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特開2024-82642画像表示パネル用セット、画像表示パネル及び画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082642
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】画像表示パネル用セット、画像表示パネル及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20240613BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
G09F9/30 349E
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196619
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】米澤 一晃
(72)【発明者】
【氏名】小野 寛大
(72)【発明者】
【氏名】木村 智之
【テーマコード(参考)】
2H149
5C094
【Fターム(参考)】
2H149AA18
2H149AB12
2H149AB13
2H149BA02
2H149FA02X
2H149FA03W
2H149FA08X
2H149FA12Z
2H149FA63
2H149FA66
2H149FD25
5C094AA21
5C094BA27
5C094BA43
5C094DA13
5C094ED14
5C094JA01
(57)【要約】
【課題】光学積層体の側面に導通構造を形成した画像表示パネルであって、耐環境性能に優れる画像表示パネルの製造に適した画像表示パネル用セットを提供する。
【解決手段】提供される画像表示パネル用セットは、ヨウ素を含む偏光子を含む光学積層体と、導電性ペーストとを備える。前記導電性ペーストの硬化層を側面に形成した前記光学積層体に対して温度85℃、相対湿度85%及び試験時間240時間の湿熱試験を実施し、前記湿熱試験後の前記光学積層体におけるヨウ素を含む析出物を評価したときに、前記硬化層が形成された前記側面に対して垂直な方向への前記側面からの前記析出物の最大析出距離が700μm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素を含む偏光子を含む光学積層体と、導電性ペーストと、を備える画像表示パネル用セットであって、
前記導電性ペーストの硬化層を側面に形成した前記光学積層体に対して温度85℃、相対湿度85%及び試験時間240時間の湿熱試験を実施し、前記湿熱試験後の前記光学積層体におけるヨウ素を含む析出物を評価したときに、
前記硬化層が形成された前記側面に対して垂直な方向への前記側面からの前記析出物の最大析出距離が700μm以下である、
画像表示パネル用セット。
【請求項2】
前記最大析出距離が500μm以下である、請求項1に記載のセット。
【請求項3】
前記析出物が、ヨウ素と、前記導電性ペーストに含まれる導電成分との化合物を含む、請求項1に記載のセット。
【請求項4】
前記偏光子におけるヨウ素の濃度が5重量%以下である、請求項1に記載のセット。
【請求項5】
前記光学積層体が粘着シートをさらに含む、請求項1に記載のセット。
【請求項6】
前記粘着シートの吸水率が1.5重量%以上である、請求項5に記載のセット。
【請求項7】
画像形成層と、前記画像形成層の視認側に配置された光学積層体と、を備えると共に、前記光学積層体の側面に導通構造を有する画像表示パネルであって、
前記光学積層体は、ヨウ素を含む偏光子を含み、
前記導通構造は、導電性ペーストの硬化層を含み、
温度85℃、相対湿度85%及び試験時間240時間の湿熱試験を実施し、前記湿熱試験後の前記光学積層体におけるヨウ素を含む析出物を評価したときに、
前記導通構造が形成された前記側面に対して垂直な方向への前記側面からの前記析出物の最大析出距離が700μm以下である、
画像表示パネル。
【請求項8】
前記画像形成層がインセル型画像表示セルである、請求項7に記載の画像表示パネル。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の画像表示パネルを備える画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示パネル用セット、画像表示パネル及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置及びエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。これら各種の画像表示装置は、通常、液晶層、EL発光層等の画像形成層と、画像形成層上に配置された光学フィルムを含む光学積層体と、を備えた画像表示パネルを備えている。光学フィルムの典型例は偏光フィルムである。
【0003】
画像表示装置において静電気が問題となることがある。静電気は、画像表示装置の製造時、例えば粘着シートを介して光学積層体を画像形成層に貼り合わせるとき、又は、使用時、例えば使用者が画像表示装置に触れるとき、に生じやすい。静電気の発生は、画像表示装置の表示不良をもたらしうる。また、近年、タッチパネルを備えた画像表示装置やタッチセンサーを画像表示パネルに内蔵した画像表示装置が普及している。これらの画像表示装置において静電気は、タッチパネル及びタッチセンサーの誤作動をもたらしうる。特許文献1は、静電気による帯電を防止するために、粘着シートに帯電防止剤を添加することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2011-528448公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
帯電を十分に抑制する観点からは、光学積層体の側面に導通構造を形成した画像表示パネルとすることが考えられる。導通構造は、例えば、導電性ペーストの塗布及び硬化により形成できる。一方、車載用途を典型例として、画像表示装置に対する耐環境性能への要求がますます強くなっており、例えば、非常に過酷な環境下での使用を想定した湿熱試験をクリアできる性能が求められつつある。本発明者らの検討によれば、湿熱試験の条件を厳しくした場合には、光学積層体の側面に導通構造を形成した画像表示パネルにおいて、導通構造を持たないパネルには見られない特有の表示画像の劣化が生じうることが判明した。
【0006】
本発明は、光学積層体の側面に導通構造を形成した画像表示パネルであって、耐環境性能に優れる画像表示パネルの製造に適した画像表示パネル用セットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
ヨウ素を含む偏光子を含む光学積層体と、導電性ペーストと、を備える画像表示パネル用セットであって、
前記導電性ペーストの硬化層を側面に形成した前記光学積層体に対して温度85℃、相対湿度85%及び試験時間240時間の湿熱試験を実施し、前記湿熱試験後の前記光学積層体におけるヨウ素を含む析出物を評価したときに、
前記硬化層が形成された前記側面に対して垂直な方向への前記側面からの前記析出物の最大析出距離が700μm以下である、
画像表示パネル用セット、
を提供する。
【0008】
別の側面から本発明は、
画像形成層と、前記画像形成層の視認側に配置された光学積層体と、を備えると共に、前記光学積層体の側面に導通構造を有する画像表示パネルであって、
前記光学積層体は、ヨウ素を含む偏光子を含み、
前記導通構造は、導電性ペーストの硬化層を含み、
温度85℃、相対湿度85%及び試験時間240時間の湿熱試験を実施し、前記湿熱試験後の前記光学積層体におけるヨウ素を含む析出物を評価したときに、
前記導通構造が形成された前記側面に対して垂直な方向への前記側面からの前記析出物の最大析出距離が700μm以下である、
画像表示パネル、
を提供する。
【0009】
別の側面から本発明は、
上記本発明の画像表示パネルを備える画像表示装置、
を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光学積層体の側面に導通構造を形成した画像表示パネルであって、耐環境性能に優れる画像表示パネルの製造に適した画像表示パネル用セットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の画像表示パネル用セットが備えうる光学積層体の一例を模式的に示す断面図である。
図2図2は、光学積層体における析出物の最大析出距離Bの評価方法を説明するための模式図である。
図3図3は、光学積層体における析出物の最大析出距離Bの評価方法を説明するための模式図である。
図4図4は、本発明の画像表示パネル用セットが備えうる光学積層体の一例を模式的に示す断面図である。
図5図5は、本発明の画像表示パネル用セットが備えうる光学積層体の一例を模式的に示す断面図である。
図6図6は、本発明の画像表示パネル用セットが備えうる光学積層体の一例を模式的に示す断面図である。
図7図7は、本発明の画像表示パネル用セットが備えうる光学積層体の一例を模式的に示す断面図である。
図8図8は、本発明の画像表示パネル用セットが備えうる光学積層体の一例を模式的に示す断面図である。
図9A図9Aは、本発明の画像表示パネルの一例を模式的に示す断面図である。
図9B図9Bは、本発明の画像表示パネルの一例を模式的に示す断面図である。
図9C図9Cは、本発明の画像表示パネルの一例を模式的に示す断面図である。
図9D図9Dは、本発明の画像表示パネルの一例を模式的に示す断面図である。
図9E図9Eは、本発明の画像表示パネルの一例を模式的に示す断面図である。
図9F図9Fは、本発明の画像表示パネルの一例を模式的に示す断面図である。
図10図10は、実施例1の画像表示パネルについて、湿熱試験後の析出物の状態を確認するために取得した観察像である。
図11図11は、実施例4の画像表示パネルについて、湿熱試験後の析出物の状態を確認するために取得した観察像である。
図12図12は、実施例6の画像表示パネルについて、湿熱試験後の析出物の状態を確認するために取得した観察像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1態様にかかる画像表示パネル用セットは、
ヨウ素を含む偏光子を含む光学積層体と、導電性ペーストと、を備える画像表示パネル用セットであって、
前記導電性ペーストの硬化層を側面に形成した前記光学積層体に対して温度85℃、相対湿度85%及び試験時間240時間の湿熱試験を実施し、前記湿熱試験後の前記光学積層体におけるヨウ素を含む析出物を評価したときに、
前記硬化層が形成された前記側面に対して垂直な方向への前記側面からの前記析出物の最大析出距離が700μm以下である。
【0013】
本発明の第2態様において、例えば、第1態様にかかる画像表示パネル用セットでは、前記最大析出距離が500μm以下である。
【0014】
本発明の第3態様において、例えば、第1又は第2態様にかかる画像表示パネル用セットでは、前記析出物が、ヨウ素と、前記導電性ペーストに含まれる導電成分との化合物を含む。
【0015】
本発明の第4態様において、例えば、第1から第3態様のいずれか1つの態様にかかる画像表示パネル用セットでは、前記偏光子におけるヨウ素の濃度が5重量%以下である。
【0016】
本発明の第5態様において、例えば、第1から第4態様のいずれか1つの態様にかかる画像表示パネル用セットでは、前記光学積層体が粘着シートをさらに含む。
【0017】
本発明の第6態様において、例えば、第5態様にかかる画像表示パネル用セットでは、前記粘着シートの吸水率が1.5重量%以上である。
【0018】
本発明の第7態様にかかる画像表示パネルは、
画像形成層と、前記画像形成層の視認側に配置された光学積層体と、を備えると共に、前記光学積層体の側面に導通構造を有する画像表示パネルであって、
前記光学積層体は、ヨウ素を含む偏光子を含み、
前記導通構造は、導電性ペーストの硬化層を含み、
温度85℃、相対湿度85%及び試験時間240時間の湿熱試験を実施し、前記湿熱試験後の前記光学積層体におけるヨウ素を含む析出物を評価したときに、
前記導通構造が形成された前記側面に対して垂直な方向への前記側面からの前記析出物の最大析出距離が700μm以下である。
【0019】
本発明の第8態様において、例えば、第7態様に係る画像表示パネルでは、前記画像形成層がインセル型画像表示セルである。
【0020】
本発明の第9態様にかかる画像表示装置は、第7又は第8態様にかかる画像表示パネルを備える。
【0021】
以下、本発明の詳細を説明する。以下の説明は、本発明を特定の実施形態に制限する趣旨ではない。
【0022】
[画像表示パネル用セット]
本実施形態の画像表示パネル用セットは、光学積層体と導電性ペーストとを備える。本実施形態の画像表示パネル用セットが備えうる光学積層体の一例を図1に示す。図1の光学積層体10(10A)は、偏光子1と、偏光子1上に配置された透明保護フィルム2とを含む。光学積層体10は、偏光フィルム3として機能しうる。偏光子1はヨウ素を含み、典型的には、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムにヨウ素を吸着させて一軸延伸したフィルムである。ただし、ヨウ素を含む限り、偏光子1は上記例に限定されない。
【0023】
光学積層体10Aと、本実施形態の画像表示パネル用セットに含まれる導電性ペーストとを用いて、導電性ペーストの硬化層11を側面12に形成した光学積層体13を形成できる(図2参照)。光学積層体13に対して温度85℃、相対湿度85%及び試験時間240時間の湿熱試験(以下、湿熱試験Aと記載する)を実施し、湿熱試験Aの後の光学積層体13についてヨウ素を含む析出物を評価したときに、当該析出物の最大析出距離(以下、最大析出距離Bと記載する)は700μm以下である。
【0024】
最大析出距離Bの評価方法について、図3を参照しながら説明する。光学積層体10の側面12に硬化層11を形成して、湿熱試験の対象となる光学積層体13を準備する。硬化層11は、導電性ペーストを側面12に塗布し、塗布層を乾燥して形成できる。加熱により塗布層を乾燥してもよい。乾燥は、導電性ペーストの種類によるが、例えば90~150℃の加熱により実施できる。使用した導電性ペーストに乾燥条件の指定がある場合は、指定された条件に従ってもよい。硬化層11は、光学積層体10の厚さ方向の全体にわたると共に、側面12に沿う方向の幅が30mm以上、かつ、側面12からの厚さが100μm以上となるように形成することが好ましい。
【0025】
次に、準備した光学積層体13に対して湿熱試験Aを実施する。湿熱試験Aの条件は、温度85℃、相対湿度85%及び試験時間240時間とする。湿熱試験Aは、上記温度及び相対湿度を維持可能な恒温恒湿装置に光学積層体13を収容して実施できる。湿熱試験Aは、光学積層体13を基板に固定した状態で実施してもよい。基板は、ガラスシートであってもよく、画像形成層や画像形成層に含まれる基板(例えば、後述の第1透明基板や第2透明基板)であってもよい。ガラスシートを構成するガラスは、無アルカリガラスが好ましい。基板への固定には、粘着シート(例えば、後述の粘着シート4)を利用できる。次に、湿熱試験A後の光学積層体13における硬化層11が形成された側面12の近傍を、光学積層体13の主面に垂直な方向から平面視して、ヨウ素を含む析出物14の析出の状態を観察する。観察は、少なくとも側面12に沿う方向に10mm以上の範囲で実施する。観察には、光学顕微鏡等の拡大観察機器を利用できる。析出物14は、典型的には、硬化層11が形成された側面12に対して垂直な方向Dに側面12から延びる1又は2以上の帯状物として観察される。観察された析出物14のうち、側面12から方向Dに最も延びた析出物14Aについて側面12から析出物14Aの先端までの距離を測定し、当該距離を最大析出距離Bとして特定できる。なお、析出物14がヨウ素を含むことは、種々の公知の評価法、例えばエネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)、により確認できる。
【0026】
本発明者らの検討によれば、光学積層体の側面に導通構造を形成した画像表示パネルにおいて湿熱試験の条件を厳しくしたときに特有の表示画像の劣化は、主として、導通構造が形成された側面12からの析出物14の析出により生じている。析出物14は、上記厳しい湿熱条件において、偏光子1に含まれるヨウ素が偏光子1の内部、偏光子1と偏光子1に隣接する他の層との界面、あるいは、偏光子1に隣接する他の層の内部を移動しやすくなることにより生じている可能性がある。析出物14は、例えば、ヨウ素と、導電性ペーストに含まれる導電成分との化合物を含む。導電成分の例は、金属である。ただし、析出物14は、ヨウ素を含むと共に、上記評価方法により観察可能である限り、上記例に限定されない。析出物14の析出が抑えられた光学積層体13を形成しうる本実施形態の画像表示パネル用セットは、耐環境性能に優れる画像表示パネルの製造に適している。
【0027】
最大析出距離Bは、650μm以下、600μm以下、550μm以下、500μm以下、450μm以下、400μm以下、350μm以下、300μm以下、250μm以下、200μm以下、150μm以下、100μm以下、50μm以下、30μm以下、20μm以下、さらには10μm以下であってもよい。最大析出距離Bは0μmであってもよく、換言すれば、湿熱試験Aによっても析出物14が析出しない画像表示パネル用セットであってもよい。
【0028】
最大析出距離Bは、例えば、偏光子1の構成、導電性ペーストの構成、及び、光学積層体10の構成によって様々に変化しうる。最大析出距離Bに影響しうる偏光子1の構成の例は、偏光子1におけるヨウ素の濃度、及び、偏光子1の厚さである。最大析出距離Bに影響しうる導電性ペーストの構成の例は、導電性ペーストに含まれる導電成分の種類、導電性ペーストにおける導電成分の含有率、及び、硬化層11の表面の親水性の程度である。最大析出距離Bに影響しうる光学積層体10の構成の例は、光学積層体10の厚さに占める偏光子1の厚さの割合、及び、光学積層体10が偏光子1以外の他の層をさらに含む場合には当該他の層の構成である。他の層の例は、透明保護フィルム、並びに、後述の粘着シート及び光学フィルムである。本発明者らの検討によれば、例えば、透明保護フィルム2の透湿度が低いことは、湿熱環境下におけるヨウ素の移動の抑制、及びこれによる最大析出距離Bの抑制に寄与しうる。また、粘着シートの吸水性が高いことは、最大析出距離Bの抑制に寄与しうる。さらに、検討によれば、他の層に含まれうる添加剤の種類及び含有率は、最大析出距離Bに影響しうる。添加剤の一例は、帯電防止剤及び導電性ポリマーである。例えば、金属及び/又は金属イオン(例えば、リチウムイオン)を含む添加剤は、ヨウ素から析出物14が生じる反応を阻害する可能性がある。
【0029】
偏光子1の厚さは、例えば100μm以下であり、90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、25μm以下、さらには20μm以下であってもよい。偏光子1の厚さの下限は、例えば1μm以上であり、3μm以上、5μm以上、6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上、さらには10μm以上であってもよい。
【0030】
偏光子1におけるヨウ素の濃度は、例えば10重量%以下であり、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4.5重量%以下、4重量%以下、3.5重量%以下、3重量%以下、2.5重量%以下、さらには2重量%以下であってもよい。ヨウ素の濃度の下限は、例えば0.5重量%以上であり、1重量%以上、さらには1.5重量%以上であってもよい。偏光子1におけるヨウ素の濃度は、EDXにより評価できる。
【0031】
図1の光学積層体10Aは、透明保護フィルム2を含む。光学積層体10Aにおいて、偏光子1と透明保護フィルム2とは互いに接するように積層されている。透明保護フィルム2は、偏光子1を保護する機能を有しうる。
【0032】
透明保護フィルム2には、例えば、熱可塑性樹脂を使用できる。透明保護フィルム2に使用可能な熱可塑性樹脂の例は、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、及び、これらの混合樹脂である。透明保護フィルム2は、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂又は紫外線硬化型樹脂のフィルムであってもよい。透明保護フィルム2は、任意の添加剤を1種類以上含んでいてもよい。
【0033】
図1の光学積層体10Aは、偏光子1の片面に配置された1つの透明保護フィルム2を含む。図4に示すように、本実施形態の光学積層体10(10B)は、偏光子1の双方の主面に各々配置された2つの透明保護フィルム2(2A,2B)を含んでいてもよい。換言すれば、偏光子1は、2つの透明保護フィルム2A,2Bの間に配置されていてもよい。図4の偏光子1と、各々の透明保護フィルム2A,2Bとは互いに接している。透明保護フィルム2A,2Bの材料は、同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、一方の透明保護フィルム2A(又は2B)が熱可塑性樹脂フィルムであり、他方の透明保護フィルム2B(又は2A)が熱硬化性樹脂フィルム又は紫外線硬化性樹脂フィルムであってもよい。
【0034】
透明保護フィルム2は、防眩特性、反射防止特性等の光学特性を有していてもよい。透明保護フィルム2は、位相差フィルムとして機能するフィルムであってもよい。
【0035】
透明保護フィルム2における偏光子側の面と対向する面には、ハードコート層が設けられていてもよい。また、対向する面には、反射防止、スティッキング防止、拡散、アンチグレア等を目的とした各種の処理が施されていてもよい。
【0036】
偏光子1と透明保護フィルム2とは、接着剤により貼り合わされていてもよい。接着剤の例は、水系、溶剤系、ホットメルト系、ラジカル硬化型、カチオン硬化型等の各種の接着剤である。好ましい接着剤は、水系接着剤及びラジカル硬化型接着剤である。ただし、光学的に透明である限り、接着剤は上記例に限定されない。
【0037】
透明保護フィルム2の厚さは、適宜に決定しうるが、強度、取扱性等の作業性、及び薄膜性の観点からは、10~200μm程度であってもよい。
【0038】
偏光フィルム3の厚さは、例えば、10μm~500μmである。偏光フィルム3の全光線透過率は、特に限定されず、例えば30%~50%である。
【0039】
導電性ペーストは、典型的には、バインダー樹脂と、バインダー樹脂中に分散された導電性粒子とを含む。導電性粒子を含む導電性ペーストにおいて、主たる導電成分は、通常、導電性粒子である。バインダー樹脂の例は、熱硬化性樹脂である。熱硬化性樹脂の例は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂である。導電性粒子の例は、金属粒子、金属酸化物粒子及びカーボン粒子である。導電性粒子に含まれうる金属の例は、金、白金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、亜鉛、リチウム、マグネシウム及びコバルトである。導電性粒子は、上記各種の金属の粒子又はその酸化物の粒子であってもよい。ただし、画像表示パネルに使用できる限り、導電性ペースト、バインダー樹脂、導電性粒子、及び、導電性粒子に含まれうる金属は、上記例に限定されない。
【0040】
導電性ペーストは、バインダー樹脂及び導電性粒子以外の材料、例えば添加剤、をさらに含んでいてもよい。
【0041】
導電性ペーストにおける導電成分の含有率は、例えば47重量%以上であり、49重量%以上、50重量%以上、52重量%以上、54重量%以上、55重量%以上、56重量%以上、さらには57重量%以上であってもよい。含有率の上限は、例えば80重量%以下であり、75重量%以下、73重量%以下、70重量%以下、69重量%以下、67重量%以下、65重量%以下、63重量%以下、さらには60重量%以下であってもよい。
【0042】
導電性ペーストについて水の接触角は、例えば90°以上であり、91°以上、92°以上、93°以上、94°以上、さらには95°以上であってもよい。接触角の上限は、例えば115°以下であり、113°以下、111°以下、110°以下、108°以下、106°以下、105°以下、103°以下、101°以下、さらには100°以下であってもよい。ある程度大きな接触角を有する導電性ペーストの使用によって、湿熱環境下における導通構造への透湿を抑制できる。このため、上記接触角を有する導電性ペーストは、ヨウ素と、導電性ペーストに含まれる導電成分との化合物の生成を抑制することに適している。接触角は、ガラスシートの表面に導電性ペーストの硬化層11を形成し、その表面に体積10μLの純水を滴下して、滴下より5分が経過した後の水滴の接触角として、日本産業規格(以下、JISと記載する)R3257に定められた液滴法に準拠して測定できる。
【0043】
導電性ペーストにより形成された硬化層11の体積抵抗率は、例えば1×10-4Ω・m以下であり、8×10-5Ω・m以下、5×10-5Ω・m以下、3×10-5Ω・m以下、さらには1×10-5Ω・m以下であってもよい。体積抵抗率の下限は、例えば1×10-2Ω・m以上である。体積抵抗率は、JIS K6271:2008の規定に準拠して測定できる。
【0044】
光学積層体10は、図1及び図4の例に限定されない。光学積層体10は、偏光子1及び透明保護フィルム2以外の他の層を含んでいてもよい。他の層を含む光学積層体10の一例を図5に示す。図5の光学積層体10Cは、粘着シート4をさらに含む。光学積層体10Cは、透明保護フィルム2、偏光子1及び粘着シート4がこの順に積層された積層構造を有する。粘着シート4は偏光子1に接している。光学積層体10Cは、粘着シート付き偏光フィルムでもある。
【0045】
粘着シート4は、粘着剤を含む層である。粘着シート4に含まれる粘着剤の例は、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、及びセルロース系粘着剤である。粘着剤は、光学的透明性に優れ、適切な濡れ性、凝集性、接着性等の粘着特性を有すると共に、耐候性、耐熱性等にも優れる観点から、アクリル系粘着剤であってもよい。換言すれば、粘着シート4は、アクリル系粘着シートであってもよい。以下、アクリル系粘着シートである粘着シート4について説明する。
【0046】
粘着シート4は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)をベースポリマーとして含む。粘着シート4は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を主成分として含んでいてもよい。(メタ)アクリル系ポリマー(A)を主成分として含む粘着シート4は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を主成分として含む粘着剤組成物(B)から形成された層であってもよい。また、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を主成分として含む粘着シート4は、(メタ)アクリル系単量体を含む単量体群及び/又は当該単量体群の部分重合物を含む光硬化性組成物(C)から形成された層であってもよい。本明細書において(メタ)アクリレートは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。主成分は、含有率の最も大きい成分を意味する。主成分の含有率は、例えば50重量%以上であり、60重量%以上、70重量%以上、さらには80重量%以上であってもよい。
【0047】
<(メタ)アクリル系ポリマー(A)>
(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を有していてもよい。アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)における主たる構成単位であってもよい。本明細書において主たる構成単位とは、ポリマーにおいて含有率の最も大きな構成単位を意味する。主たる構成単位の含有率は、例えば50重量%以上であり、60重量%以上、70重量%以上、さらには80重量%以上であってもよい。
【0048】
アルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基の炭素数は、特に限定されず、例えば1~30である。アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、環状であってもよい。アルキル基の例は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、2-エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、イソミリスチル基、ラウリル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、及びオクタデシル基である。アルキル(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。2種以上を組み合わせる場合は、アルキル基の平均炭素数は3~9であることが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートは、好ましくはブチルアクリレートである。
【0049】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)において、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位が主たる構成単位である場合、その含有率は、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、さらには80重量%以上であってもよい。
【0050】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、以下の化学式(1)に示す(メタ)アクリレートに由来する構成単位を有していてもよい。式(1)の(メタ)アクリレートに由来する構成単位は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)における主たる構成単位であってもよい。式(1)のR2は、水素原子又はメチル基である。式(1)のR3は、アルキル基である。アルキル基は、直鎖状であっても分岐を有していてもよい。R3は、好ましくは直鎖状のアルキル基である。R3の例は、メチル基及びエチル基である。式(1)のnは、1~15の整数である。
【0051】
【化1】
【0052】
式(1)の(メタ)アクリレートの例は、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート及びメトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートである。式(1)の(メタ)アクリレートに由来する構成単位は、粘着シート4の吸水性の向上に寄与しうる。
【0053】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)において、式(1)の(メタ)アクリレートに由来する構成単位が主たる構成単位である場合、その含有率は、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、さらには80重量%以上であってもよい。
【0054】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)を構成しうる単量体の別の例は、芳香環含有単量体、アミド基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、及び水酸基含有単量体からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体である。換言すれば、(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、芳香環含有単量体、アミド基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、及び水酸基含有単量体からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体に由来する構成単位を有していてもよい。これらの単量体は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0055】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、カルボキシル基含有単量体に由来する構成単位を有していてもよい。カルボキシル基含有単量体は、その構造中にカルボキシル基を含み、かつ(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性不飽和二重結合を含む化合物である。カルボキシル基含有単量体の例は、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸及びクロトン酸である。これらの中でも、共重合性、価格、及び粘着シートの粘着特性を向上させる観点から、アクリル酸が好ましい。
【0056】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、芳香環含有単量体に由来する構成単位を有していてもよい。芳香環含有単量体は、その構造中に芳香環構造を含み、かつ(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性不飽和二重結合を含む化合物である。芳香環の例は、ベンゼン環、ナフタレン環及びビフェニル環である。芳香環含有単量体は、好ましくは芳香環含有(メタ)アクリレートである。
【0057】
芳香環含有(メタ)アクリレートの例は、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性クレゾール(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート、クレジル(メタ)アクリレート、ポリスチリル(メタ)アクリレート等のベンゼン環を有するもの;ヒドロキシエチル化β-ナフトールアクリレート、2-ナフトエチル(メタ)アクリレート、2-ナフトキシエチルアクリレート、2-(4-メトキシ-1-ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレート等のナフタレン環を有するもの;ビフェニル(メタ)アクリレート等のビフェニル環を有するものである。これらの中でも、粘着シートの粘着特性や耐久性を向上させる観点から、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく、ベンジルアクリレートがより好ましい。
【0058】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、アミド基含有単量体に由来する構成単位を有していてもよい。アミド基含有単量体は、その構造中にアミド基を含み、かつ(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性不飽和二重結合を含む化合物である。アミド基含有単量体の例は、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロール-N-プロパン(メタ)アクリルアミド、アミノメチル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトメチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトエチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン等のN-アクリロイル複素環単量体;N-ビニルピロリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム等のN-ビニル基含有ラクタム系単量体である。これらの中でも、粘着シートの耐久性を向上させる観点から、N-ビニル基含有ラクタム系単量体が好ましい。
【0059】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、水酸基含有単量体に由来する構成単位を有していてもよい。水酸基含有単量体は、その構造中に水酸基を含み、かつ(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性不飽和二重結合を含む化合物である。水酸基含有単量体の例は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等の水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート;(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)-メチルアクリレート等の水酸基含有シクロアルキル(メタ)アクリレートである。これらの中でも、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0060】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)において、芳香環含有単量体、アミド基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、及び水酸基含有単量体からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体に由来する構成単位の含有率は、合計で、例えば0~30重量%であり、0.1~20重量%、さらには0.1~10重量%であってもよい。ただし、含有率は上記例に限定されない。
【0061】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)がカルボキシル基含有単量体に由来する構成単位を有する場合、当該構成単位の含有率は、特に限定されず、例えば0.1重量%以上であり、1重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、さらには4重量%以上であってもよい。含有率の上限は、例えば25重量%以下であり、20重量%以下、さらには10重量%以下であってもよい。(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、カルボキシル基含有単量体に由来する構成単位を有しなくてもよい。
【0062】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)が芳香環含有単量体に由来する構成単位を有する場合、当該構成単位の含有率は、特に限定されず、例えば3~25重量%であり、22重量%以下、さらには20重量%以下であってもよい。含有率の下限は、8重量%以上、さらには12重量%以上であってもよい。(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、芳香環含有単量体に由来する構成単位を有しなくてもよい。
【0063】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)がアミド基含有単量体に由来する構成単位を有する場合、当該構成単位の含有率は、特に限定されず、例えば0.1~10重量%であり、0.2~8重量%、さらには0.6~6重量%であってもよい。(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、アミド基含有単量体に由来する構成単位を有しなくてもよい。
【0064】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)が水酸基含有単量体に由来する構成単位を有する場合、当該構成単位の含有率は、特に限定されず、例えば1重量%以下であり、0.5重量%以下、さらには0.1重量%以下であってもよい。(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、水酸基含有単量体に由来する構成単位を有しなくてもよい。
【0065】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、上述した単量体以外の共重合単量体に由来する構成単位をさらに有しうる。共重合単量体は、例えば、粘着シートの接着性や耐熱性の改善を目的として使用できる。共重合単量体は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0066】
共重合単量体は、通常、(メタ)アクリロイル基又はビニル基等の不飽和二重結合を含む重合性官能基を有する。共重合単量体の例は、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有単量体;アクリル酸のカプロラクトン付加物;アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート等のスルホン酸基含有単量体;2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有単量体;アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系単量体;N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のマレイミド系単量体;N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルヘキシルイタコンイミド、N-シクロヘキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド等のイタコンイミド系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレート系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のグリコール系(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、2-メトキシエチルアクリレート等の(メタ)アクリレート単量体;3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4-ビニルブチルトリメトキシシラン、4-ビニルブチルトリエトキシシラン、8-ビニルオクチルトリメトキシシラン、8-ビニルオクチルトリエトキシシラン、10-メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10-アクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10-メタクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、10-アクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン等のケイ素原子を含有するシラン系単量体である。
【0067】
共重合単量体の別の例は、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の不飽和二重結合を2個以上有する多官能性単量体である。
【0068】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)が共重合単量体に由来する構成単位を有する場合、当該構成単位の含有率は、例えば10重量%以下であり、7重量%以下、さらには5重量%以下であってもよい。(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、共重合単量体に由来する構成単位を有しなくてもよい。
【0069】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は、通常、30万~400万である。耐久性の観点から、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は、100万以上であることが好ましく、150万以上であってもよい。(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は、300万以下であってもよく、200万以下であってもよい。重量平均分子量が30万以上であることが、耐熱性の点で好ましい。重量平均分子量が400万以下であると、粘着シートが硬くなりにくく、剥がれが発生しにくい傾向がある。分子量分布を意味する重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は、1.8~10であることが好ましく、1.8~7であることがより好ましく、1.8~5であることがさらに好ましい。分子量分布(Mw/Mn)が10以下であることが、耐久性の点で好ましい。重量平均分子量、分子量分布(Mw/Mn)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値から求めることができる。
【0070】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、溶液重合、電子線や紫外線(UV)等を用いた放射線重合、塊状重合、乳化重合といった各種の公知の重合方法により形成できる。重合は、典型的には、ラジカル重合である。(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれでもよい。ただし、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の形成方法は、上記例に限定されない。なお、粘着シートが光硬化性組成物(C)から形成された層である場合は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、主として、電子線やUV等を用いた放射線重合により形成される。
【0071】
溶液重合の重合溶媒には、例えば、酢酸エチル、トルエン等の公知の重合溶媒を使用できる。溶液重合は、例えば、重合開始剤を使用すると共に、窒素等の不活性ガス気流下で実施できる。重合条件は、例えば、50~70℃及び5~30時間である。
【0072】
ラジカル重合に使用する重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤等は、特に限定されず、適宜選択することが可能である。(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は、重合開始剤及び連鎖移動剤の種類及び使用量、並びに重合条件等により制御できる。
【0073】
重合開始剤の例は、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(例えば、和光純薬社製VA-057)等のアゾ系開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ-n-オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルハイドロパーオキシド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;過硫酸塩及び亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物及びアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせ等、過酸化物及び還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤である。ただし、重合開始剤は、上記例に限定されない。
【0074】
重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。重合開始剤の使用量は、合計で、単量体成分100重量部に対して、例えば0.005~1重量部であり、0.02~0.5重量部であってもよい。
【0075】
連鎖移動剤の例は、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2-メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグリコール酸2-エチルヘキシル、及び2,3-ジメルカプト-1-プロパノールである。連鎖移動剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。連鎖移動剤の使用量は、合計で、単量体成分100重量部に対して、例えば0.1重量部以下である。
【0076】
放射線重合では、単量体群に対して電子線、UV等の放射線を照射することにより重合を進行させて(メタ)アクリル系ポリマー(A)を形成する。光硬化性組成物(C)から粘着シートを形成する場合は、光硬化性組成物(C)に光を照射することにより重合を進行させて(メタ)アクリル系ポリマー(A)を形成する。放射線重合を電子線で行う場合は、光重合開始剤の使用は特に必要ではない。放射線重合をUVで行う場合は、重合時間を短縮できる等の利点から、光重合開始剤を使用してもよい。光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0077】
光重合開始剤の例は、ベンゾインエーテル系、アセトフェノン系、α-ケトール系、光活性オキシム系、ベンゾイン系、ベンジル系、ベンゾフェノン系、ケタール系、チオキサントン系等の各種の光重合開始剤である。ただし、光重合開始剤は、上記例に限定されない。光重合開始剤の使用量は、単量体成分100重量部に対して、例えば0.05~1.5重量部であり、0.1~1重量部であってもよい。
【0078】
<粘着剤組成物(B)>
粘着剤組成物(B)は、典型的には、乾燥により粘着シートを形成しうる組成物である。この場合、粘着剤組成物(B)から形成された粘着シートは、通常、溶剤型(熱硬化型とも称される)となる。
【0079】
粘着剤組成物(B)は架橋剤を含んでいてもよい。粘着剤組成物(B)が含みうる架橋剤の例は、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イミン系架橋剤、及び多官能性金属キレートである。粘着剤組成物(B)は、イソシアネート系架橋剤及び過酸化物系架橋剤を含むことが好ましく、イソシアネート系架橋剤を含むことがより好ましい。
【0080】
イソシアネート系架橋剤としては、少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物(イソシアネート化合物)を用いることができる。イソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の数は、3以上であることが好ましい。イソシアネート基の数の上限は、特に限定されず、例えば5である。イソシアネート化合物の例は、芳香族イソシアネート化合物、脂環族イソシアネート化合物、及び脂肪族イソシアネート化合物である。イソシアネート系架橋剤は、水との反応によって自己重合できる化合物が好ましい。
【0081】
芳香族イソシアネート化合物の例は、フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、及びキシリレンジイソシアネートである。
【0082】
脂環族イソシアネート化合物の例は、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、及び水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネートである。
【0083】
脂肪族イソシアネート化合物の例は、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、及び2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートである。
【0084】
イソシアネート系架橋剤は、上記イソシアネート化合物の多量体(2量体、3量体、5量体等)、トリメチロールプロパン等の多価アルコールに付加して得られた付加物、ウレア変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体、イソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等に付加して得られたウレタンプレポリマーであってもよい。
【0085】
イソシアネート系架橋剤は、好ましくは芳香族イソシアネート化合物及びその誘導体であり、より好ましくは、トリレンジイソシアネート及びその誘導体、換言すれば、トリレンジイソシアネート系(TDI系)架橋剤である。反応性の観点からは、TDI系架橋剤が、キシリレンジイソシアネート及びその誘導体、換言すれば、キシリレンジイソシアネート系(XDI系)架橋剤に比べて適している。イソシアネート系架橋剤は、TDI系架橋剤として、多価アルコール及びトリレンジイソシアネートの付加物を含んでいてもよい。付加物の具体例は、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物である。
【0086】
イソシアネート系架橋剤には市販品を使用できる。市販品の例は、ミリオネートMT、ミリオネートMTL、ミリオネートMR-200、ミリオネートMR-400、コロネートL、コロネートHL、コロネートHX(以上、東ソー社製)、タケネートD-101E、タケネートD-110N、タケネートD-120N、タケネートD-140N、タケネートD-160N、タケネートD-165N、タケネートD-170HN、タケネートD-178N、タケネート500、タケネート600(以上、三井化学社製)である。これらの中では、タケネートD-101Eが好ましい。
【0087】
イソシアネート系架橋剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0088】
粘着剤組成物(B)におけるイソシアネート系架橋剤の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、例えば0.01~20重量部である。配合量の下限は、0.05重量部以上、0.1重量部以上、さらには0.15重量部以上であってもよい。配合量の上限は、15重量部以下、13重量部以下、10重量部以下、8重量部以下、5重量部以下、3重量部以下、2重量部以下、1重量部以下、さらには0.5重量部以下であってもよい。
【0089】
粘着剤組成物(B)におけるイソシアネート系以外の架橋剤の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、2重量部以下が好ましく、1重量部以下がより好ましい。粘着シートの耐久性の観点から、粘着剤組成物(B)は、イソシアネート系以外の架橋剤、特にエポキシ系架橋剤、を実質的に含まなくてもよい。
【0090】
粘着剤組成物(B)は、公知の添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤の例は、シランカップリング剤、溶剤、着色剤、顔料、粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤(タッキファイヤー)、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機又は有機の充填剤、金属粉、粒子、及び箔状物である。制御できる範囲内で、還元剤を加えたレドックス系を使用してもよい。ただし、添加剤は上記例に限定されない。添加剤の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、合計で、例えば10重量部以下であり、5重量部以下、さらには1重量部以下であってもよい。
【0091】
粘着剤組成物(B)は、添加剤としてシランカップリング剤を含んでいてもよい。シランカップリング剤の例は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤である。
【0092】
粘着剤組成物(B)がシランカップリング剤を含む場合、その配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、例えば5重量部以下であり、3重量部以下、1重量部以下、0.5重量部以下、0.4重量部以下、0.2重量部以下、さらには0.1重量部以下であってもよい。配合量の下限は、特に限定されず、例えば0.02重量部以上である。粘着剤組成物(B)は、シランカップリング剤を含まなくてもよい。
【0093】
粘着剤組成物(B)は、光重合開始剤等の光硬化剤を実質的に含まなくてもよい。
【0094】
粘着シート4は、例えば、基材上に設けられた粘着剤組成物(B)の塗布膜を乾燥して形成できる。乾燥には加熱を利用できる。基材には、離型フィルムを用いてもよい。離型フィルム上に形成された粘着シート4は、例えば、偏光子1及び透明保護フィルム2等の光学積層体10が含みうる他の層に転写できる。基材は、偏光子1及び透明保護フィルム2等の光学積層体10が含みうる他の層であってもよい。ただし、粘着剤組成物(B)から粘着シート4を形成する方法は、上記例に限定されない。
【0095】
離型フィルムには、溶剤型の粘着シートを形成する際に使用可能な公知のフィルムを使用できる。
【0096】
塗布膜の乾燥温度は、例えば130℃以下であり、125℃以下、120℃以下、110℃以下、さらには100℃以下であってもよい。乾燥温度は、例えば60℃以上であり、80℃以上であってもよい。塗布膜の乾燥時間は、粘着剤組成物(B)の組成に応じて適宜調節でき、例えば30秒~300秒であり、40秒~240秒、さらには60秒~180秒であってもよい。
【0097】
<光硬化性組成物(C)>
光硬化性組成物(C)は、光の照射により粘着シートを形成しうる組成物である。光硬化性組成物(C)から形成された粘着シートは、通常、光硬化型となる。光硬化性組成物(C)は、例えば、(メタ)アクリル系単量体を含む単量体群及び/又は当該単量体群の部分重合物を含む。光硬化性組成物における(メタ)アクリル系成分、すなわち(メタ)アクリル系単量体及びその部分重合物、の含有率は、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、さらには80重量%以上であってもよく、この場合、(メタ)アクリル系ポリマー及びその架橋物を主成分とするアクリル系の粘着シートを形成できる。
【0098】
単量体群が含みうる単量体の例は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の説明において上述した例と同じである。
【0099】
光硬化性組成物(C)は、通常、光重合開始剤を含有する。光重合開始剤の例は、波長450nmよりも短い波長の可視光及び/又は紫外線によりラジカルを発生する光ラジカル発生剤である。光重合開始剤の例は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の説明において上述した例と同じである。光硬化性組成物(C)における光重合開始剤の配合量は、単量体群及びその部分重合物の合計100重量部に対して、例えば0.02~10重量部であり、0.05~5重量部であってもよい。
【0100】
光硬化性組成物(C)は、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤の例は、1分子中に2以上の重合性官能基を有する多官能単量体である。多官能単量体は(メタ)アクリル系単量体であってもよい。多官能単量体の例は、1分子中に2以上のC=C結合を有する単量体、及び1分子中に1以上のC=C結合と、1以上のエポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、ヒドラジン基、メチロール基等の重合性官能基とを有する単量体である。多官能単量体は、好ましくは、1分子中に2以上のC=C結合を有する単量体である。
【0101】
光硬化性組成物(C)が含みうる架橋剤の例は、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2-エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート(NDDA)、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレート(多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物等);アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレートである。多官能単量体は、好ましくは、多官能アクリレートであり、より好ましくは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートである。
【0102】
架橋剤の配合量は、分子量や官能基数等により異なるが、単量体群及びその部分重合物の合計100重量部あたり、例えば5重量部以下であり、3重量部以下、2重量部以下、1重量部以下、さらには0.5重量部以下であってもよい。配合量の下限は、例えば0.01重量部以上であり、さらには0.05重量部%以上であってもよい。
【0103】
光硬化性組成物(C)は、上述した以外の添加剤を含んでいてもよい。添加剤の例は、連鎖移動剤、シランカップリング剤、粘度調整剤、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、界面活性剤、帯電防止剤及び紫外線吸収剤である。ただし、添加剤は上記例に限定されない。シランカップリング剤の例は、粘着剤組成物(B)の説明において上述した例と同じである。
【0104】
光硬化性組成物(C)における溶剤の含有率は、例えば5重量%以下であり、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、さらには0.5重量%以下であってもよい。光硬化性組成物(C)は、溶剤を実質的に含まなくてもよい。溶剤を実質的に含まないとは、添加剤等に由来する溶剤等を、例えば0.1重量%以下、好ましくは0.05重量%以下、より好ましくは0.01重量%以下の含有率で許容する趣旨である。
【0105】
光硬化性組成物(C)の粘度は、好ましくは、5~100ポイズである。
【0106】
粘着シート4は、例えば、基材上に設けられた光硬化性組成物(C)の塗布膜に光を照射して形成できる。基材には、離型フィルムを用いてもよい。離型フィルム上に形成された粘着シート4は、例えば、光学積層体10が含みうる他の層に転写できる。ただし、光硬化性組成物(C)から粘着シート4を形成する方法は、上記例に限定されない。
【0107】
照射する光は、例えば、波長450nmよりも短い波長を有する可視光又は紫外線である。光は、光硬化性組成物が含む光重合開始剤の吸収波長と同じ領域の波長の光を含んでいてもよい。波長300nm以下の短波長光をフィルタ等でカットした光を照射してもよい。光の光源は、例えば紫外線照射ランプを備える光照射装置である。紫外線照射ランプの例は、紫外光LED、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、マイクロウエーブ励起水銀灯、ブラックライトランプ、ケミカルランプ、殺菌ランプ、低圧放電水銀ランプ、エキシマレーザーである。2以上の紫外線照射ランプが組み合わされていてもよい。
【0108】
光の照射強度は、例えば1~20mW/cm2である。光の積算光量は、例えば100~5000mJ/cm2である。
【0109】
粘着シート4の厚さは、例えば1~50μmであり、2~30μm、2~25μm、さらには5~20μmであってもよい。
【0110】
粘着シート4の吸水率は、例えば1重量%以上であり、1.1重量%以上、1.2重量%以上、1.3重量%以上、1.4重量%以上、1.5重量%以上、1.6重量%以上、1.7重量%以上、1.8重量%以上、1.9重量%以上、2重量%以上、2.1重量%以上、さらには2.2重量%以上であってもよい。吸水率の上限は、例えば10重量%以下である。吸水率が上記範囲にある粘着シート4は、湿熱環境下において水分を吸収する能力が大きいことから、最大析出距離Bの抑制に寄与しうる。吸水率は、所定の温度及び相対湿度下における熱重量分析(TGA)により評価できる。評価には、加湿TGA測定装置を利用できる。吸水率を評価する際の温度及び相対湿度の条件は、順に、(1)100℃、0%RH、60分、(2)85℃、0%RH、120分、(3)85℃、85%RH、240分とする。TGAにより測定した(1)の終了時の重量を初期重量W0(g)、(3)の終了時の重量を加湿重量W1(g)として、式:(W1-W0)/W0×100%により、吸水率を求めることができる。吸水率の評価に供する試験片の重量は、10~100mg程度とすることが好ましい。
【0111】
粘着シート4は、低抵抗タイプであってもよい。低抵抗タイプの粘着シート4の表面抵抗率は、例えば9×1011Ω/□以下であり、5×1011Ω/□以下、1×1011Ω/□以下、9×1010Ω/□以下、5×1010Ω/□以下、1×1010Ω/□以下、9×109Ω/□以下、5×109Ω/□以下、さらには1×109Ω/□以下であってもよい。表面抵抗率の下限は、例えば1×104Ω/□以上である。粘着シート4の表面抵抗率が上記範囲にあることは、タッチパネルのより確実な動作にも寄与しうる。表面抵抗率は、例えば、高抵抗抵抗率計(一例として、三菱化学アナリテック製、ハイレスタシリーズ)により評価できる。
【0112】
粘着シート4は、帯電防止剤及び導電性ポリマーから選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。帯電防止剤及び導電性ポリマーは、粘着シートの表面抵抗率の低減に寄与しうる。帯電防止剤の例は、塩等のイオン性化合物である。イオン性化合物は、常温(25℃)で液体のイオン液体であってもよい。イオン性化合物は、光学的透明性に優れる粘着シート4の形成に適している。
【0113】
イオン性化合物を構成するカチオンの例は、金属イオン及びオニウムイオンである。金属イオンの例は、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンである。アルカリ金属イオンは、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオンであり、リチウムイオンであってもよい。アルカリ土類金属イオンは、例えば、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンである。ただし、金属イオンは、上記例に限定されない。
【0114】
オニウムイオンの例は、窒素原子、リン原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1つの原子がプラス(+)に帯電したイオンである。オニウムイオンは有機イオンであってもよく、この場合、環状有機化合物のイオンであっても、鎖状有機化合物のイオンであってもよい。環状有機化合物は、芳香族であっても、脂肪族等の非芳香族であってもよい。オニウムイオンの例は、N-エチル-N,N-ジメチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムイオン、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムイオン、N-エチル-N,N-ジメチル-N-プロピルアンモニウムイオン、N-メチル-N,N,N-トリオクチルアンモニウムイオン、N,N,N-トリメチル-N-プロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオン及びN-メチル-N,N,N-トリブチルアンモニウムイオン等の4級アンモニウムイオン;炭素数4~16のアルキル基により置換されたN-アルキルピリジニウム等のピリジニウムイオン;炭素数2~10のアルキル基(例えばエチル基)で置換された1,3-アルキルメチルイミダゾリウムイオン、炭素数2~10のアルキル基で置換された1,2-ジメチル-3-アルキルイミダゾリウム等のイミダゾリウムイオン;ホスホニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピリダジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、ピラジニウムイオン、ピラゾリウムイオン、チアゾリウムイオン、オキサゾリウムイオン、トリアゾリウムイオン、並びにピペリジニウムイオンである。ただし、オニウムイオンは、上記例に限定されない。
【0115】
イオン性化合物を構成するアニオンの例は、フルオライド、クロライド、ブロマイド、ヨーダイド、ペルクロレート(ClO4 -)、ヒドロキシド(OH-)、カーボネート(CO3 2-)、ニトレート(NO3 -)、スルホネート(SO4 -)、メチルベンゼンスルホネート(CH3(C64)SO3 -)、p-トルエンスルホネート(CH364SO3 -)、カルボキシベンゼンスルホネート(COOH(C64)SO3 -)、トリフルオロメタンスルホネート(CF3SO2 -)、ベンゾエート(C65COO-)、アセテート(CH3COO-)、トリフルオロアセテート(CF3COO-)、テトラフルオロボレート(BF4 -)、テトラベンジルボレート(B(C654 -)、ヘキサフルオロホスフェート(PF6 -)、トリスペンタフルオロエチルトリフルオロホスフェート(P(C2533 -)、ビスフルオロスルホニルイミド(N(SO2F)2 -)、ビストリフルオロメタンスルホニルイミド(N(SO2CF32 -)、ビスペンタフルオロエタンスルホニルイミド(N(SOC252 -)、ビスペンタフルオロエタンカルボニルイミド(N(COC252 -)、ビスペルフルオロブタンスルホニルイミド(N(SO2492 -)、ビスペルフルオロブタンカルボニルイミド(N(COC492 -)、トリストリフルオロメタンスルホニルメチド(C(SO2CF33 -)及びトリストリフルオロメタンカルボニルメチド(C(SO2CF33 -)である。ただし、アニオンは、上記例に限定されない。
【0116】
帯電防止剤は、硫黄原子を含むアニオンを含んでいてもよい。硫黄原子を含むアニオンの例は、ビスフルオロスルホニルイミド(N(SO2F)2 -)及びビストリフルオロメタンスルホニルイミド(N(SO2CF32 -)である。
【0117】
帯電防止剤は、有機塩であってもよい。また、帯電防止剤は、リチウム塩であってもよく、カチオン及びアニオンとして、それぞれリチウムイオン及び有機イオンを含むリチウム有機塩であってもよい。
【0118】
帯電防止剤の具体例は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミド、リチウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(LiTFSi)、エチルメチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(EMPTFSi)及びトリブチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TBMATFSi)である。
【0119】
帯電防止剤は、リン原子を含んでいなくてもよい。
【0120】
導電性ポリマーの例は、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリキノキサリン、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリナフタレン及びこれらの誘導体である。導電性ポリマーは、好ましくは、ポリチオフェン、ポリアニリン及びこれらの誘導体であり、より好ましくは、ポリチオフェン誘導体である。
【0121】
導電性ポリマーは、親水性官能基を有していてもよい。親水性官能基の例は、スルホン基、アミノ基、アミド基、イミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ヒドラジノ基、カルボキシル基、硫酸エステル基、リン酸エステル基及びこれらの塩(例えば、4級アンモニウム塩基)である。
【0122】
導電性及び化学的安定性の観点から、導電性ポリマーは、好ましくは、ポリ(3,4-二置換チオフェン)である。ポリ(3,4-二置換チオフェン)の例は、ポリ(3,4-アルキレンジオキシチオフェン)及びポリ(3,4-ジアルコキシチオフェン)であり、好ましくは、ポリ(3,4-アルキレンジオキシチオフェン)である。ポリ(3,4-アルキレンジオキシチオフェン)は、例えば、以下の式(I)で表される構造単位を有する。
【0123】
【化2】
【0124】
式(I)のR1は、例えば、炭素数1~4のアルキレン基である。アルキレン基は、直鎖状であっても、分岐を有していてもよい。アルキレン基の例は、メチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基、1-メチル-1,2-エチレン基、1-エチル-1,2-エチレン基、1-メチル-1,3-プロピレン基及び2-メチル-1,3-プロピレン基であり、好ましくは、メチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基であり、より好ましくは、1,2-エチレン基である。導電性ポリマーは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)であってもよい。
【0125】
ドーパントの例は、ポリアニオンである。導電性ポリマーがポリチオフェン(又はその誘導体)である場合、ポリアニオンは、ポリチオフェン(又はその誘導体)とイオン対を形成しうる。ポリアニオンは、特に限定されず、例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリメタクリル酸等のカルボン酸ポリマー類;ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸等のスルホン酸ポリマー類である。ポリアニオンは、ビニルカルボン酸類又はビニルスルホン酸類と、他のモノマー類との共重合体であってもよい。他のモノマー類の例は、(メタ)アクリレート化合物;スチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル化合物である。ポリアニオンは、好ましくは、ポリスチレンスルホン酸(PSS)である。ドーパントとの複合体である導電性ポリマーの例は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合体(PEDOT/PSS)である。
【0126】
粘着シート4における帯電防止剤及び導電性ポリマーから選ばれる少なくとも1種の配合量は、合計で、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、例えば25重量部未満であり、20重量部以下、15重量部以下、10重量部以下、さらには9重量部以下であってもよい。配合量の下限は、例えば0.005重量部以上である。
【0127】
光学積層体10が含みうる他の層の別の例は、光学フィルムである。図6の光学積層体10Dは、光学フィルム5をさらに含む。光学積層体10Dは、透明保護フィルム2、偏光子1、光学フィルム5及び粘着シート4がこの順に積層された積層構造を有する。偏光子1には光学フィルム5が接している。光学積層体10Dは、粘着シート付き光学フィルムでもある。
【0128】
光学フィルム5の例は、位相差フィルムである。ただし、光学フィルム5は、位相差フィルムに限定されない。位相差フィルムは、例えば、式nx>nyにより示される屈折率特性を有し、遅相軸を有している。ただし、位相差フィルムは上記例に限定されない。位相差フィルムは、例えば、式nz>nx=nyにより示される屈折率特性を有する等、位相差フィルムとして知られている種々の屈折率特性を有することができる。本明細書においてnx、ny及びnzは、それぞれ、フィルムの面内において屈折率が最大となる方向(遅相軸)の屈折率、面内において遅相軸と直交する方向(進相軸)の屈折率、及び、厚さ方向の屈折率である。
【0129】
以下、光学フィルム5でありうる位相差フィルムについて説明する。位相差フィルムは、10nm以上、30nm以上、50nm以上、80nm以上、さらには100nm以上のRe(550)を有していてもよい。Re(550)は、波長550nmの光に対する位相差フィルムの面内位相差である。面内位相差は、位相差フィルムの厚さをd(nm)として、式Re=(nx-ny)×dにより与えられる。
【0130】
位相差フィルムのRe(550)は、100nm~180nm、110~170nm、120~160nm、さらには135nm~155nmであってもよく、この場合、位相差フィルムはいわゆるλ/4板として機能しうる。位相差フィルムのRe(550)は、180nm~320nm、200~290nm、さらには230~280nmであってもよく、この場合、位相差フィルムはいわゆるλ/2板として機能しうる。光学フィルム5は、λ/4板又はλ/2板として機能しうる層であってもよい。光学フィルム5がλ/4板として機能しうる層である場合、光学積層体10Dは粘着シート付き楕円偏光フィルム又は粘着シート付き円偏光フィルムでありうる。
【0131】
位相差フィルムは、液晶化合物の配向固化層(以下、液晶配向固化層と記載する)であってもよい。換言すれば、光学フィルム5は、液晶配向固化層であってもよい。本明細書において液晶配向固化層とは、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層をいう。なお、液晶配向固化層には、液晶モノマーを硬化させて得られる配向硬化層が含まれる。液晶配向固化層は、厚みを小さくしながら所望の位相差を得ることに適している。
【0132】
液晶配向固化層では、典型的には、棒状の液晶化合物が所定の方向に並んだ状態で配向している(ホモジニアス配向)。液晶化合物の例は、ネマチック液晶及びディスコティック液晶である。液晶化合物には、液晶ポリマー又は液晶モノマーを使用できる。液晶モノマーは、重合性及び/又は架橋性を有していてもよい。
【0133】
液晶モノマーの具体例は、特表2002-533742号、EP358208、EP66137、WO93/22397、EP0261712、DE19504224、DE4408171、GB2280445の各公報に記載の重合性メソゲン化合物等である。重合性メソゲン化合物の例は、例えば、BASF社製LC242、Merck社製E7、Wacker-Chem社製LC-Sillicon-CC3767である。液晶モノマーは、好ましくはネマチック性モノマーである。
【0134】
液晶配向固化層である位相差フィルムは、配向処理を表面に施した基材フィルムにおける当該表面に液晶化合物を含む塗工液を塗工し、配向処理に対応する方向に液晶化合物を配向させ、配向状態を固定して形成できる。基材には、離型フィルムを用いてもよい。離型フィルム上に形成された位相差フィルムは、例えば、光学積層体10が含みうる他の層に転写できる。ただし、液晶配向固化層である位相差フィルムを形成する方法は、上記例に限定されない。
【0135】
液晶化合物のさらなる具体例及び液晶配向固化層の形成方法の詳細については、特開2006-163343号公報を参照できる。ただし、液晶配向固化層である位相差フィルム及びその形成方法は、当該公報に記載の内容に限定されない。
【0136】
位相差フィルムは、延伸樹脂フィルムであってもよい。位相差フィルムを形成しうる樹脂の例は、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、シクロオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、セルロースエステル系樹脂である。位相差フィルムは、ポリカーボネートを含む延伸樹脂フィルムであってもよい。
【0137】
位相差フィルムは、反射防止用位相差フィルム、視野角補償用位相差フィルム、視野角補償用の傾斜配向位相差フィルムであってもよい。
【0138】
光学積層体10が含みうる他の層の別の例は、表面保護フィルム(カバーフィルム)である。図7の光学積層体10Eは、表面保護フィルム6をさらに含む。光学積層体10Eは、表面保護フィルム6、透明保護フィルム2、偏光子1、光学フィルム5及び粘着シート4がこの順に積層された積層構造を有する。表面保護フィルム6は、粘着シート4側とは反対側の最外層に位置する。
【0139】
表面保護フィルム6は、光学積層体10の流通及び保管時、並びに光学積層体10を画像表示パネル又は画像表示装置に組み込んだ状態において、最外層を保護する機能を有しうる。また、画像表示装置に組み込んだ状態において、外部空間へのウィンドウとして機能する表面保護フィルム6であってもよい。表面保護フィルム6は、典型的には、樹脂フィルムである。表面保護フィルム6を構成しうる樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル、シクロオレフィン、ポリイミド、並びにポリアミドであり、ポリエステルが好ましい。ただし、表面保護フィルム6は上記例に限定されない。表面保護フィルム6は、ガラス製のフィルム、又はガラス製のフィルムを含む積層フィルムであってもよい。表面保護フィルム6には、アンチグレア、反射防止、帯電防止等の表面処理が施されていてもよい。表面保護フィルム6は、接着剤又は粘着シートによって透明保護フィルム2に接合できる。表面保護フィルム6の厚さは、例えば10~80μmである。
【0140】
光学積層体10が含みうる他の層の別の例は、はく離ライナーである。図8の光学積層体10Fは、はく離ライナー7をさらに含む。光学積層体10Fは、表面保護フィルム6、透明保護フィルム2、偏光子1、光学フィルム5、粘着シート4及びはく離ライナー7がこの順に積層された積層構造を有する。はく離ライナー7は、粘着シート4に接している。光学積層体10Fは、はく離ライナー7を剥離することで、例えば、粘着シート付き光学フィルムとして使用できる。
【0141】
はく離ライナー7は、例えば、樹脂、紙、繊維、金属又はこれらの複合材料により構成されるフィルム、紙、織布、不織布、多孔質材料、ネット、発泡体、フォイル又はこれらのラミネート体である。樹脂の例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びポリエステルである。ただし、はく離ライナー7は、上記例に限定されない。また、はく離ライナー7を構成する材料及び構成しうる樹脂は、上記例に限定されない。
【0142】
はく離ライナー7の厚さは、例えば5~200μmであり、5~100μmであってもよい。はく離ライナー7の表面には、必要に応じて、離型処理、防汚処理及び帯電防止処理のような各種の表面処理が施されていてもよい。離型処理には、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系、脂肪酸アミド系等の各種の離型剤、あるいはシリカ粉等の粒子を利用できる。
【0143】
光学積層体10は、例えば、帯状の光学積層体を巻回した巻回体として、あるいは枚葉状の光学積層体として、流通及び保管が可能である。
【0144】
光学積層体10は、典型的には、画像表示パネル又は画像表示装置に用いられる。換言すれば、光学積層体10は、画像表示パネル用又は画像表示装置用であってもよい。画像表示パネルの例は、液晶パネル、並びに、有機ELパネル及び無機ELパネル等のELパネルである。画像表示装置の例は、液晶ディスプレイ、並びに、有機ELディスプレイ及び無機ELディスプレイ等のELディスプレイである。光学積層体10の用途は、上記例に限定されない。また、光学積層体10を使用しうる画像表示パネル及び画像表示装置は、上記例に限定されない。
【0145】
本実施形態の画像表示パネル用セットは、光学積層体10及び導電性ペースト以外の他の部材を備えていてもよい。
【0146】
本実施形態の画像表示パネル用セットを使用可能な画像表示パネルの種類の例は上述のとおりである。
【0147】
[画像表示パネル]
本実施形態の画像表示パネルの例を図9Aに示す。図9Aの画像表示パネル100(100A)は、画像形成層である液晶セル30Aと、液晶セル30Aの視認側に配置された光学積層体10(10A)とを備える。画像表示パネル100は、液晶パネルである。光学積層体10の側面12には、導通構造20が設けられている。光学積層体10は、ヨウ素を含む偏光子1を含む。導通構造20は、導電性ペーストの硬化層を含む。画像表示パネル100では、温度85℃、相対湿度85%及び試験時間240時間の湿熱試験Aを実施し、湿熱試験Aを実施した後の光学積層体10におけるヨウ素を含む析出物を評価したときに、最大析出距離Bが700μm以下である。画像表示パネル100における最大析出距離Bは、好ましい範囲を含め、光学積層体10がとりうる最大析出距離Bとして上述した範囲であってもよい。画像表示パネル100の最大析出距離Bは、画像表示パネル100から取り出した光学積層体10、又は画像表示パネル100に対して、光学積層体10の説明において上述した湿熱試験A及び最大析出距離Bの評価法を実施して求めることができる。
【0148】
図9Aの導通構造20は、光学積層体10に含まれる全ての層に接するように設けられている。導通構造20は、光学積層体10の側面の面積の1%以上、好ましくは3%以上の割合で設けられていることが好ましい。当該割合の上限は、例えば99%以下であり、95%以下であってもよい。導通構造20は、通常、光学積層体10と、画像表示パネルにおける他の適切な場所とを電気的に接続するように形成される。導通構造20は、ライン状であってもよい。
【0149】
液晶セル30Aは、液晶層32と、液晶層32を挟持する第1透明基板31及び第2透明基板33とを有する。なお、図9Aでは、液晶セル30A内の電極は省略されている。
【0150】
液晶層32の例は、電界が存在しない状態でホモジニアス配向した液晶分子を含む層である。液晶層32は、IPS方式の液晶層であってもよい。ただし、液晶層32としては、TN型、STN型、π型、VA型等の種々の方式のものを使用できる。液晶層32の厚さは、例えば1.5~4μm程度である。
【0151】
第1透明基板31及び第2透明基板33を構成する材料の例は、ガラス及び樹脂である。樹脂の例は、PET、ポリシクロオレフィン及びポリカーボネートである。ガラスから構成される第1透明基板31及び第2透明基板33の厚さは、例えば0.1~1mm程度である。樹脂から構成される第1透明基板31及び第2の透明基板33の厚さは、例えば10~200μm程度である。第1透明基板31及び第2透明基板33は、易接着層やハードコート層を表面に有していてもよい。
【0152】
画像形成層は、タッチセンサーを内蔵していてもよい。換言すれば、画像形成層はインセル型画像表示セルであってもよい。インセル型画像表示セルを備える画像表示パネルの一例を図9B図9Fに示す。図9B図9Fの画像表示パネル100B~100Fは、インセル型画像表示セルとして、インセル型液晶セル30B~30Fを備える。インセル型液晶セル30B~30Fは、第1透明基板31と第2透明基板33との間にタッチセンサー及びタッチ駆動の機能に係るタッチセンシング電極部を有している。
【0153】
図9B図9C及び図9Fに示すように、タッチセンシング電極部35は、タッチセンサー電極36及びタッチ駆動電極37により形成されてもよい。タッチセンサー電極とは、タッチ検出(受信)電極を意味する。タッチセンサー電極36及びタッチ駆動電極37は、互いに独立して、各種のパターンにより形成できる。例えば、インセル型液晶セル30Bを平面視したときに、タッチセンサー電極36及びタッチ駆動電極37が直交するパターンにより形成されていてもよい。また、図9B図9C及び図9Fでは、タッチセンサー電極36がタッチ駆動電極37よりも第1透明基板31の側(視認側)に配置されているが、タッチ駆動電極37をタッチセンサー電極36よりも第1透明基板31の側(視認側)に配置してもよい。
【0154】
図9D及び図9Eに示すように、タッチセンサー電極及びタッチ駆動電極が一体化されたタッチセンシング電極部38であってもよい。
【0155】
タッチセンシング電極部35,38は、液晶層32と第1透明基板31又は第2透明基板33との間に配置してもよい。図9B及び図9Dの例では、タッチセンシング電極部35,38は、液晶層32と第1透明基板31との間(液晶層32よりも視認側)に配置されている。図9C及び図9Eの例では、タッチセンシング電極部35,38は、液晶層32と第2透明基板33との間(液晶層32よりもバックライト側)に配置されている。
【0156】
図9Fに示すように、タッチセンシング電極部35として、液晶層32と第1透明基板31との間にタッチセンサー電極36が、液晶層32と第2透明基板33との間にタッチ駆動電極37が、それぞれ配置されていてもよい。
【0157】
タッチセンシング電極部35,38の駆動電極は、液晶層32を制御する電極と共用してもよい。
【0158】
タッチセンシング電極部35,38、タッチセンサー電極36及びタッチ駆動電極37は、公知の構成を有しうる。
【0159】
画像表示パネル100は、上述した以外の他の層をさらに備えていてもよい。他の層の例は、導電層及びカラーフィルターである。導電層は、例えば1×10-13Ω/□以下の表面抵抗率を有する。導電層は、例えば、光学積層体10と画像形成層との間に配置されていてもよい。画像表示パネル100は、導電層を備えていなくてもよい。
【0160】
図9A図9Fの例は、画像形成層における光学積層体10側とは反対側に、粘着シート41及び偏光フィルム42をさらに備えている。上記例では、粘着シート41は第2透明基板33に接し、偏光フィルム42は粘着シート41に接している。偏光フィルム42の透過軸(又は吸収軸)と、偏光子1の透過軸(又は吸収軸)とは、画像表示パネル100を平面視したときに互いに直交していてもよい。
【0161】
粘着シート41は、粘着シート4の説明において上述した各種の構成を有しうる。粘着シート41と粘着シート4とは、同一の構成を有していてもよい。ただし、粘着シート41は、上記例に限定されない。粘着シート41の厚さは、例えば1~100μmであり、2~50μm、2~40μm、さらには5~35μmであってもよい。
【0162】
偏光フィルム42は、偏光フィルム3の説明において上述した各種の構成を有しうる。偏光フィルム42と偏光フィルム3とは、同一の構成を有していてもよい。ただし、偏光フィルム42は、上記例に限定されない。
【0163】
[画像表示装置]
本実施形態の画像表示装置は、例えば、液晶パネルである画像表示パネル100、及び照明システムを備える液晶表示装置である。液晶表示装置において、画像表示パネル100は、例えば、照明システムよりも視認側に配置されている。照明システムは、例えば、バックライト又は反射板を有し、画像表示パネル100に光を照射する。ただし、本実施形態の画像表示装置は、液晶表示装置に限定されない。画像表示装置は、有機EL表示装置及び無機EL表示装置等のEL表示装置であってもよい。
【実施例0164】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。なお、各例中の部及び%はいずれも重量基準である。以下に特に規定のない試験条件は、全て23℃及び65%RHである。
【0165】
[偏光子及び偏光フィルム]
<偏光フィルムF1~F3の作製>
(HC付40μmTACフィルム)
ウレタンアクリレートを主成分として含む紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーが酢酸ブチルに溶解された樹脂溶液(DIC社製、商品名:ユニディック17-806、固形分濃度:80%)に、その溶液中の固形分100部当たり、光重合開始剤(BASF社製、商品名:IRGACURE907)を5部、及びレベリング剤(DIC社製、商品名:GRANDIC PC4100)を0.1部添加した。次に、溶液中の固形分濃度が36%となるように、溶液にシクロペンタノンとプロピレングリコールモノメチルエーテルを45:55の比率で加えて、ハードコート層形成材料を作製した。作製したハードコート層形成材料を、硬化後のハードコート層の厚みが7μmになるようにTJ40UL(富士フイルム社製、原料:トリアセチルセルロース系ポリマー、厚み:40μm)上に塗布して塗膜を形成した。塗膜を90℃で1分間乾燥し、さらに高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を塗膜に照射し、塗膜を硬化させてハードコート層(HC)を形成して、HC付40μmTACフィルムを作製した。
【0166】
(30μmアクリルフィルム)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を備えた容量30Lの釜型反応器に、8,000gのメタクリル酸メチル(MMA)、2,000gの2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、10,000gの4-メチル-2-ペンタノン(メチルイソブチルケトン、MIBK)、5gのn-ドデシルメルカプタンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温し、還流したところで、重合開始剤として5.0gのt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(カヤカルボンBIC-7、化薬アクゾ社製)を添加すると同時に、10.0gのt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートと230gのMIBKからなる溶液を4時間かけて滴下しながら、還流下、約105~120℃で溶液重合を行い、さらに4時間かけて熟成を行った。
【0167】
得られた重合体溶液に、30gのリン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物(PhoslexA-18、堺化学工業社製)を加え、還流下、約90~120℃で5時間、環化縮合反応を行った。次いで、得られた重合体溶液を、バレル温度260℃、回転数100rpm、減圧度13.3~400hPa(10~300mmHg)、リアベント数1個、フォアベント数4個のベントタイプスクリュー二軸押出し機(φ=29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で、2.0kg/hの処理速度で導入し、この押出し機内で、さらに環化縮合反応と脱揮を行い、押し出すことにより、ラクトン環含有重合体の透明なペレットを得た。
【0168】
得られたラクトン環含有重合体について、ダイナミックTGの測定を行ったところ、0.17質量%の質量減少を検知した。また、このラクトン環含有重合体は、重量平均分子量が133,000、メルトフローレートが6.5g/10min、ガラス転移温度が131℃であった。
【0169】
得られたペレットと、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂(トーヨーASAS20、東洋スチレン社製)とを、質量比90/10で、単軸押出機(スクリュー30mmφ)を用いて混練押出することにより、透明なペレットを得た。得られたペレットのガラス転移温度は127℃であった。
【0170】
このペレットを、50mmφ単軸押出機を用い、400mm幅のコートハンガータイプTダイから溶融押出し、厚さ120μmのフィルムを作製した。作製したフィルムを、2軸延伸装置を用いて、150℃の温度条件下、縦2.0倍、及び横2.0倍に延伸することにより、厚さ30μmの延伸フィルム(30μmアクリルフィルム)を得た。この延伸フィルムの光学特性を測定したところ、全光線透過率が93%、面内位相差Δndが0.8nm、厚み方向位相差Rthが1.5nmであった。
【0171】
(偏光フィルムF1)
厚さ45μmのポリビニルアルコールフィルムを、速度比の異なるロール間において、温度30℃、濃度0.3%のヨウ素溶液中で1分間染色しながら、3倍まで延伸した。次に、濃度4%でホウ酸を含み、かつ濃度10%でヨウ化カリウムを含む、温度60℃の水溶液中に0.5分間浸漬しながら、総合延伸倍率が6倍になるまで延伸した。次に、濃度1.5%でヨウ化カリウムを含む、温度30℃の水溶液中に10秒間浸漬させて洗浄した後、50℃で4分間乾燥を行うことによって、厚さ18μmの偏光子を得た。当該偏光子の片面に、けん化処理したHC付40μmTACフィルム(トリアセチルセルロースフィルム側)をポリビニルアルコール系接着剤により貼り合せた。さらに、偏光子の他方の面に、30μmアクリルフィルムをポリビニルアルコール系接着剤により貼り合せた。これにより、偏光フィルムF1を得た。
【0172】
(偏光フィルムF2,F3)
浸漬するヨウ化カリウム水溶液におけるヨウ化カリウムの濃度を変更した以外は、偏光フィルムF1と同様にして、偏光フィルムF1とはヨウ素濃度のみが異なる偏光フィルムF2,F3を得た。
【0173】
<偏光フィルムF4の作製>
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、速度比の異なるロール間において、温度30℃、濃度0.3%のヨウ素溶液中で1分間染色しながら、3倍まで延伸した。次に、濃度4%でホウ酸を含み、かつ濃度10%でヨウ化カリウムを含む、温度60℃の水溶液中に0.5分間浸漬しながら、総合延伸倍率が6倍になるまで延伸した。次に、濃度1.5%でヨウ化カリウムを含む、温度30℃の水溶液中に10秒間浸漬させて洗浄した後、50℃で4分間乾燥を行うことによって、厚さ28μmの偏光子を得た。当該偏光子の片面に、ラクトン環構造を有する変性アクリル系ポリマーからなる厚さ30μmの透明保護フィルムをポリビニルアルコール系接着剤により貼り合せた。さらに、偏光子の他方の面に、トリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ社製、商品名「KC4UY」)にハードコート層(HC)を形成した厚さ47μmの透明保護フィルムをポリビニルアルコール系接着剤により貼り合せた。70℃に設定されたオーブン内で5分間加熱乾燥させることによって偏光フィルムF2を作製した。
【0174】
<偏光フィルムF5の作製>
(偏光子)
吸水率0.75%、Tg75℃の非晶質のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET)フィルム(厚み:100μm)基材の片面に、コロナ処理を施し、このコロナ処理面に、ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)及びアセトアセチル変性ポリビニルアルコール(重合度1200、アセトアセチル変性度4.6%、ケン化度99.0モル%以上、日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を9:1の比で含む水溶液を25℃で塗布及び乾燥して、厚み11μmのポリビニルアルコール系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
【0175】
得られた積層体を、120℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.0倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸処理)。次に、積層体を、液温30℃の不溶化浴(水100部に対して、ホウ酸を4部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。次に、液温30℃の染色浴(水100部に対して、ヨウ素を0.2部配合し、ヨウ化カリウムを1.0部配合して得られたヨウ素水溶液)に60秒間浸漬させた(染色処理)。次に、液温30℃の架橋浴(水100部に対して、ヨウ化カリウムを3部配合し、ホウ酸を3部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。次に、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(水100部に対して、ホウ酸を4部配合し、ヨウ化カリウムを5部配合して得られた水溶液)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。次に、積層体を液温30℃の洗浄浴(水100部に対して、ヨウ化カリウムを4部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。これにより、厚み5μmの偏光子を含む積層体を得た。
【0176】
(接着剤)
アクリロイルモルホリン45部、1,9-ノナンジオールジアクリレート45部、(メタ)アクリルモノマーを重合してなるアクリル系オリゴマー(ARUFONUP1190、東亞合成社製)10部、光重合開始剤(IRGACURE907、BASF社製)3部、重合開始剤(KAYACURE DETX-S、日本化薬社製)1.5部を混合し、紫外線硬化型接着剤を調製した。
【0177】
(偏光フィルムF5)
上記作製した積層体における偏光子の表面に、硬化後の接着剤層の厚みが1μmとなるように上記紫外線硬化型接着剤を塗布し、HC付25μmTACフィルム(トリアセチルセルロースフィルム側)を貼り合わせた。HC付25μmTACフィルムは、上述のHC付40μmTACフィルムと同様の方法によって作製した。次に、活性エネルギー線として、紫外線を照射し、接着剤を硬化させた。紫外線照射は、ガリウム封入メタルハライドランプ、照射装置:Fusion UV Systems,Inc社製のLight HAMMER10、バルブ:Vバルブ、ピーク照度:1600mW/cm2、積算照射量1000/mJ/cm2(波長380~440nm)を使用し、紫外線の照度は、Solatell社製のSola-Checkシステムを使用して測定した。次に、非晶性PET基材を剥離し、薄型偏光子を用いた偏光フィルムF3を作製した。得られた偏光フィルムF3の光学特性は、単体透過率42.8%、偏光度99.99%であった。
【0178】
<偏光子のヨウ素濃度>
偏光子に含まれるヨウ素の濃度(単位:重量%)は、EDXを用いた以下の方法により評価した。EDXには、蛍光X線分析装置ZSX-PRIMUS IV(リガク社製)を使用した。
【0179】
(換算式の決定)
EDXでは、ヨウ素に由来する蛍光X線の強度を測定可能である。測定された蛍光X線の強度から偏光子のヨウ素濃度を算出するための換算式を、以下の(1)~(3)の手順により決定した。
【0180】
(1)既知の量のヨウ化カリウムをポリビニルアルコール(PVA)水溶液に溶解させて、既知の濃度のヨウ素を含むPVA水溶液を7種類作製した。作製した各々のPVA水溶液をPETフィルムに塗布し、塗布膜を乾燥させた後で剥離して、既知の濃度のヨウ素を含むPVAフィルムの試料1~7を得た。なお、作製したPVAフィルムのヨウ素濃度(単位:重量%)は以下の数式1により算出される。数式1におけるヨウ化カリウム量は、PVA水溶液に溶解されたヨウ化カリウムの量である。PVA重量は、上記水溶液に含まれるPVAの重量である。127及び166は、それぞれ、ヨウ素及びヨウ化カリウムの分子量である。
[数式1]:ヨウ素濃度(重量%)={ヨウ化カリウム量(g)/(ヨウ化カリウム量(g)+PVA重量(g))}×(127/166)
【0181】
(2)試料1~7に対してEDXを実施し、ヨウ素に対応する波長を有する蛍光X線のピーク強度(単位:kcps)を測定した。また、これとは別に、試料1~7の膜厚を分光膜厚計MCPD-1000(大塚電子社製)により測定した。
【0182】
(3)測定した蛍光X線のピーク強度を各資料の厚さ(μm)で除し、単位厚さあたりの蛍光X線強度(kcps/μm)を算出した。各試料のヨウ素濃度と単位厚さあたりの蛍光X線強度とを、以下の表1に示す。
【0183】
【表1】
【0184】
(4)表1の結果を元に、各試料について、単位厚さあたりの蛍光X線強度を横軸に、ヨウ素濃度を縦軸として、検量線を作成した。作成した検量線に基づき、PVAフィルムである偏光子の単位厚さあたりの蛍光X線強度からヨウ素濃度を求める換算式を、以下の数式2のとおり定めた。
[数式2]:ヨウ素濃度(重量%)=14.474×単位厚さあたりの蛍光X線強度(kcps/μm)
【0185】
(偏光子のヨウ素濃度の評価)
PVAを溶解しない溶剤(塩化メチレン)に偏光フィルムF1~F5を浸漬し、透明保護フィルムであるTACフィルム及びアクリルフィルムを溶解させて、偏光子を取り出した。取り出した偏光子に対してEDXを実施し、ヨウ素に対応する波長を有する蛍光X線のピーク強度(単位:kcps)を測定した。また、EDXとは別に、取り出した偏光子の膜厚を分光膜厚計MCPD-1000(大塚電子製)により測定した。測定された膜厚及びピーク強度から、上記数式2の換算式より、偏光子のヨウ素濃度を求めた。評価結果を以下の表2に示す。
【0186】
【表2】
【0187】
[粘着剤組成物]
<(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量>
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。(メタ)アクリル系ポリマーのMw/Mnについても、同様に測定した。
・分析装置:東ソー社製、HLC-8120GPC
・カラム:東ソー社製、G7000HXL+GMHXL+GMHXL
・カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm 計90cm
・カラム温度:40℃
・流量:0.8mL/min
・注入量:100μL
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計(RI)
・標準試料:ポリスチレン
【0188】
((メタ)アクリル系ポリマーA1の調製)
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管及び冷却器を備えた4つ口フラスコに、メトキシエチルアクリレート(MEA)60部、ブチルアクリレート(BA)39部、及び4-ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)1部を含有する単量体混合物を仕込んだ。さらに、単量体混合物100部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1部を酢酸エチル100部と共に仕込んだ。混合物を緩やかに撹拌しながら、窒素ガスを導入してフラスコ内を窒素置換した。次いで、フラスコ内の液温を55℃付近に維持して8時間重合反応を進行させることによって、重量平均分子量(Mw)195万、Mw/Mn=3.9の(メタ)アクリル系ポリマーA1の溶液を調製した。
【0189】
(メタ)アクリル系ポリマーA1の組成を、以下の表3にまとめる。
【0190】
【表3】
【0191】
(粘着剤組成物B1の調製)
(メタ)アクリル系ポリマーA1の溶液の固形分100部に対して、帯電防止剤として1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(エレクセルAS-110、第一工業製薬社製)5部、並びに、架橋剤としてイソシアネート架橋剤(東ソー社製のコロネートL、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート)0.6部、及び、ベンゾイルパーオキサイド(日本油脂社製のナイパーBMT)0.1部を配合して、粘着剤組成物B1を調製した。
【0192】
粘着剤組成物B1の組成を以下の表4にまとめる。
【0193】
【表4】
【0194】
[光学積層体(粘着シート付き偏光フィルム)]
上記作製した偏光フィルムF1~F5及び粘着剤組成物B1を用いて、光学積層体X1~X5を作製した。光学積層体の作製は、以下の手順により実施した。シリコーン系剥離剤で処理されたPETフィルム(はく離ライナー;三菱化学ポリエステルフィルム製、MRF38)の片面に、乾燥後の粘着シートの厚さが20μmになるように粘着剤組成物を塗布した。次に、形成された塗布膜を155℃で1分間乾燥させることによって、はく離ライナーの表面に粘着シートを形成した。次に、はく離ライナー上に形成した粘着シートを偏光フィルムの表面に転写して、光学積層体(粘着シート付き偏光フィルム)を作製した。作製した光学積層体X1~X5について、偏光フィルム及び粘着剤組成物の組み合わせと、偏光フィルムにおける粘着シートの転写面を以下の表5に示す。なお、作製した光学積層体の形状は、幅50mm及び高さ50mmの長方形状とした。
【0195】
【表5】
【0196】
(粘着シートの吸水率)
粘着剤組成物により形成した粘着シートの吸水率は、上述の方法により評価した。TGA装置には、Hiden製IGA-sorpを用い、測定モードはシーケンスモードとした。また、試験片の重量は、20mgとした。粘着剤組成物B1により形成した粘着シートの吸水率は、2.23%であった。
【0197】
[画像表示パネル]
光学積層体及び導電性ペーストを用いて、画像表示パネルZ1~Z8を作製した。導電性ペーストは、以下の3種類(Y1~Y3)を準備した。
・導電性ペーストY1:太陽インキ製ELEPASTE NP-1、導電成分として銀を主として含む、導電成分含有率57%
・導電性ペーストY2:太陽インキ製ELEPASTE AF4820、導電成分として銀を主として含む、導電成分含有率69%
・導電性ペーストY3:Threebond製TB3331D、導電成分としてニッケルを主として含む、導電成分含有率46%
【0198】
(導電性ペーストの表面における水の接触角)
導電性ペーストY1~Y3の表面における水の接触角は、接触角計(協和界面化学製、Dropmaster)を使用して上述の方法により評価した。ガラスシートには、無アルカリガラスを使用した。導電性ペーストの硬化層(厚さ100μm)は、ガラスシートの表面に導電性ペーストを塗布し、形成された塗布膜を100℃で5分間乾燥させて形成した。導電性ペーストY1~Y3の表面における水の接触角を以下の表6に示す。
【0199】
【表6】
【0200】
(画像表示パネルの作製)
画像表示パネルZ1~Z8は、以下のように作製した。光学積層体からはく離ライナーを剥離し、露出した粘着シートを介して、別途準備したインセル型液晶セルの視認側の表面に貼り合わせた。次に、光学積層体の側面のうち、一方の長辺にわたって導電性ペーストを塗布し、硬化させることによって導通構造(厚さ100μm)を形成した。形成した導通構造は、粘着シート及び偏光フィルムの側面と接触していた。形成した導通構造は、外部のアース電極と接続させた。さらに、インセル型液晶セル内部の透明電極パターン周辺部の引き回し配線をコントローラICと接続させた。これにより、タッチセンシング機能を内蔵する画像表示パネル(液晶パネル)を作製した。
【0201】
<湿熱試験A>
作製した画像表示パネルZ1~Z8に対して、恒温恒湿装置を用い、温度85℃、相対湿度85%及び試験時間240時間の湿熱試験Aを実施した。湿熱試験Aを実施した後の画像表示パネルZ1~Z8について、ヨウ素を含む析出物の最大析出距離Bを評価した。最大析出距離Bの評価は、上述の方法により実施した。最大析出距離Bの評価には光学顕微鏡(倍率50倍)を使用し、観察は、導通構造が形成された光学積層体の側面の方向に少なくとも10mmの範囲で実施した。また、析出物がヨウ素を含むことは、EDXにより別途確認した。
【0202】
<実施例1~6、比較例1,2>
実施例1~6及び比較例1,2である画像表示パネルZ1~Z8について、光学積層体及び導電性ペーストの組み合わせ、並びに最大析出距離Bの評価結果を以下の表7に示す。また、実施例1、実施例4及び実施例6の画像表示パネルZ1,Z4,Z6について、湿熱試験A後における最大析出距離Bを評価するために取得した観察像を図10図12にそれぞれ示す。
【0203】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0204】
本発明の光学積層体と導電性ペーストとのセットは、光学積層体の側面に導通構造を形成した画像表示パネルであって、耐環境性能に優れる画像表示パネルの製造に適している。
【符号の説明】
【0205】
1 偏光子
2,2A,2B 透明保護フィルム
3 偏光フィルム
4 粘着シート
5 光学フィルム
10、10A~10F 光学積層体
11 硬化層
12 側面
13 光学積層体
14,14A 析出物
20 導通構造
30A~30F 画像形成層
100A~100F 画像表示パネル
B 最大析出距離
D 方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10
図11
図12