(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082568
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】電子モジュール
(51)【国際特許分類】
G05D 23/19 20060101AFI20240613BHJP
H05B 3/20 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
G05D23/19 G
H05B3/20 338
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196506
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 行史
(72)【発明者】
【氏名】日野 啓太郎
(72)【発明者】
【氏名】秋田 達哉
【テーマコード(参考)】
3K034
5H323
【Fターム(参考)】
3K034AA16
3K034AA22
3K034FA11
3K034JA06
3K034JA10
5H323AA05
5H323CA09
5H323CB02
5H323CB21
5H323CB42
5H323DA01
5H323MM02
5H323NN03
(57)【要約】
【課題】電子部品を効果的に加熱できる電子モジュールを提供する。
【解決手段】実施形態にかかる電子モジュールは、基板と、加熱対象部品と、ヒータユニットと、を備える。加熱対象部品は、前記基板の一方の面に設けられる。ヒータユニットは前記基板と加熱対象部品とが積層される積層方向、前記基板の面方向、または前記積層方向および前記面方向の組み合わせにおいて、互いに異なる位置に配されるとともに、加熱量または熱交換量が異なる複数の温調部を有し、前記加熱対象部品を加熱する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の一方の面に設けられる加熱対象部品と、
前記基板と加熱対象部品とが積層される積層方向、前記基板の面方向、または前記積層方向および前記面方向の組み合わせにおいて、互いに異なる位置に配されるとともに、加熱量または熱交換量が異なる複数の温調部を有し、前記加熱対象部品を加熱するヒータユニットと、
を備える電子モジュール。
【請求項2】
基板と、
前記基板の一方の面に設けられる加熱対象部品と、
互いに異なる位置に配されるとともに、加熱量または熱交換量が異なる複数の温調部を有し、前記加熱対象部品を加熱するヒータユニットと、
を備え、
複数の前記温調部は、前記基板と前記加熱対象部品とが積層される積層方向または前記基板の面方向において、前記加熱対象部品の一方側と他方側にそれぞれ配置される、
る電子モジュール。
【請求項3】
複数の前記温調部は、前記基板の面方向において、互いに異なる位置に配置される請求項1に記載の電子モジュール。
【請求項4】
複数の温調部は、前記基板と加熱対象部品とが積層される積層方向または前記面方向において、前記加熱対象部品の一方側と他方側にそれぞれ配置される、請求項1に記載の電子モジュール。
【請求項5】
複数の温調部において、前記加熱対象部品に近い前記温調部は加熱対象部品から離れた位置の前記温調部よりも加熱量または熱交換量が大きい、請求項1に記載の電子モジュール。
【請求項6】
複数の前記温調部のうち下部に配される温調部は上部に配される温調部よりも加熱量または熱交換量が大きい、請求項2に記載の電子モジュール。
【請求項7】
複数の前記温調部のうち基板の中央部側に配される温調部の加熱量または熱交換量が前記基板のエッジに配される前記温調部の加熱量または熱交換量よりも大きい、請求項1に記載の電子モジュール。
【請求項8】
前記基板の他方の面に設けられる第2の部品と、
前記基板の一方側と他方側の面を連続する伝熱部と、を備える、請求項1に記載の電子モジュール。
【請求項9】
複数の前記温調部は、前記加熱対象部品を加熱するヒータ、熱交換を行う循環部、及び熱伝導部、の少なくともいずれかを有する、請求項1に記載の電子モジュール。
【請求項10】
前記基板及び前記加熱対象部品の外側の少なくとも一部を覆う放熱フレームを有する外装部を備える、請求項1に記載の電子モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電子モジュールを備える電子装置において、周囲温度条件の幅が広いシステムでは、温度の低下に伴う回路定数の変動や通信波形の伝達特性の変化によりシステム起動が安定しないことがある。このため、自己発熱やヒータなどを利用しウォームアップ起動させる方法がある。
【0003】
このような電子装置において、例えば基板に複数種類の電子部品が設けられる場合には、部品毎に適正温度が異なるため、温度設定やヒータの配置が複雑になり、消費電力の増加やサイズの拡大などの課題がある。
【0004】
種々の電子部品を備える電子装置において、電子部品の要求に適した条件で加熱することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、電子部品を効果的に加熱できる電子モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態にかかる電子モジュールは、基板と、加熱対象部品と、ヒータユニットと、を備える。加熱対象部品は、前記基板の一方の面に設けられる。ヒータユニットは前記基板と加熱対象部品とが積層される積層方向、前記基板の面方向、または前記積層方向および前記面方向の組み合わせにおいて、互いに異なる位置に配されるとともに、加熱量または熱交換量が異なる複数の温調部を有し、前記加熱対象部品を加熱する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態にかかる電子モジュールの断面図。
【
図2】同電子モジュールの一部の構成を示す平面図。
【
図3】同電子モジュールのヒータユニットの構成を示す平面図。
【
図4】同電子モジュールの電子部品及び温調部の配置と熱量の関係を示す説明図。
【
図5】同電子モジュールを備える電子装置の構成を概略的に示す説明図。
【
図6】他の実施形態にかかる電子モジュールのヒータユニットの構成を示す説明図。
【
図7】他の実施形態にかかる電子モジュールの電子部品及び温調部の配置を示す説明図。
【
図8】他の実施形態にかかる電子モジュールの断面図。
【
図9】他の実施形態にかかる電子モジュールの断面図。
【
図10】他の実施形態にかかる電子モジュールの断面図。
【
図11】他の実施形態にかかる電子モジュールの基板とヒータユニットの配置を示す平面図。
【
図12】他の実施形態にかかるヒータユニットの構成を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態にかかる電子モジュール1及び電子装置100について、
図1乃至
図5を参照して説明する。
図1は本発明の第1実施形態にかかる電子モジュール1の構成を概略的に示す断面図であり
図2は電子モジュールの一部の構成を示す平面図である。
図3は電子モジュールのヒータユニットの構成を示す平面図であり、
図4は電子モジュールの電子部品及び温調部の配置と熱量の関係を示す説明図である。
図5は電子装置100の構成を概略的に示す説明図である。各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小または省略して概略的に示している。図中矢印X,Y,Zは互いに直交する3方向をそれぞれ示し、例えば幅方向をX,積層方向をZ、として説明する。
【0010】
図1及び
図2に示すように、電子モジュール1は、モジュール基板10と、1または複数の電子部品21,22を有する部品ユニット20と、複数の温調部としての31、32を備えるヒータユニット30と、外装部40と、を備える。
【0011】
モジュール基板10は、例えば回路基板であり、一対の主面としての表面10a及び裏面10bを有する板状に構成される。基板10には部品ユニット20が実装される。本実施形態において基板10の表面10aに、電子部品21が実装され、基板10の裏面10bに、電子部品22が実装される。なお、基板10の表面10aや裏面10bには、上記の他に各種の電子部品や各種配線パターンが設けられていてもよい。
【0012】
モジュール基板10は、一方の表面10aから裏面10bに至り基板10を厚さ方向に貫通する伝熱部12を有する。例えば伝熱部12は、電子部品21、22が配置される領域、すなわち一例としてモジュール基板10の中央部11に配置される。例えば伝熱部12は、熱伝導性の高い金属材料で構成され、モジュール基板10の一方側と他方側とを熱伝導可能に接続するサーマルビアやねじ部材ある。モジュール基板10のエッジ13は筐体50に固定されている。
【0013】
部品ユニット20は、1または複数の電子部品21,22を備える。各電子部品21,22はBGAやLGA等のパッケージ部品である。電子部品21,22は、例えばプロセッサやFPGAなどの素子を有する。本実施形態において、1例として基板10の中央部11の表面10aに加熱が必要な加熱対象の電子部品21が配置され、当該加熱対象の電子部品21の中央部11の裏面10b側に第2の電子部品22(第2の部品)が配置される。表面10aに配される加熱対象の電子部品21の基板10と反対側の面は、外装部40の一部となる放熱シート41によって覆われる。
【0014】
ヒータユニット30は、複数の温調部としての加熱部31,32,33を備える。複数の温調部としての加熱部31,32,33、積層方向(Z方向)または面方向(XY方向)において、あるいは積層方向および面方向の組み合わせにおいて、加熱対象部品の一方側と他方側にそれぞれ配置される。第1加熱部31と、一対の第2加熱部32,33とは、積層方向において異なる位置に配され、基板10の一方側と他方側にそれぞれ配置される。また、第1加熱部31と、一対の第2加熱部32,33とは、積層方向において、加熱対象である電子部品21を挟んだ一方側と他方側にそれぞれ配置される。また、第1加熱部31と、一対の第2加熱部32,33とは、積層方向と直交する面方向においても、互いに異なる位置に配される。具体的には、第1加熱部31が電子部品21に対向配置され、第2加熱部32,33は基板10の幅方向において、電子部品21から所定距離離間した一方側と他方側にそれぞれ配置される。なお、複数の加熱部31,32,33は異なる位置に少なくとも一部が配置されていればよく、例えば積層方向において一部が重ねて配置されていてもよい。
【0015】
例えば第1加熱部31は、後述する放熱フレーム42の天板部42cに形成される収容凹部42eに配置される。第1加熱部31は、放熱フレーム42の天板部42c及び放熱シート41を介して、電子部品21に対向配置される。
【0016】
第2加熱部32、33は、それぞれ、モジュール基板10のエッジ13の裏面10b側に配置される。例えば第2加熱部32、33は、第2の電子部品22の幅方向両側にそれぞれ配置される。第2の加熱部32,33は1例として放熱フレーム42を介して、モジュール基板10の裏面10bに対向配置される。
【0017】
例えば各加熱部31,32,33は、例えば電熱線で構成される面状発熱体を有するヒータ装置である。例えば3つの加熱部31,32,33は、
図3に示すように1つのヒータ装置で構成されていてもよく、あるいは他の例として
図6に示すように各加熱部31,32,33が別々の面状発熱体で構成されていてもよい。本実施形態においては、1例としてヒータユニット30の3つの加熱部31,32,33は、連続性または並列性のある電熱線が、ジグザグ形状あるいは渦巻き状等の所定のパターンに配設された1本の面状発熱体で構成される。
【0018】
またヒータユニット30を構成する複数の加熱部31,32,33は加熱量または熱交換量が異なる。一例として複数の加熱部31,32,33は、部位毎に求められる加熱量に応じて、電熱線の配設密度が異なる。例えば上記のように中央部11に加熱対象の電子部品21が配置されたモジュール基板10は、中央部11において大きな加熱量が求められ、周辺のエッジ13においては中央部よりも小さい加熱量で足りることから、モジュール基板10の中央部11からエッジ13にかけて加熱量が小さくなるような勾配を発揮するようにヒータユニット30が構成される。
【0019】
一例として、ヒータユニット30は、中央部11の加熱対象である電子部品21の積層方向一方側に対向する加熱量の大きい第1加熱部31と、基板10の裏面側において、電子部品21の両側部に配置される加熱量の小さい一対の第2加熱部32、33と、を備える。例えば加熱量の大きい第1加熱部31の電熱線の配設密度が、加熱量の小さい第2加熱部32、33の電熱線の配設密度よりも大きく構成されている。
【0020】
図3に示す例では、第1加熱部31は、電子部品21に対向する中央部11において電熱線が高密度に配置され、幅方向両側部を含む周囲において電熱線が低密度で配置される。他の例として第1加熱部31は基板10の中央部11にのみ電熱線が配置され、幅方向両側部を含む周囲には電熱線が配置されない構成としてもよい。一対の第2加熱部32,33は、それぞれ基板10の裏面10b側の両側部において、第1加熱部31の中央部よりも低い所定の密度で電熱線が配置される。
【0021】
外装部40は、基板及び加熱対象部品の外側の少なくとも一部を覆う。例えば外装部40は、放熱シート41と、放熱フレーム42と、断熱材43と、パネル44と、を備える。
【0022】
放熱シート41は、電子部品21の外側の面、すなわち、積層方向において基板10と反対側の面に重ねて配置される。放熱シート41は、電子部品21の外側の面を覆う。本実施形態において、放熱シート41は、外側に装着された放熱フレーム42によって覆われる。
【0023】
放熱フレーム42は、モジュール基板10、電子部品21,22、及び放熱シート41の積層構造を覆う筺形状に構成される、放熱フレーム42は、モジュール基板10等が配置される収容空間S1を形成する。例えば放熱フレーム42は、例えばアルミ合金等の金属材料で形成される。放熱フレーム42はステンレス等の補強材料を含んでいてもよい。例えば放熱フレーム42は、収容空間S1の側部を区画する複数の側壁部42aと、基板10の裏側に配される底板部42bと、放熱シート41の表側の面に対向配置される天板部42cと、を有する。一例として天板部42cの、電子部品21上のエリアは外面が凹む収容凹部42eが形成される。収容凹部42eは、第1加熱部31、断熱材43、パネル44を収容する。なお、放熱フレーム42の形状は、周辺部材に応じて適宜設定可能であり、例えばモジュール基板10の裏面において、モジュール基板10と第2加熱部32、33の間に配される放熱板部42dをさらに有していてもよい。あるいは放熱フレーム42は放熱板部42dを備えない構成であってもよく、例えばモジュール基板10の裏面に第2加熱部32、33が直接搭載されていてもよい。
【0024】
断熱材43は、例えばグラファイト等の材料で形成されたシート状部材であり、放熱フレーム42の天板部42cの外面側、例えば収容凹部に配される。断熱材43は、第1加熱部31の外側面に対向配置される。
【0025】
パネル44は、例えばステンレス等の金属材料で形成されたシート状部材であり、断熱材43の外側面に重ねて配置される。
【0026】
以上のように構成された電子モジュール1は、
図5に示すように、電子装置100に設けられる。例えば電子モジュール1は電子装置100の一部であり、電子部品21、22、ヒータユニット30の各加熱部31、32、33は、電子装置100に設けられる制御部に接続され、制御部の制御によってオンオフ制御される。
【0027】
電子装置100は、電子モジュール1が搭載される装置基板110を複数備える。1例として
図5に示すように、電子装置100において、マザーボード101上にコネクタを介して、複数の装置基板110が搭載されるとともに、各装置基板110にそれぞれ電子部品21,22を有する電子モジュール1が搭載される。例えば装置基板110に複数の電子モジュール1が搭載されていてもよく、1つの電子モジュール1が搭載されていてもよい。また、各電子モジュール1はそれぞれ部品ユニット20を複数備えていてもよく、1つの部品ユニット20を備えていてもよい。なお、複数の装置基板110は、互いに同じ構成であってもよく、互いに構成が異なっていてもよい。例えば電子装置100は、複数の電子モジュール1を制御する制御部や、加熱機構等をさらに備えていてもよい。例えば電子装置100は航空機の通信制御装置等である。
【0028】
制御部は、例えばプロセッサ、ASIC、FPGA等の処理回路や、メモリを有する。制御部はモジュール1を起動する際の所定のタイミングでヒータユニット30の電源をONにして電子部品21、22を加熱する。ウォームアップ中においては、「電子部品の発熱」が「外気や基板端」へ逃げにくい構成となる。必要な加熱処理が完了したらヒータユニット30の電源をOFFにする。加熱完了後、「電子部品の発熱」は、放熱する方向で作用する。
【0029】
次に、電子モジュール1の電子部品21と加熱部31、32、33の配置と、熱移動の関係について
図4を参照して説明図する。
図4において、熱移動の考察を簡略化するため、電子部品22を省略し、図中Xで示す幅方向において対称な構造として説明する。また、モジュール基板10のエッジ13は筐体50に固定されているものとし、筐体50の両側部51、52の温度は同一とする。
【0030】
図4の配置において、加熱対象の電子部品21の発熱量をWd、各加熱部31~33の発熱量をWa、Wb、Wcとすると、第1の加熱部31から筐体50の一方の側部51へ逃げる熱量をW1、第1の加熱部31から筐体50の他方の側52へ逃げる熱量をW3、表面10a側の外面から外気への対流及び放射をW2、一方の第2加熱部32から筐体50の側部51へ逃げる熱量をW4、他方の第2加熱部33から筐体50の側部52へ逃げる熱量W5、裏面10b側の外面から外気への対流及び放射をW6とした場合、熱平衡状態(定常状態)になっているときは、熱量[W]としてWa+Wb+Wc+Wd=W1+W2+W3+W4+W5+W6が成り立つ。
【0031】
このため、電子モジュール1は、加熱対象の電子部品21の最高温度がデバイス許容温度Tmax[K]を超えない温度に設定される。
【0032】
また、基板10の表面10aに関して、電子部品21と第1加熱部31間における熱伝導性は優れているため同じ温度T1[K]として簡略化し、筐体50の両側部51,52の温度をT2[K]とすると、W1=W3=A1・λ1/L1(T1-T2),※伝熱面積A1[m^2],熱伝導率λ1[W/(m・K)]、伝導距離L1[m]となる。したがって、T1[K]<=Tmax[K]を満足するように実装する。
【0033】
また基板裏面に対する熱伝導として移動熱量Wxとすると、第2加熱部32,33の発熱量はWa=Wb=Wx/2+W4(orW6)であることから、基板の両端に近い位置の加熱部32,33を小型なヒータとし、温度補償範囲の狭い、加熱対象の電子部品21を中央部11に配置する。
【0034】
実施形態にかかる電子モジュール1によれば、温調部としての加熱部31,32,33は、面方向に異なる位置に配置されるとともに、加熱量が異なる構成であることから、電子部品21,22の配置に応じた加熱特性を実現できる。また、さらに加熱部31,32,33は積層方向において異なる位置として、立体的に配置することで、電子モジュール1の小型化及び軽量化に有効となる。また、加熱対象の電子部品21を一方側と他方側から加熱することができ、加熱効率が高い。
【0035】
上記実施形態にかかる電子モジュール1において、熱容量が大きく温まるまで熱量が必要となる大型部品等の加熱対象の電子部品21を基板10の中央部11であって基板10のエッジ13から遠い位置に配置した。つまり特に暖気が必要な部品を中央部11に集約させ、基板10の裏面に電子部品21を配置した、複数の加熱部31,32,33で基板10の両面から挟む構成としたため、効果的な加熱が可能となる。また、基板端にある部品も温めることが可能である。さらに、第1加熱部31の直上に断熱材43を配置したことで、基板外部の空気などの流体の対流によって生じる熱交換(放熱)を低減させることができる。
【0036】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【0037】
上記実施形態において加熱対象部品を1つ配置した例を示したが、これに限られるものではない。例えば
図7に示す電子モジュール1Bのように、基板10の表面側において複数の加熱対象の電子部品21を配置してもよい。例えば電子モジュール1Bは、モジュール基板10の表面10a上に2つの加熱対象の電子部品21が配置される。その他の構成は上記第1実施形態にかかる電子モジュール1の構成と同様である。本実施形態において、ヒータユニット30Bは、一対の加熱対象の電子部品21に対向する位置が高密度であり、その周辺は低密度となるようにヒータの密度を調整する。具体的には
図7に示すように、ヒータユニット30Bは一対の高密度の加熱部31,31と低密度の加熱部32とを備える。すなわち、一対の高密度の加熱部31,31が一対の電子部品21、21にそれぞれ対向配置され、低密度の第2加熱部32が第1の加熱部31,31の間の領域と、基板10のエッジ近傍の周辺領域に配される。本実施形態においても、異なる複数の温調部を有することにより、効果的な加熱処理が実現できる。
【0038】
また、基板10の面方向が鉛直方向に配置される縦型の構造であってもよい。例えば他の実施形態として
図8に示す電子モジュール1Cは、基板の面方向が鉛直方向に延びる縦型の姿勢で設置され、複数の温調部としての加熱部31,32,33が、上下方向において異なる位置に配置される。電子モジュール1Cは、中央部に配置される加熱対象の電子部品21の面方向の一方側である下部に加熱量の大きい第1加熱部31が配置され、他方側である上部に32が加熱量の小さい第2加熱部32が配置される。また、電子モジュール1Cにおいて、一例として基板10の裏面10b側の、面方向において第1の電子部品21とは異なる位置に、一対の第2電子部品22がそれぞれ配置される。本実施形態にかかる電子モジュール1Cにおいて、ヒータユニット30Cにおいて、下部に配される第1加熱部31の加熱量が、上部に配される第2加熱部32の加熱量よりも大きく構成される。
【0039】
電子モジュール1Cの外装部40は、基板10の表面10aに配置されるとともに電子部品21及び一対の加熱部31,32を囲む側壁部42aと、基板10の裏面10b側に配される底板部42bとを有する放熱フレーム42と、当該側壁部42aの開口部を覆うパネル44と、を備える。
【0040】
本実施形態にかかる電子モジュール1Cによれば、物理的に下部に位置するヒータ32の発熱により周囲温度の上昇によって自然対流が生じ、上部の第2加熱部32よりも下部の第1加熱部31の発熱量や面積を確保することによって発熱量が上がる。このように基板10の取り付け向きによって、流体の自然対流を利用でき、物性特性として熱伝導だけではなく対流効果を副次的な作用を用いることができる。
【0041】
また、上記第1実施形態にかかる電子モジュール1において、基板10の一方側と他方側にそれぞれ加熱部31,32,33を配置した例を示したが、これに限られるものではない。例えば
図9に示すように他の実施形態にかかる電子モジュール1Dのヒータユニット30Dは、基板10の一方側において加熱部31,32,33が3次元的に配列されて構成される。すなわち、加熱対象部品21の積層方向の一方側に第1加熱部31が配置され、さらに第1加熱部31よりも積層方向一方側の面内に、2つの第2加熱部32,33が配置される。一対の第2加熱部32,33は、面方向において第1加熱部31の幅方向の一方と他方にそれぞれ配置される。すなわち、面方向及び積層方向において異なる位置に3つの加熱部31,32,33がいわゆる千鳥状に配列される。本実施形態によれば、例えば加熱対象部品21で要求される加熱量に応じて、ヒータ構造(面状発熱体)の密度を上げるだけでは対応できない場合であっても、千鳥構造として縦に積み上げることで、熱伝導率の高い放熱フレーム(金属)を介して多層構造としつつ、積層方向の寸法を小さく抑えることができる。
【0042】
また、上記第1実施形態にかかる電子モジュール1において、ヒータユニット30を構成する複数の温調部がヒータ機構を有する加熱部である例を示したがこれに限られるものではない。例えば温調部は、加熱対象部品を加熱するヒータ、熱交換を行う循環部、及び伝導部、の少なくともいずれかを有する。
【0043】
また、電子部品21を挟む複数の温調部はヒータ装置に限られるものではない。例えば他の実施形態として
図10に示す電子モジュール1Eのように、加熱部31と熱伝導部34によって、電子部品21を挟む構成であってもよい。例えば電子モジュール1Eは、モジュール基板10と、加熱対象の電子部品21を有する部品ユニット20と、ヒータユニット30Eと、を備える。本実施形態において加熱対象の電子部品21はモジュール基板10の裏面側に設けられる。ヒータユニット30Eは、第1の加熱部31と、熱伝導部34と、を備え、第1の加熱部31と熱伝導部34との間に、加熱対象の電子部品21が配置される。第1の加熱部31は、モジュール基板10の表面側に配されるヒータ装置である。熱伝導部34は、基板の裏面側に配される伝熱板34aと、伝熱部材34bとを備える。伝熱板34aは、積層方向において加熱対象の電子部品21を挟んで第2の加熱部31と対向配置される板状部材であり、熱伝導性の高い金属材料で構成される。伝熱部材34bは、熱伝導性の高い金属材料で構成され、伝熱板34aから加熱部31に向けて延び、加熱部31と伝熱板34aとを熱伝導可能に接続する。1例として伝熱部材34bは、モジュール基板10の一方の表面10aから裏面10bに至り基板10を厚さ方向に貫通することでモジュール基板10の一方側と他方側とを熱伝導可能に接続するサーマルビアやねじ部材ある。本実施形態にかかるヒータユニット30Eは、積層方向において第1の加熱部31と伝導部34とによって電子部品21を挟む構成とすることで、第1の加熱部31からの熱を反対側に周り込ませることで、電子部品21を効果的に加熱することができる。
【0044】
例えば他の実施形態として
図11に示す電子モジュール1Fのヒータユニット30Fは、温調部の一部が加熱部31であり、複数の温調部のうち他の一部は熱交換機能を有する循環部132,133で構成される。すなわち、電子モジュール1Eのヒータユニット30Fは、第1の加熱部31と、第1の加熱部31との間で熱交換を行う第1の循環部132と、第1の循環部132との間で熱交換を行う第2の循環部133と、を備える。例えば循環部132,133は熱を媒介する液体又は気体が循環可能に構成される。循環部は媒体を蒸発又は凝縮させて熱交換を行うものであってもよい。
【0045】
循環部132、133は、制御部からの制御に従って、熱交換を行う。第1の循環部132は第1加熱部31との間において熱交換を行い、第2の循環部133は第1の循環部132と基板10のエッジ13との間で熱交換を行う。例えば電子モジュール1Fにおいて、第1の循環部132の熱交換量が第2の循環部133の熱交換量よりも大きく設定される。循環部132,133の熱交換量の設定によって、基板10中央部11の熱循環を優先し、基板10の内部から外側に向かって熱交換される温度勾配を形成できる。したがって、基板内部(中心側)の温度が上がらないうちに基板端における熱交換量を下げることが可能となる。
【0046】
また、例えば
図12に示すように、温調部の一部はテスラバルブ構造と呼ばれる循環部35で構成されていてもよい。他の実施形態として
図12に示すヒータユニット30Gは、中央部11の電子部品21上に配置された第1の加熱部31の、幅方向における一方の側部と他方の側部にそれぞれ一対ずつ、テスラバルブ型の循環部35が配列される。テスラバルブ型の循環部35は滴型のループ流路352が複数連結された流路構造を有する循環流路351を備え、順方向に対して流体を流し、逆方向に対しては流れを阻害する機能を有する。本実施形態において、ヒータ装置である第1加熱部31の両側の側部において、それぞれ、流れ方向が逆となる一対の循環部35を対称に対向配置させる。すなわち、4つの循環部35は、第1加熱部31を中心とした両側で対称に配置されるとともに、各側部において並ぶ一対の循環部35同士の対向側において図中矢印で示す循環方向が同じ方向となる対称構造を有する。すなわち2方向において対称となるように配列されることにより、基板10の中央部11側からエッジ13に向けて熱交換量が低くなるような勾配を形成することができる。本実施形態によれば、温調部の一部としてテスラバルブ型の循環部35を採用することで、可動部品が不要となり、メンテナンスも容易となる。また、循環方向を対向させる配置とすることで、中央部11側からエッジ13に至る温度勾配を実現できる。
【0047】
さらに他の実施形態として、循環部132、133の代わりに、熱を伝達する熱伝導構造を配置する構成であってもよい。この場合にあっても、加熱対象部品21に近い位置から、遠い位置にかけて、熱交換量が低下するように配置することで、部品を効果的に加熱することができる。
【0048】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、複数の温調部は、面方向に異なる位置に配置されるとともに、加熱量または熱交換量が異なる構成であることから、電子部品21,22の配置に応じた加熱特性を実現できる。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1、1B、1C、1D、1E、1F…電子モジュール、10…モジュール基板、10a…表面、10b…裏面、11…中央部、12…伝熱部、13…エッジ、20…部品ユニット、21…加熱対象部品21…電子部品、22…電子部品、30、30B、30C、30D、30E、30F…ヒータユニット、31~33…加熱部、40…外装部、41…放熱シート、42…放熱フレーム、42a…側壁部、42b…底板部、42c…天板部、42d…収容凹部、43…断熱材、44…パネル、50…筐体、51…側部、52…側部、100…電子装置、101…装置基板、132…循環部、133…循環部、A1…伝熱面積、S1…収容空間、T1…温度。