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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082529
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】遮熱ボード
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/80 20060101AFI20240613BHJP
   E04C 2/20 20060101ALI20240613BHJP
   E04C 2/26 20060101ALI20240613BHJP
   E04C 2/292 20060101ALI20240613BHJP
   E04C 2/32 20060101ALI20240613BHJP
   B32B 3/28 20060101ALI20240613BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20240613BHJP
   B32B 15/00 20060101ALI20240613BHJP
   F16L 59/07 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
E04B1/80 100Q
E04C2/20 E
E04C2/20 F
E04C2/26 V
E04C2/292
E04C2/32 Q
B32B3/28
B32B7/027
B32B15/00
F16L59/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196443
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】522478983
【氏名又は名称】株式会社フタガミ商会
(74)【代理人】
【識別番号】100223608
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 敬子
(72)【発明者】
【氏名】二神 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】山内 啓司
【テーマコード(参考)】
2E001
2E162
3H036
4F100
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001GA12
2E001GA42
2E001HA11
2E001HB04
2E001HD13
2E001JB03
2E001LA04
2E162CD06
2E162FA14
2E162FB03
3H036AB03
3H036AB13
3H036AB18
3H036AB32
3H036AB44
3H036AB45
3H036AC01
3H036AE13
4F100AB01A
4F100AB10A
4F100AD00G
4F100AK01B
4F100AT00B
4F100BA02
4F100DE01G
4F100GB07
4F100JJ02
4F100JJ02A
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】厚みが薄く取り扱いや施工などの操作性が容易である遮熱ボードを提供する。厚みが薄く室内面積を大幅に狭めることが少ない遮熱ボードを提供する。
【解決手段】波形板状の遮熱シート12と、平板11とからなる遮熱ボード10であって、遮熱シート12は、金属材料を含み、遮熱シート12と平板11とは、遮熱シート12の両面の波形の頂点で平板11と接着され空気層13を形成し、遮熱シート12と平板11とは、セラミックビーズを混合した接着剤により接着される遮熱ボード10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波形板状の遮熱シートと、平板とからなる遮熱ボードであって、
前記遮熱シートは、金属材料を含み、
前記遮熱シートと前記平板とは、前記遮熱シートの両面の波形の頂点で前記平板と接着され空気層を形成し、
前記遮熱シートと前記平板とは、セラミックビーズを混合した接着剤により接着される遮熱ボード。
【請求項2】
前記遮熱シートの前記波形の凸部の頂点間の間隔は、10mm以上40mm以下であり、
前記遮熱シートの前記波形の凹部の頂点から前記波形の凸部の頂点間の距離は、10mm以上200mm以下である請求項1に記載の遮熱ボード。
【請求項3】
前記遮熱シートは、断熱素材からなるシートの両面にアルミ材料からなるアルミ層を形成し、
前記平板は、樹脂材料からなる請求項1または請求項2に記載の遮熱ボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の遮熱構造及び、遮熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の断熱構造は、建築物の外装材と内装材との間に遮熱材等が設置されることにより断熱効果を得るものである(特許文献1)。断熱材を施した屋内は、断熱効果によって冬は暖かく、夏は涼しい室内温度を維持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-239429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、建築物の施工条件によって、材質や大きさ等の異なる建築材料が用いられるが、施工条件にあわせて、それらを調整する作業が必要となり手間を要する。断熱材を間柱と間柱との間に施工し、壁材を施工する方法では、断熱材の施工、壁材の施工と多くの工程がある。そのため、施工時間が長く、施工に熟練を要する。また、既存壁材上に胴縁を設置し、胴縁と胴縁との間に断熱材を挟んで設置した上で壁材を設置する施工方法では、胴縁と胴縁との間に断熱材を挟んだ厚み分、壁が分厚くなり室内面積が狭くなる。
【0005】
本発明の目的は、施工の容易な遮熱ボードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の遮熱ボードは、波形板状の遮熱シートと、平板とからなる遮熱ボードであって、遮熱シートは、金属材料を含み、前記遮熱シートと前記平板とは、前記遮熱シートの両面の波形の頂点で前記平板と接着され空気層を形成し、前記遮熱シートと前記平板とは、セラミックビーズを混合した接着剤により接着される。
【0007】
上記構成によれば、本発明の遮熱ボードを用いることで、取り扱いや施工が容易であるということを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決する本発明の遮熱ボードは、前記遮熱シートの前記波形の凸部の頂点間の間隔は、10mm以上40mm以下であり、前記遮熱シートの前記波形の凹部の頂点から前記波形の凸部の頂点間の距離は、10mm以上200mm以下である。
【0009】
上記構成によれば、本発明の遮熱ボードを用いることで、厚みが薄いので室内面積を狭めることがないということを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する本発明の遮熱ボードは、断熱素材からなるシートの両面にアルミ材料からなるアルミ層を形成し、前記平板は、樹脂材料からなる。
【0011】
上記構成によれば、本発明の遮熱ボードを用いることで、取り扱いや施工が容易であるということを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の遮熱ボードは、厚みが薄く取り扱いや施工が容易である。また、遮熱ボードの厚みが薄いので室内面積を狭めることがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一つの実施形態による遮熱ボードの全体を示す斜視図である。
図2】本発明の一つの実施形態による遮熱ボードの拡大図である。
図3】(a)は試験1の結果の一例を示すグラフ、(b)は試験2の結果の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の遮熱ボードの好ましい実施の形態を説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0015】
図1は、遮熱ボード10全体の斜視図を示す。遮熱ボード10は、2枚の平板11a、11bと、その間に設置された波板12からなる。
【0016】
波板12は、波形板状の遮熱材料からなる。波板12は、金属材料を含む。金属材料は、防錆性及び、コストなどの面からアルミニウムが適する。金属材料は、外部からの輻射熱を反射し、遮熱性を有していれば特に限定されるものではなく、鉄、銅、ステンレス、チタンなどの金属単体および合金といった他の任意の材質とすることもできる。
波板12は、シート状の断熱素材の両面に金属材料の薄膜からなる層を形成した遮熱シートであってもよい。形態は、蒸着、箔、板状など特に限定されるものではないが可撓性があることが好ましい。
【0017】
本実施形態の波板12は、シート状の断熱素材の表面にアルミニウムの薄膜(以下、アルミ層という。)を形成した遮熱シートである。シート状の断熱素材としては、樹脂、ガラス繊維を原料として生成されたシートを用いることができる。本実施形態のアルミ層を積層するシート状の断熱素材は、ガラスメッシュファイバーである。ガラスメッシュファイバーは、可撓性が高い材料である。
【0018】
アルミ層は、アルミニウムの薄膜を断熱素材からなるシートの表面に蒸着させて形成してもよい。また、断熱素材からなるシートにアルミ箔を融着して形成してもよい。一般に、アルミ層が多いほど遮熱作用により断熱効果が向上する。このような作用効果を考慮しつつ、建築物の条件に合わせてアルミ層の積層数や積層構造を柔軟に設定することができる。本実施形態では、アルミ層は、アルミ箔を接着剤を用いて断熱素材であるガラスメッシュファイバーからなるシートの両面に積層している。本実施形態では、アルミ層の表面に、さらに被覆層を設置することにより、腐食防止を図っている。波板12は、本実施形態では、厚さが0.23mm程度である。
【0019】
平板11は、塩化ビニル(PCV)シートである。遮熱ボード10の室内側に面する平板11bの表面には、印刷や加工により装飾処理が施されたプリント層を形成してもよい 。遮熱ボード10の室内側に面する平板11bの表面には、プリント層に限らず、紙クロスやビニールクロス等の内装材を取り付けることも可能である。平板の材質はPCVシートが適するが、特に限定されるものではなく、樹脂、金属などの任意の材質とすることもできる。
【0020】
波板12と平板11aとの間及び、波板12と平板11bとの間には空気層が形成される。具体的には、平板11aに向かって突出する波板12の凸部の頂点と平板11aとが接する面で接着され、空気層が形成される。平板11bに向かって突出する波板12の凸部の頂点と平板11bとが接する面で接着され、空気層が形成される。空気層は、遮熱性を向上させるためのものである。
【0021】
本実施形態の遮熱ボード10を、建築物に施工した際に、波板12の屋外側に向かって突出する凸部は外壁材等からの伝導熱を阻止する。波板12の屋外側に対して凹む凹部は空気層があるため、外壁材等から放射される輻射熱を反射する。
【0022】
接着剤として市販の接着剤を使用することができる。接着材料には、一定割合のセラミックビーズを混合させ、断熱性能を高める。セラミックビーズの割合は必要に応じて調整することができる。
【0023】
波板12の波の凸部の頂点から隣接する凸部の頂点までの幅間隔は、波板12が折り曲げ可能な幅の範囲であることが好ましい。一例では、波板12の波の凸部の頂点間の間隔は、10mm程度以上40mm程度以下である。波板12の波の凹部の頂点から隣接する凸部の頂点までの距離Wは、波板12が折り曲げ可能な範囲であることが好ましい。波板12の波の凹部の頂点から隣接する凸部の頂点までの距離Wは、10mm以上であることが好ましい。波板12の波の凹部の頂点から隣接する凸部の頂点までの距離Wは、200mm以下であることが好ましい。波板12の波の凹部の頂点から隣接する凸部の頂点までの距離Wが、10mm以上であれば、遮熱ボードの断熱性能が効果的に高めることができる。波板12の波の凹部の頂点から隣接する凸部の頂点までの距離Wが、200mm以下であれば、遮熱ボードを施工した際に、遮熱ボードの厚み分、壁が分厚くなり室内面積が狭くなることを防止できる。
【0024】
遮熱ボードは、建物部材間に配置可能な形状及び寸法である。遮熱ボードの寸法は、一般的な石膏ボードと同じく、幅910mm、高さ1820mm程度であることが好ましい。遮熱ボードは、必要に応じて外周を囲む周枠を設けてもよい。
【0025】
遮熱ボードは、上記に限定されず他の形状や寸法とすることもできる。遮熱ボードは、寸法の小さい略矩形でもよい。一例では、幅360mm、高さ360mm程度である。遮熱ボードの形状や寸法をコンパクトにすることにより、施工現場の状況に応じた縦方向及び、横方向の選択が可能となり、施工する際の自由度が向上する。
【0026】
以下、本発明の遮熱ボードの断熱効果について行った試験について具体的に説明する。
【0027】
遮熱ボード10を用いた断熱効果を評価する試験1および試験2を実施した。試験1では、石膏ボードと、本発明の遮熱ボード10Aとにおいての、断熱効果を、経過時間と温度差との関係で確認した。遮熱ボード10Aは、遮熱シートの波の幅間隔が20mmである。試験2では、本発明の遮熱ボード10Bと、本発明の遮熱ボード10Cとにおいての、断熱効果を、経過時間と温度差 との関係で確認した。遮熱ボード10Bは、遮熱シートの波の幅間隔が10mm、遮熱ボード10Cは遮熱シートの波の幅間隔が40mmである。
【0028】
(試験1)
試験1の詳細について説明する。試験1の条件は次のとおりである。石膏ボードは市販品で、アルミニウム等の遮熱材は施されていない。石膏ボードの大きさは、幅200mm、高さ300mm、厚み10mm程度である。遮熱ボード10Aの大きさは、幅200mm、高さ300mm、厚み10mm程度、波の幅間隔は20mmである。
【0029】
石膏ボード及び、遮熱ボード10Aの建築物に施工する際の屋外側を、遠赤外線ヒーターに対面させ、夫々のボードの室内側の面の温度を測定した。測定は、接触式白金抵抗温度計で行い、夫々のボードの室内側の面に設置した。具体的には、遠赤外線ヒーターの前面150mmの位置に、石膏ボードと遮熱ボード10Aとを並べて設置した。石膏ボードと遮熱ボード10Aの背面(ヒーターの反対側)の温度を測定した。
【0030】
図3(a)は試験1における測定時間と被検体の表面温度との関係を示す。グラフのX軸は温度を示す。グラフのY軸は時間を示す。グラフ中に示した「S」は石膏ボードの温度、「10A」は遮熱ボード10Aの温度である。時間が0の場合の温度は22度である。測定開始からの経過時間が5分未満の場合、石膏ボードの表面温度が、遮熱ボード10の表面温度と比較して僅かに低い。測定開始から5分経過後、石膏ボードの表面温度が、遮熱ボード10Aの表面温度と比較すると急激に増加している。その後、遮熱ボード10Aの表面温度が、石膏ボードの表面温度と比較して低い状態で維持されている。石膏ボードと遮熱ボード10Aの温度差は、最大13.5℃であった。
【0031】
試験1によれば、石膏ボードに比べて、遮熱ボード10Aの表面温度が低く、断熱の効果が大きいことが解る。遮熱ボード10Aに施されたアルミの遮熱シート12が温度の上昇を抑えていると推測される。
【0032】
(試験2)
試験2の詳細について説明する。試験2の条件は次のとおりである。遮熱シート12の波の幅間隔の異なる遮熱ボード10B及び、遮熱ボード10Cの表面温度を比較した。夫々の遮熱ボード10の大きさは、幅200mm、高さ300mm、厚み10mm程度である。遮熱ボード10Bの波の幅間隔は10mm、遮熱ボード10Cの波の幅間隔は40mmである。試験2の手順は、試験1の手順と同様である。
【0033】
図3(b)は試験2における測定時間と被検体の表面温度との関係を示す。グラフのX軸は温度を示す。グラフのY軸は時間を示す。グラフ中に示した「10B」は遮熱ボード10Bの温度、「10C」は遮熱ボード10Cの温度である。時間が0の場合の温度は18度である。測定開始から、ボード10Bの表面温度が、遮熱ボード10Cの表面温度と比較すると増加率が多い。その後も、遮熱ボード10Cの表面温度が、遮熱ボード10Bの表面温度と比較して低い状態で維持されている。遮熱ボード10Bの表面温度と、遮熱ボード10Cとの温度差は、最大10℃であった。
【0034】
試験2によれば、遮熱ボード10Bに比べて 、遮熱ボード10Cの表面温度が低く、断熱の効果が大きいことが解る。遮熱シート12の波の幅間隔が10mmの場合と比較して、波の幅間隔比が40mmの場合の遮熱ボードの表面温度が大きく抑えられている。遮熱ボード10に施された遮熱シート12の波の幅間隔が大きい程、遮熱ボードの表面温度の上昇を抑えていると推測される。
【0035】
(実施形態2)
本発明の第2の実施の形態を説明する。なお、実施形態2では、先に説明した実施形態1に含まれる構成とは異なる構成のみを説明する。実施形態1において説明された構成は、実施形態2にもすべて含まれ得る。また、実施形態1において記載された用語の定義は、実施形態2においても同じである。
【0036】
本実施形態における遮熱ボード20の平板11は、不燃性の発泡スチロールの板の両面にアルミ層を形成している。アルミ層は、アルミ箔を接着剤を用いて不燃性の発泡スチロールの板の両面に積層している。不燃性の発泡スチロールは、軽くて割れにくく断熱効果も高い。
【0037】
本実施形態における波板12は、波形板状の遮熱材料からなる。波板12は、金属材料を含む。金属材料は、防錆性及び、コストなどの面からアルミニウムが適する。金属材料は、外部からの輻射熱を反射し、遮熱性を有していれば特に限定されるものではなく、鉄、銅、ステンレス、チタンなどの金属単体および合金といった他の任意の材質とすることもできる。波板12は、シート状の断熱素材の両面に金属材料の薄膜からなる層を形成した遮熱シートであってもよい。形態は、蒸着、箔、板状など特に限定されるものではないが可撓性があることが好ましい。
【0038】
上記実施の形態に示された遮熱ボードは本発明に関する遮熱ボードの一例である。上記実施の形態は本発明を制限しない。本発明に関する遮熱ボードは上記実施の形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る 。その一例は、実施の形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または 、実施の形態に新たな構成を付加した形態である。
【符号の説明】
【0039】
10 遮熱ボード
10A 遮熱ボード(波幅間隔20mm)
10B 遮熱ボード(波幅間隔10mm)
10C 遮熱ボード(波幅間隔40mm)
11 平板
11a 平板(室外側)
11b 平板(室内側)
12 波板(遮熱シート)
13 空気層
図1
図2
図3