(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008254
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】工作機械装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/329 20170101AFI20240112BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20240112BHJP
B29C 64/255 20170101ALI20240112BHJP
B33Y 40/20 20200101ALI20240112BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240112BHJP
【FI】
B29C64/329
B29C64/118
B29C64/255
B33Y40/20
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109968
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】518205140
【氏名又は名称】株式会社ExtraBold
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】原 雄司
(72)【発明者】
【氏名】大塚 健
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AC01
4F213AL12
4F213WA25
4F213WA54
4F213WA62
4F213WB01
4F213WF41
4F213WL02
4F213WL32
4F213WL72
4F213WL74
4F213WL85
4F213WW24
(57)【要約】
【課題】造形における材料の供給を自動化することにより造形コストの低減を図るとともに、材料の付着を防止する。
【解決手段】工作機械装置は、互いに直交するx軸y軸およびz軸で構成される3次元の空間に材料を射出して造形する工作機械装置であって、射出口から材料をz軸方向に射出する射出ノズルと、射出ノズルを3次元の空間において移動させる移動装置と、移動装置によって射出ノズルとともに移動されて、射出ノズルから射出される材料を貯蔵する貯蔵部と、移動装置によって射出ノズルとともに移動されて、貯蔵部に貯蔵された材料を射出ノズルに移送する移送部と、貯蔵部に貯蔵された材料に対してイオンを放出して材料に帯電した静電気を除電する除電器と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交するx軸y軸およびz軸で構成される3次元の空間に材料を射出して造形する工作機械装置であって、
射出口から材料をz軸方向に射出する射出ノズルと、
前記射出ノズルを前記3次元の空間において移動させる移動装置と、
前記移動装置によって前記射出ノズルとともに移動されて、前記射出ノズルから射出される材料を貯蔵する貯蔵部と、
前記移動装置によって前記射出ノズルとともに移動されて、前記貯蔵部に貯蔵された材料を前記射出ノズルに移送する移送部と、
前記貯蔵部に貯蔵された材料に対してイオンを放出して材料に帯電した静電気を除電する除電器と
を備える、工作機械装置。
【請求項2】
前記除電器から放出するイオンの極性を選択する極性選択部をさらに備え、
前記除電器は、前記極性選択部において選択された極性のイオンを放出する、請求項1に記載の工作機械装置。
【請求項3】
前記除電器は、前記貯蔵部においてz軸方向にイオンを放出する、請求項1または2のいずれか一項に記載の工作機械装置。
【請求項4】
前記除電器は、前記移送部からの材料の移送に応じてイオンを放出する、請求項3に記載の工作機械装置。
【請求項5】
前記貯蔵部に対して材料を供給する材料供給部をさらに備え、
前記除電器は、前記材料供給部から前記貯蔵部に対する材料の供給に応じてイオンを放出する、請求項3に記載の工作機械装置。
【請求項6】
材料の種類に応じた帯電特性を記憶する帯電特性記憶部と、
前記射出ノズルから射出される材料の種類を入力する入力部と、をさらに備え、
前記極性選択部は、前記入力部から入力された材料の種類と前記帯電特性記憶部に記憶された帯電特性とに基づき極性を選択する、請求項2に記載の工作機械装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、3D(Three-Dimensional)-CAD(Computer-Aided Design)、または3DCG(computer graphics)等において作成された3Dデータに基づき、材料を一層一層積層していき造形物(ワーク)を造形する3Dプリンタが知られている。3Dプリンタには様々な造形方式が用いられる。例えば、熱で融解した材料を積層していきワークを造形するFDM(Fused Deposition Modeling)方式の3Dプリンタがある。FDM方式の3Dプリンタは、溶融した樹脂等の材料を吐出する吐出部を三次元(または二次元)で移動させる主軸を有し、主軸を制御する制御部が主軸を三次元に移動させることによりワークを造形する。
【0003】
また、3Dプリンタの吐出部をマシニングセンタの主軸に取り付けて使用する装置がある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、造形に必要な材料の量は造形物によって異なるため、造形物によっては、造形の途中で人が材料を補充してやる必要があり、材料補充のための人件費と稼働率の低下により、造形コストが上がってしまう場合があった。
【0006】
また、材料を補充する際に材料同士の摩擦によって静電気が発生し、帯電した材料が材料を貯蔵する部分等に付着してしまう場合があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、造形における材料の供給を自動化することにより造形コストの低減を図るとともに、材料の付着を防止することができる、工作機械装置を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、実施形態の工作機械装置は、互いに直交するx軸y軸およびz軸で構成される3次元の空間に材料を射出して造形する工作機械装置であって、射出口から材料をz軸方向に射出する射出ノズルと、射出ノズルを3次元の空間において移動させる移動装置と、移動装置によって射出ノズルとともに移動されて、射出ノズルから射出される材料を貯蔵する貯蔵部と、移動装置によって射出ノズルとともに移動されて、貯蔵部に貯蔵された材料を射出ノズルに移送する移送部と、貯蔵部に貯蔵された材料に対してイオンを放出して材料に帯電した静電気を除電する除電器と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一つの実施形態によれば、工作機械装置は、射出ノズルから材料をz軸方向に射出し、射出ノズルを3次元の空間において移動させ、射出ノズルとともに移動されて射出ノズルから射出される材料を貯蔵し、射出ノズルとともに移動されて、貯蔵された材料を射出ノズルに移送し、貯蔵された材料に対してイオンを放出して材料に帯電した静電気を除電することにより、造形における材料の供給を自動化することにより造形コストの低減を図るとともに、材料の付着を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態における工作機械装置の外観の一例を示す図である。
【
図2】実施形態における、(A)主軸に対する工具装着時の一例、(B)主軸に対する造形装置装着時の一例を示す図である。
【
図3】実施形態における材料の除電方法の一例を示す図である。
【
図4】実施形態における工作機械装置の他の一例を示す図である。
【
図5】実施形態における除電器による除電の効果の一例を示す図である。
【
図6】実施形態における工作機械装置1の構造の一例を示す図である。
【
図7】実施形態における極性選択動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態におけるワーク製作の一例を示すフローチャートである。
【
図9】実施形態における除電動作の一例を示すフローチャートである。
【
図10】実施形態における除電動作の他の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態における工作機械装置について詳細に説明する。なお、各図において同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0012】
図1は、実施形態における工作機械装置の外観の一例を示す図である。
図1において、工作機械装置1は、主軸11、クランプ機構111、材料供給部112、工具格納エリア12、造形装置格納エリア13、製作エリア14、工具シャッタ15、造形装置シャッタ16、移動装置4を有している。
【0013】
本実施例において工作機械装置1は、互いに直交するx軸y軸およびz軸で構成される3次元の空間に材料を射出して造形する装置であって、例えば、3Dプリンタである。
図1において、x軸は図面上の左右方向、y軸は図面の平面と直交する方向(不図示)、およびz軸は図面上の上下方向である。すなわち、
図1は、x-z平面における平面図である。造形方法の詳細は後述する。
【0014】
移動装置4は、駆動部41、x軸スライド部42x、y軸スライド部42y、およびz軸スライド部42zを有している。x軸スライド部42x、y軸スライド部42y、およびz軸スライド部42z(以下、x軸スライド部42等という場合がある。)は、互いに直交するx軸、y軸およびz軸(以下、x軸等という場合がある。)において駆動部41における駆動によって主軸11等の駆動対象を直線的にスライド(摺動)させる装置であって、例えば、スライドガイドまたはボールスプラインである。駆動部41は、x軸スライド部42等によってスライドされる駆動対象を、駆動する装置である。駆動部41は、例えば、ボールネジ、ボールナットおよびモータ等から構成されて、ボールナットのハウジングに固定された移動対象をボールねじの回転によって直線的に移動等させて移動対象の位置決めをする。
【0015】
工作機械装置1は、主軸11を有している。主軸11は、クランプ機構111および材料供給部112を有している。
【0016】
クランプ機構111は、工具を自動的に交換するためのクランプ機能を有している。クランプとは、掴むまたは挟み込むことをいう。クランプ機能とは、例えば、マシニングセンタ等の工作機械において用いられる自動工具交換(Auto Tool Changer:ATC)に用いられる機能(装置の構造)である。クランプ機構111は、複数の工具の中から加工に用いる工具をクランプし、またはアンクランプすることにより、主軸11への工具の交換(着脱)を自動的に行う。クランプ機構111の形状は、例えば、ATC用テーパシャンクの工業規格として、MAS規格(日本工作機械工業会規格)、DIN規格(ドイツ工業規格)、またはANS規格(米国国家規格協会規格)等によって定められている。クランプ機構111は、例えば工具2の2面を拘束するHSKタイプ(ISO12164-1:2001またはISO12164-3:2008、ISO:国際標準化機構)を用いてクランプを行うことができる。
【0017】
なお、
図1においては、クランプ機構111に工具2がクランプされている様子を示しているが、クランプ機構111には、工具2の換わりに造形装置をクランプすることができる。材料供給部112は、クランプ機構111に造形装置がクランプされたときに造形装置で使用される造形材料を供給する。造形装置および材料供給部112の詳細は後述する。
【0018】
工具格納エリア12は、クランプ機構111によりクランプされる工具2を格納するためのエリアである。工具2のクランプは、工具格納エリア12において行われる。工具格納エリア12は、クランプ機構111によりクランプされる工具を装着するためのエリア、すなわちATCが行われるエリアである。工具格納エリア12には、工具を自動交換(ATC)するためのATC機構(不図示)が含まれている。工具格納エリア12に格納されている工具2は、例えば、ATC機構によって、クランプ機構111がクランプ可能な位置に移動されて主軸11に装着される。
【0019】
造形装置格納エリア13は、クランプ機構111によりクランプされる造形装置(後述)を格納するためのエリアである。造形装置のクランプは、造形装置格納エリア13において行われる。すなわち、造形装置格納エリア13は、クランプ機構によりクランプされる造形装置を装着するためのエリアである。造形装置は造形装置格納エリア13の所定の位置に載置される。クランプ機構111は、工作機械装置1の主軸11を三次元等で移動させるための移動装置4に主軸11を介して取り付けられている。移動装置4によって主軸11に取り付けられたクランプ機構111を造形装置がクランプ可能な位置まで移動させることにより、造形装置をクランプすることができる。造形装置格納エリア13には、造形装置を保持するための保持機構(不図示)が含まれている。造形装置格納エリア13に格納されている造形装置は、例えば、保持機構によって、クランプ機構111がクランプ可能な位置に移動されて主軸11に装着される。
【0020】
製作エリア14は、工具を用いた加工によるワークの製作または造形装置を用いた造形によるワークの製作をするための空間である。主軸11は製作エリア14において工具を回転させて、あるいは造形装置から材料を吐出させるための回転機構(不図示)を内部に有している。回転機構の回転の開始および停止、あるいは回転機構の回転数は、後述する制御部によって制御される。本実施例における主軸11は、内部に回転機構を有するケーシングを含むものである。なお、主軸11内部の回転機構の回転を主軸11の回転と略して説明する場合がある。
【0021】
製作エリア14には、ワークを載置(セッティング)するテーブル(不図示)を置くことができる。テーブルはワークを回転または移動するためのワーク移動機能を有していてもよい。ワーク移動機能におけるワークの移動は、主軸11と独立して制御されてもよい。
【0022】
工具シャッタ15は、工具格納エリア12と製作エリア14とを遮断するシャッタである。また、造形装置シャッタ16は、造形装置格納エリア13と製作エリア14とを遮断するシャッタである。工具シャッタ15および造形装置シャッタ16は開閉機構を有し、開閉機構は工具格納エリア12における工具2の着脱および造形装置格納エリア13における造形装置の着脱に応じて開閉制御される。
【0023】
例えば、工具2が装着されるときには、工具格納エリア12の工具シャッタ15が開き、主軸11がクランプ機構111を工具2のクランプ位置まで移動させ、クランプ機構111が工具2をクランプする。クランプされた工具2は、製作エリア14において図示しないワークを加工することができる。
【0024】
また、造形装置が装着されるときには、造形装置格納エリア13の造形装置シャッタ16が開き、主軸11がクランプ機構111を造形装置のクランプ位置まで移動させ、クランプ機構111が造形装置をクランプする。クランプされた造形装置は、製作エリア14において図示しないワークを造形することができる。
【0025】
なお、後述する造形装置がFDM方式の造形を行うプリンタヘッドである場合、材料を溶融するためには、固形の材料に温度または圧力を加えて材料を溶融するため、造形装置は発熱源となり得る。一方、工作機械装置1の主軸11等の機械部分、またはワークは温度変化による熱膨張により加工精度が低下する可能性がある。造形装置シャッタ16は、熱源となる造形装置と製作エリアを熱的に遮断することにより、製作エリアに対する熱の伝達を防止することが可能となる。また、工具シャッタ15および造形装置シャッタ16は、製作エリア14で発生する切削粉などによるエリア内の汚染を防止することが可能となる。
【0026】
次に、
図2を用いて、主軸に対する工具または造形装置の装着について説明する。
図2は、実施形態における、(A)主軸11に対する工具装着時の一例、(B)主軸11に対する造形装置装着時の一例を示す図である。
図2(A)および
図2(B)は、
図1における工作機械装置1の、主に主軸11の部分の詳細を示している。ここで、
図2(A)は、クランプ機構111に工具2がクランプされている様子を示している。また、
図2(B)は、クランプ機構111に造形装置3がクランプされている様子を示している。
【0027】
図2(A)において、主軸11は、クランプ機構111、材料供給部112および給電部113Aを有している。
【0028】
クランプ機構111は、主軸11の下端に取り付けられているため、主軸11と共に移動する。すなわち、クランプ機構111に取り付けられた工具2(または造形装置3)は移動装置4によって3次元に移動される。また、主軸11は、クランプ機構111でクランプされた工具2を回転機構(不図示)によって回転させる。主軸11の移動および回転(クランプされた工具2の回転)は、後述する制御部で実行される制御プログラムによって制御される。制御プログラムには、例えば、主軸11を三次元に移動させるための制御コマンド、主軸11の回転の開始または停止を指示するための制御コマンド、または主軸11の回転速度を指定するための制御コマンド等が含まれる。制御プログラムには、例えば、NC(numerical control)プログラムが用いられる。
【0029】
材料供給部112および給電部113Aは、主軸11に取り付けられているため、主軸11と共に移動する。材料供給部112は、造形装置3がクランプ機構111にクランプされたときに造形用の材料を供給するための供給機構である。したがって、造形装置3がクランプされていない場合、材料供給部112から材料の供給はされない。給電部113Aは、造形装置3がクランプ機構111にクランプされたときに造形装置3に電力を供給する。なお、材料供給部112および給電部113Aの詳細は
図2(B)において説明する。
【0030】
図2(B)において、主軸11の下端に取り付けられたクランプ機構111は、造形装置3をクランプしている。工具2と造形装置3はクランプ機構111によって自動的に交換することができる。工具2と造形装置3を自動的に交換することにより、材料の加工と造形を同じ製作エリアにおいて連続して行うことが可能となる。このため、加工と造形をそれぞれ別の装置で行う場合に比べて、装置コストの低減、ワークのセッティングに伴う工数の低減、装置稼働率の向上、または工作に用いられるプログラムの共有化によるコストの低減等を計ることが可能となる。
【0031】
造形装置3は、受電部113B、吐出ノズル31、貯蔵部32、傾斜部321、加熱部322、保温部33、溶融部34、移送部35および除電器36を有する。
【0032】
造形装置3は、供給された材料を溶融して、溶融した材料を吐出ノズル31から吐出する、例えば、FDM方式のプリンタのヘッド部分である。以下、本実施例では、材料造形方式はFDM方式の造形を行う場合を説明するが、造形装置3は、吐出した液体材料を紫外線等で硬化させる光造形方式、粉体とバインダを吐出して固化させる粉末固着方式等、3Dプリンタに用いられる他の方式を用いるものであってもよい。
【0033】
吐出ノズル31は、ワークを造形するための溶融した材料を射出する。貯蔵部32は、材料供給部112から供給された材料を貯蔵する。加熱部322は、貯蔵部32に貯蔵された材料を加熱して溶融させる。傾斜部321は、加熱部322によって溶融された材料を重力により集めて保温部33の内部に供給する。保温部33は溶融された材料の保温を行う。溶融部34は溶融された材料の再加熱または温度調整を行う。移送部35は、保温部33に貯蔵された溶融された材料を移送して、吐出ノズル31から吐出させる。
【0034】
材料供給部112は、造形装置3がクランプ機構111によってクランプされたときに貯蔵部32と対向して、貯蔵部32に対して材料を供給する。造形装置3がクランプされたときに材料供給部112と貯蔵部32とを対向させることにより、造形装置3に対して連続して材料を自動的に供給することが可能となる。これにより、例えば、材料が無くなった場合にその都度手動で材料を供給する場合に比べて、工作機械装置1の稼働率を向上させることが可能となる。
【0035】
材料供給部112は、中空構造を有し、中空構造(例えば、フレキシブルホース等)の中を、材料を移動させることにより貯蔵部32に対して材料を供給する。材料供給部112は、貯蔵部32に対して材料を供給する際に、例えば圧搾空気または移送ポンプを利用してもよい。圧搾空気により材料を供給するには、例えば、材料を圧搾空気の圧力によって材料供給部112の内部を移動させることにより行うことができる。また、移送ポンプにより材料を供給するには、例えば、回転容積式一軸偏心ネジポンプによって材料を材料供給部112の内部を移動させることにより行うことができる。
【0036】
材料の供給は、例えば貯蔵部32に貯蔵される材料を一定の量に保つように制御するようにしてもよい。例えば、貯蔵部32に取り付けられた図示しないセンサによって材料の貯蔵量が少なくなったことを検知して、材料を自動的に供給してもよい。貯蔵される材料を自動的に一定の量に保つことにより、材料の供給を自動化することができる。
【0037】
傾斜部321には、加熱部322が取り付けられており、貯蔵部32に貯蔵された材料を加熱する。加熱部322は、貯蔵部32の内部において斜め上方向のヒータ(図示破線部)を有している。これにより、ヒータが材料と接触する面積が増大して、材料の溶融が容易になる。加熱部322は、材料が溶融する溶融温度前後まで加熱(プレ加熱)するようにしてもよい。熱容量の大きい材料は、一度温度が上がると温度が下がりにくくなるため、降温による温度制御が困難となる。加熱部322において材料をプレ加熱することにより、溶融部34における温度制御を容易にするとともに溶融部34における加熱負荷を小さくすることができ、溶融部34を小型化することが可能となる。また、加熱部322が材料を吐出に必要な温度まで加熱することにより、溶融部34における材料の加熱を省略するようにしてもよい。
【0038】
受電部113Bは、造形装置3がクランプ機構111によってクランプされたときに給電部113Aと対向して、給電部113Aから供給される電力を受電する。給電部113Aおよび受電部113Bの組合せは給電機構113を形成する。給電機構113によって供給された電力は、加熱部322または溶融部34によって利用される。なお、受電部113Bと対向して電力を供給する給電部113Aを給電機構という場合がある。例えば、造形装置3がクランプ機構111によってクランプされていない状態においても工作機械装置1は給電機構(給電部113A)を備えるものとする。
【0039】
給電機構113は、給電部113Aが有する接点と受電部113Bが有する接点とが、造形装置3がクランプ機構111によってクランプされたときに接触することによって電力を給電する。これにより、クランプ機構111によってクランプされた造形装置3に対して電力を供給可能になる。給電機構113には、有接点のコネクタ機構を用いることができる。有接点のコネクタ機構を用いることにより構造が単純となり低コストで電力を供給することが可能となる。なお、接点に例えば金メッキを施すことにより接点の接触による電気抵抗を安定させることが可能となる。
【0040】
また、給電機構113は、給電部113Aが有する給電ユニットと受電部113Bが有する受電ユニットとが、造形装置3がクランプ機構111によってクランプされたときに近接することによって電力を給電する非接触(ワイヤレス)給電方式を用いるものであってもよい。例えば、給電部113Aの給電ユニットには給電用コイルが設けられ、受電部113Bの受電ユニットには受電用コイルが設けられ、給電用コイルから発生する電磁波を受電用コイルで受けることにより給電を行う。給電機構113において非接触給電方式を用いることにより、接点の接触不良による給電の不具合を防止することが可能となる。
【0041】
また、造形装置3に対する給電は、造形装置3に設けられた図示しない発電装置を用いるものであってもよい。発電装置は、例えば、主軸11を回転させることにより回転子が回転する発電機であってもよい。例えば、発電機は、材料を吐出させる搬送機構の回転とともに回転子が回転するものであってもよい。また、発電機は、材料を吐出させる搬送機構の回転と回転力の伝達を切り替えて回転子が回転するものであってもよい。造形装置3に対する給電に造形装置3に設けられた発電装置を用いることにより、主軸11における給電機構を省略することが可能となる。給電機構113は、給電部113Aが有する回転機構と受電部113Bが有する回転機構とを、造形装置3がクランプ機構111によってクランプされたときに回転力が伝達可能に接合することによって、受電部113Bの内部に有する発電機の回転子を回転させて電力を発生させるものであってもよい。例えば、給電部113Aの回転機構を制御コマンドで回転させることにより、受電部113Bが有する回転機構を回転させて発電機の回転子を回転するようにしてもよい。受電部113Bの内部に有する発電機により発電を行うことにより、給電部113Aと受電部113Bにおける電気的な接続を省略することが可能となる。
【0042】
保温部33は、傾斜部321から供給された材料を保温する。保温部33は、例えば、魔法瓶のように断熱層を有して材料の温度が造形装置3の外部に伝達するのを防止する。保温部33が材料を保温することにより、例えば、加熱部322において材料が溶融された場合、材料の温度を維持することが可能となり、材料の温度変化による粘度変化を小さくすることができる。
【0043】
移送部35は、保温部33に貯蔵された溶融された材料を移送して加圧し、吐出ノズル31から吐出させる。移送部35は、例えば、内部にスクリューを有して、スクリューを回転させることによって材料を移送する。スクリューの回転は、主軸11の回転を用いることができる。すなわち、クランプ機構111で造形装置3がクランプされたときに、工具2の換わりに移送部35のスクリューが回転するようにすることにより、主軸11の回転制御によってスクリューの回転を制御することが可能となる。例えば、工作機械装置1は、工具2の回転の開始または停止を指示するための制御コマンドに基づきスクリューの回転を制御することができる。これにより、材料射出の開始または停止を同じ制御コマンドで制御することができる。制御コマンドには、例えば、NCプログラムのMコードを用いることができる。Mコードとは、NCプログラムにおいて加工を行うための補助機能を定義する制御コマンドである。Mコードは、例えばJIS(Japanese Industrial Standards)規格において規定されている。例えば、「M03」は工具(主軸)を正転させるためのコマンドであり、「M05」は工具の回転を停止させるためのコマンドである。「M03」のコマンドによって材料の射出が開始され、「M05」のコマンドによって材料の射出が停止される制御が可能となる。主軸11の回転によって移送部35のスクリューを回転させることにより、造形装置3を制御するコマンドを新たに追加することなく、材料射出の開始または停止を制御することが可能となり、製作工数を低減させることが可能となる。
【0044】
また、工作機械装置1は、造形装置3の搬送機構の回転速度を工具の回転速度を指定するための制御コマンドに基づき制御させることにより、材料射出の量を制御する。工具の回転速度を指定するための制御コマンドは、例えばNCプログラムのSコードにおいて実施することができる。Sコードとは、工具の回転数を設定する制御コマンドである。例えば、「S2000」は、工具を2千rpmで回転させるためのコマンドである。Sコードは上述したMコードとともに使用される。Sコードにおいて搬送機構の回転数を制御することにより、造形装置3を制御するコマンドを新たに追加することなく、材料射出量を制御することが可能となり、製作工数を低減させることが可能となる。
【0045】
<静電気の発生>
本実施形態においては、材料供給部112から貯蔵部32に対して材料が供給される。材料が貯蔵部32に供給される際には、材料同士の摩擦または材料と材料供給部112の摩擦等により材料が帯電する場合がある。例えば、人が手で材料を供給する場合、材料同士が摩擦しないようにゆっくりと注意深く材料供給の作業をすることができる。しかし、本実施形態のように材料を材料供給部112から供給する場合、材料の投入速度を調整するのが困難となる場合がある。例えば、圧搾空気で材料を移送する場合、圧搾空気の圧力や空気量を下げると材料が移送されずに材料供給部112等の内部に詰まってしまう。このため、圧搾空気の圧力や空気量を上げると、貯蔵部32に貯蔵される材料の投入速度が速くなってしまう場合がある。また、材料供給部112から貯蔵部32に材料を重力によって落下させる場合、材料の落下速度を制御できない場合がある。したがって、材料の帯電自体を防止することは困難となる場合がある。
【0046】
<静電気による材料の付着>
材料が帯電した場合、材料が貯蔵部32に貯蔵される際に貯蔵部32の内壁に帯電した材料が静電気によって付着する場合がある。付着した材料は、例えば加熱部322からの熱により溶融して貯蔵部32に固着してしまう場合がある。付着した材料を清掃すると清掃に要する時間によって工作機械装置1の稼働率を低下させる場合がある。
【0047】
<静電気の除電>
除電器36は、貯蔵部32に貯蔵された材料に対してイオンを放出して、材料に帯電した静電気を除電する。除電器36は、給電機構113によって供給された電力によって動作させることができる。除電器36の詳細は、
図3において説明する(
図3においては、除電器36Aおよび除電器36Bとして説明している)。
【0048】
次に、
図3を用いて、除電器を用いた除電方法を説明する。
図3は、実施形態における材料の除電方法の一例を示す図である。
【0049】
図3において、工作機械装置1は、貯蔵部32、傾斜部321、加熱部322、除電器36A、高圧ケーブル361A、除電器36Bおよび高圧ケーブル361Bを有する。なお、
図3においては、傾斜部321および加熱部322の説明は省略する。
【0050】
除電器36Aは、高圧ケーブル361Aに高電圧を印加してイオンを発生させる。また、除電器36Bは、高圧ケーブル361Bに高電圧を印加してイオンを発生させる。除電器36Aおよび除電器36Bは、正イオンと負イオンを同時に発生させるAC型除電器、または、正イオンまたは負イオンのいずれか一方を発生させるDC型除電器である。
【0051】
<AC型除電器による実施>
AC型除電器は、正帯電した材料と負帯電した材料のいずれに対しても除電効果を有する。このため材料の帯電特性にかかわらず使用することができる。
図3においては、除電器36Aと除電器36Bの2台を用いる場合を例示しているが、AC型除電器を用いる場合、除電器は1台であっても実施することができる。また、除電範囲を広げる等、除電能力を上げたい場合は3台以上の除電器を用いてもよい。また、材料の帯電状態に応じて、一度に運転する除電器の台数を調整できるようにしてもよい。例えば、予め設定された材料の種類または材料の投入量(投入速度)等に基づいて、除電器の運転台数が自動的に選択されるようにしてもよい。また、予め設定された材料の種類または材料の投入量等に基づいて、除電器における印加電圧が自動的に選択されるようにしてもよい。また、印加電圧の波形は任意であり、正弦波であってもよく、パルス波であってもよい。
【0052】
<DC型除電器による実施>
DC型除電器は、正帯電した材料または負帯電した材料のいずれか一方に対して除電効果を有する。例えば、正帯電した材料に対しては、負イオンを発生させる除電器が有効となる。また、負帯電した材料に対しては、正イオンを発生させる除電器が有効となる。材料が正帯電するか負帯電するかの帯電特性を帯電特性記憶部に予め記憶しておき、除電器で発生させるイオンの極性を極性選択部において自動的に選択するようにしてもよい。帯電特性記憶部および極性選択部は、後述する制御部において構成することができる。例えば、除電器36Aが正イオンを発生し、除電器36Bが負イオンを発生させる除電器である場合、極性選択部は、材料の種類に応じていずれの除電器(除電器36Aまたは除電器36Bのいずれか)を運転するかを自動的に選択する。また、除電器36Aおよび除電器36Bが印加する高電圧の極性を変更できるものである場合、極性選択部は、材料の種類に応じていずれかの極性を印加するかを自動的に選択する。また、予め設定された材料の種類または材料の投入量等に基づいて、極性選択部は、除電器における印加電圧を自動的に選択するようにしてもよい。
【0053】
高圧ケーブル361Aおよび高圧ケーブル361Bは、貯蔵部32の内部に配置されて、図示z軸方向(下向き)に配置されている。これにより、貯蔵部32において投入されてz軸方向に移動(または落下)する材料が高圧ケーブル361Aおよび高圧ケーブル361Bに長時間接近することができるため、除電効果を向上させることが可能となる。なお、高圧ケーブル361Aおよび高圧ケーブル361Bの形状は図示したものには限定されない。高圧ケーブルは、例えば、貯蔵部32内においてz軸方向に直線的に配置される形状、または貯蔵部32内においてコイル状に配置される形状であってもよい。また、高圧ケーブル361Aおよび高圧ケーブル361Bの形状は、ケーブルを幹として、幹に対して複数の突起が枝状に伸びる形状を有するものであってもよい。また、除電器36Aおよび除電器36Bは高圧ケーブルを貯蔵部32の内部に配置する代わりに、高圧ケーブルで発生したイオンを貯蔵部32の内部においてエアブローするものあってもよい。エアブローをz軸方向に行うことにより、降圧ケーブルを貯蔵部32においてz軸方向に配置するのと同様の効果を得ることができる。
【0054】
また、除電器36Aおよび除電器36Bは、連続運転と間欠運転を切り換えるようにしてもよい。連続運転とは、工作機械装置1の動作状態にかかわらず運転されることをいう。連続運転においては、工作機械装置1の電源が投入されているときに連続して除電される。一方、間欠運転においては、工作機械装置1の動作状態によって、除電動作を変化させる。材料が静電気を帯電するのは、材料に摩擦が生じるときであって、材料が移動するときに摩擦が生じる。
【0055】
<材料の移送に応じた除電>
除電器36A(除電器36Bにおいても動作は同様であるため、以下、除電器36Aについてのみ説明する)は、移送部35からの材料の移送に応じてイオンを放出する。移送部35によって材料が移送(吐出ノズル31から材料が吐出)された場合、貯蔵部32に貯蔵された材料がz軸方向に移動する。材料に発生した静電気は除電器36Aから放出されたイオンによって数秒で除電される場合がある。除電器36Aは、移送部35からの材料の移送に応じてイオンを放出することにより、無駄なイオンの放出を防止して省電力を図ることができる。
【0056】
<材料の供給に応じた除電>
除電器36Aは、材料供給部112からの材料の供給に応じてイオンを放出する。材料供給部112からの材料が供給された場合、貯蔵部32に貯蔵されている材料との摩擦が生じて静電気が発生する。除電器36Aは、材料供給部112からの材料の供給に応じてイオンを放出することにより、無駄なイオンの放出を防止して省電力を図ることができる。
【0057】
次に
図4を用いて、工作機械装置1の他の一例を説明する。
図4は、実施形態における工作機械装置の他の一例を示す図である。
【0058】
図4において、工作機械装置1は、材料供給部112、貯蔵部32、傾斜部321、加熱部322、除電器36A、高圧ケーブル361A、除電器36Bおよび高圧ケーブル361Bを有する。
【0059】
貯蔵部32はのぞき窓を有し、貯蔵部32の内部が外部から確認できるようになっている。
図4における貯蔵部32は、
図3における貯蔵部32に対してz軸方向に長いため、貯蔵部32において材料が落下する距離が長くなり、材料同士の摩擦により材料が帯電しやすくなる。工作機械装置1は、除電器36A(および除電器36B)を有することにより、貯蔵部32において発生する材料の静電気を除電することができるため、材料の貯蔵量を増加させることが可能となる。
【0060】
次に
図5を用いて、除電器による除電の効果を説明する。
図5は、実施形態における除電器による除電の効果の一例を示す図である。
【0061】
図5のグラフにおいて、横軸は除電器36Aおよび除電器36Bを用いた除電開始からの経過時間(秒)であり、縦軸は貯蔵部32における材料の静電気電圧(V)を示している。本実施例において、除電器36Aおよび除電器36Bはパルス波形によるAC型除電器を用いた。材料は直径2mm、長さ10mmの円柱形ペレットを用いた。
【0062】
除電前において材料は約8KVで帯電している。帯電電圧は、除電開始から1秒後に約半分の4KVまで低下して、2秒後には約1/4の2KV程度まで低下する。すなわち、貯蔵部32に投入された材料は貯蔵されている数秒の間にほぼ除電されることが確認された。材料投入後に長時間(例えば10秒以上)の除電を行っても帯電電圧に大きな変化はなかった。これにより、除電器36Aおよび除電器36Bは材料投入後、数秒間(例えば、6秒間)の運転を行うことが効果的であることが分かった。なお、材料の種類および投入量によって帯電電圧や除電時間に多少の差はあるが、除電の効果はほぼ同じであった。
【0063】
次に、
図6を用いて、工作機械装置1の構造を説明する。
図6は、実施形態における工作機械装置1の構造の一例を示す図である。
【0064】
図6において、工作機械装置1は、制御部10、主軸11、クランプ機構111、工具格納エリア12、造形装置格納エリア13、製作エリア14、工具シャッタ15および造形装置シャッタ16を有する。
【0065】
制御部10は、入力部101、帯電特性記憶部102および極性選択部103を有する。入力部101は、例えば、スイッチ、テンキーまたはプログラムを入力するためのインタフェイスである。帯電特性記憶部102は、材料の帯電特性を記憶する。帯電特性とは、その材料がどのような帯電をするかの情報であって、例えば、正帯電するかあるいは負帯電するかの情報、または、帯電電圧の情報等である。極性選択部103は、帯電特性記憶部102に記憶された帯電特性の情報に基づき、除電器36Aから供給されるイオンの極性、印加電圧または電圧波形等を自動的に選択する。
【0066】
制御部10は、例えば、工作機械装置1を制御するコンピュータであって、上述したNCプログラムを制御する。制御部10は、クランプ機構111によるクランプ動作の制御、主軸11の回転制御(回転/停止、および回転数の制御)、材料供給部112による材料の供給の制御、工具シャッタ15および造形装置シャッタ16の開閉制御、加熱部322および溶融部34の加熱制御、および移動装置4の移動制御等を行う。なお、制御部10は、ランプまたはディスプレイ等による出力手段を有していてもよい。
【0067】
次に、
図7~
図10を用いて、工作機械装置1の動作を説明する。先ず、
図7は、実施例における極性選択動作の一例を示すフローチャートである。なお、
図7~
図10において、動作の主体は制御部10であるものとして説明するが、例えば、制御部10以外の構成(例えば、別の制御部)において動作されるものであってもよい。
【0068】
図7において、制御部10は、材料の種類が選択されたか否かを判断する(ステップS11)。ステップS11の判断は、例えば、入力部101からの手動入力があったか否か、または制御部10に対して製作プログラムの入力があったか否か等によって判断することができる。
【0069】
ステップS11において、材料の種類が選択されていないと判断した場合(ステップS11:NO)、制御部10は、フローチャートに示す動作を終了する。
【0070】
一方、材料の種類が選択されたと判断した場合(ステップS11:YES)、制御部10は、帯電特性記憶部102に記憶された帯電特性を検索する(ステップS12)。例えば、帯電特性記憶部102に、材料の種類を示すコードと帯電特性(正帯電/負帯電、または帯電電圧等)とが対応して記憶されている場合、制御部10は、ステップS11において選択された材料のコードに基づき、当該材料の帯電特性を検索することができる。
【0071】
ステップS12の処理を実行した後、制御部10は、検索された帯電特性に基づき、除電に使用するイオンの極性を選択する(ステップS13)。例えば、除電器36Aが正イオンを発生し、除電器36Bが負イオンを発生させる除電器であるものとする。ステップS13において、検索された帯電特性に基づき、材料が負帯電の帯電特性である場合、制御部10は、除電器36Aを自動的に選択して正イオンによる除電を行う。一方、検索された帯電特性に基づき、材料が正帯電の帯電特性である場合、制御部10は、除電器36Bを自動的に選択して負イオンによる除電を行う。帯電特性記憶部102に記憶された材料の帯電特性に基づき除電器を自動的に選択することにより、様々な材料に対する除電を適切に行うことが可能となる。
【0072】
ステップS13の処理を実行した後、制御部10は、除電器(除電器36Aまたは除電器36B)の運転の制御を開始する(ステップS14)。除電器の運転の制御は、例えば、除電器のON/OFFによる除電のタイミング、印加電圧の調整、または電圧波形の選択等である。ステップS14の処理を実行した後、制御部10は、フローチャートで示した動作を終了する。
【0073】
次に、
図8を用いて、ワーク製作動作を説明する。
図8は、実施形態におけるワーク製作の一例を示すフローチャートである。
【0074】
図8において、制御部10は、材料を用いてワークの造形を行うか否かを判断する(ステップS21)。材料の造形とは、造形装置3を用いた材料の造形であって、工作機械装置1を所謂3Dプリンタとして動作させることをいう。材料の造形を行うと判断した(ステップS21:YES)、制御部10は、材料を造形する材料造形装置(造形装置3)をクランプする(ステップS22)。造形装置3のクランプは、上述した造形装置格納エリア13において、クランプ機構111によって実行される。
【0075】
ステップS22の処理を実行した後、制御部10は、材料の吐出制御を行いながらワークを造形する(ステップS23)。材料の吐出制御は、主軸11の回転を制御することにより造形装置3の移送部35の回転を制御して、吐出ノズル31から吐出される材料の量が制御される。吐出ノズル31を移動装置4により移動させながら吐出制御することによりワークが造形される。ステップS23の処理を実行した後、制御部10は、造形装置格納エリア13において造形装置3をアンクランプして所定位置に載置する(ステップS24)。
【0076】
ステップS24の処理を実行した後、制御部10は、工具を用いた材料の加工を実行するか否かを判断する(ステップS25)。工具を用いた材料の加工を実行しないと判断した場合(ステップS25:NO)、制御部10は、フローチャートで示した動作を終了する。この場合、工作機械装置1は材料を用いたワークの造形のみを行うことになる。
【0077】
一方、工具を用いた材料の加工を実行すると判断した場合(ステップS25:YES)、またはステップS21の処理において材料の造形を行わないと判断した(ステップS21:NO)、制御部10は、工具2をクランプ機構111でクランプする(ステップS26)。クランプ機構111は、制御プログラムに基づき複数の工具の中から加工に用いる工具をクランプする。ステップS26の処理を実行した後、制御部10は、工具2によるワークの加工を実行する(ステップS27)。ワークの加工とは、工具を用いたワークの切削(研磨、穴明け、タッピング、中ぐり等を含む)である。
【0078】
本実施形態においては、工作機械装置1を、造形処理のみの動作、加工のみの動作、あるいは造形処理と加工を連続して行う動作の3つの動作で制御することができる。造形処理のみの動作、または加工のみの動作を行うことにより、造形専用の装置と加工専用の装置をそれぞれ別個に用意することなく装置を共用することができるので装置コストの低減を図ることが可能となる。また、造形処理と加工を連続して行う動作においては、造形装置3において造形されたワークをそのまま加工することにより、ワークをセッティングする作業が不要となり、ワークを作成する工数を低減させることが可能となる。また、ワークを移動させずに加工することができるので、加工精度を向上させることができる。
【0079】
ステップS27の処理を実行した後、制御部10は、工具2を工具格納エリア12にてアンクランプして所定位置に載置する(ステップS28)。ステップS28を実行した後、制御部10は、フローチャートで示した動作を終了する。
【0080】
次に、
図9―
図10を用いて、除電器36における除電動作を説明する。
図9は、実施形態における除電動作の一例を示すフローチャートである。
図10は、実施形態における除電動作の他の一例を示すフローチャートである。
図9は、移送部35からの材料の移送に応じてイオンを放出する方法を示している。一方、
図10は、材料供給部112から貯蔵部32に対する材料の供給に応じてイオンを放出する方法を示している。
【0081】
図9において、制御部10は、移送部35において材料の移送が開始されたか否かを判断する(ステップS31)。移送部35から材料が移送されると吐出ノズル31から材料が吐出されるとともに、貯蔵部32から材料が供給されるため、貯蔵部32に貯蔵された材料がz軸方向(下向き)に移動して材料同士の摩擦が発生し静電気が発生する。移送部35における材料の移送は、上述のように主軸11の回転によって実行される。移送部35において材料の移送が開始されたと判断された場合(ステップS31:YES)、制御部10は、除電器36による除電を開始する(ステップS32)。
【0082】
ステップS27の処理を実行した後、制御部10は、移送部35における材料の移送が停止されたか否かを判断する(ステップS33)。移送部35における材料の移送が停止されていないと判断した場合(ステップS33:NO)、制御部10は、ステップS33の処理を繰り返して、移送部35における材料の移送が停止されるのを待機する。
【0083】
一方、移送部35における材料の移送が停止されたと判断した場合(ステップS33:YES)、制御部10は、移送停止後において所定の時間が経過したか(タイムアップしたか)否かを判断する(ステップS34)。タイムアップしていないと判断した場合(ステップS34:NO)、制御部10は、ステップS33~ステップS34の処理を繰り返して、タイムアップを待機する。ステップS34の処理は、所謂オフタイマの動作であり、移送停止後に所定の時間が経過するのを待機することにより、除電器36による除電時間を確保するとともに、除電器36における無駄な電力の消費を防止することが可能となる。なお、オフタイマは、
図5で説明した実施結果においては、5~10秒程度とすることが望ましいが、オフタイマの時間は除電器36による除電能力によって設定することができる。
【0084】
タイムアップしたと判断した場合(ステップS34:YES)、または、ステップS31の処理において移送部35において材料の移送が開始されていないと判断された場合(ステップS31:NO)、制御部10は、フローチャートで示した動作を終了する。
【0085】
図10において、制御部10は、材料供給部112から貯蔵部32に対する材料の供給(補給)が開始されたか否かを判断する(ステップS41)。材料供給部112から貯蔵部32に対する材料の補給は、例えば、貯蔵部32に貯蔵された材料が予め定められた量を下回ったか否かで判断することができる。貯蔵された材料の量は、例えば、貯蔵部32に貯蔵された材料の高さをセンサ等で検知することにより測定することができる。本実施形態において工作機械装置1は、連続あるいは断続して材料供給部112から材料が供給されることにより、材料切れによる稼働停止を防止することができる。ステップS41における処理によって、材料の供給を判断することにより、除電器36における無駄な電力の消費を防止することが可能となる。
【0086】
材料供給部112からの材料の補給が開始されたと判断した場合(ステップS41:YES)、制御部10は、除電器36による除電を開始する(ステップS42)。
【0087】
ステップS42の処理を実行した後、制御部10は、材料供給部112からの材料の補給が停止されたか否かを判断する(ステップS43)。材料供給部112からの材料の補給が停止れていないと判断した場合(ステップS43:NO)、制御部10は、ステップS43の処理を繰り返して、材料供給部112からの材料の補給が停止されるのを待機する。
【0088】
一方、材料供給部112からの材料の補給が停止されたと判断した場合(ステップS43:YES)、制御部10は、供給停止後において所定の時間が経過したか(タイムアップしたか)否かを判断する(ステップS44)。タイムアップしていないと判断した場合(ステップS44:NO)、制御部10は、ステップS43~ステップS44の処理を繰り返して、タイムアップを待機する。ステップS44の処理は、所謂オフタイマの動作であり、供給停止後に所定の時間が経過するのを待機することにより、除電器36による除電時間を確保するとともに、除電器36における無駄な電力の消費を防止することが可能となる。なお、オフタイマは、
図5で説明した実施結果においては、5~10秒程度とすることが望ましいが、オフタイマの時間は除電器36による除電能力によって設定することができる。
【0089】
タイムアップしたと判断した場合(ステップS44:YES)、または、ステップS41の処理において材料供給部112からの材料の補給が開始されていないと判断された場合(ステップS41:NO)、制御部10は、フローチャートで示した動作を終了する。
【0090】
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して説明してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においての種々の変更も含まれる。
【符号の説明】
【0091】
1 工作機械装置
10 制御部
101 入力部
102 帯電特性記憶部
103 極性選択部
11 主軸
111 クランプ機構
112 材料供給部
113 給電機構
113A 給電部
113B 受電部
12 工具格納エリア
13 造形装置格納エリア
14 製作エリア
15 工具シャッタ
16 造形装置シャッタ
2 工具
3 造形装置
31 吐出ノズル
32 貯蔵部
321 傾斜部
322 加熱部
33 保温部
34 溶融部
35 移送部
36 除電器
36A 除電器
361A 高圧ケーブル
36B 除電器
361B 高圧ケーブル
4 移動装置
41 駆動部
42x x軸スライド部
42y y軸スライド部
42z z軸スライド部