(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082497
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】体脂肪低下剤及びスリミング剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/906 20060101AFI20240613BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20240613BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240613BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20240613BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20240613BHJP
A61K 125/00 20060101ALN20240613BHJP
A61K 131/00 20060101ALN20240613BHJP
【FI】
A61K36/906 ZNA
A61K36/185
A61P3/04
A23L33/105
A23L33/10
A61K125:00
A61K131:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196387
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】服部 幸治
(72)【発明者】
【氏名】松本 知大
【テーマコード(参考)】
4B018
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LE01
4B018LE02
4B018MD36
4B018MD52
4B018MD81
4B018ME01
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF06
4B018MF13
4C088AB12
4C088AB81
4C088AC04
4C088AC13
4C088CA05
4C088CA08
4C088MA07
4C088MA16
4C088MA35
4C088MA37
4C088MA52
4C088ZA70
(57)【要約】 (修正有)
【課題】体脂肪低下剤及びスリミング剤を提供する。
【解決手段】マンゴージンジャー、アセロラ及びアケビを組み合わせることで、格別顕著な体脂肪低下作用、スリミング作用が認められた。本発明によると、マンゴージンジャー、アセロラ及びアケビを組み合わせることで得られる格別顕著なアイリシン産生促進作用を介して、体脂肪低下剤、スリミング剤を提供できる。また、アイリシン産生促進作用を有することから、脂質代謝促進作用、筋力低下予防作用、骨密度低下予防作用などのアイリシンによる健康効果を発揮する食品、医薬部外品、医薬品に利用可能である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンゴージンジャー、アセロラ及びアケビを含有することを特徴とする体脂肪低下剤。
【請求項2】
マンゴージンジャー、アセロラ及びアケビを含有することを特徴とするスリミング剤。
【請求項3】
請求項1~2のいずれか1項記載の剤を含有することを特徴とする食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンゴージンジャー、アセロラ及びアケビを含有する体脂肪低下剤、スリミング剤に関する。さらに詳しくは、マンゴージンジャー、アセロラ及びアケビを組み合わせることで得られる格別顕著なアイリシン産生促進作用を介した、体脂肪低下作用、スリミング作用を有する剤に関する。
【背景技術】
【0002】
摂取カロリー量が消費カロリー量を上回ると、余ったエネルギーは体脂肪として体内に蓄積される。中でも、皮下組織における皮下脂肪の蓄積は、体型の変化や美的なプロポーションの変化を伴うため、健康的な面ばかりでなく、美容的な面でも好ましくない。皮下組織の皮下脂肪を含む体脂肪を低下させることは、健康的にも美容的にも大変重要である。
【0003】
体脂肪を減らすメカニズムとして、筋肉細胞から放出されるホルモンであるアイリシンが注目されている。アイリシンは、主に骨格筋で産生される膜タンパク質Fibronectin Type III Domain Containing 5(FNDC5)が筋肉細胞の細胞膜から切断されることによって血液中に放出されるペプチドであり、運動による全身の代謝改善を担うマイオカインである(非特許文献1)。
【0004】
アイリシンは、白色脂肪細胞を褐色化させることで脂質代謝を亢進することから、肥満や糖尿病の予防や治療の選択肢になると期待されている(非特許文献2)。さらに、アイリシンは、筋力低下予防(非特許文献3)、ロコモティブシンドロームやフレイルの予防、骨芽細胞に対する細胞増殖促進作用(非特許文献4)を介した骨密度低下予防に寄与すると考えられている。
【0005】
他にも、アイリシンは様々な健康効果を有する。例として、脳における神経新生作用、免疫細胞の活性化作用、抗酸化作用、癌細胞に対するアポトーシス誘導作用などが報告されており、脳機能、免疫機能などへの健康効果において重要な役割を果たしている(非特許文献5)。
【0006】
血液中のアイリシン濃度は、日常の身体活動量と相関しており、血液中のアイリシン濃度を高めるには、運動を取り入れることが効果的である。しかし、忙しい現代社会で運動習慣のない者が運動を習慣化することのハードルは著しく高い。また、加齢や疾患などで運動習慣を取り入れられない者も数多く存在する。そのため、運動習慣によって血液中のアイリシン濃度を高次元で維持することは甚だ困難である。
【0007】
本発明者らは、以前、マンゴージンジャーとアセロラを含むアイリシンの生理作用増強剤(特許文献1)を示したが、さらに効果的な体脂肪低下作用、スリミング作用が得られる剤を提供するため、鋭意検討した結果、マンゴージンジャー、アセロラ及びアケビを組み合わせることで、極めて優れたアイリシン産生促進作用を認め、格別顕著な体脂肪低下作用、スリミング作用を見出した。
【0008】
本発明に用いるマンゴージンジャー(Curcuma amada)は、ショウガ科の香辛野菜であり、根茎部は抗炎症作用、解熱作用、健胃作用などを有することが知られている。
【0009】
本発明に用いるアセロラ(Malpighia emarginata)は、キントラノオ科に属する常緑低木であり、アセロラの抽出物を含有する血糖値上昇抑制剤(特許文献2)などが開示されている。
【0010】
本発明に用いるアケビ(Akebia quinata)は、アケビ科に属する蔓性落葉低木であり、前駆脂肪細胞分化誘導剤(特許文献3)などが開示されている。
【0011】
しかしながら、マンゴージンジャー、アセロラ及びアケビを組み合わせることで、アイリシン産生促進作用を介した極めて優れた体脂肪低下作用、スリミング作用を有する剤として利用可能であることは全く知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第7075694号公報
【特許文献2】特許第4451627号公報
【特許文献3】特開2002-138045
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】YAKUGAKU ZASSHI、Vol.138、1285-1290(2018)
【非特許文献2】Medicina、Vol.55、485(2019)
【非特許文献3】ビタミン、Vol.93、444-447(2019)
【非特許文献4】Scientific Reports、Jan 7、18732(2016)
【非特許文献5】Int J Endocrinol、Oct 9、7816806(2018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、マンゴージンジャー、アセロラ及びアケビを含有する体脂肪低下剤、スリミング剤に関する。さらに詳しくは、マンゴージンジャー、アセロラ及びアケビを組み合わせることで得られる格別顕著なアイリシン産生促進作用を介した体脂肪低下作用、スリミング作用を有する剤に関する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、マンゴージンジャー、アセロラ及びアケビを組み合わせることで、極めて優れたアイリシン産生促進作用を認め、格別顕著な体脂肪低下作用、スリミング作用を見出した。
【0016】
本発明に用いるマンゴージンジャーは、ショウガ科のマンゴージンジャー(Curcuma amada)を用いることができる。本発明に使用するマンゴージンジャーの部位は特に限定されないが、根茎部、全草、葉、茎、花、種子などが挙げられ、特に根茎部を使用することが好ましい。
【0017】
本発明に用いるアセロラは、キントラノオ科のアセロラ(学名:Malpighia emarginata)を用いることができる。本発明に使用するアセロラの部位は特に限定されないが、果実、葉、種子、樹皮などが挙げられ、特に果実を使用することが好ましい。
【0018】
本発明に用いるアケビは、アケビ科のアケビ(Akebia quinata)を用いることができる。他にも、同属近縁種であるミツバアケビ(学名:Akebia trifolia)、ゴヨウアケビ(学名:Akebia pentaphylla)、ホザキアケビ(学名:Akebia longeracemosa)などを用いることができる。本発明に用いるアケビの部位は特に限定されないが、花、花穂、果実、果皮、茎、葉、枝、枝葉、根、種子などが挙げられ、特に果実、果皮、種子を使用することが好ましい。
【0019】
本発明に用いるマンゴージンジャー、アセロラ、アケビは、そのまま用いることができ、必要に応じて、搾汁、乾燥、粉砕、細切などの処理を行ったものを用いることもできる。また、マンゴージンジャー、アセロラ、アケビをそのまま、あるいは以上の処理を行ったものを抽出した抽出物も用いることができる。抽出する溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(エタノール、メタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノールなど)、液状多価アルコール類(1、3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、石油エーテルなど)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテルなど)が挙げられる。これらの溶媒は、1種又は2種以上を混合して用いても良い。マンゴージンジャー、アケビの抽出に使用する溶媒としては、水、低級アルコールなどの極性溶媒、特に含水エタノールが好ましい。アセロラは、果実を搾汁した果汁を用いるのが好ましい。
【0020】
本発明に用いるマンゴージンジャー、アセロラ、アケビは、上記処理又は抽出後そのまま用いても良く、必要に応じて、濃縮、希釈、ろ過、活性炭などによる脱色、脱臭、エタノール沈殿などの処理をして用いても良い。さらには、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥などの処理を行い、乾燥物として用いても良い。
【0021】
本発明に用いるマンゴージンジャー、アセロラ、アケビの摂取量は、投与形態、使用目的、年齢、体重などによって適宜調整することができる。成人1日当たりのマンゴージンジャーの摂取量は、マンゴージンジャー根茎部の抽出物として0.05~500mg、好ましくは0.5~150mgの範囲で1日1回から数回、経口摂取できる。成人1日当たりのアセロラの摂取量は、アセロラ果実の果汁粉末又は抽出物として、0.05~500mg、好ましくは0.5~150mgの範囲で1日1回から数回、経口摂取できる。成人1日当たりのアケビの摂取量は、アケビ果実の抽出物として、0.1~1000mg、好ましくは1~300mgの範囲で1日1回から数回、経口摂取できる。上記摂取範囲より少ない量で十分な場合もあるし、また、範囲を超えて摂取する必要がある場合もある。また、製剤化における薬効成分の添加法については、予め加えておいても、製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。
【0022】
本発明の体脂肪低下剤、スリミング剤は、食品、医薬部外品、医薬品として用いることができる。食品としては、錠剤、軟カプセル、硬カプセル、顆粒、タブレット、飲料などとして用いることができる。また、医薬部外品や医薬品では、経口用のカプセル剤、散剤、顆粒剤、錠剤、糖衣錠剤、シロップ剤、丸剤、懸濁剤、液剤、乳剤など、非経口用の注射剤、座剤、皮膚外用剤などとして用いることができる。本発明の目的を達するためには、内服での摂取が好ましい。他にも、アイリシン産生を増やすための培地用添加剤などとしても用いることができる。
【0023】
本発明の体脂肪低下剤、スリミング剤は、効果を損なわない範囲内で、必要に応じて通常の食品、医薬部外品又は医薬品に用いられる賦形剤、安定剤、滑沢剤、保存剤、結合剤、崩壊剤、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、pH調整剤、防腐剤、香料などの成分を含有することもできる。さらに、植物素材、ポリフェノール類、ビタミン類、糖類、タンパク質、油脂などの成分を含有することができる。
【0024】
本発明のスリミング剤は、各部位のサイズや周囲径、皮下脂肪の厚みを低下させるものであり、具体的には、腹囲、ウエスト周囲径、太もも周囲径の低下、腹部前面及び腹部側面及び太ももの皮下脂肪厚の低下を示すものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明のマンゴージンジャー、アセロラ及びアケビを含有する体脂肪低下剤、スリミング剤は、マンゴージンジャー、アセロラ及びアケビを組み合わせることで、格別顕著なアイリシン産生促進作用を介して体脂肪低下作用、スリミング作用を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の実施例は例示のために説明するものであり、本発明の特許請求の範囲はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。実施例に示す含有量の%は重量%を示す。
【実施例0027】
製造例1 マンゴージンジャー50%エタノール抽出物
マンゴージンジャーの根茎部100gに、精製水1Lとエタノール1Lを加え、常温で5日間抽出した後、ろ過し、ろ液を濃縮乾固して、マンゴージンジャー50%エタノール抽出物7.6gを得た。
【0028】
製造例2 マンゴージンジャー熱水抽出物
マンゴージンジャーの根茎部100gに、精製水2Lを加え、95~100℃で2時間抽出した後、ろ過し、ろ液を濃縮、凍結乾燥して、マンゴージンジャー熱水抽出物14.5gを得た。
【0029】
製造例3 アセロラ果汁粉末
アセロラ果実1kgを搾汁し、果汁を700mL得た。そのうち500mLの果汁に精製水2Lを加え、得られた果汁に0.8%のパン酵母を添加し、37℃で30時間発酵した。発酵後、酵母の除去、失活処理を行い、デキストリン10gを加え、溶解させた。溶解後、噴霧乾燥し、アセロラ果汁粉末20gを得た。
【0030】
製造例4 アセロラ熱水抽出物
アセロラ果実100gに、精製水2Lを加え、95~100℃で2時間抽出した後、ろ過し、ろ液を濃縮、凍結乾燥して、アセロラ熱水抽出物4.6gを得た。
【0031】
製造例5 アセロラ50%エタノール抽出物
アセロラ果実100gに、精製水1Lとエタノール1Lを加え、常温で5日間抽出した後、ろ過し、ろ液を濃縮乾固して、アセロラ50%エタノール抽出物2.1gを得た。
【0032】
製造例6 アケビ50%エタノール抽出物
アケビ果実の乾燥物20gに、精製水1Lとエタノール1Lを加え、常温で7日間抽出した後、ろ過し、ろ液を濃縮乾固して、アケビ50%エタノール抽出物10.4gを得た。
【0033】
製造例7 アケビ熱水抽出物
アケビ果実の乾燥物20gに精製水400mLを加え、95~100℃で2時間抽出した後、ろ過し、ろ液を濃縮、凍結乾燥して、アケビ熱水抽出物9.4gを得た。
【0034】
次に、本発明のマンゴージンジャー、アセロラ及びアケビを用いた処方例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。