IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

特開2024-82509蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュール
<>
  • 特開-蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュール 図1
  • 特開-蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュール 図2
  • 特開-蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュール 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082509
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20240613BHJP
   H01M 50/627 20210101ALI20240613BHJP
   H01M 50/186 20210101ALI20240613BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/627
H01M50/186
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196405
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小村 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】近藤 悠史
【テーマコード(参考)】
5H011
5H023
5H028
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011AA13
5H011FF00
5H011GG01
5H023AS01
5H023CC01
5H028AA08
5H028BB03
5H028BB10
5H028BB12
5H028BB15
5H028CC07
5H028CC08
5H028CC11
5H028CC19
(57)【要約】
【課題】タクトタイム及び電力費を低減しつつ、安全に絶縁検査を実施することが可能な蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュールを提供すること。
【解決手段】蓄電モジュール1の製造方法は、複数のバイポーラ電極100と正極終端電極200と負極終端電極300とを積層する積層工程と、注液部材30を保持しつつ空間Rを封止する封止部材20が形成されるように、電極積層体10における各電極100,200,300の周縁部に封止部材20を形成する封止工程と、注液部材30から封止部材20内を減圧した状態において電極積層体10に電圧を印加することにより、正極未塗工部112bと負極未塗工部113bとの間の絶縁状態を検査する絶縁検査工程と、絶縁検査工程後、注液部材30から封止部材20内に電解液を供給する注液工程と、電極積層体10を充電する充電工程と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバイポーラ電極と、正極終端電極と、負極終端電極と、を積層する積層工程と、
正極未塗工部と負極未塗工部との間の空間を外部に開放する注液部材を保持しつつ前記空間を封止する封止部材が形成されるように、電極積層体における各電極の周縁部に前記封止部材を形成する封止工程と、
前記注液部材から前記封止部材内を減圧した状態において前記電極積層体に電圧を印加することにより、前記正極終端電極における正極未塗工部と当該正極未塗工部と対向する負極未塗工部との間の絶縁状態、及び、前記負極終端電極における負極未塗工部と当該負極未塗工部と対向する正極未塗工部との間の絶縁状態を検査する絶縁検査工程と、
前記絶縁検査工程後、前記注液部材から前記封止部材内に電解液を供給する注液工程と、
前記電極積層体を充電する充電工程と、を備える、蓄電モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記注液部材は、前記空間に露出する露出端部を有し、
前記露出端部は、
前記積層方向における内側に形成された内端部と、
前記積層方向における外側に形成された外端部と、を含み、
前記外端部は、前記内端部よりも前記電極積層体に近い位置に形成されている、請求項1に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項3】
複数のバイポーラ電極と、正極終端電極と、負極終端電極と、を含む電極積層体と、
前記電極積層体のうち互いに隣接する一対の電極間を封止する封止部材と、
前記電極積層体に電解液を供給するための注液部材と、を備え、
各前記バイポーラ電極は、
集電体と、
前記集電体における正極集電箔に設けられた正極活物質層と、
前記集電体における負極集電箔に設けられた負極活物質層と、を有し、
前記正極終端電極は、
正極集電箔と、
前記正極集電箔に設けられた正極活物質層と、を有し、
前記負極終端電極は、
負極電極箔と、
前記負極電極箔に設けられた負極活物質層と、を有し、
各前記正極集電箔は、正極未塗工部を有し、
各前記負極集電箔は、負極未塗工部を有し、
前記封止部材は、前記正極未塗工部と前記負極未塗工部との間の空間が大気圧よりも低圧となった状態で前記空間を封止しており、
前記注液部材は、前記空間と前記封止部材外とを連通している、蓄電モジュール。
【請求項4】
前記注液部材は、前記空間に露出する露出端部を有し、
前記露出端部は、
前記積層方向における内側に形成された内端部と、
前記積層方向における外側に形成された外端部と、を含み、
前記外端部は、前記内端部よりも前記電極積層体に近い位置に形成されている、請求項3に記載の蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-87414号公報には、複数のバイポーラ電極と、正極側終端電極と、負極側終端電極と、がセパレータを介して積層されたバイポーラ電池が開示されている。このバイポーラ電池では、各電極の電極箔のうち活物質が設けられていない未塗工部同士が間隔を置いて対向している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-87414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2019-87414号公報に記載されるバイポーラ電池では、バイポーラ電池内が大気圧未満となるまで減圧される場合があり、この場合、正極側終端電極の電極箔における未塗工部及び負極側終端電極の電極箔における未塗工部は、バイポーラ電池の内部と外部との差圧に起因して積層方向における内側に向けて窪むように変形する。この内側に変形する各未塗工部と当該未塗工部と対向する未塗工部との間に金属片等の異物が存在する場合、その異物がセパレータを貫通することによって互いに対向する一対の未塗工部同士が異物を介して接触する懸念、つまり、内部短絡が生じる懸念がある。
【0005】
この内部短絡の発生の有無は、上記バイポーラ電池の製造後、正極終端電極又は負極終端電極における未塗工部と当該未塗工部と対向する未塗工部との間の絶縁状態を検査することによって検出可能である。この絶縁検査は、バイポーラ電池に電圧を印加することにより行われる。しかしながら、バイポーラ電池に内部短絡が生じている場合、電圧の印加によってバイポーラ電池がいわゆる熱暴走の状態に至るおそれがある。
【0006】
そこで、バイポーラ電池の製造後、バイポーラ電池をほぼ完全に放電させてから上記絶縁検査をすることが考えられるが、このようにすると、タクトタイムが長くなり、また、バイポーラ電池の製造に要する電力費も増大する。
【0007】
本開示の目的は、タクトタイム及び電力費を低減しつつ、安全に絶縁検査を実施することが可能な蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一局面に従った蓄電モジュールの製造方法は、互いに積層された複数のバイポーラ電極と、前記複数のバイポーラ電極の積層方向における前記複数のバイポーラ電極の一方側に配置された正極終端電極と、前記積層方向における前記複数のバイポーラ電極の他方側に配置された負極終端電極と、を含む電極積層体と、前記電極積層体のうち前記積層方向に互いに隣接する一対の電極間を封止する封止部材と、前記封止部材内に配置されており、前記電極積層体に電解液を供給するための注液部材と、を備える蓄電モジュールの製造方法であって、前記積層方向に互いに隣接する前記一対の電極における一方の電極の正極未塗工部と他方の電極の負極未塗工部とが互いに対向するように、前記複数のバイポーラ電極と、前記正極終端電極と、前記負極終端電極と、を積層する積層工程と、前記正極未塗工部と前記負極未塗工部との間の空間を外部に開放する前記注液部材を保持しつつ前記空間を封止する前記封止部材が形成されるように、前記電極積層体における各電極の周縁部に前記封止部材を形成する封止工程と、前記正極終端電極における正極未塗工部が前記積層方向における内側に向かって窪むとともに、前記負極終端電極における負極未塗工部が前記積層方向における内側に向かって窪むように、前記注液部材から前記封止部材内を減圧した状態において前記電極積層体に電圧を印加することにより、前記正極終端電極における前記正極未塗工部と当該正極未塗工部と対向する負極未塗工部との間の絶縁状態、及び、前記負極終端電極における前記負極未塗工部と当該負極未塗工部と対向する正極未塗工部との間の絶縁状態を検査する絶縁検査工程と、前記絶縁検査工程後、前記注液部材から前記封止部材内に前記電解液を供給する注液工程と、前記電極積層体を充電する充電工程と、を備える。
【0009】
本開示の一局面に従った蓄電モジュールは、互いに積層された複数のバイポーラ電極と、前記複数のバイポーラ電極の積層方向における前記複数のバイポーラ電極の一方側に配置された正極終端電極と、前記積層方向における前記複数のバイポーラ電極の他方側に配置された負極終端電極と、を含む電極積層体と、前記電極積層体のうち前記積層方向に互いに隣接する一対の電極間を封止する封止部材と、前記封止部材内に配置されており、前記電極積層体に電解液を供給するための注液部材と、を備え、前記複数のバイポーラ電極の各々は、正極集電箔及び負極集電箔を含む集電体と、前記集電体における前記正極集電箔に設けられた正極活物質層と、前記集電体における前記負極集電箔に設けられた負極活物質層と、を有し、前記正極終端電極は、正極集電箔と、前記正極集電箔に設けられた正極活物質層と、を有し、前記負極終端電極は、負極電極箔と、前記負極電極箔に設けられた負極活物質層と、を有し、各前記集電体における前記正極集電箔及び前記正極終端電極における前記正極集電箔は、前記正極活物質層が設けられた正極塗工部と、前記正極活物質層が設けられていない正極未塗工部と、を有し、各前記集電体における前記負極集電箔及び前記負極終端電極における前記負極集電箔は、前記負極活物質層が設けられた負極塗工部と、前記積層方向に前記正極未塗工部と対向しており前記負極活物質層が設けられていない負極未塗工部と、を有し、前記封止部材は、前記積層方向に互いに隣接する前記一対の電極における一方の電極の前記正極未塗工部と他方の電極の前記負極未塗工部との間に形成される空間が大気圧よりも低圧となった状態で前記空間を封止しており、前記注液部材は、前記空間と前記封止部材外とを連通している。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、タクトタイム及び電力費を低減しつつ、安全に絶縁検査を実施することが可能な蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態における蓄電モジュールを概略的に示す断面図である。
図2図1において実線IIで示される範囲の拡大図である。
図3】注液部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0013】
図1は、本開示の一実施形態における蓄電モジュールを概略的に示す断面図である。図1に示されるように、蓄電モジュール1は、電極積層体10と、封止部材20と、注液部材30と、を備えている。
【0014】
電極積層体10は、複数のバイポーラ電極100と、正極終端電極200と、負極終端電極300と、複数のセパレータ400と、を有している。
【0015】
複数のバイポーラ電極100は、互いに積層されている。各バイポーラ電極100は、集電体110と、正極活物質層120と、負極活物質層130と、を有している。
【0016】
集電体110は、金属からなり、例えば矩形状に形成されている。集電体110は、正極集電箔112と、負極集電箔113と、を有している。正極集電箔112は、例えばアルミニウムからなる。負極集電箔113は、例えば銅箔からなる。負極集電箔113は、導電性接着材によって正極集電箔112に接着されている。
【0017】
正極活物質層120は、集電体110における一方の面、すなわち、正極集電箔112の表面に設けられている。負極活物質層130は、集電体110における他方の面、すなわち、負極集電箔113の表面に設けられている。
【0018】
複数のバイポーラ電極100は、一のバイポーラ電極100における正極活物質層120と、前記一のバイポーラ電極100に隣接するバイポーラ電極100における負極活物質層130と、が互いに対向するように積層されている。
【0019】
正極終端電極200は、積層方向における複数のバイポーラ電極100の一方側(図1における上側)に配置されている。正極終端電極200は、正極集電箔112と、正極集電箔112に設けられた正極活物質層120と、を有している。正極終端電極200における正極集電箔112及び正極活物質層120の構成は、バイポーラ電極100における正極集電箔112及び正極活物質層120の構成と同じである。
【0020】
負極終端電極300は、積層方向における複数のバイポーラ電極100の他方側(図1における下側)に配置されている。負極終端電極300は、負極集電箔113と、負極集電箔113に設けられた負極活物質層130と、を有している。負極終端電極300における負極集電箔113及び負極活物質層130の構成は、バイポーラ電極100における負極集電箔113及び負極活物質層130の構成と同じである。
【0021】
各バイポーラ電極100における正極集電箔112及び正極終端電極200における正極集電箔112は、正極塗工部112aと、正極未塗工部112bと、を有している。
【0022】
正極塗工部112aは、正極活物質層120が設けられた部位である。正極塗工部112aは、正極集電箔112の中央部に形成されている。
【0023】
正極未塗工部112bは、正極活物質層120が設けられていない部位、つまり、正極集電箔112が露出している部位である。正極未塗工部112bは、正極塗工部112aの周囲(正極集電箔112の周縁部)に形成されている。
【0024】
各バイポーラ電極100における負極集電箔113及び負極終端電極300における負極集電箔113は、負極塗工部113aと、負極未塗工部113bと、を有している。
【0025】
負極塗工部113aは、負極活物質層130が設けられた部位である。負極塗工部113aは、負極集電箔113の中央部に形成されている。
【0026】
負極未塗工部113bは、負極活物質層130が設けられていない部位、つまり、負極集電箔113が露出している部位である。負極未塗工部113bは、負極塗工部113aの周囲(負極集電箔113の周縁部)に形成されている。積層方向に互いに隣接する一対の電極100,200,300における一方の電極の正極未塗工部112bと他方の電極の負極未塗工部113bとは、積層方向に間隔を置いて互いに対向している。
【0027】
各セパレータ400は、積層方向に互いに隣接する一対の電極100,200,300間に配置されている。具体的に、各セパレータ400は、正極活物質層120と負極活物質層130との間に配置されている。各セパレータ400は、絶縁材料からなり、イオンの透過を許容する。各セパレータ400として、ポリオレフィン微多孔膜(ポリエチレンの単層構造や、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリプロピレンの3層構造など)が挙げられる。なお、ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の面に、セラミック層が設けられてもよい。
【0028】
封止部材20は、絶縁材料(樹脂等)からなる。封止部材20は、各集電箔112,113の周縁部と各セパレータ400の周縁部とを保持している。封止部材20は、電極積層体10のうち積層方向に互いに隣接する一対の電極100,200,300間を封止している。より詳細には、封止部材20は、積層方向に互いに隣接する一対の電極100,200,300における一方の電極の正極未塗工部112bと他方の電極の負極未塗工部113bとの間に形成される空間R(図1を参照)が大気圧よりも低圧となった状態で当該空間Rを封止している。空間Rには、電解液が封入されている。封止部材20は、空間Rからの電解液の漏出及び外部から空間Rへの水分の浸入を防止する機能や、空間Rを挟むように配置された正極未塗工部112b及び負極未塗工部113b間の間隔を確保する機能を有している。
【0029】
各空間Rが大気圧よりも低圧であるため、図1に示されるように、正極終端電極200における正極未塗工部112b及び負極終端電極300における負極未塗工部113bは、積層方向における内側に向かって窪むように変形している。空間Rは、充放電時に各電極100,200,300から生じるガスを収容するガスポケットとしての機能を有している。
【0030】
注液部材30は、封止部材20外から電極積層体10に電解液を供給するための部材である。注液部材30は、封止部材20内に配置されている。注液部材30は、空間Rと封止部材20外とを連通している。注液部材30は、例えば、樹脂(ポリエチレン等)からなる。図3に示されるように、注液部材30は、四角筒状に形成されている。ただし、注液部材30は、筒状であれば、四角筒状に限られない。
【0031】
注液部材30は、封止部材20内を減圧する際に用いられる。このため、注液部材30は、封止部材20内の減圧時に閉塞しない程度の剛性を有している。例えば、注液部材30の断面二次モーメントは、3.8mm以上に設定されることが好ましく、4.9mm以上に設定されることがより好ましい。例えば、注液部材30の幅wa(図3を参照)が48.5mm、高さha(図3を参照)が1.0mm、開口幅wb(図3を参照)が47.9mm、開口高さhb(図3を参照)が0.4mmに設定されることにより、断面二次モーメントが3.8mmとなる。また、注液部材30の幅waが48.5mm、高さhaが1.2mm、開口幅wbが48.1mm、開口高さhbが0.8mmに設定されることにより、断面二次モーメントが4.9mmとなる。
【0032】
図2に示されるように、注液部材30は、露出端部32を有している。露出端部32は、空間Rに露出している。露出端部32は、積層方向における内側に形成された内端部32aと、積層方向における外側に形成された外端部32bと、を有している。外端部32bは、内端部32aよりも電極積層体10に近い位置に形成されている。
【0033】
次に、蓄電モジュール1の製造方法について説明する。この製造方法は、積層工程と、封止工程と、絶縁検査工程と、注液工程と、充電工程と、減圧封止工程と、を含んでいる。この製造方法は、単一の蓄電モジュール1を製造する際のみならず、複数の蓄電モジュールをまとめて製造する際に適用されることも可能である。
【0034】
積層工程では、複数のバイポーラ電極100、正極終端電極200及び負極終端電極300がセパレータ400を介して積層される。具体的には、積層方向に互いに隣接する一対の電極100,200,300における一方の電極の正極未塗工部112bと他方の電極の負極未塗工部113bとが互いに対向するように、複数のバイポーラ電極100、正極終端電極200及び負極終端電極300がセパレータ400を介して積層される。
【0035】
封止工程では、正極未塗工部112bと負極未塗工部113bとの間の空間Rが封止される。具体的に、封止工程では、正極未塗工部112bと負極未塗工部113bとの間の空間Rを外部に開放する注液部材30を保持しつつ空間Rを封止する封止部材20が形成されるように、電極積層体10における各電極100,200,300の周縁部に封止部材20が熱溶着される。
【0036】
絶縁検査工程は、注液工程前に行われる。絶縁検査工程では、正極終端電極200における正極未塗工部112bが積層方向における内側に向かって窪むとともに、負極終端電極300における負極未塗工部113bが積層方向における内側に向かって窪むように、注液部材30から封止部材20内を減圧した状態において電極積層体10に電圧を印加することにより、正極終端電極200における正極未塗工部112bと当該正極未塗工部112bと対向する負極未塗工部113bとの間の絶縁状態、及び、負極終端電極300における負極未塗工部113bと当該負極未塗工部113bと対向する正極未塗工部112bとの間の絶縁状態が検査される。絶縁検査工程は、次のようにして行われる。
【0037】
すなわち、減圧チャンバ内に蓄電モジュール1が配置された状態で注液部材30が仮封止された後、蓄電モジュール1が大気開放される。これにより、正極終端電極200における正極未塗工部112b及び負極終端電極300における負極未塗工部113bは、積層方向における内側に向かって窪む。そして、電極積層体10に電圧が印加される。
【0038】
あるいは、蓄電モジュール1が例えば大気圧下に置かれた状態において注液部材30を通じて封止部材20内が減圧され、その状態で電極積層体10に電圧が印加される。
【0039】
例えば、正極終端電極200における正極未塗工部112bと当該正極未塗工部112bと対向する負極未塗工部113bとの間に金属片等の異物が存在しており、その異物を介して正極未塗工部112b及び負極未塗工部113b間が短絡している場合、電極積層体10に電圧が印可された際にその短絡が検出される。一方、電極積層体10内に短絡が生じていない場合、絶縁状態は良好と判断される。
【0040】
注液工程は、絶縁検査工程後に行われる。注液工程では、各注液部材30を通じて封止部材20内に電解液が供給される。注液工程は、大気圧下で行われる。なお、この工程では蓄電モジュール1が大気圧下に置かれるため、正極終端電極200における正極未塗工部112b及び負極終端電極300における負極未塗工部113bは、略平坦に戻る。
【0041】
充電工程は、注液工程後に行われる。充電工程では、蓄電モジュール1が所定電圧まで充電される。これにより、電解液溶媒や添加物の分解による負極へのSEI被膜の形成が行われるとともに、その副生成物であるガスが注液部材30を通じて封止部材20外に排出される。
【0042】
充電後の減圧封止工程では、減圧雰囲気(大気圧よりも低圧の雰囲気)下において注液部材30が封止される。これにより蓄電モジュール1が完成する。この蓄電モジュール1が減圧雰囲気下から大気圧下に移動された際、図1に示されるように、正極終端電極200における正極未塗工部112b及び負極終端電極300における負極未塗工部113bは、積層方向における内側に向かって窪むように変形する。
【0043】
以上に説明したように、本実施形態における蓄電モジュール1の製造方法では、注液工程の前に絶縁検査工程が行われるため、正極終端電極200における正極未塗工部112bと当該正極未塗工部112bと対向する負極未塗工部113bとの間、又は、負極終端電極300における負極未塗工部113bと当該負極未塗工部113bと対向する正極未塗工部112bとの間での短絡を生じさせる異物の有無を、注液工程及び充電工程の前、すなわち、電極積層体10に電圧が生じる前に検査することが可能となる。よって、蓄電モジュール1の製造に要するタクトタイム及び電力費を低減しつつ、安全に絶縁検査を実施することが可能となる。
【0044】
また、本実施形態における蓄電モジュール1では、注液部材30が空間Rを封止部材20外に連通しているため、電極積層体10における内部短絡等に起因して電極積層体10からガスが発生した際に、そのガスが注液部材30を通じて封止部材20外に排出される。よって、ガスの排出方向が規定される。
【0045】
上述した例示的な実施形態及び実施例は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0046】
[態様1]
互いに積層された複数のバイポーラ電極と、前記複数のバイポーラ電極の積層方向における前記複数のバイポーラ電極の一方側に配置された正極終端電極と、前記積層方向における前記複数のバイポーラ電極の他方側に配置された負極終端電極と、を含む電極積層体と、前記電極積層体のうち前記積層方向に互いに隣接する一対の電極間を封止する封止部材と、前記封止部材内に配置されており、前記電極積層体に電解液を供給するための注液部材と、を備える蓄電モジュールの製造方法であって、
前記積層方向に互いに隣接する前記一対の電極における一方の電極の正極未塗工部と他方の電極の負極未塗工部とが互いに対向するように、前記複数のバイポーラ電極と、前記正極終端電極と、前記負極終端電極と、を積層する積層工程と、
前記正極未塗工部と前記負極未塗工部との間の空間を外部に開放する前記注液部材を保持しつつ前記空間を封止する前記封止部材が形成されるように、前記電極積層体における各電極の周縁部に前記封止部材を形成する封止工程と、
前記正極終端電極における正極未塗工部が前記積層方向における内側に向かって窪むとともに、前記負極終端電極における負極未塗工部が前記積層方向における内側に向かって窪むように、前記注液部材から前記封止部材内を減圧した状態において前記電極積層体に電圧を印加することにより、前記正極終端電極における前記正極未塗工部と当該正極未塗工部と対向する負極未塗工部との間の絶縁状態、及び、前記負極終端電極における前記負極未塗工部と当該負極未塗工部と対向する正極未塗工部との間の絶縁状態を検査する絶縁検査工程と、
前記絶縁検査工程後、前記注液部材から前記封止部材内に前記電解液を供給する注液工程と、
前記電極積層体を充電する充電工程と、を備える、蓄電モジュールの製造方法。
【0047】
この製造方法では、注液工程の前に絶縁検査工程が行われるため、正極終端電極における正極未塗工部と当該正極未塗工部と対向する負極未塗工部との間、又は、負極終端電極における負極未塗工部と当該負極未塗工部と対向する正極未塗工部との間での短絡を生じさせる異物の有無を、注液工程及び充電工程の前、すなわち、電極積層体に電圧が生じる前に検査することが可能となる。よって、蓄電モジュールの製造に要するタクトタイム及び電力費を低減しつつ、安全に絶縁検査を実施することが可能となる。
【0048】
[態様2]
前記注液部材は、前記空間に露出する露出端部を有し、
前記露出端部は、
前記積層方向における内側に形成された内端部と、
前記積層方向における外側に形成された外端部と、を含み、
前記外端部は、前記内端部よりも前記電極積層体に近い位置に形成されている、態様1に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【0049】
この態様では、絶縁検査工程において正極終端電極における正極未塗工部及び負極終端電極における負極未塗工部が積層方向における内側に向かって窪むように変形した際に、当該未塗工部が露出端部の開口を閉塞することが抑制される。
【0050】
[態様3]
互いに積層された複数のバイポーラ電極と、前記複数のバイポーラ電極の積層方向における前記複数のバイポーラ電極の一方側に配置された正極終端電極と、前記積層方向における前記複数のバイポーラ電極の他方側に配置された負極終端電極と、を含む電極積層体と、
前記電極積層体のうち前記積層方向に互いに隣接する一対の電極間を封止する封止部材と、
前記封止部材内に配置されており、前記電極積層体に電解液を供給するための注液部材と、を備え、
前記複数のバイポーラ電極の各々は、
正極集電箔及び負極集電箔を含む集電体と、
前記集電体における前記正極集電箔に設けられた正極活物質層と、
前記集電体における前記負極集電箔に設けられた負極活物質層と、を有し、
前記正極終端電極は、
正極集電箔と、
前記正極集電箔に設けられた正極活物質層と、を有し、
前記負極終端電極は、
負極電極箔と、
前記負極電極箔に設けられた負極活物質層と、を有し、
各前記集電体における前記正極集電箔及び前記正極終端電極における前記正極集電箔は、
前記正極活物質層が設けられた正極塗工部と、
前記正極活物質層が設けられていない正極未塗工部と、を有し、
各前記集電体における前記負極集電箔及び前記負極終端電極における前記負極集電箔は、
前記負極活物質層が設けられた負極塗工部と、
前記積層方向に前記正極未塗工部と対向しており前記負極活物質層が設けられていない負極未塗工部と、を有し、
前記封止部材は、前記積層方向に互いに隣接する前記一対の電極における一方の電極の前記正極未塗工部と他方の電極の前記負極未塗工部との間に形成される空間が大気圧よりも低圧となった状態で前記空間を封止しており、
前記注液部材は、前記空間と前記封止部材外とを連通している、蓄電モジュール。
【0051】
この蓄電モジュールでは、注液部材が一対の電極における一方の電極の正極未塗工部と他方の電極の負極未塗工部との間に形成される空間を封止部材外に連通しているため、電極積層体における内部短絡等に起因して電極積層体からガスが発生した際に、そのガスが注液部材を通じて封止部材外に排出される。よって、ガスの排出方向が規定される。
【0052】
[態様4]
前記注液部材は、前記空間に露出する露出端部を有し、
前記露出端部は、
前記積層方向における内側に形成された内端部と、
前記積層方向における外側に形成された外端部と、を含み、
前記外端部は、前記内端部よりも前記電極積層体に近い位置に形成されている、態様3に記載の蓄電モジュール。
【0053】
この態様では、正極終端電極における正極未塗工部及び負極終端電極における負極未塗工部が露出端部の開口を閉塞することが抑制される。
【0054】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1 蓄電モジュール、10 電極積層体、20 封止部材、30 注液部材、32 露出端部、32a 内端部、32b 外端部、100 バイポーラ電極、110 集電体、112 正極集電箔、112a 正極塗工部、112b 正極未塗工部、113 負極集電箔、113a 負極塗工部、113b 負極未塗工部、120 正極活物質層、130 負極活物質層、200 正極終端電極、300 負極終端電極、400 セパレータ、R 空間。
図1
図2
図3