(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082500
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】電力変換装置およびそれを備える無停電電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240613BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196391
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 怜生
(72)【発明者】
【氏名】原田 高明
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA21
5H770BA15
5H770CA02
5H770DA03
5H770QA12
5H770QA14
5H770QA22
5H770QA28
(57)【要約】
【課題】電力変換装置内に配置されたコンデンサを容易に交換する。
【解決手段】電力変換装置は、コンデンサ100と、ブスバー110と、トレイ部材140と、筐体150とを備える。コンデンサ100は、第1の方向の端部に電極端子101を有する。ブスバー110は、電極端子101に電気的に接続され、第1の方向からコンデンサ100を覆う。トレイ部材140には、コンデンサ100が載置される。筐体150は、コンデンサ100およびトレイ部材140を出し入れ可能に収容する。筐体150は、開口部153を有する。開口部153は、第1の方向に直交する第2の方向に向いて開口している。トレイ部材140は、電極端子101とブスバー110との接続が解除された状態において、コンデンサ100とともに開口部153から第2の方向に挿抜可能である。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向の端部に電極端子を有するコンデンサと、
前記電極端子に電気的に接続され、前記第1の方向から前記コンデンサを覆うブスバーと、
前記コンデンサが載置されるトレイ部材と、
前記コンデンサおよび前記トレイ部材を出し入れ可能に収容する筐体とを備え、
前記筐体は、前記第1の方向に直交する第2の方向に向いて開口した開口部を有し、
前記トレイ部材は、前記電極端子と前記ブスバーとの接続が解除された状態において、前記コンデンサとともに前記開口部から前記第2の方向に挿抜可能である、電力変換装置。
【請求項2】
前記ブスバーは、
前記電極端子と接続される接続部を有する板状のラミネートブスバーと、
前記第1の方向における前記ラミネートブスバーの前記コンデンサが位置する側とは反対側にて前記ラミネートブスバーと重なるように配置された板状のACブスバーとを含み、
前記ACブスバーは、前記第1の方向において前記接続部と並ぶ位置に、前記第1の方向に貫通した貫通部が形成されており、
前記接続部は、前記第1の方向における前記ACブスバーの前記ラミネートブスバーが位置する側とは反対側から前記貫通部を通じてアクセス可能である、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記トレイ部材は、前記コンデンサが載置される底板部を含み、
前記筐体は、前記底板部に対向する底面部と、該底面部上に設けられ、前記底面部とともに前記底板部を係止する係止部とを含む、請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記トレイ部材および前記筐体の各々は、前記第1の方向および前記第2の方向の各々に直交する第3の方向において互いに面する対向面を有しており、かつ、該対向面同士を締結部材によって互いに締結可能に構成されている、請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載された複数の電力変換装置と、
前記開口部が正面側に位置するように前記複数の電力変換装置を収容するケース体とを備える、無停電電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置およびそれを備える無停電電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置の構成を開示した先行技術文献として、特許第5418847号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載された電力変換装置は、インバータユニットを備える。インバータユニットは、右側面プレートを有する回路側ケースを含む。回路側ケース内には、コンデンサブロックが配置されている。コンデンサブロックに配置される電解コンデンサを新しい電解コンデンサに交換する際、回路側ケースから右側面プレートを取り外し、回路側ケースからコンデンサユニットが取り外される。
【0003】
電源装置の構成を開示した先行技術文献として、特許第6818232号公報(特許文献2)がある。特許文献2に記載された電源装置は、電力変換装置を備える。電力変換装置は、コンデンサユニットと、電力変換ユニットとを含む。電力変換ユニットは、半導体モジュールを有する。コンデンサユニット内に配置されたコンデンサは、板状導電部材を介して半導体モジュールと電気的に接続されている。電力変換装置からコンデンサユニットを取り外す際には、半導体モジュールとコンデンサユニットとの接続が解除される。コンデンサをコンデンサユニットから取り外す際には、コンデンサユニットと板状導電部材との接続を解除して、コンデンサユニットから板状導電部材が取り外される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5418847号公報
【特許文献2】特許第6818232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2においては、電力変換装置からコンデンサを取り外す際に、コンデンサの周囲に配置される筐体の一部またはコンデンサに接続された導電部材を電力変換装置から取り外す必要がある。このため、電力変換装置内に配置されたコンデンサを容易に交換することが難しい。
【0006】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであって、装置内に配置されたコンデンサを容易に交換することができる、電力変換装置およびそれを備える無停電電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に基づく電力変換装置は、コンデンサと、ブスバーと、トレイ部材と、筐体とを備える。コンデンサは、第1の方向の端部に電極端子を有する。ブスバーは、電極端子に電気的に接続され、上記第1の方向からコンデンサを覆う。トレイ部材には、コンデンサが載置される。筐体は、コンデンサおよびトレイ部材を出し入れ可能に収容する。筐体は、開口部を有する。開口部は、上記第1の方向に直交する第2の方向に向いて開口している。トレイ部材は、電極端子とブスバーとの接続が解除された状態において、コンデンサとともに開口部から上記第2の方向に挿抜可能である。
【0008】
本開示の一形態においては、ブスバーは、板状のラミネートブスバーと、板状のACブスバーとを含む。ラミネートブスバーは、電極端子と接続される接続部を有する。ACブスバーは、上記第1の方向におけるラミネートブスバーのコンデンサが位置する側とは反対側にてラミネートブスバーと重なるように配置されている。ACブスバーは、上記第1の方向において接続部と並ぶ位置に、上記第1の方向に貫通した貫通部が形成されている。接続部は、上記第1の方向におけるACブスバーのラミネートブスバーが位置する側とは反対側から貫通部を通じてアクセス可能である。
【0009】
本開示の一形態においては、トレイ部材は、コンデンサが載置される底板部を含む。筐体は、底面部と、係止部とを含む。底面部は、底板部に対向する。係止部は、底面部上に設けられ、底面部とともに底板部を係止する。
【0010】
本開示の一形態においては、トレイ部材および筐体の各々は、上記第1の方向および上記第2の方向の各々に直交する第3の方向において互いに面する対向面を有しており、かつ、対向面同士を締結部材によって互いに締結可能に構成されている。
【0011】
本開示に基づく無停電電源装置は、複数の上記電力変換装置と、ケース体とを備える。ケース体は、開口部が正面側に位置するように複数の電力変換装置を収容する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、電力変換装置内に配置されたコンデンサを容易に交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の一実施の形態に係る無停電電源装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】本開示の一実施の形態に係る無停電電源装置の主回路構成を示すブロック図である。
【
図3】本開示の一実施の形態に係る電力変換装置と制御装置との接続関係を示す模式図である。
【
図4】本開示の一実施の形態に係る無停電電源装置が備える電力変換装置の構成を示す斜視図である。
【
図5】本開示の一実施の形態に係るコンデンサおよびトレイ部材の構成を示す斜視図である。
【
図6】本開示の一実施の形態に係る電力変換装置の構成を示す上面図である。
【
図7】本開示の一実施の形態に係る電力変換装置の構成を示す断面図である。
【
図8】本開示の一実施の形態に係る電力変換装置の構成を示す正面図である。
【
図9】本開示の一実施の形態に係る電力変換装置の構成を示す側面図である。
【
図10】本開示の比較例に係る電力変換装置の構成を示す斜視図である。
【
図11】本開示の一実施の形態に係る電力変換装置におけるトレイ部材がコンデンサとともに筐体から挿抜可能である状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の一実施の形態に係る電力変換装置およびそれを備える無停電電源装置について図面を参照して説明する。以下の実施の形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0015】
なお、図中においては、インバータにおける筐体の側面部同士が対向する方向を第3の方向としてのX方向、筐体からトレイ部材を挿抜する方向を第2の方向としてのY方向、コンデンサとブスバーとが並ぶ方向を第1の方向としてのZ方向とする。
【0016】
図1は、本開示の一実施の形態に係る無停電電源装置の構成を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施の形態に係る無停電電源装置1は、ケース体2と、電力変換ユニット3とを備える。
【0017】
ケース体2は、無停電電源装置1の各構成を内部に収容している。具体的には、ケース体2は、後述する電力変換装置(インバータ30)の開口部153が無停電電源装置1の正面側に位置するように複数の電力変換装置を収容している。
【0018】
本実施の形態における電力変換ユニット3は、ケース体2の内部において3組配置されている。3組の電力変換ユニット3a,3b,3cは、ケース体2の内部においてZ方向に並んで配置されている。電力変換ユニット3は、複数の電力変換装置としてコンバータおよびインバータを含んでいる。
【0019】
以下、本開示の一実施の形態に係る無停電電源装置1の電力変換装置の主回路構成について説明する。
図2は、本開示の一実施の形態に係る無停電電源装置の主回路構成を示すブロック図である。
【0020】
図2に示すように、無停電電源装置1は、商用交流電源10と負荷11との間に接続される。商用交流電源10は、三相交流電力を無停電電源装置1に供給する。無停電電源装置1は、三相交流電力を負荷11に供給する。
【0021】
具体的には、商用交流電源10は、R相ラインRL、S相ラインSLおよびT相ラインTLを介して商用周波数の三相交流電圧VR,VS,VTを無停電電源装置1に供給する。無停電電源装置1は、商用交流電源10から三相交流電圧VR,VS,VTを受け、商用周波数の三相交流電圧VU,VV,VWを、U相ラインUL、V相ラインVLおよびW相ラインWLを介して負荷11に出力する。
【0022】
無停電電源装置1は、直流正母線PLと、直流負母線NLと、直流中性線CLと、バッテリ12と、制御装置13とをさらに備える。なお、無停電電源装置1に配置され、LCフィルタ回路を構成するリアクトルおよびコンデンサ、ならびにヒューズなどの構成については、図示を省略している。
【0023】
電力変換ユニット3a,3b,3cは、商用交流電源10から供給される三相交流電圧VR,VS,VTを直流電圧に変換し、その直流電圧を三相交流電圧VU,VV,VWに変換する。電力変換ユニット3a,3b,3cは、三相交流電圧VU,VV,VWを負荷11に供給する。
【0024】
電力変換ユニット3は、コンバータ20と、インバータ30とを有する。具体的には、電力変換ユニット3aは、コンバータ20Rと、インバータ30Uとを有する。電力変換ユニット3bは、コンバータ20Sと、インバータ30Vとを有する。電力変換ユニット3cは、コンバータ20Tと、インバータ30Wとを有する。
【0025】
各コンバータ20は、交流端子AC2と、正極直流端子(すなわち高電位側直流端子)BP1と、負極直流端子(すなわち低電位側直流端子)BN1と、中性直流端子(すなわち中電位側直流端子)BC1を有する。各インバータ30は、交流端子AC1と、正極直流端子BP2と、負極直流端子BN2と、中性直流端子BC2とを有する。
【0026】
各コンバータ20の交流端子AC2は、R相~T相ラインRL~VLからR相~T相電圧VR~VTを受ける。各コンバータ20は、R相~T相電圧VR~VTを直流電圧に変換し、その直流電圧を直流端子BP1,BN1,BC1間に出力する。各コンバータ20には、図示しないチョッパ回路が設けられている。
【0027】
各インバータ30の直流端子BP2,BN2,BC2は、各コンバータ20から直流母線PL,NL,CLを介して直流電圧を受ける。各インバータ30は、直流電圧をU相~W相電圧VU~VWに変換し、そのU相~W相電圧VU~VWを交流端子AC1に出力する。
【0028】
直流母線PL,NL,CLは、各コンバータ20で生成される直流電圧を受ける。バッテリ12は、直流正母線PL、直流負母線NLおよび直流中性母線CL間に接続される。
【0029】
制御装置13は、商用交流電源10の健全時および停電時において負荷11に供給する交流電力を生成するために、コンバータ20およびインバータ30を制御する。制御装置13は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などの記憶部とを含むマイクロコンピュータを主体として構成される。制御装置13は、予めROMに格納されたプログラムをCPUがRAMに読み出して実行することによって、コンバータ20およびインバータ30を制御する。
【0030】
図3は、本開示の一実施の形態に係る電力変換装置と制御装置との接続関係を示す模式図である。
図3に示すように、電力変換装置としてのインバータ30は、コンデンサ100と、半導体モジュールMと、直流ライン15,16,17と、交流ライン18とをさらに有する。
【0031】
コンデンサ100は、インバータ30内を流れる電流を平滑化するために設けられている。コンデンサ100の正極は、直流ライン15,17に接続されている。コンデンサ100の負極は、直流ライン16,17に接続される。
【0032】
半導体モジュールMは、8つの半導体モジュールM1~M8により構成されている。半導体モジュールM1~M4は、直流ライン17に互いに並列に接続される。半導体モジュールM5~M8は、直流ライン15、直流ライン16および直流ライン17の間に互いに並列に接続される。なお、半導体モジュールMの数量は8つに限定されず、単数を含む任意の個数に変更可能である。
【0033】
半導体モジュールMは、コレクタ端子C1、エミッタ端子E2、コレクタ-エミッタ端子C2E1および、制御端子G1,G2,E1,E2、図示しないダイオードおよび半導体スイッチング素子とを有する。半導体スイッチング素子は、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。
【0034】
半導体モジュールM1~M4のコレクタ端子C1は直流ライン17に接続され、エミッタ端子E2は交流ライン18に接続される。半導体モジュールM5~M8のコレクタ端子C1は直流ライン15に接続され、エミッタ端子E2は直流ライン16に接続される。半導体モジュールM5~M8のコレクタ-エミッタ端子C2E1は交流ライン18に接続される。各半導体モジュールMの制御端子G1,G2,E1,E2は制御装置13に接続される。
【0035】
直流ライン15は、正極直流端子BP2と半導体モジュールM8のコレクタ端子C1との間に接続される。直流ライン16は、負極直流端子BN2と半導体モジュールM8のエミッタ端子E2との間に接続される。直流ライン17は、中性直流端子BC2と半導体モジュールM1~M4のコレクタ端子C1との間に接続される。交流ライン18は、半導体モジュールM1~M4のエミッタ端子E2と交流端子AC2との間に接続される。
【0036】
図2および
図3に示す上述した構成によって、無停電電源装置1の制御方法としては、商用交流電源10の健全時には、制御装置13は、商用交流電源10から交流端子AC2に与えられる三相交流電圧VR,VS,VTを直流電圧に変換し、その直流電圧をバッテリ12に供給するとともに、その直流電圧を三相交流電圧VU,VV,VWに変換して交流端子AC1に出力するように、各コンバータ20および各インバータ30を制御する。
【0037】
一方、商用交流電源10の停電時には、制御装置13は、各コンバータ20の運転を停止させるとともに、バッテリ12から直流端子BP2,BN2,BC2に与えられる直流電力によって生成される直流電圧を三相交流電圧VU,VV,VWに変換して交流端子AC1に出力するように、各インバータ30を制御する。
【0038】
以下、電力変換装置の構造について説明する。
図4は、本開示の一実施の形態に係る無停電電源装置が備える電力変換装置の構成を示す斜視図である。
図5は、本開示の一実施の形態に係るコンデンサおよびトレイ部材の構成を示す斜視図である。
【0039】
図4および
図5に示すように、本開示の一実施の形態における電力変換装置は、インバータ30である。インバータ30は、ブスバー110と、トレイ部材140と、筐体150と、カバー部材170と、ゲート駆動基板180とをさらに有する。
【0040】
コンデンサ100は、筐体150の内部に配置されている。本実施の形態におけるコンデンサ100は、1つのインバータ30に対して8つ配置されている。なお、コンデンサ100の数量は8つに限定されず、単数を含む任意の個数に変更可能である。
【0041】
図5に示すように、コンデンサ100は、第1の方向(Z方向)の端部に電極端子101を有している。電極端子101は、正極端子101pと負極端子101nとを有する。電極端子101は、ブスバー110と電気的に接続されている。
【0042】
図4に示すように、ブスバー110は、インバータ30内の各構成を電気的に接続するための通電経路である。ブスバー110は、第1の方向(Z方向)からコンデンサ100を覆っている。
【0043】
本実施の形態に係るブスバー110は、板状のラミネートブスバー120と、板状のACブスバー130とを有する。
【0044】
ラミネートブスバー120は、Z方向において複数の導電層と複数の絶縁層とが交互に積層されているブスバーである。ラミネートブスバー120は、
図3における直流ライン15~17を構成している。
【0045】
ラミネートブスバー120は、複数の導電層と複数の絶縁層との積層部分からX方向の一方側に直流端子BP2,BN2,BC2が延在している。複数の導電層の各々には、直流端子BP2,BN2,BC2を介してコンバータ20から直流電力が供給される。
【0046】
ラミネートブスバー120は、コンデンサ100と電気的に接続されている。具体的には、ラミネートブスバー120は、接続部121を有する。接続部121は、電極端子101と電気的に接続されている。ラミネートブスバー120と電極端子101とは、ボルト部材などの公知の接続方法によって互いに接続されている。また、コンデンサ100と半導体モジュールMとはラミネートブスバー120を通じて電気的に接続されている。
【0047】
ACブスバー130は、本実施の形態のインバータ30における交流電力の通電経路である。ACブスバー130は、板金部材が折り曲げられることによって構成されている。ACブスバー130は、
図3における交流ライン18を構成している。
【0048】
ACブスバー130は、X方向の他方側に交流端子AC1が延在している。交流端子AC1を介してインバータ30から負荷11に交流電力が供給される。
【0049】
ACブスバー130は、第1の方向(Z方向)におけるラミネートブスバー120のコンデンサ100が位置する側とは反対側にてラミネートブスバー120と重なるように配置されている。これにより、コンデンサ100は、Z方向の上方において、ラミネートブスバー120およびACブスバー130に覆われている。
【0050】
ACブスバー130は、半導体モジュールMを介してラミネートブスバー120と電気的に接続されている。これにより、ラミネートブスバー120における直流端子BP2,BN2,BC2からACブスバー130における交流端子AC1までが電気的に接続されている。
【0051】
なお、本実施の形態においては、ブスバー110は、ラミネートブスバー120とACブスバー130とを有しているが、この構成に限定されない。ブスバー110は、ラミネートブスバー120のみにより構成されていてもよい。また、ACブスバー130は、必ずしもラミネートブスバー120に電気的に接続されていなくてもよい。
【0052】
図4および
図5に示すように、トレイ部材140は、コンデンサ100が載置される部材である。トレイ部材140は、たとえば板金部品が折り曲げられることによって構成されている。
【0053】
図5に示すように、トレイ部材140は、底板部141と、前板部142と、側板部144と、受けジグ146とを有する。
【0054】
底板部141は、コンデンサ100が載置される部分である。前板部142は、底板部141のY方向の一方側の端部から立設されている。前板部142には、把持部143が設けられている。把持部143を把持してトレイ部材140を移動させることができる。
【0055】
側板部144は、底板部141のX方向の両端から立設されている。側板部144は、X方向において互いに対向するように一対設けられている。一対の側板部144の各々には、Y方向の一方側に第1貫通孔145が設けられている。
【0056】
受けジグ146は、底板部141上に固定して設けられている。受けジグ146は、円筒形状を有し、内部にコンデンサ100を配置可能である。受けジグ146内にコンデンサ100を配置することによって、トレイ部材140に対してコンデンサ100を位置決めすることができる。
【0057】
図4に示すように、筐体150は、コンデンサ100およびトレイ部材140を内部に収容可能に構成されている。筐体150は、たとえば板金部品を折り曲げることにより形成されている。
【0058】
筐体150は、底面部151と、一対の側面部152とを有する。底面部151は、コンデンサ100およびトレイ部材140が載置可能な部分である。
【0059】
一対の側面部152は、底面部151のX方向の両端から立設されている。一対の側面部152同士の間には、第1の方向(Z方向)に直交する第2の方向(Y方向)に向いて開口した開口部153が設けられている。
【0060】
半導体モジュールMは、コンデンサ100に対してY方向の他方側に配置されている。半導体モジュールMは、カバー部材170の下方に配置されている。ゲート駆動基板180は、半導体モジュールMの駆動を制御する。ゲート駆動基板180は、半導体モジュールM上に配置されたカバー部材170上に配置されている。
【0061】
図6は、本開示の一実施の形態に係る電力変換装置の構成を示す上面図である。
図6に示すように、ACブスバー130には、複数の貫通部131が形成されている。貫通部131は、第1の方向(Z方向)において接続部121と並ぶ位置に、第1の方向(Z方向)に貫通している。
【0062】
本実施の形態における複数の貫通部131は、長孔形状または切欠き形状を有している。貫通部131が長孔形状の場合、貫通部131は、X方向に長手方向を有して延在している。貫通部131がACブスバー130の端部に位置する場合には、貫通部131は切欠き形状を有している。貫通部131の形状を接続部121に対応した貫通部同士で繋げて長孔形状または切欠き形状にすることによって、貫通部131の加工数を削減して、加工コストを削減することができる。
【0063】
接続部121は、第1の方向(Z方向)におけるACブスバー130のラミネートブスバー120が位置する側とは反対側から貫通部131を通じてアクセス可能である。この場合、Z方向において貫通部131から接続部121に向かって電極端子101とラミネートブスバー120との接続を解除する工具を挿入することができる。これにより、ACブスバー130をインバータ30から取り外すことなく、コンデンサ100の電極端子101とラミネートブスバー120との接続を解除することができる。
【0064】
図7は、本開示の一実施の形態に係る電力変換装置の構成を示す断面図である。
図7に示すように、筐体150は、係止部154をさらに有する。筐体150の底面部151は、トレイ部材140の底板部141に対向している。
【0065】
係止部154は、底面部151上に設けられている。本実施の形態における係止部154は、板状部材がL字状に折り曲げられることによって構成されている。
【0066】
係止部154は、底面部151とともに底板部141を係止する。具体的には、係止部154のうち、L字状に折り曲げられて底面部151に沿う面のトレイ部材140に接する側は、底面部151に対して反り返っている。これにより、係止部154の先端において、底面部151と係止部154との間に第1の方向(Z方向)に隙間があく。この隙間において底面部151と係止部154とにより底板部141を挟持させることによって、トレイ部材140は、筐体150に固定される。このような係止部154を配置することによって、簡易な構成でトレイ部材140を筐体150に固定することができる。
【0067】
図8は、本開示の一実施の形態に係る電力変換装置の構成を示す正面図である。
図9は、本開示の一実施の形態に係る電力変換装置の構成を示す側面図である。
【0068】
図8および
図9に示すように、トレイ部材140および筐体150の各々は、第1の方向(Z方向)および第2の方向(Y方向)の各々に直交する第3の方向(X方向)において互いに面する対向面を有している。本実施の形態においては、当該対向面として、トレイ部材140における側板部144と筐体150における側面部152とが互いに面している。
【0069】
図9に示すように、本実施の形態における筐体150の側面部152には、第2貫通孔155が設けられている。第2貫通孔155は、
図8に示すトレイ部材140の第1貫通孔145にX方向において対向するように位置している。
【0070】
対向面同士は、締結部材160によって互いに締結可能に構成されている。本実施の形態においては、トレイ部材140の側板部144と筐体150の側面部152とが締結部材160によって互いに締結可能に構成されている。具体的には、第1貫通孔145および第2貫通孔155に締結部材160が挿通されつつ、側板部144と側面部152とが締結部材160によって締結される。これにより、トレイ部材140を筐体150の内部に収容した場合に、締結部材160によって、トレイ部材140と筐体150とを固定することができる。
【0071】
締結部材160は、たとえばボルト部材およびナット部材によって構成されている。本実施の形態においては、ボルト部材を第1貫通孔145から第2貫通孔155に向かって挿通させ、側面部152側に配置したナット部材をボルト部材に螺合させることにより、ボルト部材とナット部材とが締結される。
【0072】
ボルト部材を第1貫通孔145から第2貫通孔155に向かって挿通させた場合、ボルト部材の頭部は、筐体150に対してトレイ部材140側に配置される。この場合、
図8で示すように、インバータ30の正面側、すなわち無停電電源装置1の正面側にボルト部材の頭部を露出させることができるため、無停電電源装置1の正面側から締結部材160の取り外しがし易い。
【0073】
なお、側板部144と側面部152とを締結する構成は、側板部144および側面部152に貫通孔を有する上記締結部材160の構成に限定されない。側板部144と側面部152とを締結する構成は、側板部144または側面部152に非貫通の雌ねじ部を設け、当該雌ねじ部にボルト部材を螺合させることによって、側板部144と側面部152とを締結する構成であってもよい。
【0074】
ここで、本開示の比較例に係る電力変換装置について説明する。比較例に係る電力変換装置は、トレイ部材が設けられていない点が本開示の一実施の形態に係る電力変換装置(インバータ30)と異なるため、本開示の一実施の形態に係る電力変換装置(インバータ30)と同様である構成については説明を繰り返さない。
【0075】
図10は、本開示の比較例に係る電力変換装置の構成を示す斜視図である。
図10に示すように、本開示の比較例に係る電力変換装置としてのインバータ930は、コンデンサ100と、ブスバー110と、筐体950と、半導体モジュールMと、カバー部材170と、ゲート駆動基板180とを有する。
【0076】
筐体950は、底面部951を有する。底面部951には、受けジグ953が配置されている。受けジグ953は、底面部951に固定されている。受けジグ953内には、コンデンサ100が配置されている。
【0077】
本比較例に係るインバータ930のコンデンサ100を新しいコンデンサと交換するために取り外す際には、まず、ゲート駆動基板180とともにカバー部材170を半導体モジュールMから取り外す。次に、ACブスバー130をラミネートブスバー120から取り外す。次に、ラミネートブスバー120の接続部121における電極端子101とラミネートブスバー120との接続を解除する。その後、ラミネートブスバー120を筐体950から取り外す。これにより、コンデンサ100を受けジグ953から取り外すことができる。
【0078】
図11は、本開示の一実施の形態に係る電力変換装置におけるトレイ部材がコンデンサとともに筐体から挿抜可能である状態を示す斜視図である。
【0079】
一方、比較例に対して、
図11に示すように、本開示の一実施の形態に係る電力変換装置としてのインバータ30においては、開口部153が形成され、かつ、コンデンサ100が載置されたトレイ部材140が配置されている。これにより、筐体150は、コンデンサ100およびトレイ部材140を出し入れ可能に収容している。
【0080】
トレイ部材140は、電極端子101とブスバー110との接続が解除された状態において、コンデンサ100とともに開口部153から第2の方向(Y方向)に挿抜可能である。本実施の形態においては、トレイ部材140は、接続部121における電極端子101とラミネートブスバー120との接続が解除された状態において、コンデンサ100とともに開口部153から第2の方向(Y方向)に挿抜可能である。
【0081】
本実施の形態に係るインバータ30のコンデンサ100を新しいコンデンサと交換するために取り外す際には、ACブスバー130の貫通部131からラミネートブスバー120の接続部121にアクセスして、接続部121における電極端子101とラミネートブスバー120との接続を解除する。その後、トレイ部材140をコンデンサ100とともに開口部153から第2の方向(Y方向)に引き抜く。これにより、コンデンサ100を受けジグ146から取り外すことができる。
【0082】
本開示の一実施の形態に係る電力変換装置(インバータ30)においては、ブスバー110をインバータ30から取り外すことなく、第2の方向(Y方向)からトレイ部材140に載置したコンデンサ100を挿抜することができるため、インバータ30内に配置されたコンデンサ100を容易に交換することができる。ひいては、電力変換装置の保守時間の削減をすることができる。
【0083】
本開示の一実施の形態に係る電力変換装置(インバータ30)においては、ブスバー110がラミネートブスバー120およびACブスバー130から構成されている場合に、ACブスバー130に設けられた貫通部131によって、ACブスバー130を取り外すことなくラミネートブスバー120の電極端子101との接続部121にアクセスすることができる。これにより、ブスバー110をインバータ30から取り外すことなく、コンデンサ100を筐体150から挿抜することができるため、インバータ30内に配置されたコンデンサ100を容易に交換することができる。
【0084】
本開示の一実施の形態に係る電力変換装置(インバータ30)においては、係止部154を筐体150に設けることによって、可動式のトレイ部材140を確実に筐体150に固定することができる。
【0085】
本開示の一実施の形態に係る電力変換装置(インバータ30)においては、締結部材によって筐体150の底面部151とトレイ部材140の底板部141とを締結する場合と比較して、締結部材160をトレイ部材140および筐体150の側面側に配置することによって、締結部材160が筐体の底面部151側に突出することを防ぐことができる。これにより、複数のインバータ30を段積みで配置する場合に、締結部材160が複数のインバータ30の設置に干渉しないようにすることができる。
【0086】
本開示の一実施の形態に係る電力変換装置(インバータ30)においては、コンデンサ100を有寿命品との位置づけとして考慮した場合、上述の筐体150に開口部153を設け、かつトレイ部材140を設けてインバータ30内に配置されたコンデンサ100を容易に交換する構成によって、電力変換装置としての性能(変換回路におけるインダクタンス値の低下または装置の大型化)を低下させることなく、コンデンサ100の交換性を考慮した構成にすることができる。
【0087】
本開示の一実施の形態に係る無停電電源装置1においては、コンデンサ100が交換しやすいように構成された電力変換装置(インバータ30)を無停電電源装置1に適用することができるため、電力変換装置の保守時間の削減をすることによって、無停電電源装置1の停電時間を短縮することができる。これにより、無停電電源装置1の給電信頼性を向上させることができる。
【0088】
なお、上述した実施の形態においては、電力変換装置がインバータである場合について説明したが、コンバータについてもインバータと同様の構造を構成し得るため、本開示の構成は、コンバータについても適用することができる。
【0089】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではない。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。上述した実施の形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 無停電電源装置、2 ケース体、3,3a,3b,3c 電力変換ユニット、10 商用交流電源、11 負荷、12 バッテリ、13 制御装置、14,15,16,17 直流ライン、18 交流ライン、20,20R,20S,20T コンバータ、30,30U,30V,30W,930 インバータ、100 コンデンサ、101 電極端子、101n 負極端子、101p 正極端子、110 ブスバー、120 ラミネートブスバー、121 接続部、130 ACブスバー、131 貫通部、140 トレイ部材、141 底板部、142 前板部、143 把持部、144 側板部、145 第1貫通孔、146,953 受けジグ、150,950 筐体、151,951 底面部、152 側面部、153 開口部、154 係止部、155 第2貫通孔、160 締結部材、170 カバー部材、180 ゲート駆動基板、AC1,AC2 交流端子、BP2 正極直流端子(直流端子)、BN2 負極直流端子(直流端子)、BC2 中性直流端子(直流端子)、C1 コレクタ端子、C2E1,E2 エミッタ端子、PL 直流正母線(直流母線)、NL 直流負母線(直流母線)、CL 直流中性線(直流母線)、E1,E2,G1,G2 制御端子、M1~M8 半導体モジュール、RL,SL,TL,UL,VL,WL 各相ライン、VR,VS,VT,VU,VV,VW 三相交流電圧。