(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082531
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】ケミカルルーピング燃焼システム
(51)【国際特許分類】
C01B 32/50 20170101AFI20240613BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
C01B32/50
B01D53/04
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196445
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100182718
【弁理士】
【氏名又は名称】木崎 誠司
(72)【発明者】
【氏名】佐山 勝悟
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀明
(72)【発明者】
【氏名】青木 正和
(72)【発明者】
【氏名】馬場 直樹
【テーマコード(参考)】
4D012
4G146
【Fターム(参考)】
4D012BA02
4D012CA01
4D012CA20
4D012CB16
4D012CD04
4D012CD07
4D012CG01
4D012CK01
4G146JA02
4G146JB02
4G146JC03
4G146JC07
4G146JC08
4G146JC14
4G146JC27
4G146JC36
4G146JD03
4G146JD06
(57)【要約】
【課題】ケミカルルーピング燃焼システム全体のエネルギ効率を向上させる。
【解決手段】ケミカルルーピング燃焼システムは、空気を用いて、金属粒子を酸化させる空気塔と、炭化水素が燃料として供給されると共に、空気塔から酸化された金属粒子および窒素を含むガスが供給され、燃料を用いて金属粒子を還元して二酸化炭素を含む混合ガスを排出する燃料塔と、混合ガスに含まれる二酸化炭素と窒素とを分離して、二酸化炭素を取り出す分離器と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケミカルルーピング燃焼システムであって、
空気を用いて、金属粒子を酸化させる空気塔と、
炭化水素が燃料として供給されると共に、前記空気塔から酸化された金属粒子および窒素を含むガスが供給され、前記燃料を用いて金属粒子を還元して二酸化炭素を含む混合ガスを排出する燃料塔と、
前記混合ガスに含まれる二酸化炭素と窒素とを分離して、二酸化炭素を取り出す分離器と、
を備える、ケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項2】
請求項1に記載のケミカルルーピング燃焼システムであって、さらに、
前記燃料塔から排出される前記混合ガスが供給され、前記混合ガスを介して、前記燃料塔内で発生する熱を回収する熱交換器と、
前記熱交換器により熱が回収された前記混合ガスに含まれる水を除去する脱水器と、を備え、
前記分離器は、前記熱交換器により回収された熱を利用して、前記脱水器により水が除去された前記混合ガスに含まれる二酸化炭素と窒素とを分離する、ケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項3】
請求項2に記載のケミカルルーピング燃焼システムであって、
前記燃料塔には、前記燃料に加えてさらに酸素を含むガスが供給される、ケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項4】
請求項2に記載のケミカルルーピング燃焼システムであって、さらに、
前記空気塔の下流側、かつ、前記燃料塔の上流側に配置されたループシールであって、前記空気塔から前記燃料塔への窒素の流入を抑制し、酸素を含むガスが供給されるループシールを備える、ケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項5】
請求項4に記載のケミカルルーピング燃焼システムであって、
前記脱水器は、
温度スイング式の脱水器であり、
前記熱交換器により回収された熱を利用して、前記混合ガスに含まれる水を除去する、ケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項6】
請求項3から請求項5までのいずれか一項に記載のケミカルルーピング燃焼システムであって、さらに、
前記空気塔に要求される要求発熱量を取得し、前記要求発熱量を取得すると、前記燃料塔に供給される酸素を含むガスとしての空気の流量を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記要求発熱量がW
AR(kW)であり、前記燃料の低位発熱量がLHV
fuel(kJ/mol)であり、前記空気塔における酸化反応時の酸素1mol当たりの発熱量がΔh
AR(kJ/mol)であり、前記燃料塔における還元反応時の前記燃料1mol当たりの吸熱量がΔh
FR(kJ/mol)であり、空気中の酸素濃度がX
O2である場合に、前記燃料塔に供給される酸素を含むガスの流量を、下記式(1)で算出される流量Q
air_
FRの30%以上300%以下になるように制御する、ケミカルルーピング燃焼システム。
【数11】
【請求項7】
請求項6に記載のケミカルルーピング燃焼システムであって、さらに、
前記燃料塔内の温度を取得する温度取得部を備え、
前記制御部は、前記温度取得部により取得された温度に応じて、前記燃料塔に供給される空気の流量Qair_FRを制御する、ケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項8】
請求項7に記載のケミカルルーピング燃焼システムであって、
前記制御部は、
前記燃料塔内の目標温度から、前記温度取得部により取得された温度を差し引いた差がゼロ以上の場合に、前記差に予め設定された定数を乗じた流量Qair_FRの空気を前記燃料塔に供給されるように制御し、
前記差が負の場合には、前記燃料塔に酸素を含むガスが供給されないよう制御する、ケミカルルーピング燃焼システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケミカルルーピング燃焼システムに関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素を本質的に分離可能なケミカルルーピング燃焼システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたシステムでは、固体酸素キャリアとしての金属が空気反応器で空気中の酸素と反応して酸化され、酸化された金属が燃料反応器で燃料により還元された後、再び空気反応器で酸化される。燃料反応器からは、二酸化炭素および水蒸気を含む煙道ガスが排出される。煙道ガス中の水蒸気は冷却や凝縮によって二酸化炭素から分離される。分離された二酸化炭素に対して、液化または圧縮が行われる。非特許文献1には、混合ガス中の二酸化炭素を吸着して、二酸化炭素を分離する吸着材としてのゼオライトについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Joe McEwen, Jim-Dario Hayman, and A. Ozgur Yazaydin. "A comparative study of CO2, CH4 and N2 adsorption in ZIF-8, Zeolite-13X and BPL activated carbon." Chemical Physics volume 412, 1 February 2013, Pages 72-76
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたシステムでは、燃料反応器から排出された煙道ガス中に含まれる硫黄酸化物や窒素酸化物などは、煙道ガスが汚染物質除去装置に供給することにより除去されている。しかしながら、特許文献1には、空気反応器で供給される空気中に含まれる窒素の除去については何ら言及されていない。一方で、空気反応器から燃料反応器への流入する窒素を抑制して、燃料反応器から排出される煙道ガス中に含まれる二酸化炭素の濃度を向上させるために、空気反応器と燃料反応器との間にループシールを備えるケミカルルーピング燃焼システムが知られている。しかしながら、ループシールによる完全なガスシールは困難である。燃料反応器への窒素の漏れ出しを最小限に防ぐためには、ループシール内の金属粒子を増加させる必要がある。しかしながら、ループシールを増加させるためにループシールを大型化すると、空気反応器で昇温した金属粒子が燃料反応器まで移動に要する時間が長くなる。この結果、システム内を移動中の金属粒子の放熱損失が増加し、失った分の熱量を燃料反応器内で加熱する必要があるため、ケミカルルーピング燃焼システムのエネルギ効率が低下する。非特許文献1には、ゼオライトの吸着性能について開示されているが、ケミカルルーピング燃焼システムについては言及されていない。
【0006】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、ケミカルルーピング燃焼システム全体のエネルギ効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。
【0008】
(1)本発明の一形態によれば、ケミカルルーピング燃焼システムが提供される。このケ
ミカルルーピング燃焼システムは、空気を用いて、金属粒子を酸化させる空気塔と、炭化水素が燃料として供給されると共に、前記空気塔から酸化された金属粒子および窒素を含むガスが供給され、前記燃料を用いて金属粒子を還元して二酸化炭素を含む混合ガスを排出する燃料塔と、前記混合ガスに含まれる二酸化炭素と窒素とを分離して、二酸化炭素を取り出す分離器と、を備える。
【0009】
この構成によれば、分離器により燃料塔から排出される混合ガス中の二酸化炭素と窒素とが分離されるため、燃料塔に窒素が流入することを抑制する装置(例えば、大型化したループシールなど)を備えなくてもよい。この結果、これらの装置を通過することにより発生する金属粒子の熱損失を抑制できるため、本構成では、システム全体のエネルギ効率が向上する。
【0010】
(2)上記態様のケミカルルーピング燃焼システムにおいて、さらに、前記燃料塔から排出される前記混合ガスが供給され、前記混合ガスを介して、前記燃料塔内で発生する熱を回収する熱交換器と、前記熱交換器により熱が回収された前記混合ガスに含まれる水を除去する脱水器と、を備え、前記分離器は、前記熱交換器により回収された熱を利用して、前記脱水器により水が除去された前記混合ガスに含まれる二酸化炭素と窒素とを分離してもよい。
脱水器により混合ガス中の水を除去するために、燃料塔から排出される混合ガスが冷却される。その結果、混合ガスの顕熱が廃熱として捨てられていた。本構成では、混合ガスの廃熱が分離器による二酸化炭素と窒素との分離に利用されるため、システム全体のエネルギ効率が向上する。
【0011】
(3)上記態様のケミカルルーピング燃焼システムにおいて、前記燃料塔には、前記燃料に加えてさらに酸素を含むガスが供給されてもよい。
燃料塔における金属粒子の還元反応は、吸熱反応または発生する熱量が小さい発熱反応である。この構成によれば、燃料塔に酸素を含むガスが供給されることにより、供給された酸素と、還元済の金属粒子とが酸化反応し、燃料塔内の温度が上昇する。これにより、燃料塔内の温度が還元反応に適した温度まで上昇し、還元反応が促進される。さらに、燃料塔内の金属粒子と酸素との反応熱は、直接燃料塔内の昇温に利用される。そのため、燃料塔を外部から加熱する場合と比較して、少ないエネルギで燃料塔を加熱できる。
【0012】
(4)上記態様のケミカルルーピング燃焼システムにおいて、さらに、前記空気塔の下流側、かつ、前記燃料塔の上流側に配置されたループシールであって、前記空気塔から前記燃料塔への窒素の流入を抑制し、酸素を含むガスが供給されるループシールを備えていてもよい。
この構成によれば、空気塔と燃料塔との間に配置されたループシールに酸素を含むガスが供給される。ループシールに供給された酸素は、空気塔と燃料塔との両方に流入する。この結果、空気塔に流入する酸素が、空気塔からループシールに流入しようとする窒素を抑制するため、燃料塔に窒素が流入することを抑制できる。また、ループシールから燃料塔へと流入した酸素は、還元された金属原子と酸化反応することにより発熱する。これにより、分離器によるN2を分離するためのエネルギが減少し、かつ、少ないエネルギで燃料塔内を加熱できるため、システム全体のエネルギ効率をさらに向上させることができる。
【0013】
(5)上記態様のケミカルルーピング燃焼システムにおいて、前記脱水器は、温度スイング式の脱水器であり、前記熱交換器により回収された熱を利用して、前記混合ガスに含まれる水を除去してもよい。
この構成によれば、分離器に加えて脱水器も熱交換器により回収された熱を利用可能である。そのため、分離器と脱水器とのそれぞれで利用される熱を制御することにより、シ
ステム全体のエネルギ効率をさらに向上させることができる。
【0014】
(6)上記態様のケミカルルーピング燃焼システムにおいて、さらに、前記空気塔に要求される要求発熱量を取得し、前記要求発熱量を取得すると、前記燃料塔に供給される酸素を含むガスとしての空気の流量を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記要求発熱量がW
AR(kW)であり、前記燃料の低位発熱量がLHV
fuel(kJ/mol)であり、前記空気塔における酸化反応時の酸素1mol当たりの発熱量がΔh
AR(kJ/mol)であり、前記燃料塔における還元反応時の前記燃料1mol当たりの吸熱量がΔh
FR(kJ/mol)であり、空気中の酸素濃度がX
O2である場合に、前記燃料塔に供給される酸素を含むガスの流量を、下記式(1)で算出される流量Q
air_
FRの30%以上300%以下になるように制御してもよい。
【数1】
この構成によれば、燃料塔に供給される酸素を含む空気の流量が流量Q
air_
FRの30%以上300%以下である。空気の流量Q
air_
FRの上限値が300%であるため、燃料塔から排出される混合ガス中の二酸化濃度が30%未満になることを抑制できる。分離器は、混合ガス中の二酸化濃度が低下するほど、窒素を分離するために必要なエネルギが急増する。本構成では、混合ガス中の二酸化濃度が30%以上であるため、分離に必要なエネルギを抑制できる。また、本構成では、燃料塔に供給される酸素の流量が過小であると、燃料塔内における酸素と金属粒子との酸化反応による効果が抑制される。しかしながら、燃料塔に供給される空気の流量の下限値が流量Q
air_
FRの30%として制御されることにより、燃料塔内における酸化反応による反応熱を十分に得られる。
【0015】
(7)上記態様のケミカルルーピング燃焼システムにおいて、さらに、前記燃料塔内の温度を取得する温度取得部を備え、前記制御部は、前記温度取得部により取得された温度に応じて、前記燃料塔に供給される空気の流量Qair_FRを制御してもよい。
この構成によれば、温度取得部により取得された温度を用いて、燃料塔に供給される空気の量が制御される。空気に含まれる酸素と金属粒子との酸化反応により燃料塔内の温度が上昇するため、供給される空気の流量が制御されることで、燃料塔内の温度を制御できる。燃料塔内の温度が還元反応および酸化反応に適した温度に制御されることにより、システム全体のエネルギ効率を向上させることができる。
【0016】
(8)上記態様のケミカルルーピング燃焼システムにおいて、前記制御部は、前記燃料塔内の目標温度から、前記温度取得部により取得された温度を差し引いた差がゼロ以上の場合に、前記差に予め設定された定数を乗じた流量Qair_FRの空気を前記燃料塔に供給されるように制御し、前記差が負の場合には、前記燃料塔に酸素を含むガスが供給されないよう制御してよい。
この構成によれば、目標温度よりも燃料塔内の温度が低い場合に、燃料塔に供給される空気の流量が増加する。この結果、燃料塔内の温度が目標温度よりも低い場合には、燃料塔内に増加して供給される空気中の酸素が金属粒子と酸化反応することにより、燃料塔内の温度が上昇する。一方で、燃料塔内の温度が目標温度よりも高い場合には、燃料塔内への空気の供給を停止する。この結果、燃料塔内での酸化反応が減少して燃料塔内の温度が低下する。すなわち、本構成では、目標温度に近づくように燃料塔内に供給される空気の流量が制御されるため、目標温度を基準として、システム全体のエネルギ効率を向上させることができる。
【0017】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、ケミカルルーピン
グ燃焼システム、ケミカルルーピング燃焼装置、ケミカルルーピング燃焼方法、およびこれらの装置を備えるシステム、これら装置を実行するためのコンピュータプログラム、このコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、コンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態としてのケミカルルーピング燃焼システムの概略ブロック図である。
【
図2】混合ガス中のCO
2濃度に応じて変化するゼオライトのCO
2吸着量の説明図である。
【
図4】比較例のケミカルルーピング燃焼システムの概略ブロック図である。
【
図5】第2実施形態のケミカルルーピング燃焼システムの概略ブロック図である。
【
図6】第3実施形態のケミカルルーピング燃焼システムの概略ブロック図である。
【
図7】第4実施形態のケミカルルーピング燃焼システムの概略ブロック図である。
【
図8】第6実施形態のケミカルルーピング燃焼システムの概略ブロック図である。
【
図9】第7実施形態のケミカルルーピング燃焼システムの概略ブロック図である。
【
図10】第8実施形態のケミカルルーピング燃焼システムの概略ブロック図である。
【
図11】第9実施形態のケミカルルーピング燃焼システムの概略ブロック図である。
【
図12】燃料塔に供給される空気の流量の制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
図1は、本発明の一実施形態としてのケミカルルーピング燃焼システム(以降、単に、「燃焼システム」とも言う)100の概略ブロック図である。従来のケミカルルーピング燃焼システムでは、金属粒子mgを酸化させる空気塔10と、金属粒子mgを還元する燃料塔20との間に配置された空気塔側ループシール部(ループシール)60により空気塔10から燃料塔20へと流入する窒素を抑制して、燃料塔20から高純度の二酸化炭素(CO
2)が回収されていた。それに対して、本実施形態では、燃焼システム100の最大のメリットは、熱の利用先に二酸化炭素を供給せずに済むことであり、高純度のCO
2が得られることを副次的効果としてとらえる。すなわち、空気塔10にCO
2が含まれることは問題であるが、燃料塔20に窒素(N
2)が含まれることは本質的な問題ではないという考えから、燃焼システム100全体のエネルギ効率を向上させる。
【0020】
本実施形態の燃焼システム100は、空気塔10から燃料塔20への一定流量のN2の流入を許容し、燃料塔20から得られるCO2を含む混合ガスから分離器50によってN2とCO2とを分離する。分離器50は、燃料塔20の廃熱を利用して混合ガス中のN2とCO2とを分離することにより、空気塔側ループシール部60の大型化が抑制され、燃焼システム100全体のエネルギ効率が向上する。
【0021】
燃焼システム100内には、空気塔10内での酸化と、燃料塔20内での還元とを繰り返して、空気中の酸素(O
2)を空気塔10から燃料塔20へと運ぶ金属粒子mgが循環している。本実施形態では、金属粒子mgとしてFeTiO
3を用いた例について説明する。金属粒子mgの粒径は、50mm以上250mm以下である。
図1に示されるように、第1実施形態の燃焼システム100は、空気塔10と、燃料塔20と、空気塔側ループシール部60と、燃料塔側ループシール部70と、サイクロン15と、熱交換器30と、脱水器40と、分離器50と、ヒータ25と、を備えている。
【0022】
空気塔10は、O
2を含む空気を用いて、下記式(2)に示される反応を生じさせてFeTiO
3を酸化させる。式(2)の酸化反応により熱が生じて、空気塔10内のガスが暖められ、空気塔10内はおよそ摂氏1000度(℃)まで加熱される。
【数2】
【0023】
空気塔10は、
図1に示されるように、鉛直方向に延びる筒状の形状を有している。空気塔10内の鉛直下方には、シール10Sが設けられている。シール10Sは、複数の細かい穴が開いた部材である。シール10Sにより、空気塔10の鉛直下方から供給される空気が空気塔10内に流入して金属粒子mgを鉛直上方に運ぶ。一方で、シール10Sに設けられた穴の大きさは金属粒子mgよりも小さいため、金属粒子mgがシール10Sを通過して空気塔10から漏れ出すことを防止する。なお、空気塔10内の鉛直上方へと向かうガス流速は、重力とガス流れによる抗力が釣り合う終端速度、または、終端速度以上の速度に設定されている。
【0024】
空気塔10内で酸化された金属粒子mgは、配管を介して接続されているサイクロン15内に流入する。サイクロン15は、遠心力を利用して金属粒子mgと、加熱されたガスとを分離する。
図1に示されるように空気塔10内で加熱されたガスは、サイクロン15の鉛直上方から流出して熱利用先へと供給される。熱利用先に供給されるガスの組成は、空気塔10内における金属粒子mgの酸化によりO
2が減少しているため、ほとんどがN
2で構成されている。サイクロン15内でガスと分離された金属粒子mgは、
図1に示されるように、サイクロン15の中心部分に設けられた鉛直下方に延びる配管内を通って、空気塔側ループシール部60へと移動する。
【0025】
空気塔側ループシール部60は、
図1に示されるように、空気塔10の下流側、かつ、燃料塔20の上流側に配置されている。空気塔側ループシール部60の鉛直下方には、シール60Sが設けられている。シール60Sは、複数の細かい穴が開いた部材である。シール60Sに形成された細かい穴は、金属粒子mgの粒径よりも小さい。そのため、
図1に示されるように、シール60Sの上面には複数の金属粒子mgで形成された粒子層(ハッチングが施された部分)が形成されている。ここで水蒸気を用いるのは、水蒸気が燃料塔20に流入しても、熱交換器30と脱水器40により除去できるためである。
【0026】
空気塔側ループシール部60では、シール60Sの鉛直下方から水蒸気が供給される。供給された水蒸気は、シール60Sを通過して、空気塔側ループシール部60の下流側に接続されている燃料塔20に流入する。シール60Sの下方から空気塔側ループシール部60内に水蒸気が供給されるため、
図1中で矢印により流れの向きが示されるN
2を主成分とするガスが、粒子層を通過して燃料塔20に流入することが抑制される。しかしながら、一部のN
2を含むガスは、
図1に示されるように金属粒子mgと共に、空気塔側ループシール部60を通過して燃料塔20に流入する。
【0027】
空気塔側ループシール部60と燃料塔20とを接続する配管には、空気塔側ループシール部60から燃料塔20へと流動する流動床が配置されている。流動床の流動により、筒状の空気塔側ループシール部60から排出された金属粒子mgは、燃料塔20へと移動する。
【0028】
燃料塔20は、燃料としてのメタン(CH
4)が供給されると共に、空気塔10から酸化された金属粒子mgおよびN
2を含むガスが供給される。燃料塔20は、メタンを用いて金属粒子mgを還元してCO
2を含む混合ガスを排出する。燃料塔20は、
図1に示さ
れるように、鉛直方向に延びる筒状の形状を有している。燃料塔20内の鉛直下方には、シール20Sが設けられている。シール20Sは、複数の細かい穴が開いた部材である。燃料塔20では、シール20Sの下方から気体の燃料が供給される。なお、燃料塔20内のガス流速は、終端速度よりも遅い速度に設定され、燃料塔20の情報から金属粒子mgが飛び出さないように制御されている。
【0029】
燃料としてのCH4が供給された燃料塔20内では、上記式(2)で示される空気塔10内で酸化された金属粒子mgである4Fe2TiO5が、下記式(3)で示されるようにCH4により還元されてFeTiO3に変化し、CO2を発生させる。下記式(3)で表される還元反応は、吸熱反応である。
【0030】
【0031】
上記式(2)で表される空気塔10内の酸化反応と、上記式(3)で表される燃料塔20内の還元反応との和を取ると、空気塔10および燃料塔20で行われる反応は、下記式(4)に示される燃料であるメタンの燃焼と同じ反応である。すなわち、燃焼システム100で得られる熱の総量(空気塔10の発熱と燃料塔20の吸熱との和)は、燃料であるCH
4の燃焼と同一である。
【数4】
【0032】
図1に示されるように、燃料塔20内における還元反応により生成されたCO
2を含む混合ガスは、燃料塔20の鉛直上方から流出して熱交換器30へと送られる。なお、熱交換器30に供給される混合ガスの詳細については後述する。燃料塔20内における還元反応により還元された金属粒子mgは、
図1に示されるように、燃料塔20の中心部分に設けられた鉛直下方に延びる配管内を通って、燃料塔側ループシール部70へと移動する。
【0033】
ヒータ25は、燃料塔20の筒状の外壁に取り付けられている。ヒータ25は、外部電源から供給される電力により昇温して、燃料塔20内を加熱する。上記式(3)で表される還元反応が吸熱反応であるため、ヒータ25は、吸熱反応により降温した燃料体20内を昇温させる。
【0034】
燃料塔20内から金属粒子mgが供給される燃料塔側ループシール部70は、燃料塔20の下流側、かつ、空気塔10の上流側に配置されている。燃料塔側ループシール部70は、空気塔側ループシール部60と同じ構成を有している。燃料塔側ループシール部70の鉛直下方には、シール70Sが設けられている。シール70Sは、複数の細かい穴が開いた部材である。燃料塔側ループシール部70では、シール70Sの鉛直下方から水蒸気が供給される。供給された水蒸気は、シール70Sを通過して、燃料塔側ループシール部70の下流側に接続されている空気塔10に流入する。燃料塔側ループシール部70と空気塔10とを接続する配管には、燃料塔側ループシール部70から空気塔10へと流動する流動床が配置されている。流動床の流動により、筒状の燃料塔側ループシール部70内の金属粒子mgは、空気塔10へと移動する。以上説明したように、金属粒子mgは、空気塔10内で酸化され、燃料塔20内で還元され、空気塔10と燃料塔20との間を循環する。
【0035】
燃料塔20の鉛直上方から排出される混合ガスは、上記式(3)で表される還元反応によって生じたCO2および水蒸気(H2O)と、空気塔側ループシール部60を介して燃料塔20に流入したN2とを含んでいる。本実施形態の燃料塔20内は、還元反応が促進するように約1000℃になるように、ヒータ25により制御されている。そのため、燃料塔20から排出される混合ガスは、約1000℃と高温である。
【0036】
燃料塔20から排出された混合ガスは、
図1に示されるように、熱を回収する熱交換器30へと供給される。熱交換器30は、燃料塔20から供給される混合ガスを介して、燃料塔20内で発生する熱を回収する。熱交換器30は、熱媒体として内部を流れる水を有しており、混合ガスと熱媒体とを熱交換させることにより混合ガスを介して熱を回収する。換言すると、熱交換器30により混合ガスは除熱される。
【0037】
熱交換器30により熱が回収された混合ガスは、脱水器40へと供給される。脱水器40は、熱交換器30により熱が回収された混合ガスに含まれるH
2Oを除去する。そのため、脱水器40から排出される混合ガスには、
図1に示されるように、H
2Oが除去された後のCO
2およびN
2が含まれている。
【0038】
脱水器40から排出された混合ガスは、分離器50に供給される。分離器50は、熱交換器30により回収された熱を利用して、H2Oが除去された混合ガスに含まれるCO2とN2とを分離して、CO2を取り出す温度スイング式の分離器である。分離器50は、複数のシェルアンドチューブ吸着塔で構成されている。それぞれのシェルアンドチューブ吸着塔のチューブ側にはCO2を着脱可能なゼオライトが充填されている。CO2吸着時にゼオライトが約25℃の水で冷却され、CO2脱離時に熱交換器30が回収した熱を用いて加熱する。分離器50は、複数の吸着塔を、吸着を行う吸着塔と、脱離を行う吸着塔とで分けて制御することにより、連続的にCO2とN2とを分離できる。なお、ゼオライトがCO2だけでなく、H2Oも吸着してしまうため、分離器50の上流側に脱水器40が配置されている。
【0039】
分離器50から排出されるN2が分離された混合ガスは、高純度のCO2である。この高温ガスはCO2の利用先に送られる。CO2の利用先としては、例えば、CO2を液化または高圧化して貯蔵する貯蔵タンク等である。
【0040】
図2は、混合ガス中のCO
2濃度に応じて変化するゼオライトのCO
2吸着量の説明図である。
図2には、単位グラム当たりの13型のゼオライトが、混合ガス中のCO
2濃度に応じて吸着するCO
2吸着量の変化が曲線C1として示されている。
図2の横軸は、分離器50の入口に流入する混合ガス中の濃度であり、縦軸は、1グラム当たりのゼオライトに吸着される吸着量(mmol)である。また、
図2には、比較として混合ガス中のCH
4濃度に応じてゼオライトが吸着するCH
4吸着量の変化が曲線C2として示されている。
図2には、比較として混合ガス中のN
2濃度に応じてゼオライトが吸着するN
2吸着量の変化が曲線C3として示されている。
【0041】
図2に示されるように、CO
2,CH
4,N
2のいずれも混合ガス中の濃度が高いほど、ゼオライトの吸着量が増加する。同じ入口濃度におけるCO
2吸着量は、CH
4吸着量とN
2吸着量とのいずれよりもはるかに多い。CH
4吸着量およびN
2吸着量は、入口濃度の増加に伴い、直線的に吸着量が増加する。一方で、曲線C1で表されるCO
2吸着量は、入口濃度が100%から徐々に減少するにつれて、入口濃度が30%ぐらいまではほぼ直線的に減少する。入口濃度が30%未満で、入口濃度の減少量に対するCO
2の吸着量の減少量は、大幅に低下する。このことから、分離器50に供給される混合ガス中のCO
2濃度が30%未満のように極端に小さくない限りは、ゼオライトに十分に吸着されると考えられる。
【0042】
図3は、ケミカルループ燃焼の原理の説明図である。
図3には、比較例の燃料システム100xの概略ブロック図が示されている。比較例の燃料システム100xは、金属粒子を酸化させる空気塔10と、酸化した金属粒子を還元する燃料塔20と、燃料塔20から供給される混合ガス中のH
2Oを除去する脱水器40と、を備えている。なお、
図3では、金属粒子mgとして用いられる金属の原子(または分子)を、Meとして表現している。
【0043】
空気塔10では、空気が供給されて、金属粒子mgの酸化反応による反応熱がCO2を含まない高温のN2として熱利用先に供給される。燃料塔20では、酸化された金属粒子mgがCH4などの燃料に還元されて、還元反応により生成されたCO2を含む混合ガスが脱水器40に供給される。脱水器40で混合ガス中のH2Oが除去されて、高純度のCO2を含む混合ガスがCO2利用先に供給される。
【0044】
<比較例>
図4は、比較例のケミカルルーピング燃焼システム(燃焼システム)100xの概略ブロック図である。
図4に示される比較例の燃焼システム100xは、
図1に示される燃焼システム100と比較して、熱交換器30および分離器50を備えていない。その代わりに、比較例の燃焼システム100xは、実施形態の空気塔側ループシール部60よりも大型の空気塔側ループシール部60xを備えている。
【0045】
比較例の燃焼システム100xでは、燃料塔20から排出される混合ガス中のN2が分離器50により分離されないため、燃料塔20へのN2の流入を抑制する必要がある。そのために比較例の空気塔側ループシール部60xが大型化している。空気塔側ループシール部60xが大型化することにより、空気塔側ループシール部60x内に複数の金属粒子mgにより形成される粒子層が増大する。この結果、増大した粒子層が燃料塔20へと流入するN2を抑制できる。しかしながら、粒子層が増大することにより、サイクロン15から排出された金属粒子mgが燃料塔20に流入するまでの時間は長くなる。そのため、空気塔10の酸化反応により加熱された金属粒子mgの温度は、燃料塔20に流入するまでに下がってしまう。燃料塔20では、金属粒子mgの温度効果分をヒータ25の加熱等により補う必要がある。ヒータ25の加熱等に利用されるエネルギを抑制するため、空気塔側ループシール部60xが小型化され、空気塔側ループシール部60x内に形成される粒子層が小さいことが好ましい。
【0046】
それに対して本実施形態の燃焼システム100は、混合ガスに含まれるCO
2とN
2とを分離して、CO
2を取り出す分離器50を備えている。燃焼システム100では、空気塔10内における金属粒子mgの酸化反応により発生する熱は、
図1に示されるように、CO
2を含まないN
2を介して熱利用先に供給される。熱を供給するガスにCO
2が含まれないため、CO
2が熱の供給先特有の不純物と混合することを抑制し、供給先から二酸化炭素を回収できなくなることを抑制できる。また、本実施形態では、燃料塔20から排出される混合ガス中のN
2が分離器50により分離されるため、燃料塔20に窒素が流入しても高純度のCO
2を回収できる。分離器50により混合ガス中のN
2が分離されるため、比較例の燃料システム100xのように、空気塔側ループシール部60xを大型化する必要がない。この結果、金属粒子mgが空気塔側ループシール部60に滞留する時間を短くでき、金属粒子mgが空気塔10から燃料塔20へと移動する間の放熱損失を抑制できる。そのため、本実施形態の燃焼システム100全体のエネルギ効率を向上させることができる。本実施形態の燃焼システム100は、ケミカルルーピング燃焼システムの最大のメリットは熱供給先にCO
2を供給せずに済むことと考え、空気塔10にCO
2が流入することは問題であるが、燃料塔20にN
2が流入すること自体は問題ではないとの着想から到達したシステムである。本実施形態の燃焼システム100は、単に、N
2を分離するための
分離器50を備えるだけではなく、燃料塔20へのN
2の流入を許容することにより、燃焼システム100全体のエネルギ効率を向上させることができた。
【0047】
また、本実施形態の熱交換器30は、燃料塔20から供給される混合ガスを介して、燃料塔20内で発生する熱を回収する。分離器50は、熱交換器30により回収された熱を利用して、混合ガスに含まれるCO2とN2とを分離し、CO2を取り出す。比較例の燃料システム100xでは、脱水器40によるH2Oの除去のために、脱水器40に供給される高温の混合ガスの熱が捨てられていたが、本実施形態では、混合ガスの廃熱が分離器50のN2分離に利用されている。この結果、本実施形態の燃焼システム100全体のエネルギ効率を向上させることができる。
【0048】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態のケミカルルーピング燃焼システム(燃焼システム)100aの概略ブロック図である。第2実施形態の燃料システム100aでは、第1実施形態の燃焼システム100と比較して、燃料塔20aに燃料のCH
4に加えて更にO
2を含むガスとしての空気が供給される点が異なる。第2実施形態では、第1実施形態と異なる構成について説明し、同じ構成等についての説明を省略する。
【0049】
第2実施形態では、燃料塔20aのシール20Sの下方からCH4と共に空気が供給される。空気が供給されることにより、空気に含まれるO2と、燃料のCH4に還元された金属粒子mgとの酸化反応により発熱する。燃料塔20aに供給される空気に含まれるN2は、空気塔10から燃料塔20aへと流入するN2と同じように、分離器50によりCO2と分離される。
【0050】
以上のように、第2実施形態の燃焼システム100aでは、燃料塔20aに燃料のCH4に加えて更に酸素を含むガスとしての空気が供給される。燃料塔20aにおける金属粒子mgとCH4との還元反応は、吸熱反応である。本実施形態の燃焼システム100aによれば、燃料塔20aにO2を含む空気が供給されることにより、供給された空気中のO2と、還元済の金属粒子mgとが酸化反応し、燃料塔20a内の温度が上昇する。これにより、燃料塔20a内の温度が還元反応に適した温度まで上昇し、還元反応が促進される。さらに、燃料塔20a内の金属粒子mgとO2との反応熱は、直接燃料塔20a内の昇温に利用される。そのため、燃料塔20aをヒータ25により加熱する場合と比較して、少ないエネルギで燃料塔20aを加熱できる。
【0051】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態のケミカルルーピング燃焼システム(燃焼システム)100bの概略ブロック図である。第3実施形態の燃料システム100bでは、第1実施形態の燃焼システム100と比較して、空気塔側ループシール部60bにO
2を含むガスとしての空気が供給される点が異なる。第3実施形態では、第1実施形態と異なる構成について説明し、同じ構成等についての説明を省略する。
【0052】
第3実施形態では、空気塔側ループシール部60bのシール60Sの下方から水蒸気と共に空気が供給される。空気塔側ループシール部60bに空気が供給されると、一部の空気は燃料塔20へと流入し、残りの空気はサイクロン15へと流入する。燃料塔20へと流入する空気中のO2は、第2実施形態で燃料塔20aに供給される空気中のO2と同様に、燃料塔20内で還元された金属粒子mgと反応する。O2と金属粒子mgとの酸化反応の発熱により、燃料塔20内が昇温する。また、このシール60Sの下方から供給された空気は、水蒸気と同じように空気塔10から空気塔側ループシール部60bに流入しようとするN2を抑制するため、燃料塔20にN2が流入することを抑制する。結果として、ここで必要な水蒸気流量を低減でき、水蒸気生成に必要なエネルギ(水を加熱するエネルギ
)を低減できる。
【0053】
以上のように、第3実施形態の燃焼システム100bでは、空気塔側ループシール部60bにO2を含むガスとしての空気が供給される。第3実施形態では、空気塔10と燃料塔20との間に配置された空気塔側ループシール部60bにO2を含む空気が供給される。空気塔側ループシール部60bに供給された空気は、空気塔10と燃料塔20との両方に流入する。この結果、空気塔10に流入する空気が、空気塔10から空気塔側ループシール部60bに流入しようとするN2を抑制するため、燃料塔20にN2が流入することをより少ない水蒸気流量で抑制できる。また、空気塔側ループシール部60bから燃料塔20へと流入した酸素は、還元された金属原子mgと酸化反応することにより発熱する。これにより、分離器50によるN2を分離するためのエネルギが減少し、かつ、水蒸気生成に要するエネルギが減少し、更に、少ないエネルギで燃料塔20内を加熱できるため、燃焼システム100b全体のエネルギ効率をさらに向上させることができる。
【0054】
<第4実施形態>
図7は、第4実施形態のケミカルルーピング燃焼システム(燃焼システム)100cの概略ブロック図である。第4実施形態の燃料システム100cは、第2実施形態の燃焼システム100aと比較して、ヒータ25を備えず、熱交換器30により回収された熱が脱水器40cおよび分離器50cに利用され、燃料塔20aに供給される空気および燃料の流量が制御される点が異なる。第4実施形態では、燃料塔20aに供給される空気および燃料の流量を制御することにより、ヒータ25による加熱分を燃料塔20a内の金属粒子mgの酸化反応の発熱により補う。なお、第4実施形態では、第2実施形態と異なる構成について説明し、同じ構成等についての説明を省略する。
【0055】
第4実施形態の燃焼システム100cは、燃料塔20aに供給される空気と燃料としてのCH4との各流量を制御する制御部80を備えている。制御部80は、マスフローコントローラなどの周知の装置で構成されている。制御部80は、ヒータ25等の外部熱源による燃料塔20aの加熱分を補う熱量を、燃料塔20a内の金属粒子mgの酸化反応の発熱で補う。
【0056】
ここで、空気塔10で1kWの発熱を連続的に得ることを想定する。この場合、燃料塔20でCH
4の流量1.5slmでの金属粒子mgの還元が必要となる。当該流量の還元反応による吸熱量は、0.116kWである。この吸熱量を、燃料塔20a内の金属粒子mgの再酸化により補うためには、流量1.9slmの空気と、流量0.2slmのCH
4とが必要である。燃料塔20a内における具体的な発熱量としては、流量1.9slmの空気による発熱が0.132kWであり、流量0.2slmのCH
4による吸熱が0.016kWであり、差し引き0.116kWの発熱となる。燃料塔20aに、流量1.9slmの空気と、流量0.2slmのCH
4とが供給される場合に、分離器50cに供給されるH
2O除去後の混合ガスの組成は、53%のCO
2と、47%のN
2とで構成される。
図2に示されるゼオライトのCO
2吸着量の曲線C1から、混合ガス中のCO
2の入口濃度が53%であっても、ゼオライトは混合ガス中のCO
2を十分に吸着できることがわかる。すなわち、ヒータ25により燃料塔20aを加熱しなくても、燃料塔20aにおける還元後の金属粒子mgの再酸化を利用することにより、燃料塔20a内の温度を還元反応が発生する温度に制御できる。
【0057】
第4実施形態の脱水器40cは、温度スイング式の脱水器である。また、第4実施形態の分離器50cは、温度スイング式の分離器である。第4実施形態の脱水器40cは、熱交換器30により回収された混合ガスの熱を利用して、混合ガス中のH2Oを除去する。
【0058】
以上のように、第4実施形態では、燃料塔20aを加熱するヒータ25が不要となり、
燃料塔20a内の金属粒子mgの再酸化の発熱により燃料塔20a内が加熱される。さらに、分離器50cに加えて脱水器40cも熱交換器30により回収された熱を利用可能である。そのため、分離器50cと脱水器40cとのそれぞれで利用される熱を制御することにより、燃焼システム100c全体のエネルギ効率をさらに向上させることができる。
【0059】
<第5実施形態>
第5実施形態のケミカルルーピング燃焼システムは、第4実施形態の燃料システム100cと同じ構成を有し、制御部80による制御内容が異なる。そのため、第5実施形態では、第4実施形態と異なる制御部80の制御内容について説明し、その他の構成等の説明を省略する。
【0060】
第5実施形態の制御部80は、熱利用先で必要とされる要求発熱量、すなわち、空気塔10内の金属粒子mgの酸化反応の発熱量WAR(kW)を取得すると、発熱量WARに応じて、O2を含む空気の流量Qair_FR(slm)と、燃料としてのCH4の流量Qfuel_add_AR(slm)とを算出する。制御部80は、算出された空気の流量Qair_FRと、燃料の流量Qfuel_add_ARとのそれぞれの30%以上300%以下の流量を、燃料塔20aに供給するように制御する。
【0061】
空気の流量Q
air_
FRおよび燃料の流量Q
fuel_
add_
ARは、下記式(1),(5)のように表される。なお、下記式(1),(5)では、発熱量LHV
fuel(kJ/mol)、発熱量Δh
AR(kJ/mol)、吸熱量Δh
FR(kJ/mol)、酸素濃度X
O2、およびモル量b(mol/mol)のそれぞれは、下記のように定義されている。
【数5】
【数6】
LHV
fuel:燃料の1mol当たりの発熱量(kJ/mol)
Δh
AR:空気塔10内のO
21mol当たりの酸化反応の発熱量(kJ/mol)
Δh
FR:燃料塔20a内の燃料1mol当たりの還元反応の吸熱量(kJ/mol)
X
O2:空気中の酸素濃度
b:燃料1molを完全燃焼させる際に必要なO
2のモル量(mol/mol)
【0062】
以上のように、第5実施形態では、燃料塔20に供給されるO
2を含む空気の流量が流量Q
air_
FRの30%以上300%以下である。燃料がCH
4である場合に、空気の流量Q
air_
FRの上限値が300%であるため、燃料塔20から排出される混合ガス中のCO
2が30%未満になることを抑制できる。分離器50cに用いられるゼオライトは、混合ガス中のCO
2が30%未満から低下するほど、
図2に示されるように、N
2を分離するために必要なエネルギが急増する。本実施形態では、混合ガス中のCO
2が30%以上であるため、分離に必要なエネルギを抑制できる。また、燃料塔20に供給されるO
2の流量が過小であると、燃料塔20内におけるO
2と金属粒子mgとの酸化反応による効果が抑制される。しかしながら、燃料塔20に供給される空気の流量の下限値が流量Q
air_
FRの30%として制御されることにより、燃料塔20内における酸化反応による反応熱を十分に得られる。
【0063】
<第6実施形態>
図8は、第6実施形態のケミカルルーピング燃焼システム(燃焼システム)100dの概略ブロック図である。第6実施形態の燃料システム100dは、第4実施形態の燃焼システム100cと比較して、熱交換器35と、真空ポンプ55とを備えている点が異なる。第6実施形態では、第4実施形態と異なる構成について説明し、同じ構成等についての説明を省略する。
【0064】
第6実施形態の燃料システム100dは、
図8に示されるように、サイクロン15から排出された高温N
2から熱を回収する熱交換器35と、分離器50cの下流側に配置された真空ポンプ55と、を備えている。本実施形態では、燃料塔20aから混合ガスが供給される熱交換器30が混合ガスから回収する熱が、脱水器40cおよび分離器50cの稼働に必要なエネルギに満たない場合に、熱交換器35が熱利用先に供給される熱の一部を回収して、脱水器40cと分離器50cとの少なくとも一方に供給する。分離器50cのうちの脱離中のゼオライトの脱離速度が不足する場合に、真空ポンプ55による圧力スイングを、温度スイングに併用することにより脱離速度を向上させる。
【0065】
以上のように、第6実施形態の燃焼システム100dでは、熱交換器35による熱利用先に供給される一部の熱の回収および利用と、真空ポンプ55による圧力スイングを併用したN2とCO2との分離とが行われる。これにより、燃焼システム100d全体のエネルギ効率が向上する。なお、他の実施形態の燃料システムは、熱交換器35と、真空ポンプ55との一方を備えていなくてもよい。
【0066】
<第7実施形態>
図9は、第7実施形態のケミカルルーピング燃焼システム(燃焼システム)100eの概略ブロック図である。第7実施形態の燃料システム100eは、第6実施形態の燃焼システム100dと比較して、熱交換器35を備えていない点と、脱水器40eおよび分離器50eが圧力スイング式である点とが異なる。脱水器40eが圧力スイング式であるため、燃焼システム100eは、脱水器40eに接続されている真空ポンプ45を備えている。第7実施形態では、第6実施形態と異なる構成について説明し、同じ構成等についての説明を省略する。
【0067】
第7実施形態の脱水器40eは、外部から供給されるエネルギを用いて稼働する真空ポンプ45による圧力スイング式により、混合ガス中のH2Oを除去している。分離器50eは、圧力スイング式であり、第6実施形態における温度スイング式と圧力スイング式とを併用している分離器とは異なる。第7実施形態の熱交換器30eは、燃料塔20aから供給される混合ガスの熱を回収して、廃熱として燃焼システム100eの外部に捨てている。
【0068】
以上のように、第7実施形態の燃焼システム100eであっても、燃料塔20aから排出される混合ガスの顕熱分のエネルギ損失が、空気塔側ループシール部60の大型化による放熱損失や、ヒータ25の加熱によるエネルギロスよりも小さければ、燃焼システム100e全体のエネルギ効率を向上させることができる。
【0069】
<第8実施形態>
図10は、第8実施形態のケミカルルーピング燃焼システム(燃焼システム)100fの概略ブロック図である。第8実施形態の燃料システム100fは、第7実施形態の燃焼システム100eと比較して、ヒータ25を備える点と、燃料塔20に空気が供給されずに燃料のみが供給される点とが異なる。第8実施形態では、第7実施形態と異なる構成について説明し、同じ構成等についての説明を省略する。
【0070】
第8実施形態の燃料塔20には、O2を含む空気が供給されないため、燃料塔20内で還元された金属粒子mgの再酸化反応が発生しない。その代わりに、外部のエネルギにより昇温するヒータ25によって燃料塔20が加熱される。第8実施形態の燃焼システム100fであっても、燃料塔20aから排出される混合ガスの顕熱分のエネルギ損失と、ヒータ25による加熱に必要なエネルギとの合計が、空気塔側ループシール部60の大型化による放熱損失よりも小さければ、燃焼システム100f全体のエネルギ効率を向上させることができる。
【0071】
<第9実施形態>
図11は、第9実施形態のケミカルルーピング燃焼システム(燃焼システム)100gの概略ブロック図である。第9実施形態のケミカルルーピング燃焼システムでは、第4実施形態の燃料システム100c(
図7)に対して、燃料塔20a内の温度を検出する温度センサ(温度取得部)90を備える点と、制御部80gによる制御内容とが異なる。そのため、第9実施形態では、第4実施形態と異なる構成および制御内容について説明し、その他の構成等の説明を省略する。
【0072】
第9実施形態の制御部80gは、温度センサ90により取得された温度に応じて、燃料塔20aに供給される空気の流量Q
air_
FRを制御する。具体的には、制御部80gは、燃料塔20a内の目標温度がT
tarである場合に、目標温度T
tarから温度センサ90により検出された検出温度T
1を差し引いた温度差ΔTに応じて、空気の流量Q
air_
FRを制御する。温度差ΔTがゼロ以上の場合には、下記式(6)で示される流量Q
air_
FRの空気を燃料塔20aに供給する。なお、下記式(6)におけるkは、予め設定された比例定数である。
【数7】
【0073】
温度差ΔTが負の場合には、制御部80gは、燃料塔20aに供給する空気の流量Qair_FRをゼロに設定する。すなわち、燃料塔20a内の温度が目標温度よりも高い場合には、燃料塔20aに空気が供給されない。
【0074】
図12は、燃料塔20aに供給される空気の流量Q
air_
FRの制御のフローチャートである。
図12に示される制御フローでは、制御部80gは、予め設定された初期流量Q
air_
0の空気を燃料塔20に供給する(ステップS1)。制御部80gは、温度センサ90により検出された燃料塔20a内の検出温度T
1を取得する(ステップS2)。制御部80gは、目標温度T
tarから検出温度T
1を差し引いた温度差ΔTがゼロ以上であるか否かを判定する(ステップS3)。温度差ΔTがゼロ未満であると判定された場合には(ステップS3:NO)、ステップS2以降の処理が繰り返される。
【0075】
温度差ΔTがゼロ以上と判定された場合には(ステップS3:YES)、制御部80gは、上記式(6)で算出される流量Q
air_
FRの空気を供給するように、燃料塔20aへの供給流量を制御する(ステップS4)。その後、ケミカルルーピング燃焼システムの制御を終了するか否かが判定される(ステップS5)。制御の終了判定は、例えば、外部からの制御終了の入力を受け付ける等などにより行われる。制御を終了しないと判定された場合には(ステップS5:NO)、ステップS2以降の処理が繰り返される。制御を終了すると判定された場合には(ステップS5:YES)、ケミカルルーピング燃焼システムの制御が終了する。なお、制御の終了判定は、
図12に示されるいずれかの処理が行われている途中で判定されてもよい。
【0076】
以上のように、第9実施形態の制御部80gは、温度センサ90により取得された温度に応じて、燃料塔20aに供給される空気の流量Qair_FRを制御する。燃料塔20a内では、空気に含まれるO2と金属粒子mgとの酸化反応により燃料塔20a内の温度が上昇する。そのため、供給される空気の流量Qair_FRが制御されることで、燃料塔20a内の温度を制御できる。燃料塔20a内の温度が還元反応および再酸化反応に適した温度に制御されることにより、燃焼システム100g全体のエネルギ効率を向上させることができる。
【0077】
また、第9実施形態の制御部80gは、燃料塔20a内の目標温度Ttarから温度センサ90により検出された検出温度T1を差し引いた温度差ΔTがゼロ以上の場合には、下記式(1)で示される流量Qair_FRの空気を燃料塔20aに供給する。一方で、制御部80gは、温度差ΔTが負の場合には、燃料塔20aに供給する空気の流量Qair_FRをゼロに設定する。本実施形態の燃焼システム100gによれば、目標温度Ttarよりも燃料塔20a内の検出温度T1が低い場合に、燃料塔20aに供給される空気の流量Qair_FRが増加する。この結果、検出温度T1が目標温度Ttarよりも低い場合には、燃料塔20a内に増加して供給される空気中のO2が金属粒子mgと酸化反応することにより、燃料塔20a内の温度が上昇する。一方で、検出温度T1が目標温度Ttarよりも高い場合には、燃料塔20a内への空気の供給を停止する。この結果、燃料塔20a内での酸化反応が減少して燃料塔20a内の温度が低下する。すなわち、本実施形態の燃焼システム100gでは、目標温度Ttarに近づくように燃料塔20a内に供給される空気の流量Qair_FRが制御されるため、目標温度Ttarを基準として、燃焼システム100g全体のエネルギ効率を向上させることができる。
【0078】
<実施形態の変形例>
本発明は上記実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。また、上記実施形態において、ハードウェアによって実現されるとした構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されるとした構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【0079】
上記第1実施形態ないし第9実施形態では、ケミカルルーピング燃焼システムの一例について説明したが、ケミカルルーピング燃焼システムは、空気塔10と、燃料塔20と、分離器50とを備える範囲で変形可能である。例えば、燃焼システム100は、空気塔側ループシール部60や燃料塔側ループシール部70を備えていなくてもよい。空気塔10、空気塔側ループシール部60b(
図6)、および燃料塔20a(
図5)に供給される酸素を含むガスは、酸素を含んでいれば空気以外であってもよい。空気以外が供給される場合に、上記式(1)で示される酸素濃度X
O2が適宜変更されて流量Q
air_
FRとしての酸素を含むガスが、空気の代わりに計算されてもよい。空気塔10は、酸素を含むガスが供給されて、金属粒子mgを酸化させる酸化塔とも換言できる。分離器50に供給される熱は、熱交換器30(
図8)が燃料塔20aから排出される混合ガスから回収した熱ではなく、熱交換器35がサイクロン15から排出された高温N
2ガスから回収した熱だけであってもよい。
【0080】
燃焼システム100を循環する金属粒子mgは、FeTiO
3以外の周知の材料を採用できる。同じように、燃料塔20に供給される燃料は、CH
4以外のC
2H
6やC
3H
8などでもよく、周知の材料を採用できる。例えば、金属粒子mgとしてニッケル(Ni)や銅(Cu)を採用し、燃料としてC
2H
6を採用してもよい。この場合に、燃料塔20内で発生する還元反応は、下記式(7),(8)のように表される。
【数8】
【数9】
【0081】
また、分離器50に充填されたCO2を着脱可能な材料としてのゼオライトは、活性炭等の周知の他の材料を採用できる。上記第5実施形態の式(1)で示される流量Qair_FRの空気は、酸素を含むガスの範囲で変形可能である。同じように、上記式(5)で示される流量Qfuel_add_ARの燃料は、燃料塔20で金属粒子mgを還元可能な燃料の範囲で変形可能である。上記式(1),(5)における各パラメータは、酸素を含むガスおよび燃料に応じて変更されればよい。
【0082】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0083】
本発明は、以下の形態としても実現することが可能である。
[適用例1]
ケミカルルーピング燃焼システムであって、
空気を用いて、金属粒子を酸化させる空気塔と、
炭化水素が燃料として供給されると共に、前記空気塔から酸化された金属粒子および窒素を含むガスが供給され、前記燃料を用いて金属粒子を還元して二酸化炭素を含む混合ガスを排出する燃料塔と、
前記混合ガスに含まれる二酸化炭素と窒素とを分離して、二酸化炭素を取り出す分離器と、
を備える、ケミカルルーピング燃焼システム。
[適用例2]
適用例1に記載のケミカルルーピング燃焼システムであって、さらに、
前記燃料塔から排出される前記混合ガスが供給され、前記混合ガスを介して、前記燃料塔内で発生する熱を回収する熱交換器と、
前記熱交換器により熱が回収された前記混合ガスに含まれる水を除去する脱水器と、を備え、
前記分離器は、前記熱交換器により回収された熱を利用して、前記脱水器により水が除去された前記混合ガスに含まれる二酸化炭素と窒素とを分離する、ケミカルルーピング燃焼システム。
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載のケミカルルーピング燃焼システムであって、
前記燃料塔には、前記燃料に加えてさらに酸素を含むガスが供給される、ケミカルルーピング燃焼システム。
[適用例4]
適用例1から適用例3までのいずれか一項に記載のケミカルルーピング燃焼システムであって、さらに、
前記空気塔の下流側、かつ、前記燃料塔の上流側に配置されたループシールであって、前記空気塔から前記燃料塔への窒素の流入を抑制し、酸素を含むガスが供給されるループ
シールを備える、ケミカルルーピング燃焼システム。
[適用例5]
適用例1から適用例4までのいずれか一項に記載のケミカルルーピング燃焼システムであって、
前記脱水器は、
温度スイング式の脱水器であり、
前記熱交換器により回収された熱を利用して、前記混合ガスに含まれる水を除去する、ケミカルルーピング燃焼システム。
[適用例6]
適用例1または適用例5までのいずれか一項に記載のケミカルルーピング燃焼システムであって、さらに、
前記空気塔に要求される要求発熱量を取得し、前記要求発熱量を取得すると、前記燃料塔に供給される酸素を含むガスとしての空気の流量を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記要求発熱量がW
AR(kW)であり、前記燃料の低位発熱量がLHV
fuel(kJ/mol)であり、前記空気塔における酸化反応時の酸素1mol当たりの発熱量がΔh
AR(kJ/mol)であり、前記燃料塔における還元反応時の前記燃料1mol当たりの吸熱量がΔh
FR(kJ/mol)であり、空気中の酸素濃度がX
O2である場合に、前記燃料塔に供給される酸素を含むガスの流量を、下記式(1)で算出される流量Q
air_
FRの30%以上300%以下になるように制御する、ケミカルルーピング燃焼システム。
【数10】
[適用例7]
適用例1または適用例6までのいずれか一項に記載のケミカルルーピング燃焼システムであって、さらに、
前記燃料塔内の温度を取得する温度取得部を備え、
前記制御部は、前記温度取得部により取得された温度に応じて、前記燃料塔に供給される空気の流量Q
air_
FRを制御する、ケミカルルーピング燃焼システム。
[適用例8]
適用例1または適用例7までのいずれか一項に記載のケミカルルーピング燃焼システムであって、
前記制御部は、
前記燃料塔内の目標温度から、前記温度取得部により取得された温度を差し引いた差がゼロ以上の場合に、前記差に予め設定された定数を乗じた流量Q
air_
FRの空気を前記燃料塔に供給されるように制御し、
前記差が負の場合には、前記燃料塔に酸素を含むガスが供給されないよう制御する、ケミカルルーピング燃焼システム。
【符号の説明】
【0084】
10…空気塔
10S…シール
15…サイクロン
20,20a…燃料塔
20S…シール
25…ヒータ
30,30e,35…熱交換器
40,40c,40e…脱水器
45,55…真空ポンプ
50,50c,50e…分離器
60,60b,60x…空気塔側ループシール部
60S…シール
70…燃料塔側ループシール部
70S…シール
80,80g…制御部
90…温度センサ
100,100a,100b,100c,100d,100e,100f,100g,100x…燃料システム
b…燃料1molを完全燃焼させるために必要なO2のモル量
C1,C2,C3…CO2吸着量の曲線
LHVfuel…燃料1molあたりの発熱量
mg…金属粒子
Qair_FR…空気の流量
Qair_0…空気の初期流量
Qfuel_add_FR…燃料の流量
ΔT…温度差
T1…検出温度
Ttar…目標温度
WAR…酸化反応時の発熱量
XO2…酸素濃度
ΔhAR…O21mol当たりの酸化反応の発熱量
ΔhFR…燃料1mol当たりの還元反応の吸熱量
【手続補正書】
【提出日】2023-10-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケミカルルーピング燃焼システムであって、
空気を用いて、金属粒子を酸化させる空気塔と、
炭化水素が燃料として供給されると共に、前記空気塔から酸化された金属粒子および窒素を含むガスが供給され、前記燃料を用いて金属粒子を還元して二酸化炭素を含む混合ガスを排出する燃料塔と、
前記混合ガスに含まれる二酸化炭素と窒素とを分離して、二酸化炭素を取り出す分離器と、
を備える、ケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項2】
請求項1に記載のケミカルルーピング燃焼システムであって、さらに、
前記燃料塔から排出される前記混合ガスが供給され、前記混合ガスを介して、前記燃料塔内で発生する熱を回収する熱交換器を備え、
前記分離器は、前記熱交換器により回収された熱を利用して、前記混合ガスに含まれる二酸化炭素と窒素とを分離する、ケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項3】
請求項2に記載のケミカルルーピング燃焼システムであって、
前記燃料塔には、前記燃料に加えてさらに酸素を含むガスが供給される、ケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項4】
請求項2に記載のケミカルルーピング燃焼システムであって、さらに、
前記空気塔の下流側、かつ、前記燃料塔の上流側に配置されたループシールであって、前記空気塔から前記燃料塔への窒素の流入を抑制し、酸素を含むガスが供給されるループシールを備える、ケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項5】
請求項2に記載のケミカルルーピング燃焼システムであって、さらに、
温度スイング式であり、前記熱交換器により回収された熱を利用して、前記混合ガスに含まれる水を除去する脱水器を備える、ケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項6】
請求項3から請求項5までのいずれか一項に記載のケミカルルーピング燃焼システムであって、さらに、
前記空気塔に要求される要求発熱量を取得し、前記要求発熱量を取得すると、前記燃料塔に供給される酸素を含むガスとしての空気の流量を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記要求発熱量がW
AR(kW)であり、前記燃料の低位発熱量がLHV
fuel(kJ/mol)であり、前記空気塔における酸化反応時の酸素1mol当たりの発熱量がΔh
AR(kJ/mol)であり、前記燃料塔における還元反応時の前記燃料1mol当たりの吸熱量がΔh
FR(kJ/mol)であり、空気中の酸素濃度がX
O2である場合に、前記燃料塔に供給される酸素を含むガスの流量を、下記式(1)で算出される流量Q
air_FRの30%以上300%以下になるように制御する、ケミカルルーピング燃焼システム。
【数11】
【請求項7】
請求項6に記載のケミカルルーピング燃焼システムであって、さらに、
前記燃料塔内の温度を取得する温度取得部を備え、
前記制御部は、前記温度取得部により取得された温度に応じて、前記燃料塔に供給される空気の流量Qair_FRを制御する、ケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項8】
請求項7に記載のケミカルルーピング燃焼システムであって、
前記制御部は、
前記燃料塔内の目標温度から、前記温度取得部により取得された温度を差し引いた差がゼロ以上の場合に、前記差に予め設定された定数を乗じた流量Qair_FRの空気を前記燃料塔に供給されるように制御し、
前記差が負の場合には、前記燃料塔に酸素を含むガスが供給されないよう制御する、ケミカルルーピング燃焼システム。