(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082523
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】電力伝送システム、及び通信システム
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240613BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
H02M3/28 W
H02M3/28 Y
H01F30/10 M
H01F30/10 A
H01F30/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196432
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】小林 尚斗
(72)【発明者】
【氏名】半田 祐一
(72)【発明者】
【氏名】筒 雄樹
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730BB27
5H730BB84
5H730BB88
5H730DD04
5H730EE07
5H730FF09
5H730ZZ16
(57)【要約】
【課題】電磁気的に結合された複数の電力変換装置を備える電力伝送システムにおいて、2つの電力変換装置間で伝送可能な最大電力を増加させる。
【解決手段】電力伝送システム(100)は、2以上の電力変換装置(10,20,30)と、2以上の電力変換装置にそれぞれ接続されて電力を入出力する入出力部(11,21,31)と、2以上の電力変換装置のいずれか1つにそれぞれ接続された3以上のコイル(16,26A,26B)と、3以上のコイルがそれぞれ巻回されたトランスコア(17,27A,27B)と、を備える。トランスコア(17,27A,27B)は、他のトランスコアとの接合を可能とする接合部(18,28A,28B)をそれぞれ備え、少なくとも2つのコイル(26A,26B)は、2以上の電力変換装置のいずれか1つに並列に接続され、且つ互いに接合されていない別個のトランスコア(27A,27B)にそれぞれ巻回されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の電力変換装置(10,20,30)と、
前記2以上の電力変換装置にそれぞれ接続されて電力を入出力する入出力部(11,21,31)と、
前記2以上の電力変換装置のいずれか1つにそれぞれ接続された3以上のコイル(16,26A,26B,36A,36B)と、
前記3以上のコイルがそれぞれ巻回されたトランスコア(17,27A,27B,37A,37B)と、
を備え、前記2以上の電力変換装置が互いに電磁気的に結合されている電力伝送システム(100,200,300,400)であって、
前記トランスコアは、他の前記トランスコアとの接合を可能とする接合部(18,28A,28B,38A,38B)をそれぞれ備え、
少なくとも2つの前記コイル(26A,26B,36A,36B)は、前記2以上の電力変換装置のいずれか1つに並列に接続され、且つ互いに接合されていない別個の前記トランスコア(27A,27B,37A,37B)にそれぞれ巻回されている、電力伝送システム。
【請求項2】
前記2以上の電力変換装置は、自身に接続された前記コイルとそれが巻回された前記トランスコア、及び自身に接続された前記入出力部と共に互いに別個の筐体(81,82,83)にそれぞれ収納されており、
前記筐体の少なくとも1つは、前記互いに接合されていない別個の前記トランスコアとそれらにそれぞれ巻回された前記コイルとを収納している、請求項1に記載の電力伝送システム。
【請求項3】
前記接合部は、前記筐体の外部に対して露出しており、
前記トランスコアは、他の前記トランスコアと接合された状態において、自身と前記他の前記トランスコアとで閉磁路を形成している、請求項2に記載の電力伝送システム。
【請求項4】
前記トランスコアのうち他の前記トランスコアが接続されていないトランスコア(37B)は、前記コイルが巻回されていない終端トランスコア(89)が接合され、自身と前記終端トランスコアとで閉磁路を形成している、請求項3に記載の電力伝送システム。
【請求項5】
前記2以上の電力変換装置を制御する制御部(90,290)を備え、
前記制御部は、前記2以上の電力変換装置のうちの第1電力変換装置(10)と第2電力変換装置(30)との間で電力を伝送する際に、前記第1電力変換装置に接続された前記コイル(16)と前記第2電力変換装置に接続された前記コイル(36A)との間に電磁気的に結合された前記コイル(26A,26B)に接続された前記電力変換装置である中間電力変換装置(20)、前記第1電力変換装置、及び前記第2電力変換装置の定格電力のうち最も小さい定格電力よりも、前記第1電力変換装置と前記第2電力変換装置との間で伝送する電力の目標値を小さく設定する、請求項1~4のいずれか1項に記載の電力伝送システム。
【請求項6】
前記電力変換装置を3以上備え、
前記入出力部を3以上備え、
前記コイルを4以上備え、
前記トランスコアを4以上備えている、請求項1~4のいずれか1項に記載の電力伝送システム。
【請求項7】
2以上の電力変換装置(10,20,30)と、
前記2以上の電力変換装置にそれぞれ接続されて電力を入出力する入出力部(11,21,31)と、
前記2以上の電力変換装置のいずれか1つにそれぞれ接続された3以上のコイル(16,26A,26B,36A,36B)と、
前記3以上のコイルがそれぞれ巻回されたトランスコア(17,27A,27B,37A,37B)と、
を備え、前記2以上の電力変換装置が互いに電磁気的に結合されている通信システム(100,200,300,400)であって、
前記トランスコアは、他の前記トランスコアとの接合を可能とする接合部(18,28A,28B,38A,38B)をそれぞれ備え、
少なくとも2つの前記コイル(26A,26B,36A,36B)は、前記2以上の電力変換装置のいずれか1つに並列に接続され、且つ互いに接合されていない別個の前記トランスコア(27A,27B,37A,37B)にそれぞれ巻回されている、通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁気的に結合された複数の電力変換装置を備える電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の電源ユニット(電力変換装置)を備える電源装置が記載されている。この電源装置では、複数の電源ユニットは、電源ユニットとは別に設けられた配線用バックボードを介して互いに電気的に接続されており、配線用バックボードを介して電力の授受を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電力を伝送する構成として、複数の電力変換装置を電気的に接続する構成の他に、磁路を介して複数の電力変換装置を電磁気的に結合する構成が考えられる。こうした構成によれば、2つの電力変換装置間を電気的に絶縁した状態で電力を伝送することができる。しかし、2つの電力変換装置間の磁路長が長くなると、2つの電力変換装置間の漏れインダンクタンスが大きくなる。このため、2つの電力変換装置間で伝送可能な最大電力が減少することとなる。なお、こうした事情は、電力を電気信号として伝送する通信システムにおいても概ね共通している。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、電磁気的に結合された複数の電力変換装置を備える電力伝送システムにおいて、2つの電力変換装置間で伝送可能な最大電力を増加させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
2以上の電力変換装置(10,20,30)と、
前記2以上の電力変換装置にそれぞれ接続されて電力を入出力する入出力部(11,21,31)と、
前記2以上の電力変換装置のいずれか1つにそれぞれ接続された3以上のコイル(16,26A,26B,36A,36B)と、
前記3以上のコイルがそれぞれ巻回されたトランスコア(17,27A,27B,37A,37B)と、
を備え、前記2以上の電力変換装置が互いに電磁気的に結合されている電力伝送システム(100,200,300,400)であって、
前記トランスコアは、他の前記トランスコアとの接合を可能とする接合部(18,28A,28B,38A,38B)をそれぞれ備え、
少なくとも2つの前記コイル(26A,26B,36A,36B)は、前記2以上の電力変換装置のいずれか1つに並列に接続され、且つ互いに接合されていない別個の前記トランスコア(27A,27B,37A,37B)にそれぞれ巻回されている。
【0007】
上記構成によれば、入出力部は、前記2以上の電力変換装置にそれぞれ接続されて電力を入出力する。3以上のコイルは、前記2以上の電力変換装置のいずれか1つにそれぞれ接続されている。このため、入出力部から入力した電力を、電力変換装置を介してコイルへ出力することができる。前記3以上のコイルがそれぞれ巻回されたトランスコアは、他の前記トランスコアとの接合を可能とする接合部をそれぞれ備えている。このため、2つのトランスコアの接合部同士を接合することにより、2つのトランスコアにそれぞれ巻回された2つのコイルを電磁気的に結合することができる。これにより、前記2以上の電力変換装置が互いに電磁気的に結合されている。したがって、2つのトランスコアにそれぞれ巻回された2つのコイルの間で、電力を電気的に絶縁した状態で伝送し、電力変換装置を介して入出力部から電力を出力することができる。
【0008】
ここで、少なくとも2つの前記コイルは、前記2以上の電力変換装置のいずれか1つに並列に接続され、且つ互いに接合されていない別個の前記トランスコアにそれぞれ巻回されている。このため、別個の前記トランスコアを、別個の前記トランスコアにそれぞれ巻回されたコイルを介して電磁気的に結合することができる。そして、別個の前記トランスコアに、それぞれコイルが巻回されたトランスコアを接合することにより、それらのコイルの間で電力を伝送することができる。さらに、別個の前記トランスコアはコイルを介して電磁気的に結合されているため、別個の前記トランスコアの長さを短くしても、別個の前記トランスコアにそれぞれ巻き回れたコイルの間で電力を伝送することができる。その結果、別個の前記トランスコアに巻回されたコイルと、別個の前記トランスコアに接続されたトランスコアに巻回されたコイルとの間の漏れインダクタンスを減少させることができ、2つの電力変換装置間で伝送可能な最大電力を増加させることができる。
【0009】
第2の手段では、前記2以上の電力変換装置は、自身に接続された前記コイルとそれが巻回された前記トランスコア、及び自身に接続された前記入出力部と共に互いに別個の筐体(81,82,83)にそれぞれ収納されており、前記筐体の少なくとも1つは、前記互いに接合されていない別個の前記トランスコアとそれらにそれぞれ巻回された前記コイルとを収納している。こうした構成によれば、互いに接合されていない別個の前記トランスコアを電力伝送システムが備える場合であっても、電力変換装置、コイル、トランスコア、及び入出力部を、筐体ごと着脱することができ、ユーザの要望に合わせて電力伝送システムの編成を容易に変更することができる。
【0010】
第3の手段では、前記接合部は、前記筐体の外部に対して露出しており、前記トランスコアは、他の前記トランスコアと接合された状態において、自身と前記他の前記トランスコアとで閉磁路を形成している。こうした構成によれば、筐体同士を組み付けることにより、前記筐体の外部に対して露出した前記接合部同士を接合することができる。そして、接合部で接合された2つのトランスコアにより、閉磁路を容易に形成することができる。
【0011】
トランスコアに他のトランスコアが接続されておらず、閉磁路が形成されていない場合は、トランスコアから外部に磁束が漏れて周囲に悪影響を及ぼすおそれがある。また、閉磁路が形成されていないトランスコアに巻回されたコイルでは、インダクタンスが小さくなり、電圧が印加された際に過電流が流れるおそれがある。
【0012】
この点、第4の手段では、前記トランスコアのうち他の前記トランスコアが接続されていないトランスコア(37B)は、前記コイルが巻回されていない終端トランスコア(89)が接合され、自身と前記終端トランスコアとで閉磁路を形成している。こうした構成によれば、トランスコアに他のトランスコアが接続されていない場合であっても、トランスコアと終端トランスコアとで閉磁路を形成することができる。したがって、トランスコアから外部に磁束が漏れることを抑制することができ、トランスコアの周囲に悪影響を及ぼすことを抑制することができる。また、トランスコアに巻回されたコイルのインダクタンスが小さくなることを抑制することができ、電圧が印加された際に過電流が流れることを抑制することができる。
【0013】
前記2以上の電力変換装置のうちの第1電力変換装置と第2電力変換装置との間の電力電送経路に、定格電力が小さい電力変換装置(以下、「小電力変換装置」という)が含まれる場合がある。この場合に、小電力変換装置に供給される電力が定格電力を超えると、小電力変換装置の動作が停止されるおそれがある。
【0014】
この点、第5の手段では、前記2以上の電力変換装置を制御する制御部(90,290)を備え、前記制御部は、前記2以上の電力変換装置のうちの第1電力変換装置(10)と第2電力変換装置(30)との間で電力を伝送する際に、前記第1電力変換装置に接続された前記コイル(16)と前記第2電力変換装置に接続された前記コイル(36A)との間に電磁気的に結合された前記コイル(26A,26B)に接続された前記電力変換装置である中間電力変換装置(20)、前記第1電力変換装置、及び前記第2電力変換装置の定格電力のうち最も小さい定格電力よりも、前記第1電力変換装置と前記第2電力変換装置との間で伝送する電力の目標値を小さく設定する。こうした構成によれば、小電力変換装置に供給される電力が定格電力を超えることを抑制することができ、第1電力変換装置と第2電力変換装置との間で伝送可能な最大電力が制限されることを抑制することができる。
【0015】
第6の手段では、前記電力変換装置を3以上備え、前記入出力部を3以上備え、前記コイルを4以上備え、前記トランスコアを4以上備えている。
【0016】
上記構成によれば、前記電力変換装置及び前記入出力部をそれぞれ3以上備え、前記コイル及び前記トランスコアをそれぞれ4以上備えている電力伝送システムにおいて、互いに離れた2つの電力変換装置間で伝送可能な最大電力を増加させることができる。
【0017】
第7の手段は、
2以上の電力変換装置(10,20,30)と、
前記2以上の電力変換装置にそれぞれ接続されて電力を入出力する入出力部(11,21,31)と、
前記2以上の電力変換装置のいずれか1つにそれぞれ接続された3以上のコイル(16,26A,26B,36A,36B)と、
前記3以上のコイルがそれぞれ巻回されたトランスコア(17,27A,27B,37A,37B)と、
を備え、前記2以上の電力変換装置が互いに電磁気的に結合されている通信システム(100,200,300,400)であって、
前記トランスコアは、他の前記トランスコアとの接合を可能とする接合部(18,28A,28B,38A,38B)をそれぞれ備え、
少なくとも2つの前記コイル(26A,26B,36A,36B)は、前記2以上の電力変換装置のいずれか1つに並列に接続され、且つ互いに接合されていない別個の前記トランスコア(27A,27B,37A,37B)にそれぞれ巻回されている。
【0018】
上記構成によれば、電力を電気信号として伝送する通信システムにおいて、第1の手段と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、2つの電力変換装置間で伝送可能な電気信号としての最大電力を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】第1実施形態の中間電力変換装置停止状態における各スイッチング素子のオンオフ状態、各コイルの電流、各入出力部の平均電力を示すグラフ。
【
図4】第1実施形態の電力変換装置20動作状態における各スイッチング素子のオンオフ状態、各コイルの電流、各入出力部の平均電力を示すグラフ。
【
図6】本実施形態と比較例について中間電力変換装置の数と漏れインダクタンスとの関係を示すグラフ。
【
図7】本実施形態と比較例について中間電力変換装置の数と伝送可能な最大電力との関係を示すグラフ。
【
図10】第4実施形態の電力伝送システムの回路図。
【
図11】第5実施形態の電力伝送システムの模式図。
【
図12】第5実施形態の電力伝送システムの回路図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、移動販売車等のMaaS(Mobility as a Service)に搭載される電力伝送システムに具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。電力伝送システムは、多様な外部機器に接続可能であり、接続された外部機器から入力される多様な電圧の直流電力又は交流電力を伝送して、接続された外部機器に対して適切な電圧の直流電力又は交流電力を出力する。
【0021】
図1,2に示すように、電力伝送システム100は、入出力部11,21,31、電力変換装置10,20,30、コンデンサ12,22,32、コイル16、26A,26B,36A,36B、磁性体コア17、27A,27B,37A,37B、終端磁性体コア89、及び制御部90等を備えている。
【0022】
入出力部11、電力変換装置10、コイル16、及び磁性体コア17は、筐体81に収納されている。入出力部21、電力変換装置20、コイル26A,26B、及び磁性体コア27A,27Bは、筐体82に収納されている。入出力部31、電力変換装置30、コイル36A,36B、及び磁性体コア37A,37Bは、筐体83に収納されている。すなわち、電力変換装置10,20,30は、自身に接続されたコイル16,26A,26B,36A,36Bとそれらが巻回された磁性体コア17,27A,27B,37A,37B、及び自身に接続された入出力部11,21,31と共に互いに別個の筐体81,82,83にそれぞれ収納されている。筐体82は、互いに接合されていない別個の磁性体コア27A,27Bとそれらにそれぞれ巻回されたコイル26A,26Bとを収納している。筐体83は、互いに接合されていない別個の磁性体コア37A,37Bとそれらにそれぞれ巻回されたコイル36A,36Bとを収納している。
【0023】
入出力部11,21,31には、それぞれ直流の外部機器が接続される。外部機器は、蓄電装置、発電機、又は太陽電池等の外部電源と、電気機器、蓄電装置等の電気負荷とを含んでいる。入出力部11,21,31は、外部から電力を入力する入力状態と、外部へ電力を出力する出力状態と、電力を入出力しない停止状態とに変化し得る。外部機器と入出力部11,21,31との間には、それぞれコンデンサ12,22,32が並列に接続されている。
【0024】
電力変換装置10,20,30は、例えば4つのスイッチング素子を備えるフルブリッジ回路により構成されている。電力変換装置10,20,30には、それぞれ入出力部11,21,31が接続されている。入出力部11,21,31は、上側スイッチング素子の正極端子と下側スイッチング素子の負極端子とに接続されている。
【0025】
電力変換装置10,20,30の上側スイッチング素子と下側スイッチング素子との接続点には、それぞれコイル16,26A,26B,36A,36Bが接続されている。すなわち、コイル16,26A,26B,36A,36Bは、電力変換装置10,20,30のいずれか1つにそれぞれ接続されている。コイル16,26A,26B,36A,36Bの両端は、それぞれのレグにおいて上側スイッチング素子と下側スイッチング素子との接続点に接続されている。コイル16,26A,26B,36A,36Bは、それぞれ磁性体コア17,27A,27B,37A,37Bに巻回されている(巻かれている)。コイル16,26A,26B,36A,36Bの巻数は、同一でもよいし、入出力部11,21、31に入出力する電圧の高さに応じて異ならせてもよい。磁性体コア17,27A,27B,37A,37B(トランスコア)は、例えばフェライトからなる部材である。
【0026】
図1に示すように、磁性体コア17と磁性体コア27Aとは、互いの接合を可能とする接合部18,28Aをそれぞれ備えている。接合部18,28Aは、それぞれ筐体81,82の外部に露出している。接合部18,28Aは、筐体81と筐体82とが組み付けられた状態において、互いに当接あるいは互いに付勢することにより、互いに接合可能となっている。なお、接合部18,28Aの端面がそれぞれ筐体81,82の外面と面一であってもよい、すなわち接合部18,28Aの端面と筐体81,82の外面とが一致していてもよい。また、接合部18(28A)の端面が筐体81(82)の外面よりも内側にあり、接合部28A(18)の端面が筐体82(81)の外面よりも外側にあってもよい。要するに、接合部18,28Aがそれぞれ筐体81,82の外部に対して露出しており、筐体81と筐体82とが組み付けられることにより、接合部18,28Aが接合可能であればよい。そして、磁性体コア17と磁性体コア27Aとが接合部18,28Aで接合されており、閉磁路(磁路のループ)を形成している。これにより、コイル16とコイル26Aとは、電磁気的に結合されている。
【0027】
同様に、磁性体コア27Bと磁性体コア37Aとは、互いの接合を可能とする接合部28B,38Aをそれぞれ備えている。そして、磁性体コア27Bと磁性体コア37Aとが接合部28B,38Aで接合されており、閉磁路を形成している。これにより、コイル26Bとコイル36Aとは、電磁気的に結合されている。
【0028】
コイル26Aとコイル26Bとが接続されている。コイル26A,26Bは、電力変換装置20の上側スイッチング素子と下側スイッチング素子との接続点に並列に接続され、且つ互いに接合されていない磁性体コア27A,27Bにそれぞれ巻回されている。同様に、コイル36Aとコイル36Bとが接続されている。コイル36A,36Bは、電力変換装置30の上側スイッチング素子と下側スイッチング素子との接続点に並列に接続され、且つ互いに接合されていない磁性体コア37A,37Bにそれぞれ巻回されている。すなわち、少なくとも2つのコイルは、2以上の電力変換装置のいずれか1つに並列に接続され、且つ互いに接合されていない別個のトランスコアにそれぞれ巻回されている。
【0029】
磁性体コア27Aと磁性体コア27Bとは、コイル26A,26Bを介して電磁気的に結合されている。磁性体コア37Aと磁性体コア37Bとは、コイル36A,36Bを介して電磁気的に結合されている。このため、磁性体コア17、27A,27B,37A,37Bは電磁気的に結合されている。そして、電力変換装置10,20,30は、コイル16,26A,26B,36A,36B、及び磁性体コア17、27A,27B,37A,37Bを介して電磁気的に結合されている。
【0030】
磁性体コア37Bには、終端磁性体コア89が接合されている。終端磁性体コア89(終端トランスコア)は、磁性体コア17、27A,27B,37A,37Bと同様に、例えばフェライトからなる部材である。終端磁性体コア89には、コイルが巻回されていない。このため、終端磁性体コア89は、磁性体コア17、27A,27B,37A,37Bよりも短く形成されている。磁性体コア37Bと終端磁性体コア89とで閉磁路が形成されている。すなわち、磁性体コア17、27A,27B,37A,37Bのうち他の磁性体コアが接続されていない磁性体コア37Bは、コイルが巻回されていない終端磁性体コア89が接合され、自身と終端磁性体コア89とで閉磁路を形成している。なお、磁性体コア37Bに他の磁性体コアも終端磁性体コア89も接続されておらず、閉磁路が形成されていない場合は、電力の伝送時に磁性体コア37Bから外部に磁束が漏れて周囲に悪影響を及ぼすおそれがある。また、磁性体コア37Bに他の磁性体コアも終端磁性体コア89も接続されておらず、閉磁路が形成されていない磁性体コア37Bに巻回されたコイル36Bでは、インダクタンスが小さくなり、電圧が印加された際に過電流が流れるおそれがある。
【0031】
磁性体コア17、27A,27B,37A,37B及びコイル16,26A,26B,36A,36Bは、電力変換装置10,20,30の制御に基づいて、互いに電力を伝送する。磁性体コア17、27A,27B,37A,37B、コイル16,26A,26B,36A,36B、及び電力変換装置10,20,30により、DAB(Dual Active Bridge)回路が構成されている。
【0032】
制御部90は、例えばCPU、ROM、RAM、駆動回路、及び入出力インターフェース等を備えるコンピュータを主体として構成されている。制御部90は、電力変換装置10,20,30を制御する。詳しくは、制御部90は、電力変換装置10,20,30の各スイッチング素子Q1~Q12のオンオフ状態を制御する。
【0033】
そして、制御部90は、各電力変換装置10,20,30のスイッチング素子をオンにする位相(以下、「オン位相」という)を制御することにより、各入出力部11,21,31(各電力変換装置10,20,30)の間で電力を伝送する。具体的には、一方の電力変換装置のオン位相を他方の電力変換装置のオン位相よりも進めるほど、一方の電力変換装置に接続された入出力部から他方の電力変換装置に接続された入出力部へ伝送される電力が大きくなる。一方の電力変換装置のオン位相を他方の電力変換装置のオン位相よりも遅らせるほど、他方の電力変換装置に接続された入出力部から一方の電力変換装置に接続された入出力部へ伝送される電力が大きくなる。このため、各電力変換装置のオン位相を調整することにより、各入出力部に必要な電力(各入出力部が出力する電力の目標値)を実現することができる。
【0034】
なお、上記動作は、2つの電力変換装置が電磁気的に結合された構成ではオン位相が±90degの範囲内で成立し、3以上の電力変換装置が電磁気的に結合された構成ではオン位相が±90degよりも広い範囲でも成立する。しかし、以降の説明を簡単にするため、3以上の電力変換装置が電磁気的に結合された構成においても、オン位相を最大でも±90degの範囲内とする。また、停止状態は、電力変換装置のスイッチング素子をオフとする、又はリレー等により入出力部を切り離す等により実現可能である。
【0035】
制御部90は、電力変換装置10(第1電力変換装置)と電力変換装置30(第2電力変換装置)との間で電力を伝送する際に、コイル16(第1コイル)とコイル36A(第2コイル)との間に電磁気的に結合されたコイル26A,26B(中間コイル)に接続された電力変換装置20(中間電力変換装置の少なくとも1つ)を動作状態に制御する(停止状態にしない)。電力変換装置10,20,30を動作状態に制御する(駆動する)際には、一方のレグにおいて上側のスイッチング素子をオンにして下側のスイッチング素子をオフにし、且つ他方のレグにおいて上側のスイッチング素子をオフにして下側のスイッチング素子をオンにする。例えば、電力変換装置10を動作状態に制御する際には、スイッチング素子Q1,Q4をオンにし且つスイッチング素子Q2,Q3をオフにした状態と、スイッチング素子Q1,Q4をオフにし且つスイッチング素子Q2,Q3をオンにした状態とを交互に繰り返す。なお、電力変換装置20を動作状態に制御すると、スイッチング素子Q5~Q8をオンオフする際にスイッチング損失が生じる。このため、入出力部21から電力の入出力を行わない場合は、電力変換装置20を停止状態にする(動作状態にしない)ことが通常である。
【0036】
図3,4は、各電力変換装置10,20,30のスイッチング素子のオンオフ状態、各電力変換装置10,20,30から各コイル16,26A,36Aへ流れる電流Itr1,Itr2,Itr3、入出力部11,21,31がそれぞれ入力する平均電力P1,P2,P3を示すグラフである。平均電力P1,P2,P3は、正の値の場合に入力となり、負の値の場合に出力となる。なお、同図では、各スイッチング素子Q1,Q5,Q9のオンオフ状態を見やすくするために、オン状態でのグラフの高さを異ならせている。
【0037】
図3は、電力変換装置20(中間電力変換装置)を停止状態に制御した場合である。この場合、電力変換装置20のスイッチング素子Q5~Q8はオフで維持されている。このため、電流Itr2は0であり、平均電力P2は0である。電力変換装置10,30のオン位相を調整することにより、入出力部11から入出力部31へ目標値の電力を伝送することができる。
【0038】
図4は、電力変換装置20を動作状態に制御した場合である。この場合、電力変換装置20のスイッチング素子Q5(Q8)は、スイッチング素子Q1がオンにされてからスイッチング素子Q9(Q12)がオンにされるまでの間にオンにされている。すなわち、電力変換装置20のスイッチング素子Q5のオン位相は、電力変換装置10のスイッチング素子Q1のオン位相よりも遅れており、電力変換装置30のスイッチング素子Q9のオン位相よりも進んでいる。このため、電流Itr1の減少に伴って電流Itr2が増加し、電流Itr2の減少に伴って電流Itr3が増加している。この場合も、電力変換装置10,20,30のオン位相を調整することにより、入出力部11から入出力部31へ目標値の電力を伝送することができる。また、
図4における電流Itr3の傾きは、
図3における電流Itr3の傾きよりも大きくなっている。このため、
図4において入出力部11から入出力部31へ伝送される平均電力P1(P3)の最大値を、
図3において入出力部11から入出力部31へ伝送される平均電力P1(P3)の最大値よりも増加させることが可能である。なお、
図4は、平均電力P2を0にした場合を示しているが、平均電力P2が正の値で入力の場合、及び平均電力P2が負の値で出力の場合も、平均電力P2の値によらず、伝送される平均電力P1(P3)の最大値を増加させる効果が得られる。
【0039】
図5は、比較例の電力伝送システム900の模式図である。本実施形態の電力伝送システム100と同一の部分には同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
【0040】
コイル916,926,936は、それぞれ電力変換装置10,20,30に接続されており、磁性体コア917,927,937にそれぞれ巻回されている。磁性体コア917と磁性体コア927とは、接合部918,928Aで接合されている。磁性体コア927と磁性体コア937とは、接合部928B,938Aで接合されている。磁性体コア937と終端磁性体コア989とは、接合部938Bで接合されている。そして、磁性体コア917,927,937及び終端磁性体コア989により閉磁路が形成されている。これにより、コイル916,926,936、ひいては電力変換装置10,20,30が電磁気的に結合されている。比較例では、直列に接続されたトランスが構成されている。
【0041】
ここで、磁性体コア927は、磁性体コア917と磁性体コア937とに接合して電磁気的な結合を担保するために、筐体982の全幅に相当する長さまで延ばす必要がある。このため、コイル916とコイル926との間の磁路長が長くなり、漏れインダクタンスが大きくなる。また、コイル916とコイル936との間の磁路長が長くなり、漏れインダクタンスが大きくなる。
【0042】
これに対して本実施懈怠では、
図1に示すように、磁性体コア27Aと磁性体コア27Bとがコイル26A,26Bにより電磁気的に結合されている。このため、磁性体コア27A,27Bを、筐体82の全幅に相当する長さまで延ばす必要がない。したがって、磁性体コア27A,27Bの長さを短くすることができる。その結果、コイル16とコイル26Aとの間の磁路長が長くなり、漏れインダクタンスが小さくなる。また、コイル16とコイル36Aとの間の磁路長が短くなり、漏れインダクタンスが小さくなる。本実施形態では、並列に接続されたトランスが構成されている。
【0043】
図6は、中間電力変換装置の数と漏れインダクタンスとの関係を示すグラフである。同図では、
図1の本実施形態と
図5の比較例とで、筐体の幅を等しくして比較している。同図に示すように、中間電力変換装置の数が増えるほど、その両側に配置された電力変換装置の間の漏れインダクタンスが大きくなる。しかし、中間電力変換装置の数にかかわらず、本実施形態の並列トランス構成の漏れインダクタンスは、比較例の直列トランス構成の漏れインダクタンスよりも小さくなっている。
【0044】
図7は、中間電力変換装置の数と伝送可能な最大電力との関係を示すグラフである。同図に示すように、中間電力変換装置の数が増えるほど、その両側に配置された電力変換装置の間で伝送可能な最大電力が減少する。しかし、中間電力変換装置の数にかかわらず、本実施形態の並列トランス構成における伝送可能な最大電力は、比較例の直列トランス構成における伝送可能な最大電力よりも大きくなっている。
【0045】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0046】
・入出力部11,21,31は、電力変換装置10,20,30にそれぞれ接続されて電力を入出力する。コイル16,26A,26B,36A,36Bは、電力変換装置10,20,30のいずれか1つにそれぞれ接続されている。このため、入出力部11,21,31から入力した電力を、電力変換装置10,20,30を介してコイル16,26A,26B,36A,36Bへ出力することができる。コイル16,26Aがそれぞれ巻回された磁性体コア17,27Aは、他の磁性体コア27A,17との接合を可能とする接合部18,28Aをそれぞれ備えている。コイル26B,36Aがそれぞれ巻回された磁性体コア27B,37Aは、他の磁性体コア37A,27Bとの接合を可能とする接合部28B,38Aをそれぞれ備えている。このため、2つの磁性体コア17,27Aの接合部18,28Aを接合することにより、2つの磁性体コア17,27Aにそれぞれ巻回された2つのコイル16,26Aを電磁気的に結合することができる。2つの磁性体コア27B,37Aの接合部28B,38Aを接合することにより、2つの磁性体コア27B,37Aにそれぞれ巻回された2つのコイル26B,36Aを電磁気的に結合することができる。これにより、電力変換装置10,20が電磁気的に結合され、電力変換装置20,30が電磁気的に結合されている。したがって、2つの磁性体コア17,27Aにそれぞれ巻回された2つのコイル16,26Aの間で、電力を電気的に絶縁した状態で伝送し、電力変換装置10,20を介して入出力部11,21から電力を出力することができる。2つの磁性体27B,37Aにそれぞれ巻回された2つのコイル26B,36Aの間で、電力を電気的に絶縁した状態で伝送し、電力変換装置20,30を介して入出力部21,31から電力を出力することができる。
【0047】
・コイル26A,26Bは、電力変換装置20に並列に接続され、且つ互いに接合されていない別個の磁性体コア27A,27Bにそれぞれ巻回されている。このため、別個の磁性体コア27A,27Bを、別個の磁性体コア27A,27Bにそれぞれ巻回されたコイル26A,26Bを介して電磁気的に結合することができる。そして、別個の磁性体コア27A,27Bに、それぞれコイル16,36Aが巻回された磁性体コア17,37Aを接合することにより、それらのコイル16,36Aの間で電力を伝送することができる。さらに、別個の磁性体コア27A,27Bはコイル26A,26Bを介して電磁気的に結合されているため、別個の磁性体27A,27Bの長さを短くしても、別個の磁性体27A,27Bにそれぞれ巻き回れたコイル26A,26Bの間で電力を伝送することができる。その結果、別個の磁性体コア27A,27Bに巻回されたコイル26A,26Bと、別個の磁性体コア27A,27Bに接続された磁性体コア17,37Aに巻回されたコイル16,36Aとの間の漏れインダクタンスを減少させることができ、電力変換装置10,20の間、及び電力変換装置10,30の間で伝送可能な最大電力を増加させることができる。
【0048】
・電力変換装置10,20,30は、自身に接続されたコイル16,26A,26B,36A,36Bとそれが巻回された磁性体コア17,27A,27B,37A,37B、及び自身に接続された入出力部11,21,31と共に互いに別個の筐体81,82,83にそれぞれ収納されている。筐体82(83)は、互いに接合されていない別個の磁性体コア27A,27B(37A,37B)とそれらにそれぞれ巻回されたコイル26A,26B(36A,36B)とを収納している。こうした構成によれば、互いに接合されていない別個の磁性体コア27A,27B(37A,37B)を電力伝送システム100が備える場合であっても、電力変換装置10,20,30、コイル16,26A,26B,36A,36B、磁性体コア17,27A,27B,37A,37B、及び入出力部11,21,31を、筐体81,82,83ごと着脱することができ、ユーザの要望に合わせて電力伝送システム100の編成を容易に変更することができる。
【0049】
・接合部18,28A(28B,38A)は、筐体81,82(82,83)の外部に対して露出しており、磁性体コア17(27B)は、他の磁性体コア27A(37A)と接合された状態において、自身と他の磁性体コア27A(37A)とで閉磁路を形成している。こうした構成によれば、筐体81,82(82,83)を組み付けることにより、筐体81,82(82,83)の外部に対して露出した接合部18,28A(28B,38A)を接合することができる。そして、接合部18,28A(28B,38A)で接合された2つの磁性体コア17,27A(27B,37A)により、閉磁路を容易に形成することができる。
【0050】
・磁性体コア17,27A,27B,37A,37Bのうち他の磁性体コアが接続されていない磁性体コア37Bは、コイルが巻回されていない終端磁性体コア89が接合され、自身と終端磁性体コア89とで閉磁路を形成している。こうした構成によれば、磁性体コア37Bに他の磁性体コアが接続されていない場合であっても、磁性体コア37Bと終端磁性体コア89とで閉磁路を形成することができる。したがって、磁性体コア37Bから外部に磁束が漏れることを抑制することができ、磁性体コア37Bの周囲に悪影響を及ぼすことを抑制することができる。また、磁性体コア37Bに巻回されたコイル36Bのインダクタンスが小さくなることを抑制することができ、電圧が印加された際に過電流が流れることを抑制することができる。
【0051】
・制御部90は、電力変換装置10と電力変換装置30との間で電力を伝送する際に、動作状態に制御する電力変換装置20に接続された入出力部21が出力する電力が0になるように、電力変換装置20を制御する。こうした構成によれば、動作状態に制御する電力変換装置20に接続された入出力部21が出力する電力の目標値が0である場合でも、電力変換装置20を動作状態に制御することができ、入出力部11と入出力部31との間で伝送可能な最大電力を増加させることができる。
【0052】
・
図4における電流Itr3の傾きを、
図3における電流Itr3の傾きよりも大きくすることができる。このため、
図4において入出力部11から入出力部31へ伝送される平均電力P1(P3)の最大値を、
図3において入出力部11から入出力部31へ伝送される平均電力P1(P3)の最大値よりも増加させることができる。ひいては、電力変換装置10,30の間で伝送可能な最大電力を増加させることができる。
【0053】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図8に示すように、本実施形態では電力伝送システム200が、主制御部290と、副制御部15,25,35を備える点で、第1実施形態と異なる。
【0054】
主制御部290(マスターコントローラ、制御部)は、例えば筐体81内に設けられ、CPU、ROM、RAM、通信回路、及び入出力インターフェース等を備えるコンピュータを主体として構成されている。副制御部15,25,35(サブコントローラ)は、それぞれ電力変換装置10,20,30に設けられている。副制御部15,25,35は、例えばCPU、ROM、RAM、駆動回路、通信回路、及び入出力インターフェース等を備えるコンピュータを主体として構成されている。電力変換装置10,20,30には、それぞれ定格電力(定格電流)が設定されている。副制御部15,25,35は、それぞれ電力変換装置10,20,30の定格電力を記憶(把握)している。主制御部290と副制御部15,25,35とは、それぞれ通信を行う。
【0055】
副制御部15,25,35は、主制御部290からの電力の目標値(指令値)に基づいて、それぞれ電力変換装置10,20,30を制御する。換言すれば、主制御部290は、副制御部15,25,35を介して電力変換装置10,20,30を制御する。副制御部15,25,35は、それぞれ目標値の電力を入出力部11,21,31から入出力するように、電力変換装置10,20,30の各スイッチング素子Q1~Q4,Q5~Q8,Q9~Q12のオンオフ状態を制御する。すなわち、主制御部290及び副制御部15,25,35により、第1実施形態の制御部90の機能を実現する。
【0056】
ここで、電力変換装置10,20,30のうちの電力変換装置10(第1電力変換装置)と電力変換装置30(第2電力変換装置)との間の電力電送経路に、定格電力が小さい電力変換装置(以下、「小電力変換装置」という)が含まれる場合がある。この場合に、小電力変換装置に供給される電力が定格電力を超えると、小電力変換装置の動作が停止されるおそれがある。例えば、小電力変換装置のコイルやスイッチング素子に流れる電流が上限値を超えた場合は、小電力変換装置が強制的に停止されることがある。
【0057】
そこで、主制御部290は、それぞれ副制御部15,25,35と通信を行って、電力変換装置10,20,30の定格電力を受信(取得)する。主制御部290は、電力変換装置10と電力変換装置30との間で電力を伝送する際に、電力変換装置10に接続されたコイル16と電力変換装置30に接続されたコイル36Aとの間に電磁気的に結合されたコイル26A,26Bに接続された電力変換装置20(中間電力変換装置)、電力変換装置10、及び電力変換装置30の定格電力のうち最も小さい定格電力よりも、電力変換装置10と電力変換装置30との間で伝送する電力の目標値を小さく設定する。
【0058】
上記構成によれば、電力変換装置10,20,30に供給される電力がそれぞれの定格電力を超えることを抑制することができ、電力変換装置10と電力変換装置30との間で伝送可能な最大電力が制限されることを抑制することができる。
【0059】
なお、第1実施形態において、制御部90は、電力変換装置10と電力変換装置30との間で電力を伝送する際に、電力変換装置10に接続されたコイル16と電力変換装置30に接続されたコイル36Aとの間に電磁気的に結合されたコイル26A,26Bに接続された電力変換装置20(中間電力変換装置)、電力変換装置10、及び電力変換装置30の定格電力のうち最も小さい定格電力よりも、電力変換装置10と電力変換装置30との間で伝送する電力の目標値を小さく設定してもよい。その場合、制御部90は、電力変換装置10,20,30の定格電力を予め取得(把握)していればよい。
【0060】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図9に示すように、本実施形態では、電力変換装置10,20,30、コイル16,26A,26B,36A、及び磁性体コア17,27A,27B,37A等が1つの筐体381に収納されている点で、第1実施形態と異なる。また、電力伝送システム300は、コイル36B、磁性体コア37B、接合部38B、及び終端磁性体コア89を備えていない。
【0061】
こうした構成によっても、コイル26A,26Bは、電力変換装置20に並列に接続され、且つ互いに接合されていない別個の磁性体27A,27Bにそれぞれ巻回されている。別個の磁性体コア27A,27Bはコイル26A,26Bを介して電磁気的に結合されているため、別個の磁性体27A,27Bの長さを短くしても、別個の磁性体27A,27Bにそれぞれ巻き回れたコイル26A,26Bの間で電力を伝送することができる。その結果、別個の磁性体コア27A,27Bに巻回されたコイル26A,26Bと、別個の磁性体コア27A,27Bに接続された磁性体コア17,37Aに巻回されたコイル16,36Aとの間の漏れインダクタンスを減少させることができ、電力変換装置10,20の間、及び電力変換装置10,30の間で伝送可能な最大電力を増加させることができる。
【0062】
さらに、
図5に示す比較例の磁性体コア917,927,937が直列トランス構成であることと比較して、磁性体コア17,27Aと磁性体コア27B,37Aとは並列トランス構成であり互いに分離している。このため、磁性体コア17,27Aと磁性体コア27B,37Aとを筐体381内に配置する自由度が向上し、電力伝送システム300の小型化に有効である。
【0063】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図10に示すように、本実施形態では、電力変換装置10,20,30を、2つのスイッチング素子と2つのコンデンサとを備えるハーフブリッジ回路により構成している点で、第1実施形態と異なる。
【0064】
電力変換装置10は、上記スイッチング素子Q3,Q4に代えてコンデンサC3,C4を備えている。電力変換装置20は、上記スイッチング素子Q7,Q8に代えてコンデンサC7,C8を備えている。電力変換装置30は、上記スイッチング素子Q11,Q12に代えてコンデンサC11,C12を備えている。そして、制御部90は、電力変換装置10,20,30の各スイッチング素子Q1,Q2,Q5,Q6,Q9,Q10のオンオフ状態を制御する。こうした構成によっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0065】
(第5実施形態)
以下、第5実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図11,12に示すように、本実施形態では、電力伝送システム400が、電力変換装置30、コイル36A,36B、磁性体コア37A,37B、入出力部31、コンデンサ32、及び筐体83を備えていない点で、第1実施形態と異なる。
【0066】
こうした構成によっても、コイル26A,26Bは、電力変換装置20に並列に接続され、且つ互いに接合されていない別個の磁性体27A,27Bにそれぞれ巻回されている。別個の磁性体コア27A,27Bはコイル26A,26Bを介して電磁気的に結合されているため、別個の磁性体27A,27Bの長さを短くすることができる。その結果、磁性体コア27Aに巻回されたコイル26Aと、磁性体コア27Aに接続された磁性体コア17に巻回されたコイル16との間の漏れインダクタンスを減少させることができ、電力変換装置10,20の間で伝送可能な最大電力を増加させることができる。また、磁性体コア27Bに他の磁性体コアを介して、コイル、及び電力変換装置を接続すれば、別個の磁性体27A,27Bにそれぞれ巻き回れたコイル26A,26Bを介して電力を伝送することができる。
【0067】
なお、第1~第5実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。
【0068】
・各入出力部と各電力変換装置との間に、DC/ACコンバータを設けるとともに、各入出力部に交流の系統電源を接続することもできる。
【0069】
・2つの電力変換装置間の磁路長が長くなると、2つの電力変換装置間の漏れインダンクタンスが大きくなり、2つの電力変換装置間で伝送可能な最大電力が減少することとなる。こうした事情は、電力を電気信号として伝送する通信システムにおいても概ね共通している。すなわち、通信システムにおいて、2つの電力変換装置間で伝送可能な電気信号としての最大電力が減少することとなる。例えば、電気信号は、任意の周期及び任意の強度に設定されるパルス状の電圧である。
【0070】
そこで、第1~第5実施形態の電力伝送システムを、同様の構成を備える通信システムとして用いることもできる。こうした構成によれば、電力を電気信号として伝送する通信システムにおいて、第1~第5実施形態と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、2つの電力変換装置間で伝送可能な電気信号としての最大電力を増加させることができる。
【0071】
・以下、上述した各実施形態及び変更例から抽出される特徴的な構成を記載する。
[構成1]
2以上の電力変換装置(10,20,30)と、
前記2以上の電力変換装置にそれぞれ接続されて電力を入出力する入出力部(11,21,31)と、
前記2以上の電力変換装置のいずれか1つにそれぞれ接続された3以上のコイル(16,26A,26B,36A,36B)と、
前記3以上のコイルがそれぞれ巻回されたトランスコア(17,27A,27B,37A,37B)と、
を備え、前記2以上の電力変換装置が互いに電磁気的に結合されている電力伝送システム(100,200,300,400)であって、
前記トランスコアは、他の前記トランスコアとの接合を可能とする接合部(18,28A,28B,38A,38B)をそれぞれ備え、
少なくとも2つの前記コイル(26A,26B,36A,36B)は、前記2以上の電力変換装置のいずれか1つに並列に接続され、且つ互いに接合されていない別個の前記トランスコア(27A,27B,37A,37B)にそれぞれ巻回されている、電力伝送システム。
[構成2]
前記2以上の電力変換装置は、自身に接続された前記コイルとそれが巻回された前記トランスコア、及び自身に接続された前記入出力部と共に互いに別個の筐体(81,82,83)にそれぞれ収納されており、
前記筐体の少なくとも1つは、前記互いに接合されていない別個の前記トランスコアとそれらにそれぞれ巻回された前記コイルとを収納している、構成1に記載の電力伝送システム。
[構成3]
前記接合部は、前記筐体の外部に対して露出しており、
前記トランスコアは、他の前記トランスコアと接合された状態において、自身と前記他の前記トランスコアとで閉磁路を形成している、構成2に記載の電力伝送システム。
[構成4]
前記トランスコアのうち他の前記トランスコアが接続されていないトランスコア(37B)は、前記コイルが巻回されていない終端トランスコア(89)が接合され、自身と前記終端トランスコアとで閉磁路を形成している、構成3に記載の電力伝送システム。
[構成5]
前記2以上の電力変換装置を制御する制御部(90,290)を備え、
前記制御部は、前記2以上の電力変換装置のうちの第1電力変換装置(10)と第2電力変換装置(30)との間で電力を伝送する際に、前記第1電力変換装置に接続された前記コイル(16)と前記第2電力変換装置に接続された前記コイル(36A)との間に電磁気的に結合された前記コイル(26A,26B)に接続された前記電力変換装置である中間電力変換装置(20)、前記第1電力変換装置、及び前記第2電力変換装置の定格電力のうち最も小さい定格電力よりも、前記第1電力変換装置と前記第2電力変換装置との間で伝送する電力の目標値を小さく設定する、構成1~4のいずれか1つに記載の電力伝送システム。
[構成6]
前記電力変換装置を3以上備え、
前記入出力部を3以上備え、
前記コイルを4以上備え、
前記トランスコアを4以上備えている、構成1~5のいずれか1つに記載の電力伝送システム。
【符号の説明】
【0072】
10…電力変換装置、11…入出力部、16…コイル、17…磁性体コア、18…接合部、20…電力変換装置、21…入出力部、26A…コイル、26B…コイル、27A…磁性体コア、27B…磁性体コア、28A…接合部、28B…接合部、30…電力変換装置、31…入出力部、36A…コイル、36B…コイル、37A…磁性体コア、37B…磁性体コア、38A…接合部、38B…接合部、100…電力伝送システム、200…電力伝送システム、300…電力伝送システム、400…電力伝送システム。