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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082621
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】下顎が自由に運動できる装置
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/04 20060101AFI20240613BHJP
   A61C 19/045 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
A61C19/04 Z
A61C19/045
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196591
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】521047605
【氏名又は名称】松尾 秀司
(74)【代理人】
【識別番号】100092107
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 達也
(72)【発明者】
【氏名】有田 博一
(72)【発明者】
【氏名】松尾 秀司
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052NN01
4C052NN15
4C052PP00
(57)【要約】
【課題】 本発明は、乱れた歯列やずれた顎位の影響により起こる咀嚼不良、不定愁訴や姿勢悪化、歯ぎしり及び食いしばり、いびきの防止や睡眠時無呼吸症候群の検査及び治療をするために、咬頭干渉しない咬合高径で抵抗のない顎運動または顎運動を誘導、抑制、制御し、任意の顎位の採得と撮影を可能にする装置、及び本装置を用いて、歯周組織や関節に影響を及ぼす顎位の採得及び撮影方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 上下歯牙列の歯1本以上を覆う形状部材からなり、歯に対して着脱自在に設け、前記上下歯牙列を覆う形状部材5は、滑走面4を有し、この滑走面4の形状は、面状、線状、点状、3角形状の中から選択し、滑走面4は、咬合平面3に対して平行、または正中(矢状面)に平行及び角度をつけるようにした患者の下顎を抵抗なく動かす、及び誘導・抑制・制御を行う装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下歯牙列の歯1本以上の歯牙を覆う形状部材からなり、歯に対して着脱自在に設け、前記上下歯牙列を覆う形状部材は、滑走面を有し、この滑走面の形状は、面状、線状、点状、3角形状の中から選択し、滑走面は、咬合平面に対して平行、または正中に平行及び角度をつけるようにしたことを特徴とする下顎を抵抗なく動かす、及び誘導・抑制・制御を行う装置。
【請求項2】
滑走面は、下顎が咬頭干渉を起こさずに抵抗なく運動できる咬合高径に設定したことを特徴とする請求項1記載の下顎を抵抗なく動かす、及び誘導・抑制・制御を行う装置。
【請求項3】
滑走面は、取り外しができるもの、または、取り外しができない一体式のもので製作したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の下顎を抵抗なく動かす、及び誘導・抑制・制御を行う装置。
【請求項4】
上下歯牙列を覆う形状部材に下顎が後退したときに嵌合し、開口を防ぐ嵌合突起部材、または開口及び下顎の後退を誘導する斜面を設けたことを特徴する請求項1、または請求項2に記載の下顎を抵抗なく動かす、及び誘導・抑制・制御を行う装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4に記載の装置を用い、患者の顎位を探り、採得する装置を用いて咬合を挙上し、抵抗のない顎運動のなかで術者が顎位を探り決定し、その顎位の採得または撮影をするもので、滑走面を持つ本装置を上下顎に装着して下顎を抵抗なく動かす、及び顎位を探り、顎位を採得または撮影をすることを特徴とする顎位の採得または撮影をする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、術者が患者の顎位と咬合、顎位が姿勢に及ぼす影響(以降姿勢という)の状態を見極めるためのオーラルアプライアンスを提供するもの、すなわち、顎位の治療や、噛み合わせの治療、先天的な理由及び後天的な理由(歯ぎしりや食いしばりによる歯牙の摩耗、頬杖や片噛み等の生活習慣、歯の治療等)が原因で起こる噛み合わせの不良や顎関節の不調を治療するために用いるオーラルアプライアンスを改善、術者が患者の顎関節(下顎窩と下顎頭の位置関係)を含む最善の顎位を探り、採得することを容易にし、術者が探り出した顎位を安定させる装置の製作や顎位が及ぼす口腔の状態、歯周組織、関節の撮影(X線撮影、CT撮影、MRI検査)を可能にする方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
患者が咬合(噛み合わせ)の不良を訴えても直ちに症状改善を目的とした不可逆的な治療(咬合調整や補綴など)を行わないことは推奨されている。また不可逆的な治療(咬合調整や補綴など)が必要となった場合は、その根拠と害を十分に説明し、患者の同意の元に行うべきである。
咬合や姿勢の不調及び不良の治療の場合は治療が広範囲(全顎、全歯)に及ぶ場合が多く、且つ不可逆的な治療であれば患者は説明を受けても益を判断するのは困難である。
咬合や姿勢の正常化の治療には歯並びを整える歯科矯正治療と咬合調整や補綴などで上下歯牙の接触を整える補綴治療がある。どちらも不可逆的治療であり治療目的および目標の提示と患者の同意が必要である。
歯科矯正治療において、最近では患者の顔貌写真にコンピュータグラフィックス技術できれいな歯並びを合成し患者に提示し同意を得ているが、きれいな歯並びが患者にとって最善の噛み合わせとは限らないし、矯正治療後きれいな歯並びなのに噛み合わせの不調を訴える例もある。
補綴治療で咬合の正常化をする場合は、オクルーザルアプライアンス(マウスピースやスプリント)または仮着したレジンシェルの咬合面に、歯科用樹脂の盛り足し調整することで咬合支持を付与し、顎位や咬合の機能的な安定性を術者が構築し、患者も改善した咬合(噛み合わせ)を体感し治療の同意をした後、補綴歯科的介入を行う。この場合治療後の咬合は患者にとって最適解であるが、補綴歯科的介入を行うまでの試行錯誤は高い技術と長い治療期間が必要で、最終補綴の治療期間より時間がかかる。
この問題を解決する手段として、本装置は前歯接触型マウスピースの形態をとるが、上下顎全歯に装着し、基本的に上顎は正中(矢状面)に平行、下顎は咬合平面に平行の滑走面を持ち、滑走面は直線だけではなくモンソンカーブ、ウイルソンカーブ、スピーの湾曲等の解剖学湾曲と同等または類似した3次元湾曲面と平行または類似となるように設定し、上下顎が点や線、または面で接触し、抵抗の少ない滑らかな顎運動ができる構造に設定したものである。
本装置を用い、術者が最善とする顎位を探り、顎位の採得や撮影を可能にし、正常な咬合や姿勢を回復する治療の基準を得ること、術者が目標とする咬合を模した歯冠形態を有し、日常装着でき、食事もすることができるオーラルアプライアンスを提供し、患者が最終補綴物の咬合状態を疑似体験し、治療の同意を得ることを目的とするものである。
つまり、本装置を用いて下顎を滑らかに動かすことができれば、例えば食いしばりや歯ぎしりによる、不快感、歯牙の咬耗や破折を抑制及び防止、かみ合わせや顎位の不正が原因とされる不定愁訴の軽減、睡眠時の開口と顎位の後退によるいびきや睡眠時無呼吸症候群の緩和をすることもできる。
従来から、いびき及び閉塞性睡眠時無呼吸症の緩和をするために、上部気道の閉塞を改善するための方法と装置は、存在している。
例えば、ヒトの気道内の閉塞状態を除去するのに適した装置で、口の中で舌に害を与えずにヒトの口の中に密封されたキャビティを形成するのに適したマウスピース、及び、マウスピースに結合し、密封されたキャビティに通じている第一の端部、及び、遮断状態の気道に応答して口及び(又は)上部気道の中の密封されたキャビティの中に負圧を生じるのに有効な負圧発生器に結合するのに適した第二の端部を有する中空の細長い部材から成る装置や、ヒトの気道内の閉塞状態を除去するための方法で、ヒトの口の中に密封されたキャビティを形成すること、密封されたキャビティを負圧発生器に結合すること、上部気道の軟組織が咽頭の後方壁に落ち込んだときに、上部気道の軟組織を咽頭の後方壁から引き離し、それにより閉塞状態を除去するために、密封されたキャビティ内の負圧を生じるのに有効な割合で密封されたキャビティから空気を除去するために負圧発生器を動作させることから成る方法(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007-520279号公報(特許請求の範囲の欄、発明の詳細な説明の欄、及び図1図5を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、乱れた歯列やずれた顎位の影響により起こる咀嚼不良、不定愁訴や姿勢悪化、歯ぎしり及び食いしばり、いびきの防止や睡眠時無呼吸症候群の検査及び治療をするために、咬頭干渉しない咬合高径で抵抗のない顎運動または顎運動を誘導、抑制、制御し、任意の顎位の採得と撮影を可能にする装置、及び本装置を用いて、歯周組織や関節に影響を及ぼす顎位の採得及び撮影方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成できる本発明の第1発明は、請求項1に記載された通り咬合を挙上し、抵抗のない顎運動が可能になる患者の下顎を誘導・抑制・制御を行う装置であり、次のようなものである。
上下歯牙列の歯1本以上の歯牙を覆う形状部材からなり、歯に対して着脱自在に設け、前記上下歯牙列を覆う形状部材は、滑走面を有し、この滑走面の形状は、面状、線状、点状、3角形状の中から選択し、滑走面は、咬合平面に平行、または正中(矢状面)に平行及び角度をつける等、どこに設置することも可能な構成である。
【0006】
上記の目的を達成できる本発明の第2発明は、請求項2に記載された通り咬合を挙上し、抵抗のない顎運動が可能になる患者の下顎を誘導・抑制・制御を行う装置であり、次のようなものである。
請求項1に記載の発明に加えて、滑走面は、下顎が咬頭干渉を起こさずに抵抗なく運動できる咬合高径に設定するという構成である。
【0007】
上記の目的を達成できる本発明の第3発明は、請求項3に記載された通り咬合を挙上し、抵抗のない顎運動が可能になる患者の下顎を誘導・抑制・制御を行う装置であり、次のようなものである。
請求項1、または請求項2に記載の発明に加えて、滑走面は、取り外しができるもの、または取り外しできない一体式のもので製作する構成である。
【0008】
上記の目的を達成できる本発明の第4発明は、請求項4に記載された通り咬合を挙上し、抵抗のない顎運動が可能になる患者の下顎を誘導・抑制・制御を行う装置であり、次のようなものである。
請求項1、または請求項2に記載の発明に加えて、上下歯牙列を覆う形状部材に下顎が後退したときに嵌合し、開口を防ぐ嵌合突起部材を設ける構成である。
【0009】
上記の目的を達成できる本発明の第5発明は、請求項5に記載された通り咬合を挙上し、抵抗のない顎運動が可能になる患者の下顎を誘導・抑制・制御を行う装置を用いた任意の顎位の採得及び撮影方法であり、次のようなものである。
請求項1~請求項4に記載の装置を用い、患者の下顎を誘導・抑制・制御を行う装置を用いて咬合を挙上し、抵抗のない顎運動のなかで術者が最適な顎位を決定し、その顎位の採得または撮影を可能にするもので、滑走面を持つ本装置を上下顎に装着し顎位を探り、顎位を採得または撮影をする構成である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る抵抗のない滑らかな顎運動を実現し、下顎を誘導、抑制、制御を行う装置は、上記説明のような構成を有するので、以下に記載する効果を奏する。
(1)睡眠時の歯ぎしり及び食いしばりを解消するために咬頭干渉せず、下顎が前後左右にスムーズに運動できる。
(2)睡眠時の開口および顎の後退制御で睡眠時無呼吸症候群の予防・解消を促すことができる。
(3)滑走面に術者が任意の角度や高さを設定することで、下顎を誘導し顎位を変化させることができる。
(4)任意の顎位を容易に採得および撮影することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の患者の顎位を探る下顎を誘導・抑制・制御を行う装置を上下顎の歯列の左右中切歯間の概略展開図である。
図2】本発明の正中(矢状面)に平行な滑走面の遠心面が舌に当たり、不快感や損傷を与える場合、遠心面に舌保護面を設けた改良実施例を示す概略展開図である。
図3】本発明の特徴である滑走面の設置個所の一例であり、歯列弓のどこに設置してもよく、左右の下顎頭と滑走面の3点で頭蓋骨に接すれば良いことを示す概略説明図である。
図4】本発明の上下歯の滑走面での基準となる咬合平面を示す概略説明図である。
図5】本発明の任意の顎位と咬合高径で咬合採得する本装置の上下歯牙の咬合の際、下顎の左右側移動量や、術者が患者の顎位や、安静時の顎間距離、咬合状態等から判断して決定する滑走面の形状、下顎の前後方向移動量により決定できる各種滑走面の形状の説明図で、(a)は滑走面が面状の平面の実施例、(b)(c)(d)は線状の実施例、(e)(f)は小円状の実施例、(g)(h)は球状の実施例、(i)(j)は三角柱状の実施例、(k)はアンテリアガイダンスを再現または付与するためのもので、深さh、角度g、移動距離iの凹面を設定することで正常な噛み合わせが持つアンテリアガイダンスを再現できる。深さh、角度g、移動距離iは術者が顎運動を観察しながら決定するものをそれぞれ示す概略断面図である。
図6】本発明の正中に平行の滑走面に咬合平面に対し角度を与えると前後方向に顎運動を誘導できるもので、咬合平面に平行もしくは解剖学湾曲と同じか類似した曲面の場合は、下顎は自由に運動できる状態であることを示す概略説明図である。
図7図6と同様に咬合平面に対し、滑走面が奥下がりしている場合、下顎は前方に誘導される状態であることを示す概略拡大側面図である。
図8】本発明の咬合平面に対し、平行の滑走面に角度を与えると左右方向の下顎運動を抑制または、誘導でき、上下歯の滑走面が咬合平面に対し平行な場合、顎は左右自由に運動できる状態であることを示す概略拡大正面図である。
図9】本発明の咬合平面に対し、平行の滑走面に角度を持たした実施例を示し、下顎は右側へ運動を抑制され、右にずれている顎位を矯正できる状態であることを示す概略拡大正面図である。
図10】本発明の睡眠時の開口制御と食いしばりのない顎運動の誘導・抑制の実現のために磁石を滑走面に対し、水平に設置した実施例を示す概略拡大斜視図である。
図11】本発明の顎運動により滑走面と平行性のずれが生じ、吸着力が一定に保たれない場合は、ボールエンド形状の支柱にすることで360度方向にわずかに傾くことで、滑走面と平行性が保たれた吸着力を持たせることができる実施例を示す概略拡大斜視図である。
図12】本発明の睡眠時の開口制御で、下顎が後退した時に嵌合し、開口を防ぐ突起等の係止部材を設けた実施例を示す概略拡大側面図である。
図13】本発明の装置は、術者が任意の顎位を探ることができることを説明する概略立体図である。
図14】上下顎の上下歯に本装置を装着した際、下顎が自由に運動できる状態を示す説明図で、(a)は本装置の装着状態、(b)はその要部の拡大説明図、(c)は歯牙を覆う形状を有する本装置で、歯牙の最大豊隆部以下のアンダーカット部の隙間に本体形状または歯科用義歯用裏装剤が入り込み維持力を得る構造についての説明図である。
図15】上下顎の上下歯に本装置を装着し、術者が最善とする顎位で、上下滑走面が交差する点のどちらかに凹面を形成し、対合する滑走面が嵌合した状態を示す説明図で、(a)は本装置の装着状態、(b)はその要部拡大説明図、(c)は上下歯に本装置を装着した状態を正面から見た概略拡大正面図である。尚、この程度の嵌合で下顎の動きを抑制でき、確実に顎位を採得することができる。また、咬合高径が低く嵌合が得られない等の場合は、歯科用接着剤や歯科用即時重合樹脂で固定後、歯科用シリコン樹脂で固定しても良い。探り出した顎位を患者、若しくは術者が容易に再現や保持できる場合は、嵌合、接着しなくても良い。
図16】説明用としての顎位に対する下顎頭の標準的な位置を示すもので、(a)は下顎安静位を示す概略側面図、(b)は開口位を示す概略側面図である。
図17図16の示す下顎頭の要部を示すもので、(a)は開口位を示す概略側面図、(b)は下顎安静位を示す概略側面図、(c)は中心咬合位を示す概略側面図、(d)は低位咬合位を示す概略側面図、(e)は(c)の拡大概略側面図である。
図18】睡眠時無呼吸症候群の状態を示し、(a)は覚醒、立位、(b)は覚醒、仰臥位、(c)は睡眠、仰臥位状態を示す概略説明図である。
図19】顎位で睡眠時無呼吸症候群の原因の一つである舌根の沈下と気道狭窄が起きるか術者に判断する場を提供する概略説明図である。
図20】本発明の装置に、正中(矢状面)に平行な線状滑走面に凹部、及び咬合平面に平行な面に凹部を付与し、咬合平面に平行な線状滑走面の前後左右の動きを抑制することができる工夫をした一実施例を示す概略説明図である。
図21】歯牙を覆う形状部材を金属で製作した場合の滑走面の埋め込み方法を示す概略説明図である。
図22】樹脂滑走面を覆う金属製の形状部材を歯科用接着剤で接着する方法を示す概略説明図である。
図23】樹脂製の歯牙を覆う形状部材に金属製滑走面が嵌合する溝を付与して、歯科用接着剤で接着する方法を説明する概略説明図である。
図24】樹脂製の歯牙を覆う形状部材に円形、もしくは多角形の金属製滑走面が嵌合する溝を付与して、歯科用接着剤で接着する方法を説明する概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上下歯牙列の歯1本以上の歯牙を覆う形状部材からなり、該形状部材は、上・下歯牙列のどちらか一方、または上下歯牙列の両方一対部材を選択し、歯に対して着脱自在に設け、前記上下歯牙列を覆う形状部材は、それぞれ滑走面を有し、この滑走面の形状は、面状、線状、点状、3角形状の中から選択し、滑走面は、咬合平面に対して平行、または正中(矢状面)に平行、及び咬合平面に対して角度をつけるようにして患者の顎位を探り、採得または撮影を可能にする装置である。
【実施例0013】
先ず、本発明に関する前提について説明する。
前提1:オーラルアプライアンスとは口腔機能を補助する目的や、顎関節や歯や歯周組織への治療・処置を行う目的で、口中に入れる器具や装置の総称であり、ナイトガード、睡眠時無呼吸症候群用装置、いびき防止装置、オクルーザルアプライアンス、スタビリティアプライアンス、外傷予防用マウスガード、アライナー型矯正装置、舌接触補助床、ブリーチング用トレー、3DSトレー、モイスチャートレー、栓塞子、止血シーネ、インプラント治療用テンプレートなどがあげられる。近年サーモフォーミングの器具や技術が進化し、歯科医院で比較的簡便に製作することが可能になった。今後も患者のニーズの多様化、歯科医療の技術の発展とともに、さらに多くの分野や用途において用いられることが見込まれる。
顎位と咬合(噛み合わせ)について述べる。
前提2:顎位とは下顎骨の3次元的な位置であり、図3(b)に示すように下顎頭が頭蓋骨の側頭部にある下顎窩に均等に収まる位置が安定した顎位である(図17(e)参照)。下顎骨は成人では約1kg程の質量があり安静位の顎位や咀嚼時の運動が起こす慣性は頸椎にも作用し骨格を含む身体のバランスにまで影響を及ぼす。さらに顎関節は他の関節とは異なり下顎頭が下顎窩に緩やかに収まる構造で、且つ咀嚼筋で吊られた状態であり、様々な力的な要因や噛み合わせの不良が起こす僅かなずれを許容してしまう。この僅かなずれで、健常者では安静位から左右にほとんどずれることなくスムーズに咬頭嵌合位に入る顎運動が、前後左右にずれた運動路つまり習慣性開閉運動となり、中心咬合位(咬合学的に正しい顎位)ではなく習慣性閉口終末位(ずれた顎位)になってしまうことがある。
咬合とは、上下顎の歯牙が噛み合う状態のことで先天的な遺伝や、骨格的な要因のほかに、就寝時の姿勢習慣、頬杖、口唇の緊張や弛緩、口の周囲筋の緊張、舌の緊張、口呼吸、加齢変化、職業等での一定姿勢の継続、または歯科治療受診による歯列の形態変化、無意識の歯ぎしり、くいしばり、かみしめ習慣などが原因で、咬合学的に正しくない状態になることがある。
このように緩やかな構造の顎関節の基で自由に運動できる下顎(顎位)と咬合は密接な関係にあるために、徐々にずれてしまった顎位は歯牙の噛み合わせがあるために本来の位置を探ることや戻すことは非常に困難である。
前提3:噛み合わせの正常化の治療には歯並びを整える歯科矯正治療と咬合調整や補綴物などで咬合の回復を図る補綴治療がある。どちらも不可逆的治療であり治療目的および目標の提示と患者の同意が必要である。
歯科矯正治療において、最近では患者の顔貌写真にコンピュータグラフィックス技術できれいな歯並びを合成したものを患者に提示し同意を得ているが、きれいな歯並びが患者にとって最善の噛み合わせとは限らないし、矯正治療後きれいな歯並びなのに噛み合わせの不調を訴える例もある。
補綴治療において、オクルーザルアプライアンス療法のマウスピースやスプリントまたは仮着したレジンシェルの咬合面に、歯科用樹脂の盛り足しや削合で咬合支持を付与し、顎位や咬合(噛み合わせ)の機能的な安定性を術者が確認し、患者も改善した咬合(噛み合わせ)を体感し、治療の同意をした後、補綴歯科的介入を行う。この場合治療後の咬合は患者にとって最適解であるが、補綴歯科的介入を行うまでの試行錯誤は、最終補綴の治療期間より時間がかかる。
前提4:医科の放射線科では、X線写真撮影、CT、MRIの操作は医師の指示により放射線技師が行っていて、放射線科医師はX線写真、CT、MRI、超音波検査(エコー)、核医学検査(PETを含む)の画像診断やIVRを行っている。顎位が及ぼす歯周組織の状態(睡眠時無呼吸症候群の気道狭窄など)を撮影したくても、放射線技師及び医師は顎位の検索は専門外であり、患者も撮影中対象となる複数の顎位を再現および維持し続けることは不可能である。
【0014】
以下、本発明の一実施例の患者の顎位を採得または撮影を可能にする装置、及び本装置を用いた顎位の採得または撮影をする方法について説明する。
図13に基づいて説明すると、オーラルアプライアンスに滑走面を与え、下顎が上下歯牙に干渉されずに自由に運動できるようにする。これにより、術者は患者の顎位を探ることができる
【0015】
以上の本発明装置を活用して、術者が患者の歯列、顎位の状況を判断し、適切な処置を行うものであり、各患者の状況に合わせて行う処置の具体的な説明を以下に説明する。
【0016】
以下、図1図5に基づいて説明をする。
上下歯牙列を覆う形状部材(例えば、サーモフォーミング器具を使用し製作したもの、歯科用樹脂を圧接または充填して形成したもの、3Dプリンターで印刷したもの等が考えられる)を有する本装置5は、上顎用装置1と下顎用装置2とから成り、それぞれ滑走面4を有し、滑走面4の形状は面状、線状、点状、3角形状の中から術者が使用目的や効果から決定することができる。
滑走面4は上下顎歯牙列に対合するように設置し下顎を滑らかに動かすことと、滑走面4の接触点と左右下顎頭が支点となり頭蓋骨と接触することで咀嚼筋と顎関節の緊張を緩和することを目的とする。
さらに、点以外の滑走面4は、咬合平面3に平行、対するもう一方は正中に平行に設定するが、治療内容により術者が角度を変更できるものである。
この角度の変更とは、具体的に顎が滑走し易い、又は滑走し難くする角度を与えることである。
加えて、図2に示すように正中に平行な滑走面が舌に干渉し、不快感や損傷を与えないように、滑走面遠心部に舌保護面6を付与することで解決することも考えられる。
また、本装置の上下滑走面に線状を選択する場合、咬合平面に平行な滑走面(下の歯側)を付与する歯列の切端が、正中に平行な滑走面(上の歯側)を抵抗なく移動できると術者が判断した場合は、下側歯に取り付ける咬合平面に平行な滑走面4を持つ本装置を用いず、正中に平行な滑走面を持つ本装置のみで顎位の採得を行っても良いものである。
また、滑走面4の垂直的位置関係は、顎運動時に咬頭干渉を起こさない高さに設定するものである。
さらに、滑走面4は着脱自在にすることで、術者が治療効果にあわせ調整することができるようにする。
歯牙の挺出を防ぐために全歯牙を覆う形状が望ましいが、装着感を良くするために咬合圧に耐えきれる最小限の大きさでも良いことはいうまでもない。
着脱自在な滑走面4は、歯冠製作用金属、またはセラミック、歯科用樹脂、医療及び歯科用造影物質、X線不透過素材(これは、X線撮影を行った際に撮影データと歯列データの同期の基準にするためである)、歯科用3Dプリンター樹脂等で製作する。各々の滑走面4を義歯吸着磁性アタッチメントと磁石吸着金属で製造すると、開口抑制ができ、食いしばりのない患者でも、滑走面4上で顎運動を行うことを誘導することができる。
本装置は、滑走面を着脱自在にする理由として、咬合圧が強く滑走面が摩耗する場合、咬合口径の調整が必要になると思われる場合に有効である。
いびきが特にひどい、又は睡眠時無呼吸症候群等、顎位の後退を制御したい場合は、嵌合突起を設け、顎の後退と、その位置での開口を制御することができる。この嵌合突起は、大きさ及び形状で開口の制御力が調整できる。
【0017】
ここで、本装置の滑走面4について図5図7に基づいて詳細に説明する。
滑走面4は、図5(a)に示すように平面状、図5(b)~(d)に示すように線状、図5(e)(f)に示すように小円状、図5(g)(h)に示すように球状、図5(i)(j)に示すような三角柱状等を採用することができるが、相対する滑走面4は咬合平面と平行、あるいは術者が顎運動を誘導するために指定する角度を有するものである。また、図5(k)に示すように、角度g、ガイド幅iはアンテリアガイダンスを付与するもので、術者が患者の顎運動を観察しながら決定し、ガイドの深さhは、対する滑走面4の高さjより浅くしたものである。
これを利用して、上下犬歯や小臼歯が正常な位置になくても図5(k)疑似的にアンテリアガイダンスを与えることができる。また、アンテリアガイダンスを再現した本品を装着した義歯製作模型を咬合器に装着し、下顎運動路を咬合器の切歯誘導板に歯科用樹脂を用い記録することでアンテリアガイダンスを義歯に再現することができる。
図示の滑走面4は下顎左右側移動量により決定する。
【0018】
次に、基本的形状について説明する。
上下歯牙列の歯1本以上全歯牙を覆う形状の上・下歯牙列のどちらか一方、または上下歯牙列の一対の部材からなるもので、装着する歯に対応して、図1に示す通り、この一例である装置の寸法aは左右中切歯1の幅で、滑走面4は前後左右の顎運動距離より5mm以上大きく設定するのが望ましい。滑走面4の位置は基本的には正中(矢状面)と図4に示す咬合平面3に平行となるように設定する。
【0019】
次に、図7に基づいて説明すると、咬合平面3に対し、滑走面4が奥下がりしている場合、顎は前方に誘導される。滑走面4に角度をつけることで顎運動を抑制、誘導することができる。
図5(c)に示すように、線状、小円状、球状の側面の高さeは、術者の顎位や安静時の顎間距離、咬合状態等から判断して決定する。
図5(d)に示すように、平面上の滑走面4のfは下顎の前後方向移動量により決定する。さらに、滑走面4は直線でも良いし、歯列に合わせて湾曲させても良い。
図8図9に基づいて説明すると、図8の滑走面4が咬合平面3に対し平行な場合、顎は左右自由に運動できる。
図9の滑走面4が咬合平面3に対し角度を持たすと、顎の左右どちらかの側方運動を抑制できる。
【0020】
ここで、歯牙を覆う形状部材の例えば、金属フレームに滑走面4を付与する手段として、図21(a)~(c)に示すように樹脂に埋め込む方法、さらに図22(a)(b)に示すように、取り外しができない一体式のものとして、樹脂滑走面4を覆う形状部材の例えば、金属フレームを歯科用接着剤で接着する方法、図23(a)~(c)に示すように、取り外しできるものとして、歯牙を覆う形状部材に金属製滑走面4が嵌合する溝を付与し、歯科用接着剤で接着する方法、図24(a)~(h)に示すように、樹脂製の歯牙を覆う形状部材に円形もしくは多角形の金属製滑走面4が嵌合する溝を付与し、歯科用接着剤で接着する方法等が有効に行えるものである。この他、歯牙を覆う形状部材に滑走面4を設ける方法は種々設計できることは言うまでもない。
また、CT撮影時に金属製滑走面が嵌合する溝に造影性のある素材を入れ、CT撮影データと歯列データを同期する基準にしてもよい。
その理由は、理由はCT撮影データの歯の形状が非常に粗いため、歯列データの歯牙形状と同期させるのが困難な場合が多く、CT撮影データに本発明品の滑走面が造影されていると本装置の滑走面を基準に正確に歯牙の位置と形状を同期できるためである。
【0021】
次に、図10図11に基づいて睡眠時の開口制御と食いしばりのない患者の顎運動誘導、抑制についての一例を説明する。
顎の開口運動は咬筋の仕組みにより閉口及び噛む力に比べ著しく弱く、磁石の吸着力程度で抑制できる。
口腔内で使用できる義歯安定用の磁気アタッチメント用磁石7を滑走面4に用い、対する滑走面4に磁性体金属のプレートを配することで自由な顎運動と開口抑制が実現できる。
磁気アタッチメント用磁石7は、対向する滑走面4に対し水平に位置することで、吸着力が最大になることから、ボールエンド形状の支柱に配置するのが望ましいが、本装置5に直に設置しても良い。
固定式の場合、下顎の運動経路が描く解剖学的湾曲で滑走面4と平行性のズレが生じ、吸着力が一定に保たれない場合があるが、ボールエンド形状の支柱であれば、360度方向にわずかに傾くことで対向する滑走面4と平行性が保たれて吸着力が常に最大になる。
さらに、下顎が後退した時に嵌合し、開口を防ぐために図12に示すような嵌合突起部を付与することで、極めて良好に開口と顎の後退を防ぐことができる。
また、図13に示すように、本装置は、各咬合平面3を基準にし、術者が任意の角度を設定することで、下顎を誘導することができる。
【0022】
次に、図14に基づいて任意の顎位を採得することについて説明する。
顎関節は他の関節とは異なり下顎頭が下顎窩に緩やかに収まる構造で、且つ咀嚼筋で吊られた状態であり、様々な力的な要因や噛み合わせの不良が起こす僅かなずれを許容してしまう。この僅かなずれで、健常者では安静位から左右にほとんどずれることなくスムーズに咬頭嵌合位に入る顎運動が、前後左右にずれた運動路つまり習慣性開閉運動となり、中心咬合位(咬合学的に正しい顎位)ではなく習慣性閉口終末位(ずれた顎位)になってしまうことがある。現状ではこのずれた顎位の治療及び技工は非常に困難であり、顎位を想定し、製作した咬合状態も患者が受け入れられなくては成立せず、少しずつ様子を見ながら調整するので時間もかかる。
本装置を用いて顎位を採得すれば、干渉する咬合関係が明確になり、補綴物の設計や製造が容易になり、診療時間の短縮や患者の負担軽減につながるものである。
【0023】
ここで、本装置を用いた顎位の採得や撮影方法について説明する。
本装置を顎位採得に用いる場合、滑走面4は上下顎共に線状滑走面で製作した実施例で説明する。
本装置を用い自由な顎運動をしながら患者の顎位を探りだし、採得や撮影を行う。上下滑走面が交差する点(探り出した顎位)を術者が再現するのが困難である、患者が保持することが困難な場合は、滑走面の交差点に凹面を形成し対する滑走面が嵌合するようにすると探り出した顎位を容易に再現することができ下顎の動きを抑制できる。滑走面に嵌合凹面を形成できない場合は歯科用接着剤や歯科用即時重合樹脂で上下装置を固定してもよい。
顎位の採得は、WAXや咬合印象用シリコンなど物理的手段でも歯科用3次元測定器でも良い。
尚、図14に示すものは、下顎が自由に運動できる状態で、図15図20に示すものは、下顎滑走面が上顎滑走面に嵌合した状態を示すものである。この程度の嵌合で下顎の動きを抑制でき、確実な咬合採得を採ることができる。図20に示す前後左右の動きを抑制するものが基本で、図15に示す前後に動かせる嵌合が工夫された他の実施例である。
また、図14(c)に示す例のように、本品は歯牙を覆う形状を有する装置で、アンダーカットに入れずに歯牙を覆い歯牙の最大豊隆部以下のアンダーカット部の隙間に歯科用義歯裏装剤を注入し本装置と一体にすることで維持力を得る構造である。また適切にアンダーカットを利用できるのであれば歯科用義歯裏装剤を使わずに、本装置をアンダーカットに入れ維持力を得てもよい。
さらに、図20(a)、(b)に示す実施例のように対する滑走面が嵌合する溝について説明する。上顎に装着した装置の正中に平行な滑走面に溝を形成した場合、嵌合した下顎滑走面の前後左右の動きを抑制できる。下顎に装着した咬合平面に平行の滑走面に溝を形成した場合、下顎滑走面の左右方向の動きは抑制できるが前後の運動は自由にできる。図20に示すように、正中(矢状面)に平行な線状滑走面に凹部を付与した場合、咬合平面に平行な線状滑走面の前後左右の動きを抑制することができるものである。
【0024】
本発明の簡易型として例えば印象採得に用いるトレーのように歯牙の大きさ、歯列弓、口蓋の深さ等の平均値から導き出した歯牙を覆う形状部材に本発明の特徴である滑走面を与えてもよい。顎位採得や撮影の補助や歯ぎしりや食いしばり防止に用いる本発明は、正確な顎位採得のために、撮影時に顎位を正確に安定して保持できるように、睡眠時に脱離しないように、歯列に精密に適合するように製造されなくてはいけないが、簡易型であっても歯科用樹脂や義歯裏層用樹脂で歯列に精密に密着されば効果に遜色はない。
【0025】
また、図16図17は、上下顎の下顎安静位と開口位の状態時における下顎頭の標準的な位置関係を示す説明図である。
図18(a)~(c)に基づいてオーラルアプライアンスを用いた睡眠時無呼吸症候群の診断について説明する。
睡眠時無呼吸症候群の原因は複数あり、歯科で対応できるのは睡眠時に下顎が後退し、舌根が気道を圧迫する症例である。
従来の患者を就寝させ観察するのではなく、診療室で座位または立位で本装置を用いて下顎の移動で起きる気道狭窄を患者と共有しながら確認でき、CT撮影時も患者自身が容易に顎位の設定ができるのが特徴である。
【0026】
睡眠時無呼吸症候群の原因の一つに就寝時に開口し顎位が後退し、舌根が気道を圧迫し狭窄が起きるものがあるが、その顎位をオーラルアプライアンスで再現しCT撮影やMRI検査で観察する方法。
図19(d)に示すように、舌根が気道狭窄を起こさない顎位(o)と開口し舌根が気道を圧迫し狭窄が起きる顎位(p)で下顎を保持できる滑走面を持つことを特徴とし、滑走面は図19(c)~(e)に示すように図中、Nは開口範囲、Mは下顎後退範囲、Oは舌根が気道圧迫を起こさずに睡眠を妨げない顎位、Pは睡眠時に舌根が沈下し気道を圧迫すると顎位と想定したものである。この特徴を有する滑走面を持つ本装置を患者に装着し顎位oから下顎前歯を滑走面に沿って後退させ気道の狭窄が起きるか観察する。図19に示すように、気道の狭窄が確認できた顎位をpとし、oとpそれぞれに下顎を安定して保持する凹を形成してもよい。
また、顎位OとPとVでCT撮影またはMRI検査をし、歯周組織(顎位による気道狭窄の程度)や顎関節の状態や頸椎の観察をすることも可能である。
さらに、図19(h)(i)に示すように、正中に平行な滑走面rは、下顎の前後運動量より5mm以上長く設定する。そして、rは基本的に咬合平面に平行で、術者が解剖学的湾曲、または任意の角度を設定することで顎位を下顎運動路の上下左右前後のいずれの位置に設定しても術者及び患者が容易にその顎位を再現と保持することができる。
一例として、下顎開口運動路の始点uと終点vを結ぶ斜面を設定し開口状態の顎位を探り易くしたものである。
qは顎位の高径を探るための距離であり、uは開口の時に本装置が、下顎運動を阻害しない角度に設定するものである。また、vは探りたい咬合高径で、下顎が安定するための部位で、下顎前歯が滑走する斜面qの途中に設けて、複数の咬合高径を同時に探ることができるものである。
顎位oとpでCT撮影またはMRI検査をし、顎位による気道狭窄の程度を診断する。
【0027】
従来のオーラルアプライアンス、マウスピースやスプリントは歯科用樹脂で製作する場合、金属線のクラスプを併用しない場合は、歯牙及び歯間のアンダーカットを利用するので、装置の維持力はアンダーカットに如何程入れるかで調整している。この方法では維持力の調整が困難で緩い場合は再製作になったり、きつい場合は装置の着脱時に破損する原因になっている。
本発明の装置が覆う歯頚部のアンダーカットの隙間に歯科用シリコン樹脂を充填、接着することで、クラスプと同等の維持力と着脱の容易さが得られる
【0028】
ここで患者の顎位を探り、採得または撮影を可能にする装置を用い術者が患者の顎位を探り、探り出した顎位を安定させるマウスピース設計方法及び患者の顎位を探り、採得または撮影を可能にする装置のX線写真撮影、X線コンピュータ断層撮影(CT)、核磁気共鳴画像法(MRI検査)での具体的利用方法、撮影データのコンピュータ支援設計(CAD)で活用する方法について説明する。
顎位が影響する咬合や姿勢の診断や治療には、顎関節内で下顎頭が下顎窩内のどこに位置しているかを正しく把握することが重要である。そのために術者は、問診と触診、単純X線撮影、歯科パノラマX線撮影法、セファロ(頭部X線規格写真)、X線コンピュータ断層撮影(以降CT)、磁気共鳴画像診断(以降MRI)等を治療の目的に応じて組み合わせて用いるが、触診とCT及びMRIしか対象部位を立体的に観察することができない。
また現状では触診以外は顎関節の状態と咬合および姿勢の関係を同時に且つ立体的に観察することが困難である。
【0029】
コンピュータ支援設計(以降CAD)とCT及びMRIの撮影データを用いて、顎関節(顎位)と咬合、歯周組織や頸椎などの骨格(姿勢)の関係を同時に且つ立体的に観察でき関係者と共有可能な方法について述べる。
医療機関ではCT及びMRIは立体的に撮影部位を表示し診断するだけでなく、撮影画像を3次元データ化し積層造形装置で実体化し、血管や臓器、骨を複製し観察や術式の模擬を行っているが、歯科に応用するには歯牙の咬合状態や運動時の咬頭干渉を観察できるだけの精度はない。
歯科分野にもCDAが活用され義歯の設計や製作に用いられているが、その設計範囲は歯牙や歯槽部に限られ、顎関節や歯周組織や頸椎などを統括して総合的に観察や設計はできない。近年歯科用CADでCTの画像データを読み込み人工歯根埋入手術の模擬や人工歯根埋入の補助装置の設計製造に用いられているが、咬合と顎関節や歯周組織や姿勢(頸椎などの骨格)との関係性を考慮した義歯やオーラルアプライアンスの設計には至っていない。
CADとCT撮影データを用い咬合と顎関節を同期して観察及び義歯やオーラルアプライアンスの設計を行う方法を述べる。側頭部下顎窩と下顎頭を含む下顎骨のCT撮影データを3次元構築した骨格モデルの歯列部分と患者歯列を精密印象したデジタルデータ(石こう模型をデジタルデータ化したもの若しくは口腔内用3次元測定器で印象したデジタルデータ)と置き換えCADで上下歯牙を伴う顎運動を物理計算することで下顎頭と咬合の連動した運動を観察することができる。またCADで歯周組織や骨格の動きを顎運動と連動して動かすことはできないが、本発明品で下顎を自由に動かしながらCT撮影またはMRI検査をすれば顎位と歯周組織や骨格の状態を立体画像や造形物や動画で確認できる。
【0030】
本装置を用い術者が患者の顎位を探り、探り出した顎位を撮影する方法を述べる。
本品を用い任意の咬合高径、顎位で顎関節や咀嚼筋および口腔組織のX線コンピュータ断層撮影(CT)や核磁気共鳴画像法(MRI検査)を行うことができる。
図19(c)の滑走面に斜面を付与すると顎間距離(開口具合)、前後左右の任意の顎位を術者は探ることができ、正中(矢状面)に平行な滑走面に対する滑走面または対合の切端が嵌合する凹を形成すれば探り出した顎位を患者が容易に再現して、保持できるので、安定してX線コンピュータ断層撮影(CT)や核磁気共鳴画像法(MRI検査)することができる。
【0031】
歯牙の排列は直線や平面的ではなく、スピーの湾曲、ウィルソンの湾曲、モンソンカーブ等で表せる3次元曲面に沿って並んでいる。
前後的咬合湾曲は、歯列を側方から見て、切歯、犬歯尖頭、小臼歯および大臼歯の頬側咬頭頂を連ねた湾曲、スピーの湾曲は、歯列を側方から見て、下顎の犬歯尖頭、小臼歯および大臼歯の頬側の咬頭頂を連ねた湾曲、ウィルソンの湾曲は、歯列を前方から見て、左右側の大臼歯の頬舌側咬頭を連ねた湾曲(前から見ると上顎、下顎のいずれの湾曲も下に凹んだ形に見える。)、モンソンカーブは、篩骨鶏冠付近を中心とした半径4インチ(10cm)の球面でできる湾曲で、前から見るとウィルソンの湾曲、横から見るとスピーの湾曲に見える。つまり、モンソンカーブは、ウィルソンの湾曲とスピーの湾曲の両方の要素を持っていることになる。
術者は患者に合った湾曲を選択して滑走面に与える。
【0032】
本装置で顎位を探り出す目的は様々な原因で顎位がずれてしまった患者に術者が最善であると判断した顎位と咬合を可逆的な手段で提示し、患者の同意を得るため、顎位が原因になる症状例えば睡眠時無呼吸症候群の診断や姿勢の治療の判断基準を得るためである。
【0033】
ずれた顎位の改善、食いしばりや歯ぎしりの抑制だけでなく、いろいろな症状、例えば、いびきや姿勢や不定愁訴の改善に奏し、複数の任意の顎位を患者自身が容易に再現してCT撮影やMRI検査行える本発明は医科歯科連携に資するものである。
【0034】
治療前の患者情報として、本装置の設計や探り出した顎位の正当性の確認、探り出した顎位を安定させるためのアプライアンスの設計および最終補綴物の設計にあたり、上下歯牙の嵌合状態や顎運動時の上下歯牙の接触過程が顎関節にどのように影響するか把握することが大切である。
CADとCT撮影データを用い顎運動と顎関節を同期して観察及び義歯やオーラルアプライアンスの設計を行う方法を述べる。側頭部下顎窩と下顎頭を含む下顎骨のCT撮影データを3次元構築した骨格モデルの歯列部分と患者歯列を精密印象したデジタルデータ(石こう模型をデジタルデータ化したもの若しくは口腔内用3次元測定器で印象したデジタルデータ)と置き換えCADで上下歯牙を伴う顎運動を物理計算することで下顎頭と咬合の連動した運動を観察することができる。またCADで歯周組織や骨格の動きを顎運動と連動して動かすことはできないが、本発明品で下顎を自由に動かしながらCT撮影またはMRI検査をすれば顎位と歯周組織や骨格の状態を立体画像や造形物や動画で確認でき、且つ関係者と容易に情報を共有できる。
【0035】
ここで、さらにスプリントの種類について簡単に説明する。
前歯接触型スプリントは前歯のみが接触するマウスピースで、口を開く時の筋肉を活性化し、口を閉じる時の筋肉の緊張を緩和するために使用する。
全歯列接触型スプリント(スタビリゼイションスプリント)は、上下の全歯列を均等に接触させるためのマウスピースで、咬合接触の異常や咬み合せ異常の問題をマウスピースが吸収することで、一部の歯の過度な接触がなくなり下顎の安定が得られる。神経筋機構が円滑になるため咀嚼筋などの筋肉の緊張が解け、顎関節症の症状を緩和する。
前方整位型スプリントは、上顎または下顎の全歯列に装着するマウスピースで、関節円板が前方に転移し、顎関節に異音がある場合に症状の緩和を目的に装着する。
ピボット型スプリントは、奥歯のみが接触(咬み合う)する上顎また下顎の全歯列に装着するマウスピースで、顎関節の疼痛による開口障害を改善する場合などに装着する。
アライナーは、患者矯正用マウスピース装置で、アライナーを決められた順番通りに装着し、歯を動かしていく矯正治療法のことをいう。
【0036】
次に、歯科で採用されている各種撮影方法を説明する。
X線撮影法
1.単純撮影法
顎関節部の単純撮影法としてよく用いられるのは、正面像を得る眼窩・下顎骨方向撮影法、側面像を得るSchueller氏撮影法およびParma氏撮影法である。
2.歯科パノラマX線撮影法
パノラマX線撮影法は、歯、顎、顔面領域の展開像を得るための撮影法であるが、顎関節部も同時に描出される。さらに、最近のほとんどの装置では顎関節専用の撮影も可能になっている。開口状態と閉口状態とでの2回の撮影を行うことで、1枚の写真上に左右側、開閉口時の顎関節の像を得ることができる。
3.断層撮影法
顎関節を対象とした断層撮影法としては、一般的な広角断層撮影法の他に、断層域が厚い狭角断層撮影法(Zonogram)、一度に異なった断層面の画像が得られる同時多層断層撮影法などが用いられる。
4.関節腔造影撮影法
顎関節の関節腔内に造影剤を注入して撮影を行う手法で、関節円板等の顎関節部軟組織の状態を把握するために用いられる。一般に、断層撮影法と組合せて利用される。
5.X線テレビおよびX線映画法(X線シネ撮影法)
主に、顎関節の動態異常の分析に利用される。関節腔造影撮影法と併用して行われる。
6.その他の撮影法
X線コンピュータ断層撮影(CT)は骨組織の分析に優れ、撮影データの3次元構築などの画像処理も可能である。核磁気共鳴画像診断(MRI)は関節円板等の顎関節部軟組織を直接描出できる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
不可逆的な歯科治療に、効果的なインフォームドコンセント(説明と同意)に利用でき、ずれた顎位や咬合の治療、食いしばりや歯ぎしりの抑制だけでなく、任意の顎位で撮影や検査が可能になり医科歯科連携につながり、いろいろな症状(姿勢)例えば睡眠時無呼吸症候群や不定愁訴の改善に資するものである。
【符号の説明】
【0038】
1・・・・上顎用装置
2・・・・下顎用装置
3・・・・咬合平面
4・・・・滑走面
5・・・・歯列を覆う形状装置
6・・・・舌保護面
7・・・・磁気アタッチメント用磁石
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
【手続補正書】
【提出日】2024-05-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下歯牙列の歯1本以上の歯牙を覆う形状部材からなり、歯に対して着脱自在に設け、前記上下歯牙列を覆う形状部材は、滑走面を有し、この滑走面の形状は、面状、線状、点状の中から選択し、滑走面は、咬合平面に対して平行、または正中に平行にしたことを特徴とする下顎が自由に運動できる装置。
【請求項2】
滑走面は、下顎が咬頭干渉を起こさずに抵抗なく運動できる咬合高径に設定したことを特徴とする請求項1記載の下顎が自由に運動できる装置。
【請求項3】
上下歯牙列を覆う形状部材に設けた滑走面は、取り外しができるもの、または、取り外しができない一体式のもので製作したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の下顎が自由に運動できる装置。
【請求項4】
上下歯牙列を覆う形状部材に、下顎が後退したときに嵌合し、開口を防ぐ嵌合突起部材を上下歯牙列を覆う形状部材に設けるか、または咬合平面に対し、滑走面が奥下がりしている場合、顎を前方に誘導する斜面をつけたことを特徴する請求項1、または請求項2に記載の下顎が自由に運動できる装置
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、術者が患者の顎位と咬合、顎位が姿勢に及ぼす影響(以降姿勢という)の状態を見極めるためのオーラルアプライアンスを提供するもの、すなわち、顎位の治療や、噛み合わせの治療、先天的な理由及び後天的な理由(歯ぎしりや食いしばりによる歯牙の摩耗、頬杖や片噛み等の生活習慣、歯の治療等)が原因で起こる噛み合わせの不良や顎関節の不調を治療するために用いるオーラルアプライアンスを改善、術者が患者の顎関節(下顎窩と下顎頭の位置関係)を含む最善の顎位を探り、採得することを容易にし、術者が探り出した顎位を安定させる装置の製作や顎位が及ぼす口腔の状態、歯周組織、関節の撮影(X線撮影、CT撮影、MRI検査)を可能にした装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
患者が咬合(噛み合わせ)の不良を訴えても直ちに症状改善を目的とした不可逆的な治療(咬合調整や補綴など)を行わないことは推奨されている。また不可逆的な治療(咬合調整や補綴など)が必要となった場合は、その根拠と害を十分に説明し、患者の同意の元に行うべきである。
咬合や姿勢の不調及び不良の治療の場合は治療が広範囲(全顎、全歯)に及ぶ場合が多く、且つ不可逆的な治療であれば患者は説明を受けても益を判断するのは困難である。
咬合や姿勢の正常化の治療には歯並びを整える歯科矯正治療と咬合調整や補綴などで上下歯牙の接触を整える補綴治療がある。どちらも不可逆的治療であり治療目的および目標の提示と患者の同意が必要である。
歯科矯正治療において、最近では患者の顔貌写真にコンピュータグラフィックス技術できれいな歯並びを合成し患者に提示し同意を得ているが、きれいな歯並びが患者にとって最善の噛み合わせとは限らないし、矯正治療後きれいな歯並びなのに噛み合わせの不調を訴える例もある。
補綴治療で咬合の正常化をする場合は、オクルーザルアプライアンス(マウスピースやスプリント)または仮着したレジンシェルの咬合面に、歯科用樹脂の盛り足し調整することで咬合支持を付与し、顎位や咬合の機能的な安定性を術者が構築し、患者も改善した咬合(噛み合わせ)を体感し治療の同意をした後、補綴歯科的介入を行う。この場合治療後の咬合は患者にとって最適解であるが、補綴歯科的介入を行うまでの試行錯誤は高い技術と長い治療期間が必要で、最終補綴の治療期間より時間がかかる。
この問題を解決する手段として、本装置は前歯接触型マウスピースの形態をとるが、上下顎全歯に装着し、基本的に上顎は正中(矢状面)に平行、下顎は咬合平面に平行の滑走面を持ち、滑走面は直線だけではなくモンソンカーブ、ウイルソンカーブ、スピーの湾曲等の解剖学湾曲と同等または類似した3次元湾曲面と平行または類似となるように設定し、上下顎が点や線、または面で接触し、抵抗の少ない滑らかな顎運動ができる構造に設定したものである。
本装置を用い、最善とする顎位を探り、顎位の採得や撮影を可能にし、正常な咬合や姿勢を回復する治療の基準を得ること、患者の最善となる顎位に、最善となる咬合を模した歯冠形態を有し、日常装着でき、食事もすることができるオーラルアプライアンスを提供し、患者が最終補綴物の咬合状態を疑似体験し、治療の同意を得ることを目的とするものである。
つまり、本装置を用いて下顎を滑らかに動かすことができれば、例えば食いしばりや歯ぎしりによる、不快感、歯牙の咬耗や破折を抑制及び防止、かみ合わせや顎位の不正が原因とされる不定愁訴の軽減、睡眠時の開口と顎位の後退によるいびきや睡眠時無呼吸症候群の緩和をすることもできる。
従来から、いびき及び閉塞性睡眠時無呼吸症の緩和をするために、上部気道の閉塞を改善するための方法と装置は、存在している。
例えば、ヒトの気道内の閉塞状態を除去するのに適した装置で、口の中で舌に害を与えずにヒトの口の中に密封されたキャビティを形成するのに適したマウスピース、及び、マウスピースに結合し、密封されたキャビティに通じている第一の端部、及び、遮断状態の気道に応答して口及び(又は)上部気道の中の密封されたキャビティの中に負圧を生じるのに有効な負圧発生器に結合するのに適した第二の端部を有する中空の細長い部材から成る装置や、ヒトの気道内の閉塞状態を除去するための方法で、ヒトの口の中に密封されたキャビティを形成すること、密封されたキャビティを負圧発生器に結合すること、上部気道の軟組織が咽頭の後方壁に落ち込んだときに、上部気道の軟組織を咽頭の後方壁から引き離し、それにより閉塞状態を除去するために、密封されたキャビティ内の負圧を生じるのに有効な割合で密封されたキャビティから空気を除去するために負圧発生器を動作させることから成る方法(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007-520279号公報(特許請求の範囲の欄、発明の詳細な説明の欄、及び図1図5を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、乱れた歯列やずれた顎位の影響により起こる咀嚼不良、不定愁訴や姿勢悪化、歯ぎしり及び食いしばり、いびきの防止や睡眠時無呼吸症候群の検査及び治療をするために、咬頭干渉しない咬合高径で抵抗のない顎運動または顎運動を誘導、抑制し、任意の顎位の採得と撮影を可能にする装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成できる本発明の第1発明は、請求項1に記載された通り咬合を挙上し、抵抗のない顎運動が可能になる患者の下顎が自由に運動できる装置であり、次のようなものである。
上下歯牙列の歯1本以上の歯牙を覆う形状部材からなり、歯に対して着脱自在に設け、前記上下歯牙列を覆う形状部材は、滑走面を有し、この滑走面の形状は、面状、線状、点状の中から選択し、滑走面は、咬合平面に平行、または正中(矢状面)に平行設置する構成である。
【0006】
上記の目的を達成できる本発明の第2発明は、請求項2に記載された通り、下が自由に運動できる装置であり、次のようなものである。
請求項1に記載の発明に加えて、滑走面は、下顎が咬頭干渉を起こさずに抵抗なく運動できる咬合高径に設定するという構成である。
【0007】
上記の目的を達成できる本発明の第3発明は、請求項3に記載された通り、下が自由に運動できる装置であり、次のようなものである。
請求項1、または請求項2に記載の発明に加えて、上下歯牙列を覆う形状部材に設けた滑走面は、取り外しができるもの、または取り外しできない一体式のもので製作する構成である。
【0008】
上記の目的を達成できる本発明の第4発明は、請求項4に記載された通り、下顎を誘導・抑制・制御を行う装置であり、次のようなものである。
請求項1、または請求項2に記載の発明に加えて、上下歯牙列を覆う形状部材に下顎が後退したときに嵌合し、開口を防ぐ嵌合突起部材を、上下歯牙列を覆う形状部材に設けるか、または、咬合平面に対し、滑走面が奥下がりしている場合、顎を前方に誘導する斜面をつけた構成である
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る抵抗のない滑らかな顎運動を実現し、下顎が自由に運動できる装置は、上記説明のような構成を有するので、以下に記載する効果を奏する。
(1)睡眠時の歯ぎしり及び食いしばりを解消するために咬頭干渉せず、下顎が前後左右にスムーズに運動できる。
(2)睡眠時の開口および顎の後退制御で睡眠時無呼吸症候群の予防・解消を促すことができる。
(3)滑走面に任意の角度や高さを設定することで、下顎を誘導し顎位を変化させることができる。
(4)任意の顎位を容易に採得および撮影することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の患者の顎位を探る下顎が自由に運動できる装置を上下顎の歯列の左右中切歯間の概略展開図である。
図2】本発明の正中(矢状面)に平行な滑走面の遠心面が舌に当たり、不快感や損傷を与える場合、遠心面に舌保護面を設けた改良実施例を示す概略展開図である。
図3】本発明の特徴である滑走面の設置個所の一例であり、歯列弓のどこに設置してもよく、左右の下顎頭と滑走面の3点で頭蓋骨に接すれば良いことを示す概略説明図である。
図4】本発明の上下歯の滑走面での基準となる咬合平面を示す概略説明図である。
図5】本発明の任意の顎位と咬合高径で咬合採得する本装置の上下歯牙の咬合の際、下顎の左右側移動量や、患者の顎位や、安静時の顎間距離、咬合状態等から判断して決定する滑走面の形状、下顎の前後方向移動量により決定できる各種滑走面の形状の説明図で、(a)は滑走面が面状の平面の実施例、(b)(c)(d)は線状の実施例、(e)(f)は小円状の実施例、(g)(h)は球状の実施例、(i)(j)は三角柱状の実施例、(k)はアンテリアガイダンスを再現または付与するためのもので、深さh、角度g、移動距離iの凹面を設定することで正常な噛み合わせが持つアンテリアガイダンスを再現できる。深さh、角度g、移動距離iは顎運動の観察から決定するものをそれぞれ示す概略断面図である。
図6】本発明の正中に平行の滑走面に咬合平面に対し角度を与えると前後方向に顎運動を誘導できるもので、咬合平面に平行もしくは解剖学的湾曲と同じか類似した曲面の場合は、下顎は自由に運動できる状態であることを示す概略説明図である。
図7図6と同様に咬合平面に対し、滑走面が奥下がりしている場合、下顎は前方に誘導される状態であることを示す概略拡大側面図である。
図8】本発明の咬合平面に対し、平行の滑走面に角度を与えると左右方向の下顎運動を抑制または、誘導でき、上下歯の滑走面が咬合平面に対し平行な場合、顎は左右自由に運動できる状態であることを示す概略拡大正面図である。
図9】本発明の咬合平面に対し、平行の滑走面に角度を持たした実施例を示し、下顎は右側へ運動を抑制され、右にずれている顎位を矯正できる状態であることを示す概略拡大正面図である。
図10】本発明の睡眠時の開口制御と食いしばりのない顎運動の誘導・抑制の実現のために磁石を滑走面に対し、水平に設置した実施例を示す概略拡大斜視図である。
図11】本発明の顎運動により滑走面と平行性のずれが生じ、吸着力が一定に保たれない場合は、ボールエンド形状の支柱にすることで360度方向にわずかに傾くことで、滑走面と平行性が保たれた吸着力を持たせることができる実施例を示す概略拡大斜視図である。
図12】本発明の睡眠時の開口制御で、下顎が後退した時に嵌合し、開口を防ぐ突起等の係止部材を設けた実施例を示す概略拡大側面図である。
図13】本発明の装置は、術者が任意の顎位を探ることができることを説明する概略立体図である。
図14】上下顎の上下歯に本装置を装着した際、下顎が自由に運動できる状態を示す説明図で、(a)は本装置の装着状態、(b)はその要部の拡大説明図、(c)は歯牙を覆う形状を有する本装置で、歯牙の最大豊隆部以下のアンダーカット部の隙間に本体形状または歯科用義歯用裏装剤が入り込み維持力を得る構造についての説明図である。
図15】上下顎の上下歯に本装置を装着し、術者が最善とする顎位で、上下滑走面が交差する点のどちらかに凹面を形成し、対合する滑走面が嵌合した状態を示す説明図で、(a)は本装置の装着状態、(b)はその要部拡大説明図、(c)は上下歯に本装置を装着した状態を正面から見た概略拡大正面図である。尚、この程度の嵌合で下顎の動きを抑制でき、確実に顎位を採得することができる。また、咬合高径が低く嵌合が得られない等の場合は、歯科用接着剤や歯科用即時重合樹脂で固定後、歯科用シリコン樹脂で固定しても良い。探り出した顎位を患者、若しくは術者が容易に再現や保持できる場合は、嵌合、接着しなくても良い。
図16】説明用としての顎位に対する下顎頭の標準的な位置を示すもので、(a)は下顎安静位を示す概略側面図、(b)は開口位を示す概略側面図である。
図17図16の示す下顎頭の要部を示すもので、(a)は開口位を示す概略側面図、(b)は下顎安静位を示す概略側面図、(c)は中心咬合位を示す概略側面図、(d)は低位咬合位を示す概略側面図、(e)は(c)の拡大概略側面図である。
図18】睡眠時無呼吸症候群の状態を示し、(a)は覚醒、立位、(b)は覚醒、仰臥位、(c)は睡眠、仰臥位状態を示す概略説明図である。
図19】顎位で睡眠時無呼吸症候群の原因の一つである舌根の沈下と気道狭窄が起きるか術者に判断する場を提供する概略説明図である。
図20】本発明の装置に、正中(矢状面)に平行な線状滑走面に凹部、及び咬合平面に平行な面に凹部を付与し、咬合平面に平行な線状滑走面の前後左右の動きを抑制することができる工夫をした一実施例を示す概略説明図である。
図21】歯牙を覆う形状部材を金属で製作した場合の滑走面の埋め込み方法を示す概略説明図である。
図22】樹脂滑走面を覆う金属製の形状部材を歯科用接着剤で接着する方法を示す概略説明図である。
図23】樹脂製の歯牙を覆う形状部材に金属製滑走面が嵌合する溝を付与して、歯科用接着剤で接着する方法を説明する概略説明図である。
図24】樹脂製の歯牙を覆う形状部材に円形、もしくは多角形の金属製滑走面が嵌合する溝を付与して、歯科用接着剤で接着する方法を説明する概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上下歯牙列の歯1本以上の歯牙を覆う形状部材からなり、該形状部材は、上・下歯牙列のどちらか一方、または上下歯牙列の両方一対部材を選択し、歯に対して着脱自在に設け、前記上下歯牙列を覆う形状部材は、それぞれ滑走面を有し、この滑走面の形状は、面状、線状、点状、3角形状の中から選択し、滑走面は、咬合平面に対して平行、または正中(矢状面)に平行、及び咬合平面に対して角度をつけるようにして患者の顎位を探り、採得または撮影を可能にする装置である。
【実施例0012】
先ず、本発明に関する前提について説明する。
前提1:オーラルアプライアンスとは口腔機能を補助する目的や、顎関節や歯や歯周組織への治療・処置を行う目的で、口中に入れる器具や装置の総称であり、ナイトガード、睡眠時無呼吸症候群用装置、いびき防止装置、オクルーザルアプライアンス、スタビリティアプライアンス、外傷予防用マウスガード、アライナー型矯正装置、舌接触補助床、ブリーチング用トレー、3DSトレー、モイスチャートレー、栓塞子、止血シーネ、インプラント治療用テンプレートなどがあげられる。近年サーモフォーミングの器具や技術が進化し、歯科医院で比較的簡便に製作することが可能になった。今後も患者のニーズの多様化、歯科医療の技術の発展とともに、さらに多くの分野や用途において用いられることが見込まれる。
顎位と咬合(噛み合わせ)について述べる。
前提2:顎位とは下顎骨の3次元的な位置であり、図3(b)に示すように下顎頭が頭蓋骨の側頭部にある下顎窩に均等に収まる位置が安定した顎位である(図17(e)参照)。下顎骨は成人では約1kg程の質量があり安静位の顎位や咀嚼時の運動が起こす慣性は頸椎にも作用し骨格を含む身体のバランスにまで影響を及ぼす。さらに顎関節は下顎頭が下顎窩に緩やかに収まる構造で、且つ咀嚼筋で吊られた状態であり、様々な力的な要因や噛み合わせの不良が起こす僅かなずれを許容してしまう。この僅かなずれで、健常者では安静位から左右にほとんどずれることなくスムーズに咬頭嵌合位に入る顎運動が、前後左右にずれた運動路つまり習慣性開閉運動となり、中心咬合位(咬合学的に正しい顎位)ではなく習慣性閉口終末位(ずれた顎位)になってしまうことがある。
咬合とは、上下顎の歯牙が噛み合う状態のことで先天的な遺伝や、骨格的な要因のほかに、就寝時の姿勢習慣、頬杖、口唇の緊張や弛緩、口の周囲筋の緊張、舌の緊張、口呼吸、加齢変化、職業等での一定姿勢の継続、または歯科治療受診による歯列の形態変化、無意識の歯ぎしり、くいしばり、かみしめ習慣などが原因で、咬合学的に正しくない状態になることがある。
このように緩やかな構造の顎関節の基で自由に運動できる下顎(顎位)と咬合は密接な関係にあるために、徐々にずれてしまった顎位は歯牙の噛み合わせがあるために本来の位置を探ることや戻すことは非常に困難である。
前提3:噛み合わせの正常化の治療には歯並びを整える歯科矯正治療と咬合調整や補綴物などで咬合の回復を図る補綴治療がある。どちらも不可逆的治療であり治療目的および目標の提示と患者の同意が必要である。
歯科矯正治療において、最近では患者の顔貌写真にコンピュータグラフィックス技術できれいな歯並びを合成したものを患者に提示し同意を得ているが、きれいな歯並びが患者にとって最善の噛み合わせとは限らないし、矯正治療後きれいな歯並びなのに噛み合わせの不調を訴える例もある。
補綴治療において、オクルーザルアプライアンス療法のマウスピースやスプリントまたは仮着したレジンシェルの咬合面に、歯科用樹脂の盛り足しや削合で咬合支持を付与し、顎位や咬合(噛み合わせ)の機能的な安定性を術者が確認し、患者も改善した咬合(噛み合わせ)を体感し、治療の同意をした後、補綴歯科的介入を行う。この場合治療後の咬合は患者にとって最適解であるが、補綴歯科的介入を行うまでの試行錯誤は、最終補綴の治療期間より時間がかかる。
前提4:医科の放射線科では、X線写真撮影、CT、MRIの操作は医師の指示により放射線技師が行っていて、放射線科医師はX線写真、CT、MRI、超音波検査(エコー)、核医学検査(PETを含む)の画像診断やIVRを行っている。顎位が及ぼす歯周組織の状態(睡眠時無呼吸症候群の気道狭窄など)を撮影したくても、放射線技師及び医師は顎位の検索は専門外であり、患者も撮影中対象となる複数の顎位を再現および維持し続けることは不可能である。
【0013】
以下、本発明の一実施例の患者の顎位を採得または撮影を可能にする装置、及び本装置を用いた顎位の採得または撮影をする方法について説明する。
図13に基づいて説明すると、オーラルアプライアンスに滑走面を与え、下顎が上下歯牙に干渉されずに自由に運動できるようにする。これにより、患者の顎位を探ることができる
【0014】
以上の本発明装置を活用して、患者の歯列、顎位の状況を判断し、適切な処置を行うものであり、各患者の状況に合わせて行う処置の具体的な説明を以下に説明する。
【0015】
以下、図1図5に基づいて説明をする。
上下歯牙列を覆う形状部材(例えば、サーモフォーミング器具を使用し製作したもの、歯科用樹脂を圧接または充填して形成したもの、3Dプリンターで印刷したもの等が考えられる)を有する本装置5は、上顎用装置1と下顎用装置2とから成り、それぞれ滑走面4を有し、滑走面4の形状は面状、線状、点状、3角形状の中から使用目的や効果から決定することができる。
滑走面4は上下顎歯牙列に対合するように設置し下顎を滑らかに動かすことと、滑走面4の接触点と左右下顎頭が支点となり頭蓋骨下顎窩内に収まることで咀嚼筋と顎関節の緊張を緩和することを目的とする。
さらに、点以外の滑走面4は、咬合平面3に平行、対するもう一方は正中に平行に設定するが、治療内容により術者が角度を変更できるものである。
この角度の変更とは、具体的に顎が滑走し易い、又は滑走し難くする角度を与えることである。
加えて、図2に示すように正中に平行な滑走面が舌に干渉し、不快感や損傷を与えないように、滑走面遠心部に舌保護面6を付与することで解決することも考えられる。
また、本装置の上下滑走面に線状を選択する場合、咬合平面に平行な滑走面(下の歯側)を付与する歯列の切端が、正中に平行な滑走面(上の歯側)を抵抗なく移動できると術者が判断した場合は、下側歯に取り付ける咬合平面に平行な滑走面4を持つ本装置を用いず、正中に平行な滑走面を持つ本装置のみで顎位の採得を行っても良いものである。
また、滑走面4の垂直的位置関係は、顎運動時に咬頭干渉を起こさない高さに設定するものである。
さらに、滑走面4は着脱自在にすることで、術者が治療効果にあわせ調整することができるようにする。
歯牙の挺出を防ぐために全歯牙を覆う形状が望ましいが、装着感を良くするために咬合圧に耐えきれる最小限の大きさでも良いことはいうまでもない。
着脱自在な滑走面4は、歯冠製作用金属、またはセラミック、歯科用樹脂、医療及び歯科用造影物質、X線不透過素材(これは、X線撮影を行った際に撮影データと歯列データの同期の基準にするためである)、歯科用3Dプリンター樹脂等で製作する。各々の滑走面4を義歯吸着磁性アタッチメントと磁石吸着金属で製造すると、開口抑制ができ、食いしばりのない患者でも、滑走面4上で顎運動を行うことを誘導することができる。
本装置は、滑走面を着脱自在にする理由として、咬合圧が強く滑走面が摩耗する場合、咬合口径の調整が必要になると思われる場合に有効である。
いびきが特にひどい、又は睡眠時無呼吸症候群等、顎位の後退を制御したい場合は、嵌合突起を設け、顎の後退と、その位置での開口を制御することができる。この嵌合突起は、大きさ及び形状で開口の制御力が調整できる。
【0016】
ここで、本装置の滑走面4について図5図7に基づいて詳細に説明する。
滑走面4は、図5(a)に示すように平面状、図5(b)~(d)に示すように線状、図5(e)(f)に示すように小円状、図5(g)(h)に示すように球状、図5(i)(j)に示すような三角柱状等を採用することができるが、相対する滑走面4は咬合平面と平行、あるいは術者が顎運動を誘導するために指定する角度を有するものである。また、図5(k)に示すように、角度g、ガイド幅iはアンテリアガイダンスを付与するもので、患者の顎運動を観察決定し、ガイドの深さhは、対する滑走面4の高さjより浅くしたものである。
これを利用して、上下犬歯や小臼歯が正常な位置になくても図5(k)疑似的にアンテリアガイダンスを与えることができる。また、アンテリアガイダンスを再現した本品を装着した義歯製作模型を咬合器に装着し、下顎運動路を咬合器の切歯誘導板に歯科用樹脂を用い記録することでアンテリアガイダンスを義歯に再現することができる。
図示の滑走面4は下顎左右側移動量により決定する。
【0017】
次に、基本的形状について説明する。
上下歯牙列の歯1本以上全歯牙を覆う形状の上・下歯牙列のどちらか一方、または上下歯牙列の一対の部材からなるもので、装着する歯に対応して、図1に示す通り、この一例である装置の寸法aは左右中切歯1の幅で、滑走面4は前後左右の顎運動距離より5mm以上大きく設定するのが望ましい。滑走面4の位置は基本的には正中(矢状面)と図4に示す咬合平面3に平行となるように設定する。
【0018】
次に、図7に基づいて説明すると、咬合平面3に対し、滑走面4が奥下がりしている場合、顎は前方に誘導される。滑走面4に角度をつけることで顎運動を抑制、誘導することができる。
図5(c)に示すように、線状、小円状、球状の側面の高さeは、術者が患者の顎位や安静時の顎間距離、咬合状態等から判断して決定する。
図5(d)に示すように、平面上の滑走面4のfは下顎の前後方向移動量により決定する。さらに、滑走面4は直線でも良いし、歯列に合わせて湾曲させても良い。
図8図9に基づいて説明すると、図8の滑走面4が咬合平面3に対し平行な場合、顎は左右自由に運動できる。
図9の滑走面4が咬合平面3に対し角度を持たすと、顎の左右どちらかの側方運動を抑制できる。
【0019】
ここで、歯牙を覆う形状部材の例えば、金属フレームに滑走面4を付与する手段として、図21(a)~(c)に示すように樹脂に埋め込む方法、さらに図22(a)(b)に示すように、取り外しができない一体式のものとして、樹脂滑走面4を覆う形状部材の例えば、金属フレームを歯科用接着剤で接着する方法、図23(a)~(c)に示すように、取り外しできるものとして、歯牙を覆う形状部材に金属製滑走面4が嵌合する溝を付与し、歯科用接着剤で接着する方法、図24(a)~(h)に示すように、樹脂製の歯牙を覆う形状部材に円形もしくは多角形の金属製滑走面4が嵌合する溝を付与し、歯科用接着剤で接着する方法等が有効に行えるものである。この他、歯牙を覆う形状部材に滑走面4を設ける方法は種々設計できることは言うまでもない。
また、CT撮影時に金属製滑走面が嵌合する溝に造影性のある素材を入れ、CT撮影データと歯列データを同期する基準にしてもよい。
その理由は、理由はCT撮影データの歯の形状が非常に粗いため、歯列データの歯牙形状と同期させるのが困難な場合が多く、CT撮影データに本発明品の滑走面が造影されていると本装置の滑走面を基準に正確に歯牙の位置と形状を同期できるためである。
【0020】
次に、図10図11に基づいて睡眠時の開口制御と食いしばりのない患者の顎運動誘導、抑制についての一例を説明する。
顎の開口運動は咬筋の仕組みにより閉口及び噛む力に比べ著しく弱く、磁石の吸着力程度で抑制できる。
口腔内で使用できる義歯安定用の磁気アタッチメント用磁石7を滑走面4に用い、対する滑走面4に磁性体金属のプレートを配することで自由な顎運動と開口抑制が実現できる。
磁気アタッチメント用磁石7は、対向する滑走面4に対し水平に位置することで、吸着力が最大になることから、ボールエンド形状の支柱に配置するのが望ましいが、本装置5に直に設置しても良い。
固定式の場合、下顎の運動経路が描く解剖学的湾曲で滑走面4と平行性のズレが生じ、吸着力が一定に保たれない場合があるが、ボールエンド形状の支柱であれば、360度方向にわずかに傾くことで対向する滑走面4と平行性が保たれて吸着力が常に最大になる。
さらに、下顎が後退した時に嵌合し、開口を防ぐために図12に示すような嵌合突起部を付与することで、極めて良好に開口と顎の後退を防ぐことができる。
また、図13に示すように、本装置は、各咬合平面3を基準にし、術者が任意の角度を設定することで、下顎を誘導することができる。
【0021】
次に、図14に基づいて任意の顎位を採得することについて説明する。
顎関節は他の関節とは異なり下顎頭が下顎窩に緩やかに収まる構造で、且つ咀嚼筋で吊られた状態であり、様々な力的な要因や噛み合わせの不良が起こす僅かなずれを許容してしまう。この僅かなずれで、健常者では安静位から左右にほとんどずれることなくスムーズに咬頭嵌合位に入る顎運動が、前後左右にずれた運動路つまり習慣性開閉運動となり、中心咬合位(咬合学的に正しい顎位)ではなく習慣性閉口終末位(ずれた顎位)になってしまうことがある。現状ではこのずれた顎位の治療及び技工は非常に困難であり、顎位を想定し、製作した咬合状態も患者が受け入れられなくては成立せず、少しずつ様子を見ながら調整するので時間もかかる。
本装置を用いて顎位を採得すれば、干渉する咬合関係が明確になり、補綴物の設計や製造が容易になり、診療時間の短縮や患者の負担軽減につながるものである。
【0022】
ここで、本装置を用いた顎位の採得や撮影方法について説明する。
本装置を顎位採得に用いる場合、滑走面4は上下顎共に線状滑走面で製作した実施例で説明する。
本装置を用い自由な顎運動をしながら患者の顎位を探りだし、採得や撮影を行う。上下滑走面が交差する点(探り出した顎位)を術者が再現するのが困難である、患者が保持することが困難な場合は、滑走面の交差点に凹面を形成し対する滑走面が嵌合するようにすると探り出した顎位を容易に再現することができ下顎の動きを抑制できる。滑走面に嵌合凹面を形成できない場合は歯科用接着剤や歯科用即時重合樹脂で上下装置を固定してもよい。
顎位の採得は、WAXや咬合印象用シリコンなど物理的手段でも歯科用3次元測定器でも良い。
尚、図14に示すものは、下顎が自由に運動できる状態で、図15図20に示すものは、下顎滑走面が上顎滑走面に嵌合した状態を示すものである。この程度の嵌合で下顎の動きを抑制でき、確実な咬合採得を採ることができる。図20に示す前後左右の動きを抑制するものが基本で、図15に示す前後に動かせる嵌合が工夫された他の実施例である。
また、図14(c)に示す例のように、本品は歯牙を覆う形状を有する装置で、アンダーカットに入れずに歯牙を覆い歯牙の最大豊隆部以下のアンダーカット部の隙間に歯科用義歯裏装剤を注入し本装置と一体にすることで維持力を得る構造である。また適切にアンダーカットを利用できるのであれば歯科用義歯裏装剤を使わずに、本装置をアンダーカットに入れ維持力を得てもよい。
さらに、図20(a)、(b)に示す実施例のように対する滑走面が嵌合する溝について説明する。上顎に装着した装置の正中に平行な滑走面に溝を形成した場合、嵌合した下顎滑走面の前後左右の動きを抑制できる。下顎に装着した咬合平面に平行の滑走面に溝を形成した場合、下顎滑走面の左右方向の動きは抑制できるが前後の運動は自由にできる。図20に示すように、正中(矢状面)に平行な線状滑走面に凹部を付与した場合、咬合平面に平行な線状滑走面の前後左右の動きを抑制することができるものである。
【0023】
本発明の簡易型として例えば印象採得に用いるトレーのように歯牙の大きさ、歯列弓、口蓋の深さ等の平均値から導き出した歯牙を覆う形状部材に本発明の特徴である滑走面を与えてもよい。顎位採得や撮影の補助や歯ぎしりや食いしばり防止に用いる本発明は、正確な顎位採得のために、撮影時に顎位を正確に安定して保持できるように、睡眠時に脱離しないように、歯列に精密に適合するように製造されなくてはいけないが、簡易型であっても歯科用樹脂や義歯裏層用樹脂で歯列に精密に密着されば効果に遜色はない。
【0024】
また、図16図17は、上下顎の下顎安静位と開口位の状態時における下顎頭の標準的な位置関係を示す説明図である。
図18(a)~(c)に基づいてオーラルアプライアンスを用いた睡眠時無呼吸症候群の診断について説明する。
睡眠時無呼吸症候群の原因は複数あり、歯科で対応できるのは睡眠時に下顎が後退し、舌根が気道を圧迫する症例である。
従来の患者を就寝させ観察するのではなく、診療室で座位または立位で本装置を用いて下顎の移動で起きる気道狭窄を患者と共有しながら確認でき、CT撮影時も患者自身が容易に顎位の設定ができるのが特徴である。
【0025】
睡眠時無呼吸症候群の原因の一つに就寝時に開口し顎位が後退し、舌根が気道を圧迫し狭窄が起きるものがあるが、その顎位をオーラルアプライアンスで再現しCT撮影やMRI検査で観察する方法。
図19(d)に示すように、舌根が気道狭窄を起こさない顎位(o)と開口し舌根が気道を圧迫し狭窄が起きる顎位(p)で下顎を保持できる滑走面を持つことを特徴とし、滑走面は図19(c)~(e)に示すように図中、Nは開口範囲、Mは下顎後退範囲、Oは舌根が気道圧迫を起こさずに睡眠を妨げない顎位、Pは睡眠時に舌根が沈下し気道を圧迫すると顎位と想定したものである。この特徴を有する滑走面を持つ本装置を患者に装着し顎位oから下顎前歯を滑走面に沿って後退させ気道の狭窄が起きるか観察する。図19に示すように、気道の狭窄が確認できた顎位をpとし、oとpそれぞれに下顎を安定して保持する凹を形成してもよい。
また、顎位OとPとVでCT撮影またはMRI検査をし、歯周組織(顎位による気道狭窄の程度)や顎関節の状態や頸椎の観察をすることも可能である。
さらに、図19(h)(i)に示すように、正中に平行な滑走面rは、下顎の前後運動量より5mm以上長く設定する。そして、rは基本的に咬合平面に平行で、術者が解剖学的湾曲、または任意の角度を設定することで顎位を下顎運動路の上下左右前後のいずれの位置に設定しても術者が容易にその顎位を再現と保持することができる。
一例として、下顎開口運動路の始点uと終点vを結ぶ斜面を設定し開口状態の顎位を探り易くしたものである。
qは顎位の高径を探るための距離であり、uは開口の時に本装置が、下顎運動を阻害しない角度に設定するものである。また、vは探りたい咬合高径で、下顎が安定するための部位で、下顎前歯が滑走する斜面qの途中に設けて、複数の咬合高径を同時に探ることができるものである。
顎位oとpでCT撮影またはMRI検査をし、顎位による気道狭窄の程度を診断する。
【0026】
従来のオーラルアプライアンス、マウスピースやスプリントは歯科用樹脂で製作する場合、金属線のクラスプを併用しない場合は、歯牙及び歯間のアンダーカットを利用するので、装置の維持力はアンダーカットに如何程入れるかで調整している。この方法では維持力の調整が困難で緩い場合は再製作になったり、きつい場合は装置の着脱時に破損する原因になっている。
本発明の装置が覆う歯頚部のアンダーカットの隙間に歯科用シリコン樹脂を充填、接着することで、クラスプと同等の維持力と着脱の容易さが得られる
【0027】
ここで患者の顎位を探り、採得または撮影を可能にする装置を用い術者が患者の顎位を探り、探り出した顎位を安定させるマウスピース設計方法及び患者の顎位を探り、採得または撮影を可能にする装置のX線写真撮影、X線コンピュータ断層撮影(CT)、核磁気共鳴画像法(MRI検査)での具体的利用方法、撮影データのコンピュータ支援設計(CAD)で活用する方法について説明する。
顎位が影響する咬合や姿勢の診断や治療には、顎関節内で下顎頭が下顎窩内のどこに位置しているかを正しく把握することが重要である。そのために術者は、問診と触診、単純X線撮影、歯科パノラマX線撮影法、セファロ(頭部X線規格写真)、X線コンピュータ断層撮影(以降CT)、磁気共鳴画像診断(以降MRI)等を治療の目的に応じて組み合わせて用いるが、触診とCT及びMRIしか対象部位を立体的に観察することができない。
また現状では触診以外は顎関節の状態と咬合および姿勢の関係を同時に且つ立体的に観察することが困難である。
【0028】
コンピュータ支援設計(以降CAD)とCT及びMRIの撮影データを用いて、顎関節(顎位)と咬合、歯周組織や頸椎などの骨格(姿勢)の関係を同時に且つ立体的に観察でき関係者と共有可能な方法について述べる。
医療機関ではCT及びMRIは立体的に撮影部位を表示し診断するだけでなく、撮影画像を3次元データ化し積層造形装置で実体化し、血管や臓器、骨を複製し観察や術式の模擬を行っているが、歯科に応用するには歯牙の咬合状態や運動時の咬頭干渉を観察できるだけの精度はない。
歯科分野にもCDAが活用され義歯の設計や製作に用いられているが、その設計範囲は歯牙や歯槽部に限られ、顎関節や歯周組織や頸椎などを統括して総合的に観察や設計はできない。近年歯科用CADでCTの画像データを読み込み人工歯根埋入手術の模擬や人工歯根埋入の補助装置の設計製造に用いられているが、咬合と顎関節や歯周組織や姿勢(頸椎などの骨格)との関係性を考慮した義歯やオーラルアプライアンスの設計には至っていない。
CADとCT撮影データを用い咬合と顎関節を同期して観察及び義歯やオーラルアプライアンスの設計を行う方法を述べる。側頭部下顎窩と下顎頭を含む下顎骨のCT撮影データを3次元構築した骨格モデルの歯列部分と患者歯列を精密印象したデジタルデータ(石こう模型をデジタルデータ化したもの若しくは口腔内用3次元測定器で印象したデジタルデータ)と置き換えCADで上下歯牙を伴う顎運動を物理計算することで下顎頭と咬合の連動した運動を観察することができる。またCADで歯周組織や骨格の動きを顎運動と連動して動かすことはできないが、本発明品で下顎を自由に動かしながらCT撮影またはMRI検査をすれば顎位と歯周組織や骨格の状態を立体画像や造形物や動画で確認できる。
【0029】
本装置を用い術者が患者の顎位を探り、探り出した顎位を撮影する方法を述べる。
本品を用い任意の咬合高径、顎位で顎関節や咀嚼筋および口腔組織のX線コンピュータ断層撮影(CT)や核磁気共鳴画像法(MRI検査)を行うことができる。
図19(c)の滑走面に斜面を付与すると顎間距離(開口具合)、前後左右の任意の顎位を術者は探ることができ、正中(矢状面)に平行な滑走面に対する滑走面または対合の切端が嵌合する凹を形成すれば探り出した顎位を患者が容易に再現して、保持できるので、安定してX線コンピュータ断層撮影(CT)や核磁気共鳴画像法(MRI検査)することができる。
【0030】
歯牙の排列は直線や平面的ではなく、スピーの湾曲、ウィルソンの湾曲、モンソンカーブ等で表せる3次元曲面に沿って並んでいる。
前後的咬合湾曲は、歯列を側方から見て、切歯、犬歯尖頭、小臼歯および大臼歯の頬側咬頭頂を連ねた湾曲、スピーの湾曲は、歯列を側方から見て、下顎の犬歯尖頭、小臼歯および大臼歯の頬側の咬頭頂を連ねた湾曲、ウィルソンの湾曲は、歯列を前方から見て、左右側の大臼歯の頬舌側咬頭を連ねた湾曲(前から見ると上顎、下顎のいずれの湾曲も下に凹んだ形に見える。)、モンソンカーブは、篩骨鶏冠付近を中心とした半径4インチ(10cm)の球面でできる湾曲で、前から見るとウィルソンの湾曲、横から見るとスピーの湾曲に見える。つまり、モンソンカーブは、ウィルソンの湾曲とスピーの湾曲の両方の要素を持っていることになる。
術者は患者に合った湾曲を選択して滑走面に与える。
【0031】
本装置で顎位を探り出す目的は様々な原因で顎位がずれてしまった患者に術者が最善であると判断した顎位と咬合を可逆的な手段で提示し、患者の同意を得るため、顎位が原因になる症状例えば睡眠時無呼吸症候群の診断や姿勢の治療の判断基準を得るためである。
【0032】
ずれた顎位の改善、食いしばりや歯ぎしりの抑制だけでなく、いろいろな症状、例えば、いびきや姿勢や不定愁訴の改善に奏し、複数の任意の顎位を患者自身が容易に再現してCT撮影やMRI検査行える本発明は医科歯科連携に資するものである。
【0033】
治療前の患者情報として、本装置の設計や探り出した顎位の正当性の確認、探り出した顎位を安定させるためのアプライアンスの設計および最終補綴物の設計にあたり、上下歯牙の嵌合状態や顎運動時の上下歯牙の接触過程が顎関節にどのように影響するか把握することが大切である。
CADとCT撮影データを用い顎運動と顎関節を同期して観察及び義歯やオーラルアプライアンスの設計を行う方法を述べる。側頭部下顎窩と下顎頭を含む下顎骨のCT撮影データを3次元構築した骨格モデルの歯列部分と患者歯列を精密印象したデジタルデータ(石こう模型をデジタルデータ化したもの若しくは口腔内用3次元測定器で印象したデジタルデータ)と置き換えCADで上下歯牙を伴う顎運動を物理計算することで下顎頭と咬合の連動した運動を観察することができる。またCADで歯周組織や骨格の動きを顎運動と連動して動かすことはできないが、本発明品で下顎を自由に動かしながらCT撮影またはMRI検査をすれば顎位と歯周組織や骨格の状態を立体画像や造形物や動画で確認でき、且つ関係者と容易に情報を共有できる。
【0034】
ここで、さらにスプリントの種類について簡単に説明する。
前歯接触型スプリントは前歯のみが接触するマウスピースで、口を開く時の筋肉を活性化し、口を閉じる時の筋肉の緊張を緩和するために使用する。
全歯列接触型スプリント(スタビリゼイションスプリント)は、上下の全歯列を均等に接触させるためのマウスピースで、咬合接触の異常や咬み合せ異常の問題をマウスピースが吸収することで、一部の歯の過度な接触がなくなり下顎の安定が得られる。神経筋機構が円滑になるため咀嚼筋などの筋肉の緊張が解け、顎関節症の症状を緩和する。
前方整位型スプリントは、上顎または下顎の全歯列に装着するマウスピースで、関節円板が前方に転移し、顎関節に異音がある場合に症状の緩和を目的に装着する。
ピボット型スプリントは、奥歯のみが接触(咬み合う)する上顎また下顎の全歯列に装着するマウスピースで、顎関節の疼痛による開口障害を改善する場合などに装着する。
アライナーは、患者矯正用マウスピース装置で、アライナーを決められた順番通りに装着し、歯を動かしていく矯正治療法のことをいう。
【0035】
次に、歯科で採用されている各種撮影方法を説明する。
X線撮影法
1.単純撮影法
顎関節部の単純撮影法としてよく用いられるのは、正面像を得る眼窩・下顎骨方向撮影法、側面像を得るSchueller氏撮影法およびParma氏撮影法である。
2.歯科パノラマX線撮影法
パノラマX線撮影法は、歯、顎、顔面領域の展開像を得るための撮影法であるが、顎関節部も同時に描出される。さらに、最近のほとんどの装置では顎関節専用の撮影も可能になっている。開口状態と閉口状態とでの2回の撮影を行うことで、1枚の写真上に左右側、開閉口時の顎関節の像を得ることができる。
3.断層撮影法
顎関節を対象とした断層撮影法としては、一般的な広角断層撮影法の他に、断層域が厚い狭角断層撮影法(Zonogram)、一度に異なった断層面の画像が得られる同時多層断層撮影法などが用いられる。
4.関節腔造影撮影法
顎関節の関節腔内に造影剤を注入して撮影を行う手法で、関節円板等の顎関節部軟組織の状態を把握するために用いられる。一般に、断層撮影法と組合せて利用される。
5.X線テレビおよびX線映画法(X線シネ撮影法)
主に、顎関節の動態異常の分析に利用される。関節腔造影撮影法と併用して行われる。
6.その他の撮影法
X線コンピュータ断層撮影(CT)は骨組織の分析に優れ、撮影データの3次元構築などの画像処理も可能である。核磁気共鳴画像診断(MRI)は関節円板等の顎関節部軟組織を直接描出できる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
不可逆的な歯科治療に、効果的なインフォームドコンセント(説明と同意)に利用でき、ずれた顎位や咬合の治療、食いしばりや歯ぎしりの抑制だけでなく、任意の顎位で撮影や検査が可能になり医科歯科連携につながり、いろいろな症状(姿勢)例えば睡眠時無呼吸症候群や不定愁訴の改善に資するものである。
【符号の説明】
【0037】
1・・・・上顎用装置
2・・・・下顎用装置
3・・・・咬合平面
4・・・・滑走面
5・・・・歯列を覆う形状装置
6・・・・舌保護面
7・・・・磁気アタッチメント用磁石