(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082609
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240613BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20240613BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196573
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】礒田 博之
(72)【発明者】
【氏名】臼田 昌弘
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB17
5H127AC14
5H127BA01
5H127BA58
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE19
5H127EE25
5H127EE29
(57)【要約】
【課題】複数の燃料電池システムで発電ユニットを構成する場合に、任意の燃料電池スタックの交換の際に、他の燃料電池スタックを運転停止させることなく交換可能にすること。
【解決手段】燃料電池スタックと、燃料電池スタックとの間でガスの授受を行う補機を含む補機構造体とを備える複数の発電モジュールと、発電モジュールに供給又は発電モジュールから排出されたガスが流れる主配管類と、主配管類と発電モジュールとを接続する分岐配管類とを備える配管モジュールと、を備える燃料電池システムにおいて、分岐配管類の各配管は、主配管類からの分岐部から発電モジュール側の端部までの間に遮断弁を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックとの間でガスの授受を行う補機を含む補機構造体と、を備える複数の発電モジュールと、
前記発電モジュールに供給又は前記発電モジュールから排出されたガスが流れる主配管類と、前記主配管類と前記発電モジュールとを接続する分岐配管類と、を備える配管モジュールと、
を備える燃料電池システムにおいて、
前記分岐配管類の各配管は、前記主配管類からの分岐部から前記発電モジュール側の端部までの間に遮断弁を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池スタックから前記主配管類に含まれる排気管への流れ方向を正方向とした場合に、
前記分岐配管類に含まれる排気分岐配管が備える前記遮断弁は、弁体が正方向に回動することで開弁するスイングバルブである、燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、
前記排気分岐配管が備える前記遮断弁は、前記弁体を電動アクチュエータにより開閉する電動式であり、前記弁体のスイング軸と前記電動アクチュエータとがロッドを介して接続されている、燃料電池システム。
【請求項4】
請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、
前記排気分岐配管が備える前記遮断弁は、開閉機構を手動で操作する手動式であり、作業者が操作する操作子とともに回転するウォームと、前記弁体のスイング軸に設けられたウォームホイールと、を備えるウォームギヤ機構により開閉する、燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記分岐配管類に含まれる吸気分岐管及び燃料分岐管が備える前記遮断弁は、手動式のボールバルブである、燃料電池システム。
【請求項6】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
複数の前記発電モジュールで発電された電力をシステム外部の電力コンバータへ送る主電力線と、前記主電力線と前記燃料電池スタックとを接続する分岐電力線と、を備える電装モジュールを備え、
前記分岐電力線には回路遮断器が介装されている、燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定置用の燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、定置用の燃料電池システムとして、1個の筐体内に4個の燃料電池スタックを互いに離間させて正面視で2行2列に配置した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献に記載された燃料電池システムは、改質器より下流側で燃料供給ラインLF2が分岐し、分岐後の燃料供給ラインLF2がそれぞれ燃料電池スタックに接続される構成になっている。このため、4個の燃料電池スタックのいずれかを交換する際には、他の燃料電池スタックも停止させなければならず、システム全体としての稼働率が低下してしまうという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、複数の燃料電池システムを用いて定置用の発電ユニットを構成する場合に、任意の燃料電池スタックの交換の際に、他の燃料電池スタックを運転停止させることなく交換可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、燃料電池スタックと、燃料電池スタックとの間でガスの授受を行う補機を含む補機構造体と、を備える複数の発電モジュールと、発電モジュールに供給又は発電モジュールから排出されたガスが流れる主配管類と、主配管類と発電モジュールとを接続する分岐配管類と、を備える配管モジュールと、を備える燃料電池システムが提供される。この燃料電池システムにおいて、分岐配管類の各配管は、主配管類からの分岐部から発電モジュール側の端部までの間に遮断弁を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、複数の燃料電池システムを用いて定置用の発電ユニットを構成する場合に、任意の燃料電池スタックの交換の際に、他の燃料電池スタックを運転停止させることなく交換することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、定置用燃料電池システムの概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、定置用燃料電池システムの正面図である。
【
図3】
図3は、定置用燃料電池システムの背面図である。
【
図4】
図4は、定置用燃料電池システムの左側面図である。
【
図5】
図5は、定置用燃料電池システムの燃料系部品を抜粋した図である。
【
図6】
図6は、一対のクロスメンバと発電モジュールの、組付け前の状態を背面側から見た図である。
【
図7】
図7は、
図1の燃料電池システムを利用した発電ユニットの一例を示す正面図である。
【
図10】
図10は、排気分岐管に設けた遮断弁の断面図である。
【
図11】
図11は、排気分岐管に設けた遮断弁の変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
本発明の実施形態に係る発電プラントは、複数の定置用燃料電池システム(以下、単に燃料電池システムともいう。)1を一列に配置した発電ユニット48を複数備える。以下の説明では、燃料電池システム1、発電ユニット48の順に説明する。
【0011】
図1は、燃料電池システム1の概略構成を示す斜視図である。
図2は、燃料電池システム1の正面図である。
図3は燃料電池システム1の背面図である。
図4は燃料電池システム1の左側面図である。
図5は、燃料電池システム1の燃料系部品を抜粋した図である。なお、本実施形態において、燃料電池システム1の高さ方向を上下方向、後述する吸気管8及び排気管9等の流路方向を左右方向、上下方向及び左右方向に直交する方向を前後方向とする。また、前後方向については、後述する補機構造体7の各配管13、14との接続部が設けられる側を前(正面)とする。左右方向については、正面視を基準とする。
【0012】
本実施形態に係る燃料電池システム1は、定置用として用いられる。また、燃料電池システム1に用いられる燃料電池は、固体酸化物形燃料電池である。
【0013】
燃料電池システム1は、2個の発電モジュール2と、1個の配管モジュール3と、1個の電装モジュールとしての電力回収モジュール4と、これらを支持する枠体5と、を備える。
【0014】
発電モジュール2は、補機構造体7と、補機構造体7の上下方向の一方の面に配置された第1燃料電池スタック6Aと、他方の面に配置された第2燃料電池スタック6Bと、を備える。燃料電池スタック6は、複数の単セルが上下方向に積層されたものである。第1燃料電池スタック6Aの上下方向寸法は、第2燃料電池スタック6Bの上下方向寸法よりも大きい。つまり、第1燃料電池スタック6Aは第2燃料電池スタック6Bに比べて単セルの積層数が多い。
【0015】
なお、第1燃料電池スタック6Aと第2燃料電池スタック6Bを区別する必要がない場合には、燃料電池スタック6と称する。また、本実施形態では補機構造体7の上下方向の両面に燃料電池スタック6が配置されている構成について説明するが、いずれか一方の面にのみ燃料電池スタック6が配置されている構成であっても構わない。
【0016】
補機構造体7は、燃料電池スタック6とガスの授受を行う補機(例えば熱交換器、燃焼器等)を含む筐体である。
【0017】
また、発電モジュール2は、発電モジュール2の燃料電池スタック6に供給する燃料を噴射する燃料噴射ユニット24を備える。本実施形態の燃料噴射ユニット24は2個の燃料噴射弁を備えるが、燃料噴射弁の数はこれに限られるわけではない。
【0018】
配管モジュール3は、発電モジュール2に供給する空気が流れる吸気管8と、発電モジュール2から排出されたガスが流れる排気管9と、発電モジュール2に供給する燃料が流れる燃料配管11と、燃料噴射ユニット24を冷却するための冷却水が流れる噴射ユニット用冷却水配管10、12とを備える。なお、噴射ユニット用冷却水配管10、12については、以下の説明において単に「冷却水配管10、12」ということもある。また、冷却水配管10を入側冷却水配管10、冷却水配管12を出側冷却水配管12ということもある。
【0019】
電力回収モジュール4は、発電モジュール2の発電電力を回収し後述する電力コンバータ43へ伝送する機器及び配線や、補機類等の駆動に必要な電力を外部設備から引き込むための機器及び配線等を収めた電力ボックス19を備える。電力ボックス19は絶縁処理が施された金属部材で形成されている。なお、絶縁処理には公知の処理を用いることができる。
【0020】
枠体5は、2個の発電モジュール2と1個の配管モジュール3を取り囲むように配置された複数のフレーム部材、クロスメンバ20及び第1、第2ステー21、22で構成されている。
【0021】
枠体5の内側で、2個の発電モジュール2は上下方向に重ねて配置され、その間に配管モジュール3が配置されている。以下、上下の発電モジュール2を区別する必要がある場合には、上側を上側発電モジュール2A、下側を下側発電モジュール2Bという。
【0022】
2個の発電モジュール2を上下方向に重ねて配置することで、2個の発電モジュール2を同一面に設置する構成(以下、これを平置きともいう。)に比べて、燃料電池システム1の設置に要する面積を小さくできる。さらに、平置きの場合には、吸気管8及び排気管9等の配管類を隣り合う発電モジュール2の間に配置し、そこから各補機構造体7へ分岐する配管を設置することになる。これに対し、本実施形態の燃料電池システム1では上下方向に重ねて配置された発電モジュール2の間に配管モジュール3が配置されているので、上面から見た場合に、平置きに比べて配管類が専有する面積が小さくなる。すなわち、本実施形態の燃料電池システム1によれば、複数の発電モジュール2を備える燃料電池システム1を設置するのに必要な面積をより小さくすることが可能となる。
【0023】
枠体5は、例えば、上側発電モジュール2Aを取り囲む上側部分と、下側発電モジュール2Bを取り囲む下側部分と、配管モジュール3を散り囲む中間部分と、を含んでいる。上側部分は、上側発電モジュール2Aを取り囲むように箱型に組まれた少なくとも12本のフレーム部材と、フレーム部材で画成される左右の側面を前後方向に横切るように配置されたクロスメンバ20と、フレーム部材で画成される前後の側面(つまり正面と背面)を左右方向に横切るように配置された第1ステー22及び第2ステー21と、を備える。下側部分は上側部分と同じ構成である。中間部分は、上側部分と下側部分とを上下方向に所定の間隔をもって接続する少なくとも4本のフレーム部材を備える。
【0024】
燃料電池システム1は、燃料噴射ユニット24や補機構造体7に含まれる補機類や後述する吸気分岐管13及び排気分岐管14が備える弁体及び各弁体を駆動するアクチュエータ等(以下、これらをまとめて「補機類」ともいう)の動作に必要な電力を外部に設置した電源から供給するための電力線を備える。また燃料電池システム1は、外部に設置した制御装置から補機類へ制御に必要な信号を送るための信号線も備える。以下、これらをまとめて「電力・信号線」ともいう。そして、電力・信号線は、電力回収モジュール4から接続先の補機類まで枠体5のフレーム部材に沿って取り回されている。電力・信号線は、外部に設置した電源及び制御装置に接続される主配線と、主配線から分岐して各燃料電池システム1の補機類に接続される分岐配線とに分けることができる。
【0025】
上側発電モジュール2Aは、補機構造体7の上側に第1燃料電池スタック6Aが配置され、下側に第2燃料電池スタック6Bは配置された状態となっている。以下、この状態を正立状態ともいう。一方、下側発電モジュール2Bは、構造は上側発電モジュール2Aと同じであるが、補機構造体7の下側に第1燃料電池スタック6Aが配置され、上側に第2燃料電池スタック6Bが配置された状態となっている。つまり、上側発電モジュール2Aを前後方向に延びる軸を中心として上下反転させた状態となっている。以下、この状態を倒立状態ともいう。なお、枠体5の上側発電モジュール2Aを取り囲む部分と、枠体5の下側発電モジュール2Bを取り囲む部分も同様に、同じ構造が上下反転した関係になっている。このように、同じ構造の2個の発電モジュール2を、一方は正立状態、他方は倒立状態で使用することで、複数種類の発電モジュール2を使用する場合に比べてコストを低減できる。さらに、上下で同じ構造を採用することで、配管モジュール3と発電モジュール2との間の各配管や各配線についても、同じ形状・寸法のものを使用でき、これによってもコストを低減できる。
【0026】
また、2個の発電モジュール2は、前後方向の中心軸Cmが枠体5の前後方向の中心軸Cfに対して背面側にオフセットした位置に配置されている(
図4参照のこと。)。発電モジュール2は枠体5の右側面及び左側面に設けられた一対のクロスメンバ20及び枠体5の背面に設けられた第1ステー22に固定支持されている。クロスメンバ20は、枠体の左右の側面を画成するフレーム部材のうちの上下方向に延びる一対のフレーム部材同士を接続している。第1ステー22は枠体5の背面を画成する一対のフレーム部材同士を接続している。なお、発電モジュール2の枠体5への固定方法については後述する。
【0027】
配管モジュール3の各配管は、いずれも流路の向きが枠体5の左右方向となるよう配置されている。吸気管8及び排気管9は図示しないステー等を介して枠体5に支持されている。また、燃料配管11及び冷却水配管10、12は、枠体5に設けられたブラケット25に支持されている。
【0028】
配管モジュール3は、上記の通り上側発電モジュール2Aと下側発電モジュール2Bとの間に配置されている。より具体的には、吸気管8は上面視で燃料電池スタック6と重なる位置に配置され、排気管9は上面視で燃料電池スタック6と重ならない位置に配置されている。高温の排気が流れる排気管9をこのように配置することで、排気管9から発せられた熱が上方に抜けやすくなるので、燃料噴射ユニット24等の電装品の温度上昇を抑制できる。
【0029】
吸気管8及び排気管9の左右方向の両端にはフランジ部が設けられている。そして、後述するように複数の燃料電池システム1を左右方向に連結する際には、このフランジ部がボルト等により締結される。
【0030】
排気管9は、両端のフランジ部を除けば円筒状の単管部材である。これに対し吸気管8は、両端のフランジ部に挟まれた部分の流路断面積がフランジ部に設けられた開口部の面積に比べて大きい。そして、吸気管8の両端のフランジ部に挟まれた部分の流路断面積は、排気管9の両端のフランジ部に挟まれた部分の流路断面積に比べて大きい。換言すると、吸気管8は排気管9に比べて流路の容積が大きい。なお、本実施形態の吸気管8は左右の側面に円形の開口部を備える直方体であるが、これに限られるわけではなく、上述した条件を満たす形状であればよい。
【0031】
燃料配管11及び冷却水配管10、12の両端には、図示しないリブ加工が施されている。複数の燃料電池システム1を左右方向に連結する際には、隣り合う燃料電池システム1の燃料配管11同士及び冷却水配管10、12同士が、図示しないゴム配管等を介して接続される。
【0032】
吸気管8と発電モジュール2は、吸気分岐管13を介して接続されている。より具体的には、吸気管8から分岐した吸気分岐管13が、補機構造体7に設けられた吸気口7Aに接続されている。
【0033】
排気管9と発電モジュール2は、排気分岐管14を介して接続されている。より具体的には、排気管9から分岐した排気分岐管14が、補機構造体7に設けられた排気口7Bに接続されている。発電モジュール2から排出される排気は高温になり、また、補機構造体7と排気分岐管14との接続部も高温になるので、排気分岐管は金属部材で形成されている。なお、吸気分岐管13は、内部を流れる空気の温度及び補機構造体7と吸気分岐管13との接続部の温度が排気分岐管14に比べて低いので、高温になる発電モジュール2、排気分岐管14及び排気管9から熱が伝達しにくい部分についてはゴム配管を用いることができる。
【0034】
上記の通り上側発電モジュール2Aは正立状態、下側発電モジュール2Bは倒立状態になっており、両発電モジュール2の間に配管モジュール3が配置されている。これにより、両発電モジュール2ともに、上下方向寸法が第1燃料電池スタック6Aに比べて短い第2燃料電池スタック6Bが配管モジュール3に近い側に配置されることになる。換言すると、上側発電モジュール2Aが倒立状態で下側発電モジュール2Bが成立状態の場合に比べて、配管モジュール3から各補機構造体7までの距離が短くなる。
【0035】
吸気口7A及び排気口7Bは、上面視で補機構造体7の正面側に配置されている。また、上記の通り発電モジュール2は枠体5に対して背面側にオフセットした位置にある。したがって、吸気口7A及び排気口7Bと枠体5との間の距離が確保され、吸気分岐管13及び排気分岐管14の取り回しに余裕が生まれる。なお、本実施形態では、補機構造体7の燃料電池スタック6に対して正面側に突出した部分の下面に設けられ、排気分岐管14が下方から接続されている、これも「上面視で補機構造体7の正面側に配置されている」に含まれる。また、排気口7Bが吸気口7Aと同様に、正面方向に開口し、排気分岐管14が正面から接続される構成であってもよい。
【0036】
また、仮に吸気口7A又は排気口7Bのいずれかが上面視で補機構造体7の背面側に配置されていると、これに接続される配管があることにより、発電モジュール2を背面側にオフセットできる量が制限される。その結果、正面側及び背面側に無効空間が生じる。一方、本実施形態の燃料電池システム1は吸気口7A及び排気口7Bが正面側に集約されているので、発電モジュール2の背面を、枠体5の背面により近付けることができる。つまり、本実施形態によれば、枠体5の背面と発電モジュール2の背面との間に生じる無効空間(
図4のIS)をより小さくすることができる。
【0037】
また、上側発電モジュール2Aでは、正面視で左側に吸気口7Aが、右側に排気口7Bがそれぞれ配置されている。一方、下側発電モジュール2Bでは、正面視で右側に吸気口7Aが、左側に排気口7Bがそれぞれ配置されている。つまり、上側発電モジュール2Aと下側発電モジュール2Bで、吸気口7A及び排気口7Bの配置が逆になっている。これにより、吸気管8の、上側発電モジュール2A用の吸気分岐管13との接続部と、下側発電モジュール2B用の吸気分岐管13との接続部の位置を、左右方向にずらすことができる。吸気分岐管13には弁体や弁体を駆動するアクチュエータ等(いずれも図示せず)の付帯機器があるが、このように2個の接続部の位置を左右方向にずらすことで、付帯機器の位置を分散させることができ、2本の吸気分岐管13の取り回しに余裕が生まれる。また、2個の接続部が近い位置にあると、いずれか一方の吸気分岐管13に空気が流れにくくなる等の問題が生じるおそれがあるが、上記のように2個の接続部の位置を左右方向にずらすことで、当該問題を解消できる。排気管9の2個の排気分岐管14との接続部についても同様である。
【0038】
なお、本実施形態では同じ構造の発電モジュール2を正立状態と倒立状態で用いているので、上記のように吸気口7A及び排気口7Bの配置が逆になるのは当然である。しかし、仮に構造が異なる2個の発電モジュール2を用いる場合でも、上述した問題を解消するため、上側発電モジュール2Aと下側発電モジュール2Bで、吸気口7A及び排気口7Bの配置を逆にする。
【0039】
ところで、発電プラント等で燃料電池システム1を使用する場合には、例えば、各配管からの漏れの有無の確認、消耗品や不具合のある部品の交換等といった保守・点検作業が必要となる。本実施形態の燃料電池システム1は、発電モジュール2は枠体5に対して背面側にオフセットして配置され、かつ上下の発電モジュール2の吸気口7A及び排気口7Bが全て正面側に配置されているので、配管モジュール3に含まれる後述する遮断弁等の付帯機器も正面側に集約できる。このため、本実施形態の燃料電池システム1によれば、保守・点検作業の際の作業員の移動量が少なくなり、作業効率の向上を図ることができる。
【0040】
また、保守・点検作業の際に、作業の対象部の位置が低いと、作業員は屈み込んだり、場合によっては横たわったりすることになる。これとは反対に、作業の対象部の位置が高いと、作業員は背伸びをしたり、踏み台に乗ったりすることになる。いずれの場合も作業性を悪化させる要因となる。しかし、本実施形態の燃料電池システム1では、上側発電モジュール2Aは正立状態、下側発電モジュール2Bは倒立状態になっており、両発電モジュール2の間に配管モジュール3が配置されている。これにより、上下の発電モジュール2の補機構造体7の位置が、燃料電池システム1の上下方向の中央に寄ることとなるので、作業性の悪化を抑制できる。
【0041】
そして、発明者らが調査したところ、作業の対象部の設置面からの高さがおおよそ400mm-1500mmの範囲にあれば、作業性の悪化を抑制し得ることが明らかになった。そこで、発電モジュール2及び枠体5の寸法は任意に設定し得るものではあるが、上記の作業性の観点から、上下の発電モジュール2の吸気口7A及び排気口7Bの設置面からの高さが、400mm-1500mmの範囲内になるように、発電モジュール2及び枠体5の寸法を設定する。なお、後述する燃料供給管26と補機構造体7との接続部もこの範囲内にあることが望ましい。
【0042】
燃料噴射ユニット24は、枠体5の正面に設けられた第2ステー21に固定支持されている。燃料は、燃料配管11から燃料噴射ユニット24へ燃料分岐管15を介して供給され、燃料噴射ユニット24から燃料供給管26を介して補機構造体7へ供給され、そこから発電モジュール2へ供給される。燃料供給管26と補機構造体7との接続部は、吸気口7A及び排気口7Bと同様に、上面視で補機構造体7の正面側に配置される。また、燃料噴射ユニット24は、燃料噴射弁の噴射部を取り囲む冷却水ギャラリ27を備える。冷却水ギャラリ27と入側冷却水配管10は第1冷却水分岐管17により接続され、冷却水ギャラリ27と出側冷却水配管12は第2冷却水分岐管16により接続されている。つまり、冷却水は、入側冷却水配管10から第1冷却水分岐管17を介して冷却水ギャラリ27に供給され、そこで燃料噴射弁を冷却し、第2冷却水分岐管16を介して出側冷却水配管12へ流入する。
【0043】
入側冷却水配管10は燃料配管11に対して非挿入面側に、出側冷却水配管12は燃料配管11に対して挿入面側に配置されている。換言すると、入側冷却水配管10が排気管9から最も遠い位置に配置され、出側冷却水配管12が排気管9に最も近い位置に配置され、燃料配管11が入側冷却水配管10と出側冷却水配管12との間に配置されている。このような配置にする理由は次の通りである。
【0044】
冷却水配管10、12を流れる冷却水は、上述した通り燃料噴射ユニット24を冷却するためのものである。したがって、燃料噴射ユニット24の冷却に供される前の冷却水が流れる入側冷却水配管10は、高温の排気が流れる排気管9からの伝熱量が少ない方が望ましい。一方、燃料噴射ユニット24の冷却に供された冷却水は、その後に図示しないラジエータで冷却されるので、出側冷却水配管12は入側冷却水配管10に比べると排気管9からの伝熱量の許容量が大きい。また、燃料は燃料電池スタック6での反応性の観点からは蒸発しやすい方(つまり温度が高い方)が望ましいが、燃料配管11内で気泡が発生するほどの高温になることは望ましくない。そこで、排気管9からの伝熱量を抑制したい入側冷却水配管10を排気管9から最も遠い位置に、排気管9の熱による弊害が少ない出側冷却水配管12を排気管9に最も近い位置に、燃料噴射後に蒸発し易い温度まで温度上昇することが望ましい燃料配管11をこれらの間に、それぞれ配置する。
【0045】
電力ボックス19は、枠体5の背面の、上下の発電モジュール2の間に配置される。発電モジュール2と電力ボックス19は、分岐電力線としてのバスバ18を介して電気的に接続されている。バスバ18は燃料電池スタック6の補機構造体7と接する面と対向する面(つまり、上面と下面)から取り出され、排気管9がある方向とは異なる方向に延びて、枠体5のフレーム部材に沿って設けられた配線通路23内を通って電力ボックス19に接続されている。ここでいう「排気管9がある方向とは異なる方向に延びて」とは、排気管9に近づかないことを意味する。電力ボックス19内には外部に設置された電力コンバータ43に接続される主電力線53が収容されており、バスバ18はこの主電力線53に接続される。なお、配線通路23も電力ボックス19と同様に絶縁処理が施された金属部材で形成されている。これにより、保守・点検作業等のために分解した際に、バスバ18や電線類等の活電部がフレーム部材に接触する頻度を低下させることができる。
【0046】
2個の発電モジュール2を平置きする場合には、電力ボックス19を設置するスペースを発電モジュール2の設置スペースとは別に設ける必要があるが、本実施形態の構成によれば、その必要がなくなる。つまり、燃料電池システム1の設置に要する面積を削減できる。
【0047】
次に、
図6を参照して、発電モジュール2の枠体5への取り付け方法について説明する。
【0048】
図6は一対のクロスメンバ20と発電モジュール2の、組付け前の状態を背面側から見た図である。なお、この段階では、枠体5に第1ステー22は取り付けられていない。
【0049】
一対のクロスメンバ20の対向する面には、前後方向(水平方向)に延びて、少なくとも背面側の端部が開放端となっているガイド溝33が設けられている。発電モジュール2の補機構造体7には、ガイド溝33に対応する形状の第1スライド部31及び第2スライド部32が設けられている。なお、
図6では、第2スライド部32を備えるスライド部材30を補機構造体7とは別体として作成し、これを補機構造体7に取り付ける構成となっているが、第2スライド部32を補機構造体7の筐体と一体として形成してもよい。
【0050】
そして、枠体5の背面を挿入面、正面を非挿入面とし、挿入面から第1スライド部31及び第2スライド部32をガイド溝33に沿わせて発電モジュール2を移動させることにより、発電モジュール2を枠体5の内側に挿入する。そして、挿入後に、第1ステー22を用いて発電モジュール2と枠体5を剛結する。これにより、発電モジュール2が枠体5に固定される。このとき、ガイド溝33がクロスメンバ20の一端から他端まで設けられているならば、発電モジュール2の位置を確認しながら発電モジュール2を枠体5に挿入して、発電モジュール2の位置決めをする必要がある。しかし、本実施形態では、ガイド溝33の正面側の端部の位置を、発電モジュール2が適切に位置決めされたときの第1スライド部31の位置に合わる。換言すると、第1スライド部31がガイド溝33の正面側の端部に当接するまで挿入すれば、発電モジュール2の位置決めが完了する。これにより、位置決めが容易になる。また、挿入面が背面側にあり、補機構造体7と各配管の接続部は補機構造体7の正面側にあり、各配管は補機構造体7がスライドした場合の軌跡との干渉を避けて取り回されているので、各配管との接続を解除すれば発電モジュール2を枠体5から抜き出すことができる。つまり、発電モジュール2の交換時等に、各配管を枠体5から外す必要がない。
【0051】
また、上記のように発電モジュール2を枠体5に固定すると、発電モジュール2の特に補機構造体7が、枠体5の左右の側面に設けられた一対のクロスメンバ20を接続する構造部材としても機能する。枠体5の上側部分は、左右の各側面は一対のクロスメンバ20により、正面は第2ステー21により、背面は第2ステー21により、それぞれ面剛性が強化されているが、補機構造体7が左右の各側面を横断する構造部材として機能することで、上側部分全体としての剛性が向上する。下側部分についても同様である。これにより、地震等の外力による変形や倒壊を抑制できる。
【0052】
次に、複数の燃料電池システム1を備える発電ユニット48について
図7を参照して説明する。
図7は、発電ユニット48の一例を示す正面図である。
【0053】
図7に示す通り、複数の燃料電池システム1が左右方向に隣接して配置され、それぞれの枠体5同士がボルト等により剛結される。これにより、剛結された一対のフレーム部材が互いに補強部材として機能し、枠体5の変形が抑制される。また、各燃料電池システム1の吸気管8、排気管9、燃料配管11及び冷却水配管10、12も連結される。隣り合う燃料電池システム1の吸気管8は、継手となる配管を介して連結される。排気管9も同様である。継手となる配管は、両端にフランジ部を備え、流路断面が吸気管8、排気管9のフランジ部に設けた開口部と同形状の円管部材で形成される。隣り合う燃料電池システム1の燃料配管11及び冷却水配管10、12は、継手となる配管(例えばゴム配管等)を介して連結される。その結果、連結された直線状の吸気管(吸気主配管)8、排気管(排気主配管)9、燃料配管(燃料主配管)11及び冷却水配管10、12が、上側発電モジュール2Aの列と下側発電モジュール2Bの列との間に配置されることとなる。また、隣り合う燃料電池システム1の電力ボックス19内に収められた配線類は電気的に接続される。
【0054】
上記の通り連結された吸気管8、排気管9、燃料配管11及び冷却水配管10、12が直線状であることにより、屈曲部がある場合に比べて圧力損失を抑制できる。また、これらの配管はいずれも正面側からアクセス可能なので、作業性に優れる。
【0055】
また、上述した通り、各燃料電池システム1の吸気管8は、左右の側面に設けたフランジ部に挟まれた部分(以下、「流路部分」ともいう。)の流路断面積がフランジ部に設けた開口部の面積に比べて大きく、流路部分の容積が排気管9に比べて大きい。このため、上述した継手を介して吸気管8に供給された空気は、流路部分にためられてから上側発電モジュール2Aに接続される吸気分岐管13と下側発電モジュール2Bに接続される吸気分岐管13に流入する。すなわち、流路部分が内燃機関の吸気系におけるサージタンクと同様の機能を果たし、上下2個の発電モジュール2に供給される空気の均等化等の効果が得られる。
【0056】
複数の燃料電池システム1が連結された列(以下、燃料電池列ともいう。)の左右方向の一方の端部(
図7においては右端)には、第2枠体40が連結される。第2枠体40には、一端が吸気管8に接続される空気導入管41と、一端が排気管9に接続される排気導出管42と、電力コンバータ43と、一端が燃料配管11に接続される燃料導入管45と、一端が冷却水配管10に接続される冷却水導入管44と、一端が冷却水配管12に接続される冷却水導出管46とが固定支持されている。以下、第2枠体40、空気導入管41、排気導出管42、電力コンバータ43、燃料導入管45、冷却水導入管44及び冷却水導出管46をまとめ、外部接続モジュール47ともいう。そして、燃料電池列と外部接続モジュール47とを合わせたものを発電ユニット48という。
【0057】
燃料電池列の左右方向の他方の端部では、吸気管8、排気管9、燃料配管11の開口部が蓋又は栓により閉じられている。また、冷却水配管10の端部と冷却水配管12の端部とが接続されている。
【0058】
空気導入管41の他端は、発電ユニット48の外部に設けられた、ブロワ等の吸気設備57に接続されている。排気導出管42の他端は発電ユニット48の外部に設けられた排気処理装置等の排気設備58に接続されている。
【0059】
燃料導入管45の他端は、燃料タンク、圧力調整弁等を備える燃料設備(図示せず)に接続されている。冷却水導入管44及び冷却水導出管46の他端は、冷却水タンク、循環ポンプ及びラジエータ等を備える冷却設備(図示せず)に接続されている。
【0060】
電力コンバータ43は、燃料電池列の各電力ボックス19と電力配線を介して電気的に接続されている。つまり、燃料電池列の各発電モジュール2で発電した電力は、1個の電力コンバータ43を介して出力される。このように電力コンバータ43を1個に集約することで、次のような効果が得られる。まず、個々の燃料電池システム1に電力コンバータ43を配置する構成に比べて発電ユニットの設置面積を小さくできる。また、電力コンバータ43の冷却機構を設ける場合に、冷却対象が一箇所になるので冷却機構の構成が簡単になり、コストを削減できる。なお、さらに多くの燃料電池システム1を連結する場合には、
図7において外部接続モジュール47の右側に、左側と同様に燃料電池列を形成してもよい。この場合、空気導入管41、排気導出管42、燃料導入管45、冷却水導入管44及び冷却水導出管46はそれぞれ分岐して、右側に連結した燃料電池列にも接続する。電力配線も同様で、右側の燃料電池列も電力コンバータ43に電気的に接続する。
【0061】
ところで、各燃料電池システム1の発電モジュール2は、非挿入面側から各配管13、14、26と補機構造体7との接続を解除し、挿入面側の主電力線と分岐電力線との接続を解除し、電力・信号線の主配線と分岐配線との接続を解除すれば、挿入面から取り出すことができる。ただし、複数の燃料電池システム1からなる発電ユニットでは、各燃料電池システム1の吸気管8及び排気管9が直列に接続されているので、補機構造体7と吸気分岐管13及び排気分岐管14との接続を解除するだけでは、吸気口7A及び排気口7Bが大気解放状態となってしまう。これでは1個の発電モジュール2を交換するために発電ユニットの運転を停止しなければならない。
【0062】
また、点検等のために燃料電池システム1を停止させる場合には、空気及び燃料ガスの供給を停止する必要があるが、発電ユニットを運転させつつ特定の発電モジュール2だけを点検等するためには、点検等する発電モジュール2への供給のみを停止させる機構が必要である。これについては、バスバ18を含む電力の伝達経路及び電力・信号線についても同様である。
【0063】
そこで本実施形態の燃料電池システム1は、上述した特定の発電モジュール2のみを停止させることを可能にするために以下に説明する機構になっている。
【0064】
図8Aは吸気系の配管経路を示す図、
図8Bは排気系の配管経路を示す図、
図8Cは発電モジュール2で発電した電力を伝達する電力系の回路を示す図である。
【0065】
図8Aに示す通り、吸気系は各燃料電池システム1の吸気管8と、これらを接続する継手54と、で構成される吸気主配管と、吸気主配管に接続される空気導入管41と、後述する吸気接続管73と、吸気設備57と、各燃料電池システム1の吸気分岐管13と、を備える。吸気設備57は、吸気主配管に空気を供給するブロワである。各吸気分岐管13には、流路を開閉可能な遮断弁50が設けられている。なお、遮断弁50は
図1~
図7では省略している。
【0066】
図8Bに示す通り、排気系は、各燃料電池システム1の排気管9と、これらを接続する継手55と、で構成される排気主配管と、排気主配管に接続される排気導出管42と、各燃料電池システム1の排気分岐管14と、後述する排気接続管70と、排気設備58と、を備える。そして、各排気分岐管14には、流路を開閉可能な遮断弁51が設けられている。なお、遮断弁51は
図1~
図7では省略している。
【0067】
図8Cに示す通り、電力系は各燃料電池システム1の主電力線53と、これらを接続する電力線56と、電力コンバータ43と、各燃料電池システム1のバスバ18と、を備える。そして、各バスバ18には回路遮断器52が設けられている。なお、回路遮断器52は
図1~
図7では省略している。
【0068】
【0069】
吸気分岐管13に設けられる遮断弁50は、主配管としての吸気管8からの分岐部と発電モジュール側の端部との間に設けられている。換言すると、吸気分岐管13は、遮断弁50よりも発電モジュール側で分割可能な構造になっている。遮断弁50としては、例えば手動式のボールバルブを用いることができる。
【0070】
燃料分岐管15、第2冷却水分岐管16及び第1冷却水分岐管17も、遮断弁60~62を備える。これらの遮断弁60~62にも、例えば手動式のボールバルブを用いることができる。
【0071】
排気分岐管14に設けられる遮断弁51は、主配管としての排気管9からの分岐部と発電モジュール側の端部との間に設けられている。換言すると、排気分岐管14は、遮断弁51よりも発電モジュール側で分割可能な構造になっている。なお、本実施形態では、排気分岐管14が二分割構造になっているが、これに限られるわけではない。ここで、排気分岐管14に設ける遮断弁51について
図9、10を参照して説明する。
【0072】
図10は、遮断弁51の弁体付近の断面図である。遮断弁51は、燃料電池スタック6から排気管9への流れ方向(図中の白抜き矢印)を正方向とした場合に、弁体51A1がスイング軸51A2を軸として正方向に回動することで開弁するスイングバルブである。
【0073】
上記構成によれば、遮断弁51が逆止弁としても機能する。すなわち、例えば発電ユニット48の運転中に任意の発電モジュール2だけを交換する場合、遮断弁51を閉じてから排気分岐管14と補機構造体7との接続を解除するが、解除後に何らかの要因で弁体51A1に開弁方向に力が加わっても、排気管9側からの圧力によって閉弁状態を維持できる。つまり、高温の排気の流出を抑制できる。また、開弁状態での弁体51A1の流路の張り出しがより小さくなるよう設計することで、弁体51A1による圧力損失を抑制できる。さらにいえば、一般的にスイングバルブはボールバルブ等に比べて使用可能な温度範囲が広く、汎用品であっても固体酸化物形燃料電池の排気のような高温ガスの流路への使用が可能なものがある。
【0074】
また、遮断弁51は弁体51A1を電動アクチュエータ51Cにより開閉駆動する電動式であり、スイング軸51A2と電動アクチュエータ51Cとがロッド51Bを介して接続されている。これにより、電動アクチュエータ51Cを排気管9及び排気分岐管14から離れた場所に設置して熱害から守ることができる。なお、電動アクチュエータ51Cは、枠体5に固定してもよいし、枠体5にステーを取り付け、そこに固定してもよい。上記のように電動アクチュエータ51Cの熱害を回避できれば、電動アクチュエータ51Cの動作の信頼性が向上し、かつ、要求される耐熱性能が低くなるのでコスト低減にもつながる。
【0075】
なお、吸気分岐管13、燃料分岐管15、第2冷却水分岐管16及び第1冷却水分岐管17にはボールバルブを用い、排気分岐管14にはスイングバルブを用いる理由は、流れるガスの温度の違いである。ボールバルブはボールとボールシート(弁座)とが密着することで漏れを防止するが、流れるガスの取り得る温度範囲が広いと、ボールとボールシートの膨張係数の違い等により、温度範囲の全域で密着性を確保することが難しい。一方、スイングバルブは上記の通り広い温度範囲に対応可能である。そこで、常温から高温(例えば500℃以上)まで変化する排気についてはスイングバルブを使用し、排気に比べて低温で使用温度範囲が狭い吸気や燃料等についてはボールバルブを使用する。
【0076】
以上のように本実施形態の燃料電池システムは、燃料電池スタック6と、燃料電池スタック6との間でガスの授受を行う補機を含む補機構造体7と、を備える複数の発電モジュール2と、発電モジュール2に供給又は発電モジュール2から排出されたガスが流れる主配管類8、9、10と、主配管類8、9、10と発電モジュール2とを接続する分岐配管類13、14、15と、を備える配管モジュールと、を備える。そして、各分岐配管類13、14、15は、主配管類8、9、10からの分岐部から発電モジュール2側の端部までの間に遮断弁50、51、60を備える。このように分岐配管類13、14、15のそれぞれに独立した遮断弁50、51、60を備えることで、発電モジュール単位で各流体の回路を遮断できる。また、遮断弁50、51、60よりも発電モジュール2側に分岐配管類13、14、15の端部があるということは、遮断弁50、51、60よりも発電モジュール2側に配管の分割部があるということである。これにより、各分岐配管類13、14、15の流路遮断、配管接続の解除等の作業をそれぞれ独立して行うことができる。
【0077】
本実施形態によれば、燃料電池スタック6から主配管類に含まれる排気管9への流れ方向を正方向とした場合に、分岐配管類に含まれる排気分岐配管14が備える遮断弁51は、弁体51A1が正方向に回動することで開弁するスイングバルブである。これにより、遮断弁51が逆止弁としても機能して、高温の排気の流出を抑制できる。また、開弁状態での弁体51A1の流路の張り出しがより小さくなるよう設計することで、弁体51A1による圧力損失を抑制できる。さらには、スイングバルブはボールバルブ等に比べて使用可能な温度範囲が広く、汎用品であっても固体酸化物形燃料電池の排気のような高温ガスの流路への使用に適したものがある。
【0078】
本実施形態によれば、排気分岐管14が備える遮断弁51は、弁体51A1を電動アクチュエータ51Cにより開閉する電動式であり、弁体51A1のスイング軸51A2と電動アクチュエータ51Cとがロッド51Bを介して接続されている。これによれば、電動アクチュエータ51Cを、排気管9及び排気分岐管14から離れた場所に設置することで熱害から守ることができる。そして、電動アクチュエータ51Cの熱害を回避できれば、電動アクチュエータ51Cの動作の信頼性が向上し、かつ、要求される耐熱性能が低くなるのでコスト低減にもつながる。
【0079】
本実施形態によれば、分岐配管類に含まれる吸気分岐管13及び燃料分岐管15が備える遮断弁50、60は、手動式のボールバルブである。これにより、開閉作業を容易かつ短時間で行うことができる。
【0080】
本実施形態では、複数の発電モジュール2で発電された電力をシステム外部の電力コンバータへ送る主電力線53と、主電力線53と燃料電池スタック6とを接続するバスバ18(分岐電力線)と、を備える電装モジュールを備え、バスバ18には回路遮断器52が介装されている。これにより、発電モジュール単位で電力の回路を遮断できる。
【0081】
次に、遮断弁51の変形例について説明する。
【0082】
[変形例]
図10は、変形例に係る遮断弁51の断面図である。
【0083】
遮断弁51がスイングバルブである点は上記実施形態と同じだが、上記実施形態の遮断弁51が電動式であるのに対し、本変形例に係る遮断弁51は手動式である。本変形例に係る遮断弁51は、作業者が操作する操作子72とともに回転するウォーム70と、スイング軸51A2に設けられたウォームホイール71と、を備えるウォームギヤを開閉機構として備える。ウォーム70とウォームホイール72とは噛み合っており、操作子72を回転させるとスイング軸51A2も回転し、弁体51A1が開閉する。なお、ウォーム70の進み角は、ウォームホイール72側から回転させようとした場合に摩擦の関係からウォーム70が動かなくなる、いわゆるセルフロック現象が生じる程度の大きさ、例えば20度以下、であることが望ましい。
【0084】
本変形例によれば、排気分岐管14が備える遮断弁51は、開閉機構を手動で操作する手動式であり、作業者が操作する操作子とともに回転するウォームと、前記弁体のスイング軸に設けられたウォームホイールと、を備えるウォームギヤ機構により開閉する。これにより、弁体51A1に何らかの要因で開弁方向の力が作用しても、排気管9側からの圧力に加え、さらにセルフロック現象によって閉弁状態を維持できる。また、電動式に比べてコストを低減できる。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0086】
1 燃料電池システム、 2 発電モジュール、 3 配管モジュール、 4 電力回収モジュール、 5 枠体、 6 燃料電池スタック、 7 補機構造体、 8 吸気管(吸気主配管)、 9 排気管(排気主配管)、 41 吸気接続管、 42 排気接続管、 43 電力コンバータ、 47 外部接続モジュール、 60 発電ユニット、 64 可動機構