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特開2024-82499IL-10高産生性免疫寛容樹状細胞を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082499
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】IL-10高産生性免疫寛容樹状細胞を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0784 20100101AFI20240613BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240613BHJP
   A61K 35/545 20150101ALI20240613BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20240613BHJP
   C12N 5/074 20100101ALN20240613BHJP
   A61K 38/20 20060101ALN20240613BHJP
【FI】
C12N5/0784
A61P37/02
A61K35/545
C12N5/10
C12N5/074
A61K38/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196390
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】509349141
【氏名又は名称】京都府公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川人 豊
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 数記
(72)【発明者】
【氏名】平野 愛子
(72)【発明者】
【氏名】松田 修
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA24
4B065BB12
4B065BB13
4B065BB40
4B065BD32
4B065BD34
4B065CA24
4B065CA44
4C084CA18
4C084DA12
4C084NA14
4C084ZB07
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB61
4C087BB64
4C087NA14
4C087ZB07
(57)【要約】
【課題】IL-10高産生性免疫寛容樹状細胞を製造する方法を提供すること。
【解決手段】(2)幹細胞から分化誘導した樹状細胞を免疫抑制剤を含有する免疫寛容誘導培地で培養して免疫寛容樹状細胞に分化誘導する工程、を含む、IL-10高産生性免疫寛容樹状細胞を製造する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(2)幹細胞から分化誘導した樹状細胞を免疫抑制剤を含有する免疫寛容誘導培地で培養して免疫寛容樹状細胞に分化誘導する工程、
を含む、IL-10高産生性免疫寛容樹状細胞を製造する方法。
【請求項2】
前記幹細胞が多能性幹細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記免疫抑制剤がデキサメタゾンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記免疫寛容誘導培地における前記デキサメタゾンの濃度が300~700nMである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記免疫抑制剤がさらにミノサイクリンを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
(1)幹細胞を樹状細胞に分化誘導する工程、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記幹細胞が多能性幹細胞である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(1)が、
(1A)前記多能性幹細胞又は前記多能性幹細胞由来細胞をCHIR99021を含む中胚葉分化誘導培地で培養する工程、
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記中胚葉分化誘導培地における前記CHIR99021の濃度が7~20μMである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
(1A’)多能性幹細胞又は人工多能性幹細胞由来細胞をCHIR99021を含む中胚葉分化誘導培地で培養する工程、を含む、
(1’)多能性幹細胞を樹状細胞に分化誘導する工程、及び
(2’)多能性幹細胞から分化誘導した樹状細胞をデキサメタゾンを含む免疫抑制剤を含有する免疫寛容誘導培地で培養して免疫寛容樹状細胞に分化誘導する工程、
を含み、
前記中胚葉分化誘導培地における前記CHIR99021の濃度が7~20μMであり、且つ
前記免疫寛容誘導培地における前記デキサメタゾンの濃度が300~700nMである、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の方法で得られる、IL-10高産生性免疫寛容樹状細胞。
【請求項12】
請求項11に記載のIL-10高産生性免疫寛容樹状細胞を含有する、医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫寛容樹状細胞を製造する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫寛容樹状細胞(tolDC:torelogenic dendritic cell)は、免疫系の活動を抑制し、炎症等の生体応答を抑制する作用を有することから、これを利用した各種自己免疫疾患に対する治療薬の開発が進められている。免疫寛容樹状細胞を得る場合、治療対象の患者から採取した末梢血単核球に誘導物質を作用させる方法が知られている(非特許文献1)。しかし、免疫抑制剤や患者自身の状態により誘導源となる機能的な単球が僅かな例もあり、また全てがtolDCへと分化するわけではなく、十分な数を得ることが困難な場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Scientific Reports volume 7, Article number: 15087 (2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
免疫寛容樹状細胞にも種々のサブグループが存在すると考えられる。ただ、免疫寛容性を十分に発揮するためには、代表的な免疫抑制サイトカインであるIL-10の発現が必要であると考えられる。
【0005】
そこで、本発明は、IL-10高産生性免疫寛容樹状細胞を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題に鑑みて鋭意研究を進めた結果、(2)幹細胞から分化誘導した樹状細胞を免疫抑制剤を含有する免疫寛容誘導培地で培養して免疫寛容樹状細胞に分化誘導する工程、を含む、IL-10高産生性免疫寛容樹状細胞を製造する方法、であれば、上記課題を解決できることを見出した。本発明者はこの知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0007】
項1. (2)幹細胞から分化誘導した樹状細胞を免疫抑制剤を含有する免疫寛容誘導培地で培養して免疫寛容樹状細胞に分化誘導する工程、
を含む、IL-10高産生性免疫寛容樹状細胞を製造する方法。
【0008】
項2. 前記幹細胞が多能性幹細胞である、項1に記載の方法。
【0009】
項3. 前記免疫抑制剤がデキサメタゾンを含む、項1に記載の方法。
【0010】
項4. 前記免疫寛容誘導培地における前記デキサメタゾンの濃度が300~700nMである、項3に記載の方法。
【0011】
項5. 前記免疫抑制剤がさらにミノサイクリンを含む、項3に記載の方法。
【0012】
項6. (1)幹細胞を樹状細胞に分化誘導する工程、
を含む、項1に記載の方法。
【0013】
項7. 前記幹細胞が多能性幹細胞である、項6に記載の方法。
【0014】
項8. 前記工程(1)が、
(1A)前記多能性幹細胞又は前記多能性幹細胞由来細胞をCHIR99021を含む中胚葉分化誘導培地で培養する工程、
を含む、項7に記載の方法。
【0015】
項9. 前記中胚葉分化誘導培地における前記CHIR99021の濃度が7~20μMである、項8に記載の方法。
【0016】
項10. (1A’)多能性幹細胞又は人工多能性幹細胞由来細胞をCHIR99021を含む中胚葉分化誘導培地で培養する工程、を含む、
(1’)多能性幹細胞を樹状細胞に分化誘導する工程、及び
(2’)多能性幹細胞から分化誘導した樹状細胞をデキサメタゾンを含む免疫抑制剤を含有する免疫寛容誘導培地で培養して免疫寛容樹状細胞に分化誘導する工程、
を含み、
前記中胚葉分化誘導培地における前記CHIR99021の濃度が7~20μMであり、且つ
前記免疫寛容誘導培地における前記デキサメタゾンの濃度が300~700nMである、
項1に記載の方法。
【0017】
項11. 項1~10のいずれかに記載の方法で得られる、IL-10高産生性免疫寛容樹状細胞。
【0018】
項12. 項11に記載のIL-10高産生性免疫寛容樹状細胞を含有する、医薬。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、IL-10高産生性免疫寛容樹状細胞を製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】試験例3の細胞観察像を示す。Step1-1のCHIR99021の濃度が10μMの場合を示す。
図2】試験例3の細胞観察像を示す。Step1-1のCHIR99021の濃度が4μMの場合を示す。
図3】試験例3の細胞観察像を示す。Step1-1のCHIR99021の濃度が2μMの場合を示す。
図4】試験例4のフローサイトメトリー解析結果を示す。Step2のdexamethasoneの濃度が500nMの場合を示す。右上の区画がCD11陽性且つHLA-DR陽性の細胞である。
図5】試験例4のフローサイトメトリー解析結果を示す。Step2のdexamethasoneの濃度が1000nMの場合を示す。右上の区画がCD11陽性且つHLA-DR陽性の細胞である。
図6】試験例5のELISA結果を示す。カラム上方の先端は90パーセンタイル値を示し、カラムの上端は75パーセンタイル値を示し、カラム内のバーは50パーセンタイル値を示し、カラムの下端は25パーセンタイル値を示し、カラム下方の先端は10パーセンタイル値を示す。
図7】試験例6のFACS解析結果を示す。3つのグラフは、互いに別の検体より採取されたT細胞を用いた結果を示す。赤色はiPS-DCとの共培養の結果(ピークが左側に存在)を示し、青色はiPS-tol DCとの共培養の結果(ピークが右側存在)を示す。共培養の結果T細胞が増殖する程、左側に山が高くなる。
図8】試験例7のFACS解析結果を示す。3つのグラフは、グラフ上方の疾患患者である検体より採取されたT細胞を用いた結果を示す。赤色はiPS-DCとの共培養の結果(ピークが左側に存在)を示し、青色はiPS-tol DCとの共培養の結果(ピークが右側存在)を示す。共培養の結果T細胞が増殖する程、左側に山が高くなる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0022】
1.IL-10高産生性免疫寛容樹状細胞を製造する方法
本発明は、その一態様において、(2)幹細胞から分化誘導した樹状細胞を免疫抑制剤を含有する免疫寛容誘導培地で培養して免疫寛容樹状細胞に分化誘導する工程、を含む、IL-10高産生性免疫寛容樹状細胞を製造する方法(本明細書において、「本発明の方法」と示すこともある。)、に関する。以下に、これについて説明する。
【0023】
工程(2)で使用する樹状細胞は、幹細胞から分化誘導されたものであり、且つ樹状細胞としての性質を示すものである限り特に制限されない。
【0024】
幹細胞は、樹状細胞への分化能を有する幹細胞である限り、特に制限されない。幹細胞は好ましくは多能性幹細胞である。
【0025】
多能性幹細胞とは、生体に存在する多くの細胞に分化可能である多能性を有し、かつ、増殖能をも併せもつ幹細胞であり、本発明で使用される中間中胚葉細胞に誘導される任意の細胞が包含される。多能性幹細胞には、特に限定されないが、例えば、胚性幹(ES)細胞、核移植により得られるクローン胚由来の胚性幹(ntES)細胞、精子幹細胞(「GS細胞」)、胚性生殖細胞(「EG細胞」)、人工多能性幹(iPS)細胞、培養線維芽細胞や骨髄幹細胞由来の多能性細胞(Muse細胞)などが含まれる。好ましい多能性幹細胞は、製造工程において胚、卵子等の破壊をしないで入手可能であるという観点から、iPS細胞であり、より好ましくはヒトiPS細胞である。
【0026】
iPS細胞の製造方法は当該分野で公知であり、任意の体細胞へ初期化因子を導入することによって製造され得る。ここで、初期化因子とは、例えば、Oct3/4、Sox2、Sox1、Sox3、Sox15、Sox17、Klf4、Klf2、c-Myc、N-Myc、L-Myc、Nanog、Lin28、Fbx15、ERas、ECAT15-2、Tcl1、beta-catenin、Lin28b、Sall1、Sall4、Esrrb、Nr5a2、Tbx3またはGlis1等の遺伝子または遺伝子産物が例示され、これらの初期化因子は、単独で用いても良く、組み合わせて用いても良い。初期化因子の組み合わせとしては、WO2007/069666、WO2008/118820、WO2009/007852、WO2009/032194、WO2009/058413、WO2009/057831、WO2009/075119、WO2009/079007、WO2009/091659、WO2009/101084、WO2009/101407、WO2009/102983、WO2009/114949、WO2009/117439、WO2009/126250、WO2009/126251、WO2009/126655、WO2009/157593、WO2010/009015、WO2010/033906、WO2010/033920、WO2010/042800、WO2010/050626、WO2010/056831、WO2010/068955、WO2010/098419、WO2010/102267、WO2010/111409、WO2010/111422、WO2010/115050、WO2010/124290、WO2010/147395、WO2010/147612、Huangfu D,et al.(2008),Nat.Biotechnol.,26:795-797、Shi Y,et al.(2008),Cell Stem Cell,2:525-528、Eminli S,et al.(2008),Stem Cells.26:2467-2474、Huangfu D,et al.(2008),Nat.Biotechnol.26:1269-1275、Shi Y,et al.(2008),Cell Stem Cell,3,568-574、Zhao Y,et al.(2008),Cell Stem Cell,3:475-479、Marson A,(2008),Cell Stem Cell,3,132-135、Feng B,et al.(2009),Nat.Cell Biol.11:197-203、R.L.Judson et al.,(2009),Nat.Biotechnol.,27:459-461、Lyssiotis CA,et al.(2009),Proc Natl Acad Sci U S A.106:8912-8917、Kim JB,et al.(2009),Nature.461:649-643、Ichida JK,et al.(2009),Cell Stem Cell.5:491-503、Heng JC,et al.(2010),Cell Stem Cell.6:167-74、Han J,et al.(2010),Nature.463:1096-100、Mali P,et al.(2010),Stem Cells.28:713-720、Maekawa M,et al.(2011),Nature.474:225-9.に記載の組み合わせが例示される。
【0027】
体細胞には、非限定的に、胎児(仔)の体細胞、新生児(仔)の体細胞、および成熟した健全なもしくは疾患性の体細胞のいずれも包含されるし、また、初代培養細胞、継代細胞、および株化細胞のいずれも包含される。具体的には、体細胞は、例えば(1)神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、歯髄幹細胞等の組織幹細胞(体性幹細胞)、(2)組織前駆細胞、(3)血液細胞(末梢血細胞、臍帯血細胞等)、リンパ球、上皮細胞、内皮細胞、筋肉細胞、線維芽細胞(皮膚細胞等)、毛細胞、肝細胞、胃粘膜細胞、腸細胞、脾細胞、膵細胞(膵外分泌細胞等)、脳細胞、肺細胞、腎細胞および脂肪細胞等の分化した細胞などが例示される。
【0028】
幹細胞から樹状細胞への分化誘導の方法としては、公知の方法を採用することが可能である。本発明の方法は、さらに(1)幹細胞を樹状細胞に分化誘導する工程、を含むことができ、また当該工程で得られた樹状細胞を工程(2)で使用することができる。
【0029】
幹細胞が多能性幹細胞である場合、樹状細胞への分化誘導は、免疫寛容樹状細胞をより効率的に得るという観点から、好ましくは、以下の経過を辿る。
Step1-1:中胚葉分化。
Step1-2:側板中胚葉分化。
Step1-3A:血管造血前駆細胞の誘導。
Step1-3B:Mo-lineage cellの誘導。
Step1-4:Mo系precursorへの分化/増殖。
【0030】
樹状細胞への分化誘導においては、基礎培地として、幹細胞培養用の各種培地を使用することができる。基礎培地としては、例えばStemFit(登録商標)(味の素社製)、Essential 6(商標)(サーモフィッシャー社製)、Stemline II(登録商標)(シグマアルドリッチ社製)等が挙げられる。
【0031】
樹状細胞への分化誘導においては、培養容器の基材上に細胞を接着させて培養することが好ましい。例えば、培養容器の基材を細胞外マトリクスなどの細胞接着分子(具体的には、例えばマトリゲル(BD)、I型コラーゲン、IV型コラーゲン、ゼラチン、ラミニン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、またはエンタクチン、およびこれらの組み合わせ)でコーティングしてから培養に用いることにより、接着培養を行うことができる。
【0032】
Step1-1:中胚葉分化においては、多能性幹細胞又は多能性幹細胞由来細胞を中胚葉分化誘導培地で培養する工程を含む。多能性幹細胞は、免疫寛容樹状細胞をより効率的に得るという観点から、スフェロイド状であることが好ましい。多能性幹細胞由来細胞は、中胚葉分化可能な状態であり、且つ中胚葉分化が完了していない状態である限り、特に制限されない。免疫寛容樹状細胞をより効率的に得るという観点から、中胚葉分化誘導培地はCHIR99021を含むことが好ましい。また、中胚葉分化誘導培地は、さらにBMP4、及びVEGFAからなる群より選択される少なくとも1種(好ましくは全部)を含有することが好ましい。CHIR99021を含む場合、その培地中濃度は、樹状細胞をより効率的に得ることができるという観点から、好ましくは7~20μM、より好ましくは8~15μM、さらに好ましくは9~12μMである。BMP4を含む場合、その培地中濃度は、特に制限されないが、例えば40~160ng/mLである。VEGFAを含む場合、その培地中濃度は、特に制限されないが、例えば40~160ng/mLである。Step1-1:中胚葉分化においては、上記成分に加えて、或いは上記成分の全部又は一部に代えて、中胚葉分化誘導に使用され得る他の成分を採用することができる。このような他の成分としては、例えばWnt3a(500ng/ml)やactivin A(50ng/m)等が挙げられる。Step1-1:中胚葉分化の培養期間は、特に制限されないが、例えば1~3日間である。
【0033】
Step1-2:側板中胚葉分化においては、中胚葉分化細胞を側板中胚葉分化誘導培地で培養する工程を含む。側板中胚葉分化誘導培地は、SB 431542、VEGFA、bFGF、及びStem cell factorからなる群より選択される少なくとも1種(好ましくは全部)を含有することが好ましい。SB 431542を含む場合、その培地中濃度は、特に制限されないが、例えば1~4μMである。VEGFAを含む場合、その培地中濃度は、特に制限されないが、例えば40~160ng/mLである。bFGFを含む場合、その培地中濃度は、特に制限されないが、例えば25~100ng/mLである。Stem cell factorを含む場合、その培地中濃度は、特に制限されないが、例えば25~100ng/mLである。Step1-2:側板中胚葉分化においては、上記成分に加えて、或いは上記成分の全部又は一部に代えて、側板中胚葉分化誘導に使用され得る他の成分を採用することができる。このような他の成分としては、例えばFGF2(50-100ng/ml)やBMP4(10-200ng/mlで好ましくは50-200ng/ml)等がられる。Step1-2:側板中胚葉分化の培養期間は、特に制限されないが、例えば1~3日間である。
【0034】
Step1-3A:血管造血前駆細胞の誘導においては、側板中胚葉分化細胞を血管造血前駆細胞の誘導培地で培養する工程を含む。血管造血前駆細胞の誘導培地は、VEGFA、Stem cell factor、Thrombopoietin、IL-3、及びFLT-3 ligandからなる群より選択される少なくとも1種(好ましくは全部)を含有することが好ましい。VEGFAを含む場合、その培地中濃度は、特に制限されないが、例えば20~80 ng/mLである。Stem cell factorを含む場合、その培地中濃度は、特に制限されないが、例えば25~100 ng/mLである。Thrombopoietinを含む場合、その培地中濃度は、特に制限されないが、例えば5~20 ng/mLである。IL-3を含む場合、その培地中濃度は、特に制限されないが、例えば25~100 ng/mLである。FLT-3 ligandを含む場合、その培地中濃度は、特に制限されないが、例えば25~100 ng/mLである。また、血管造血前駆細胞の誘導培地には、ITSX (insulin-transferrin-selenium-ethanolamine, Thermo Fisher Scientific)を80~120倍希釈で添加することが好ましい。Step1-3A:血管造血前駆細胞の誘導においては、上記成分に加えて、或いは上記成分の全部又は一部に代えて、血管造血前駆細胞の誘導に使用され得る他の成分を採用することができる。このような他の成分としては、例えばBMP4 (50 ng/ml)やbFGF (20 ng/ml)等が挙げられる。Step1-3A:血管造血前駆細胞の誘導の培養期間は、特に制限されないが、例えば1~3日間である。
【0035】
Step1-3B:Mo-lineage cellの誘導においては、血管造血前駆細胞をMo-lineage cellの誘導培地で培養する工程を含む。Mo-lineage cellの誘導培地は、Stem Cell Factor、Thrombopoietin、IL-3、FLT-3 ligand、及びM-CSFからなる群より選択される少なくとも1種(好ましくは全部)を含有することが好ましい。Stem Cell Factorを含む場合、その培地中濃度は、特に制限されないが、例えば25~100ng/mLである。Thrombopoietinを含む場合、その培地中濃度は、特に制限されないが、例えば5~20ng/mLである。IL-3を含む場合、その培地中濃度は、特に制限されないが、例えば25~100ng/mLである。FLT-3 ligandを含む場合、その培地中濃度は、特に制限されないが、例えば25~100ng/mLである。M-CSFを含む場合、その培地中濃度は、特に制限されないが、例えば25~100ng/mLである。また、Mo-lineage cellの誘導培地には、ITSX (insulin-transferrin-selenium-ethanolamine, Thermo Fisher Scientific)を80~120倍希釈で添加することが好ましい。Step1-3B:Mo-lineage cellの誘導においては、上記成分に加えて、或いは上記成分の全部又は一部に代えて、Mo-lineage cellの誘導に使用され得る他の成分を採用することができる。このような他の成分としては、例えばVEGF(20ng/ml) 、FGF2(10ng/ml)、DKK-1(30 ng/mL)、IL-6(10ng/mL)等が挙げられる。Step1-3B:Mo-lineage cellの誘導の培養期間は、特に制限されないが、例えば3~8日間である。
【0036】
Step1-4:Mo系precursorへの分化/増殖においては、Mo-lineage cellをMo系precursorへの分化/増殖培地で培養する工程を含む。Mo系precursorへの分化/増殖培地は、FLT-3 ligand、M-CSF、及びGM-CSFからなる群より選択される少なくとも1種(好ましくは全部)を含有することが好ましい。FLT-3 ligandを含む場合、その培地中濃度は、特に制限されないが、例えば25~100ng/mLである。M-CSFを含む場合、その培地中濃度は、特に制限されないが、例えば25~100ng/mLである。GM-CSFを含む場合、その培地中濃度は、特に制限されないが、例えば12~50ng/mLである。また、Mo系precursorへの分化/増殖培地には、ITSX (insulin-transferrin-selenium-ethanolamine, Thermo Fisher Scientific)を80~120倍希釈で添加することが好ましい。Step1-4:Mo系precursorへの分化/増殖においては、上記成分に加えて、或いは上記成分の全部又は一部に代えて、Mo系precursorへの分化/増殖培地に使用され得る他の成分を採用することができる。このような他の成分としては、例えばIL-34(50ng/ml)等が挙げられる。Step1-4:Mo系precursorへの分化/増殖の培養期間は、特に制限されないが、例えば3~21日間である。
【0037】
Step1-4:Mo系precursorへの分化/増殖後、浮遊細胞を回収し、CD14陽性且つCD11c陽性の細胞を、樹状細胞として回収することができる。本発明の方法において、樹状細胞とは、好ましくは、浮遊培養可能であり、且つCD14陽性且つCD11c陽性の細胞である。特定のCD抗原陽性の細胞は、CD抗原に対する抗体とセルソーターを用いて、常法に従って又は準じて、選別及び回収することができる。
【0038】
工程(2)においては、免疫寛容誘導培地の基礎培地として、幹細胞培養用の各種培地を使用することができる。基礎培地としては、例えばStemline II(登録商標)(シグマアルドリッチ社製)等が挙げられる。
【0039】
工程(2)においては、培養容器の基材は、細胞低付着性であることが好ましい。例えば、ultra-low attachment surfaceの培養皿(PrimeSurface(登録商標)住友ベークライト)を使用することができる。
【0040】
工程(2)で使用される免疫寛容誘導培地は、免疫抑制剤を含有し、且つ幹細胞から分化誘導した樹状細胞をIL-10高産生性免疫寛容樹状細胞に分化誘導可能なものである限り、特に制限されない。免疫寛容樹状細胞をより効率的に得るという観点から、免疫抑制剤はデキサメタゾンを含むことが好ましい。デキサメタゾンを含む場合、その培地中濃度は、免疫寛容樹状細胞をより効率的に得るという観点から、好ましくは800nM以下、より好ましくは200~800nM、さらに好ましくは300~700nM、よりさらに好ましくは400~600nM、特に好ましくは450~550nMである。免疫寛容樹状細胞をより効率的に得るという観点から、免疫抑制剤は、さらにミノサイクリン等の抗生物質系免疫抑制剤を含むことが好ましい。ミノサイクリンを含む場合、その培地中濃度は、免疫寛容樹状細胞をより効率的に得るという観点から、好ましくは2~12μM、より好ましくは3~10μM、さらに好ましくは3~7μMである。免疫寛容誘導培地は、さらに細胞成熟因子(例えばTNFα、LPS等)や、GM-CSF、IL-4等のサイトカインを含むこと(好ましくは、これら全てを含むこと)が好ましい。TNFαを含む場合、その培地中濃度は、特に制限されないが、例えば0.1~0.4 ng/mlである。LPSを含む場合、その培地中濃度は、特に制限されないが、例えば50~200 ng/mlである。GM-CSFを含む場合、その培地中濃度は、特に制限されないが、例えば12~50 ng/mlである。IL-4を含む場合、その培地中濃度は、特に制限されないが、例えば20~80 ng/mlである。各成分は、工程(2)の培養開始時に全て培地に含まれていてもよいし、段階的に培地に添加してもよい。例えば、抗生物質系免疫抑制剤及びサイトカインを含有する培地で培養を開始し、その後にデキサメタゾンを培地に添加し、さらにその後に細胞成熟因子を培地に添加することができる。デキサメタゾンの添加は、培養開始から好ましくは2~4日後とすることができる。細胞成熟因子の添加は、培養開始から好ましくは4~6日後、又はデキサメタゾンの添加から好ましくは1~3日後とすることができる。工程(2)の培養期間は、好ましくは6~10日間である。
【0041】
工程(2)で得られる免疫寛容樹状細胞は、免疫寛容性の指標であるHLA-DRを発現する。HLA-DRの発現の有無は、フローサイトメトリー解析により判定することができる。HLA-DRを発現する免疫寛容樹状細胞は、工程(2)の培養終了後の細胞集団の細胞数100%に対して、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上、よりさらに好ましくは25%以上であることができる。
【0042】
工程(2)で得られる免疫寛容樹状細胞は、IL-10高産生性免疫寛容樹状細胞である。IL-10高産生性とは、免疫寛容誘導培地で誘導培養していない樹状細胞に比べてIL-10産生能が高い(例えば1.5倍以上、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上)限り特に制限されないが、例えば試験例5の方法に従って測定した培養上清中IL-10の濃度が0.8pg/mL以上、好ましくは1.0 pg/mL以上、より好ましくは1.2 pg/mL以上、さらに好ましくは1.5 pg/mL以上である。
【0043】
2.IL-10高産生性免疫寛容樹状細胞の用途
本発明は、その一態様において、本発明の方法で得られるIL-10高産生性免疫寛容樹状細胞、及び当該細胞を含有する、医薬(本明細書において、「本発明の医薬」と示すこともある。)、に関する。
【0044】
IL-10高産生性免疫寛容樹状細胞は、免疫抑制作用、T細胞増殖抑制作用等を有するので、例えば自己免疫疾患の予防又は治療のために用いることができる。自己免疫疾患としては、特に制限されないが、例えば多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病、バセドウ病、1型糖尿病、天疱瘡、乾癬、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎、強皮症、シェーグレン症候群、ANCA(抗好中球細胞質抗体)関連血管炎、皮膚筋炎、大動脈炎症候群、結節性多発動脈炎等が挙げられる。
【0045】
「治療」とは、標的疾患に特徴的な症状又は随伴症状を緩和すること(軽症化)、症状の悪化を阻止ないし遅延すること等が含まれる。「予防」とは、疾病(障害)又はその症状の発症/発現を防止又は遅延すること、或いは発症/発現の危険性を低下させることをいう。
【0046】
本発明の医薬には、本発明の方法で得られるIL-10高産生性免疫寛容樹状細胞が治療上有効量含有される。例えば1回の投与用として、1×106個~1×107個の細胞を含有させる。細胞の保護を目的としてジメチルスルフォキシド(DMSO)や血清アルブミン等、細菌の混入を阻止する目的で抗生物質等の成分を本発明の医薬に含有させてもよい。
【0047】
本発明の医薬の投与経路は特に限定されない。例えば、静脈内注射、動脈内注射、門脈内注射、皮内注射、皮下注射、筋肉内注射、又は腹腔内注射によって投与する。全身投与によらず、局所投与することにしてもよい。局所投与として、目的の組織・臓器・器官への直接注入を例示することができる。投与スケジュールは、対象(患者)の性別、年齢、体重、病態などを考慮して作成すればよい。単回投与の他、連続的又は定期的に複数回投与することにしてもよい。
【実施例0048】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0049】
試験例1.未分化iPS細胞コロニーの準備
実施例では京都大学iPS細胞研究所により作成され公開されている健常人ヒトiPS細胞株である253G1を用いた。本iPS細胞はヒトラミニン511E8断片(iMatrix-511)を1250ng/mlの濃度で添加したStemFit AK02N無血清培地により継代し、StemFit AK02N無血清培地により維持を行った。
【0050】
さらにこれらiPS細胞はmicro-fabricated plastic vessel(Ezsphere SP Microplate)に1ウェルあたり2×10^4個で播種することによりスフェロイドを形成させ、以降の分化誘導に用いた。
【0051】
試験例2.iPS細胞からtolerogenic DCへの分化誘導
作成したiPS細胞のスフェロイドをゆるやかなピペッティングにより回収し、ヒトラミニン511E8断片(iMatrix-511)を1250ng/mlの濃度で添加したStemFit AK02N無血清培地で懸濁し細胞培養皿へ播種した。以降は下記の通りのプロトコールで分化誘導を進めた。
【0052】
<Step 1 iPS細胞から樹状細胞への分化誘導>
(Day0, Step1-1 中胚葉分化)
StemFit AK02N無血清培地に10μM、4μM、又は2μMのCHIR99021、80 ng/mLのBMP4、80 ng/mLの VEGFAを添加した誘導培地に変更した。
【0053】
(Day2, Step1-2 側板中胚葉分化)
Essential 6培地に2μMのSB 431542、80ng/mLのVEGFA、50ng/mLのbFGF、 50 ng/mLのStem cell factorを添加した誘導培地に変更した。
【0054】
(Day4, Step1-3A 血管造血前駆細胞の誘導)
Stemline II培地(Sigma-Aldrich)に ITSX (insulin-transferrin-selenium-ethanolamine, Thermo Fisher Scientific)を100倍希釈で添加した培地に40 ng/mLのVEGFA、50 ng/mLのStem cell factor、10 ng/mLのThrombopoietin、50 ng/mLのIL-3、50 ng/mLのFLT-3 ligandを添加した誘導培地に変更した。
【0055】
(Day6, Step1-3B Mo-lineage cellの誘導)
Stemline II培地(Sigma-Aldrich)に ITSX (insulin-transferrin-selenium-ethanolamine, Thermo Fisher Scientific)を100倍希釈で添加した培地に50 ng/mLのStem Cell Factor、10 ng/mLの Thrombopoietin、50 ng/mLのIL-3、50 ng/mLのFLT-3 ligand、50 ng/mLのM-CSFを添加した誘導培地に変更した。
【0056】
(Day10, Step1-4 Mo系precursorへの分化/増殖)
Stemline II培地(Sigma-Aldrich)に ITSX (insulin-transferrin-selenium-ethanolamine, Thermo Fisher Scientific)を100倍希釈で添加した培地に50 ng/mLのFLT-3 ligand、50 ng/mLのM-CSF、25 ng/mLのGM-CSFを添加した誘導培地に変更した。
【0057】
Day14-24 浮遊細胞を回収し、うちCD14陽性かつCD11c陽性の細胞をそれぞれのCD抗原に対する抗体とセルソーター(SH800, SONY)を用いて選択し、浮遊細胞培養へ移行する。(細胞密度例:3×10^4 cells/cm2)。なおこれ以降の培養ではultra-low attachment surfaceの培養皿(PrimeSurface(登録商標) シャーレ35mm、住友ベークライト)を用いて行った。
【0058】
<Step 2A 樹状細胞からtolDCへの分化誘導>
Step 1の最後で回収した浮遊細胞をStemline II培地(Sigma-Aldrich)に ITSX (insulin-transferrin-selenium-ethanolamine, Thermo Fisher Scientific)を100倍希釈で添加した培地に5μMのminocycline, 25 ng/mlのGM-CSF、40 ng/mlのIL-4を添加した誘導培地で7日間培養した。培養3日目からは500nM又は1000nMのdexamethasoneを、培養5日目からは0.2 ng/mlのTNF-α、100ng/mlのLPSを添加した。
【0059】
<Step 2B 成熟樹状細胞の調製>
minocyclineとdexamethasoneを用いない以外は、Step 2Aと同様の操作により、成熟樹状細胞を調製した。
【0060】
試験例3.細胞像の観察
Step 1のDay11における細胞像を観察した。
【0061】
顕微鏡写真像を図1図3に示す。Step1-1のCHIR99021の濃度が2μM及び4μMの場合では、細胞コロニーが培養途中で壊れてしまうものが多かった。一方、Step1-1のCHIR99021の濃度が10μMの場合、細胞コロニーが途中で壊れてしまうことなく、浮遊細胞(目的とする樹状細胞)を安定して得ることができた。
【0062】
試験例4.免疫寛容性樹状細胞の割合の評価
Step 2Aの培養終了後の細胞について、免疫寛容性の指標であるHLA-DRを発現する樹状細胞の割合を、フローサイトメトリー解析で調べた。
【0063】
フローサイトメトリー解析は、BD FACS Canto II(Becton Dickinson and Company製)を用いてデータを収集し、FlowJoソフトウェアパッケージ(Becton Dickinson and Company製)を用いて解析した。死細胞はFixable Viability Dye eFluor(商標) 78(Thermo Fisher Scentific)を用いて除去した。死細胞が除去されたリンパ球について、CD11陽性且つHLA-DR陽性の細胞の割合を測定した。使用した抗体(Biolegend社から購入)は次のとおりである:CD11c-PE, HLA-DR-Pacific blue。
【0064】
結果を図4図5に示す。Step 2のdexamethasone濃度が500nMの場合の方が1000nMの場合に比べて、免疫寛容性の指標であるHLA-DRを発現する樹状細胞の割合が多かった。
【0065】
また、Step 2Bの培養終了後の細胞についても、上記と同様にして、フローサイトメトリー解析した。
【0066】
試験例5.免疫寛容性樹状細胞のIL-10産生能の評価
免疫寛容性樹状細胞(iPS-tolDC:Step 2Aで得られた細胞)、及び樹状細胞(iPS-DC:Step 2Bで得られた細胞)について、培養上清中のIL-10産生量をELISA MAX(商標) Deluxe Set Human IL-10(Biolegend)を用いて測定した。IL-10は代表的な免疫抑制サイトカインである。測定に供した培養上清は、Step2A/2B終了時に回収した培養上清であり、新しい培地に入れ替えてから約4日間経過した状態のものである。
【0067】
結果を図6に示す。試験例4で得られた免疫寛容性樹状細胞はIL-10高産生性細胞であることが分かった。
【0068】
試験例6.T細胞との共培養試験1
免疫寛容性樹状細胞(iPS-tolDC:試験例4で得られたCD11陽性且つHLA-DR陽性の細胞)、及び樹状細胞(iPS-DC:試験例2のStep 1の最後に得られた細胞)について、T細胞と共培養し、T細胞の増殖に与える影響を調べた。具体的には、以下のようにして行った。
【0069】
抗ヒトCD3抗体、抗ヒトCD28抗体(eBioscience TM)を10μg/mlの濃度で含有したPBSを96ウェルプレートに添加し、4℃で一晩おくことでプレートをコーティングした。
【0070】
一方で、3名の健常人それぞれの末梢血よりFicoll-Plaque TM PLUS(#17144002)を用いた比重分離法により回収したヒト末梢血単核球細胞に対して、cell sorting(SH800, SONY)によりCD3陽性CD4陽性CD45RA陽性の細胞集団として、T細胞を選択的に回収した。
【0071】
回収したヒト末梢血由来T細胞をCellTrace(商標) Violet Cell Proliferation Kitでプロトコール通りに染色した。染色したT細胞とiPS-DC、またはiPS-tol DCを5:1の割合で混合し、抗CD3抗体、抗CD28抗体をコーティングした96ウェルプレートを用いて共培養を行った。培養5日目に、FACS Canto IIによりT細胞増殖を評価した。
【0072】
結果を図7に示す。免疫寛容性樹状細胞との共培養によりT細胞の増殖が抑制されることが分かった。
【0073】
試験例7.T細胞との共培養試験2
T細胞を、3名の自己免疫疾患患者(RA(関節リウマチ)1名、SLE(全身性エリテマトーデス)1名、ANCA(抗好中球細胞質抗体)関連血管炎1名)から回収して、得られたT細胞を共培養に用いる以外は、試験例6と同様にして試験した。
【0074】
結果を図8に示す。免疫寛容性樹状細胞との共培養により、自己免疫疾患患者由来のT細胞の増殖を抑制できることが分かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8