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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082537
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】内視鏡用オーバーチューブ
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
A61B1/00 652
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196458
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】304028346
【氏名又は名称】国立大学法人 香川大学
(71)【出願人】
【識別番号】508303324
【氏名又は名称】富士システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100080115
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 和壽
(72)【発明者】
【氏名】小原 英幹
(72)【発明者】
【氏名】西山 典子
(72)【発明者】
【氏名】宇川 純一
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161DD09
4C161GG24
4C161GG25
4C161HH56
4C161LL02
4C161NN09
(57)【要約】
【課題】 トラクション操作を簡単に行うことができ、操作性も容易であるとともに、操作時の設定された挿入角も変更することが可能な内視鏡用オーバーチューブを提供する。
【解決手段】 この内視鏡用オーバーチューブ1は、本体チューブ2の先端部外周に留置固定用バルーン13が取り付けられている。本体チューブ2の先端部には切れ目15が先端開口から留置固定用バルーン13の取付基部近くまで形成され、該切れ目により分離された部分が相互に接離可能な分岐部16,17に形成され、前記分岐部のいずれか一方の外周には膨張すると両分岐部間を離間させて隙間を形成し、収縮すると接して隙間を解消する稼働用バルーン18が取り付けられている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内への内視鏡の挿入を補助するオーバーチューブにおいて、シリコーンゴムなどの生体に適する柔軟な材質からなり、所定長さからなる本体チューブを具え、この本体チューブには長さ方向に先後端開口のメインルーメンとサブルーメンが並列状に形成されているとともに、先端部外周に留置固定用バルーンが取り付けられ、前記本体チューブの先端部には切れ目がメインルーメンとサブルーメンを分離するように先端開口から留置固定用バルーンの取付基部近くまで形成され、該切れ目により分離された部分が相互に接離可能な分岐部に形成され、前記分岐部のいずれか一方の外周に膨張すると両分岐部間を離間する隙間が形成され、収縮すると接して隙間を解消する稼働用バルーンが取り付けられていることを特徴とする内視鏡用オーバーチューブ。
【請求項2】
前記稼働用バルーンは、サブルーメンが形成された分岐部の外周に取り付けられている請求項1に記載の内視鏡用オーバーチューブ。
【請求項3】
前記稼働用バルーンは、サブルーメンが形成された分岐部の外周におけるメインルーメンのある側を向いた面以外は接着固定により取り付けられている請求項2に記載の内視鏡用オーバーチューブ。
【請求項4】
前記留置固定用バルーンは、メインルーメンが形成された分岐部とサブルーメンが形成された分岐部を覆うように取り付けられている請求項1に記載の内視鏡用オーバーチューブ。
【請求項5】
前記サブルーメンが形成された分岐部は、複数からなり、これらの分岐部又はメインルーメンが形成された分岐部の外周に稼働用バルーンが取り付けられている請求項1に記載の内視鏡用オーバーチューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内視鏡用オーバーチューブに関する。さらに詳しくは、処置具を内視鏡の視野軸とは異なる方向に良好な操作性で突出させることが可能なオーバーチューブの技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
胃などの消化管に腫瘍が発生した場合の外科的治療において、以前は開腹手術が施行されていたが、近年では患者の低侵襲性が求められるようになり、また、医療機器の進歩によって内視鏡を用いて手術を行う腹腔鏡下手術で腫瘍切除が行われるようになってきた。しかし、消化管腫瘍でも特に胃粘膜下腫瘍は、胃の外壁(腹腔鏡画像)から腫瘍の位置が判別しにくい。また、開腹手術では触診で腫瘍の位置を確認できるが、腹腔鏡下手術では触診できないため、腫瘍以外の健常な胃壁を余分に切除してしまう場合がある。
【0003】
そこで、健常な胃壁を最大限残し、患者への侵襲を低減させるため、軟性内視鏡を経口的に挿入して胃の内部から腫瘍の位置を正確に判別しながら、軟性内視鏡下処置と腹腔鏡下手術で、腫瘍を胃の内外から切除する腹腔鏡・内視鏡合同胃局所切除(LECS)が考案され、行われている。さらに、最新の治療では、患者への侵襲をより低減させるため、軟性内視鏡だけで腫瘍を切除する内視鏡的全層切除(EFTR)が試みられている。このEFTRでは、軟性内視鏡に設けられた1つのワーキングチャンネルから手術器具を挿入し処置を行うため、組織の牽引などが困難であり、非常に難易度が高い術式となっている。そこで、手術器具を複数本使用する方法が検討されており、内視鏡を2本用いて処置を行うダブルスコープ法が考案されている。このダブルスコープ法では、食道胃接合部などの生理的狭小部で互いのスコープが干渉し、内視鏡の動きに制限が掛かり処置の継続が困難になる問題が判明した。
【0004】
この問題を解決する先行技術として、脱着可能な平板状のセパレータを設けたオーバーチューブ(特許文献1)がある。この技術では、内視鏡同士の干渉を防止できるが、内視鏡はセパレータに沿って互いの内視鏡が近接した状態で平行に移動するため同軸上の処置しか行えない。EFTRでは、切除する組織を牽引(トラクション操作)して、内視鏡の視野確保や処置を行うスペースを確保することが非常に重要である。この技術では、同軸上の処置しか行えないため、トラクション操作が非常に難しく、術者に高い技術が求められる。
【0005】
また、内視鏡用のオーバーチューブの壁に、処置具用の挿通路を螺旋状に設けた技術(特許文献2)も知られている。この技術を応用し内視鏡を挿入できるようにすることで、内視鏡の干渉を防止でき、内視鏡同士の挿入軸も変えられると考えられる。EFTRでは、腫瘍の切除だけではなく、切除部位を縫合するなどといった複雑な処置を複数こなさなければならず、これらの処置では、各処置に応じた適切な挿入角度に調整することが重要である。しかし、この技術では、設定された挿入角を変更できないため、術者に求められる技術がいずれも高い状態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5245146号公報
【特許文献2】特許第5224305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明は、前記のような従来の問題を解決し、トラクション操作を簡単に行うことができ、操作性もきわめて容易であるとともに、操作時の設定された挿入角も変更することが可能な内視鏡用オーバーチューブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、体内への内視鏡の挿入を補助するオーバーチューブにおいて、シリコーンゴムなどの生体に適する柔軟な材質からなり、所定長さからなる本体チューブを具え、この本体チューブには長さ方向に先後端開口のメインルーメンとサブルーメンが並列状に形成されているとともに、先端部外周に留置固定用バルーンが取り付けられ、前記本体チューブの先端部には切れ目がメインルーメンとサブルーメンを分離するように先端開口から留置固定用バルーンの取付基部近くまで形成され、該切れ目により分離された部分が相互に接離可能な分岐部に形成され、前記分岐部のいずれか一方の外周に膨張すると両分岐部間を離間する隙間が形成され、収縮すると接して隙間を解消する稼働用バルーンが取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記稼働用バルーンは、サブルーメンが形成された分岐部の外周に取り付けられている。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記稼働用バルーンは、サブルーメンが形成された分岐部の外周におけるメインルーメンのある側を向いた面以外は接着固定により取り付けられている。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1において、前記留置固定用バルーンは、メインルーメンが形成された分岐部とサブルーメンが形成された分岐部を覆うように取り付けられている。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1において、前記サブルーメンが形成された分岐部は、複数からなり、これらの分岐部又はメインルーメンが形成された分岐部の外周に稼働用バルーンが取り付けられている。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、前記のようであって、請求項1に記載の発明によれば、体内への内視鏡の挿入を補助するオーバーチューブにおいて、シリコーンゴムなどの生体に適する柔軟な材質からなり、所定長さからなる本体チューブを具え、この本体チューブには長さ方向に先後端開口のメインルーメンとサブルーメンが並列状に形成されているとともに、先端部外周に留置固定用バルーンが取り付けられ、前記本体チューブの先端部には切れ目がメインルーメンとサブルーメンを分離するように先端開口から留置固定用バルーンの取付基部近くまで形成され、該切れ目により分離された部分が相互に接離可能な分岐部に形成され、前記分岐部のいずれか一方の外周に膨張すると両分岐部間を離間する隙間が形成され、収縮すると接して隙間を解消する稼働用バルーンが取り付けられているので、分岐部の離間により分岐部を介して挿入される内視鏡が従前のように同軸上ではなくより広く開くため、内視鏡の干渉を防止することができるとともに、処置に合わせて内視鏡の挿入角度を自由に変えられ、内視鏡を自在に動かすことができる。そのため、トラクション操作も簡単に行うことができ、操作性も容易であるとともに、操作時の設定された挿入角も変更することができ、処置の難易度が高いEFTRや内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を円滑に進めることができる。また、稼働用バルーンが取り付けられている分岐部が留置固定用バルーン内に収まるようにすることも可能となり、その場合には分岐部が胃壁に接触することがないため、内視鏡の操作をスムーズに行うことができるという優れた効果が期待できる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、前記稼働用バルーンは、サブルーメンが形成された分岐部の外周に取り付けられているので、分岐部におけるバルーン膨張が効率的で、より効果的になる。請求項3に記載の発明によれば、前記稼働用バルーンは、サブルーメンが形成された分岐部の外周におけるメインルーメンのある側を向いた面以外は接着固定により取り付けられているので、稼働用バルーンの膨張作用が効率的となる。請求項4に記載の発明によれば、前記留置固定用バルーンは、メインルーメンが形成された分岐部とサブルーメンが形成された分岐部を覆うように取り付けられているので、分岐部が胃壁に接触することがなく、内視鏡の操作をスムーズに行うことができる。請求項5に記載の発明によれば、前記サブルーメンが形成された分岐部は、複数からなり、これらの分岐部又はメインルーメンが形成された分岐部の外周に稼働用バルーンが取り付けられているので、内視鏡や処置具など多種多様なデバイスの利用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の一実施の形態に係る内視鏡用オーバーチューブを一部省略して示す概略正面図である。
図2】本体チューブの先端部を示し、(A)は左側面図、(B)は概略正面図である。
図3図1のA-A線断面図である。
図4】留置固定用バルーンと稼働バルーンが膨張したときの本体チューブの先端部を示し、(A)は左側面図、(B)は概略正面図である。
図5】作用説明図である。
図6】作用説明図である。
図7】変形例で、留置固定用バルーンと稼働バルーンが膨張したときの本体チューブの先端部を示し、(A)は左側面図、(B)は概略正面図である。
図8】別の実施の形態で、留置固定用バルーンと稼働バルーンが膨張したときの本体チューブの先端部を示し、(A)は左側面図、(B)は概略正面図である。
図9】同上の変形例で、留置固定用バルーンと稼働バルーンが膨張したときの本体チューブの先端部を示し、(A)は左側面図、(B)は概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、この発明の一実施の形態に係る内視鏡用オーバーチューブについて説明する。
【0017】
図1において、1は内視鏡用オーバーチューブであり、このオーバーチューブ1は、全体がシリコーンゴムなどの生体に適する柔軟な材質からなり、所定長さからなる本体チューブ2を具えている。本体チューブ2は、この例ではメイン内視鏡用チューブ3と、該内視鏡用チューブより小径のサブ内視鏡用チューブ5が外周面の一部を長さ方向に連接固定して並列状に設けられてる。メイン内視鏡用チューブ3とサブ内視鏡用チューブ5にはそれぞれ長さ方向に先後端開口のメイン内視鏡用ルーメン7とサブ内視鏡用ルーメン8が形成されている。10は留置固定用バルーンルーメン、11は稼働用バルーンルーメンであり、それぞれ図示しない流体供給源に接続され、それぞれのバルーンに流体を供給し膨らませることが可能になっている。
【0018】
本体チューブ2の先端部外周には留置固定用バルーン13が先端部を本体チューブ2の先端に合わせるとともに、基端部を所定長さ本体チューブ2の後端側に位置させて取り付けられている。また、本体チューブ2の先端部にはメイン内視鏡用チューブ3とサブ内視鏡用チューブ5の連接部に沿い切れ目15が先端開口から留置固定用バルーン13の取付基部近くまで形成されており、該切れ目により分離された部分は基部を中心に先端側が回動開閉して相互に接離可能な分岐部16,17が形成されている(図2参照)。サブ内視鏡用チューブ5側となる分岐部17の先端付近の外周には稼働用バルーン18が取り付けられている。この稼働用バルーン18はメイン内視鏡用チューブ3のある側を向いていない外周が分岐部17に接着固定して設けられている。そのため、膨張するとメイン内視鏡用チューブ3のある側だけ膨張し、膨張すると両分岐部16,17間を離間させて隙間を形成し(図4参照)、収縮すると隙間を解消する。これにより、本体チューブ2のメイン内視鏡用チューブ3とサブ内視鏡用チューブ5の先端部は、図示のように所定の角度に屈曲した状態にもたらされるようになる。
【0019】
つまり、前記のような分岐部16,17を設けたのは、分岐部16,17を経てメイン内視鏡用ルーメン7とサブ内視鏡用ルーメン8にそれぞれ挿入される後記内視鏡が互いに独立して屈曲して稼動できるようにするためである。なお、この実施の形態では、稼働用バルーン18を径の小さい分岐部17に設けているため、分岐部16より屈曲角度が大きくなり、分岐部16はそれほど屈曲角度が大きくならない状態にもたらすことが可能となる。そのため、従前では時に発生することがある分岐部の先端が胃壁に接触して傷つけるような事態をなくすことも可能となっている。
【0020】
図1に示すように本体チューブ2におけるメイン内視鏡用チューブ3のメイン内視鏡用ルーメン端末には、消化管内に注入した流体が漏れ出るのを防止するシール弁21が設けられ、サブ内視鏡用チューブ5のサブ内視鏡用ルーメンの端末には同様なシール弁22が設けられている。また、留置固定用バルーン13と稼働用バルーン18のそれぞれのバルーンルーメン端末には、バルーンに注入した流体が漏れるのを防止するための一方弁23,24が設けられている。25は本体チューブ2の端末側に移動可能に設けられた固定板である。固定板25より基端側の本体チューブ2もメイン内視鏡用チューブ3とサブ内視鏡用チューブ5が軸方向に分離されている。
【0021】
留置固定用バルーン13は、図1,4のように円筒状に膨張・収縮可能にしている。稼働用バルーン18は、本体チューブ2のチューブ分岐部のメイン内視鏡用ルーメン7の側壁、又はサブ内視鏡用ルーメン8の側壁に設けられ、このバルーンを膨張させることで、分岐部の屈曲・稼動を可能としている。なお、オーバーチューブ1の挿入量が分かるように本体チューブ2の表面には図示しない深度マーキングが設けられている。また、オーバーチューブ1の先端が内視鏡で視認できるように本体チューブ2の先端にはリング状マーキングが設けられている。
<作用説明>
次に、内視鏡用オーバーチューブ1の作用について説明する。
【0022】
図1及び図2は、留置固定用バルーン13と稼働用バルーン18が共に収縮状態にあることを示している。この状態で経口よりオーバーチューブ1を挿入する。そして、図5に示すように例えば胃部に挿入する場合に挿入したオーバーチューブ1の本体チューブ2を留置固定するが、この場合、本体チューブ2の先端部を食道と胃の接合部付近まで挿入した後、留置固定用バルーン13を膨張させ、本体チューブ2を留置固定する。
【0023】
次に、稼働バルーン18を膨張させ、分岐部16,17を稼働させる。稼働バルーン18が膨張すると、該バルーンは分岐部16側に膨張し、両分岐部16,17を離間させる。これにより、両分岐部16,17は共に図5のように所定角度に屈曲した状態となる。すなわち、メイン内視鏡用チューブ3側の分岐部16より径の小さいサブ内視鏡用チューブ5側の分岐部17がやや大きく屈曲するが、いずれも同軸ではなく開いた状態にもたらされる。そのため、従前のように同軸上の処置しか行えないということがなく、前記のように開いた状態下で挿入される内視鏡の操作が可能になるため、内視鏡同士の干渉もなくなる。また、前記両分岐部16,17が開いた状態になることにより、従前はなかなか困難だったトラクション操作も容易に行える。なお、両分岐部16,17の屈曲動作は留置固定用バルーン13内で行われ、分岐部16,17が留置固定用バルーン13外に突出するようなことがないため、分岐部16,17の前端が挿入される胃の壁に当たって傷をつけるというような事態が生ずることがない。
【0024】
その後、図6に一例を示すようにメイン内視鏡用チューブ3にメイン内視鏡、サブ内視鏡用チューブ5にサブ内視鏡をそれぞれ挿入し、処置を行う。挿入される内視鏡は先端が湾曲する構造となっており、手元のダイヤル操作によりその先端に取り付けた処置具を上下左右に稼働させ、患部の組織を剥離する等の手術を行うが、その操作も容易である。
【0025】
前記のようであって、このオーバーチューブ1の稼働、すなわち稼働バルーン18を膨張させて分岐部16と分岐部17とを離間させることにより、メイン内視鏡とサブ内視鏡の挿入角度を変えることができるので、サブ内視鏡の処置具で切除する組織を牽引(トラクション操作)して、メイン内視鏡の視野確保や処置を行うスペースを確保させることができる。
<変形例>
図7は変形例であり、この変形例では分岐部16,17が留置固定用バルーン13の前端より若干突出している以外は前記実施の形態と同様である。そのため同様の部分には同一の符号を付している。そして(A)が留置固定用バルーン13と稼働用バルーン18がともに膨張した状態の左側面図、(B)が概略正面図である。このような変形例でも前記と同様な作用効果が期待できる。
<別の実施の形態>
図8は別の実施の形態である。この実施の形態ではサブ内視鏡用チューブ5側となる一方の分岐部17a,17bが複数となっている点、及びメイン内視鏡用チューブ3となる他方の分岐部16に稼働用バルーン18を取付けている点で、前記実施の形態と相違する。そして、稼働用バルーン18が収縮してるときは分岐部16と分岐部17a,17bが共に接する状態となっているが、膨張すると分岐部16と分岐部17a,17bが共に離間する状態となる。図8(A)が留置固定用バルーン13と稼働用バルーン18がともに膨張した状態の左側面図、(B)が概略正面図である。この実施の形態はサブ内視鏡がさらに増えたときに入用であり、この例では2個数としている。勿論、3個以上としてもよい。また、この例では稼働用バルーン18を分岐部16に取り付けたが、分岐部17a,17bに取り付けてもよく、その場合もその作用は前記実施の形態と変わらない。
【0026】
図9は前記した別の実施の形態の変形例であり、この変形例では図8に示した稼働用バルーン18が膨張したときに分岐部17a,17bが相互に接離するのに対して接離しないように結合している点で相違する。これ以外は同様である。
【0027】
なお、前記した各実施の形態は好ましい一例であり、それ以外のものを排除するものではない。実施の形態においてはサブ内視鏡用ルーメン8を内視鏡専用としたが、内視鏡に代えて処置具などのデバイス用としてもよいし、別の実施の形態のように複数の分岐部17a,17bを設けた場合は、複数のサブ内視鏡用ルーメン8を内視鏡用とデバイス用に使い分けることも可能である。また、前記においてはメイン内視鏡用ルーメン7とサブ内視鏡用ルーメン8ともに内視鏡を挿入するものとしたが、いずれか一方にのみ内視鏡を挿入し、他方には内視鏡以外のデバイスを挿入するものとしてもよい。さらには、いずれか一方にのみ内視鏡を挿入し、他方は吸引源と接続して胃内の残渣物を吸引排出するのに用いることも可能である。また、本体チューブ2の構成や稼働バルーン18の構成も図示したもの以外のものとしてもよく、それらの構成は同効のものであればほかのものと代替えしてもよい等、この発明は特許請求の範囲に記載した範囲内であれば細部の設計等は任意に変更、修正が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0028】
1 内視鏡用オーバーチューブ
2 本体チューブ
3 メイン内視鏡用チューブ
5 サブ内視鏡用チューブ
7 メイン内視鏡用ルーメン
8 サブ内視鏡用ルーメン
10 留置固定用バルーンルーメン
11 稼働用バルーンルーメン
13 留置固定用バルーン
15 切れ目
16,17 分岐部
18 稼働用バルーン
21,22 シール弁
23,24 一方弁
25 固定板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9