IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ 富士通テン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-DC-DCコンバータの制御装置 図1
  • 特開-DC-DCコンバータの制御装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082551
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】DC-DCコンバータの制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
H02M3/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196482
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 辰徳
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 考生
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA04
5H730AS02
5H730AS05
5H730AS13
(57)【要約】
【課題】目標電流に対する出力電流の乖離を抑制することができるDC-DCコンバータの制御装置を提供すること。
【解決手段】DC-DCコンバータの制御装置は、制御部および記憶部を備え、制御部が、DC-DCコンバータの出力電流特性をIoutとし、DC-DCコンバータの制限電流指示をIlimとした場合において、常温時に「Iout=a×Ilim+b」によって計測されるa,bの値と、記DC-DCコンバータの出力部抵抗の温度特性によるIoutの最大ばらつきを示すcの値と、を予め記憶部に記憶させ、DC-DCコンバータから定格出力電流を流す場合はIlimに「c/a」を上乗せし、DC-DCコンバータの出力電流に上限を設ける場合はIlimから「c/a」を差し引く。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部および記憶部を備え、
前記制御部は、
DC-DCコンバータの出力電流特性をIoutとし、前記DC-DCコンバータの制限電流指示をIlimとした場合において、常温時に「Iout=a×Ilim+b」によって計測されるa,bの値と、前記DC-DCコンバータの出力部抵抗の温度特性による前記Ioutの最大ばらつきを示すcの値と、を予め前記記憶部に記憶させ、
前記DC-DCコンバータから定格出力電流を流す場合は前記Ilimに「c/a」を上乗せし、
前記DC-DCコンバータの出力電流に上限を設ける場合は前記Ilimから「c/a」を差し引く、
DC-DCコンバータの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、DC-DCコンバータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第一の負荷に供給する出力電圧が予め設定された目標電圧になるように、メインDC-DCコンバータが出力する第一の出力電圧と、サブDC-DCコンバータが出力する第二の出力電圧とを設定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-019428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で開示された技術では、DC-DCコンバータの出力部抵抗が、部品公差や温度特性によってばらつくため、目標電流に対する出力電流の乖離が発生するおそれがある。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、目標電流に対する出力電流の乖離を抑制することができるDC-DCコンバータの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るDC-DCコンバータの制御装置は、制御部および記憶部を備え、前記制御部が、DC-DCコンバータの出力電流特性をIoutとし、前記DC-DCコンバータの制限電流指示をIlimとした場合において、常温時に「Iout=a×Ilim+b」によって計測されるa,bの値と、前記DC-DCコンバータの出力部抵抗の温度特性による前記Ioutの最大ばらつきを示すcの値と、を予め前記記憶部に記憶させ、前記DC-DCコンバータから定格出力電流を流す場合は前記Ilimに「c/a」を上乗せし、前記DC-DCコンバータの出力電流に上限を設ける場合は前記Ilimから「c/a」を差し引く。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、予め設定した値をもとにDC-DCコンバータの電流の上限値、下限値を設定することにより、最適な目標電流を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るDC-DCコンバータの制御装置を実現するための車両の概略的な構成を示す図である。
図2図2は、実施形態に係るDC-DCコンバータの制御装置による制御例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態に係るDC-DCコンバータの制御装置について、図面を参照しながら説明する。なお、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
実施形態に係るDC-DCコンバータの制御装置の構成について、図1を参照しながら説明する。同図は、実施形態に係るDC-DCコンバータの制御装置を実現するための車両の概略的な構成を備えている。車両としては、例えばハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。
【0011】
車両1は、モータ11と、インバータ12と、バッテリ13と、DC-DCコンバータ14と、制御部15と、記憶部16と、を備えている。なお、同図は、車両1の構成のうち、本実施形態の説明に必要な構成のみを図示しており、その他の構成は図示を省略している。
【0012】
モータ11は、発電用のモータジェネレータである。インバータ12は、モータ11およびバッテリ13に接続されている。また、インバータ12は、モータ11が発電した電力を直流に変換してバッテリ13に充電する。
【0013】
バッテリ13は、リチウムイオン電池等の二次電池であり、モータ11が発電した電力を充電する。DC-DCコンバータ14は、少なくとも一つのスイッチング素子と、当該スイッチング素子を制御する回路とを有している。また、DC-DCコンバータ14は、例えばバッテリ13の電力を低電圧に変換し、変換後の電力を、図示しない補機バッテリ等に供給する。
【0014】
制御部15は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等からなるマイクロコンピュータを主要構成部品とした電子制御装置(Electronic Control Unit:ECU)であり、各種プログラムを実行する。
【0015】
ここで、従来のDC-DCコンバータの制御装置では、DC-DCコンバータの出力部抵抗が、部品公差や温度特性によってばらつくため、目標電流に対する出力電流の乖離が発生するおそれがある。
【0016】
そこで、実施形態に係るDC-DCコンバータの制御装置では、DC-DCコンバータ14の常温における出力電流特性と、予め設定された温度特性とを記憶部16に予め記憶させ、それらをもとに算出した出力電流の総ばらつき量を目標電流にフィードバックする。これにより、上記のような目標電流に対する出力電流の乖離を抑制し、ハード構成を追加することなく、出力電流の上限値、下限値を定義し、最適な目標電流を設定可能とする。
【0017】
制御部15は、具体的には、常温時に「Iout=a×Ilim+b」によって計測されるa,bの値と、DC-DCコンバータ14の出力部抵抗の温度特性によるIoutの最大ばらつき(±c[A])を示すcの値と、を予め記憶部16に記憶させる。なお、上記のIoutは、DC-DCコンバータ14の出力電流特性であり、上記のIlimはDC-DCコンバータ14の制限電流指示である。そして、制御部15は、DC-DCコンバータ14から定格出力電流を流す場合は、Ilimに「c/a」を上乗せする。また、制御部15は、DC-DCコンバータ14の出力電流に上限を設ける場合は、Ilimから「c/a」を差し引く。
【0018】
以下、制御部15によるDC-DCコンバータ14の制御例について、図2を参照しながら説明する。
【0019】
(1)まず、DC-DCコンバータ14の出荷前の単体検査等において、常温でIlimを設定し、「Iout=a×Ilim+b」を計測する(図2の実線参照)。そして、その際のa,bの値を、記憶部16に記憶させる。
(2)これにより、「Ilim=(1/a)×Iout-b/a」を指示することにより、「Iout=Ilim」となる。
(3)続いて、DC-DCコンバータ14の出力部抵抗の温度特性によるIoutの最大ばらつき(±c[A])を示すcの値を、記憶部16に記憶させる。
【0020】
上記(1)~(3)の前提のもとで、DC-DCコンバータ14から定格出力電流を出力する場合は、上記(2)のIlimに「c/a」を上乗せする。この場合、出力電流の指示値は、「Ilim=(1/a)×Iout+(c-b)/a」となり、「Iout=Ilim+c」となる(図2の二点鎖線参照)。その結果、総ばらつきを含めた下限値は、Ioutとなる。
【0021】
一方、例えば電力制限等の理由により、DC-DCコンバータ14の出力電流に上限を設ける場合は、上記(2)のIlimから「c/a」を差し引く。この場合、出力電流の指示値は、「Ilim=(1/a)×Iout+(-c-b)/a」となり、「Iout=Ilim-c」となる(図2の破線参照)。その結果、総ばらつきを含めた上限値は、Ioutとなる。
【0022】
記憶部16は、例えばEPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)およびリムーバブルメディア等の記録媒体から構成される。この記憶部16には、上記の記憶値a,b,c等が格納される。
【0023】
以上のような構成を備える実施形態に係るDC-DCコンバータの制御装置によれば、予め設定した値をもとにDC-DCコンバータ14の電流の上限値、下限値を設定することにより、最適な目標電流を設定することができる。
【0024】
すなわち、実施形態に係るDC-DCコンバータの制御装置では、上記の記憶値a,b,cから制限電流指示Ilimに対する出力電流特性Ioutを予測することにより、車両負荷の要求に応じた最適な制限電流指示Ilimを設定することが可能となる。例えば定格出力電流を保証する場合は、「保証値<出力電流特性Iout下限値」を、電力制限等の理由で出力電流に制限を設ける場合は「出力電流特性Iout上限値<制限値」をそれぞれ満たす制限電流指示Ilimを設定することができる。
【0025】
更なる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、以上のように表わし、かつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。従って、添付のクレームおよびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 車両
11 モータ
12 インバータ
13 バッテリ
14 DC-DCコンバータ
15 制御部
16 記憶部
図1
図2