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特開2024-82555ロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具及び前記保孔管共抜け防止用治具を用いた横ボーリング工の施工方法
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  • 特開-ロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具及び前記保孔管共抜け防止用治具を用いた横ボーリング工の施工方法 図1
  • 特開-ロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具及び前記保孔管共抜け防止用治具を用いた横ボーリング工の施工方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082555
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】ロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具及び前記保孔管共抜け防止用治具を用いた横ボーリング工の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E21B 6/00 20060101AFI20240613BHJP
   E21B 17/00 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
E21B6/00
E21B17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196489
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】521255299
【氏名又は名称】株式会社エス・ビー・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【弁理士】
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【弁理士】
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【弁理士】
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】木村 充宏
(72)【発明者】
【氏名】山下 吉彦
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AA03
2D129AA08
2D129AB23
2D129BA02
2D129BB03
2D129DA21
2D129DC01
2D129EA09
2D129EC06
(57)【要約】
【課題】ケーシングの回収時に、保孔管がケーシングと共に抜け出ることを効果的に防止できるロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具及び前記保孔管共抜け防止用治具を用いた横ボーリング工の施工方法の提供を課題とする。
【解決手段】厚肉部5bを有するインナーロッド4が進退自在に挿通される本体10と、厚肉部5bが本体10を通過して前方に進出することで押し開けられると共に、厚肉部5bと当接した状態を維持し、厚肉部5bが後方に移動して当接した状態が解除されることで本体10の開口を塞ぐための閉じる動作を開始する一対の開閉扉21、22とを備え、一対の開閉扉21、22は、閉じた状態の平面視における中央位置に開口Pを備えると共に、厚肉部5bを介して開閉扉が押し開けられることによって弾性変形して開閉扉を閉じる方向に付勢する弾性部材21a、22aを備える保孔管共抜け防止用治具1である。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横ボーリング工で使用するロータリーパーカッションドリル装置のケーシング内の所定位置に装着して使用する保孔管共抜け防止用治具であって、前記ケーシングの内面と結合する結合部を外周に備えると共に、掘削刃を有する先端から所定長さだけ径を太くした厚肉部を有するインナーロッドが進退自在に挿通される円筒状の本体と、前記厚肉部が前記本体を通過して前方に進出することで押し開けられると共に、厚肉部と当接した状態を維持し、前記厚肉部が後方に移動して当接した状態が解除されることで本体の開口を塞ぐための閉じる動作を開始する一対の開閉扉とを備え、前記一対の開閉扉は、閉じた状態の平面視における中央位置に開口を備えると共に、前記厚肉部を介して開閉扉が押し開けられることによって弾性変形して開閉扉を閉じる方向に付勢する弾性部材を備え、前記厚肉部は、インナーロッドの外周面にインナーロッドの中心軸を中心として所定間隔を空けて円弧状に配置される複数の膨出片で構成され、前記本体の内径と、前記掘削刃の外径及び前記厚肉部の外径と、前記一対の開閉扉の開口の径と、保孔管の外径とのそれぞれの関係が、前記本体の内径が前記掘削刃の外径及び前記厚肉部の外径よりも大きく、前記掘削刃の外径及び前記厚肉部の外径が前記一対の開閉扉の開口の径よりも大きく、且つ前記一対の開閉扉の開口の径が前記保孔管の外径と略同一であることを特徴とするロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具。
【請求項2】
一対の開閉扉は金属材料で構成され、弾性部材は本体の径方向外側へ向かって凹んだ略U字形状の金属材料からなる薄板部材で構成され、前記本体の内面と前記開閉扉の内面とに、前記薄板部材の厚み以上の深さを備えると共に、全長が前記薄板部材の全長以上である連通する凹状溝を設け、前記凹状溝に前記薄板部材を溶接により固定してあることを特徴とする請求項1に記載のロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具。
【請求項3】
一対の開閉扉は金属材料で構成され、弾性部材は本体の径方向内側へ向かって凹んだ略U字形状の金属材料からなる薄板部材で構成され、前記開閉扉の外面に前記薄板部材の下端を溶接により固定してあることを特徴とする請求項1に記載のロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具。
【請求項4】
一対の開閉扉は、開いた状態において、本体の内面の湾曲面と一致する湾曲面を有する内面形状を備えるものであることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具。
【請求項5】
一対の開閉扉は、閉じた状態において、本体の上面と当接する円弧状の底面を備えるものであることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具。
【請求項6】
一対の開閉扉は、閉じた状態において、互いに面接触する当接面を備えるものであることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具。
【請求項7】
請求項1~3の何れか1項に記載のロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具を用いて横ボーリング工を行う横ボーリング工の施工方法であって、ケーシング内の所定位置に装着してある保孔管共抜け防止用治具に対して、インナーロッドの厚肉部を前方に進出させると共に、前記厚肉部が一対の開閉扉と当接した状態において前記ケーシングと前記インナーロッドとで地盤の掘削を行う掘削工程と、前記掘削工程終了後に、前記インナーロッドを前記ケーシングから取り出して、前記ケーシング内の所定位置に装着してある保孔管共抜け防止用治具の一対の開閉扉の開口よりも前方に新たに保孔管を進出させて前記ケーシング内に保孔管を配置させる保孔管配置工程と、前記保孔管配置工程により、保孔管が配置された後に、前記ケーシングを地盤から退出させて地盤内に保孔管を残置させる保孔管残置工程とを備えることを特徴とする横ボーリング工の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーパーカッションドリル装置のケーシング内の所定位置に装着して使用する保孔管共抜け防止用治具及び前記保孔管共抜け防止用治具を用いた横ボーリング工の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地すべり斜面における地すべり運動の抑制工の一つとして、横ボーリング工が一般的に用いられている。
このような従来の横ボーリング工を示すものとして、例えば下記特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-54152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示すような横ボーリング工においては、地盤の掘削等を行う為にロータリーパーカッションドリル装置が用いられる。
ロータリーパーカッションドリル装置を用いた横ボーリング工においては、下記の流れで地盤の掘削等を行うものが一般的である。
まず、図6(b)に一部を示すように、地盤7に最初に挿入する第1のインナーロッド5を第1のケーシング3と連結してある第2のケーシング4の先端の所定位置に予め配置させた状態で掘削刃4aを介して地盤7の掘削を行う。そして、第1のインナーロッド5による所定長さの掘削を終えた後、第1のインナーロッド5の後端には第2のインナーロッド5の先端を、第1のケーシング3の後端には第2のインナーロッド5と二重管状態にある第3のケーシング6の先端をそれぞれ連結させて(螺合させて)掘削を継続する。その後は、所望の掘削長さとなるまで、複数のインナーロッド5及び複数のケーシングを順次地盤7に挿入して掘削を継続する。そして、所望の長さの掘削を終えた後、ロータリーパーカッションドリル装置2により、複数個のインナーロッド5を順次回収する。その後、保孔管40(図6(b)には図示していない)を第1のケーシング3及び第2のケーシング4の所定位置まで送り込んだ後、第1のケーシング3及び第2のケーシング4を含む全てのケーシングを地盤7内から退出させて回収し、地盤7内に保孔管40を残置させる。
しかしながら、上記のような流れで行うロータリーパーカッションドリル装置を用いた横ボーリング工においては、図6(c)に示すように、第1のケーシング3及び第2のケーシング4の内面と保孔管40の外面との間に礫等の固形物Rが噛み合うような間隙があるものが一般的であったことから、第1のケーシング3及び第2のケーシング4を含む全てのケーシングの回収時に、第1のケーシング3及び第2のケーシング4と保孔管40との間に礫等の固形物Rが噛み合った場合、地盤7内に残置させなければならない保孔管40が第1のケーシング3及び第2のケーシング4を含む全てのケーシングと共に地盤7外に抜け出るという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は上記従来技術の問題を解消し、ケーシングの回収時に、保孔管がケーシングと共に抜け出ることを効果的に防止できるロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具及び前記保孔管共抜け防止用治具を用いた横ボーリング工の施工方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具は、横ボーリング工で使用するロータリーパーカッションドリル装置のケーシング内の所定位置に装着して使用する保孔管共抜け防止用治具であって、前記ケーシングの内面と結合する結合部を外周に備えると共に、掘削刃を有する先端から所定長さだけ径を太くした厚肉部を有するインナーロッドが進退自在に挿通される円筒状の本体と、前記厚肉部が前記本体を通過して前方に進出することで押し開けられると共に、厚肉部と当接した状態を維持し、前記厚肉部が後方に移動して当接した状態が解除されることで本体の開口を塞ぐための閉じる動作を開始する一対の開閉扉とを備え、前記一対の開閉扉は、閉じた状態の平面視における中央位置に開口を備えると共に、前記厚肉部を介して開閉扉が押し開けられることによって弾性変形して開閉扉を閉じる方向に付勢する弾性部材を備え、前記厚肉部は、インナーロッドの外周面にインナーロッドの中心軸を中心として所定間隔を空けて円弧状に配置される複数の膨出片で構成され、前記本体の内径と、前記掘削刃の外径及び前記厚肉部の外径と、前記一対の開閉扉の開口の径と、保孔管の外径とのそれぞれの関係が、前記本体の内径が前記掘削刃の外径及び前記厚肉部の外径よりも大きく、前記掘削刃の外径及び前記厚肉部の外径が前記一対の開閉扉の開口の径よりも大きく、且つ前記一対の開閉扉の開口の径が前記保孔管の外径と略同一であることを第1の特徴としている。
また、本発明のロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具は、上記第1の特徴に加えて、一対の開閉扉は金属材料で構成され、弾性部材は本体の径方向外側へ向かって凹んだ略U字形状の金属材料からなる薄板部材で構成され、前記本体の内面と前記開閉扉の内面とに、前記薄板部材の厚み以上の深さを備えると共に、全長が前記薄板部材の全長以上である連通する凹状溝を設け、前記凹状溝に前記薄板部材を溶接により固定してあることを第2の特徴としている。
また、本発明のロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具は、上記第1の特徴に加えて、一対の開閉扉は金属材料で構成され、弾性部材は本体の径方向内側へ向かって凹んだ略U字形状の金属材料からなる薄板部材で構成され、前記開閉扉の外面に前記薄板部材の下端を溶接により固定してあることを第3の特徴としている。
また、本発明のロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具は、上記第1~第3の何れか1つの特徴に加えて、一対の開閉扉は、開いた状態において、本体の内面の湾曲面と一致する湾曲面を有する内面形状を備えるものであることを第4の特徴としている。
また、本発明のロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具は、上記第1~第3の何れか1つの特徴に加えて、一対の開閉扉は、閉じた状態において、本体の上面と当接する円弧状の底面を備えるものであることを第5の特徴としている。
また、本発明のロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具は、上記第1~第3の何れか1つの特徴に加えて、一対の開閉扉は、閉じた状態において、互いに面接触する当接面を備えるものであることを第6の特徴としている。
また、本発明の横ボーリング工の施工方法は、請求項1~3の何れか1項に記載のロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具を用いて横ボーリング工を行う横ボーリング工の施工方法であって、ケーシング内の所定位置に装着してある保孔管共抜け防止用治具に対して、インナーロッドの厚肉部を前方に進出させると共に、前記厚肉部が一対の開閉扉と当接した状態において前記ケーシングと前記インナーロッドとで地盤の掘削を行う掘削工程と、前記掘削工程終了後に、前記インナーロッドを前記ケーシングから取り出して、前記ケーシング内の所定位置に装着してある保孔管共抜け防止用治具の一対の開閉扉の開口よりも前方に新たに保孔管を進出させて前記ケーシング内に保孔管を配置させる保孔管配置工程と、前記保孔管配置工程により、保孔管が配置された後に、前記ケーシングを地盤から退出させて地盤内に保孔管を残置させる保孔管残置工程とを備えることを第7の特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載のロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具によれば、掘削時には、インナーロッドの外周面にインナーロッドの中心軸を中心として所定間隔を空けて円弧状に配置される複数の膨出片で構成される厚肉部によって、一対の開閉扉が一対の開閉扉の開口の径以上に開いた状態となると共に、隣接する厚肉部の間と一対の開閉扉の内面の間とに形成される間隙によって、堀屑等をケーシング内へと送り込むことができる。これによって、堀屑等が掘削刃に噛み合ったり、絡まったりすることを防止でき、効率的な掘削を行うことができる。
一方、ケーシングを回収して保孔管を地盤内に残置させる際には、弾性部材の付勢力によって閉じた状態にある一対の開閉扉の開口の径が保孔管の外径と略同一であることで、一対の開閉扉の開口の内面と保孔管の外面との間に堀屑や礫などの固形物が噛み合う間隙が生じず、これによって保孔管がケーシングと共に地盤外に抜け出ることを効果的に防止することができる。
【0008】
また、請求項2に記載のロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具によれば、上記請求項1に記載の構成による作用効果に加えて、弾性部材を取り付けた状態において、本体の内面及び開閉扉の内面に出っ張りが生じることを確実に防止することができる。従って、本体内でインナーロッドをスムーズに移動させることができる。また、インナーロッドの移動に伴って弾性部材が脱落することを防止でき、耐久性に優れた保孔管共抜け防止用治具とすることができる。
【0009】
また、請求項3に記載のロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具によれば、上記請求項1に記載の構成による作用効果に加えて、開閉扉の外面に弾性部材を固定する構成であっても、ケーシングに容易に装着可能であると共に、開閉扉が開いた状態においては開閉扉を閉じる方向に付勢する付勢力を効果的に発生させることが可能な弾性部材とすることができる。
【0010】
また、請求項4に記載のロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具によれば、上記請求項1~3の何れか1つに記載の構成による作用効果に加えて、一対の開閉扉は、開いた状態において、本体の内面の湾曲面と一致する湾曲面を有する内面形状を備えるものであることから、インナーロッドの進出移動時及び退出移動時にインナーロッドをスムーズに移動可能な保孔管共抜け防止用治具とすることができる。
【0011】
また、請求項5に記載のロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具によれば、上記請求項1~3の何れか1つに記載の構成による作用効果に加えて、一対の開閉扉は、閉じた状態において、本体の上面と当接する円弧状の底面を備えるものであることから、一対の開閉扉を閉じた状態において一段と確実に本体の開口を塞ぐことができる。
【0012】
また、請求項6に記載のロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具によれば、上記請求項1~3の何れか1つに記載の構成による作用効果に加えて、一対の開閉扉は、閉じた状態において、互いに面接触する当接面を備えるものであることから、一対の開閉扉を閉じた状態において一段と確実に堀屑や礫等の侵入を抑制可能な保孔管共抜け防止用治具とすることができる。
【0013】
また、請求項7に記載の横ボーリング工の施工方法によれば、掘削時には、掘削作業の効率化を図ることができる。
一方、ケーシングを回収して保孔管を地盤内に残置させる際には、保孔管がケーシングと共に地盤外に抜け出ることを効果的に防止することができ、ケーシングの回収作業と保孔管の残置作業との効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態に係るロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具を示す図で、(a)は全体斜視図、(b)は分解した状態を示す斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具を示す図で、(a)は第2のケーシング内の所定位置に保孔管共抜け防止用治具が装着されると共に、インナーロッドが挿通される前の状態を模式的に示す平面図、(b)は(a)の状態において保孔管共抜け防止用治具を前方から見た状態を示す図、(c)は(a)の状態において保孔管共抜け防止用治具を後方から見た状態を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具を示す図で、(a)は第2のケーシング内の所定位置に保孔管共抜け防止用治具が装着されると共に、インナーロッドが挿通された後の状態を模式的に示す平面図、(b)は(a)の状態における要部を模式的に示す斜視図、(c)は(a)の状態における厚肉部と一対の開閉扉の内面との当接状態を模式的に示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係るロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具を示す図で、(a)は図3(a)の状態において保孔管共抜け防止用治具を前方から見た状態を示す図、(b)は図3(a)の状態において保孔管共抜け防止用治具を後方から見た状態を示す図、(c)はインナーロッドが回収される状態を模式的に示す平面図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係るロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具を示す図で、(a)は保孔管が所定位置に配置された状態を模式的に示す平面図、(b)は(a)の状態において保孔管共抜け防止用治具を前方から見た状態を示す図、(c)は(a)の状態において保孔管共抜け防止用治具を後方から見た状態を示す図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係るロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具と従来のロータリーパーカッションドリル装置を用いて横ボーリング工を行う状態を模式的に示す図で、(a)はケーシングを地盤から退出させる状態を模式的に示す平面図、(b)は従来のロータリーパーカッションドリル装置を用いて横ボーリング工を行う状態を模式的に示す図、(c)は従来の横ボーリング工においてケーシングを地盤から退出させる状態を模式的に示す平面図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係るロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具を示す図で、(a)は全体斜視図、(b)は分解図した状態を示す斜視図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係るロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具を示す図で、(a)は第2のケーシング内の所定位置に保孔管共抜け防止用治具が装着されると共に、インナーロッドが挿通される前の状態を模式的に示す平面図、(b)は(a)の状態において保孔管共抜け防止用治具を前方から見た状態を示す図、(c)は(a)の状態において保孔管共抜け防止用治具を後方から見た状態を示す図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係るロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具を示す図で、(a)は第2のケーシング内の所定位置に保孔管共抜け防止用治具が装着されると共に、インナーロッドが挿通された後の状態を模式的に示す平面図、(b)は(a)の状態における要部を模式的に示す斜視図、(c)は(a)の状態において保孔管共抜け防止用治具を前方から見た状態を示す図である。
図10】本発明の第2の実施形態に係るロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具を示す図で、(a)は図9(a)の状態において保孔管共抜け防止用治具を後方から見た状態を示す図、(b)はインナーロッドが回収される状態を模式的に示す平面図、(c)は保孔管が所定位置に配置された状態を模式的に示す平面図である。
図11】本発明の第2の実施形態に係るロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具を示す図で、(a)は保孔管が所定位置に配置された状態において保孔管共抜け防止用治具を前方から見た状態を示す図、(b)は保孔管が所定位置に配置された状態において保孔管共抜け防止用治具を後方から見た状態を示す図、(c)はケーシングを地盤から退出させる状態を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の図面を参照して、本発明の実施形態に係るロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具を説明し、本発明の理解に供する。しかし、以下の説明は本発明の特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。
なお、図2(a)、図3(a)、図4(c)、図5(a)、図6(a)、図6(c)、図8(a)、図9(a)、図10(b)、図10(c)、図11(c)においては、説明の便宜上、第1のケーシング3及び第2のケーシング4のみ断面を図示するものとする。また、図6(b)、図6(c)においては、本来横ボーリング工においては所定角度傾斜させてケーシングを地盤7に挿入するものであるが、説明の便宜上、ケーシングを水平に図示するものとする。
【0016】
まず図1図6を参照して、本発明の第1の実施形態に係るロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具1を説明する。
【0017】
図1図6を参照して、本発明の実施形態に係る保孔管共抜け防止用治具1は、ロータリーパーカッションドリル装置2のケーシング内の所定位置に装着して使用するものである。なお、ここで「所定位置」とは、掘削刃4aに近い位置であることが望ましく、概ね図2(a)に示す掘削刃4aから10cm~60cm程度の範囲内の位置を意味するものである。
なお、本実施形態においては、ケーシングとして、第1のケーシング3と第1のケーシング3と螺合する第2のケーシング4(先端に掘削刃4aを備える)との二つのケーシングを一体化させたケーシングを用いる構成として以下の説明を行うが、ケーシングの構成はこのような構成に限るものではなく、適宜変更可能である。
また、ロータリーパーカッションドリル装置を使用する業界においては、ケーシングのことをアウターチューブと呼ぶ場合もあるが、本実施形態においては、地盤7と当接する管をケーシングと呼ぶものとする。従って、ケーシングのことをアウターチューブと呼ぶ場合においては、アウターチューブ内に保孔管共抜け防止用治具1を装着して用いる構成としてもよい。
【0018】
この保孔管共抜け防止用治具1は図1に示すように、本体10と、開閉扉20とで構成される。
【0019】
前記本体10は、保孔管共抜け防止用治具1の基台を構成すると共に、インナーロッド5の挿通路を構成するものである。本実施形態においては、円筒状の金属部材で本体10を形成してある。
また図1に示すように、本体10には、その外周の全周に渡って第1のケーシング3及び第2のケーシング4との結合部となる段差部11を設けてある。図2(a)、図3(a)に示すように、本実施形態においては、この段差部11が第2のケーシング4の内面に設けた凸状の段差部たる結合部4bと当接することで本体10の前方への移動が阻止されると共に、本体10の下面10bが第1のケーシング3の先端である結合部3aと当接することで本体10の後方への移動が阻止されることによって、第2のケーシング4内に保孔管共抜け防止用治具1が固定された状態で装着されることとなる。
なお、本体10を形成する金属としては、例えばステンレス鋼を用いることができるが、これに限るものではなく、他の如何なる金属材料を用いる構成としてもよい。また、必ずしも金属に限るものではなく、他の素材を用いる構成としてもよい。但し、第2のケーシング4内に装着可能であると共に、インナーロッド5を進退自在に挿通させることが可能であることを満たすためには、本体10の外径は第1のケーシング3及び第2のケーシング4の内径よりも小さく、本体10の内径がインナーチューブ5の外径よりも大きいことが必要である。
また、段差部11は、例えば型を用いて形成することができるが、これに限るものではなく、如何なる方法を用いて形成してもよい。
また、本体10を第2のケーシング4の所定位置に固定可能とする構成及び方法は本実施形態のものに限るものではなく、一定の強度をもって第2のケーシング4の所定位置に本体10を固定できる構成及び方法であれば、他の如何なる構成及び方法としてもよい。
【0020】
前記開閉扉20は、インナーロッド5の後述する厚肉部5bが本体10を通過して前方に進出することで押し開けられると共に、厚肉部5bと当接した状態を維持し、厚肉部5bが後方に移動して当接した状態が解除されることで本体10の開口を塞ぐための閉じる動作を開始することで、掘削時においては効率的に掘削を行い、保孔管40を地盤7内に残置させる際においては、ケーシングと保孔管40との間に礫などの固形物が噛み合うことで、第1のケーシング3及び第2のケーシング4と一緒に保孔管40が地盤7外に抜け出ることを防いでケーシングの回収作業と保孔管40の残置作業との効率化を実現可能とするための一役を担うものである。
本実施形態においては、一対の金属部材からなる開閉扉21、開閉扉22で開閉扉20を形成する構成としてある。具体的には図1に示すように、所定の厚みを有する円弧状の一対の金属部材をそれぞれ内向きに湾曲させた形状をなし、開閉扉20が完全に閉じた状態で各円弧部分に設ける平坦な当接面21b、当接面22bの一部分が互いに面接触して当接する構造としてある。
【0021】
また、本実施形態においては、図1図2に示すように、閉じた状態の平面視における中央位置に開口Pを設ける構成としてある。
具体的には、開閉扉21、開閉扉22の各上方先端部分に平面視において半円形状の切り欠きを設けることで、開閉扉21、開閉扉22が閉じた状態の平面視における中央位置に円形の開口Pが形成される構成としてある。
なお、開口Pの形成方法 は、開閉扉21、開閉扉22の各上方先端部分に所望の切り欠きを設けることができるものであれば、如何なる方法を用いてもよい。
【0022】
また本実施形態においては図1図4に示すように、開閉扉21と開閉扉22とのそれぞれに、インナーロッド5の厚肉部5bを介して開閉扉21、開閉扉22が押し開けられることによって弾性変形して開閉扉21、開閉扉22を閉じる方向に付勢する弾性部材21a、弾性部材22aを備える構成としてある。
また本実施形態においては、弾性部材21a、弾性部材22aとして、図1(b)に示すように、本体10の径方向外側へ向かって凹んだ略U字形状の金属材料からなる薄板部材(いわゆる板ばね部材)を用いる構成としてある。なお、弾性部材21a、弾性部材22aの湾曲部分の曲率半径や、長さ、厚み、幅、先端部分の形状等は本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
更に図2(c)、図3(b)に示すように、本体10の内面10cと、開閉扉21の内面21c、開閉扉22の内面22cとに、弾性部材21a、弾性部材22aの厚み以上の深さを備えると共に、全長が弾性部材21a、弾性部材22aの全長以上である連通する凹状溝10d、凹状溝21e、凹状溝22eを設け、これらの凹状溝内で弾性部材21a、弾性部材22aを溶接により固定する構成としてある。つまり、本実施形態においては、弾性部材21a、弾性部材22aは、弾性力を発生させる部材であると共に、本体10と開閉扉21、開閉扉22とを連結させる連結具としても機能するものである。
なお、本実施形態においては、弾性部材21a、弾性部材22aの弾性力として、開閉扉21と、開閉扉22とに何も当接していない通常の状態において、開閉扉21と開閉扉22とが少し開いた半閉じ状態を維持できるような弾性力に調整してある。より具体的には、通常の状態において、開閉扉21と開閉扉22とが完全に閉じて本体10の開口を塞ぐ前の半閉じ状態を維持し、突発的な流水や、礫等が開閉扉21と開閉扉22とに接触する力を利用して開口Pを除いて開閉扉21と開閉扉22とが完全に閉じられる構成としてある。これによって、開口Pの部分を除いて本体10の開口を塞いで必要以上の流水や礫等の侵入を阻止するための阻止部としての機能も開閉扉21、開閉扉22に持たせる構成としてある。つまり、「半閉じ状態」とは、突発的な流水や、礫等が開閉扉21と開閉扉22とに接触する力によって確実に開閉扉20が閉じられて、開口Pを除いて本体10の開口を塞ぐことが可能となる程度に開閉扉20が閉じている状態を意味するものである。
【0023】
更に、本実施形態においては一対の開閉扉21、開閉扉22の構成として、図1(a)、図2(b)に示すように、開閉扉21、開閉扉22を閉じた状態において本体10の上面10aと当接する円弧状の底面21d、底面22dを備える構成としてある。加えて、図4(a)に一部を示すように、開閉扉21、開閉扉22を開いた状態において、本体10の内面10cの湾曲面と一致する湾曲面を有する内面形状を備える構成としてある。
なお、開閉扉21、開閉扉22、弾性部材21a、弾性部材22aを形成する金属としては、例えばステンレス鋼を用いることができるが、これに限るものではなく、他の如何なる金属を用いる構成としてもよい。また、必ずしも金属に限るものではなく、他の如何なる部材を用いる構成としてもよい。
【0024】
次に図2図4を参照して、本発明の実施形態においては、インナーロッド5として、先端に掘削刃5aを備えると共に、掘削刃5aを有する先端から所定長さだけ径を太くした厚肉部5bを有するものを用いる構成としてある。
なお本実施形態においては図2図3に示すように、インナーロッド5の外周面にインナーロッド5の中心軸を中心として所定間隔を空けて溶接にて円弧状に配置される複数(本実施形態においては4個)の膨出片で厚肉部5bを形成してある。より具体的には、厚肉部5bとしては、細長い矩形状で後方側の端部にインナーロッド5の中心軸に向かって傾斜した傾斜面5cを有する金属部材を用いる構成としてある。
また、図2(a)に示す厚肉部5bの水平方向の長さは、第2のケーシング4の先端から本体10までの長さよりも長いことが必要で、具体的には20cm~70cm程度とすることが望ましい。また、図3(c)に示す厚肉部5bのインナーロッド5の外面からの膨出長さは5mm程度、厚みは1mm~3mm程度とすることが望ましい。しかしながら、厚肉部5bの形状、大きさ、長さは本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。例えば、断面形状が円形や楕円形の細長い金属部材を用いる構成としてもよい。但し、図2(a)に示す厚肉部5bの外径Fは、掘削刃5aの外径Jと同じか外径Jよりも小さいことが望ましい。
なお、金属部材としては、例えばステンレス鋼を用いることができるが、これに限るものではなく、他の如何なる金属材料を用いる構成としてもよい。
【0025】
前記厚肉部5bは、インナーロッド5がケーシング内に挿入される動作に従動して本体10を通過して前方に進出することで開閉扉20を押し開けると共に、開閉扉21の内面21c及び開閉扉22の内面22cと当接した状態を維持し、インナーロッド5がケーシングから取り出される動作に従動して後方に移動して内面21c及び内面22cとの当接状態が解除されることで本体の開口を塞ぐための閉じる動作を開始するための部材となるものである。
加えて、開閉扉21の内面21c及び開閉扉22の内面22cと当接した状態を維持する際には、開閉扉21と開閉扉22とが開口Pの径以上に開いた状態を維持させて、図3(c)、図4(a)、図4(b)に示す隣接する膨出片の間と開閉扉21及び開閉扉22の内面との間とに間隙Kを形成するための部材となるものである。
【0026】
また、本実施形態においては、図2(c)に示す本体10の内径Eと、図2(a)に示す掘削刃5aの外径及び厚肉部5bの外径Fと、図2(b)に示す一対の開閉扉の開口Pの径Gと、図3(c)に示す保孔管の外径Hとのそれぞれの関係が、本体の内径Eが掘削刃の外径及び厚肉部の外径Fよりも大きく、掘削刃の外径及び厚肉部の外径Fが一対の開閉扉の開口Pの径Gよりも大きく、且つ一対の開閉扉の開口Pの径Gが保孔管の外径Hと略同一である構成としてある。なお、ここで「略同一」とは、開口Pの径Gが保孔管の外径Hよりも一回り大きい或いは一回り小さいこと、具体的には、開口Pの径Gが保孔管の外径Hよりもプラスマイナス5%程度の範囲内に収まる大きさであることを意味するものである。
【0027】
次に、図2図6を参照して、このような構成からなる保孔管共抜け防止用治具1を用いて横ボーリング工を行う場合の保孔管共抜け防止用治具1の動作と横ボーリング工の施工方法を説明する。
【0028】
まず図2図4を参照して、掘削工程により、保孔管共抜け防止用治具1をケーシング内に装着した状態で掘削を行う。
具体的には、まず保孔管共抜け防止用治具1を予め第2のケーシング4内の所定位置(掘削刃4aから10cm~60cm程度の範囲内位置)に装着する。この状態においては、図2に示すように、開閉扉21及び開閉扉22は半閉じ状態に閉じている。
その後、図3を参照して、第1のインナーロッド5を内面3b、本体10を通過させて前方に進出させることで、第1のインナーロッド5の厚肉部5bを開閉扉21の内面21c及び開閉扉22の内面22cと接触させて前方へ押し込んでいく。これによって、図3(a)に白抜き矢印で示すように開閉扉21、開閉扉22が押し開けられると共に、その状態を維持させる。この状態においては、図3(c)、図4(a)、図4(b)に示すように、厚肉部5bは内面21c及び内面22cと当接した状態となっている。
またこの際、開閉扉21、開閉扉22にそれぞれ設けられる弾性部材21a、弾性部材22aが延ばされて弾性変形することで、図3(a)に黒塗り矢印で示すように、開閉扉21、開閉扉22を閉じる方向に付勢する付勢力が弾性部材21a、弾性部材22aに発生し、その状態が厚肉部5bによって維持される。
そして、図3(a)に示すように、掘削刃5aが第2のケーシング4に設ける掘削刃4aと同じ位置になるまで第1のインナーロッド5を押し込んだ状態(二重管にした状態)で、第2のケーシング4に設ける掘削刃4aと第1のインナーロッド5の先端に設ける掘削刃5aとで地盤7の掘削を開始する。
そして、第1のインナーロッド5による所定長さの掘削を終えた後、第1のインナーロッド5の後端は第2のインナーロッド5の先端と、第1のケーシング3の後端は第2のインナーロッド5と二重管状態にある第3のケーシング6の先端(図示していない)とそれぞれ連結させて(螺合させて)掘削を継続する。その後は、所望の掘削長さとなるまで、複数のインナーロッド5及び複数のケーシングを順次地盤7に挿入して掘削を継続する。
【0029】
次に図4(c)、図5を参照して、所望の長さの掘削を終えた後、保孔管配置工程により、ロータリーパーカッションドリル装置2を用いて複数のインナーロッド5を第1のケーシング3及び第2のケーシング4を含む全てのケーシングから順次回収して、第2のケーシング4内の所定位置に装着してある保孔管共抜け防止用治具1の開口Pよりも前方に新たに貫通孔40aを備える保孔管40を進出させて第2のケーシング4内に保孔管40を配置させる。
このインナーロッド5を取り出す際には、ロータリーパーカッションドリル装置2を介してインナーロッド5が本体10を通過して後方に退出することに伴い、厚肉部5が開閉扉21の内面21c及び開閉扉22の内面22cと当接した状態が解除され、これにより、弾性部材21a及び弾性部材22aの付勢力によって開閉扉21、開閉扉22が自動的に閉じる動作を開始し、開閉扉20の開口Pの部分を除いて本体10の開口を塞ぐ前の半閉じ状態を維持する。そして、図4(c)に黒塗り矢印で示すように、例えば第2のケーシング4を介して突発的に水が流れ込んできた場合においては、水の力によって一対の開閉扉21、開閉扉22が完全に閉じられて平坦な当接面21bと当接面22bとが互いに面接触して当接する。これにより、一対の開閉扉21、開閉扉22によって開口Pの部分を除いて本体10の開口が塞がれることで、第2のケーシング4を介して突発的に水が流れ込んできた場合であっても、保孔管共抜け防止用治具1によって第2のケーシング4の所定位置にて水の流れを抑制することができ、ロータリーパーカッションドリル装置2側に大量の水が入ってくることを効果的に抑制することができる。
また、第2のケーシング4内に保孔管40を配置させた状態においては、開口Pの径Gが保孔管の外径Hと略同一である構成としてあることで、図5(b)、図5(c)に示すように、開閉扉21、開閉扉22は閉じた状態であると共に、保孔管40の外面と内面21c及び内面22cとの間には礫等の固形物が噛み合うような間隙が形成されていない状態となる。
【0030】
次に図6(a)を参照して、保孔管残置工程により、保孔管40が所望の位置に配置された後に第1のケーシング3及び第のケーシング4を含む全てのケーシングを地盤7から退出させて回収し、地盤7内に保孔管40を残置させる。
以上の工程により、横ボーリング工が完了する。
【0031】
以上の構成からなる本発明の第1の実施形態に係る保孔管共抜け防止用治具1は以下の効果を奏する。
【0032】
第2のケーシング4の内面4cと結合する結合部たる段差部11を外周の全周に備えると共に、インナーロッド5が進退自在に挿通される円筒状の本体10と、厚肉部5bが本体10を通過して前方に進出することで押し開けられると共に、開閉扉20の内面との当接状態を維持し、厚肉部5bが後方に移動して開閉扉20との当接状態が解除されることで開口Pの部分を除いて本体10の開口を塞ぐための動作を開始し、完全に閉じる前の半閉じ状態を維持する一対の開閉扉21及び開閉扉22とを備え、且つ、開閉扉21と開閉扉22とで形成される開閉扉20の平面視中央位置に円形の開口Pを設けると共に、インナーロッド4の先端部分に厚肉部5を設け、更に、本体10の内径Eと、掘削刃5aの外径及び厚肉部5bの外径Fと、一対の開閉扉の開口Pの径Gと、保孔管の外径Hとのそれぞれの関係が、本体の内径Eが掘削刃の外径及び厚肉部の外径Fよりも大きく、掘削刃の外径及び厚肉部の外径Fが一対の開閉扉の開口Pの径Gよりも大きく、且つ一対の開閉扉の開口Pの径Gが保孔管の外径Hと略同一である構成とすることで、掘削時には、インナーロッド5の外周面にインナーロッド5の中心軸を中心として所定間隔を空けて円弧状に配置される複数の膨出片で構成される厚肉部5bによって、開閉扉21及び開閉扉22が開口Pの径以上に開いた状態となると共に、隣接する厚肉部5bの間と内面21c及び内面22cの間とに形成される間隙Kによって、堀屑等をケーシング内へと送り込むことができる。よって、堀屑や礫等の固形物が掘削刃4a、掘削刃5aに絡まることを効果的に防止でき、効率的な掘削を行うことができる。
一方、第1のケーシング3及び第2のケーシング4を回収して保孔管40を地盤7内に残置させる際には、弾性部材21a及び弾性部材22aの付勢力によって閉じた状態にある開閉扉20の開口Pの径が保孔管40の外径と略同一であることで、開口Pの内面と保孔管40の外面との間に堀屑や礫等の固形物が噛み合う間隙が生じず、これによってケーシングと共に保孔管40が地盤7外に抜け出ることを効果的に防止することができる。
つまり、保孔管共抜け防止用治具1がない従来の横ボーリング工においては、図6(c)に破線で示すように、ケーシングと保孔管40との間に広範囲にわたって礫などの固形物Rが入り込み、噛み合うことで、ケーシングと共に保孔管40が地盤7外に抜け出るという問題があった。
これに対して、本発明の保孔管共抜け防止用治具1を用いることで、図6(a)に示すように、まず第1に、一対の開閉扉21、開閉扉22よりも後方側(ロータリーパーカッションドリル装置2側)において、ケーシングと保孔管40との間に礫などの固形物Rが入り込むことを効果的に抑えることができる。また第2に、仮にケーシングと保孔管40との間に礫などの固形物Rが流入して噛み合う場合があったとしても、掘削刃4aから10cm~60cm以内の範囲内のごく短い範囲に抑えることができる。従って、これら第1、第2の効果が合わさることで、ケーシングを回収して保孔管40を地盤7内に残置させる際にケーシングと共に保孔管40が地盤7外に抜け出ることを効果的に防止することができる。
【0033】
また、第2のケーシング4の先端から突発的に水が流れ込んできた場合であっても、水の力を利用して一対の開閉扉21、開閉扉22を完全に閉じることができ、これによって開口Pの部分を除いて本体10の開口を閉じることができる。よって、第2のケーシング4の所定の位置にて水の流れを抑制し、ロータリーパーカッションドリル装置2側に入ってくる水の量を抑制することができる。従って、インナーロッド5が飛び出てくることで作業者が負傷することで、横ボーリング工を中断せざるをえなくなるという事態を低減させることが可能となる。従って、横ボーリング工の安全性と、作業効率を向上させることができる。
【0034】
また、一対の開閉扉21、開閉扉22は、各内面に、インナーロッド5を介して開閉扉21、開閉扉22が開かれた状態において弾性変形することで開閉扉21、開閉扉22を閉じる方向に付勢する弾性部材21a、弾性部材22aを備える構成であることから、インナーロッド5を後方に退出させることに伴って厚肉部5bと内面21c及び内面22cとの当接状態が解除されるだけで、弾性部材21a、弾性部材22aの付勢力によって一対の開閉扉21、開閉扉22が自動的に閉じる動作を開始させ、完全に閉じる前の半閉じ状態を維持することが可能な保孔管共抜け防止用治具1とすることができる。
【0035】
また、一対の開閉扉21、開閉扉22は、開いた状態において、本体10の内面10cの湾曲面と一致する湾曲面を有する内面形状を備えるものであることから、インナーロッド5の進出移動時及び退出移動時にインナーロッド5をスムーズに移動可能な保孔管共抜け防止用治具1とすることができる。
【0036】
また、一対の開閉扉21、開閉扉22は、閉じた状態において、本体10の上面10aと当接する円弧状の底面21d、底面22dを備えるものであることから、一対の開閉扉21、開閉扉22を閉じた状態において一段と確実に本体10の開口を部分的に塞ぐことができる。更に、一対の開閉扉21、開閉扉22は、閉じた状態において、互いに面接触する平坦な当接面21b、当接面22bを備えるものであることから、一対の開閉扉を閉じた状態において突発的な水が保孔管共抜け防止用治具1よりも後方に入る量を効果的に抑止可能な保孔管共抜け防止用治具1とすることができる。
【0037】
また、弾性部材21a、弾性部材22aとして、本体10の径方向外側へ向かって凹んだ略U字形状の金属材料からなる薄板部材(いわゆる板ばね部材)を用いる構成とし、本体10の内面10cと、開閉扉21の内面21c、開閉扉22の内面22cとに、弾性部材21a、弾性部材22aの厚み以上の深さを備えると共に、全長が弾性部材21a、弾性部材22aの全長以上である連通する凹状溝10d、凹状溝21e、凹状溝22eを設け、これらの凹状溝内で弾性部材21a、弾性部材22aを溶接により固定する構成とすることで、厚肉部5を介して開閉扉21、開閉扉22が押し開けられた状態において開閉扉21、開閉扉22を閉じる方向に付勢する弾性力を効果的に発生させることができると共に、本体10と開閉扉21、開閉扉22とを連結させる連結具として弾性部材21a、弾性部材22aを利用することができる。よって、部品点数を抑えることが可能な保孔管共抜け防止用治具1とすることができる。
更に、弾性部材21a、弾性部材22aを本体10、開閉扉21、開閉扉22に取り付けた状態において、本体10の内面10c、開閉扉21の内面21c、開閉扉22の内面22cに出っ張りが生じることを確実に防止することができる。これによって、本体10内でインナーロッド5をスムーズに移動させることができると共に、インナーロッド5の移動に伴って弾性部材21a、弾性部材22aが脱落することを防止でき、耐久性に優れた保孔管共抜け防止用治具1とすることができる。
【0038】
また、厚肉部5bの後方側の端部にインナーロッド5の中心軸に向かって傾斜した傾斜面5cを設ける構成とすることで、インナーロッド5を第1のケーシング3及び第2のケーシング4から取り出す際に、例え第1のケーシング3内や第2のケーシング4内に礫等や水が入っていた場合でも、厚肉部5の後端面に対する礫等の接触抵抗を低減させることができ、インナーロッド5の取り出し作業を効率的に行うことができる。
【0039】
また、本発明の実施形態に係る横ボーリング工の施工方法とすることで、掘削時には、掘削作業の効率化を図ることができる。また、第1のケーシング3及び第2のケーシング4を含む全てのケーシングを回収して保孔管40を地盤7内に残置させる際には、図6(a)に示すように、保孔管共抜け防止用治具1よりも後方側において、ケーシングと保孔管40との間に礫などの固形物Rが入り込むことを効果的に抑えることができると共に、仮にケーシングと保孔管40との間に礫などの固形物Rが流入して噛み合う場合があったとしても、保孔管共抜け防止用治具1が設定されている掘削刃4aから10cm~60cm以内の範囲内のごく短い範囲に抑えることができることで、ケーシングと共に保孔管40が地盤7外に抜け出ることを効果的に防止することができ、ケーシングの回収作業と保孔管40の残置作業との効率化を図ることができる。
【0040】
次に、図7図11を参照して、本発明の第2の実施形態に係るロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具100を説明する。なお、第2の実施形態に係る保孔管共抜け防止用治具100は、既述した保孔管共抜け防止用治具1に対して、弾性部材の構成と、本体と開閉扉とを連結させる構成のみを異なる構成としたものである。よって、既述した保孔管共抜け防止用治具1と同一部材、同一機能を果たすものには同一番号、同一符号を付し、以下においては保孔管共抜け防止用治具1と異なる構成、効果を中心に説明することとする。
【0041】
本第2の実施形態においては、図7図9に示すように、本体10の上面10aに、開閉扉20を開閉自在に固定するためのヒンジ機構を構成するための管部12を本体10の径方向の対称位置に1対設けてある。
なお、管部12は、例えば型を用いて形成することができるが、これに限るものではなく、如何なる方法を用いて形成してもよい。
また、所定の厚みを有する円弧状の一対の金属部材をそれぞれ内向きに湾曲させた形状をなす開閉扉21、開閉扉22において、各円弧の中心部分に管部21f、22fを設けてある。そして、本体10に設ける一対の管部12の内側に管部21f、22fを配置した状態でピン30を用いてかしめることで、ヒンジ機構が形成されて開閉扉21、開閉扉22が開閉自在となる構成としてある。
【0042】
また、本実施形態においては図7図11に示すように、開閉扉21及び開閉扉22の各外面に、インナーロッド5の厚肉部5bを介して開閉扉21、開閉扉22が開かれた状態において第2のケーシング4の内面4cと接して弾性変形することで開閉扉を閉じる方向に付勢する弾性部材21g、22gを備える構成としてある。
また本実施形態においては、弾性部材21g、弾性部材22gとして、本体10の径方向内側へ向かって凹んだ略U字形状の金属材料からなる薄板部材を用いる構成としてある。なお、弾性部材21g、弾性部材22gの湾曲部分の曲率半径や、弾性部材21g、弾性部材22gの長さ、厚み、幅、先端部分の形状等は本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。但し、弾性部材21g、弾性部材22gの長さは、第2のケーシング4の先端から突発的に水が流れ込んできた場合に、水の力を利用して一対の開閉扉21、開閉扉22を確実に閉じることを可能とする為には、一対の開閉扉21、開閉扉22の半閉じ状態において、弾性部材21g、弾性部材22gの先端がドリルチューブ4の内面4cと当接する若しくは内面4cの近傍に位置する長さであることが望ましい。
更に、本実施形態においては、開閉扉21、開閉扉22のそれぞれの外面に、弾性部材21g、弾性部材22gの下端を溶接により固定する構成としてある。なお、開閉扉21、開閉扉22の外面に弾性部材21g、弾性部材22gを固定する方法はこのような方法に限るものではなく、一定の強度をもって固定できる方法であれば適宜変更可能である。
【0043】
次に、図8図11を参照して、このような構成からなる保孔管共抜け防止用治具100を用いて横ボーリング工を行う場合の保孔管共抜け防止用治具100の動作と施工方法を説明する。
【0044】
まず図8図10を参照して、掘削工程により、保孔管共抜け防止用治具100をケーシング内に装着した状態で掘削を行う。
具体的には、まず保孔管共抜け防止用治具100を予め第2のケーシング4内の所定位置(掘削刃4aから10cm~60cm程度の範囲内の位置)に装着する。この状態においては、図8に示すように、開閉扉21及び開閉扉22は半閉じ状態に閉じている。また、一対の弾性部材21g、弾性部材22gは本体10の外径内に収まった状態となっていると共に、弾性部材21g、弾性部材22gの先端が第2のケーシング4の内面4cと当接した状態となっている。
その後、図9図10(a)を参照して、インナーロッド5を内面3b、本体10を通過させて前方に進出させることで、インナーロッド5の厚肉部5bを開閉扉21の内面21c及び開閉扉22の内面22cと接触させて前方へ押し込んでいく。これによって、開閉扉21、開閉扉22が押し開けられると共に、その状態を維持させる。この状態においては、図9(c)、図10(a)に示すように、厚肉部5bは内面21c及び内面22cと当接した状態となっている。また、弾性部材21g、弾性部材22gが第2のケーシング4の内面4cと当接して凹みを形成する湾曲部分が延ばされて弾性変形することで、図9(a)に黒塗り矢印で示すように、開閉扉21、開閉扉22を閉じる方向に付勢する付勢力が弾性部材21g、弾性部材22gに発生し、その状態が厚肉部5bによって維持される。
そして、図9(a)に示すように、掘削刃5aが第2のケーシング4に設ける掘削刃4aと同じ位置になるまでインナーチューブ5を押し込んだ状態(二重管にした状態)で、第2のケーシング4に設ける掘削刃4aとインナーロッド5の先端に設ける掘削刃5aとで地盤7の掘削を開始する。
そして、第1のインナーロッド5による所定長さの掘削を終えた後、第1のインナーロッド5の後端は第2のインナーロッド5の先端と、第1のケーシング3の後端は第2のインナーロッド5と二重管状態にある第3のケーシング6の先端(図示していない)とそれぞれ連結させて(螺合させて)掘削を継続する。その後は、所望の掘削長さとなるまで、複数のインナーロッド5及び複数のケーシングを順次地盤7に挿入して掘削を継続する。
【0045】
次に図10(b)、図10(c)、図11(a)、図11(b)を参照して、所望の長さの掘削を終えた後、保孔管配置工程により、ロータリーパーカッションドリル装置2を用いて複数のインナーロッド5を第1のケーシング3及び第2のケーシング4を含む全てのケーシングから順次回収して、第2のケーシング4内の所定位置に装着してある保孔管共抜け防止用治具100の開口Pよりも前方に新たに貫通孔40aを備える保孔管40を進出させて第2のケーシング4内に保孔管40を配置させる。
このインナーロッド5を取り出す際には、ロータリ―パーカッションドリル装置2を介してインナーロッド5が本体10を通過して後方に退出することに伴い、厚肉部5が開閉扉21の内面21c及び開閉扉22の内面22cと当接した状態が解除され、これによって、弾性部材21a及び弾性部材22aの付勢力によって開閉扉21、開閉扉22が自動的に閉じる動作を開始し、開閉扉20の開口Pの部分を除いて本体10の開口を塞ぐ前の半閉じ状態を維持する。そして、図4(c)に黒塗り矢印で示すように、例えば第2のケーシング4を介して突発的に水が流れ込んできた場合においては、水の力によって一対の開閉扉21、開閉扉22が完全に閉じられて平坦な当接面21bと当接面22bとが互いに面接触して当接する。これにより、一対の開閉扉21、開閉扉22によって開口Pの部分を除いて本体10の開口が塞がれることで、第2のケーシング4を介して突発的に水が流れ込んできた場合であっても、保孔管共抜け防止用治具100によって第2のケーシング4の所定位置にて水の流れを抑制することができ、ロータリーパーカッションドリル装置2側に大量の水が入ってくることを効果的に抑制することができる。
また、第2のケーシング4内に保孔管40を配置させた状態においては、開口Pの径Gが保孔管の外径Hと略同一である構成としてあることで、図11(a)、図11(b)に示すように、開閉扉21、開閉扉22は閉じた状態であると共に、保孔管40の外面と内面21c及び内面22cとの間には礫等の固形物が噛み合うような間隙が形成されていない状態となっている。
【0046】
次に図11(c)を参照して、保孔管残置工程により、保孔管40が所望の位置に配置された後に第1のケーシング3及び第のケーシング4を含む全てのケーシングを地盤7から退出させて回収し、地盤7内に保孔管40を残置させる。
以上の工程により、横ボーリング工が完了する。
【0047】
以上の構成からなる本発明の第2の実施形態に係る保孔管共抜け防止用治具100は以下の効果を奏する。
【0048】
一対の開閉扉21、開閉扉22は、各外面に、インナーロッド5の厚肉部5bを介して開閉扉21、開閉扉22が開かれた状態において第2のケーシング4の内面4cと接して弾性変形することで開閉扉21、開閉扉22を閉じる方向に付勢する弾性部材21g、弾性部材22gを備える構成であることから、インナーロッド5の後退に伴って厚肉部5bと内面21c及び内面22cとの当接状態が解除されるだけで、弾性部材21g、弾性部材22gの付勢力によって一対の開閉扉21、開閉扉22を自動的に半閉じ状態に閉じることが可能な保孔管共抜け防止用治具100とすることができる。
【0049】
また、弾性部材21g、弾性部材22gとして、本体10の径方向内側へ向かって凹んだ略U字形状の金属材料からなる薄板部材を用いる構成とすることで、開閉扉21、開閉扉22の外面に弾性部材を固定する構成であっても、第2のケーシング4に容易に装着可能であると共に、開閉扉21、開閉扉22が開いた状態においては開閉扉21、開閉扉22を閉じる方向に付勢する付勢力を効果的に発生させることができる弾性部材21g、弾性部材22gとすることができる。
【0050】
なお、既述した本発明の第1の実施形態に係る保孔管共抜け防止用治具1及び第2の実施形態に係る保孔管共抜け防止用治具100においては、弾性部材21a、弾性部材22a、弾性部材21g、弾性部材22gが備える付勢力として、インナーロッド5の後退に伴って厚肉部5bと内面21c及び内面22cとの当接状態が解除されることで、開閉扉21、開閉扉22が完全に閉じて開口Pの部分を除いて本体10の開口を塞ぐ前の半閉じ状態に復帰可能な付勢力とする構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、厚肉部5bと内面21c及び内面22cとの当接状態が解除されることで、開閉扉21、開閉扉22が完全に閉じるだけの付勢力を備える弾性部材を用いる構成としてもよい。
【0051】
また、本体10の大きさや、段差部11の形成位置や幅、管部12の形状、大きさ、数なども本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
【0052】
また、弾性部材21a、弾性部材22a、弾性部材21g、弾性部材22gの形状、大きさ、厚み、数等も本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。例えば、弾性部材としてスプリングばねを用いる構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のロータリーパーカッションドリル装置用の保孔管共抜け防止用治具及び前記保孔管共抜け防止用治具を用いた横ボーリング工の施工方法は、ケーシングの回収時に、保孔管がケーシングと共に抜け出ることを効果的に防止できることから、ロータリーパーカッションドリル装置を用いて横ボーリング工を行うことに関連する産業分野において有用であり、産業上の利用可能性が大きい。
【符号の説明】
【0054】
1 保孔管共抜け防止用治具
2 ロータリーパーカッションドリル装置
3 第1のケーシング
3a 結合部
3b 内面
4 第2のケーシング
4a 掘削刃
4b 結合部
4c 内面
5 インナーロッド
5a 掘削刃
5b 厚肉部
5c 傾斜面
6 ケーシング
7 地盤
10 本体
10a 上面
10b 下面
10c 内面
10d 凹状溝
11 段差部
12 管部
20 開閉扉
21 開閉扉
21a 弾性部材
21b 当接面
21c 内面
21d 底面
21e 凹状溝
21f 管部
21g 弾性部材
22 開閉扉
22a 弾性部材
22b 当接面
22c 内面
22d 底面
22e 凹状溝
22f 管部
22g 弾性部材
30 ピン
100 保孔管共抜け防止用治具
E 内径
F 外径
G 径
H 外径
J 外径
K 間隙
P 開口
R 固形物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11