(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082538
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】医療器具の表面処理方法
(51)【国際特許分類】
A61L 29/08 20060101AFI20240613BHJP
A61L 29/06 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
A61L29/08 100
A61L29/06
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196459
(22)【出願日】2022-12-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】502265817
【氏名又は名称】株式会社カテラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩孝
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AC08
4C081BB01
4C081BB05
4C081BC02
4C081CA082
4C081CA271
4C081CB051
4C081CC07
4C081DA03
4C081DC03
4C081EA05
(57)【要約】
【課題】医療器具を構成するシリコーンゴムの表面滑り性を向上させる。
【解決手段】シリコーンゴムで形成されたカテーテルチューブ2とバルーン3を備えたバルーンカテーテル1において、カテーテルチューブ及びバルーンのシリコーンゴム表面を濃度10~30%のPEGMA水溶液に所定の時間浸漬し、その後該シリコーンゴム表面を所定の時間UV照射することによって、該シリコーンゴム表面にPoly-PEGMA層を形成する表面修飾を行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンゴムで形成された構成要素を備えた医療器具において、前記構成要素のシリコーンゴム表面を濃度10~30%のPEGMA水溶液に所定の時間浸漬し、その後前記シリコーンゴム表面に紫外線(UV)を所定の時間照射して、該シリコーンゴム表面にPoly-PEGMA層を形成する表面修飾を行う過程を含む、医療器具の表面処理方法。
【請求項2】
前記PEGMA水溶液に浸漬する前記所定の時間が3時間である、請求項1に記載の医療器具の表面処理方法。
【請求項3】
前記シリコーンゴム表面を浸漬した前記PEGMA水溶液を窒素ガスでバブリングし、シリコーンゴムとPEGMA水溶液とを含む反応系から酸素を除去する過程をさらに含む、請求項1に記載の医療器具の表面処理方法。
【請求項4】
前記医療器具が、シリコーンゴムで形成されたカテーテルチューブを備えるカテーテルであり、前記カテーテルチューブのシリコーンゴム表面に前記表面修飾を行う、請求項1乃至3のいずれかに記載の医療器具の表面処理方法。
【請求項5】
シリコーンゴムで形成された構成要素を備えた医療器具であって、前記構成要素のシリコーンゴム表面が請求項1乃至3のいずれかに記載の過程によって表面修飾されている、医療器具。
【請求項6】
前記医療器具が、前記構成要素としてシリコーンゴムで形成されたカテーテルチューブを備えたカテーテルである、請求項5に記載の医療器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具に関するものであり、特に医療分野において人や動物の体内に挿入されるカテーテル等の医療器具とその表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から医療分野では、カテーテルが、人体や動物の血管や尿管、消化管、気管等の生体管腔内に体外から挿通される医療器具の1つとして広く使用されている。一般に、カテーテルには、医療器具として体内での使用に適した生体安全性、生体適合性に加えて、血管等の内面や組織を傷つけることなく管腔内でのスムーズかつ安全な移動に適した器具表面の滑り性が要求される。
【0003】
カテーテルを構成する材料としては、例えば様々な合成樹脂エラストマーや、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム等の合成ゴム、ラテックスゴム等の天然ゴム等、柔軟性を有するゴム材料が採用されている。ラテックスゴムは、それに含まれる蛋白質がアレルゲンとなって、ラテックスアレルギーと呼ばれる即時型アレルギ一反応を起こさせるという問題がある(例えば、特許文献1を参照)。これに対し、シリコーンゴムは、生体組織に対する刺激が少なく生理的にも安定し、体内への挿嵌、留置に適した柔軟性を有するという利点がある。
【0004】
ところが、シリコーンゴムには、表面の摩擦係数が高く、撥水性を有するために滑り性を得にくいという問題がある。そこで、シリコーンゴムに相溶性の低いオイルを添加することにより、摩擦係数を低下させる方法が知られている(例えば、特許文献2を参照)。また、シリコーンゴムからなるカテーテルチューブの表面に、水溶性高分子及び架橋ポリウレタン網状体の皮膜を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7011354号公報
【特許文献2】特開2018-65889号公報
【特許文献3】特開2021-183075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2記載のようにシリコーンゴムに添加したオイル成分は、使用中または保管中にシリコーンゴム表面から滲み出す虞があるので、医療器具に使用することは好ましくない場合があり得る。
【0007】
そこで、本発明は、従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、例えばカテーテル等の医療器具を構成するシリコーンゴムの表面滑り性を向上させる新規で改良された医療器具の表面処理方法、それによって表面滑り性を向上させたシリコーンゴムからなる医療器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の医療器具の表面処理方法は、シリコーンゴムで形成された構成要素を備えた医療器具において、前記構成要素のシリコーンゴム表面を濃度10~30%のPEGMA水溶液に所定の時間浸漬し、その後前記シリコーンゴム表面に紫外線(UV)を所定の時間照射して、該シリコーンゴム表面にPoly-PEGMA層を形成する表面修飾を行う過程を含む、ことを特徴とする。
【0009】
或る実施形態において、前記PEGMA水溶液に浸漬する前記所定の時間は3時間である。
【0010】
別の実施形態では、前記シリコーンゴム表面を浸漬した前記PEGMA水溶液を窒素ガスでバブリングし、シリコーンゴムとPEGMA水溶液とを含む反応系から酸素を除去する過程をさらに含んでいる。
【0011】
或る実施形態において、前記医療器具は、シリコーンゴムで形成されたカテーテルチューブを備えたカテーテルであり、前記カテーテルチューブのシリコーンゴム表面に前記表面修飾を行う。
【0012】
本発明の別の側面によれば、シリコーンゴムで形成された構成要素を備えた医療器具であって、前記構成要素のシリコーンゴム表面が、上述した本発明の医療器具の表面処理方法の前記過程によって表面修飾されている、ことを特徴とする医療器具が提供される。
【0013】
或る実施形態において、前記医療器具は、前記構成要素としてシリコーンゴムで形成されたカテーテルチューブを備えたカテーテルである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の表面処理方法は、医療器具の構成要素のシリコーンゴム表面を十分な厚さのPoly-PEGMA層で表面修飾することによって、その表面滑り性を有意に向上させることができる。
更に本発明によれば、表面滑り性を向上させたシリコーンゴムの構成要素からなる医療器具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(a)は、本発明を適用したカテーテルの典型例を示す概略図、(b)はその部分拡大断面図である。
【
図2】本発明によるカテーテルの製造工程を示すフロー図である。
【
図3】(a)は、本発明の表面処理方法によってシリコーンゴム表面にPoly-PEGMA層が形成される反応スキームを示す模式図、(b)はシリコーンゴム表面に形成されるPEGMAの構造式である。
【
図4】(a),(b)は、濃度10%のPEGMA水溶液で表面処理したサンプル1の表面及び表面付近の断面を撮影した倍率×1000及び倍率×10000のSEM画像である。
【
図5】(a),(b)は、濃度10%のPEGMA水溶液で表面処理したサンプル3の表面及び表面付近の断面を撮影した倍率×1000及び倍率×10000のSEM画像である。
【
図6】(a),(b)は、それぞれ濃度30%のPEGMA水溶液で表面処理したサンプル4の表面及び表面付近の断面を撮影した倍率×1000及び倍率×10000のSEM画像である。
【
図7】(a),(b)は、濃度30%のPEGMA水溶液で表面処理したサンプル5の表面及び表面付近の断面を撮影した倍率×1000及び倍率×10000のSEM画像である。
【
図8】(a),(b)は、濃度30%のPEGMA水溶液で表面処理したサンプル6の表面及び表面付近の断面を撮影した倍率×1000及び倍率×10000のSEM画像である。
【
図9】(a),(b)は、本発明の表面処理を施していない比較サンプル1の表面及び表面付近の断面を撮影した倍率×1000及び倍率×10000のSEM画像である。
【
図10】(a),(b)は、本発明の表面処理を施していない比較サンプル2の表面及び表面付近の断面を撮影した倍率×1000及び倍率×10000のSEM画像である。
【
図11】(a),(b)は、本発明の表面処理を施していない比較サンプル3の表面及び表面付近の断面を撮影した倍率×1000及び倍率×10000のSEM画像である。
【
図12】(a),(b)は、サンプル5について行ったEDS分析の結果を示す表示画面である。
【
図13】(a),(b)は、比較サンプル2について行ったEDS分析の結果を示す表示画面である。
【
図14】(a)~(c)は、本発明の方法により10%PEGMA水溶液を使用し、紫外線照射によるオゾン処理時間を3時間に設定して表面処理したサンプル3の表面の摩擦係数をN=3回測定した試験結果を示す線図である。
【
図15】(a)~(c)は、本発明の方法により30%PEGMA水溶液を使用し、紫外線照射によるオゾン処理時間を3時間に設定して表面処理したサンプル6の表面の摩擦係数を測定した試験結果を示す線図である。
【
図16】(a)~(c)は、本発明の表面処理を施していない比較サンプル3の表面の摩擦係数を測定した試験結果を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明について、添付図面を参照しつつ、その好適な実施形態を用いて詳細に説明する。尚、添付図面において、本明細書全体を通して同一又は類似の構成要素には、同様の参照符号を付して表すこととする。
【0017】
図1は、本発明を適用した医療器具の典型的な実施形態として、バルーンカテーテル1を示している。本実施形態のバルーンカテーテル1は、例えば患者の血管等の生体管腔に生じた狭窄部を押し広げて治療するのに適している。ここで、患者とは、医療の治療を受ける対象となる人及び動物の双方が含まれる。
【0018】
図1に示すように、バルーンカテーテル1はオーバーザワイヤー型で、可撓性を有する細長いカテーテルチューブ2と、その先端付近に設けられたバルーン3と、基端側のハブ4とを備える。尚、本明細書において、バルーンカテーテル1の先端側とは、生体管腔内に挿入される側を、基端側は、体外に置かれて施術者が手許で操作する側をいうものとする。
【0019】
カテーテルチューブ2は、外側チューブ21の内部に内側チューブ22を同心状に配置した二重管構造を有する。外側チューブ21と内側チューブ22との間には、バルーン3を拡張させる加圧流体を流通させるための拡張ルーメン5が形成されている。内側チューブ22の内側は、その全長に亘ってガイドワイヤー(図示せず)を挿通するためのガイドワイヤールーメン6を画定している。
【0020】
バルーン3は、その基端部3aが、外側チューブ21の先端部21aに気密かつ液密に一体に結合され、先端部3bが、外側チューブ21の先端よりも先端側に延出する前記内側チューブの先端付近の外周面に気密かつ液密に一体に結合されている。これにより、バルーン3の内部空間3cは、前記加圧流体を導入可能に拡張ルーメン5に連通している。
【0021】
カテーテルチューブ2の先端には、先端部材7が、内側チューブ22の先端を覆うように該先端と気密かつ液密に一体に設けられている。先端部材7は、好ましくは先細に湾曲させた外形を有し、それによりカテーテルチューブ2の挿入時及び移動時に生体組織を損傷しないようにしている。先端部材7の先端中央には、前記ガイドワイヤールーメンと同心に連通して前記ガイドワイヤーを挿通するための貫通孔(図示せず)が開口している。更に、前記内側チューブには、その外周面のバルーン3に対応する軸線方向の位置に、造影用のマーカー部材8が固定されている。
【0022】
ハブ4は、カテーテルチューブ2と同心状に延在する中央の分岐チューブ41と、一方の側方に斜めに延在する主サイドチューブ42と、分岐チューブ41を挟んで反対側の側方に斜めに延在する補助サイドチューブ43とに分岐されている。分岐チューブ41は、前記内側チューブのガイドワイヤールーメンと同心に連通する貫通路を有し、該貫通路には従来公知の自己封止弁が設けられて、ガイドワイヤーの貫通を許容しつつ、ガイドワイヤーが引き抜かれると自己封止するように構成することができる。
【0023】
主サイドチューブ42は、前記拡張ルーメンに連通する灌流通路を内部に有し、使用時には、その基端開口42aに接続される外部の灌流ライン(図示せず)から前記加圧流体が供給される。補助サイドチューブ43は、同様に前記拡張ルーメンに連通する補助通路を内部に有するが、その基端開口43aは、通常キャップ部材43bを緊締することによって気密かつ液密に閉止されている。前記拡張ルーメンに供給されてバルーン3を拡張させる前記加圧流体の灌流圧をモニターする場合には、キャップ部材43bを取り外して、前記補助通路の基端開口に流体圧力測定ラインを接続する。
【0024】
バルーンカテーテル1は、マーカー部材8を除く略全体がシリコーンゴムで構成されている。具体的には、カテーテルチューブ2を構成する外側チューブ21と内側チューブ22、バルーン3、ハブ4、及び先端部材7がシリコーンゴムで形成されている。これらシリコーンゴムからなる部品同士の接続部分は、例えば融着または接着によって気密かつ液密に固定されている。マーカー部材8は、使用時にX線透視下での視認性に優れた、例えば白金、金、銀、イリジウム、チタン、タングステン等の金属やこれらの合金のプレート材料で構成されている。
【0025】
バルーンカテーテル1の外側に露出する面には、後述する本発明の方法による表面滑り性を向上させる表面処理が施されている。好ましくは、使用時に生体管腔内に挿入される部分、即ち外側チューブ21、バルーン3及び先端部材7の外表面21s,3s,7sに前記表面処理が施される。これら外表面の表面滑り性を向上させたバルーンカテーテル1は、生体管腔内にその内面や組織を傷つけることなくスムーズに挿通、移動させることができる。
【0026】
別の実施形態では、カテーテルチューブ2の内側チューブ22の外表面22sにも、本発明の前記表面処理が施されている。一般にシリコーンゴムは、自己密着性を有するという特徴がある。そのため、カテーテルチューブ2を組み立てる際、前記表面処理がされていない内側チューブ22は、その外周面が外側チューブ21の内周面21iに接触すると互いに吸着したり引っ掛かったりし易く、その結果外側チューブ21内へのスムーズな挿入、位置決めを妨げる虞がある。このように予め内側チューブ外表面22sの表面滑り性を高めることによって、内側チューブ2の外側チューブ21へのスムーズかつ容易な組付けを確保することができる。
【0027】
更にシリコーンゴムは、表面が傷付くと強度が著しく低下する、という特徴がある。そのため、バルーン3の内面が隣接する内側チューブ22の、前記表面処理がされていない外表面22sに接触すると、互いに吸着してバルーン3の正常な膨張を妨げる虞がある。また、内側チューブ22の外表面22sに吸着したバルーン3の内面3iは、剥がれる際に傷付いて強度にばらつきが生じ、片膨れを起こさせる虞がある。予め前記表面処理により内側チューブ外表面22sの表面滑り性を高めることによって、バルーン内面3iの内側チューブ外表面22sへの吸着を防止し、バルーン3の正常な膨張を確保することができる。
【0028】
次に、
図1のバルーンカテーテル1を被処理材として、その外表面に本発明の表面処理を施して表面滑り性を向上させる方法について、詳細に説明する。
図2は、本発明による表面処理方法の好適な実施形態を工程順に示すフロー図である。本実施形態では、上述したように、バルーンカテーテル1は、使用時にハブ4が患者の体外に保持されるので、それ以外即ちそれより先端側の部分の外表面を被処理面として処理する。
【0029】
最初に、被処理材(バルーンカテーテル1)の外表面を湿式の超音波洗浄で清浄化する(ステップSt1)。本実施形態において、この超音波洗浄は、前記被処理材をメタノールに浸漬して所定の時間(例えば、約10分間)超音波処理する脱脂処理と、その後引き続いて前記被処理材を蒸留水に浸漬して所定の時間(例えば、約10分間)超音波処理する仕上げ洗浄の2段階で行う。このステップSt1の段階では、超音波洗浄の対象はバルーンカテーテル1全体とし、ハブ4を除外しなくて良い。
【0030】
更に、前記被処理材にオゾン(O3)による乾式洗浄を行う(ステップSt2)。本実施形態では、市販の適当な紫外線(UV)オゾン洗浄装置を使用する。前記UVオゾン洗浄装置内に前記被処理材を配置した後、適当な濃度の酸素(O2)ガスを導入し、所定波長のUV線を照射することによって前記装置内にO3雰囲気を生成する。前記被処理材はそのまま前記装置内に静置し、その被処理面を前記O3雰囲気に所定の時間曝露する。これによって、ステップSt1の超音波洗浄で除去しきれなかった汚染物質を、前記被処理面から完全に除去すると共に、この後で行う表面修飾処理に適した前処理を、前記被処理面に施す。
【0031】
前記UVオゾン洗浄装置内に導入する前記O2ガスの濃度は、UV線の照射によって生成する前記O3雰囲気のO3濃度に応じて決定する。また、前記被処理面を前記O3雰囲気に曝露する前記所定の時間は、前記O3雰囲気の所望のO3濃度に応じて、前記被処理面から汚染物質を完全に除去し、かつ前記表面修飾処理に必要な前記前処理を施すのに十分な時間を設定する。本願発明者の試験結果によれば、前記O2ガスの濃度は、例えば0.02MPaに設定することができる。この場合、前記O3雰囲気に曝露する前記所定の時間は、30~60分が好ましく、60分がより好ましいことが分かった。
【0032】
次に、このように洗浄しかつ前処理した前記被処理材を重合反応装置へ移動し、光重合反応処理を実行する。前記重合反応装置は、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(PEGMA)水溶液を貯留する反応容器と、市販の高圧水銀ランプなどのUV光源により発生したUV線を照射するUV照射器とから構成される。
【0033】
この光重合反応処理は、前記被処理面に本発明の前記表面修飾を施して、良好な表面滑り性を付与する。この段階で、ハブ4は、適当にマスキングするなどして、本発明による表面処理の対象から除外することが好ましい。それによってハブ4の外表面は、元々シリコーンゴムが有する高い摩擦係数や撥水性が維持されるので、使用時にバルーンカテーテル1を操作する上で有利である。
【0034】
前記光重合反応処理では、先ず、前記反応容器に貯留した所定濃度のPEGMA水溶液に、前記被処理材を完全に浸漬する(ステップSt3)。前記反応容器には、前記被処理材(バルーンカテーテル1)を収容し得る十分な寸法、容積及び形態のものが選択される。別の実施形態では、前記被処理材を部分的に、即ち本発明による表面処理を施したい部分だけを前記PEGMA水溶液に浸漬することができる。
【0035】
このように前記被処理材を浸漬した前記反応容器のPEGMA水溶液に、窒素(N2)ガスをバブリングする。これによって、前記反応容器内で前記被処理材のシリコーンゴムとPEGMA水溶液とを含む反応系から酸素を取り除き、最終的にN2ガスで満たした気密系とする。その結果、前記被処理材は、酸素を完全に除去した状態で、前記所定濃度のPEGMA水溶液に浸漬処理される。
【0036】
次に、前記UV照射器をオンして前記UV光源を点灯させ、室温で前記反応容器内の前記被処理材の外表面にUV線を所定の時間照射する(ステップSt4)。上述した別の実施形態において前記被処理材の部分的に表面処理したい場合には、前記PEGMA水溶液に浸漬処理した前記被処理材の部分だけにUV線を照射することができる。
【0037】
これによって、前記外表面即ち被処理面は、シリコーンゴム表面に化学的に結合したPoly-PEGMA層を形成して表面修飾される。ステップSt4でUV線を照射する所定の時間は、前記PEGMA水溶液のPEGMA濃度に応じて、前記表面修飾によって前記被処理面に所望の表面滑り性が付与されるように設定する。
【0038】
本願発明者の試験結果によれば、ステップSt4の前記所定の時間は、例えばPEGMA濃度が10~30%の場合、3時間に設定する。これにより、前記被処理材の表面にPoly-PEGMA層を十分な厚さに形成して修飾し、その結果所望の表面滑り性を付与することができる。
【0039】
図3(a)は、
図2に関連して上述した本実施形態の表面処理方法によって、生のシリコーンゴムからなる基材100の表面にPoly-PEGMA膜101がポリマーブラシ状に形成される反応スキームを模式的に示している。シリコーンゴム基材100表面に形成されるPEGMAは、
図3(b)の構造式で示される。
【0040】
図3(a)の左半分に示すように、シリコーンゴム基材100の表面には、ステップSt2におけるO
3の加水分解によって、該基材中のシリコーンに単結合した酸素原子に単結合したヒドロキシ基102と、互いに単結合した2つの酸素原子が立体配座の形態で存在する酸素基103とが付与される。このように導入されたヒドロキシ基102と酸素基103とによって、シリコーンゴム基材100表面は官能化される。この官能化の程度は、ステップSt2でシリコーンゴム基材100表面に暴露されるO
3雰囲気のO
3濃度及びその曝露時間を設定することによって決定される。
【0041】
図3(a)の右半分は、このように表面を官能化した状態のシリコーンゴム基材100を、ステップSt3に従って所定濃度のPEGMA水溶液に浸漬し、その後ステップSt4に従ってUV線を所定の時間照射した結果を示している。前記PEGMA水溶液に含有されるPEGMAモノマーは、
図3(b)に示すように反応性基を有するので、シリコーンゴム基材100表面のヒドロキシ基102(-OH
-)及び酸素基103(-O
2-)と反応して共有結合を形成する。
【0042】
ステップSt2のO3処理条件(O3濃度、曝露時間、環境温度等)を適当に設定することによって、上述したPEGMAによる化学修飾のために利用可能な反応性基の密度を高めることができる。反応性基の密度が高くなるほど、該反応性基と共有結合するPEGMA鎖は、シリコーンゴム基材100表面から遠く離れる向きに伸長して、ポリマーブラシ構造(P(PEGMA)brushes101)を形成する。ステップSt3及びSt4のPEGMA及びUV処理条件(PEGMA濃度、浸漬時間、UV強度、UV照射時間、環境温度等)を適当に設定することによって、シリコーンゴム基材100表面にPEGMA膜を所望の厚さに成長させることができる。
【0043】
本実施形態では、上述したように、濃度0.02MPaのO2ガスをUV照射して生成されるO3雰囲気にシリコーンゴム基材100を30~60分暴露し(ステップSt2)、濃度10~30%のPEGMA水溶液に3時間浸漬しかつUV照射する(ステップSt3及びSt4)。これにより、化学的にグラフト化されたPEGMA膜101(Poly-PEGMAブラシ)を所望の表面滑り性を発揮し得る厚さに成長させたシリコーンゴム基材110(Silicone-g-P(PEGMA))が得られる。
【0044】
本発明の方法によるシリコーンゴムの表面処理を評価するために、次のサンプル1~6と、比較のための比較サンプル1~3とを準備した。サンプル1,4は、
図1のバルーンカテーテル1のバルーン3から1cm程度の長さに切り出し、サンプル2,5は、カテーテルチューブ2から8mm程度の長さに切り出した。サンプル3,6は、厚さ1mmシリコーンゴムプレート(大阪府大阪市西区所在のアズワン社製)から300mm角に切り出したものを用いた。サンプル1~3は、
図2に関連して説明した本発明の表面処理方法において、そのステップ3(St3)で濃度10%のPEGMA水溶液を使用し、サンプル3~6は、濃度30%のPEGMA水溶液を使用した。比較サンプル1~3は、それぞれ本発明の表面処理を施していないバルーンカテーテル1のバルーン3、カテーテルチューブ2と前記シリコーンゴムプレートから、それぞれサンプル1~6と同じ寸法に切り出したものを使用した。
【0045】
前記各サンプル及び比較サンプルの評価は、次の4つの方法で行った。
評価方法1:目視による観察
評価方法2:走査電子顕微鏡(SEM)画像(倍率×1000,×10000)
評価方法3:指触感
評価方法4:エネルギー分散形X線分光(EDS)分析
評価方法5:摩擦試験
これら評価方法による前記サンプルの評価結果を以下に説明する。
【0046】
[評価方法1]
表面処理したサンプル1~6の表面外観を目視により観察し、比較サンプル1~3の表面外観と比較して評価し、次の結果を得た。
【0047】
(サンプル1)
比較サンプル1と対比しても、Poly-PEGMA膜の形成を判別できなかった。
(サンプル2)
比較サンプル2と対比しても、Poly-PEGMA膜の形成を判別できなかった。
(サンプル3)
比較サンプル3と対比して、透明性の低下は観察されたが、Poly-PEGMA膜の形成を判別できなかった。
(サンプル4)
比較サンプル1と対比して、白っぽくなった表面が観察された。これから、Poly-PEGMA膜の堆積が示唆される。
(サンプル5)
比較サンプル2と対比して、白っぽくなった表面が観察された。これから、Poly-PEGMA膜の堆積が示唆される。
(サンプル6)
比較サンプル3と対比して、顕著な透明性の低下が観察された。これから、Poly-PEGMA膜の堆積が示唆される。
【0048】
[評価方法2]
表面処理した前記サンプルの表面を走査電子顕微鏡で倍率×1000,×10000で撮像し、そのSEM画像を前記比較サンプルのSEM画像と比較して評価した。
図4乃至
図8において、(a),(b)図は、それぞれ各サンプル表面の倍率×1000,倍率×10000のSEM画像である。
図9乃至
図11において、(a),(b)図は、それぞれ各比較サンプル表面の倍率×1000,倍率×10000のSEM画像である。
【0049】
(サンプル1)
図4を
図9と対比しても、明確に判別し得るμm単位の厚さの膜層形成は確認できなかった。
(サンプル3)
図5を
図11と対比しても、明確に判別し得るμm単位の厚さの膜層形成は確認できなかった。
(サンプル4)
図6を
図9と対比しても、明確に判別し得るμm単位の厚さの膜層形成は確認できなかった。
(サンプル5)
図7を
図10と対比しても、明確に判別し得るμm単位の厚さの膜層形成は確認できなかった。
(サンプル6)
図8を
図11と対比すると、厚さ15μm近いPoly-PEGMA膜の形成を明確に確認できた。
【0050】
[評価方法3]
表面処理した前記サンプル及び比較サンプルの表面を僅かな水で濡らし、手の指で滑らせるように触って触感を得た。
【0051】
(サンプル3)
比較サンプル3と対比して、表面滑り性が少し向上していた。更に、サンプル3の表面を水で濡らしたとき、表面張力の低下が観察された。
(サンプル4)
比較サンプル1と対比して、明らかに異なる触感、表面滑り性が感じられた。これは、少なくとも薄いPoly-PEGMA膜の形成を示唆している。
(サンプル5)
比較サンプル2と対比して、明らかに異なる触感、表面滑り性が感じられた。これは、同様に少なくとも薄いPoly-PEGMA膜の形成を示唆している。
(サンプル6)
比較サンプル3と対比して、明らかな表面滑り性の向上が感じられた。更に、サンプル6の表面を水で濡らしたとき、該表面による水の吸収が観察された。
【0052】
[評価方法4]
上記評価方法2で得たSEM画像を用いて、サンプル5とそれに対応する比較サンプル2について、エネルギー分散形X線分光法(EDS)による分析を行った。EDS分析を行う領域として、
図7(b)及び
図10(b)中の、それぞれ表面を四角で囲った表面領域Rs7,Rs10と、表面から僅か下側の四角で囲った断面領域Rx7,Rx10を選択した。
【0053】
図12(a),(b)は、サンプル5について行ったEDS分析の結果を示しており、スペクトル1は表面領域Rs7に、スペクトル2は断面領域Rx7にそれぞれ対応している。
図13(a),(b)は、サンプル5に対応する比較サンプル2について行ったEDS分析の結果を示しており、スペクトル1は表面領域Rs10に、スペクトル2は断面領域Rx10にそれぞれ対応している。
【0054】
図12(b)と
図13(b)は、サンプル5と比較サンプル2の双方において、元素Cと元素Siの質量%に大きな差が無く、それらの存在比率が略同じであることが認められる。これに対して、
図12(a)では、元素Cの質量%が元素Siよりも明らかに有意に大きくなっている。他方、
図13(a)は、元素Cと元素Siの質量%が
図13(b)とほぼ同じである。かかるEDS分析の結果は、サンプル5の表面には、本発明の表面処理によって形成されたPoly-PEGMA膜に由来するC原子が増えていることを示唆している。
【0055】
[評価方法5]
前記シリコーンゴムプレートから切り出したサンプル3,6について、本発明の表面処理を施した処理面の静摩擦係数及び動摩擦係数を測定する試験を行った。試験装置には、株式会社トリニティーラボ(東京都世田谷区)製の静動摩擦測定機・TL201Ttを、平板状の試験体であるサンプル3,6を固定するクランプ付の面接触子と共に使用した。サンプル3,6との対比のために、比較サンプル3の本発明の表面処理を施していない未処理面についても、同様に静動摩擦係数測定試験を行った。
【0056】
試験方法及び試験条件は次の通りである。
(試験方法)
平板状の試験体(サンプル3,6、比較サンプル3)を、その静動摩擦係数を測定しようとする試験面を下向きにして前記面接触子下端の接触面に固定する。前記静動摩擦測定機は、水平方向に移動可能で平滑な水平摩擦面を構成する上面を有する可動テーブルと測定部とを備え、前記面接触子は、前記可動テーブルの上方に配置して前記測定部に取り付け保持される。前記測定部は、前記試験体の試験面が前記面接触子の接触面の全面で前記水平摩擦面に接触しかつ均等に押圧されるように、前記面接触子に対して垂直下向きの一定な試験荷重を印加する。この状態で、前記可動テーブルを水平面方向に駆動し、前記水平摩擦面と前記試験体の試験面との間に生じる摩擦力に抗しながら所定の距離摺動させる。前記測定部は、この前記面接触子を介して作用する摩擦力を測定し、所定の計算式に従って前記試験面の静摩擦係数及び動摩擦係数を算出する。
【0057】
(試験条件)
次の試験条件で、前記静動摩擦係数測定試験を行った。
・試験荷重:50gf
・可動テーブルの駆動速度:10mm/sec
・可動テーブルの摺動距離:10mm
・試験回数:3回
ここで、本試験により導出される静摩擦係数と動摩擦係数は、次のように定義する。
・静摩擦係数:可動テーブル摺動初期の最大摩擦係数
・動摩擦係数:可動テーブル摺動距離3mm~7mm間の平均摩擦係数
【0058】
(試験結果)
図14(a)~(c)は、サンプル3について行った3回の前記静動摩擦係数測定試験でそれぞれ測定した摩擦力から算出した摩擦係数を縦軸に、測定時間を横軸に取って示している。それら3回の測定結果から前記定義に従って導出した静摩擦係数及び動摩擦係数と、それら3回の平均値とを以下の表1に示す。
【0059】
【0060】
サンプル6について、同様に3回の前記静動摩擦係数測定試験でそれぞれ測定、算出した摩擦係数の時間的変化を
図15(a)~(c)に示す。それら3回の測定結果から前記定義に従って導出した静摩擦係数及び動摩擦係数と、それら3回の平均値とを以下の表2に示す。
【0061】
【0062】
更に、比較サンプル3についても、同様に3回の前記静動摩擦係数測定試験で測定、算出した摩擦係数の時間的変化を
図16(a)~(c)に示す。それら3回の測定結果から前記定義に従って導出した静摩擦係数及び動摩擦係数と、それら3回の平均値とを以下の表3に示す。
【0063】
【0064】
表1を表3と比較すると、各回の数値及び平均値の全てにおいて、サンプル3の静摩擦係数及び動摩擦係数は、比較サンプル3よりも大幅に低下していることが分かる。更に、表2を表3と比較すると、各回の数値及び平均値の全てにおいて、サンプル6の静摩擦係数及び動摩擦係数は、サンプル3よりも更に大幅に低下し、比較サンプル3よりも顕著に大きく低下していることが分かる。これらの結果を総合すると、シリコーンゴムの表面は、本発明の表面処理を施こすことによって、静摩擦係数及び動摩擦係数の双方が大幅に低下し得ることが確認された。
【0065】
以上、本発明を好適な実施形態に関連して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その技術的範囲において、様々な変更又は変形を加えて実施し得ることは言うまでもない。例えば、本発明の表面処理方法は、上記実施形態のバルーンカテーテルに限定されるものでなく、シリコーンゴムで形成されたカテーテルチューブをカテーテルや、シリコーンゴム表面の構成要素を備える他の様々な医療器具についても、同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 バルーンカテーテル
2 カテーテルチューブ
3 バルーン
4 ハブ
7 先端部材
21 外側チューブ
22 内側チューブ
100 基材
101 Poly-PEGMA膜
110 シリコーンゴム基材
【手続補正書】
【提出日】2023-08-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明の医療器具の表面処理方法は、シリコーンゴムで形成された構成要素を備えた医療器具において、オゾン(O
3
)による前記構成要素のシリコーンゴム表面の官能化を行った後、前記構成要素の前記シリコーンゴム表面を濃度10~30%のPEGMA水溶液に浸漬して前記シリコーンゴム表面に紫外線(UV)を所定の時間照射し、該シリコーンゴム表面にPoly-PEGMA層を形成する表面修飾を行う過程を含む、ことを特徴とする。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
或る実施形態において、前記PEGMA水溶液に浸漬して前記シリコーンゴム表面に紫外線を照射する前記所定の時間は3時間である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
【
図1】(a)は、本発明を適用したカテーテルの典型例を示す概略図、(b)はその部分拡大断面図である。
【
図2】本発明によるカテーテルの製造工程を示すフロー図である。
【
図3】(a)は、本発明の表面処理方法によってシリコーンゴム表面にPoly-PEGMA層が形成される反応スキームを示す模式図、(b)はシリコーンゴム表面に形成されるPEGMAの構造式である。
【
図4】(a),(b)は、濃度10%のPEGMA水溶液で表面処理したサンプル1の表面及び表面付近の断面を撮影した倍率×1000及び倍率×10000のSEM画像である。
【
図5】(a),(b)は、濃度10%のPEGMA水溶液で表面処理したサンプル3の表面及び表面付近の断面を撮影した倍率×1000及び倍率×10000のSEM画像である。
【
図6】(a),(b)は、それぞれ濃度30%のPEGMA水溶液で表面処理したサンプル4の表面及び表面付近の断面を撮影した倍率×1000及び倍率×10000のSEM画像である。
【
図7】(a),(b)は、濃度30%のPEGMA水溶液で表面処理したサンプル5の表面及び表面付近の断面を撮影した倍率×1000及び倍率×10000のSEM画像である。
【
図8】(a),(b)は、濃度30%のPEGMA水溶液で表面処理したサンプル6の表面及び表面付近の断面を撮影した倍率×1000及び倍率×10000のSEM画像である。
【
図9】(a),(b)は、本発明の表面処理を施していない比較サンプル1の表面及び表面付近の断面を撮影した倍率×1000及び倍率×10000のSEM画像である。
【
図10】(a),(b)は、本発明の表面処理を施していない比較サンプル2の表面及び表面付近の断面を撮影した倍率×1000及び倍率×10000のSEM画像である。
【
図11】(a),(b)は、本発明の表面処理を施していない比較サンプル3の表面及び表面付近の断面を撮影した倍率×1000及び倍率×10000のSEM画像である。
【
図12】(a),(b)は、サンプル5について行ったEDS分析の結果を示す表示画面である。
【
図13】(a),(b)は、比較サンプル2について行ったEDS分析の結果を示す表示画面である。
【
図14】(a)~(c)は、本発明の方法により10%PEGMA水溶液を使用し、
紫外線照射の処理時間を3時間に設定して表面処理したサンプル3の表面の摩擦係数をN=3回測定した試験結果を示す線図である。
【
図15】(a)~(c)は、本発明の方法により30%PEGMA水溶液を使用し、
紫外線照射の処理時間を3時間に設定して表面処理したサンプル6の表面の摩擦係数を測定した試験結果を示す線図である。
【
図16】(a)~(c)は、本発明の表面処理を施していない比較サンプル3の表面の摩擦係数を測定した試験結果を示す線図である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
シリコーンゴムで形成された構成要素を備えた医療器具において、オゾン(O
3
)による前記構成要素のシリコーンゴム表面の官能化を行った後、前記構成要素の前記シリコーンゴム表面を濃度10~30%のPEGMA水溶液に浸漬して前記シリコーンゴム表面に紫外線(UV)を所定の時間照射し、該シリコーンゴム表面にPoly-PEGMA層を形成する表面修飾を行う過程を含む、医療器具の表面処理方法。
【手続補正5】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項2
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項2】
前記PEGMA水溶液に浸漬して前記シリコーンゴム表面に紫外線を照射する前記所定の時間が3時間である、請求項1に記載の医療器具の表面処理方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンゴムで形成された構成要素を備えた医療器具において、オゾン(O3)による前記構成要素のシリコーンゴム表面の官能化を行った後、前記構成要素の前記シリコーンゴム表面を濃度10~30%のPEGMA水溶液に浸漬して前記シリコーンゴム表面に紫外線(UV)を所定の時間照射し、該シリコーンゴム表面にPoly-PEGMA層を形成する表面修飾を行う過程を含む、医療器具の表面処理方法。
【請求項2】
前記PEGMA水溶液に浸漬して前記シリコーンゴム表面に紫外線を照射する前記所定の時間が3時間である、請求項1に記載の医療器具の表面処理方法。
【請求項3】
前記シリコーンゴム表面を浸漬した前記PEGMA水溶液を窒素ガスでバブリングし、シリコーンゴムとPEGMA水溶液とを含む反応系から酸素を除去する過程をさらに含む、請求項1に記載の医療器具の表面処理方法。
【請求項4】
前記医療器具が、シリコーンゴムで形成されたカテーテルチューブを備えるカテーテルであり、前記カテーテルチューブのシリコーンゴム表面に前記表面修飾を行う、請求項1乃至3のいずれかに記載の医療器具の表面処理方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】削除
【補正の内容】