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特開2024-82633焼成用治具、及び金属含浸セラミックス焼成体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082633
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】焼成用治具、及び金属含浸セラミックス焼成体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/84 20060101AFI20240613BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20240613BHJP
   C04B 41/87 20060101ALI20240613BHJP
   C04B 35/64 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
C04B35/84
C04B38/00 303Z
C04B41/87 P
C04B35/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196609
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000237868
【氏名又は名称】エヌジーケイ・アドレック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】後藤 空
(72)【発明者】
【氏名】久野 修平
(72)【発明者】
【氏名】松葉 浩臣
【テーマコード(参考)】
4G019
【Fターム(参考)】
4G019FA12
(57)【要約】
【課題】製造コストの削減に寄与することができ、しかも、製品の品質の安定と歩留まりの向上にも寄与することのできるセラミックス成形体内に金属を含浸させるための焼成用治具を提供する。
【解決手段】セラミックス成形体内に金属を含浸させるための焼成用治具であって、前記焼成用治具は、前記セラミックス成形体を直接、又は、粉粒体状の前記金属を介して、又は、多孔質支持具を介して載せるための第一載置面と、第一載置面に隣接する第二載置面であって、粉粒体状の前記金属を載せるための第二載置面とを備えており、第二載置面は、第一載置面に向かって下方に傾斜するスロープを有する、焼成用治具。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス成形体内に金属を含浸させるための焼成用治具であって、
前記焼成用治具は、前記セラミックス成形体を直接、又は、粉粒体状の前記金属を介して、又は、多孔質支持具を介して載せるための第一載置面と、第一載置面に隣接する第二載置面であって、粉粒体状の前記金属を載せるための第二載置面とを備えており、
第二載置面は、第一載置面に向かって下方に傾斜するスロープを有する、焼成用治具。
【請求項2】
第二載置面は、平均勾配が5°~85°の前記スロープを有する請求項1に記載の焼成用治具。
【請求項3】
第二載置面が、前記粉粒体状の金属が溶融して第二載置面を流れる際の流れ方向を制御するための仕切り板を有する請求項1に記載の焼成用治具。
【請求項4】
前記セラミックス成形体が一方の端面から他方の端面まで延びる中空部を有しており、
前記焼成用治具は、前記一方の端面又は前記他方の端面の側から前記中空部に差し込むための突起部を有し、
前記突起部が第二載置面の前記スロープを有する、
請求項1に記載の焼成用治具。
【請求項5】
前記突起部は、錐体、錐体の母線の一部又は全部を曲線に変形させた変形錐体、錐台、並びに、錐台の母線の一部又は全部を曲線に変形させた変形錐台の形状から選択される何れかの形状を有する請求項4に記載の焼成用治具。
【請求項6】
第一載置面の最下点から前記突起部の頂上までの高さの、第一載置面の最下点から前記セラミックス成形体の頂上までの高さに対する割合が、1%~200%である請求項4に記載の焼成用治具。
【請求項7】
第一載置面を取り囲むようにして立設された壁面を有する請求項1に記載の焼成用治具。
【請求項8】
前記壁面と第一載置面の間に第二載置面を有する請求項7に記載の焼成用治具。
【請求項9】
第一載置面の最下点から前記壁面の頂上までの高さの、第一載置面の最下点から前記セラミックス成形体の頂上までの高さに対する割合が、1%~200%である請求項7に記載の焼成用治具。
【請求項10】
カーボン、炭化珪素、窒化ホウ素、炭化タンタル、アルミナ、及び白金から選択される一種又は二種以上を合計で80質量%以上含有する請求項1に記載の焼成用治具。
【請求項11】
第一載置面及び第二載置面の一方又は両方は、第一載置面を構成する物質、第二載置面を構成する物質、セラミックス成形体を構成する物質、及び前記金属の何れとも不活性な物質を含有するコーティング層を有する請求項1に記載の焼成用治具。
【請求項12】
前記セラミックス成形体は、外周壁と、外周壁の内周側に配設され、一方の端面から他方の端面まで流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁とを有するハニカム構造部を備える請求項1に記載の焼成用治具。
【請求項13】
前記セラミックス成形体が炭化珪素を含有し、前記粉粒体状の金属が金属珪素を含有する請求項1に記載の焼成用治具。
【請求項14】
請求項1~13の何れか一項に記載の焼成用治具を用意する工程と、
前記焼成用治具の第一載置面に、前記セラミックス成形体を直接、又は、粉粒体状の金属を介して、又は、多孔質支持具を介して載せる工程と、
前記焼成用治具の第二載置面に、粉粒体状の前記金属を載せる工程と、
第一載置面に前記セラミックス成形体を、第二載置面に前記粉粒体状の金属をそれぞれ載せた状態で、前記金属の融点以上に加熱することで、当該金属を前記セラミックス成形体内に含浸しながら焼成して金属含浸セラミックス焼成体を得る工程と、
を含む金属含浸セラミックス焼成体の製造方法。
【請求項15】
前記金属含浸セラミックス焼成体が熱交換器である請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記金属含浸セラミックス焼成体の気孔率は30%以下である請求項14に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は焼成用治具に関する。また、本発明は金属含浸セラミックス焼成体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックス成形体に溶融金属を含浸させながら焼成することで金属含浸セラミックス焼成体を製造する方法が知られている。金属含浸セラミックス焼成体の例としては、シリコン含浸型の炭化珪素が挙げられる。シリコン含浸型の炭化珪素は、高熱伝導率、低熱膨張、高強度、耐熱性、耐酸化性を持つ材料として知られており、従来、熱交換器、ヒートシンク、半導体装置向け部材、耐火物、排ガス浄化用フィルター等の用途に用いられている。
【0003】
特許文献1(国際公開第2011/145387号)には、SiCを含む被含浸体とSiを含む含浸金属供給体とを用い、該被含浸体及び該含浸金属供給体のうち少なくとも一方にAlを含み、常圧の不活性ガス雰囲気、1200℃以上1600℃以下の温度範囲で前記含浸金属供給体からのSiを含む溶融金属を前記被含浸体へ含浸処理する含浸工程、を含むことを特徴とする、Si-SiC系複合材料の製造方法が記載されている。特許文献1には、具体的な含浸処理の方法として、成形体である被含浸体の上にプレス成形された含浸金属供給体を載置して加熱処理を行い、含浸金属供給体を溶融して被含浸体に含浸させることが記載されている。
【0004】
特許文献2(国際公開第2021/171670号)には、Si含浸SiC複合材料を主成分とするハニカム成形体を製造する方法が記載されており、金属Siを含む塊とハニカム成形体とが接触するように配置して焼成する方法が図示されている。
【0005】
特許文献3(特開2017-218342号公報)には、成形体を得る成形工程と、前記成形体に含まれる有機バインダーを除去して脱脂体を得る脱脂工程と、前記脱脂体の周壁及び区画壁の内部に金属珪素を含浸させる含浸工程とを有するハニカム構造体の製造方法が記載されている。特許文献3には、含浸工程においては、前記脱脂体に対して金属珪素の塊を接触させた状態で加熱することが好ましいことが記載されている。
【0006】
特許文献4(特開2019-156683号公報)には、特許文献3に記載の製造方法の欠点が以下のように述べられている。特許文献3に記載の製造方法では、溶融した金属珪素の自重に基づいて脱脂体内に含浸されることから、脱脂体の気孔容積を超えた量の金属珪素が含浸されて、余剰の金属珪素がハニカム構造体の外周から垂れ下がったり、ハニカム構造体内のセル内に膨出したりすることがある。そのため、当該製造方法は、安定した形状の精度を確保することが難しい。
【0007】
このような欠点を克服すべく、特許文献4では、固体状の金属珪素を収容する容器の内部に多孔質の支持具を介してハニカム多孔体を配置した状態で、上記容器内を金属珪素の融点以上の温度に加熱することにより、溶融した金属珪素を、多孔質の上記支持具を通じて上記ハニカム多孔体に含浸させる含浸工程を含むハニカム構造体の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2011/145387号
【特許文献2】国際公開第2021/171670号
【特許文献3】特開2017-218342号公報
【特許文献4】特開2019-156683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1~3に記載されているように、従来の金属含浸セラミックス焼成体の製造方法においては、被含浸セラミックス成形体と含浸金属供給成形体を接触させた状態、典型的には被含浸セラミックス成形体の上に含浸金属供給成形体を載置した状態で加熱処理することで含浸工程を行っていた。
【0010】
しかしながら、このような含浸工程では含浸金属供給成形体を用意する必要がある。このため、焼成体の大きさや材質に応じて含浸量を調整するためには含浸金属供給成形体の大きさを変更したり、不要部を削り取ったりする必要があり、製造コストを押し上げる要因となっていた。
【0011】
一方、特許文献4には、次のような利点が記載されている。含浸工程では、ハニカム多孔体の毛細管現象による吸い上げ力に基づいて金属珪素が含浸される。そのため、ハニカム多孔体の気孔容積を超えた量の金属珪素が含浸され難く、余剰の金属珪素が外周から垂れ下がったり、ハニカム構造体内のセル内に膨出してセルが設計値よりも狭くなったりすることが抑制される。その結果、ハニカム構造体の形状安定性が向上する。
【0012】
しかしながら、特許文献4に図示される容器の底面は平坦である。このため、含浸工程において容器の底面に配置した粉末状、粒状、塊状等の固体状の金属珪素は、必ずしも全量が多孔質の支持具を介して吸い上げられるわけではなく、含浸後に容器の底面に残留し、歩留まりが低下しやすいという問題があることが分かった。更には、含浸量が減って目的の品質を有する金属含浸セラミックス焼成体が安定して得られないという問題も生じていた。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、一側面において、製造コストの削減に寄与することができ、しかも、製品の品質の安定と歩留まりの向上にも寄与することのできるセラミックス成形体内に金属を含浸させるための焼成用治具を提供することを課題とする。また、本発明は別の一側面において、そのような焼成用治具を用いた金属含浸セラミックス焼成体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、セラミックス成形体の載置面に向かって粉粒体状の金属が流動しやすいように、粉粒体状の金属の載置面にスロープを設けた焼成用治具を用いることが有利であることを見出した。本発明は当該知見に基づき創作されたものであり、以下に例示される。
[態様1]
セラミックス成形体内に金属を含浸させるための焼成用治具であって、
前記焼成用治具は、前記セラミックス成形体を直接、又は、粉粒体状の前記金属を介して、又は、多孔質支持具を介して載せるための第一載置面と、第一載置面に隣接する第二載置面であって、粉粒体状の前記金属を載せるための第二載置面とを備えており、
第二載置面は、第一載置面に向かって下方に傾斜するスロープを有する、焼成用治具。
[態様2]
第二載置面は、平均勾配が5°~85°の前記スロープを有する態様1に記載の焼成用治具。
[態様3]
第二載置面が、前記粉粒体状の金属が溶融して第二載置面を流れる際の流れ方向を制御するための仕切り板を有する態様1又は2に記載の焼成用治具。
[態様4]
前記セラミックス成形体が一方の端面から他方の端面まで延びる中空部を有しており、
前記焼成用治具は、前記一方の端面又は前記他方の端面の側から前記中空部に差し込むための突起部を有し、
前記突起部が第二載置面の前記スロープを有する、
態様1~3の何れか一つに記載の焼成用治具。
[態様5]
前記突起部は、錐体、錐体の母線の一部又は全部を曲線に変形させた変形錐体、錐台、並びに、錐台の母線の一部又は全部を曲線に変形させた変形錐台の形状から選択される何れかの形状を有する態様4に記載の焼成用治具。
[態様6]
第一載置面の最下点から前記突起部の頂上までの高さの、第一載置面の最下点から前記セラミックス成形体の頂上までの高さに対する割合が、1%~200%である態様4又は5に記載の焼成用治具。
[態様7]
第一載置面を取り囲むようにして立設された壁面を有する態様1~6の何れか一つに記載の焼成用治具。
[態様8]
前記壁面と第一載置面の間に第二載置面を有する態様7に記載の焼成用治具。
[態様9]
第一載置面の最下点から前記壁面の頂上までの高さの、第一載置面の最下点から前記セラミックス成形体の頂上までの高さに対する割合が、1%~200%である態様7又は8に記載の焼成用治具。
[態様10]
カーボン、炭化珪素、窒化ホウ素、炭化タンタル、アルミナ、及び白金から選択される一種又は二種以上を合計で80質量%以上含有する態様1~9の何れか一つに記載の焼成用治具。
[態様11]
第一載置面及び第二載置面の一方又は両方は、第一載置面を構成する物質、第二載置面を構成する物質、セラミックス成形体を構成する物質、及び前記金属の何れとも不活性な物質を含有するコーティング層を有する態様1~10の何れか一つに記載の焼成用治具。
[態様12]
前記セラミックス成形体は、外周壁と、外周壁の内周側に配設され、一方の端面から他方の端面まで流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁とを有するハニカム構造部を備える態様1~11の何れか一つに記載の焼成用治具。
[態様13]
前記セラミックス成形体が炭化珪素を含有し、前記粉粒体状の金属が金属珪素を含有する態様1~12の何れか一つに記載の焼成用治具。
[態様14]
態様1~13の何れか一つに記載の焼成用治具を用意する工程と、
前記焼成用治具の第一載置面に、前記セラミックス成形体を直接、又は、粉粒体状の金属を介して、又は、多孔質支持具を介して載せる工程と、
前記焼成用治具の第二載置面に、粉粒体状の前記金属を載せる工程と、
第一載置面に前記セラミックス成形体を、第二載置面に前記粉粒体状の金属をそれぞれ載せた状態で、前記金属の融点以上に加熱することで、当該金属を前記セラミックス成形体内に含浸しながら焼成して金属含浸セラミックス焼成体を得る工程と、
を含む金属含浸セラミックス焼成体の製造方法。
[態様15]
前記金属含浸セラミックス焼成体が熱交換器である態様14に記載の製造方法。
[態様16]
前記金属含浸セラミックス焼成体の気孔率は30%以下である態様14又は15に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一実施形態に係る焼成用治具の第一載置面にセラミックス成形体を載せ、当該治具の第二載置面に含浸金属供給体としての粉粒体状の金属を載せると、セラミックス成形体を載せた第一載置面に向かって粉粒体状の金属が流動しやすくなる。このため、当該焼成用治具を用いて金属含浸セラミックス焼成体を製造すると、含浸工程後に治具の底面に粉粒体状の金属に由来する残留物が残留しにくくなるので歩留まりが向上する。また、所望の含浸量を有する金属含浸セラミックス焼成体を安定して製造することに貢献できる。更には、第二載置面がスロープを有する結果、平坦な第二載置面に比べ、セラミックス成形体と粉粒体状の金属の接触面積が高さ方向に拡大し、含浸の不均一性を軽減することに寄与する。このように、本発明の一実施形態に係る焼成用治具は製品の品質の安定と歩留まりの向上に資する。
【0016】
また、本発明の一実施形態に係る焼成用治具を用いて金属含浸セラミックス焼成体を製造する際は、含浸金属供給体として粉粒体状の金属が使用される。このため、含浸金属供給体を成形する作業が省略できるだけでなく、含浸に必要な量を簡単に調整できる。また、粉粒体状の金属は被含浸セラミックス成形体の上に載置する必要もないので、焼成のために多数のセラミックス成形体を窯道具に積載したときに要する高さを小さくでき、積載効率も向上する。よって、本発明の一実施形態に係る焼成用治具を用いて金属含浸セラミックス焼成体を製造することにより、金属含浸セラミックス焼成体の製造コストの削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】セラミックス成形体の一例に係る模式的な斜視図を示す。
図2】セラミックス成形体の別例に係る模式的な斜視図を示す。
図3】本発明の第一実施例に係る焼成用治具の第一載置面上にセラミックス成形体を載置し、第二載置面上に粉粒体状の金属を載置した状態を示す模式的な側面断面図及びその部分拡大図である。
図4】本発明の第二実施例に係る焼成用治具の第一載置面上にセラミックス成形体を載置し、第二載置面上に粉粒体状の金属を載置した状態を示す模式的な側面断面図である。
図5A】本発明の第三実施例に係る焼成用治具の第一載置面上にセラミックス成形体を載置した状態を示す模式的な平面図である。
図5B図5Aの模式的なX-X線断面図である。
図6】本発明の第四実施例に係る焼成用治具の第一載置面上にセラミックス成形体を載置し、第二載置面上に粉粒体状の金属を載置した状態を示す模式的な側面断面図である。
図7】本発明の第五実施例に係る焼成用治具の第一載置面上にセラミックス成形体を載置し、第二載置面上に粉粒体状の金属を載置した状態を示す模式的な側面断面図である。
図8】本発明の第六実施例に係る焼成用治具の第一載置面上にセラミックス成形体を載置し、第二載置面上に粉粒体状の金属を載置した状態を示す模式的な側面断面図である。
図9】実施例で使用した焼成用治具の模式的な側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0019】
(1.焼成用治具)
本発明の一実施形態に係るセラミックス成形体内に金属を含浸させるための焼成用治具は、セラミックス成形体を直接、又は、粉粒体状の前記金属を介して、又は、多孔質支持具を介して載せるための第一載置面と、第一載置面に隣接する第二載置面であって、粉粒体状の前記金属を載せるための第二載置面とを備えており、第二載置面は、第一載置面に向かって下方に傾斜するスロープSを有する。スロープSとは、水平面に平行な線に対する勾配が0°超90°未満の傾斜面を指す。一つの側面断面において焼成用治具を観察したとき、スロープSは一つのみ視認されてもよいが、複数視認されることが好ましく、鉛直方向に延びる仮想中心線を対称中心として線対称に複数設けることが好ましい。
【0020】
焼成用治具は、耐熱性に優れていることが好ましい。従って、焼成用治具の材質としては、例えば、カーボン(グラファイト等)、炭化珪素、窒化ホウ素、炭化タンタル、アルミナ、及び白金から選択される一種又は二種以上を合計で80質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上含有することが好ましく、95質量%以上含有することが好ましい。
【0021】
また、第一載置面及び第二載置面の一方又は両方は、第一載置面を構成する物質、第二載置面を構成する物質、セラミックス成形体を構成する物質、及び金属の何れとも不活性な物質、例えば窒化ホウ素及び/又は炭化タンタルを含有するコーティング層で被覆されていることが好ましい。同様に、焼成用治具の内側の壁面も、第一載置面を構成する物質、第二載置面を構成する物質、セラミックス成形体を構成する物質、及び金属の何れとも不活性な物質、例えば窒化ホウ素及び/又は炭化タンタルを含有するコーティング層で被覆されていることが好ましい。
【0022】
粉粒体状の金属がセラミックス成形体を載せた第一載置面に向かって流動しやすくなるという観点から、スロープSの平均勾配θは好ましくは5°以上であり、より好ましくは15°以上であり、更により好ましくは30°以上である。但し、スロープSの平均勾配を過度に大きくすると、粉粒体状の金属を載置する空間が狭くなりやすいため、目標とする含浸量が達成できる範囲で適宜勾配を調整することが望ましい。例示的にはスロープSの平均勾配θは85°以下であり、典型的には45°以下である。従って、スロープSの平均勾配θは、例えば、5°~85°であることが好ましく、15°~45°であることがより好ましく、30°~45°であることが更により好ましい。
【0023】
図3図8に示すような治具の側面断面において視認される一つのスロープSの平均勾配θは、スロープSの上端から下端までを線分で結んだときの、水平面に平行な線に対する当該線分の角度を意味する。そして、例えば、第二載置面210bが有するスロープSの平均勾配θがA°以上B°以下であるというときは、焼成用治具の何れの側面断面で何れのスロープSの平均勾配θを求めたときにもそれぞれがA°以上B°以下であることを意味する。
【0024】
図1にはセラミックス成形体100の一例に係る模式的な斜視図が示されている。図2にはセラミックス成形体100の別例に係る模式的な斜視図が示されている。セラミックス成形体100の形状には特段の制約はないが、一実施形態において、セラミックス成形体100は、外周壁112と、外周壁112の内周側に配設され、一方の端面114から他方の端面116まで流体の流路を形成する複数のセル115を区画形成する隔壁113とを有するハニカム構造部110を備える。セラミックス成形体100の外形は典型的には柱状である。
【0025】
セラミックス成形体100の端面形状に制限はないが、例えば円形状、楕円形状、レーストラック形状及び長円形状等のラウンド形状、三角形状及び四角形状等の多角形状、並びに、その他の異形形状とすることができる。図1に示すセラミックス成形体100は、端面形状が円形状であり、全体として円柱状である。
【0026】
また、図2に示すように、セラミックス成形体100は、一方の端面114から他方の端面116まで延びる中空部117を有してもよい。中空部117はハニカム構造部110のセル115の延びる方向の中心軸と同軸状に形成することが好ましい。この場合、セラミックス成形体100は、外周壁112と、内周壁119と、外周壁112及び内周壁119の間に配設され、一方の端面114から他方の端面116まで流体の流路を形成する複数のセル115を区画形成する隔壁113とを有するハニカム構造部110を備える。
【0027】
セラミックス成形体100の高さ(一方の端面から他方の端面までの長さ)は特に制限はなく、用途や要求性能に応じて適宜設定すればよい。セラミックス成形体100の高さと各端面の最大径(セラミックス成形体の各端面の重心を通る径のうち、最大長さを指す)の関係についても特に制限はない。従って、セラミックス成形体100の高さが各端面の最大径よりも長くてもよいし、セラミックス成形体100の高さが各端面の最大径よりも短くてもよい。
【0028】
セル115の延びる方向に垂直な断面におけるセルの形状に制限はないが、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。これ等のなかでも、四角形及び六角形が好ましい。セル形状をこのようにすることにより、セル115に流体を流したときの圧力損失が小さくなる。図1に示すセラミックス成形体100のハニカム構造部110において、セルの流路に直交する断面におけるセルの形状は正方形が大半を占める。
【0029】
セル115の延びる方向に垂直な断面において、複数のセルを放射状に配列してもよい。このような構成とすることで、セル115を流通する流体の熱をハニカム構造体の外部に効率よく伝達することができるので、金属含浸セラミックス焼成体を熱交換器として利用する際に有利である。図2に示すセラミックス成形体100のハニカム構造部110においては、複数のセル115が放射状に配列されている。セル115の延びる方向に垂直な断面において、図2に示すセラミックス成形体100の複数のセル115はそれぞれ、ハニカム構造部110の中心側から外周側に向かって伸びる一対の隔壁面113aと、当該一対の隔壁面113aを連結する中心側及び外周側の隔壁面113bと、によって区画形成される。より詳細には、図2に示すセラミックス成形体100の複数のセル115はそれぞれが、ハニカム構造部110の中心側から外周側に向かって伸びる一対の直線状の隔壁面113aと、同心の一対の弧状の隔壁面113bとによって区画形成されている。
【0030】
セル115は一方の端面114から他方の端面116まで貫通していてもよい。また、セル115は、一方の端面114が目封止されており他方の端面116が開口を有する第1セルと、一方の端面114が開口を有し他方の端面116が目封止されている第2セルとが隔壁113を挟んで交互に隣接配置されていてもよい。
【0031】
セラミックス成形体100の材質は、セラミックスであれば特に制限はないが、金属含浸セラミックス焼成体を熱交換器、フィルター又は触媒担体として利用する場合は、炭化珪素、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物、窒化珪素、窒化ホウ素等の窒化物から選択される一種以上を含有することが好ましく、炭化珪素を含有することがより好ましい。セラミックス成形体100は、セラミックス成分を一種のみ含有してもよいし、二種以上組み合わせて含有してもよい。セラミックス成形体100は、セラミックス成分中、炭化珪素を50質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することがより好ましく、90質量%以上含有することが更により好ましい。
【0032】
ハニカム構造部110を備えるセラミックス成形体100の作製方法について説明する。ハニカム構造部110を備えるセラミックス成形体100の作製は、公知のハニカム構造体の製造方法に準じて行うことができる。例えば、まず、炭化珪素粉末に、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して成形原料を作製する。必要に応じて成形原料に金属珪素粉末を添加してもよい。
【0033】
次に、得られた成形原料を混練して坏土を形成した後、坏土を押出成形してハニカム構造部を有する未乾燥セラミックス成形体を作製する。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚み、セル密度等を有する口金を用いることができる。
【0034】
次いで、得られた未乾燥セラミックス成形体を乾燥することで、ハニカム構造部110を備えるセラミックス成形体が得られる。乾燥工程においては、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の従来公知の乾燥方法を用いることができる。目封止部が必要な場合は、乾燥したセラミックス成形体の両底面の所定位置に目封止部を形成した上で目封止部を乾燥することで形成可能である。
【0035】
(第一実施例、第二実施例)
図3には、本発明の第一実施例に係る焼成用治具200の第一載置面210a上にセラミックス成形体100を載置し、第二載置面210b上に粉粒体状の金属300を載置した状態を示す模式的な側面断面図及びその部分拡大図が示されている。
図4には、本発明の第二実施例に係る焼成用治具200の第一載置面210a上にセラミックス成形体100を載置し、第二載置面210b上に粉粒体状の金属300を載置した状態を示す模式的な側面断面図が示されている。
【0036】
第一実施例及び第二実施例においては、セラミックス成形体100は、外周壁112と、内周壁119と、外周壁112及び内周壁119の間に配設され、一方の端面114から他方の端面116まで流体の流路を形成する複数のセル115を区画形成する隔壁113とを有するハニカム構造部110を備える。そして、セラミックス成形体100は、内周壁119の内周側に一方の端面114から他方の端面116まで延びる中空部117を有する。
【0037】
粉粒体状の金属300が載置される第二載置面210bは、セラミックス成形体100が載置される第一載置面210aに向かって下方に傾斜するスロープSを有するので、第二載置面210b上に粉粒体状の金属300が載置されるとセラミックス成形体100を載せた第一載置面210aに向かって流動しやすくなる。スロープSは勾配が途中で変化してもよいし、一定でもよい。第一実施例及び第二実施例においては、焼成用治具200は、一方の端面114又は他方の端面116の側から中空部に差し込むための突起部230を有し、突起部230が第二載置面210bのスロープSを有する。
【0038】
突起部230の形状は、限定的ではないが、例えば、円錐、角錐(例:三角錐、四角推、六角錐)等の錐体、錐体の母線の一部又は全部を変形させた変形錐体(例:錐体の母線の一部又は全部を外側又は内側に湾曲させた変形錐体)、円錐台、角錐台(例:三角錐台、四角錐台、六角錐台)等の錐台、並びに、錐台の母線の一部又は全部を変形させた変形錐台(例:錐台の母線の一部又は全部を外側又は内側に湾曲させた変形錐台)の形状から選択される何れかの形状とすることができる。変形させた母線は、折れ線、曲線、及び両者の組み合わせによって構成可能である。第一実施例においては、突起部230は円錐形状である。第二実施例においては、突起部230は円錐の母線の全部を内側に湾曲させた変形円錐形状である。
【0039】
第一実施例及び第二実施例では、焼成用治具200の第一載置面210aの上にセラミックス成形体100が直接載置されているが、第一載置面210aとセラミックス成形体100の間に粉粒体状の金属300が介在してもよい。また、第一実施例及び第二実施例において第一載置面210aは平坦であるが、必ずしも平坦にする必要はない。
【0040】
第一載置面210aの最下点から突起部230の頂上までの高さh1の、第一載置面210aの最下点からセラミックス成形体100の頂上までの高さh2に対する割合(h1/h2)は、高い方が急勾配を形成しやすい一方で、低い方が治具の製造コストを低減でき、窯道具への積載効率も高くできることから、1%~200%であることが好ましく、3~100%であることがより好ましく、5~50%であることが更により好ましい。
【0041】
第一実施例及び第二実施例に係る焼成用治具200は、粉粒体状の金属300が治具外にこぼれたり、セラミックス成形体100が治具から滑り落ちるのを防止するため、第一載置面210aを取り囲むようにして立設された壁面220を有することが好ましい。第一載置面210aの最下点から壁面220の頂上までの高さh3は適宜設定すればよく、特段の制限はないが、窯道具へのセラミックス成形体100の積載効率を向上させ、また、焼成時に炉内のガス流を阻害しないことが望ましい点に鑑みれば、第一載置面210aの最下点から壁面220の頂上までの高さh3の、第一載置面210aの最下点からセラミックス成形体100の頂上までの高さh2に対する割合(h3/h2)は、1%~200%であることが好ましく、3~100%であることがより好ましく、5~50%であることが更により好ましい。
【0042】
(第三実施例)
図5Aには、本発明の第三実施例に係る焼成用治具200の第一載置面210a上にセラミックス成形体100が置かれた状態を示す模式的な平面図が示されている。図5Bには、図5Aの模式的なX-X線断面図が示されている。第三実施例に係る焼成用治具200は、第二載置面210bが、粉粒体状の金属300が溶融して第二載置面210bを流れる際の流れ方向を制御するための仕切り板118を有する点で、第一実施例に係る焼成用治具200と異なる。
【0043】
仕切り板118が第二載置面210bに設置されることで、粉粒体状の金属300が溶融して第二載置面210bを流れる際の流れ方向を制御することができる。例えば、仕切り板118を、突起部230の平面視重心(この実施例では頂点)を中心として放射状に均一な間隔で設置することで、流れの偏り(チャネリング)を抑制することができる。仕切り板118は、突起部230の平面視重心(この実施例では頂点)を中心として放射状に、2方向以上設置することが好ましく、3方向以上設置することがより好ましく、4方向以上設置することが更により好ましい。仕切り板118の設置方向が多くなれば、粉粒体状の金属300が溶融して第二載置面210bを流れる際の流れの均一性が向上するが、通常は6方向以下で十分であり、典型的には5方向以下である。従って、仕切り板118は、突起部230の平面視重心(この実施例では頂点)を中心として放射状に、2方向以上6方向以下設置することが好ましく、3方向以上5方向以下設置することがより好ましく、4方向以上5方向以下設置することが更により好ましい。第三実施例においては、仕切り板118は、突起部230の平面視重心(この実施例では頂点)を中心として放射状に4方向に均一な間隔で設置されている。
【0044】
一つの仕切り板118は、突起部230の平面視重心(この実施例では頂点)から突起部230の根元に向かう方向に延設することが好ましい。また、一つの仕切り板118は、突起部230の平面視重心(この実施例では頂点)から突起部230の根元に向かう方向にスロープSの長さの1/2以上にわたって延びていることが好ましく、3/4以上にわたって延びていることがより好ましく、全体にわたって延びていることが更により好ましい。
【0045】
図5Bには、第二載置面210bに載置される粉粒体状の金属300の上端310の仮想線が示されている。そして、粉粒体状の金属300の上端310の、第一載置面210aの最下点からの高さはh5で示されている。仕切り板118の頂上の高さh4は、第二載置面210bに載置される粉粒体状の金属の上端310の高さh5よりも高い位置にある方が、流れの偏り(チャネリング)を抑制する効果も大きくなることから好ましい。
【0046】
その他、第一実施例に係る焼成用治具200と同じ符号で示されている構成要素に関する説明は既に述べた通りである。
【0047】
(第四実施例)
図6には、本発明の第四実施例に係る焼成用治具200の第一載置面210a上にセラミックス成形体100を載置し、第二載置面210b上に粉粒体状の金属300を載置した状態を示す模式的な側面断面図が示されている。
【0048】
第四実施例においては、セラミックス成形体100は、外周壁112と、内周壁119と、外周壁112及び内周壁119の間に配設され、一方の端面114から他方の端面116まで流体の流路を形成する複数のセル115を区画形成する隔壁113とを有するハニカム構造部110を備える。そして、セラミックス成形体100は、内周壁119の内周側に一方の端面114から他方の端面116まで延びる中空部117を有する。
【0049】
粉粒体状の金属300が載置される第二載置面210bは、セラミックス成形体100が載置される第一載置面210aに向かって下方に傾斜するスロープSを有するので、第二載置面210b上に粉粒体状の金属300が載置されるとセラミックス成形体100を載せた第一載置面210aに向かって流動しやすくなる。スロープSは勾配が途中で変化してもよいし、一定でもよい。第四実施例においては、焼成用治具200は、一方の端面114又は他方の端面116の側から中空部に差し込むための突起部230を有し、突起部230が第二載置面210bのスロープSを構成している。
【0050】
突起部230の形状についての説明は、第一実施例及び第二実施例で述べた通りである。第四実施例においては、突起部230は、母線が突起部230の頂上から鉛直方向下方に延びる線分と、当該線分に接続され、突起部230の根元まで延びる傾斜した線分とで構成された変形円錐台形状である。
【0051】
第四実施例では、焼成用治具200の第一載置面210aとセラミックス成形体100の間に粉粒体状の金属300が介在しているが、第一載置面210aの上にセラミックス成形体100が直接載置されてもよい。また、第四実施例において第一載置面210aは平坦であるが、必ずしも平坦にする必要はない。
【0052】
第一載置面210aの最下点から突起部230の頂上までの高さh1の、第一載置面210aの最下点からセラミックス成形体100の頂上までの高さh2に対する割合(h1/h2)は、高い方が急勾配を形成しやすい一方で、低い方が治具の製造コストを低減でき、窯道具への積載効率も高くできることから、1%~200%であることが好ましく、3~100%であることがより好ましく、5~50%であることが更により好ましい。
【0053】
また、第四実施例に係る焼成用治具200は、粉粒体状の金属300が治具外にこぼれたり、セラミックス成形体100が治具から滑り落ちたりするのを防止するため、第一載置面210aを取り囲むようにして立設された壁面220を有する。第一載置面210aの最下点から壁面220の頂上までの高さh3は適宜設定すればよく、特段の制限はないが、窯道具へのセラミックス成形体100の積載効率を向上させ、また、焼成時に炉内のガス流を阻害しないことが望ましい点に鑑みれば、第一載置面210aの最下点から壁面220の頂上までの高さh3の、第一載置面210aの最下点からセラミックス成形体100の頂上までの高さh2に対する割合(h3/h2)は、1%~200%であることが好ましく、3~100%であることがより好ましく、5~50%であることが更により好ましい。
【0054】
第四実施例に係る焼成用治具200は、壁面220と第一載置面210aの間にもスロープSを有する第二載置面210bを有している。これにより、第四実施例においては、スロープSを有する第二載置面210bが、セラミックス成形体100の内周壁119の内側及び外周壁112の外側の両方に配置されている点が特徴的である。このような構成を採用することで、溶融金属の堆積しやすい角部への溶融金属の残留を抑えつつ、セラミックス成形体100の径方向の含浸量のバラツキをおさえることができるという利点が得られる。
【0055】
その他、第一実施例に係る焼成用治具200と同じ符号で示されている構成要素に関する説明は既に述べた通りである。
【0056】
(第五実施例)
図7には、本発明の第五実施例に係る焼成用治具200の第一載置面210a上にセラミックス成形体100を載置し、第二載置面210b上に粉粒体状の金属300を載置した状態を示す模式的な側面断面図である。
【0057】
第五実施例においては、セラミックス成形体100は円柱状の外形を有しており、外周壁112と、外周壁112の内周側に配設され、一方の端面114から他方の端面116まで流体の流路を形成する複数のセル115を区画形成する隔壁113とを有するハニカム構造部110を備える。
【0058】
第五実施例に係る焼成用治具200は、粉粒体状の金属300が治具外にこぼれたり、セラミックス成形体100が治具から滑り落ちたりするのを防止するため、第一載置面210aを取り囲むようにして立設された壁面220を有する。第一載置面210aの最下点から壁面220の頂上までの高さh3は適宜設定すればよく、特段の制限はないが、窯道具へのセラミックス成形体100の積載効率を向上させ、また、焼成時に炉内のガス流を阻害しないことが望ましい点に鑑みれば、第一載置面210aの最下点から壁面220の頂上までの高さh3の、第一載置面210aの最下点からセラミックス成形体100の頂上までの高さh2に対する割合(h3/h2)は、1%~200%であることが好ましく、3~100%であることがより好ましく、5~50%であることが更により好ましい。
【0059】
第五実施例に係る焼成用治具200は、壁面220と第一載置面210aの間に第二載置面210bを有している。粉粒体状の金属300が載置される第二載置面210bは、セラミックス成形体100が載置される第一載置面210aに向かって下方に傾斜するスロープSを有するので、第二載置面210b上に粉粒体状の金属300が載置されるとセラミックス成形体100を載せた第一載置面210aに向かって流動しやすくなる。スロープSは勾配が途中で変化してもよいし、一定でもよい。
【0060】
第五実施例では、焼成用治具200の第一載置面210aの上にセラミックス成形体100が直接載置されているが、第一載置面210aとセラミックス成形体100の間に粉粒体状の金属300が介在してもよい。また、第五実施例において第一載置面210aは平坦であるが、必ずしも平坦にする必要はない。
【0061】
その他、第一実施例に係る焼成用治具200と同じ符号で示されている構成要素に関する説明は既に述べた通りである。
【0062】
(第六実施例)
図8には、本発明の第六実施例に係る焼成用治具200の第一載置面210a上にセラミックス成形体100を載置し、第二載置面210b上に粉粒体状の金属300を載置した状態を示す模式的な側面断面図である。
【0063】
第六実施例においては、セラミックス成形体100は円柱状の外形を有しており、外周壁112と、外周壁112の内周側に配設され、一方の端面114から他方の端面116まで流体の流路を形成する複数のセル115を区画形成する隔壁113とを有するハニカム構造部110を備える。第六実施例では、焼成用治具200の第一載置面210aの上にセラミックス成形体100が多孔質支持具240を介して載置される。第六実施例において第一載置面210aは平坦であるが、必ずしも平坦にする必要はない。
【0064】
第六実施例に係る焼成用治具200は、粉粒体状の金属300が治具外にこぼれたり、セラミックス成形体100が治具から滑り落ちたりするのを防止するため、第一載置面210aを取り囲むようにして立設された壁面220を有する。第一載置面210aの最下点から壁面220の頂上までの高さh3は適宜設定すればよく、特段の制限はないが、窯道具へのセラミックス成形体100の積載効率を向上させ、また、焼成時に炉内のガス流を阻害しないことが望ましい点に鑑みれば、第一載置面210aの最下点から壁面220の頂上までの高さh3の、第一載置面210aの最下点からセラミックス成形体100の頂上までの高さh2に対する割合(h3/h2)は、1%~200%であることが好ましく、3~150%であることがより好ましく、5~100%であることが更により好ましい。
【0065】
第六実施例に係る焼成用治具200は、壁面220と第一載置面210aの間に第二載置面210b(外周側の第二載置面210b)を有している。更に、第六実施例に係る焼成用治具200は、第一載置面210aに取り囲まれる第二載置面210b(内周側の第二載置面210b)を有してもよい。内周側の第二載置面210bは、先述した突起部230と同様の形状を有してもよい。図8に示す第六実施例の側面断面図においては、外周側の第二載置面210bは、それよりも内周側の第一載置面210aに向かって下降するスロープSを有し、内周側の第二載置面210bは、それよりも外周側の第一載置面210aに向かって下降するスロープSを有することが視認できる。
【0066】
粉粒体状の金属300が載置される外周側及び内周側の第二載置面210bは、セラミックス成形体100が多孔質支持具240を介して載置される第一載置面210aに向かって下方に傾斜するスロープSを有するので、第二載置面210b上に粉粒体状の金属300が載置されるとセラミックス成形体100を載せた多孔質支持具240に向かって流動しやすくなる。スロープSは勾配が途中で変化してもよいし、一定でもよい。
【0067】
なお、第六実施例に係る焼成用治具200を使用すると、セラミックス成形体100を載置したときに多孔質支持具240の分だけ高さ方向に大きくなりやすい。また、多孔質支持具240の上にセラミックス成形体100を載せて溶融金属を吸い上げる都合上、多孔質支持具240に含浸された分の金属が無駄となる。従って、窯道具への積載効率や歩留まりを考慮すると、多孔質支持具240を使用しない他の実施例の方が好ましい。
【0068】
(2.金属含浸セラミックス焼成体の製造方法)
本発明の一実施形態に係る金属含浸セラミックス焼成体の製造方法は、
上述した焼成用治具200を用意する工程1と、
焼成用治具200の第一載置面210aに、セラミックス成形体100を直接、又は、粉粒体状の金属300を介して、又は、多孔質支持具240を介して載せる工程2と、
焼成用治具200の第二載置面210bに、粉粒体状の金属300を載せる工程3と、
第一載置面210aにセラミックス成形体100を、第二載置面210bに粉粒体状の金属300をそれぞれ載せた状態で、金属300の融点以上に加熱することで、金属300をセラミックス成形体100内に含浸しながら焼成して金属含浸セラミックス焼成体を得る工程4と、
を含む。
【0069】
<工程1>
工程1で用意する焼成用治具200は上述した通りである。
【0070】
<工程2>
工程2は、焼成用治具200の第一載置面210aに、セラミックス成形体100を直接、又は、粉粒体状の金属300を介して、又は、多孔質支持具240を介して載せることを含む。工程4でセラミックス成形体100中に含浸させるためである。工程2の対象となるセラミックス成形体100は、脱脂前のものでもよいし、脱脂後のものでもよいし、脱脂後に更に焼成した後のものでもよい。しかしながら、生産効率やエネルギー費等の観点から、工程2は脱脂前のセラミックス成形体100に対して実施することが好ましい。
【0071】
焼成用治具200の第一載置面210aにセラミックス成形体100を載せる具体的な態様は、焼成用治具200の説明で種々の実施例を提示しながら述べた通りである。セラミックス成形体100がハニカム構造部110を有する場合、セル115の延びる方向が鉛直方向に平行となるように、セラミックス成形体100を、載置面を有する治具内に置いておくことが好ましい。また、セラミックス成形体100が、ハニカム構造部110を有するか否かに関わらず、一方の端面から他方の端面まで延びる中空部117を有する場合には、中空部117の延びる方向が鉛直方向に平行となるように、セラミックス成形体100を、工程3を実施する前に予め第一載置面210aの上に置いておくことが好ましい。この状態で、中空部117に粉粒体状の金属を配置すると、粉粒体状の金属が治具外にこぼれたり飛散したりすることを防止しやすいので、セラミックス成形体100を効率的に含浸処理することができる。
【0072】
<工程3>
工程3は、焼成用治具200の第二載置面210bに、粉粒体状の金属300を載せることを含む。工程2と工程3の順序は問わない。工程2を行った後に工程3を行ってもよいし、工程3を先に行ってもよい。第一載置面210a及び第二載置面210bの配置、セラミックス成形体100の形状等を考慮して適宜決定すればよい。
【0073】
本明細書において、“粉粒体”とは粉体、粒体、又は両者の混合物を指し、レーザー回折法で粒度分布を測定したときの体積基準によるメジアン径(D50)が5000μm以下である粒子の集合体を指す。粉粒体状の金属のメジアン径の下限は、100μm以上であることが好ましく、200μm以上であることがより好ましく、800μm以上であることが更により好ましい。このように粉粒体状の金属のメジアン径を大きくすることで、含浸時に粉粒体状の金属に由来する付着物がセラミックス成形体の表面に強固にこびり付くのを抑制しやすくなる。また、粉粒体状の金属のメジアン径の上限は、3000μm以下であることが好ましく、2000μm以下であることがより好ましく、1000μm以下であることが更により好ましい。従って、粉粒体状の金属のメジアン径は、例えば100~3000μmであることが好ましく、200~2000μmであることがより好ましく、800~1000μmであることが更により好ましい。
【0074】
図3の部分拡大図には、粉粒体状の金属300とセラミックス成形体100の内周壁119との接触点が模式的に描写されている。粉粒体状の金属300の粒径が大きい方が接触点同士の距離が大きくなり、粉粒体状の金属300とセラミックス成形体100の内周壁119の間に隙間が生じやすいことが理解できる。そのため、粉粒体状の金属300の粒径を大きくすることで、粉粒体状の金属300とセラミックス成形体100の内周壁119の間の密着性を低くすることができることが理解できるであろう。よって、後で述べる工程4を実施することで、過剰な粉粒体状の金属300が内周壁119の表面に付着した場合でも、粉粒体状の金属300を除去し易くなる。粉粒体状の金属300の具体的な粒度に関しては上述した通りである。
【0075】
粉粒体状の金属の種類には特段の制約はないが、金属珪素、モリブデン、タングステン、ベリリウム、クロム、鉄、アルミニウム、ニッケル、マンガン、銀、銅、バナジウム、コバルト、タンタル、ニオブ、チタン、及びマグネシウムから選択される一種以上を含有することが好ましく、金属珪素を含有することがより好ましい。粉粒体状の金属は、金属を一種のみ含有してもよいし、二種以上組み合わせて含有してもよい。粉粒体状の金属は、単体金属を含有してもよいし、合金を含有してもよい。また、計量時の流動性を高めたり、載置時に粉粒体を構成する粒子同士の過剰な接触を防ぎ、より除去性を高めるために、粉粒体状金属の30質量%以下程度の助剤を含んでいてもよい。助剤としては、例えば炭素数が20個以下の糖類、あるいは炭素などが望ましい。特に、セラミックス成形体が炭化珪素を含有するときは、粉粒体状の金属が金属珪素を含有することが好ましい。粉粒体状の金属は、粉粒体状の金属中、金属珪素を50質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することがより好ましく、90質量%以上含有することが更により好ましく、99質量%以上含有してもよい。
【0076】
<工程4>
工程4は、第一載置面210aにセラミックス成形体100を、第二載置面210bに粉粒体状の金属300をそれぞれ載せた状態で、金属300の融点以上に加熱することで、金属300をセラミックス成形体100内に含浸しながら焼成して金属含浸セラミックス焼成体を得ることを含む。工程4において粉粒体状の金属300が溶融すると、毛細管現象によりセラミックス成形体の内部に順次染み込んでいく。粉粒体状の金属300の量は、焼成時のセラミックス成形体の内部の気孔容積を考慮して適宜設定すればよいが、気孔容積の50%以上とすることが好ましく、70%以上とすることがより好ましく、90%以上とすることが更により好ましい。上限は120%以下、好ましくは110%以下、さらに好ましくは105%以下とすれば、含浸後の付着物の生成を抑えられ、ひいては含浸量が過剰となる事態そのものを回避することができる。
【0077】
セラミックス成形体100が脱脂前のものである場合は、脱脂と焼成を連続的に実施することで効率的に金属含浸セラミックス焼成体を製造可能である。使用する焼成炉は、特に限定されないが、電気炉、ガス炉等を用いることができる。
【0078】
脱脂は、例えば、セラミックス成形体に含まれる成形助剤の種類及び添加量、一窯当たりの詰め量に応じた雰囲気及び温度、時間で適宜設定すればよいが、成形助剤の分解温度以上であることが必要である。焼成は、例えば、セラミックス成形体に含まれるセラミックスの種類に応じた雰囲気及び温度、時間で適宜設定すればよいが、粉粒体状の金属の融点以上であることが必要である。含浸用の金属の融点をM℃とし、工程4の加熱時における最高温度をT1℃とすると、例えば、M≦T1≦M+300とすることが好ましく、M+20≦T1≦M+200とすることがより好ましく、M+40≦T1≦M+150とすることが更により好ましい。ただし、この範囲にあってもセラミックス成形体を構成するセラミックスの焼結温度未満となるべきである。例えば、セラミックス成形体が炭化珪素を含有し、含浸用の金属として金属珪素を使用するときは、最高温度T1を1420~1720℃とすることが好ましく、1440~1620℃とすることがより好ましく、1460~1570℃とすることが更により好ましい。融点以上に加熱された粉粒体状の金属は融解し、毛細管現象によってハニカム成形体中の気孔に次々に入り込むことで含浸処理が行われる。加熱後、金属含浸セラミックス焼成体を室温まで冷却する。
【0079】
金属含浸セラミックス焼成体の気孔率は含浸量が多くなるほど低下する。金属含浸セラミックス焼成体の気孔率は、強度、熱伝導率の確保のため、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更により好ましい。金属含浸セラミックス焼成体の気孔率は0%でもよい。気孔率は、JIS R1634:1998に規定する開気孔率の測定方法(アルキメデス法)により測定するが、気孔率が10%を超えるときは、JIS R1655:2003に準拠して水銀圧入法によって測定される。
【0080】
金属含浸セラミックス焼成体がハニカム構造部を有する場合、セルの延びる方向に垂直な断面におけるセル密度(単位面積当たりのセルの数)は、特に限定されないが、好ましくは4~320セル/cm2である。セル密度を4セル/cm2以上とすることにより、隔壁113の強度、ひいては金属含浸セラミックス焼成体自体の強度及び有効GSA(幾何学的表面積)を十分に確保することができる。また、セル密度を320セル/cm2以下とすることにより、セル内に流体が流れる際の圧力損失の増大を抑制することができる。セル密度は、金属含浸セラミックス焼成体のハニカム構造部が有するセル数を中空部、外周壁及び内周壁を除く一方の端面の面積で除することで算出される。
【0081】
隔壁113の厚みは、特に限定されないが、例えば金属含浸セラミックス焼成体を熱交換器として使用する場合、好ましくは0.1~1.0mm、より好ましくは0.2~0.6mmである。隔壁113の厚みを0.1mm以上とすることにより、金属含浸セラミックス焼成体の機械的強度を十分なものとすることができる。また、隔壁113の厚さを1.0mm以下とすることにより、開口面積の低下によってセル115に流体を流した時の圧力損失が大きくなったり、流体との接触面積の低下によって熱回収効率が低下したりするなどの問題を抑制することができる。
【0082】
外周壁112及び内周壁119の厚みは、特に限定されないが、隔壁113の厚みよりも大きいことが好ましい。このような構成とすることにより、流体間の温度差による熱応力などによって破壊(例えば、ひび、割れなど)が起こり易い外周壁112及び内周壁119の強度を高めることができる。外周壁112及び内周壁119の厚みは、特に限定されず、用途などに応じて適宜調整すればよい。例えば、外周壁112及び内周壁119の厚みは、金属含浸セラミックス焼成体を一般的な熱交換用途に用いる場合は、好ましくは0.3mm~10mm、より好ましくは0.5mm~5mm、更に好ましくは1mm~3mmである。また、金属含浸セラミックス焼成体を蓄熱用途に用いる場合は、外周壁112の厚みを10mm以上として外周壁112の熱容量を増大させてもよい。
【実施例0083】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を例示するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
(1.円柱状の坏土の作製)
炭化珪素(SiC)粉末にバインダ、造孔材等の成形助剤を添加すると共に、水を添加して成形原料とした。そして、成形原料を真空土練機により混練し、円柱状の坏土を作製した。
【0084】
(2.セラミックス成形体の作製)
得られた円柱状の坏土を所定の口金構造を有する押出成形機を用いて成形し、セルの延びる方向に垂直な断面における各セル形状が図2に示すように、各セルが中心側から外周側に向かって伸びる一対の直線状隔壁面と、同心の一対の弧状隔壁面とによって区画形成されるハニカム構造部を有する中空円柱状の未乾燥セラミックス成形体を得た。この未乾燥セラミックス成形体を熱風乾燥機を用いて120℃で12時間以上乾燥し、両端面を所定量切断した。これにより、高さ25mm×内径66mm×外径86mmの中空円柱状の乾燥したセラミックス成形体を下記の試験に必要な数だけ作製した。
【0085】
(3.焼成用治具の作製)
図3に示す構造のカーボン製の焼成用治具をCIP材からの削り出しで作製した。この焼成用治具は、平面視形状が円形状であり、中央に円錐状の突起部を有する。また、この焼成用治具の外周部には周壁が立設されている。具体的な寸法は図9に示す通りである。また、この焼成用治具の載置面及び内側の壁面(周壁の内面)は窒化ホウ素を含有するコーティング層で被覆した。
スロープSの平均勾配θは、約20°であった。
【0086】
(4.含浸焼成)
上記で作製した中空円柱状の乾燥したセラミックス成形体を、中空部及びセルの延びる方向が鉛直方向に平行となるように、上記で作製した焼成用治具の載置面に同心円状に置いた。
第一載置面210aの最下点から突起部230の頂上までの高さh1の、第一載置面210aの最下点からセラミックス成形体100の頂上までの高さh2に対する割合(h1/h2)は、10/25=40%であった。
第一載置面210aの最下点から壁面220の頂上までの高さh3の、第一載置面210aの最下点からセラミックス成形体100の頂上までの高さh2に対する割合(h3/h2)は、4/25=16%であった。
【0087】
次いで、治具に置かれた中空円柱状のセラミックス成形体の中空部に、メジアン径(D50)が200μmの金属珪素粉末を配置した。金属珪素粉末のメジアン径(D50)はHORIBA社製のレーザー回折粒度分布測定器(型式LA960)で測定した。配置した金属珪素粉末の質量は、セラミックス成形体の質量を100質量部としたときに50質量部とした。
【0088】
次いで、治具に置かれた状態の中空円柱状のセラミックス成形体を焼成炉に装入し、窒素雰囲気下で600℃×24hrの加熱条件で脱脂した。脱脂後は冷却することなくそのまま温度を上昇させてアルゴン雰囲気下で1500℃×2hrの加熱条件で含浸焼成した。焼成後は、Si含浸炭化珪素焼成体を室温まで冷却し、焼成炉から取り出した。
【0089】
得られた各試験例に係るSi含浸炭化珪素焼成体は以下の仕様を有する。
全体形状:高さ25mm×内径66mm×外径86mmの中空円柱状
外周壁厚み:2mm
内周壁厚み:2mm
セル密度:56セル/cm2
隔壁の厚み:0.3mm
気孔率:5%
【0090】
焼成後の治具の載置面に残留した金属珪素に由来する残留物の重量を調査し、焼成前に中空部に配置した金属珪素粉末との重量比を算出した。
【0091】
更に上記試験を同じ条件で3回実施してそれぞれ、焼成前に中空部に配置した金属珪素粉末に対する焼成後に治具の載置面に残留した金属珪素に由来する残留物の重量比を算出した。このようにして算出された重量比の平均値を算出したところ、0.3%であった。また、重量比の最小値は0%、最大値は1%であった。
【0092】
(比較例)
円錐状の突起部を平坦にした他は実施例と同じ構造の焼成用治具を使用して、実施例と同じ条件で10個の中空円柱状のセラミックス成形体を焼成する試験を行った。それぞれの試験について、焼成前に中空部に配置した金属珪素粉末に対する焼成後の治具の載置面に残留した金属珪素に由来する残留物の重量比を算出した。このようにして算出された重量比の平均値を算出したところ、79%であった。また、重量比の最小値は3%、最大値は90%であった。
【0093】
上記の結果より、実施例に係る焼成用治具を用いて金属含浸セラミックス焼成体を製造すると、含浸工程後に治具の底面に粉粒体状の金属に由来する残留物が残留しにくくなるので歩留まりが向上することが分かる。また、所望の含浸量を有する金属含浸セラミックス焼成体を安定して製造することができることが分かる。
【符号の説明】
【0094】
100 :セラミックス成形体
110 :ハニカム構造部
112 :外周壁
113 :隔壁
113a :隔壁面
113b :隔壁面
114 :端面
115 :セル
116 :端面
117 :中空部
118 :仕切り板
119 :内周壁
200 :焼成用治具
210a :第一載置面
210b :第二載置面
220 :壁面
230 :突起部
240 :多孔質支持具
300 :金属
310 :上端
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9