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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082528
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】ろう接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 1/20 20060101AFI20240613BHJP
   B23K 31/02 20060101ALI20240613BHJP
   B23K 1/19 20060101ALI20240613BHJP
   B23K 35/28 20060101ALI20240613BHJP
   B23K 35/22 20060101ALI20240613BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B23K1/20 A
B23K31/02 310B
B23K1/20 H
B23K1/19 E
B23K1/19 G
B23K35/28 310B
B23K35/22 310E
C22C21/00 D
C22C21/00 E
C22C21/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196441
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000151209
【氏名又は名称】マーレジャパン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 宏
(72)【発明者】
【氏名】有山 雅広
(72)【発明者】
【氏名】山田 勝也
(72)【発明者】
【氏名】岩内 洋
(57)【要約】
【課題】ろう付け処理を簡略化すると共に、ろう付け性が向上したろう接合体の製造方法を提供すること。
【解決手段】複数の第1の部材を備えたろう接合体の製造方法であって、心材と、心材の片面または両面上に設けられたろう材層とを有する第1の部材に対して無機酸であるオキソ酸を含む水溶液により化学処理を行う工程と、化学処理後の第1の部材に対して純水による洗浄処理を行う工程と、不活性ガス雰囲気下、洗浄処理後の第1の部材のろう材層をスクリーンで囲った状態でフラックスを使用せずにろう付け処理を行うことにより第1の部材同士をろう接合する工程とを有し、ろう材層は、Si 9.0~15.0質量%、Mg 0.25~1.5質量%、Bi 0.02質量%以上を含み、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、化学処理を行う工程におけるろう材層のSiの平均フェレ粒径が3.5μm以下であり、洗浄処理を行う工程で使用する純水の電気伝導度は30μS/m以下である、ろう接合体の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1の部材を備えたろう接合体の製造方法であって、
心材と、該心材の片面または両面上に設けられたろう材層とを有する前記第1の部材に対して、無機酸であるオキソ酸を含む水溶液により化学処理を行う工程と、
化学処理後の前記第1の部材に対して、純水による洗浄処理を行う工程と、
不活性ガス雰囲気下、洗浄処理後の前記第1の部材のろう材層をスクリーンで囲った状態でフラックスを使用せずにろう付け処理を行うことにより、第1の部材同士をろう接合する工程と、
を有し、
前記ろう材層は、Si 9.0~15.0質量%、Mg 0.25~1.5質量%、Bi 0.02質量%以上を含み、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記化学処理を行う工程におけるろう材層のSiの平均フェレ粒径が3.5μm以下であり、
前記洗浄処理を行う工程で使用する純水の電気伝導度は30μS/m以下である、
ろう接合体の製造方法。
【請求項2】
さらに、下記工程(a)および(b)からなる群から選択された少なくとも1つの工程を有する、請求項1に記載のろう接合体の製造方法。
(a)前記化学処理を行う工程の前に、前記第1の部材を成形する工程、
(b)前記洗浄処理を行う工程と前記ろう接合する工程の間に、前記第1の部材を成形する工程
【請求項3】
前記オキソ酸は、硝酸、硫酸、およびリン酸からなる群から選択された少なくとも1つの酸であり、
前記化学処理を行う工程において、pHが-0.5~2.5且つ液温が55℃~85℃に調整されたオキソ酸を含む水溶液を収容した液槽内に、前記第1の部材は浸漬される、請求項1または2に記載のろう接合体の製造方法。
【請求項4】
前記化学処理を行う工程において、ろう材層の表面電位(SHE:標準水素電極)が、-1100mV~-850mVの範囲に調整される、請求項1または2に記載のろう接合体の製造方法。
【請求項5】
前記アルミニウム合金はさらに、Na、Sr、SbおよびPからなる群から選択された少なくとも1つの元素を合計で0.01質量%以上、含む、請求項1または2に記載のろう接合体の製造方法。
【請求項6】
前記第1の部材はさらに、前記心材とろう材層との間に中間層を有し、
前記ろう材層または中間層は、ZnおよびNaからなる群から選択された少なくとも1つの元素を含有する、請求項1または2に記載のろう接合体の製造方法。
【請求項7】
前記ろう接合する工程ではさらに、前記第1の部材が第2の部材にろう接合される、請求項1または2に記載のろう接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろう接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車用部品など様々な技術分野で、複数の構成部品の接合方法として、ろう付け処理による接合方法が用いられている。ろう付け処理は主に、(a)大気圧下で不活性ガス(窒素、アルゴン等)を用い、フッ化物系フラックスを使用して行う、CAB法(Control Atomsphere Brazing)と、(b)高真空下でフラックスを使用せずに行う、VB法(真空ろう付け法)と、に大別される。
【0003】
大気圧下で行うCAB法では、大がかりなフラックス塗布工程の設置やフラックス粉塵への作業環境対策が必要となる。また、フラックス塗布ムラによるろう付け性のバラつきやフラックス残渣による外観性など、ろう付け製品の品質への影響なども課題となる。
【0004】
一方、VB法では、フラックスに関連した問題は発生しない反面、真空炉によるバッチ処理のため量産性が低く、設備も高額となり易い。このため、VB法において真空炉を用いずに、簡易的にろう付け処理が可能な方法が望まれていた。
【0005】
このようなことから、特許文献1(特表2017-505231号公報)は、アルミニウムコア合金と外側ろう付け層とからなる、熱接合法におけるアルミニウム複合材料の使用方法であって、アルミニウムろう付け層が酸洗浄面を有し、アルミニウム複合材料がフラックスフリー熱接合法に使用され、接合法が保護性ガスの存在下で実施される使用方法を開示する。
【0006】
特許文献2(特開2020-15095号公報)は、アルミニウムコア合金からなるコア層が設けられ、コア層の片側または両側にアルミニウムろう付け合金からなる外側ろう付け層が貼り合わされるアルミニウム複合材料を製造するための方法であって、アルミニウムろう付け合金が、特定の組成を有し、アルミニウム複合材料がアルカリまたは酸洗浄水溶液で洗浄される方法を開示する。
【0007】
特許文献3(特開2021-122849号公報)は、Mgを含有するアルミニウム合金ブレージングシートによって周縁にテーパ部を有する形状に形成された複数のコアプレートを、テーパ部同士が接するように積層し、スクリーンによりコアプレートの積層体を囲み、不活性ガス雰囲気中で加熱してろう付けする、熱交換器のろう付け方法を開示する。
【0008】
特許文献4(特開2021-122850号公報)は、フラックスを要せずに不活性ガスの雰囲気でろう付けに供される、心材の少なくとも一方の面に中間層を介して最外層のろう材層がクラッドされた3層以上のブレージングシートであって、心材、中間層およびろう材層はそれぞれ、特定の組成を有するアルミニウム合金からなるブレージングシートを積層して熱交換器の熱交換部を組み立てた後に当該積層の際に互いに重なり合ったプレートの部位をろう付け接合する、ろう付け方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2017-505231号公報
【特許文献2】特開2020-15095号公報
【特許文献3】特開2021-122849号公報
【特許文献4】特開2021-122850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1~4の方法は、ろう付け処理の簡略化およびろう付け性の観点からさらなる改善の余地があった。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、フラックスを使用せず且つ真空炉を用いずにろう付けを行うことにより、ろう付け処理を簡略化すると共に、ろう付け性が向上したろう接合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係るろう接合体の製造方法は、複数の第1の部材を備えたろう接合体の製造方法であって、
心材と、該心材の片面または両面上に設けられたろう材層とを有する前記第1の部材に対して、無機酸であるオキソ酸を含む水溶液により化学処理を行う工程と、
化学処理後の前記第1の部材に対して、純水による洗浄処理を行う工程と、
不活性ガス雰囲気下、洗浄処理後の前記第1の部材のろう材層をスクリーンで囲った状態でフラックスを使用せずにろう付け処理を行うことにより、第1の部材同士をろう接合する工程と、
を有し、
前記ろう材層は、Si 9.0~15.0質量%、Mg 0.25~1.5質量%、Bi 0.02質量%以上を含み、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記化学処理を行う工程におけるろう材層のSiの平均フェレ粒径が3.5μm以下であり、
洗浄処理を行う工程で使用する純水の電気伝導度は30μS/m以下である。
【0012】
この態様によれば、無機酸であるオキソ酸を含む水溶液により化学処理を行う工程により、ろう材層の表面に形成されたアルミニウム酸化膜や、塵、埃、油分等の不純物を簡易的且つ有効に除去して、ろう材層の表面を清浄な状態にすることができる。次に、洗浄処理を行う工程では、ろう材層の表面に残留したオキソ酸を含む水溶液等を純水により除去する。この後、ろう接合する工程では、洗浄処理後の第1の部材のろう材層をスクリーンで囲った状態でフラックスを使用せずに複数の第1の部材にろう付け処理を行うことにより、第1の部材同士をろう接合する。この際、フラックスを使用せず、且つ真空炉を用いることなく不活性ガス雰囲気下でろう付けを行うことにより、ろう付け処理を簡略化することができる。ろう材層は、Mgを0.25~1.5質量%、含有するため、ろう材層の表面に残留し且つろう付け処理に悪影響を及ぼすアルミニウム酸化膜を効果的に除去することができる。また、第1の部材のろう材層をスクリーンで囲った状態でろう付け処理を行うことにより、ろう付け処理時に、ろう材層から蒸発したMgが有効量、ろう材層表面近傍に滞留して、O、HO等のろう付けを阻害し得る成分を捕捉して、ろう付けを有効に行うことができる。この結果、ろう付け性を向上させることができる。さらに、化学処理を行う工程におけるろう材層のSiの平均フェレ粒径が3.5μm以下であることにより、ろう付け処理時のろう材層の流動性を向上させて、ろう付け性を向上させることができる。洗浄処理を行う工程で使用する純水の電気伝導度は30μS/m以下であるため、純水中の不純物が少ないため、洗浄処理を行った後にろう材層の表面を効果的に清浄な状態に保つことができる。
【0013】
本発明に係るろう接合体の製造方法は、さらに、下記工程(a)および(b)からなる群から選択された少なくとも1つの工程を有していてもよい。
(a)化学処理を行う工程の前に、第1の部材を成形する工程、
(b)洗浄処理を行う工程とろう接合する工程の間に、第1の部材を成形する工程
この態様によれば、工程(a)、工程(b)、または工程(a)と(b)の両方の工程を有することにより、第1の部材を所望の形状に成形することにより、所望の形状を有するろう接合体を得ることができる。
【0014】
無機酸であるオキソ酸は、硝酸、硫酸、およびリン酸からなる群から選択された少なくとも1つの酸であり、化学処理を行う工程において、pHが-0.5~2.5且つ液温が55℃~85℃に調整されたオキソ酸を含む水溶液を収容した液槽内に、第1の部材は浸漬されてもよい。この態様によれば、オキソ酸として、硝酸、硫酸、およびリン酸からなる群から選択された少なくとも1つの酸を用いることにより、オキソ酸を含む水溶液の入手・調製が容易となり、これらの酸は酸化力が高いためろう材層表面の清浄化を効果的に行うことができる。また、pHが-0.5~2.5且つ液温が55℃~85℃に調整されたオキソ酸を含む水溶液を収容した液槽内に、第1の部材を浸漬させることにより、ろう材層表面に効果的に化学処理を行って、ろう材層の表面をより清浄な状態にすることができる。
【0015】
化学処理を行う工程において、ろう材層の表面電位(SHE:標準水素電極)が、-1100mV~-850mVの範囲に調整されてもよい。この態様によれば、圧延時に形成されるろう材層表面の強固な酸化アルミニウムおよび酸化マグネシウム膜が除去され、化学処理後に再形成される自然アルミニウム酸化膜だけとなり、ろう材内部のマグネシウムの拡散・蒸発による酸化膜の破壊が容易となり、ろう付け性をより向上させることが出来る。
【0016】
アルミニウム合金はさらに、Na、Sr、SbおよびPからなる群から選択された少なくとも1つの元素を合計で0.01質量%以上、含んでもよい。この態様によれば、ろう付け性をさらに向上させることができる。
【0017】
第1の部材はさらに、心材とろう材層との間に中間層を有し、ろう材層または中間層は、ZnおよびNaからなる群から選択された少なくとも1つの元素を含有してもよい。この態様によれば、ろう付け層の表面に存在するアルミニウム酸化膜の破壊を促進させ、フィレット形成率の向上を図ることができる。
【0018】
ろう接合する工程ではさらに、第1の部材が第2の部材にろう接合されてもよい。この態様によれば、第1および第2の部材を有する所望の形状のろう接合体を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
ろう付け処理を簡略化すると共に、ろう付け性が向上したろう接合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係るろう接合体の製造方法を示すフローチャートである。
図2】本発明の実施形態に係るろう接合体の製造方法に用いる第1の部材を表す断面図である。
図3】本発明の実施形態に係るろう接合体の製造方法のろう接合する工程を表す断面図である。
図4】本発明の実施形態に係るろう接合体の製造方法により得られたろう接合体を備えた熱交換器を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態は、複数の第1の部材を備えたろう接合体の製造方法であって、心材と、該心材の片面または両面上に設けられたろう材層とを有する第1の部材に対して無機酸であるオキソ酸を含む水溶液により化学処理を行う工程と、化学処理後の第1の部材に対して純水による洗浄処理を行う工程と、不活性ガス雰囲気下、洗浄処理後の第1の部材のろう材層をスクリーンで囲った状態でフラックスを使用せずにろう付け処理を行うことにより第1の部材同士をろう接合する工程とを有する。また、第1の部材のろう材層は、Si 9.0~15.0質量%、Mg 0.25~1.5質量%、Bi 0.02質量%以上を含み、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、化学処理を行う工程におけるろう材層のSiの平均フェレ粒径が3.5μm以下であり、洗浄処理を行う工程で使用する純水の電気伝導度は30μS/m以下である。なお、「オキソ酸」とは、酸素原子、酸素原子に結合された少なくとも1つの水素原子、および少なくとも1つの他の部分(1以上の原子、基、主鎖など)を有し、水素イオン(プロトン)を放出することにより共役塩基を生じる無機酸を意味する。また、「ろう材層のSiの平均フェレ粒径」は、化学処理を行う工程を行うときのろう材層表面のSiにおける、圧延方向の互いに平行な2つの直線間の最長距離として測定される平均の粒子径を意味する。「ろう材層のSiの平均フェレ粒径」は例えば、日立ハイテクノロジーズ社製の電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、サンプル断面として鏡面研磨後のオスミウムコーティングを施した観察用試料のろう材層を4800μmの範囲で測定し、1μm以上のSiのフェレ粒径の平均値として算出することができる。なお、フェレ粒径は圧延方向の依存性は認められないため、圧延方向の断面での観察とした。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係るろう接合体の製造方法を示すフローチャートである。以下では、図1のフローチャートを参照して本発明の実施形態に係るろう接合体の製造方法を説明する。まず、図1に示すように、心材と、該心材の片面または両面上に設けられたろう材層とを有する、複数の第1の部材に対して、無機酸であるオキソ酸を含む水溶液により化学処理を行う(図1のS1)。この化学処理を行う工程により、ろう材層の表面に形成されたアルミニウム酸化膜や、塵、埃、油分等の不純物を簡易的且つ有効に除去して、ろう材層の表面を清浄な状態にすることができる。
【0023】
オキソ酸は、硝酸、硫酸、およびリン酸からなる群から選択された少なくとも1つの酸であり、化学処理を行う工程において、pHが-0.5~2.5且つ液温が55℃~85℃に調整されたオキソ酸を含む水溶液を収容した液槽内に、第1の部材は浸漬されることが好ましい。硝酸、硫酸、およびリン酸からなる群から選択された少なくとも1つの酸を含む水溶液は、入手・取り扱いが容易であるため化学処理を行う工程を簡略化することができると共に、これらの酸は酸化力が高いためろう材層表面の清浄化を効果的に行うことができる。また、pHが-0.5~2.5且つ液温が55℃~85℃に調整されたオキソ酸を含む水溶液を収容した液槽内に、第1の部材を浸漬させることにより、効果的に化学処理を行って、ろう材層の表面をより清浄な状態にすることができる。オキソ酸を含む水溶液中のオキソ酸の濃度は、5g/L~300g/Lであることが好ましく、10g/L~200g/Lであることがより好ましく、50g/L~150g/Lであることがさらに好ましい。オキソ酸を含む水溶液のpHは、0~1.0であることがより好ましく、0.3~0.7であることがさらに好ましい。オキソ酸水溶液の液温は、60℃~80℃であることがより好ましく、70℃~80℃であることがさらに好ましい。
【0024】
化学処理を行う工程において、ろう材層の表面電位(SHE:標準水素電極)が、-1100mV~-850mVの範囲に調整されることが好ましい。ろう材層はこのような表面電位を有することにより、圧延時に形成されるろう材層表面の強固な酸化アルミニウムおよび酸化マグネシウム膜が除去され、化学処理後に再形成される自然アルミニウム酸化膜だけとなり、ろう材内部のマグネシウムの拡散・蒸発による酸化膜の破壊が容易となり、ろう付け性をより向上させることが出来る。ろう材層の表面電位(SHE:標準水素電極)は、-1000mV~-875mVであることがより好ましく、-950mV~-900mVであることがさらに好ましい。なお、ろう材層の表面電位(SHE:標準水素電極)は、ポテンショスタットを用いて、基準電極を銀-塩化銀電極、補助電極を白金板電極、電解液を23℃、5質量%NaCl水溶液として測定することができる。
【0025】
本発明の実施形態に係るろう接合体の製造方法で使用する第1の部材は複数存在し、該第1の部材は心材と、該心材の片面または両面上に最外層として設けられたろう材層とを少なくとも有し、心材およびろう材層以外の層をさらに有していてもよい。図2は、本発明の実施形態に係るろう接合体の製造方法に用いる第1の部材の一例を示す断面図である。図2に示す第1の部材では、心材23の一方の面上に中間層22を間に介して最外層としてろう材層21が設けられている。中間層22は、心材23の腐食を抑制するための犠牲層となる。また、心材23の他方の面上には最外層としてろう材層24が設けられている。ろう材層21、24は心材23の融点よりも低い融点を有するアルミニウム合金からなっており、ろう材層21のアルミニウム合金の組成と、ろう材層24のアルミニウム合金の組成とは、同じものであっても、異なるものであってもよいが、ろう材層21、24は共にSi 9.0~15.0質量%、Mg 0.25~1.5質量%、Bi 0.02質量%以上、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる。また、図2では最外層として、心材の両側にろう材層21、24が設けられる態様を示したが、ろう材層は心材の一方の面のみに最外層として設けられてもよい。複数の第1の部材は、互いに異なるアルミニウム合金の組成を有していても、同じアルミニウム合金の組成を有していてもよい。
【0026】
ろう材層は、Si 9.0~15.0質量%、Mg 0.25~1.5質量%、Bi 0.02質量%以上、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる。なお、心材の両面上にろう材層が設けられる場合には、各々のろう材層を構成するアルミニウム合金が、Si 9.0~15.0質量%、Mg 0.25~1.5質量%、Bi 0.02質量%以上、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなる組成を満たす必要がある。アルミニウム合金中のSiの含量は、10質量%~14質量%が好ましく、10質量%~12.5質量%がより好ましい。アルミニウム合金中のSiの含量が上記範囲内であることによって、アルミニウム合金の融点を下げることができる。アルミニウム合金中のMgの含量は、0.5質量%~1.0質量%が好ましく、0.5質量%~0.8質量%がより好ましい。アルミニウム合金中のMgの含量が上記範囲内であることによって、ろう材層から表面に拡散したMgが表層の酸化アルミニウム膜を破壊し、ろう材の流動を容易にするとともに、蒸発したMgが効果的にろう材層表面近傍に滞留して、O、HO等のろう付けを阻害し得る成分を捕捉してろう付けを有効に行うことができる。アルミニウム合金中のBiの含量は、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。 尚、Biの含量が0.5質量%以上では、その効果は飽和する。アルミニウム合金中のBiの含量が上記範囲内であることによって、ろう付け過程の熱拡散によりBiがろう材層に移動し、溶融したろう材の流動性が向上してろう付け性の安定化が図られ、フィレット形成率および気密性を良好なものとすることができる。
【0027】
化学処理を行う工程におけるろう材層のSiの平均フェレ粒径は3.5μm以下であるが、3.2μm以下であることが好ましく、3.0μm以下であることがより好ましい。化学処理を行う工程におけるろう材層のSiの平均フェレ粒径は上記範囲内であることにより、ろう付け処理時のろう材層の流動性を効果的に向上させて、ろう付け性を向上させることができる。
【0028】
ろう材層はSi、Mg、Bi、アルミニウムおよび不可避的不純物以外の元素を含有することができる。この場合、ろう材層は、Si 9.0~15.0質量%、Mg 0.25~1.5質量%、Bi 0.02質量%以上、任意元素、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる。アルミニウム合金は任意元素として、Na、Sr、SbおよびPからなる群から選択された少なくとも1つの元素を合計で0.01質量%以上、含むことが好ましい。この態様によれば、アルミニウム酸化膜の破壊を促進させ、フィレット形成率の向上を図ることができる。
【0029】
第1の部材はさらに、心材とろう材層との間に中間層を有し、ろう材層または中間層は、ZnおよびNaからなる群から選択された少なくとも1つの元素を含有してもよい。これにより、ろう付け層の表面に存在するアルミニウム酸化膜の破壊を促進させ、フィレット形成率の向上を図ることができる。
【0030】
心材は好適にはアルミニウム合金からなり、該心材を構成するアルミニウム合金の組成は特に限定されないが、0.20~1.0質量%のCu、0.8~1.8質量%のMnおよび0.25~1.5質量%のMgからなる群から選択された少なくとも1つの元素を含み、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなることが好ましい。
【0031】
中間層は好適にはアルミニウム合金からなり、該中間層を構成するアルミニウム合金の組成は特に限定されないが、0.20質量%以下のSi、0.20質量%以下のFe、0.10質量%以下のCu、0.10質量%以下のMnおよび0.10質量%以下のCrを含み、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなることが好ましい。
【0032】
第1の部材は例えば、心材、中間層およびろう材層について、それぞれ元素成分を所定の含量に調製したアルミニウム合金を造塊後、均質化処理、熱間圧延、冷間圧延した後に、心材、中間層およびろう材層を一体化させることにより製造することができる。
【0033】
ろう接合する工程ではさらに、第1の部材が第2の部材にろう接合されることができる。第2の部材はろう材層を有していても、有していなくてもよい。第2の部材は、所定の形状に成形されたものであっても、成形されていなくてもよい。また、第2の部材は複数の部材であってもよい。
【0034】
次いで、化学処理を行う工程の後、化学処理後の第1の部材に対して、純水による洗浄処理を行う(図1のS2)。この工程により、ろう材層の表面に残留したオキソ酸を含む水溶液等を純水により除去する。洗浄処理を行う工程で使用する純水の電気伝導度は30μS/m以下である。純水の電気伝導度は30μS/m以下であることにより、純水中の不純物が少ないため、洗浄処理を行った後に、ろう材層の表面を清浄な状態に保つことができる。純水の電気伝導度は、5μS/m以下であることが好ましく、1μS/m以下であることがより好ましい。なお、純水の電気伝導度は、導電率計を用いて23℃での純水の電気伝導度を測定する。洗浄処理の具体的な方法は特に限定されず、第1の部材を純水浴中に浸漬させて静置する方法、第1の部材を純水浴中に浸漬させた状態で超音波洗浄を行う方法、第1の部材の表面上に純水を流す方法などを挙げることができるが、第1の部材を純水浴中に浸漬させた状態で超音波洗浄を行う方法が好ましい。
【0035】
次いで、不活性ガス雰囲気下、洗浄処理後の第1の部材のろう材層をスクリーンで囲った状態でフラックスを使用せずに第1の部材にろう付け処理を行うことにより、第1の部材同士をろう接合する(図1のS3)。この際、フラックスを使用せず、且つ真空炉を用いずに不活性ガス雰囲気下でろう付けを行うことにより、ろう付け処理を簡略化することができる。ろう材層は、Mgを0.25~1.5質量%、含有するため、ろう材層の表面に残留しているアルミニウム酸化膜を効果的に除去することができる。また、第1の部材のろう材層をスクリーンで囲った状態でろう付け処理を行うことにより、ろう材層から蒸発したMgが有効量、ろう材層表面近傍に滞留して、O、HO等のろう付けを阻害し得る成分を捕捉して、ろう付けを有効に行うことができる。さらに、化学処理を行う工程におけるろう材層のSiの平均フェレ粒径が3.5μm以下であることにより、ろう付け処理時のろう材層の流動性を向上させて、ろう付け性を向上させることができる。スクリーンは、ろう材層の少なくとも一部を覆うように配置されていればよく、ろう材層の一部、ろう材層の全部、第1の部材におけるろう材層以外の部分、または第1および第2の部材を囲っていてもよい。また、スクリーンは、ろう付け層との間に間隔を生じるように配置されていてもよく、スクリーンの材質・形状・大きさは特に限定されない。好適にはスクリーンは、ろう付け時の加熱温度に耐えうるだけの耐熱性を有するステンレス鋼や他の耐熱金属の薄肉金属板からなり、略四角形断面の筒状を有している。
【0036】
図3は、本発明の実施形態に係るろう接合体の製造方法によるろう接合する工程の一例を表す断面図であり、ろう接合により、熱交換器の一部であるコア部3を、ろう接合体として形成する例を表す図である。図3に示すように、ベースプレート2の上に、多数の薄板状のコアプレート4をフィンプレート5とともに積層した積層体であるコア部3が載置された構成となっている。コアプレート4、フィンプレート5およびベースプレート2はアルミニウム合金から構成されている。ここでは、コアプレート4が第1の部材に該当し、フィンプレート5およびベースプレート2が第2の部材に該当する。図3に示すように、コアプレート4は、周縁に斜めに立ち上がったテーパ部4aを有する構成であり、各コアプレート4が上下方向に積層されたときに、各々のテーパ部4a同士が互いに重なり合って密接する関係にある。コアプレート4およびフィンプレート5を図3に示す所定の状態に組み立てた後に治具で保持した状態で、コアプレート4のろう材層を金属板からなるスクリーン11で囲った状態でフラックスを使用せずに、重なり合った各コアプレート4のテーパ部4aをろう接合する。また、これと共に、コアプレート4の表面にフィンプレート5がろう接合され、最下端のコアプレート4の下面がベースプレート2にろう接合される。このろう付け処理は、フラックスを使用せずに行われ、従前のVB法のような高真空の真空炉を用いずに、基本的に大気圧付近での圧力下で窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気中でろう付けを行うことができ、ろう付け処理を簡略化すると共に製造現場の環境をより改善することができる。また、ワークを搬送しながら連続的に加熱処理を行う連続炉を用いてろう付け処理を行うことができ、ろう接合体の量産性を向上させることができる。
【0037】
このようにして得られたろう接合体であるコア部3は、基本的な形状が同一の矩形状をなす浅皿状のコアプレート4をフィンプレート5とともに多数積層することで、隣接する2枚のコアプレート4の間に、オイル通路6と冷却水通路7とを交互に構成するようにしたものである。フィンプレート5は、オイル通路6の中に配置されている。また、各コアプレート4の重なり合ったテーパ部4がろう接合されることにより、各段のオイル通路6および冷却水通路7の周囲が密封され、且つコア部3が全体として一体化される。オイル通路6には高温のオイルが流され、冷却水通路7には低温の冷却水が流されることにより、オイル通路6中のオイルと冷却水通路7中の冷却水との間で熱交換が可能なようになっている。ベースプレート2は、熱交換器を所望の位置に取り付けるための取付部としても機能するものであり、コア部3から周囲にはみ出るようにコアプレート4よりも大きく、且つコアプレート4よりも厚い板状部材から構成されている。テーパ部4aと、スクリーン11の側面の内壁11aとの間には間隔Dが設けられており、間隔Dは、0.5mm~5mmであることが好ましく、0.5mm~2mmであることがより好ましい。また、スクリーンはコア部3の側面だけでなく、コア部3上部の一部を覆うように廂部12も有する。
【0038】
図3に示したろう接合する工程では、スクリーン11によって、コアプレート4のろう材層から気化したMgが雰囲気中に散逸せずに、コアプレート4のろう材層近傍に留まることとなり、このMgによって、ろう付け性を妨げるろう付け面近傍の酸素や水分を効果的に捕捉することができる。
【0039】
本発明に係るろう接合体の製造方法はさらに、下記工程(a)および(b)からなる群から選択された少なくとも1つの工程を有していてもよい。
(a)化学処理を行う工程の前に、第1の部材を成形する工程、
(b)洗浄処理を行う工程とろう接合する工程の間に、第1の部材を成形する工程
この態様によれば、工程(a)、工程(b)、または工程(a)と(b)を有することにより、第1の部材を所望の形状に成形して所望の形状を有するろう接合体を得ることができる。第1の部材の成形方法としては特に限定されないが、スタンピング成形等を挙げることができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に係るろう接合体の製造方法に限定されるものではなく、本発明の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題および効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【実施例0041】
心材1、中間層1およびろう材層1~10について、それぞれ元素成分を表1に示す含量に調製したアルミニウム合金を造塊後、均質化処理、熱間圧延、冷間圧延した後に、心材、中間層およびろう材層を一体化させることにより、表2に示すように、一方の外表面から他方の外表面まで順にろう材層A、中間層、心材、およびろう材層Bを有する、厚さ0.6mmのクラッドシート1~11を製造した。その後、クラッドシート11については、390℃で焼鈍し、完全に焼きなまし処理をして軟化させた。なお、表1において、数値は質量%の値を示す。また、表1中のCu、Mn、Mg、Znの「-」は、0.05質量%未満の不可避的不純物の濃度を示し、Na、Biの「-」は、0.01質量%未満の濃度を示す。
【表1】
【表2】
【0042】
第2の部材である断面波形状の複数のフィンプレート5、およびベースプレート2はそれぞれ、A3003材により作製した。
【0043】
実施例1~7および9~15および比較例1~10では、クラッドシート1~11をスタンピング成形して、第1の部材として同一の矩形状をなす浅皿状のコアプレート4を複数、作製した。次いで、実施例1~7および9~15および比較例2~7では、スタンピング成形したクラッドシート1~11からなるコアプレート4を、表3に示した条件のオキソ酸を含む水溶液を収容した液槽内に浸漬させることにより、オキソ酸を含む水溶液による化学処理を行った。比較例8~10では、コアプレート4を、表3に示した条件の無機酸であるオキソ酸以外の酸を含む水溶液を収容した液槽内に浸漬させることにより化学処理を行った。比較例11では、コアプレート4を、表3に示した条件のアルカリ水溶液を収容した液槽内に浸漬させることにより化学処理を行った。なお、比較例1では化学処理を行わなかった。
一方、実施例8では、クラッドシート1からなるコアプレート4を、表3に示した条件のオキソ酸を含む水溶液を収容した液槽内に浸漬させることにより、オキソ酸を含む水溶液による化学処理を行った。この後に、コアプレート4をスタンピング成形して、第1の部材として同一の矩形状をなす浅皿状のコアプレート4を複数、作製した。
【0044】
次いで、化学処理後のコアプレート4(第1の部材)に対して、表3に示す条件で洗浄処理を行った。なお、表3に示す水の電気伝導度は、導電率計を用いて23℃での水の電気伝導度を測定した。表3における比較例1の「水溶液(23℃)のpH」は、洗浄処理に使用した純水のpHを示している。
【表3】
【0045】
その後、図3に示すように、ベースプレート2上で、8枚のコアプレート4、および4枚のフィンプレート5を積層することでコア部3を組み立てた。また、図4に示すように、コア部3の上部に、該コア部3の内部に連通する2本のコネクタ9を接合させて熱交換器1を組み立てた。この熱交換器1を冶具で固定し、さらにコア部3を囲うように断面略正方形の筒状のスクリーン11を設置した。スクリーン11は、SUS303製の金属板であり、板厚は1.0mmであった。図4に示すように、スクリーン11は、ベースプレート2上のコア部3を矢印Aの方向に両側から挟み込んでコアプレート4のろう付け層を囲むように、第1半割部11Aと第2半割部11Bとの2部品に分割構成されている。2つの対向する側面の中央が第1半割部11Aと第2半割部11Bとの分割面となっている。これらの第1半割部11Aと第2半割部11Bは、各々の端縁13aと14a、13bと14bが互いに突き合わされて、ベースプレート2上に配置される。上記のようにベースプレート2上にスクリーン11をセットした後、熱交換器1をろう付け炉内に導入することにより、ろう付け処理を行った。この際、コア部3に対してフラックスを使用せずに不活性ガス雰囲気下、表3に示す条件でろう付け処理を行い、コアプレート4のテーパ部4a同士をろう接合すると共に、コアプレート4と、ベースプレート2およびフィンプレート5とをろう接合した。ろう付け炉としてはメッシュベルト式連続アルミろう付け炉を使用し、不活性ガスとしては窒素を使用した。この際、ろう付け炉の595℃~605℃の温度ゾーンでの酸素濃度は20ppm~30ppm、露点は-50℃~-40℃、の条件でろう付け処理を行った。温度条件としては、ワークを測温し、室温から577℃までを20分で昇温させ、その後600℃までを5分で昇温させた後、3分間保持し、その後、600℃から350℃へ7分で冷却するように温度制御を行った。
【0046】
上記のようにして得られた熱交換器1について、ろう付け状態の確認および気密試験を実施した。ろう付け状態は、下記式に示すフィレット形成率として測定した。
フィレット形成率(%)=実際にコアプレート4のテーパ部4a同士がろう付けされている部分の長さ/コアプレート4のテーパ部4a同士が接触している部分のろう付けされるべき7段のフィレットの全周長×100
上記のようにして測定したフィレット形成率が、0%以上50%未満の評点を「0」、50%以上75%未満の評点を「1」、75%以上90%未満の評点を「2」、90%以上95%未満の評点を「3」、95%以上98%未満の評点を「4」、98%以上100%以下の評点を「5」、として評価した。
【0047】
気密試験は以下のように行った。図4に示す熱交換器1を水中に浸漬させ、コネクタ9の端部9bに封止栓を設けた状態で、0.5MPaの圧力で1分間、コネクタ9の端部9aに空気を流入させて、ろう付け部からの気泡の有無を確認した。この際、ろう付け部から気泡が発生している場合を「あり」、気泡が発生していない場合を「なし」、と評価した。
【0048】
また、「ろう材層のSiの平均フェレ粒径」は、化学処理を行う工程のろう材層表面の圧延方向のSiにおける、互いに平行な2つの直線間の最長距離として測定される平均の粒子径として測定した。具体的には、日立ハイテクノロジーズ社製の電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、サンプル断面として鏡面研磨後のオスミウムコーティングを施した観察用試料のろう材層を4800μmの範囲で測定し、1μm以上のSiのフェレ粒径の平均値として算出した。なお、フェレ粒径は圧延方向の依存性は認められないため、今回は圧延方向の断面での観察とした。ろう材層の表面電位(SHE:標準水素電極)は、ポテンショスタットを用いて、基準電極を銀-塩化銀電極、補助電極を白金板電極、電解液を23℃、5質量%NaCl水溶液として測定した。
【0049】
上記のようにして評価した各例のろう材層のSiの平均フェレ粒径(μm)、ろう材層の表面電位(mV)、フィレット形成率の評点、および気密性を表4に示す。
【表4】
【0050】
実施例1~15ではフィレット形成率の評点が4または5且つ気密性が「あり」であるのに対して、比較例1~11ではフィレット形成率の評点が3以下であり、比較例1、3、4、8~10では気密性が「なし」であった。従って、本発明のろう接合体の製造方法では、ろう付け処理を簡略化すると共に、ろう付け性を向上できることが分かる。
【符号の説明】
【0051】
1…熱交換器、2…ベースプレート、3…コア部、4…コアプレート、4a…テーパ部、5…フィンプレート、6…オイル通路、7…冷却水通路、9…コネクタ、9a、9b…コネクタの端部、11、11A、11B…スクリーン、11a…内壁面、12…廂部、13a、13b、14a、14b…スクリーンの端縁、21、24…ろう材層、22…中間層、23…心材
図1
図2
図3
図4