(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082567
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】自動評価装置、自動評価方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
B29C45/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196505
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】横田 工
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 明彦
(72)【発明者】
【氏名】赤木 誉志
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM23
4F206AM33
4F206AM34
4F206AM35
4F206AM36
4F206AP00
4F206AR00
4F206JA07
4F206JL02
4F206JL09
4F206JP01
4F206JP13
4F206JP14
4F206JP17
4F206JP23
(57)【要約】
【課題】産業機械の不良品発生動作を誘発させる設定を行うだけで、産業機械の運転条件を修正する学習済モデルの性能評価を自動で行うことができる自動評価装置を提供する。
【解決手段】産業機械の運転条件を修正する学習済モデルの自動評価装置であって、不良品発生動作を誘発する複数の不良誘発条件を受け付ける受付部と、処理部とを備え、処理部は、受付部が受け付けた複数の不良誘発条件に基づいて、複数の不良条件を生成し、生成された不良条件を産業機械に設定し、不良条件が設定された産業機械を動作させた場合、学習済モデルによって運転条件が修正されたときの運転結果を取得し、複数の不良条件それぞれを産業機械に設定し、各不良条件について産業機械を複数回数動作させて得られる運転結果に基づいて、学習済モデルの評価レポートを生成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機械の運転条件を修正する学習済モデルの自動評価装置であって、
不良品発生動作を誘発する複数の不良誘発条件それぞれの上限値、下限値、及び分割数を受け付ける受付部と、
処理部と
を備え、
前記処理部は、
前記受付部が受け付けた前記複数の不良誘発条件それぞれの上限値、下限値、及び分割数に基づいて、前記上限値及び下限値間の数値範囲を前記分割数で分割して得られる各不良誘発条件の値を組み合わせることによって、複数の不良条件を生成し、
生成された前記不良条件を前記産業機械に設定し、
前記不良条件が設定された前記産業機械を動作させた場合、前記学習済モデルによって運転条件が修正されたときの運転結果を取得し、
前記複数の不良条件それぞれを前記産業機械に設定し、各不良条件について前記産業機械を複数回数動作させて得られる運転結果に基づいて、前記学習済モデルの評価レポートを生成する
自動評価装置。
【請求項2】
前記評価レポートは、生成された前記複数の不良条件と、前記学習済モデルによって修正された前記運転条件と、各不良条件について前記産業機械を複数回数動作させて得られる前記運転結果とを含む
請求項1に記載の自動評価装置。
【請求項3】
前記処理部は、
ラウンドロビン方式にて、前記複数の不良誘発条件の値を順次、昇順又は降順で変更することによって、複数の不良条件を生成する
請求項1に記載の自動評価装置。
【請求項4】
前記産業機械は射出成形機である
請求項1に記載の自動評価装置。
【請求項5】
前記不良誘発条件は、
成形材料の計量完了位置、又は射出速度の切替位置、背圧を含む
請求項4に記載の自動評価装置。
【請求項6】
修正対象の運転条件は、
射出速度、射出圧力、ヒータ温度、保圧圧力、保圧切替位置、金型温度、ノズル温度、型締力、背圧、保圧時間、又はスクリュ回転を含む
請求項4に記載の自動評価装置。
【請求項7】
前記運転結果は、成形品の不良の有無又は成形品の良否の程度と、不良の種類とを含む
請求項4に記載の自動評価装置。
【請求項8】
前記不良誘発条件は、
成形材料の計量完了位置、射出速度の切替位置及び背圧を含み、
修正対象の運転条件は、
保圧圧力、保圧切替位置、及び射出速度を含み、
前記運転結果は、成形品のバリ及びショートの有無、又は成形品のバリ面積及びショート面積を含む
請求項4に記載の自動評価装置。
【請求項9】
前記不良誘発条件及び修正対象の運転条件は、
射出圧、シリンダ温度、保圧、ノズル温度、スクリュ回転速度、射出速度、背圧、又は金型温度のいずれかを含み、
前記運転結果は、成形品のヒケ面積、ヒケ深さ、若しくはケの有無、成形品のウェルドライン面積若しくはウェルドラインの有無、成形品のフローマークの面積若しくはフローマークの有無、又は成形品のクレージング面積又はクレージングの有無を含む
請求項4に記載の自動評価装置。
【請求項10】
前記不良誘発条件及び修正対象の運転条件は、
射出圧、シリンダ温度、保圧、スクリュ回転速度、射出速度、又は背圧を含み、
前記運転結果は、成形品の焼け面積、若しくは焼けの有無、又は成形品の気泡・空洞の数を含む
請求項4に記載の自動評価装置。
【請求項11】
前記不良誘発条件及び修正対象の運転条件は、
シリンダ温度、ノズル温度、スクリュ回転速度、射出速度、背圧、又は金型温度を含み、
前記運転結果は、成形品の曇り面積若しくは曇りの有無、成形品のむら面積若しくはむらの有無、又は成形品の斑点の数を含む
請求項4に記載の自動評価装置。
【請求項12】
前記不良誘発条件及び修正対象の運転条件は、
射出圧、スクリュ温度、保圧、ノズル温度、スクリュ回転速度、射出速度、背圧、又は金型温度を含み、
前記運転結果は、成形品の汚れ部分の面積又は汚れの有無を含む
請求項4に記載の自動評価装置。
【請求項13】
前記不良誘発条件及び修正対象の運転条件は、
シリンダ温度、スクリュ回転速度、射出速度、背圧、又は金型温度を含み、
前記運転結果は、成形品の銀条の有無を含む
請求項4に記載の自動評価装置。
【請求項14】
前記不良誘発条件及び修正対象の運転条件は、
射出圧、保圧、又は金型温度を含み、
前記運転結果は、成形品のスプル欠損の有無を含む
請求項4に記載の自動評価装置。
【請求項15】
前記不良誘発条件及び修正対象の運転条件は、
射出圧、シリンダ温度、保圧、ノズル温度、射出速度、背圧、又は金型温度を含み、
前記運転結果は、成形品のそり又は曲がりの有無を含む
請求項4に記載の自動評価装置。
【請求項16】
前記不良誘発条件及び修正対象の運転条件は、
シリンダ温度、ノズル温度、スクリュ回転速度、背圧、又は金型温度を含み、
前記運転結果は、成形品のコールドスラグの有無を含む
請求項4に記載の自動評価装置。
【請求項17】
前記不良誘発条件及び修正対象の運転条件は、
シリンダ温度、保圧、ノズル温度、スクリュ回転速度、射出速度、背圧、又は金型温度を含み、
前記運転結果は、成形品のジェッティングの有無を含む
請求項4に記載の自動評価装置。
【請求項18】
産業機械の運転条件を修正する学習済モデルの自動評価方法であって、
コンピュータが、
不良品発生動作を誘発する複数の不良誘発条件それぞれの上限値、下限値、及び分割数を受け付け、
受け付けた前記複数の不良誘発条件それぞれの上限値、下限値、及び分割数に基づいて、前記上限値及び下限値間の数値範囲を前記分割数で分割して得られる各不良誘発条件の値を組み合わせることによって、複数の不良条件を生成し、
生成された前記不良条件を前記産業機械に設定し、
前記不良条件が設定された前記産業機械を動作させた場合、前記学習済モデルによって運転条件が修正されたときの運転結果を取得し、
前記複数の不良条件それぞれを前記産業機械に設定し、各不良条件について前記産業機械を複数回数動作させて得られる運転結果に基づいて、前記学習済モデルの評価レポートを生成する
自動評価方法。
【請求項19】
産業機械の運転条件を修正する学習済モデルを、コンピュータに評価させるコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータに、
不良品発生動作を誘発する複数の不良誘発条件それぞれの上限値、下限値、及び分割数を受け付け、
受け付けた前記複数の不良誘発条件それぞれの上限値、下限値、及び分割数に基づいて、前記上限値及び下限値間の数値範囲を前記分割数で分割して得られる各不良誘発条件の値を組み合わせることによって、複数の不良条件を生成し、
生成された前記不良条件を前記産業機械に設定し、
前記不良条件が設定された前記産業機械を動作させた場合、前記学習済モデルによって運転条件が修正されたときの運転結果を取得し、
前記複数の不良条件それぞれを前記産業機械に設定し、各不良条件について前記産業機械を複数回数動作させて得られる運転結果に基づいて、前記学習済モデルの評価レポートを生成する
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習済モデルの自動評価装置、自動評価方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機を用いた射出成形を行う場合、まず条件出し作業を行って各種成形条件項目の設定値を修正し、成形条件を求める必要がある。成形条件の修正は、オペレータの経験に基づいて行われており、適切な成形条件を得るためには、試行錯誤を繰り返す必要がある。特許文献1には、強化学習により、射出成形機の成形条件を修正する射出成形機システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
強化学習、その他の機械学習により生成された学習済モデルの性能評価は、人があらかじめ決められた不良成形条件を設定し、その不良が何ショット目で良品になったか、又は決められたショット数内で何ショット良品を維持できたか記録を取ることにより行われている。学習済モデルの性能評価は、人手によって行われ、多くの時間を要している。その他、産業機械の運転条件を修正する学習済モデルの性能評価についても同様の問題がある。
【0005】
本開示の目的は、産業機械の不良品発生動作を誘発させる設定を行うだけで、産業機械の運転条件を修正する学習済モデルの性能評価を自動で行うことができる自動評価装置、自動評価方法及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る自動評価装置は、産業機械の運転条件を修正する学習済モデルの自動評価装置であって、不良品発生動作を誘発する複数の不良誘発条件を受け付ける受付部と、処理部とを備え、前記処理部は、前記受付部が受け付けた前記複数の不良誘発条件に基づいて、複数の不良条件を生成し、生成された前記不良条件を前記産業機械に設定し、前記不良条件が設定された前記産業機械を動作させた場合、前記学習済モデルによって運転条件が修正されたときの運転結果を取得し、前記複数の不良条件それぞれを前記産業機械に設定し、各不良条件について前記産業機械を複数回数動作させて得られる運転結果に基づいて、前記学習済モデルの評価レポートを生成する。
【0007】
本開示の一側面に係る自動評価方法は、産業機械の運転条件を修正する学習済モデルの自動評価方法であって、コンピュータが、不良品発生動作を誘発する複数の不良誘発条件を受け付け、受け付けた前記複数の不良誘発条件に基づいて、複数の不良条件を生成し、生成された前記不良条件を前記産業機械に設定し、前記不良条件が設定された前記産業機械を動作させた場合、前記学習済モデルによって運転条件が修正されたときの運転結果を取得し、前記複数の不良条件それぞれを前記産業機械に設定し、各不良条件について前記産業機械を複数回数動作させて得られる運転結果に基づいて、前記学習済モデルの評価レポートを生成する。
【0008】
本開示の一側面に係るコンピュータプログラム(プログラム製品)は、産業機械の運転条件を修正する学習済モデルを、コンピュータに評価させるコンピュータプログラムであって、前記コンピュータに、不良品発生動作を誘発する複数の不良誘発条件を受け付け、受け付けた前記複数の不良誘発条件に基づいて、複数の不良条件を生成し、生成された前記不良条件を前記産業機械に設定し、前記不良条件が設定された前記産業機械を動作させた場合、前記学習済モデルによって運転条件が修正されたときの運転結果を取得し、前記複数の不良条件それぞれを前記産業機械に設定し、各不良条件について前記産業機械を複数回数動作させて得られる運転結果に基づいて、前記学習済モデルの評価レポートを生成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、産業機械の不良品発生動作を誘発させる設定を行うだけで、産業機械の運転条件を修正する学習済モデルの性能評価を自動で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る射出成形装置の構成例を示す模式図である。
【
図2】本実施形態に係る制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態に係る自動評価装置の構成例を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態に係る自動評価方法の処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】本実施形態に係る自動評価方法の処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】本実施形態に係る評価レポートの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る自動評価装置、自動評価方法及びコンピュータプログラムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0012】
<射出成形機の構成>
図1は、本実施形態に係る射出成形機101の構成例を示す模式図である。本実施形態に係る射出成形機101は、金型21を型締めする型締装置2と、成形材料を可塑化して射出する射出装置3と、制御装置4と、検査装置5とを備える。型締装置2及び射出装置3は成形機本体1を構成している。制御装置4は、後述する学習済モデル40(
図2参照)を用いて成形条件の修正を行う成形条件修正装置として機能する。
図1に示すように、射出成形機101には、本実施形態に係る自動評価装置6が設けられている。自動評価装置6は、学習済モデル40の評価を行う装置である。
【0013】
型締装置2はベッド20上に固定された固定盤22と、ベッド20上をスライド可能に設けられた型締ハウジング23と、ベッド20上を同様にスライドする可動盤24とを備える。固定盤22と型締ハウジング23は複数本、例えば4本のタイバー25、25、…によって連結されている。可動盤24は、固定盤22と型締ハウジング23の間でスライド自在に構成されている。型締ハウジング23と可動盤24の間には型締機構26が設けられている。
【0014】
型締機構26は、例えばトグル機構から構成されている。なお、型締機構26は、直圧式の型締機構、つまり型締シリンダによって構成してもよい。固定盤22と可動盤24にはそれぞれ固定金型21aと、可動金型21bが設けられ、型締機構26を駆動すると金型21が型開閉されるようになっている。
【0015】
射出装置3は、基台30上に設けられている。射出装置3は、先端部にノズル31aを有する加熱シリンダ31と、当該加熱シリンダ31内に周方向と軸方向とに回転可能に配されたスクリュ32とを備える。スクリュ32は駆動機構33によって回転方向と軸方向とに駆動する。駆動機構33は、スクリュ32を回転方向に駆動する回転モータと、スクリュ32を軸方向に駆動するモータ等から構成されている。なお、
図1に示す駆動機構33は、カバーにより覆われているため内部構成が図示されていない。
【0016】
加熱シリンダ31の後端部近傍には、成形材料が投入されるホッパ34が設けられている。また、射出成形機101は、射出装置3を前後方向(
図1中左右方向)に移動させるノズルタッチ装置35を備える。ノズルタッチ装置35を駆動すると、射出装置3が前進して加熱シリンダ31のノズル31aが固定盤22の密着部にタッチするように構成されている。
【0017】
図2は、本実施形態に係る制御装置4の構成例を示すブロック図である。制御装置4は、型締装置2及び射出装置3の動作を制御するコンピュータであり、ハードウェア構成として制御部41、記憶部42、制御信号出力部43、第1取得部44と、第2取得部45、操作パネル46を備える。制御部41は、機能部として学習済モデル40を有する。学習済モデル40は、現在設定されている成形条件と、成形品の状態を検査して得られる検査結果(運転結果)とが入力された場合、所定の成形条件の修正量を出力するモデルである。学習済モデル40は、強化学習モデルであってもよいし、教師有り学習によって得られるモデルでもよい。学習済モデル40の種類及び構成は特に限定されるものでは無い。なお、学習済モデル40の一部をハードウェア的に実現しても良い。
【0018】
制御装置4は、射出成形機101(
図1参照)の動作を制御し、かつ成形条件を修正する装置である。なお、制御装置4は、ネットワークに接続されたサーバ装置であっても良い。また、制御装置4は、複数台のコンピュータで構成し分散処理する構成でもよいし、1台のサーバ内に設けられた複数の仮想マシンによって実現されていてもよいし、クラウドサーバを用いて実現されていてもよい。
【0019】
制御部41は、CPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU、GPU(Graphics Processing Unit)、GPGPU(General-purpose computing on graphics processing units)、TPU(Tensor Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、NPU(Neural Processing Unit)等の演算回路、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の内部記憶装置、I/O端子、計時部等を有する。制御部41は、後述の記憶部42が記憶する制御プログラム(プログラム製品)を実行することにより、成形条件の修正処理を実行する。なお、制御装置4の各機能部は、ソフトウェア的に実現しても良いし、一部又は全部をハードウェア的に実現しても良い。
【0020】
記憶部42は、ハードディスク、EEPROM(Electrically Erasable Programmable
ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部42は、射出成形機101及び成形品の状態に応じた成形条件の修正方法を強化学習し、成形条件修正処理をコンピュータに実行させるための制御プログラムを記憶している。記憶部42は、強化学習モデルである学習済モデル40を特徴付ける各種係数を記憶する。
【0021】
制御信号出力部43は、成形条件に基づく制御部41の制御に従って射出成形機101の動作を制御するための制御信号を成形機本体1へ出力する。
【0022】
操作パネル46は、射出成形機101の成形条件などを設定し、射出成形機101の動作を操作するためのインタフェースである。操作パネル46は、表示パネル及び操作装置を備える。表示パネルは、液晶表示パネル、有機EL表示パネルなどの表示装置であり、制御部41の制御に従って、射出成形機101の成形条件の設定を受け付けるための受付画面を表示したり、射出成形機101の状態、本実施形態に係る成形条件修正方法の実施状況を表示したりする。操作装置は、射出成形機101の成形条件を入力及び修正するための入力装置であり、操作ボタン、タッチパネルなどを有する。操作装置は受け付けた成形条件を示すデータを制御部41に与える。
【0023】
射出成形機101には、各種の成形条件に係る設定値が設定される。成形条件には、射出開始位置、金型温度、ノズル温度、シリンダ温度(ヒータ温度)、ホッパ温度、型締力、射出速度、射出加速度、射出ピーク圧力(射出圧力)、射出ストロークが含まれる。また成形条件には、シリンダ先端樹脂圧、逆流防止リング着座状態、保圧圧力、保圧切替速度、保圧切替位置、保圧完了位置、クッション位置、背圧、計量トルクが含まれる。更に成形条件には、計量完了位置、スクリュ後退速度、サイクル時間、型閉時間、射出時間、保圧時間、計量時間、型開時間が含まれる。更に成形条件には、冷却時間,スクリュ回転数,金型開閉速度,突き出し速度,突き出し回数が含まれる。
【0024】
これらの設定値が設定された射出成形機101は、当該設定値に従って動作する。上記した成形条件の内、特に保圧圧力、保圧切替位置、射出速度は、成形品のバリ、ショート等の成形不良に関連するものである。本実施形態では、学習済モデル40を用いて、保圧圧力[Mpa]、保圧切替位置[mm]、射出速度[mm/秒]を修正する例を説明する。
【0025】
第1取得部44は、射出成形機101の状態を測定して得られる測定データを取得する入力回路である。
【0026】
型締装置2及び射出装置3(
図1参照)には、射出成形機101の状態を示す情報であって、成形機本体1の動作を制御するために必要な物理量を検出する一又は複数のセンサ1aが設けられている。センサ1aは第1取得部44に接続されている。物理量には、例えば電圧、電流、温度、湿度、トルク、圧力等の力、可動部の速度、加速度、回転角、位置、流体の流量、速度等が含まれる。センサ1aは、例えば、電流センサ、電圧センサ、温度センサ、湿度センサ、トルクセンサ、圧力センサ、速度センサ、加速度センサ、回転角度センサ、測位センサ、流量センサ、流速計等である。センサ1aは物理量を示す測定信号を制御装置4へ出力する。センサ1aから出力された測定信号は第1取得部44に入力し、第1取得部44は測定信号を測定データとして取得する。
【0027】
測定データは、射出成形機101の運転状況を示すデータであり、例えば、サイクル時間[秒]、射出時間[秒]、保圧時間[秒]、保圧切替位置[mm]、保圧切替速度[mm/秒]、保圧切替圧力[Pa]、クッション位置[mm]、保圧完了位置[mm]、計量時間[秒]、背圧[Pa]、計量完了位置[mm]等が含まれる。
【0028】
第2取得部45は、射出成形機101にて成形された成形品の状態を検査して得られる検査結果データを取得する入力回路である。第2出力部には検査装置5が接続されている。検査装置5は、成形品の状態を検出するカメラ、測距センサ、重量計等であり、成形品の状態に係る物理量を測定し、測定して得た物理量データに基づいて、成形品の状態を示す検査結果データを得る。検査結果データは、例えば、成形品のバリ面積[mm2 ]、ショート面積[mm2 ]を示すデータである。
【0029】
また、制御装置4には自動評価装置6が接続される。自動評価装置6は、制御装置4に着脱可能に構成するとよい。学習済モデル40の評価を行う際、制御装置4の制御部41は、自動評価装置6と協動して学習済モデル40の評価に係る処理を実行する。具体的には、制御部41は、後述する自動評価装置6から出力された成形不良を誘発させるための情報(後述の不良成形条件及び試験回数)を受信し、受信した情報に基づいて、成形不良が誘発されるように成形条件を変更し、複数回の成形を行い、成形品の検査結果データを自動評価装置6へ送信する処理を実行する。
【0030】
図3は、本実施形態に係る自動評価装置6の構成例を示すブロック図である。自動評価装置6は、学習済モデル40の性能評価を自動で行うコンピュータであり、ハードウェア構成としてプロセッサ(処理部)61、記憶部62、受付部63、データ入出力部64、及びレポート出力部65を備える。自動評価装置6は、ネットワークに接続されたサーバ装置であっても良い。また、制御装置4及び自動評価装置6は一つのコンピュータであってもよい。つまり、制御装置4が自動評価装置6の処理を実行するように構成してもよい。更に、自動評価装置6は、複数台のコンピュータで構成し分散処理する構成でもよいし、1台のサーバ内に設けられた複数の仮想マシンによって実現されていてもよいし、クラウドサーバを用いて実現されていてもよい。
【0031】
プロセッサ61は、CPU、マルチコアCPU、GPU、GPGPU、TPU、ASIC、FPGA、NPU等の演算回路、ROM、RAM等の内部記憶装置、I/O端子、計時部等を有する。プロセッサ61は、後述の記憶部62が記憶するコンピュータプログラム(プログラム製品)62aを実行することにより、本実施形態に係る自動評価方法を実施する。なお、自動評価装置6の各機能部は、ソフトウェア的に実現しても良いし、一部又は全部をハードウェア的に実現しても良い。
【0032】
記憶部62は、ハードディスク、EEPROM、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部62は、学習済モデル40の性能評価を自動実行するためのコンピュータプログラム62aを記憶している。また、記憶部62は、学習済モデル40の評価結果である評価レポート62bを記憶する。
【0033】
本実施形態に係るコンピュータプログラム62aは、記録媒体69にコンピュータ読み取り可能に記録されている態様でも良い。記憶部62は、読出装置によって記録媒体69から読み出されたコンピュータプログラム62aを記憶する。記録媒体69はフラッシュメモリ等の半導体メモリである。また、記録媒体69はCD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、BD(Blu-ray(登録商標)Disc)等の光ディスクでも良い。更に、記録媒体69は、フレキシブルディスク、ハードディスク等の磁気ディスク、磁気光ディスク等であっても良い。
【0034】
更にまた、通信網に接続されている外部サーバから本実施形態に係るコンピュータプログラム62aをダウンロードし、記憶部62に記憶させても良い。
【0035】
受付部63は、キーボード、タッチパネル、マウス等の入力装置である。受付部63は、学習済モデル40の性能評価を行うために、射出成形機101の不良品発生動作を誘発するための情報を受け付ける。
【0036】
具体的には、受付部63は、成形機本体1に設定される運転条件のうち、成形品の不良を誘発する複数の不良誘発条件それぞれの上限値、下限値、分割数、試験ショットの回数(m回)を受け付ける。以下、当該回数を試験回数と呼ぶ。上限値及び下限値は、成形品の不良を誘発するために変更してもよい不良誘発条件の数値範囲を定めるための情報である。分割数は、当該数値範囲内を分割する数である。分割数は、当該数値範囲内を分割して作成される不良誘発条件の数を決定するため情報であれば、その定義は特に限定されるものではない。
不良誘発条件は、例えば、成形材料の計量完了位置、射出速度の切替位置、又は背圧である。これらの条件を変更することによって、金型21への成形材料の充填量を増減させることができる。
試験回数は、複数の異なる不良成形条件毎に、試験ショットを行う回数である。受付部63は、計量完了位置、射出第1段切替位置、射出第2段切替位置及び背圧それぞれの上限値、下限値、及び分割数と、試験回数とをプロセッサ61に与える。
【0037】
射出第1段切替位置は、射出開始後、射出速度を切り替える第1回目の位置である。射出第2段切替位置は、射出第1段切替位置で射出速度が切り替えられた後、射出速度を切り替える第2回目の位置である。
【0038】
例えば、射出切替位置の上限値が60[mm]、下限値が40[mm]、分割数がn=20である場合、射出切替位置の設定値範囲(40~60[mm])を、(40-20)/n刻みでn個に分割することができる。n分割して得られる射出切替位置の設定値は、40、41、42、…60となる。設定値の数は、(n+1)個である。他の不良誘発条件についても同様である。
【0039】
データ入出力部64は、制御装置4との間でデータの入出力を行う入出力インタフェースである。入出力インタフェースは、データ信号が入出力する端子、通信回路等を含む。データ入出力部64は、有線又は無線で制御装置4に接続される。
【0040】
プロセッサ61は、受付部63が受け付けた不良誘発条件の上限値、下限値及び分割数に基づいて、複数(n個)の不良成形条件を生成する。具体的には、プロセッサ61は、不良誘発条件の上限値及び下限値で表される数値範囲を当該分割数で分割することによって、当該不良誘発条件の複数の設定値を得る。プロセッサ61は、同様にして、他の不良誘発条件についても複数の設定値を得る。そして、プロセッサ61は、複数の不良誘発条件それぞれの設定値を組み合わせることによって、複数の不良成形条件を生成する。プロセッサ61は、生成した不良成形条件を示すデータ及び試験回数を、データ入出力部64を介して制御装置4へ出力する。例えば、m回の試験ショット間隔で、n個の不良成形条件及び試験回数を順次、制御装置4へ出力することによって、当該不良成形条件を設定する。なお、複数(n個)の不良成形条件及び試験回数をまとめて、制御装置4へ出力するように構成してもよい。
【0041】
制御装置4は、自動評価装置6から出力された不良成形条件を設定し、成形機本体1を動作させる。なお、不良成形条件は、設定される各種の成形条件の一部である。制御装置4は、受付部63が受け付けた試験回数、成形品を製造する。また、制御装置4は、学習済モデル40を用いて、成形条件の修正を行う。具体的には、制御装置4は、射出成形が行われた場合、検査装置5によって成形品を検査して得られる検査結果データを取得し、現在の成形条件及び検査結果データを学習済モデル40に入力することによって、成形条件の修正量を出力させる。制御装置4は、学習済モデル40から出力された修正量に基づいて、成形条件を修正する。制御装置4は、上記試験回数の試験ショットそれぞれにおいて行われた成形条件の修正内容と、検査結果とを自動評価装置6へ出力する。
【0042】
プロセッサ61は、データ入出力部64を介して、修正内容及び検査結果データを取得する。修正内容は、例えば学習済モデル40から出力された修正量、又は当該修正量によって修正された成形条件等、学習済モデル40の出力に関連する情報である。プロセッサ61は、射出成形機101の制御装置4に設定した複数の不良成形条件、学習済モデル40を用いて行われた成形条件の修正内容、成形品の検査結果に基づく、学習済モデル40の評価レポート62bを生成する(
図6参照)。
【0043】
」
レポート出力部65は、表示装置、印刷装置等の出力装置である。レポート出力部65は、プロセッサ61によって生成された評価レポート62bを外部へ出力する。なお、レポート出力部65は、外部端末へ評価レポート62bを送信する通信回路であってもよい。
【0044】
図4及び
図5は、本実施形態に係る自動評価方法の処理手順を示すフローチャートである。プロセッサ61は、複数の不良誘発条件の上限値、下限値及び分割数と、不良成形条件毎に行う試験回数とを受け付ける(ステップS11)。
【0045】
次いで、プロセッサ61は、各不良誘発条件の上限値及び下限値の数値範囲を、分割数で分割することによって、複数の不良誘発条件それぞれの設定値を算出する(ステップS12)。プロセッサ61は、算出された各不良誘発条件の設定値を組み合わせることによってn個の不良成形条件を生成する(ステップS13)。
【0046】
例えば、プロセッサ61は、ラウンドロビン方式にて、複数の不良誘発条件の設定値を順次、昇順又は降順で変更することによって、複数の不良成形条件を生成することができる。具体的には、複数の不良誘発条件から選択される第1の不良誘発条件の設定値を下限値から上限値まで、分割数に応じた変更幅だけ順次加算することによって、変更し、不良誘発条件を生成する。第1の不良誘発条件が上限値に達したら、第2の不良誘発条件の設定値を同様にして変更する。以下同様にして、複数の不良成形条件の設定値を順に変更することによって、複数の不良成形条件が得られる。
もちろん、不良誘発条件の設定値を上限値から下限値まで、分割数に応じた変更幅だけ順次減算することによって、変更し、不良誘発条件を生成するようにしてもよい。
【0047】
なお、ラウンドロビン方式は一例であり、複数の不良誘発条件それぞれを、上限値及び下限値の数値範囲内でランダムに変更することによって、複数の不良成形条件を生成するように構成してもよい。ただし、同一の不良成形条件は除外する。
【0048】
次いで、プロセッサ61は、不良成形条件変数Xに1を初期設定し(ステップS14)、試験回数変数Yに1を初期設定する(ステップS15)。不良成形条件変数は、複数の不良成形条件を区別するための変数である。試験回数変数は、試験ショットを行った回数を示す変数である。
【0049】
次いで、プロセッサ61は、不良成形条件変数Xが、ステップS13で生成した不良成形条件数nであるか否かを判定する(ステップS16)。つまり、プロセッサ61は、全ての不良成形条件について、試験ショットを実行したか否かを判定する。
【0050】
不良成形条件変数が、不良成形条件数nに達していないと判定した場合(ステップS16:NO)、プロセッサ61は、第X番目の不良成形条件を制御装置4に設定する(ステップS17)。
【0051】
次いで、プロセッサ61は、試験回数変数Yが、ステップS11で受け付けた試験回数mであるか否かを判定する(ステップS18)。試験回数変数Yが試験回数mであると判定した場合(ステップS18:YES)、プロセッサ61は、処理をステップS15へ戻す。試験回数変数Yが試験回数mに到達していないと判定した場合(ステップS18:NO)、プロセッサ61は、成形機本体1を動作させて成形品を製造させ、成形された成形品を検査する(ステップS19)。
【0052】
そして、制御装置4は、成形品の検査結果と、現在設定されている成形条件とに基づいて、成形条件を修正する(ステップS20)。例えば、制御装置4は、学習済モデル40を用いて、保圧、保圧切替位置及び第3段目の射出速度を修正する。
【0053】
次いで、プロセッサ61は、制御装置4から成形条件の修正内容及び検査結果を取得し(ステップS21)、処理をステップS18へ戻す。
【0054】
以上のステップS15~ステップS21を繰り返すことによって、n個の不良成形条件それぞれについて、試験回数m回の試験ショットを行い、学習済モデル40を用いて行われた成形条件の修正内容と、当該修正によって得られた成形品の検査結果データとを収集することができる。
【0055】
ステップS16において、良成形条件変数が、不良成形条件数nであると判定した場合(ステップS16:YES)、プロセッサ61は、取得した修正内容及び検査結果データに基づいて、不良成形条件が設定され、不良品が成形され始めてから、良品の成形品が得られるようになるまでのショット数を特定する(ステップS22)。プロセッサ61は、当該ショット数を、複数の不良成形条件毎に算出する。
【0056】
また、プロセッサ61は、取得した修正内容及び検査結果に基づいて、成形品の良品維持率を算出する(ステップS23)。例えば、プロセッサ61は、ある不良成形条件が設定された状況において良品成形が続いた最大回数を、試験回数で割ることによって、良品維持率を算出する。プロセッサ61は、良品維持率を、複数の不良成形条件毎に算出する。
【0057】
次いで、プロセッサ61は、生成した不良成形条件と、取得した修正内容及び検査結果データと、算出した良品維持率等とに基づいて、学習済モデル40の性能を示した評価レポート62bを生成する(ステップS24)。そして、プロセッサ61は、生成した評価レポート62bを、レポート出力部65にて外部出力し(ステップS25)、処理を終える。
【0058】
図6は、本実施形態に係る評価レポート62bの一例を示す模式図である。評価レポート62bは、例えば、複数の成形条件毎に、設定した不良成形条件と、学習済モデル40によって行われた修正内容と、成形品の検査結果と、評価とを対応付けた一覧表である。なお、
図6では21個の成形条件が図示されているが、不良成形条件の個数は一例である。
【0059】
より具体的には、評価レポート62bの一覧表を構成する各行には、不良成形条件、修正内容、検査結果及び評価が表示される。不良成形条件には、計量完了位置、射出1段切替位置、射出2段切替位置、及び背圧等の不良誘発条件が含まれる。修正内容には、保圧、保圧切替位置、及び第3段目の射出速度が含まれる。検査結果には、試験回数m回の試験ショットが行われたときに得られた成形品それぞれの検査結果データが含まれる。評価には、不良発生から良品が得られるまでのショット数、良品維持率が含まれる。
評価レポート62bの一覧表を構成する各列には、複数の不良成形条件にそれぞれ対応しており、上記した不良誘発条件の設定値、修正対象の各条件の修正量、成形品の検査結果、良品が得られるまでのショット数、良品維持率が表示される。
【0060】
このように構成された本実施形態に係る自動評価装置6によれば、射出成形機101の不良品発生動作を誘発させる条件設定を行うだけで、射出成形機101の成形条件を修正する学習済モデル40の性能評価を自動で行うことができる。
【0061】
また、自動評価装置6は、性能評価の結果を
図6に示すような評価レポート62bとして外部出力することができる。射出成形機101のオペレータ、学習済モデル40を導入したり、保守点検を行う技術者は、評価レポート62bを参照することによって、学習済モデル40の性能を確認したりすることができる。評価レポート62bには、不良誘発条件、成形条件の修正内容、成形品の検査結果、評価が含まれており、学習済モデル40の性能を詳しく評価検証することができる。
【0062】
更に、複数の不良誘発条件の設定値をラウンドロビン方式によって変更することにより、重複無く、簡易に複数の不良成形条件を生成することができる。
【0063】
更にまた、射出成形機101の成形条件を修正する学習済モデル40の性能評価を行うことができる。特に、本実施形態に係る自動評価装置6は、バリ及びショート不良に対応する学習済モデル40の性能評価を効果的に行うことができる。
【0064】
なお、本実施形態では、主に検査結果であるバリ面積及びショート面積に基づいて、成形品のバリ及びショートを解消するための成形条件の修正を行う学習済モデル40の評価を行う例を説明したが、成形品のバリ及びショートの有無に基づいて成形条件の修正を行う学習済モデル40の評価を行うこともできる。当該学習済モデル40の評価レポートは、成形品のバリ及びショートの有無を示す検査結果を含む。
また、バリ及びショート以外の他の成形不良を解消する学習済モデル40の評価も行うことができる。
【0065】
例えば、ひけ、ウェルドライン、波状表面(フローマーク)、又はクレージングを解消する学習済モデル40を評価する場合、射出圧、シリンダ温度、保圧、ノズル温度、スクリュ回転速度、射出速度、背圧、金型温度のいずれかを不良誘発条件として採用するとよい。
ひけを解消する学習済モデル40は、成形条件と、成形品の状態を検査して得られるヒケ面積、ヒケ深さ、又はヒケの有無とが入力された場合、所定の成形条件の修正量を出力するモデルである。当該学習済モデル40の評価レポートは、成形品のヒケ面積、ヒケ深さ、又はヒケの有無を示す検査結果を含む。
ウェルドラインを解消する学習済モデル40は、成形条件と、成形品の状態を検査して得られるウェルドライン面積又はウェルドラインの有無とが入力された場合、所定の成形条件の修正量を出力するモデルである。当該学習済モデル40の評価レポートは、成形品のウェルドライン面積又はウェルドラインの有無を示す検査結果を含む。
フローマークを解消する学習済モデル40は、成形条件と、成形品の状態を検査して得られるフローマークの面積又はフローマークの有無とが入力された場合、所定の成形条件の修正量を出力するモデルである。当該学習済モデル40の評価レポートは、成形品のフローマークの面積又はフローマークの有無を示す検査結果を含む。
クレージングを解消する学習済モデル40は、成形条件と、成形品の状態を検査して得られるクレージング面積又はクレージングの有無とが入力された場合、所定の成形条件の修正量を出力するモデルである。当該学習済モデル40の評価レポートは、成形品のクレージング面積又はクレージングの有無を示す検査結果を含む。
【0066】
焼け、又は気泡・空洞を解消する学習済モデル40を評価する場合、射出圧、シリンダ温度、保圧、スクリュ回転速度、射出速度、背圧のいずれかを不良誘発条件として採用するとよい。
成形品の焼けを解消する学習済モデル40は、成形条件と、成形品の状態を検査して得られる焼け面積又は焼けの有無とが入力された場合、所定の成形条件の修正量を出力するモデルである。当該学習済モデル40の評価レポートは、成形品の焼け面積又は焼けの有無を示す検査結果を含む。
成形品の気泡・空洞を解消する学習済モデル40は、成形条件と、成形品の状態を検査して得られる気泡・空洞の数とが入力された場合、所定の成形条件の修正量を出力するモデルである。当該学習済モデル40の評価レポートは、成形品の気泡・空洞の数を示す検査結果を含む。
【0067】
表面のくもり、又はむら・斑点を解消する学習済モデル40を評価する場合、シリンダ温度、ノズル温度、スクリュ回転速度、射出速度、背圧、金型温度のいずれかを不良誘発条件として採用するとよい。
成形品の表面のくもりを解消する学習済モデル40は、成形条件と、成形品の状態を検査して得られる曇り面積又は曇りの有無とが入力された場合、所定の成形条件の修正量を出力するモデルである。当該学習済モデル40の評価レポートは、成形品の曇り面積又は曇りの有無を示す検査結果を含む。
成形品のむらを解消する学習済モデル40は、成形条件と、成形品の状態を検査して得られるむら面積又はむらの有無とが入力された場合、所定の成形条件の修正量を出力するモデルである。当該学習済モデル40の評価レポートは、成形品のむら面積又はむらの有無を示す検査結果を含む。
成形品の斑点を解消する学習済モデル40は、成形条件と、成形品の状態を検査して得られる斑点の数とが入力された場合、所定の成形条件の修正量を出力するモデルである。当該学習済モデル40の評価レポートは、成形品の斑点の数を示す検査結果を含む。
【0068】
表面の汚れを解消する学習済モデル40を評価する場合、射出圧、スクリュ温度、保圧、ノズル温度、スクリュ回転速度、射出速度、背圧、金型温度のいずれかを不良誘発条件として採用するとよい。
成形品の表面の汚れを解消する学習済モデル40は、成形条件と、成形品の状態を検査して得られる汚れ部分の面積又は汚れの有無とが入力された場合、所定の成形条件の修正量を出力するモデルである。当該学習済モデル40の評価レポートは、成形品の汚れ部分の面積又は汚れの有無を示す検査結果を含む。
【0069】
例えば、銀条を解消する学習済モデル40を評価する場合、シリンダ温度、スクリュ回転速度、射出速度、背圧、金型温度のいずれかを不良誘発条件として採用するとよい。
成形品の銀条を解消する学習済モデル40は、成形条件と、成形品の状態を検査して得られる銀条の有無とが入力された場合、所定の成形条件の修正量を出力するモデルである。当該学習済モデル40の評価レポートは、成形品の銀条の有無を示す検査結果を含む。
【0070】
例えば、スプル欠損を解消する学習済モデル40を評価する場合、射出圧、保圧、金型温度のいずれかを不良誘発条件として採用するとよい。
成形品のスプル欠損を解消する学習済モデル40は、成形条件と、成形品の状態を検査して得られるスプル欠損の有無とが入力された場合、所定の成形条件の修正量を出力するモデルである。当該学習済モデル40の評価レポートは、成形品のスプル欠損の有無を示す検査結果を含む。
【0071】
例えば、そり、曲がりを解消する学習済モデル40を評価する場合、射出圧、シリンダ温度、保圧、ノズル温度、射出速度、背圧、金型温度のいずれかを不良誘発条件として採用するとよい。
成形品のそり又は曲がりを解消する学習済モデル40は、成形条件と、成形品の状態を検査して得られるそり又は曲がりの有無とが入力された場合、所定の成形条件の修正量を出力するモデルである。当該学習済モデル40の評価レポートは、成形品のそり又は曲がりの有無を示す検査結果を含む。
【0072】
例えば、コールドスラグを解消する学習済モデル40を評価する場合、シリンダ温度、ノズル温度、スクリュ回転速度、背圧、金型温度のいずれかを不良誘発条件として採用するとよい。
成形品のコールドスラグを解消する学習済モデル40は、成形条件と、成形品の状態を検査して得られるコールドスラグの有無とが入力された場合、所定の成形条件の修正量を出力するモデルである。当該学習済モデル40の評価レポートは、成形品のコールドスラグの有無を示す検査結果を含む。
【0073】
例えば、ジェッティングを解消する学習済モデル40を評価する場合、シリンダ温度、保圧、ノズル温度、スクリュ回転速度、射出速度、背圧、金型温度のいずれかを不良誘発条件として採用するとよい。 成形品のジェッティングを解消する学習済モデル40は、成形条件と、成形品の状態を検査して得られるジェッティングの有無とが入力された場合、所定の成形条件の修正量を出力するモデルである。当該学習済モデル40の評価レポートは、成形品のジェッティングの有無を示す検査結果を含む。
【0074】
なお、本実施形態では、射出成形機101の成形条件を修正する学習済モデル40の性能評価を行う例を説明したが、押出機、その他の産業機械の運転条件を修正する学習済モデルの性能評価を行うように構成してもよい。
【0075】
本開示の課題を解決するための手段を付記する。
(付記1)
産業機械の運転条件を修正する学習済モデルの自動評価装置であって、
不良品発生動作を誘発する複数の不良誘発条件それぞれの上限値、下限値、及び分割数を受け付ける受付部と、
処理部と
を備え、
前記処理部は、
前記受付部が受け付けた前記複数の不良誘発条件それぞれの上限値、下限値、及び分割数に基づいて、前記上限値及び下限値間の数値範囲を前記分割数で分割して得られる各不良誘発条件の値を組み合わせることによって、複数の不良条件を生成し、
生成された前記不良条件を前記産業機械に設定し、
前記不良条件が設定された前記産業機械を動作させた場合、前記学習済モデルによって運転条件が修正されたときの運転結果を取得し、
前記複数の不良条件それぞれを前記産業機械に設定し、各不良条件について前記産業機械を複数回数動作させて得られる運転結果に基づいて、前記学習済モデルの評価レポートを生成する
自動評価装置。
(付記2)
前記評価レポートは、生成された前記複数の不良条件と、前記学習済モデルによって修正された前記運転条件と、各不良条件について前記産業機械を複数回数動作させて得られる前記運転結果とを含む
付記1に記載の自動評価装置。
(付記3)
前記処理部は、
ラウンドロビン方式にて、前記複数の不良誘発条件の値を順次、昇順又は降順で変更することによって、複数の不良条件を生成する
付記1又は付記2に記載の自動評価装置。
(付記4)
前記産業機械は射出成形機である
付記1から付記3のいずれか1つに記載の自動評価装置。
(付記5)
前記不良誘発条件は、
成形材料の計量完了位置、又は射出速度の切替位置、背圧を含む
付記4に記載の自動評価装置。
(付記6)
修正対象の運転条件は、
射出速度、射出圧力、ヒータ温度、保圧圧力、保圧切替位置、金型温度、ノズル温度、型締力、背圧、保圧時間、又はスクリュ回転を含む
付記4又は付記5に記載の自動評価装置。
(付記7)
前記運転結果は、成形品の不良の有無又は成形品の良否の程度と、及び不良の種類とを含む
付記4から付記6のいずれか1つに記載の自動評価装置。
(付記8)
前記不良誘発条件は、
成形材料の計量完了位置、射出速度の切替位置及び背圧を含み、
修正対象の運転条件は、
保圧圧力、保圧切替位置、及び射出速度を含み、
前記運転結果は、成形品のバリ及びショートの有無、又は成形品のバリ面積及びショート面積を含む
付記4から付記7のいずれか1つに記載の自動評価装置。
(付記9)
前記不良誘発条件及び修正対象の運転条件は、
射出圧、シリンダ温度、保圧、ノズル温度、スクリュ回転速度、射出速度、背圧、又は金型温度のいずれかを含み、
前記運転結果は、成形品のヒケ面積、ヒケ深さ、若しくはケの有無、成形品のウェルドライン面積若しくはウェルドラインの有無、成形品のフローマークの面積若しくはフローマークの有無、又は成形品のクレージング面積又はクレージングの有無を含む
付記4から付記8のいずれか1つに記載の自動評価装置。
(付記10)
前記不良誘発条件及び修正対象の運転条件は、
射出圧、シリンダ温度、保圧、スクリュ回転速度、射出速度、又は背圧を含み、
前記運転結果は、成形品の焼け面積、若しくは焼けの有無、又は成形品の気泡・空洞の数を含む
付記4から付記9のいずれか1つに記載の自動評価装置。
(付記11)
前記不良誘発条件及び修正対象の運転条件は、
シリンダ温度、ノズル温度、スクリュ回転速度、射出速度、背圧、又は金型温度を含み、
前記運転結果は、成形品の曇り面積若しくは曇りの有無、成形品のむら面積若しくはむらの有無、又は成形品の斑点の数を含む
付記4から付記10のいずれか1つに記載の自動評価装置。
(付記12)
前記不良誘発条件及び修正対象の運転条件は、
射出圧、スクリュ温度、保圧、ノズル温度、スクリュ回転速度、射出速度、背圧、又は金型温度を含み、
前記運転結果は、成形品の汚れ部分の面積又は汚れの有無を含む
付記4から付記11のいずれか1つに記載の自動評価装置。
(付記13)
前記不良誘発条件及び修正対象の運転条件は、
シリンダ温度、スクリュ回転速度、射出速度、背圧、又は金型温度を含み、
前記運転結果は、成形品の銀条の有無を含む
付記4から付記12のいずれか1つに記載の自動評価装置。
(付記14)
前記不良誘発条件及び修正対象の運転条件は、
射出圧、保圧、又は金型温度を含み、
前記運転結果は、成形品のスプル欠損の有無を含む
付記4から付記13のいずれか1つに記載の自動評価装置。
(付記15)
前記不良誘発条件及び修正対象の運転条件は、
射出圧、シリンダ温度、保圧、ノズル温度、射出速度、背圧、又は金型温度を含み、
前記運転結果は、成形品のそり又は曲がりの有無を含む
付記4から付記14のいずれか1つに記載の自動評価装置。
(付記16)
前記不良誘発条件及び修正対象の運転条件は、
シリンダ温度、ノズル温度、スクリュ回転速度、背圧、又は金型温度を含み、
前記運転結果は、成形品のコールドスラグの有無を含む
付記4から付記15のいずれか1つに記載の自動評価装置。
(付記17)
前記不良誘発条件及び修正対象の運転条件は、
シリンダ温度、保圧、ノズル温度、スクリュ回転速度、射出速度、背圧、又は金型温度を含み、
前記運転結果は、成形品のジェッティングの有無を含む
付記4から付記16のいずれか1つに記載の自動評価装置。
【符号の説明】
【0076】
1 :成形機本体
1a :センサ
2 :型締装置
3 :射出装置
4 :制御装置
5 :検査装置
6 :自動評価装置
40 :学習済モデル
61 :プロセッサ
62 :記憶部
62a :コンピュータプログラム
62b :評価レポート
63 :受付部
64 :データ入出力部
65 :レポート出力部
69 :記録媒体
101 :射出成形機