形態では、レンダリング部180にジオメトリーシェーダーGSが設けられていなくてもよい。この場合、頂点シェーダーVSの処理結果がラスタライザーRRZに送信される。
【0027】
ラスタライザーRRZは、ラスタライズ処理を実行することにより、頂点パイプラインVPLの処理結果からピクセルごとの描画情報を生成する。ラスタライザーRRZの処理結果は、ピクセルシェーダーPSに送信される。
【0028】
ピクセルシェーダーPSは、ラスタライズ処理が施された3Dオブジェクトと画像データと質感パラメーターとを用いてライティング処理を実行することにより、ピクセルごとの色を算出する。本実施形態では、3Dオブジェクトの表面は、各ポリゴンの表面により構成されており、3Dオブジェクトの裏面は、各ポリゴンの裏面により構成されているので、ピクセルシェーダーPSは、各ポリゴンの表面に表面画像データと表面質感パラメーターとを対応付け、各ポリゴンの裏面に裏面画像データと裏面質感パラメーターとを対応付けて、ライティング処理を実行する。本実施形態では、片面印刷の場合には、裏面画像データは、裏抜け画像データであり、両面印刷の場合には、表面画像データおよび裏面画像データは、裏抜け画像データである。ライティング処理において光の反射を計算するための関数には、例えば、ディスニー原則BRDFを用いることができる。本実施形態では、レンダリング部180は、カメラに裏面を向けているポリゴンを描画対象から除外する背面カリング機能を有している。レンダリング部180が背面カリング機能を有している場合には、レンダリング部180は、背面カリング機能がオフの状態で処理を実行する。このため、カメラの視野内の各ポリゴンの裏面は、描画対象から除外されない。ピクセルシェーダーPSの処理結果は、レンダーバックエンドRBEに送信される。
【0029】
レンダーバックエンドRBEは、ピクセルシェーダーPSにより生成されたピクセルデータをメモリー102の表示用領域に書き込むか否かを判断する。レンダーバックエンドRBEがメモリー102に書き込むと判断した場合には、ピクセルデータは描画対象として保存され、レンダーバックエンドRBEがメモリー102に書き込むと判断しなかった場合には、ピクセルデータは描画対象として保存されない。書き込むか否かの判断には、例えば、アルファテストや、深度テストや、ステンシルテストなどが用いられる。ピクセルデータがメモリー102に書き込まれることにより、パイプライン処理は終了する。
【0030】
ポスト処理部PSTは、メモリー102に保存されたピクセルデータからなるレンダリング画像に対して、例えば、アンチエイリアスや、アンビエントオクルージョンや、スクリーンスペースリフレクションや、被写界深度の処理などのポスト処理を実行することにより、レンダリング画像の見た目の改善を図る。
【0031】
図4は、片面印刷により画像が印刷された印刷媒体の一例を示す説明図であり、図5は、両面印刷により画像が印刷された印刷媒体の一例を示す説明図である。図4および図5の上段には印刷前の印刷媒体が表されており、下段には印刷後の印刷媒体が表されている。図4に示すように、印刷媒体の表面に印刷画像を印刷した場合、表面から裏面にインクが浸透することにより表面の印刷画像が裏面から見えることがある。図4の例では、印刷前の印刷媒体の表面は白紙であり、印刷前の印刷媒体の裏面には既成画像が形成されている。この場合、印刷後の印刷媒体の表面からは、印刷画像が見えるが、既成画像は見えない。印刷後の印刷媒体の裏面からは、既成画像とともに印刷画像が見えることがある。図5に示すように、印刷媒体の表面と裏面とに印刷画像を印刷した場合、表面から裏面にインクが浸透することにより表面の印刷画像が裏面から見えることがあり、裏面から表面にインクが浸透することにより裏面の印刷画像が表面から見えることがある。
【0032】
図6は、画像データ入力用のユーザーインターフェースの第1の例を示す説明図である。図6のユーザーインターフェースUI1は、例えば、表示装置300に表示される。ユーザーインターフェースUI1は、片面印刷用である。ユーザーインターフェースUI1には、画像データを入力するための入力領域が1つ設けられている。画像データ取得部110は、ユーザーインターフェースUI1に入力された印刷画像の画像データを表面画像データとして取得し、印刷媒体の種類に応じた既成画像の画像データを裏面画像データとして取得する。
【0033】
図7は、画像データ入力用のユーザーインターフェースの第2の例を示す説明図である。図7のユーザーインターフェースUI2は、例えば、表示装置300に表示される。ユーザーインターフェースUI2は、片面印刷にも両面印刷にも用いることができる。ユーザーインターフェースUI2には、画像データを入力するための領域が2つ設けられている。画像データ取得部110は、2つの領域のうち、左側の領域に入力された画像の画像データを表面画像データとして取得し、右側の領域に入力された画像の画像データを裏面画像データとして取得する。したがって、片面印刷の場合には、左側の領域を介して、印刷媒体の表面に印刷される印刷画像の画像データを入力することができ、右側の領域を介して、印刷媒体の裏面に形成されている既成画像の画像データを入力することができる。両面印刷の場合には、左側の領域を介して、印刷媒体の表面に印刷される印刷画像の画像データを入力することができ、右側の領域を介して、印刷媒体の裏面に印刷される印刷画像の画像データを入力することができる。
【0034】
図8は、本実施形態の裏抜け度算出処理の内容を示すフローチャートである。図9は、裏抜け度算出処理に用いられる画素値浸透度テーブルTB1の一例を示す説明図である。図10は、裏抜け度算出処理に用いられる媒体浸透度テーブルTB2の一例を示す説明図である。裏抜け度算出処理は、レンダリングに先立って、裏抜け度算出部160により実行される。図8に示すように、裏抜け度算出処理が開始されると、まず、ステップS110にて、裏抜け度算出部160は、カラーマネージメントシステム140から、印刷用の機器に依存する色空間への色変換が施された画像データを取得する。裏抜け度算出部160は、片面印刷の場合は、表面画像データを取得し、両面印刷の場合は、表面画像データと裏面画像データとを取得する。
【0035】
次に、ステップS120にて、裏抜け度算出部160は、画像データの画素ごとの画素値から画素ごと画素値浸透度を算出する。画素値浸透度は、画素値に依存する印刷媒体へのインクの浸透度を表している。本実施形態では、裏抜け度算出部160は、メモリー102に予め記憶されている画素値浸透度テーブルTB1を用いて画素値浸透度を算出する。図9に示すように、画素値浸透度テーブルTB1には、R,G,Bそれぞれの画素値と画素値浸透度との関係が表されており、裏抜け度算出部160は、R,G,Bそれぞれの画素値浸透度を算出する。画素値浸透度テーブルTB1には、256階調の画素値が0~1までの値で表されている。画素値浸透度が0~1までの値で表されており、画素値浸透度の値が大きいほどインクが印刷媒体に浸透しやすい。
【0036】
ステップS130にて、裏抜け度算出部160は、媒体浸透度を取得する。本実施形態では、媒体浸透度は、図10に示す媒体浸透度テーブルTB2に表されている。媒体浸透度テーブルには、印刷媒体の表面の媒体浸透度と裏面の媒体浸透度とが、それぞれ、1つのスカラー量で表されている。媒体浸透度は、0~1までの値で表されており、媒体浸透度の値が大きいほどインクが印刷媒体に浸透しやすい。
【0037】
ステップS140にて、裏抜け度算出部160は、画素ごとの画素値浸透度と媒体浸透度とを用いて、画素ごとの裏抜け度を算出する。本実施形態では、裏抜け度算出部160は、下式(1)を用いて表面の裏抜け度を算出し、下式(2)を用いて裏面の裏抜け度を算出する。表面の裏抜け度とは、表面から裏面への裏抜けの度合いのことを意味しており、裏面の裏抜け度とは、裏面から表面への裏抜けの度合いのことを意味している。裏抜け度は、0~1までの値で表される。裏抜け度算出部160は、R,G,Bそれぞれの裏抜け度を算出する。その後、裏抜け度算出部160は、この処理を終了する。
表面の裏抜け度=表面の画素値浸透度×表面の媒体浸透度 ・・・(1)
裏面の裏抜け度=裏面の画素値浸透度×裏面の媒体浸透度 ・・・(2)
【0038】
図11は、片面印刷時の裏抜け画像データが生成される様子を模式的に示す説明図である。図12は、両面印刷時の裏抜け画像データが生成される様子を模式的に示す説明図である。裏抜け画像データ生成部170は、裏抜け度算出処理により算出された画素ごとの裏抜け度を用いて、裏抜け画像データを生成する。裏抜け画像データ生成部170は、片面印刷の場合には、裏抜け裏面画像データを生成し、両面印刷の場合には、裏抜け裏面画像データと裏抜け表面画像データとを生成する。裏抜け画像データ生成部170は、下式(3)を用いて裏抜け裏面画像データの画素値を算出し、下式(4)を用いて裏抜け表面画像データの画素値を算出する。裏抜け画像データ生成部170は、R,G,Bそれぞれの画素値を算出する。なお、マネージド表面画像データとは、3Dオブジェクトの表面に対応付けられるマネージド画像データのことを意味し、マネージド裏面画像データとは、3Dオブジェクトの裏面に対応付けられるマネージド画像データのことを意味する。
裏抜け裏面画像データの画素値=マネージド裏面画像データの画素値×(1-表面の裏抜け度) ・・・(3)
裏抜け表面画像データの画素値=マネージド表面画像データの画素値×(1-裏面の裏抜け度) ・・・(4)
【0039】
図13は、3DオブジェクトOBJの表面を観察する様子を模式的に示す説明図であり、図14は、3DオブジェクトOBJの表面観察時に表示装置300に表示されるレンダリング結果を模式的に示す説明図である。図15は、3DオブジェクトOBJの裏面を観察する様子を模式的に示す説明図であり、図16は、3DオブジェクトOBJの裏面観察時に表示装置300に表示されるレンダリング結果を模式的に示す説明図である。ここでは、表面に印刷画像が印刷されており、裏面に既成画像が形成されている印刷媒体を表現する場合を例にして説明する。
【0040】
図13および図15では、便宜上、1枚のポリゴンPLにより構成されている3DオブジェクトOBJが図示されている。本実施形態では、ポリゴンPLは、3DオブジェクトOBJの表面を構成するとともに3DオブジェクトOBJの裏面をも構成している。ポリゴンPLの法線ベクトルNpが向く側の面であるポリゴンPLの表面により3DオブジェクトOBJの表面が構成されており、ポリゴンPLの裏面により3DオブジェクトOBJの裏面が構成されている。図13および図15には、カメラCMの視線が破線の矢印で表されている。図13および図15には図示されていないが、3DオブジェクトOBJは、光源からの光に照らされている。
【0041】
図13に示すように、3DオブジェクトOBJの表面にカメラCMを向けると、レンダリング部180は、図14に示すように、カメラCMを通して3DオブジェクトOBJの表面を観察した場合のレンダリング画像を生成して、レンダリング画像を表示装置300に表示させる。3DオブジェクトOBJの表面には表面画像データと表面質感パラメーターとが対応付けられているので、図14のレンダリング画像には、表面に印刷画像が印刷された印刷媒体が、印刷媒体の表面の質感を伴って表されている。なお、この例は、片面印刷の場合を示しているのでレンダリング画像には既成画像が表されていないが、両面印刷の場合、レンダリング画像には、表面の印刷画像に加えて、裏抜けによって表面に現れる裏面の印刷画像が表される。
【0042】
図15に示すように、カメラCMを3DオブジェクトOBJの裏面に向けると、レンダリング部180は、図16に示すように、カメラCMを通して3DオブジェクトOBJの裏面を観察した場合のレンダリング画像を生成して、レンダリング画像を表示装置300に表示させる。3DオブジェクトOBJの裏面には裏抜け裏面画像データと裏面質感パラメーターとが対応付けられているので、図16のレンダリング画像には、裏面に既成画像が形成されており、表面から裏面にインクが浸透して裏抜けが生じている状態の印刷媒体が、印刷媒体の裏面の質感を伴って表されている。
【0043】
以上で説明した本実施形態の画像処理装置100によれば、印刷装置400による印刷に先立って、印刷装置400により画像が印刷された印刷媒体を表すレンダリング画像を生成して、レンダリング画像を表示装置300に表示させることができるので、印刷媒体の質感を伴ったリアルな表現のレンダリング画像を用いて印刷プレビューを行うことができる。
【0044】
また、本実施形態では、質感パラメーターには、印刷媒体の表面の質感を表す表面質感パラメーターと、印刷媒体の裏面の質感を表す裏面質感パラメーターとが含まれている。したがって、表面と裏面とで質感の異なる印刷媒体をリアルな質感で表現することができる。
【0045】
また、本実施形態では、片面印刷の場合には、レンダリング部180は、印刷媒体の表面に印刷される印刷画像のマネージド画像データと表面質感パラメーターとを3DオブジェクトOBJの表面に対応付け、かつ、印刷媒体の裏面に裏抜けにより形成される裏抜け画像の裏抜け画像データと裏面質感パラメーターとを3DオブジェクトOBJの裏面に対応付けて、レンダリングを実行する。したがって、印刷媒体の表面と裏面とのそれぞれの質感を表現しつつ、片面印刷により表面に印刷画像が印刷されており、かつ、裏面に裏抜け画像が形成されている印刷媒体を表すレンダリング画像を生成することができる。
【0046】
また、本実施形態では、両面印刷の場合には、レンダリング部180は、印刷媒体の表面に裏抜けにより形成される裏抜け画像データと表面質感パラメーターとを3DオブジェクトOBJの表面に対応付け、かつ、印刷媒体の裏面に裏抜けにより形成される裏抜け画像データと裏面質感パラメーターとを3DオブジェクトOBJの裏面に対応付けて、レンダリングを実行する。したがって、印刷媒体の表面と裏面とのそれぞれの質感を表現しつつ、両面印刷により表面と裏面とのそれぞれに裏抜け画像が形成されている印刷媒体を表すレンダリング画像を生成することができる。
【0047】
また、本実施形態では、裏抜け度算出部160は、画像データの画素値に応じた画素値浸透度を用いて裏抜け度を算出する。そのため、画像データの画素値から簡単に裏抜け度を算出できる。
【0048】
また、本実施形態では、ポリゴンPLの表面により3DオブジェクトOBJの表面が構成されており、ポリゴンPLの裏面により3DオブジェクトOBJの裏面が構成されているので、薄肉な印刷媒体をリアルな質感で表現できる。
【0049】
B.第2実施形態:
図17は、第2実施形態の画像処理装置100において実行される裏抜け度算出処理の内容を示すフローチャートである。図18は、裏抜け度算出処理に用いられるインク量テーブルTB3の一例を示す説明図である。図19は、裏抜け度算出処理に用いられる浸透係数テーブルTB4の一例を示す説明図である。第2実施形態では、裏抜け度算出処理の内容が第1実施形態とは異なる。その他については、特に説明しない限り第1実施形態と同じである。
【0050】
図17に示すように、裏抜け度算出処理が開始されると、まず、ステップS210にて、裏抜け度算出部160は、カラーマネージメントシステム140から、印刷用の機器に依存する色空間への色変換が施された画像データを取得する。裏抜け度算出部160は、片面印刷の場合は、表面画像データを取得し、両面印刷の場合は、表面画像データと裏面画像データとを取得する。
【0051】
次に、ステップS220にて、裏抜け度算出部160は、画像データの画素ごとの画素値から画素ごとの総インク量を算出する。本実施形態では、裏抜け度算出部160は、メモリー102に予め記憶されているインク量テーブルTB3を用いて総インク量を算出する。図18に示すように、インク量テーブルTB3には、R,G,Bそれぞれの画素値と、当該画素を印刷により形成するために印刷媒体に供給される各色のインク量との関係が表されている。図18では、インクの種類は、C,M,Y,K,Lc,Lmの6色であるが、インクの種類は、これに限られず、例えば、C,M,Y,Kの4色でもよい。裏抜け度算出部160は、各色のインク量を合計して総インク量を算出する。図18では、(R,G,B)=(1,1,1)の場合、各色のインク量は、(C,M,Y,K,Lc,Lm)=(0,0,0,0,0,0)であるため、総インク量は0である。(R,G,B)=(0,0,0)の場合、各色のインク量は、(C,M,Y,K,Lc,Lm)=(1,1,1,1,1,1)であるため、総インク量は6である。
【0052】
ステップS230にて、裏抜け度算出部160は、画像データの画素ごとの総インク量から画素ごとの浸透係数を算出する。本実施形態では、裏抜け度算出部160は、メモリー102に予め記憶されている浸透係数テーブルTB4を用いて浸透係数を算出する。図19に示すように、浸透係数テーブルTB4には、総インク量と浸透係数との関係が表されている。メモリー102には、印刷条件ごとの浸透係数テーブルTB4が予め記憶されており、裏抜け度算出部160は、印刷条件に応じた浸透係数テーブルTB4を用いて浸透係数を算出する。
【0053】
ステップS240にて、裏抜け度算出部160は、画素ごとの画素値および浸透係数から画素ごとのインク量浸透度を算出する。本実施形態では、裏抜け度算出部160は、下式(5)を用いてインク量浸透度を算出する。裏抜け度算出部160は、R,G,Bそれぞれのインク浸透度を算出する。
インク量浸透度=(1-画素値)×浸透係数 ・・・(5)
【0054】
ステップS250にて、裏抜け度算出部160は、媒体浸透度を取得する。本実施形態では、媒体浸透度は、図10に示した媒体浸透度テーブルTB2に表されている。
【0055】
ステップS260にて、裏抜け度算出部160は、画素ごとのインク量浸透度と媒体浸透度とを用いて、画素ごとの裏抜け度を算出する。本実施形態では、裏抜け度算出部160は、下式(6)を用いて表面の裏抜け度を算出し、下式(7)を用いて裏面の裏抜け度を算出する。裏抜け度算出部160は、R,G,Bそれぞれの裏抜け度を算出する。その後、裏抜け度算出部160は、この処理を終了する。
表面の裏抜け度=表面のインク量浸透度×表面の媒体浸透度 ・・・(6)
裏面の裏抜け度=裏面のインク量浸透度×裏面の媒体浸透度 ・・・(7)
【0056】
以上で説明した本実施形態の画像処理装置100によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。特に、本実施形態では、印刷時のインク量に基づいて裏抜け度を算出するので、第1実施形態に比べてさらにリアルに裏抜けが生じている印刷媒体を表現することができる。
【0057】
また、本実施形態では、裏抜け度算出部160は、インク量テーブルTB3を用いて総インク量を算出するので、インク量を簡単に算出できる。
【0058】
また、本実施形態では、裏抜け度算出部160は、印刷条件に応じた浸透係数テーブルTB4を用いて浸透係数を算出するので、印刷条件に応じたインク量を算出できる。
【0059】
C.第3実施形態:
図20は、第2実施形態の画像処理装置100において3DオブジェクトOBJの表面を観察する様子を模式的に示す説明図であり、図21は、第2実施形態の画像処理装置100において3DオブジェクトOBJの裏面を観察する様子を模式的に示す説明図である。第2実施形態では、表面用ポリゴンPLsと裏面用ポリゴンPLbとを備える3DオブジェクトOBJがレンダリングに用いられることが、第1実施形態とは異なる。その他の構成については、特に説明しない限り第1実施形態と同じである。なお、第3実施形態にて、第2実施形態の裏抜け度算出処理により算出された裏抜け度を用いて、裏抜け画像データが生成されてもよい。
【0060】
図20および図21に示すように、本実施形態では、3DオブジェクトOBJは、3DオブジェクトOBJの表面を構成する表面用ポリゴンPLsと、表面用ポリゴンPLsと背中合わせに配置されており、3DオブジェクトOBJの裏面を構成する裏面用ポリゴンPLbとを備えている。表面用ポリゴンPLsの法線ベクトルNpsが向く側の面である表面用ポリゴンPLsの表面は、3DオブジェクトOBJの外側を向いており、表面用ポリゴンPLsの裏面は、3DオブジェクトOBJの内側を向いている。裏面用ポリゴンPLbの法線ベクトルNpbが向く側の面である裏面用ポリゴンPLbの表面は、3DオブジェクトOBJの外側を向いており、裏面用ポリゴンPLbの裏面は、3DオブジェクトOBJの内側を向いている。図20および図21では、便宜上、表面用ポリゴンPLsと裏面用ポリゴンPLbとの間の距離が大きく描かれているが、実際の表面用ポリゴンPLsと裏面用ポリゴンPLbとの間の距離は、印刷媒体の厚みと同程度の距離である。図20および図21では、3DオブジェクトOBJが背中合わせに配置された2枚の板によって構成されているように描かれているが、3DオブジェクトOBJは、2枚の板同士を接続する側面部分を有していてもよい。レンダリング部180は、表面用ポリゴンPLsの表面に表面画像データと表面質感パラメーターとを対応付け、かつ、裏面用ポリゴンPLbの表面に裏面画像データと裏面質感パラメーターとを対応付けて、レンダリングを実行する。本実施形態では、背面カリング機能がオンにされる。これにより、表面用ポリゴンPLsの表面および裏面用ポリゴンPLbの表面は描画対象とされるが、表面用ポリゴンPLsの裏面および裏面用ポリゴンPLbの裏面は描画対象から除外されるため、レンダリングの計算負荷を軽減できる。
【0061】
図20に示すように、3DオブジェクトOBJの表面にカメラCMを向けると、レンダリング部180は、カメラCMを通して3DオブジェクトOBJの表面を観察した場合のレンダリング画像を生成して、図14に示したように、レンダリング画像を表示装置300に表示させる。3DオブジェクトOBJの表面には表面画像データと表面質感パラメーターとが対応付けられているので、レンダリング画像には、印刷画像を表面に付された印刷媒体が、印刷媒体の表面の質感を伴って表されている。図21に示すように、カメラCMを3DオブジェクトOBJの裏面に向けると、レンダリング部180は、カメラCMを通して3DオブジェクトOBJの裏面を観察した場合のレンダリング画像を生成して、図16に示したように、レンダリング画像を表示装置300に表示させる。3DオブジェクトOBJの裏面には裏面画像データと裏面質感パラメーターとが対応付けられているので、レンダリング画像には、印刷画像あるいは既成画像を裏面に付された印刷媒体が、印刷媒体の裏面の質感を伴って表されている。
【0062】
以上で説明した本実施形態の画像処理装置100によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。特に、本実施形態では、表面用ポリゴンPLsにより3DオブジェクトOBJの表面が構成されており、表面用ポリゴンPLsと背中合わせに配置されている裏面用ポリゴンPLbにより3DオブジェクトOBJの裏面が構成されているので、印刷媒体の厚みも表現することができる。したがって、厚肉な印刷媒体をリアルな質感で表現できる。
【0063】
D.他の実施形態:
(D1)上述した第1実施形態の画像処理装置100では、裏抜け度算出部160は、画素値浸透度テーブルTB1を用いて画素値浸透度を算出する。これに対して、裏抜け度算出部160は、画素値浸透度テーブルTB1を用いずに、下式(8)により画素値浸透度を算出してもよい。
画素値浸透度=(1-画素値)xα ・・・(1)
ここで、αはインク種に応じた浸透度合いを表す係数である。インク種による浸透度合いの違いが無視できる場合には、α=1とすればよい。
【0064】
(D2)上述した第2実施形態の画像処理装置100では、裏抜け度算出部160は、画素値からインク量を算出した後、インク量から浸透係数を算出して、画素値および浸透係数からインク量浸透度を算出している。これに対して、裏抜け度算出部160は、インク量とインク量浸透度との関係を表すテーブルを用いて、インク量からインク量浸透度を算出してもよい。この場合、裏抜け度算出処理を簡素化できる。
【0065】
(D3)上述した各実施形態の画像処理装置100において、裏抜け度算出部160は、媒体浸透度テーブルTB2を用いて媒体浸透度を取得する。これに対して、裏抜け度算出部160は、図22に示す媒体浸透度マップMP1を用いて画素ごとの媒体浸透度を取得してもよい。媒体浸透度マップMP1には、印刷媒体における媒体浸透度の分布が表されている。この場合、画素ごとに媒体浸透度を異ならせることができるので、例えば、厚みに分布のある印刷用紙や、織目のある布におけるインクの浸透をよりリアルに表現することができる。
【0066】
(D4)上述した各実施形態の画像処理装置100では、質感パラメーターには、表面質感パラメーターと裏面質感パラメーターとが含まれており、レンダリング部180は、表面質感パラメーターを3Dオブジェクトの表面に対応付け、かつ、裏面質感パラメーターを3Dオブジェクトの裏面に対応付けて、レンダリングを実行する。これに対して、質感パラメーターが表面用と裏面用とに分かれていなくてもよい。この場合、レンダリング部180は、同じ質感パラメーターを3Dオブジェクトの表面と裏面とに対応付けて、レンダリングを実行してもよい。
【0067】
(D5)上述した各実施形態の画像処理装置100では、インクジェットプリンターなどの印刷装置により画像が直接印刷された印刷媒体を表すレンダリング画像が生成される。これに対して、画像処理装置100は、例えば、印刷装置により画像が印刷された転写紙から熱転写により画像が転写される媒体を表すレンダリング画像を生成してもよい。この場合、転写紙から熱転写により画像が転写される媒体のことを印刷媒体と呼ぶ。
【0068】
E.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0069】
(1)本開示の第1の形態によれば、画像処理装置が提供される。この画像処理装置は、画像データを取得する画像データ取得部と、画像が印刷される印刷媒体の種類を含む印刷条件を取得する印刷条件取得部と、前記画像データに前記印刷条件に応じた色変換を施す色変換部と、前記印刷媒体の性質を表す媒体パラメーターであって、前記印刷媒体の質感を表す質感パラメーターと前記印刷媒体の浸透度を表す浸透パラメーターとを含む媒体パラメーターを取得するパラメーター取得部と、前記浸透パラメーターを用いて、前記印刷媒体に印刷される前記画像の裏抜け度を算出する裏抜け度算出部と、前記色変換が施された前記画像データと前記裏抜け度とを用いて、前記印刷媒体に裏抜けにより形成される裏抜け画像を表す裏抜け画像データを生成する裏抜け画像データ生成部と、前記印刷媒体の形状を表す3Dオブジェクトの表面と裏面との少なくとも一方に前記裏抜け画像データを対応付け、かつ、前記3Dオブジェクトの表面と裏面とに前記質感パラメーターを対応付けてレンダリングを実行するレンダリング部と、を備える。
この形態の画像処理装置によれば、印刷媒体の質感を伴ったリアルな表現で、裏抜け画像が形成された状態の印刷媒体をレンダリング結果に表すことができる。
【0070】
(2)上記形態の画像処理装置において、前記パラメーター取得部は、前記印刷媒体の表面の質感を表す表面質感パラメーターと、前記印刷媒体の裏面の質感を表す裏面質感パラメーターと、を含む前記媒体パラメーターを取得し、前記レンダリング部は、前記3Dオブジェクトの表面に前記表面質感パラメーターを対応付け、前記3Dオブジェクトの裏面に前記裏面質感パラメーターを対応付けてもよい。
この形態の画像処理装置によれば、表面と裏面とで質感が異なる印刷媒体をリアルな質感で表現できる。
【0071】
(3)上記形態の画像処理装置において、前記浸透パラメーターには、前記印刷媒体の浸透度がスカラー量で表されているか、または、前記印刷媒体における浸透度の分布がマップで表されてもよい。
この形態の画像処理装置によれば、スカラー量を用いることで、浸透度を簡単に表すことができる。また、マップを用いることで、浸透度に分布がある印刷媒体に形成される裏抜け画像をリアルな表現で表すことができる。
【0072】
(4)上記形態の画像処理装置において、前記裏抜け度算出部は、前記画像データの画素値に応じた浸透度を表す画素値浸透度と前記浸透パラメーターとを用いて前記裏抜け度を算出してもよい。
この形態の画像処理装置によれば、画素値によって浸透度が異なるという現象を表現できる。
【0073】
(5)上記形態の画像処理装置において、前記裏抜け度算出部は、印刷時に前記印刷媒体に供給されるインク量に応じた浸透度を表すインク量浸透度と前記浸透パラメーターとを用いて前記裏抜け度を算出してもよい。
この形態の画像処理装置によれば、インク量よって浸透度が異なるという現象を表現できる。
【0074】
(6)上記形態の画像処理装置において、前記裏抜け度算出部は、前記画像データの画素値と前記インク量との関係を表すテーブルを用いて前記インク量を算出してもよい。
この形態の画像処理装置によれば、インク量を簡単に算出できる。
【0075】
(7)上記形態の画像処理装置において、前記裏抜け度算出部は、前記印刷条件に応じた前記テーブルを用いて前記インク量を算出してもよい。
この形態の画像処理装置によれば、印刷条件に応じたインク量を算出できる。
【0076】
(8)上記形態の画像処理装置において、前記画像データ取得部は、前記印刷媒体の表面に印刷される画像を表す表面画像データと、前記印刷媒体の裏面に予め表されている画像を表す裏面画像データとを取得し、前記色変換部は、前記表面画像データには、前記印刷条件に応じた色変換である第1色空間から印刷用機器に依存する第2色空間を介して第3色空間への色変換を施し、前記裏面画像データには、前記第1色空間から前記第2色空間を介さずに前記第3色空間への色変換を施し、前記裏抜け画像データ生成部は、前記裏面画像データと前記色変換が施された前記表面画像データと前記裏抜け度とを用いて、前記印刷媒体の裏面に裏抜けにより形成される裏抜け画像を表す裏抜け裏面画像データを生成し、前記レンダリング部は、前記3Dオブジェクトの表面に前記色変換が施された前記表面画像データを対応付け、前記3Dオブジェクトの裏面に前記裏抜け裏面画像データを対応付けてもよい。
この形態の画像処理装置によれば、裏面に画像が予め表されており、表面への片面印刷により裏面に裏抜け画像が形成された状態の印刷媒体を表現できる。
【0077】
(9)上記形態の画像処理装置において、前記画像データ取得部は、前記印刷媒体の表面に印刷される画像を表す表面画像データと、前記印刷媒体の裏面に印刷される画像を表す裏面画像データとを取得し、前記色変換部は、前記表面画像データと前記裏面画像データとに前記印刷条件に応じた色変換を施し、前記裏抜け画像データ生成部は、前記色変換が施された前記表面画像データと前記色変換が施された前記裏面画像データと前記裏抜け度とを用いて、前記印刷媒体の表面に裏抜けにより形成される裏抜け画像を表す裏抜け表面画像データと前記印刷媒体の裏面に裏抜けにより形成される裏抜け画像を表す裏抜け裏面画像データとを生成し、前記レンダリング部は、前記3Dオブジェクトの表面に前記裏抜け表面画像データを対応付け、前記3Dオブジェクトの裏面に前記裏抜け裏面画像データを対応付けてもよい。
この形態の画像処理装置によれば、両面印刷により表面と裏面とに裏抜け画像が形成された状態の印刷媒体を表現できる。
【0078】
(10)上記形態の画像処理装置において、前記3Dオブジェクトは、前記3Dオブジェクトの表面と裏面とを構成するポリゴンを備えてもよい。
この形態の画像処理装置によれば、薄肉な印刷媒体をリアルな質感で表現できる。
【0079】
(11)上記形態の画像処理装置において、前記3Dオブジェクトは、前記3Dオブジェクトの表面を構成する表面用ポリゴンと、前記表面用ポリゴンと背中合わせに配置されており、前記3Dオブジェクトの裏面を構成する裏面用ポリゴンと、を備えてもよい。
この形態の画像処理装置によれば、厚肉な印刷媒体をリアルな質感で表現できる。
【0080】
(12)本開示の第2の形態によれば、印刷システムが提供される。この印刷システムは、上記第1の形態の画像処理装置と、前記画像処理装置によって生成されるレンダリング結果を表示する表示装置と、前記印刷媒体に画像を印刷する印刷装置と、を備える。
この形態の印刷システムによれば、画像処理装置により生成されるレンダリング結果を用いて、印刷装置により画像が印刷された状態の印刷媒体をプレビューすることができる。
【0081】
(13)本開示の第3の形態によれば、画像処理プログラムが提供される。この画像処理プログラムは、画像データを取得する画像データ取得機能と、画像が印刷される印刷媒体の種類を含む印刷条件を取得する印刷条件取得機能と、前記画像データに前記印刷条件に応じた色変換を施す色変換機能と、前記印刷媒体の性質を表す媒体パラメーターであって、前記印刷媒体の質感を表す質感パラメーターと前記印刷媒体の浸透度を表す浸透パラメーターとを含む媒体パラメーターを取得するパラメーター取得機能と、前記浸透パラメーターを用いて、前記印刷媒体に印刷される前記画像の裏抜け度を算出する裏抜け度算出機能と、前記色変換が施された前記画像データと前記裏抜け度とを用いて、前記印刷媒体に裏抜けにより形成される裏抜け画像を表す裏抜け画像データを生成する裏抜け画像データ生成機能と、前記印刷媒体の形状を表す3Dオブジェクトの表面と裏面との少なくとも一方に前記裏抜け画像データを対応付け、かつ、前記3Dオブジェクトの表面と裏面とに前記質感パラメーターを対応付けてレンダリングを実行するレンダリング機能と、をコンピューターに実行させる。
この形態の画像処理プログラムによれば、印刷媒体の質感を伴ったリアルな表現で、裏抜け画像が形成された状態の印刷媒体をレンダリング結果に表すことができる。
【0082】
本開示は、画像処理装置、印刷システム、および、画像処理プログラム以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、画像処理方法等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0083】
10…印刷システム、100…画像処理装置、101…プロセッサー、102…メモリー、103…入出力インターフェース、104…内部バス、110…画像データ取得部、120…印刷条件取得部、131…入力プロファイル取得部、132…メディアプロファイル取得部、133…共通色空間プロファイル取得部、140…カラーマネージメントシステム、150…パラメーター取得部、160…裏抜け度算出部、170…裏抜け画像データ生成部、180…レンダリング部、200…入力装置、300…表示装置、400…印刷装置、GS…ジオメトリーシェーダー、PG…画像処理プログラム、PPL…ピクセルパイプライン、PS…ピクセルシェーダー、PST…ポスト処理部、RBE…レンダーバックエンド、RRZ…ラスタライザー、UI1~UI2…ユーザーインターフェース、VPL…頂点パイプライン、VS…頂点シェーダー
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