(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082663
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】金型製造方法および金型製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 33/38 20060101AFI20240613BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20240613BHJP
B29C 59/04 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B29C33/38
B29C59/02 B
B29C59/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196653
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【弁理士】
【氏名又は名称】柿沼 公二
(74)【代理人】
【識別番号】100163511
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 啓太
(72)【発明者】
【氏名】野田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 純一
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 恭子
【テーマコード(参考)】
4F202
4F209
【Fターム(参考)】
4F202AA44
4F202AF01
4F202AG05
4F202AH75
4F202AJ02
4F202CA19
4F202CB02
4F202CD18
4F202CD28
4F202CD30
4F209AA44
4F209AF01
4F209AG05
4F209AH73
4F209PA02
4F209PA03
4F209PB01
4F209PB02
4F209PC05
4F209PN09
4F209PQ03
4F209PQ11
(57)【要約】
【課題】切削方向に沿って配置され互いに一部で重複する複数の切削孔をより高精度に金型用母材に切削する。
【解決手段】金型製造方法は、金型用母材への描画対象を構成する複数の切削孔それぞれに対応して階調信号を生成する信号生成ステップと、切削孔に対応する階調信号に基づき、切削刃12の移動パターンを示す制御波形を生成する制御波形生成ステップと、制御波形に従い、切削刃12を移動させ、金型用母材を切削する切削ステップと、を含み、制御波形生成ステップでは、一方向に並ぶ複数の切削孔のうち、互いに重複しない切削孔のグループごとに、当該グループを構成する切削孔に対応する階調信号に基づき制御波形を生成し、切削ステップでは、グループごとに生成された複数の制御波形それぞれに従い切削刃12を移動させて、金型用母材を所定の深さで切削する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型用母材に対して垂直方向に往復移動可能であるとともに、前記金型用母材の切削面に沿った、少なくとも一方向に相対的に移動可能な切削刃を備えた金型製造装置による金型製造方法であって、
前記金型用母材への描画対象を構成する複数の切削孔それぞれに対応して、当該切削孔の配置および深さを示す階調信号を生成する信号生成ステップと、
前記切削孔に対応する階調信号に基づき、前記切削孔の切削箇所で前記切削刃を往復移動させる前記切削刃の移動パターンを示す制御波形を生成する制御波形生成ステップと、
前記制御波形に従い、前記切削刃を移動させ、前記金型用母材を切削する切削ステップと、を含み、
前記一方向に並ぶ複数の切削孔それぞれが、1以上の他の切削孔と一部が重複するように配置され、
前記制御波形生成ステップでは、前記一方向に並ぶ複数の切削孔のうち、互いに重複しない切削孔のグループごとに、当該グループを構成する切削孔に対応する階調信号に基づき制御波形を生成し、
前記切削ステップでは、前記グループごとに生成された複数の制御波形それぞれに従い前記切削刃を移動させて、前記金型用母材を所定の深さで切削する、金型製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の金型製造方法において、
前記切削ステップでは、前記複数の制御波形それぞれに従った前記金型用母材の切削を、前記一方向に並ぶ複数の切削孔それぞれに対応する階調信号に示される深さに達するまで繰り返す、金型製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の金型製造方法において、
前記金型用母材は、円柱形状または円筒形状であり、円周方向に回転可能に保持される、金型製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の金型製造方法において、
前記切削孔は、球面形状、非球面形状または略矩形形状を有する、金型製造方法。
【請求項5】
金型用母材に対して垂直方向に往復移動可能であるとともに、前記金型用母材の切削面に沿った、少なくとも一方向に相対的に移動可能な切削刃と、
前記金型用母材への描画対象を構成する複数の切削孔それぞれに対応して、当該切削孔の配置および深さを示す階調信号を生成し、前記切削孔に対応する階調信号に基づき、前記切削孔の切削箇所で前記切削刃を往復移動させる前記切削刃の移動パターンを示す制御波形を生成する信号生成部と、
前記制御波形に従い、前記切削刃を移動させ、前記金型用母材を切削する制御部と、を備え、
前記信号生成部は、前記一方向に並ぶ複数の切削孔のうち、互いに重複しない切削孔のグループごとに、当該グループを構成する切削孔に対応する階調信号に基づき制御波形を生成し、
前記制御部は、前記グループごとに生成された複数の制御波形それぞれに従い前記切削刃を移動させて、前記金型用母材を所定の深さで切削する、金型製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金型製造方法および金型製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微小なレンズ(マイクロレンズ)を二次元的に多数配置したマイクロレンズアレイは、拡散板、拡散シートあるいはヘッドアップディスプレイのスクリーンなど様々な用途で用いられる。マイクロレンズアレイを高い量産性で製造する方法として、マイクロレンズアレイの基準パターンの反転形状のパターン(以下、「転写用パターン」という)を金型表面に形成し、基材上に塗布した樹脂に、金型表面に形成した転写用パターンを転写し、転写後の樹脂を硬化させる方法がある。硬化後の樹脂を必要に応じて裁断することで、所望のマイクロレンズアレイを製造することができる。
【0003】
上述した方法では、円筒状または円柱状のロールの表面に転写用パターンが形成されたロール金型を用い、Roll to Roll方式を用いることで、高い量産性で、品質の均一性が高いマイクロレンズアレイを製造することができる。
【0004】
上述したロール金型を製造する方法として、円筒状または円柱状のロール(金型用母材)の表面を切削刃により切削して、転写用パターンをロールに形成する方法がある。例えば、特許文献1には、ロールを回転させながら、切削刃をロールの径方向に往復移動させることでロール表面を切削する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したマイクロレンズアレイの製造などに用いられる金型においては、
図13Aに示すように、切削孔100同士が一部で重複するように形成されることがある。
図13Aにおいては、切削孔100が平面視で楕円形状を有する例を示している。
図13Aに示すような複数の切削孔100は、例えば、切削刃を金型用母材の切削面の一方向(
図13Aでは、紙面上方向)に相対的に移動させながら、切削刃を金型用母材に対して垂直方向に往復移動させることで切削し、これを一方向(切削方向)と直行する方向(
図13Aでは紙面横方向)に繰り返すことで切削することができる。
【0007】
図13Bは、
図13Aに示すA-A’線に沿った断面図である。
図13Bにおいては、複数の切削孔100それぞれに対応する凹部の輪郭を点線で示している。
図13Bに示すように、互いに重複する切削孔100それぞれに対応する凹部の輪郭線(一点鎖線)が交差するように配置される。そして、輪郭線に沿った切削軌跡(
図13Bの二点鎖線)に沿って切削刃を金型用母材に対して相対的に移動させることで、切削孔100同士が一部で重複する複数の切削孔100を金型用母材に形成することができる。
【0008】
図13Bに示すような、一部が重複する切削孔100を形成する場合、一の切削孔100に対応する凹部の輪郭線と、その一の切削孔100と、一の切削孔100と重複する他の切削孔100に対応する凹部の輪郭線との交点で、切削刃を沿って移動させる輪郭線を切り替える必要がある。このような切り替えにより、切削軌跡には、
図13Bに示すように、一の切削孔100に対応する凹部の輪郭線と、その一の切削孔100と重複する他の切削孔100に対応する凹部の輪郭線との交点に変曲点が生じる。このような変曲点が生じると、切削刃を金型用母材に対して往復移動させるFTS(Fast Tool Servo)の追従性が悪くなり、切削された金型の表面に、FTS振動により生じるバリと呼ばれる突起などの形状異常、あるいは、ビビリと呼ばれる面精度異常が発生しやすくなる。金型に形状異常が発生すると、例えば、この金型を用いて製造されるマイクロレンズアレイの光学特性に悪影響を及ぼすことが知られている。
【0009】
なお、
図13A,13Bにおいては、切削孔100が、平面視において楕円形状を有する例を用いて説明したが、切削孔100の形状はこれに限られるものではなく、要は、切削孔100同士が一部で重複する場合、同様の問題が生じる。
【0010】
上記のような問題点に鑑みてなされた本開示の目的は、切削方向に沿って配置され互いに一部で重複する複数の切削孔をより高精度に金型用母材に切削した金型を製造することができる金型製造方法および金型製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態に係る金型製造方法は、金型用母材に対して垂直方向に往復移動可能であるとともに、前記金型用母材の切削面に沿った、少なくとも一方向に相対的に移動可能な切削刃を備えた金型製造装置による金型製造方法であって、前記金型用母材への描画対象を構成する複数の切削孔それぞれに対応して、当該切削孔の配置および深さを示す階調信号を生成する信号生成ステップと、前記切削孔に対応する階調信号に基づき、前記切削孔の切削箇所で前記切削刃を往復移動させる前記切削刃の移動パターンを示す制御波形を生成する制御波形生成ステップと、前記制御波形に従い、前記切削刃を移動させ、前記金型用母材を切削する切削ステップと、を含み、前記一方向に並ぶ複数の切削孔それぞれが、1以上の他の切削孔と一部が重複するように配置され、前記制御波形生成ステップでは、前記一方向に並ぶ複数の切削孔のうち、互いに重複しない切削孔のグループごとに、当該グループを構成する切削孔に対応する階調信号に基づき制御波形を生成し、前記切削ステップでは、前記グループごとに生成された複数の制御波形それぞれに従い前記切削刃を移動させて、前記金型用母材を所定の深さで切削する。
【0012】
一実施形態に係る金型製造方法において、前記切削ステップでは、前記複数の制御波形それぞれに従った前記金型用母材の切削を、前記一方向に並ぶ複数の切削孔それぞれに対応する階調信号に示される深さに達するまで繰り返す。
【0013】
一実施形態に係る金型製造方法において、前記金型用母材は、円柱形状または円筒形状であり、円周方向に回転可能に保持される。
【0014】
一実施形態に係る金型製造方法において、前記切削孔は、球面形状、非球面形状または略矩形形状を有する。
【0015】
一実施形態に係る金型製造装置は、金型用母材に対して垂直方向に往復移動可能であるとともに、前記金型用母材の切削面に沿った、少なくとも一方向に相対的に移動可能な切削刃と、前記金型用母材への描画対象を構成する複数の切削孔それぞれに対応して、当該切削孔の配置および深さを示す階調信号を生成し、前記切削孔に対応する階調信号に基づき、前記切削孔の切削箇所で前記切削刃を往復移動させる前記切削刃の移動パターンを示す制御波形を生成する信号生成部と、前記制御波形に従い、前記切削刃を移動させ、前記金型用母材を切削する制御部と、を備え、前記信号生成部は、前記一方向に並ぶ複数の切削孔のうち、互いに重複しない切削孔のグループごとに、当該グループを構成する切削孔に対応する階調信号に基づき制御波形を生成し、前記制御部は、前記グループごとに生成された複数の制御波形それぞれに従い前記切削刃を移動させて、前記金型用母材を所定の深さで切削する。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、切削方向に沿って配置され互いに一部で重複する複数の切削孔をより高精度に金型用母材に切削した金型を製造することができる、金型製造方法および金型製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示の一実施形態に係るロール金型製造装置の構成例を示す図である。
【
図2A】
図1に示す切削刃の一例を示す図であり、切削刃を正面から見た図である。
【
図2B】
図1に示す切削刃を側面から見た図である。
【
図3】
図1に示す信号生成部による制御波形の生成について説明するための図である。一例を示す図である。
【
図4】切削孔の配置、および、
図1に示す信号生成部が生成する制御信号の一例を示す図である。
【
図5】
図1に示す制御部による切削について説明するための図である。
【
図6】
図1に示す金型製造装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7A】互いに重複する切削孔を連続して切削した場合の、制御波形および金型用母材に生じる振動を示す図である。
【
図7B】互いに重複する切削孔を連続して切削しない場合の、制御波形および金型用母材に生じる振動を示す図である。
【
図7C】
図7Aに示す制御波形に従い切削した金型用母材の表面をSEMにより撮影した図である。
【
図7D】
図7Bに示す制御波形に従い切削した金型用母材の表面をSEMにより撮影した図である。
【
図8】
図1に示す金型製造装置の動作の具体例を示すフローチャートである。
【
図9】制御波形に従った金型用母材の切削の詳細を示すフローチャートである。
【
図10A】本開示の実施例1に係る切削孔の配置パターンを示す図である。
【
図10B】本開示の実施例2に係る切削孔の配置パターンを示す図である。
【
図10C】本開示の実施例3に係る切削孔の配置パターンを示す図である。
【
図11A】本開示の実施例1に係る金型の表面を撮像した図である。
【
図11B】本開示の実施例2に係る金型の表面を撮像した図である。
【
図11C】本開示の実施例3に係る金型の表面を撮像した図である。
【
図11D】本開示の比較例1に係る金型の表面を撮像した図である。
【
図12A】本開示の実施例1に係る金型を用いて製造されたマイクロレンズアレイの表面をSEMにより撮影した図である。
【
図12B】本開示の実施例2に係る金型を用いて製造されたマイクロレンズアレイの表面をSEMにより撮影した図である。
【
図12C】本開示の実施例3に係る金型を用いて製造されたマイクロレンズアレイの表面をSEMにより撮影した図である。
【
図12D】本開示の比較例1に係る金型を用いて製造されたマイクロレンズアレイの表面をSEMにより撮影した図である。
【
図13A】複数の切削孔の配置パターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。各図中、同一符号は、同一または同等の構成要素を示している。
【0019】
図1は、本開示の一実施形態に係る金型製造装置10の構成例を示す図である。本実施形態に係る金型製造装置10は、描画対象に応じて、金型用母材である円筒状または円柱状のロール1を任意の切削箇所を任意の深さで切削した金型(ロール金型)を製造する製造装置である。なお、本実施形態においては、金型用母材が円筒状または円柱状のロール1である例を用いて説明するが、本開示はこれに限られるものではなく、金型用母材は、例えば、平板状であってもよい。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る金型製造装置10は、回転装置11と、切削刃12と、PZTステージ13と、切削工具用ステージ14と、信号生成部15と、制御部16と、増幅部17とを備える。
【0021】
回転装置11は、円筒状または円柱状のロール1を軸方向から支持し、ロール1を円周方向に回転させる。ロール1は、例えば、母材がSUS(Steel Use Stainless)などの金属で構成される。ロール1の表面には、Ni-PあるいはCuなどの快削性のめっきが施される。ロール1は、めっきに限られず、純銅あるいはアルミなどの快削性の材料であってもよい。回転装置11は、ロータリーエンコーダ11aを備える。
【0022】
ロータリーエンコーダ11aは、ロール1の回転位置に応じた信号を信号生成部15に出力する。ロール1の回転位置に応じた信号は、ロール1の回転位置が一回転における所定の基準位置に達するごとに出力されるトリガ信号と、ロール1が所定量回転するごとに出力されるパルス信号とを含む。
【0023】
切削刃12は、ロール1を切削する切削工具である。切削刃12は、例えば、セラミックチップ、ダイヤモンドチップあるいは超硬チップなどの硬質材料で構成される。
【0024】
PZTステージ13は、切削刃12を保持する。PZTステージ13は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)圧電素子を備え、駆動信号の電圧レベルに応じてPZT圧電素子が伸縮することで、切削刃12をロール1の径方向に往復移動させる。したがって、切削刃12は、PZTステージ13により、ロール1の径方向に往復移動可能である。なお、切削刃12を駆動する駆動手段は、PZT圧電素子に限られない。
【0025】
図2Aは切削刃12の一例を示す図であり、切削刃12を正面から見た図である。また、
図2Bは、
図2Aに示す切削刃12を側面から見た図である。
【0026】
図2Aに示す例では、切削刃12は、円形状を有する。切削刃12は、切削刃12の正面がロール1の円周方向に向かうように配置される。上述したように、ロール1は、円周方向に回転している。回転するロール1に向かって切削刃12をロール1の径方向に往復移動させることで、切削刃12は、見かけ上、
図2Bに示す破線矢印のように、半円状に移動する。円周方向に回転するロール1の径方向に往復移動する切削刃12による切削により、切削孔100(ロール1の凹部)の底面は曲面となる。具体的には、切削孔100には、切削刃12の円形部分の曲率と同じ曲率の円形状の底面が形成される。すなわち、切削刃12は、金型用母材に対して垂直方向(ロール1の径方向)に往復移動可能であるとともに、金型用母材の切削面に沿った、少なくとも一方向(ロール1の円周方向)に相対的に移動可能である。このような切削刃12により、ロール1(金型用母材)の切削面の一方向に沿って、切削孔100を形成することができる。
【0027】
なお、
図2Aでは、切削刃12は、円形状を有する例を用いて説明したが、この例に限られるものではない。切削刃12は、例えば、先端部が円錐、角錐などの錘状の形状を有していてもよい。また、切削刃12は、例えば、先端に向かって先細りの錘台状であってもよい。
【0028】
また、
図2Bにおいては、見かけ上、切削刃12を半円状に移動させる例を用いて説明したが、これに限られるものではない。見かけ上、切削刃12は、例えば、切削刃12を側面から見て台形状あるいは三角形状に移動してもよい。切削刃12の形状および切削刃12の見かけ上の移動の軌跡(切削軌跡)を変化させることで、開口が種々の形状の切削孔100を形成することができる。切削刃12の形状および切削軌跡を調整することで、球面形状、非球面形状または略矩形形状など種々の形状を有する切削孔100を形成することができる。
【0029】
図1を再び参照すると、切削工具用ステージ14は、PZTステージ13を保持し、切込軸方向(ロール1の径方向)と送り軸方向(ロール1の軸方向)とに移動する。切削工具用ステージ14が移動することで、切削工具用ステージ14に保持されたPZTステージ13および切削刃12も、切込軸方向および送り軸方向に移動する。ロール1を回転させながらPZTステージ13により切削刃12をロール1の径方向に往復移動させてロール1を切削するともに、PZTステージ13をロール1の径方向および軸方向に移動させることで、ロール1の全面に亘って切削孔100を形成することができる。
【0030】
信号生成部15は、描画対象を示す描画データが入力される。信号生成部15は、入力された描画データに基づき、ロール1を切削した複数の切削孔100の配置および複数の切削孔100の深さにより描画対象を表現した階調信号を生成する。描画データは、例えば、転写物に転写する凹凸パターンのデータである。また、描画データは、例えば、印刷物に印刷する画像などのデータである。信号生成部15は、入力された描画データに基づき、複数の切削孔100それぞれに対応する、当該切削孔100の配置および切削孔100の深さを示す階調信号を生成する。例えば、信号生成部15は、8段階の深さを示す階調信号を生成する。
【0031】
信号生成部15は、階調信号に基づき、切削刃12の移動パターンを示す制御波形を生成する。具体的には、信号生成部15は、階調信号に示される切削孔100の配置および切削孔100の深さでロール1が切削されるように、切削刃12をロール1の径方向に移動させる移動パターンを示す制御波形を生成する。
【0032】
信号生成部15は、ロータリーエンコーダ11aから出力された信号に基づき、階調信号で示される切削孔100の配置に対応するロール1の切削箇所を決定する。そして、信号生成部15は、決定した切削孔100の切削箇所で切削刃12を往復移動させる切削刃12の移動パターンを示す制御波形を生成する。
【0033】
信号生成部15による制御波形の生成について、より詳細に説明する。
【0034】
上述したように、ロータリーエンコーダ11aは、ロール1の回転位置が一回転における所定の基準位置に達するごとにトリガ信号を出力する。具体的には、ロータリーエンコーダ11aは、例えば、
図3に示すように、ロール1の回転位置が一回転における所定の基準位置に達するごとに立ち上がるパルス状の信号をトリガ信号として出力する。また、ロータリーエンコーダ11aは、
図3に示すように、ロール1が所定量回転するごとに立ち上がるパルス状の信号をパルス信号として出力する。ロータリーエンコーダ11aは、例えば、ロール1の一回転分を144万分割した回転量ごとに立ち上がるパルス状の信号をパルス信号として出力する。
【0035】
信号生成部15は、ロータリーエンコーダ11aが出力したトリガ信号およびパルス信号が入力される。信号生成部15は、トリガ信号の出力タイミング(トリガ信号が立ち上がるタイミング)を基準として、パルス信号をカウントする。そして、信号生成部15は、パルス信号のカウント数に応じて制御波形を生成する。トリガ信号の出力タイミングを基準としてパルス信号をカウントすることで、信号生成部15は、所定の基準位置からのロール1の回転位置を特定することができる。したがって、信号生成部15は、階調信号に示される複数の切削孔100の配置に対応するロール1の切削箇所で切削刃12をロール1の径方向に往復移動させる切削刃12の移動パターンを示す制御波形を生成することができる。
【0036】
図3に示すように、本実施形態においては、信号生成部15は、切削刃12の移動パターンの異なる複数の制御波形を生成する。
図3においては、信号生成部15は、2つの制御波形を生成する例を示している。
【0037】
図4は、複数の切削孔100の配置の一例、および、当該複数の切削孔100を切削するために信号生成部15が生成する制御波形の一例を示す図である。以下では、
図4に示すように、複数の切削孔100が、切削方向(紙面縦方向)および切削方向と直交する方向(紙面横方向)とに並んで配置され、切削方向に配置された切削孔100同士が一部で重複している場合を例として説明する。なお、
図4においては、切削方向に隣り合う切削孔100同士が一部で重複する例を示しているが、切削方向に並ぶ2以上の切削孔100が重複してもよい。
【0038】
信号生成部15は、切削方向に並ぶ複数の切削孔100(切削孔100A,100B,100C,100D)のうち、互いに重複しない切削孔100のグループごとに、当該グループを構成する切削孔100に対応する階調信号に基づき制御波形を生成する。
図4に示す例では、信号生成部15は、切削孔100Aおよび切削孔100Aと重複しない切削孔100Cに対応する階調信号に基づき、切削刃12の移動パターンを示す第1の制御波形を生成する。また、信号生成部15は、切削孔100Bおよび切削孔100Dに対応する階調信号に基づき、切削刃12の移動パターンを示す第2の制御波形を生成する。
【0039】
このように、信号生成部15は、互いに重複する切削孔100を連続して切削することがないように、
図4に示す例では、切削方向に並ぶ切削孔100を1個飛ばしで切削するような複数の制御波形を生成する。なお、
図4においては、切削方向に並ぶ切削孔100を1個飛ばしで切削するような制御波形を信号生成部15が生成する例を示しているが、これに限られるものではい。例えば、信号生成部15は、切削方向に並ぶ2以上の切削孔100が重複する場合、その重複する数だけ切削孔100を飛ばした制御波形を生成する。
【0040】
図1を再び参照すると、信号生成部15は、生成した階調信号および制御波形を制御部16に出力する。
【0041】
制御部16は、信号生成部15により生成された制御波形に従い、切削刃12をロール1の径方向に往復移動させてロール1を切削する。具体的には、制御部16は、制御波形に基づき、PZTステージ13を駆動する駆動信号を生成し、増幅部17に出力する。増幅部17により駆動信号が増幅され、増幅された駆動信号によりPZTステージ13が駆動される。また、制御部16は、階調信号に従い、信号生成部15により決定された切削箇所を、ロール1の径方向に往復移動する切削刃12により1または複数回切削する切削工程が行われるように、切削工具用ステージ14をロール1の径方向および軸方向に移動させる。こうすることで、往復移動する切削刃12により、階調信号に応じた所定の切削箇所が所定の深さでロール1が切削される。上述したように、本実施形態においては、ロータリーエンコーダ11aから出力された信号に基づき切削箇所を決定しているため、描画対象に応じて任意の切削箇所を任意の深さでより高精度に切削することができる。
【0042】
図4を参照して説明したように、本実施形態においては、信号生成部15からは複数の制御波形(
図4の例では、第1の制御波形および第2の制御波形)が出力される。制御部16は、複数の制御波形のうち、一の制御波形に従い切削刃12を移動させ、ロール1を所定の深さで切削する。次に、制御部16は、別の制御波形に従い、切削刃12を移動させ、ロール1を所定の深さで切削する。制御部16は、各切削孔100が対応する階調信号に示される深さに達するまで切削を繰り返す。すなわち、制御部16は、グループごとに生成された複数の制御波形それぞれに従い切削刃12を移動させて、金型用母材を所定の深さで切削する。そして、制御部16は、複数の制御波形それぞれに従ったロール1の切削を、切削方向に並ぶ複数の切削孔100それぞれに対応する階調信号に示される深さに達するまで繰り返す。
【0043】
したがって、
図4に示す例では、制御部16は、第1の制御波形に従い切削刃12を移動させて、
図5に示すように、ロール1(金型用母材)に切削孔100Aおよび切削孔100Cを所定の深さで切削する。その後、信号生成部15は、第2の制御波形に従い切削刃12を移動させて、
図5に示すように、ロール1(金型用母材)に切削孔100Bおよび切削孔100Dを所定の深さで切削する。制御部16は、第1の制御波形および第2の制御波形に従った切削を、切削方向に並ぶ複数の切削孔100(切削孔100A,100B,100C,100D)がそれぞれ対応する階調信号に示される深さに達するまで繰り返す。
【0044】
次に、本実施形態に係る金型製造装置10の動作について説明する。
図6は、本実施形態に係る金型製造装置10の動作の一例を示すフローチャートであり、金型製造装置10による金型製造方法について説明するための図である。
【0045】
信号生成部15は、金型用母材(ロール1)への描画対象を構成する複数の切削孔100それぞれに対応して、当該切削孔100の配置および深さを示す階調信号を生成する(ステップS1)。
【0046】
次に、信号生成部15は、切削孔100に対応する階調信号に基づき、当該切削孔100の切削箇所で切削刃12を往復移動させる切削刃12の移動パターンを示す制御波形を生成する(ステップS2)。ここで、信号生成部15は、一方向に並ぶ複数の切削孔100のうち、互いに重複しない切削孔100のグループごとに、当該グループを構成する切削孔100に対応する階調信号に基づき制御波形を生成する。
図4に示す例では、信号生成部15は、切削孔100Aおよび切削孔100Cに対応する階調信号に基づき、切削刃12の移動パターンを示す第1の制御波形を生成する。また、信号生成部15は、切削孔100Bおよび切削孔100Dに対応する階調信号に基づき、切削刃12の移動パターンを示す第2の制御波形を生成する。
【0047】
制御部16は、制御波形に従い、切削刃12を移動させ、金型用母材(ロール1)を切削する(ステップS3)。ここで、制御部16は、グループごとに生成された複数の制御波形それぞれに従い切削刃12を移動させて、金型用母材(ロール1)を所定の深さで切削する。
図4に示す例では、制御部16は、第1の制御波形に従い切削刃12を移動させて、切削孔100Aおよび切削孔100Cに対応する位置を所定の深さで切削する。その後、制御部16は、第2の制御波形に従い切削刃12を移動させて、切削孔100Bおよび切削孔100Dに対応する位置を所定の深さで切削する。
【0048】
図7Aは、
図13Bに示すように、互いに重複する切削孔を連続して切削した場合の制御波形、および、当該制御波形に従い切削した場合に金型用母材に生じる振動を示す図である。また、
図7Bは、本実施形態のように、互いに重複する切削孔が連続して切削されないように切削した場合の制御波形、および、当該制御波形に従い切削した場合に金型用母材に生じる振動を示す図である。また、
図7Cは、
図7Aに示す制御波形に従い切削した金型用母材の表面をSEM(Scanning Electron Microscope)により撮影した図である。また、
図7Dは、
図7Bに示す制御波形に従い切削した金型用母材の表面をSEMにより撮影した図である。
図7A,7Bでは、制御波形が三角波形状である、すなわち、断面視において三角形状の切削孔を切削した場合を示している。
【0049】
図7A,7Bに示すように、互いに重複する切削孔を連続的に切削する場合、互いに重複する切削孔を連続的に切削しない場合と比べて、金型用母材に低振幅で短周期の細かな振動が発生した。このような細かな振動が生じると、FTSの追従性が悪くなる。その結果、
図7Cに示すように、
図7Aに示す制御波形に従い切削した金型用母材においては、金型用母材の表面に縞状の形状異常が観察された。一方、本実施形態では、
図7Bに示すように、細かな振動の発生が抑制されるため、形状異常の発生を抑制し、切削方向に並ぶ切削孔100同士が一部で重複する複数の切削孔100をより高精度に金型用母材に切削した金型を製造することができる。従って、
図7Dに示すように、
図7Bに示す制御波形に従い切削した金型用母材においては、金型用母材の表面に、
図7Cに示すような形状異常は観察されなかった。
【0050】
図8は、本実施形態に係る金型製造装置10の動作の具体例を示すフローチャートである。
【0051】
まず、回転装置11にロール1が載置される(ステップS101)。
【0052】
次に、ロール1に対して、ロール1の表面のめっき層を平坦化する平面加工が行われる(ステップS102)。
【0053】
次に、切削工具用ステージ14にPZTステージ13がセッティングされる(ステップS103)。
【0054】
次に、PZTステージ13に切削刃12がセッティングされる(ステップS104)。
【0055】
次に、信号生成部15により制御波形が生成される(S105)。上述したように、制御波形は、一部が互いに重複する複数の切削孔100が連続して切削されることがないように、複数の制御波形を生成する。
【0056】
次に、回転装置11の回転速度が設定され(ステップS106)、回転装置11が、設定された回転速度でロール1の回転を開始させる(ステップS107)。
【0057】
次に、切削工具用ステージ14の位置が、送り軸方向のスタート位置と切込軸方向のスタート位置とに設定され(ステップS108、S109)、切削工具用ステージ14は、駆動を開始する(ステップS110)。
【0058】
信号生成部15により生成された階調信号に従い、切削工具用ステージ14が移動するとともに、信号生成部15により生成された制御波形に従い、切削刃12がロール1の径方向に往復移動することで、ロール1が切削される(ステップS111)。制御波形に従ったロール1の切削の詳細については後述する。
【0059】
切削工具用ステージ14が送り軸方向の終了位置まで移動すると、切削が完了する(ステップS112)。
【0060】
切削刃12に摩耗が生じ、切削刃12を交換する必要が有る場合、切削刃12の交換(ステップS113)および切削刃12の位置決め(ステップS114)が行われ、その後、ステップS108からステップS114の処理が繰り返される。
【0061】
図9は、制御波形に従ったロール1の切削の詳細を示すフローチャートである。
図9においては、
図4に示す、第1の制御波形および第2の制御波形に従いロール1を切削する場合を例として説明する。
【0062】
本実施形態においては、階調信号に示される深さまで切削孔100を切削する際に、複数回に分けて切削する。したがって、1回の切削での切削深さは、階調信号に示される切削孔100の深さよりも小さい。金型用母材を一度に大きく切削すると、バリと呼ばれる突起が生じることがある。本実施形態のように、複数回に分けて切削孔100を切削することで、一回当たりの切削深さは小さくなり、バリの発生を抑制することができる。
【0063】
まず、制御部16は、第1の制御波形に従い切削刃12を移動させて、金型用母材を所定の深さで切削する(ステップS201)。金型用母材を切削する深さは、階調信号に示される切削孔100(切削孔100Aおよび切削孔100C)の深さよりも小さい。
【0064】
送り軸方向に切削の終了位置まで切削が完了すると、制御部16は、切削刃12を切り込み軸方向および送り軸方向のスタート位置に切削刃を戻す(ステップS202)。
【0065】
次に、制御部16は、第2の制御波形に従い切削刃12を移動させて、金型用母材を所定の深さで切削する(ステップS203)。金型用母材を切削する深さは、階調信号に示される切削孔100(切削孔100Bおよび切削孔100D)の深さよりも小さい。
【0066】
送り軸方向に切削の終了位置まで切削が完了すると、制御部16は、切削刃12を切り込み軸方向および送り軸方向のスタート位置に切削刃を戻し(ステップS204)、ステップS201の処理に戻る。制御部16は、ステップS201からステップS204の処理を、複数の切削孔100(切削孔100A,100B,100C,100D)の深さが階調信号に示される深さになるまで繰り返す。このように、制御部16は、第1の制御波形に従った金型用母材の切削と、第2の制御波形に従った金型用母材の切削とを、複数の切削孔100それぞれの深さが、対応する階調信号に示される深さに達するまで繰り返す。こうすることで、一回当たりに切削する深さを小さくし、バリの発生を抑制することができる。
【0067】
このように本実施形態に係る金型製造方法は、金型用母材(ロール1)への描画対象を構成する複数の切削孔100それぞれに対応して、当該切削孔100の配置および深さを示す階調信号を生成する信号生成ステップ(ステップS1)と、切削孔100に対応する階調信号に基づき、切削孔100の切削箇所で切削刃12を往復移動させる切削刃12の移動パターンを示す制御波形を生成する制御波形生成ステップ(ステップS2)と、制御波形に従い、切削刃12を移動させ、金型用母材を切削する切削ステップ(ステップS3)と、を含む。制御波形生成ステップでは、一方向(切削方向)に並ぶ複数の切削孔100のうち、互いに重複しない切削孔100のグループごとに、当該グループを構成する切削孔100に対応する階調信号に基づき制御波形を生成する。切削ステップでは、グループごとに生成された複数の制御波形それぞれに従い切削刃12を移動させて、金型用母材を所定の深さで切削する。
【0068】
また、本実施形態に係る金型製造装置10は、金型用母材(ロール1)に対して垂直方向に往復移動可能であるとともに、金型用母材の切削面に沿った、少なくとも一方向に相対的に移動可能な切削刃12と、金型用母材への描画対象を構成する複数の切削孔100それぞれに対応して、当該切削孔100の配置および深さを示す階調信号を生成し、切削孔100に対応する階調信号に基づき、切削孔100の切削箇所で切削刃12を往復移動させる切削刃12の移動パターンを示す制御波形を生成する信号生成部15と、制御波形に従い、切削刃12を移動させ、金型用母材を切削する制御部16と、を備える。信号生成部15は、一方向に並ぶ複数の切削孔100のうち、互いに重複しない切削孔100のグループごとに、当該グループを構成する切削孔100に対応する階調信号に基づき制御波形を生成する。制御部16は、グループごとに生成された複数の制御波形それぞれに従い切削刃12を移動させて、金型用母材を所定の深さで切削する。
【0069】
互いに重複しない切削孔100のグループごとに生成した制御波形に従い切削することで、互いに重複する切削孔100を連続的に切削する場合と比べて、金型用母材に細かな振動が発生することを抑制することができる。その結果。本開示に係る金型製造方法および金型製造装置10によれば、形状異常の発生を抑制し、切削方向に並ぶ切削孔100同士が一部で重複する複数の切削孔100をより高精度に金型用母材に切削した金型を製造することができる。
【実施例0070】
次に、実施例および比較例を挙げて本開示をより具体的に説明するが、本開示は下記実施例に制限されるものではない。
【0071】
(実施例1)
SUS304の表面に銅めっきを施したロールを用意した。ロールの直径は130mmであり、ロールの長さは250mmであった。
【0072】
次に、用意したロールを本実施形態に係る金型製造装置に載置し、ロール表面の銅メッキ層に平面加工を行った。平面加工後のロールを切削して、切削孔を形成した。切削刃としては、先端の半径が0.02mmであり、正面から見て円形状のダイヤモンドチップからなる切削刃を用いた。
【0073】
本実施例では、周方向の曲率が30μm、幅方向の曲率が20μmである切削孔を、
図10Aに示すように、周方向には48μmピッチで、幅方向には24μmピッチで正方配列した。切削孔の深さは、7.5μmとし、切削深さが3μmの切削を1回、切削深さが1μmの切削を4回、および、切削深さが0.5μmの切削を1回行った。制御波形は、ロールの周方向の切削軌跡の曲率半径が30μmとなり、1個飛ばしで切削孔の切削が行われる波形とした。ロールの回転数は2min
-1とした。
【0074】
(実施例2)
本実施例では、周方向の曲率が100μm、幅方向の曲率が20μmである切削孔を、
図10Bに示すように、周方向には30μmピッチで、幅方向には20μmピッチで正方配列した。切削孔の深さは、4.5μmとし、切削深さが3μmの切削を1回、切削深さが1μmの切削を1回、および、切削深さが0.5μmの切削を1回行った。制御波形は、2個飛ばしで切削孔の切削が行われるような波形とした。ロールの回転数は2.5min
-1とした。その他の条件は実施例1と同じとした。
【0075】
(実施例3)
本実施例では、周方向の曲率が180μm、幅方向の曲率が20μmである切削孔を、
図10Cに示すように、周方向には30μmピッチで、幅方向には20μmピッチで正方配列した。切削孔の深さは、8μmとし、切削深さが3μmの切削を1回、切削深さが2.5μmの切削を1回、切削深さが1μmの切削を2回、および、切削深さが0.5μmの切削を1回行った。制御波形は、3個飛ばしで切削孔の切削が行われるような波形とした。ロールの回転数は4min
-1とした。その他の条件は実施例1と同じとした。
【0076】
(比較例1)
比較例1では、制御波形は、隣り合う切削孔の切削が連続して行われるような波形とした。その他の条件は実施例1と同じとした。
【0077】
次に、実施例1-3および比較例1に係るロール金型を用いて、マイクロレンズアレイを製造した。マイクロレンズアレイは、以下のように製造した。すなわち、PET(Polyethyleneterephthalate)からなる基材上に、未硬化のアクリル系UV硬化樹脂を滴下して、硬化性樹脂層を形成した。次に、形成した硬化性樹脂層に製造したロール金型を押し付け、この状態で硬化性樹脂層にUV光を照射して、硬化性樹脂層を硬化させた。硬化性樹脂層の硬化後、ロール金型から硬化した硬化性樹脂層を剥離して、マイクロレンズアレイを製造した。
【0078】
次に、実施例1-3に係るロール金型および比較例1に係るロール金型の表面をマイクロスコープにより観察した。また、これらのロール金型を用いて製造したマイクレンズアレイの表面を、SEMにより観察した。
【0079】
図11Aは、実施例1に係るロール金型の表面をマイクロスコープにより撮像した図である。
図11Bは、実施例2に係るロール金型の表面をマイクロスコープにより撮像した図である。
図11Cは、実施例1に係るロール金型の表面をマイクロスコープにより撮像した図である。
図11Dは、比較例1に係るロール金型の表面をマイクロスコープにより撮像した図である。
【0080】
図12Aは、実施例1に係るロール金型を用いて製造されたマイクロレンズアレイの表面をSEM(Scanning Electron Microscope)により撮影した図である。
図12Bは、実施例2に係るロール金型を用いて製造されたマイクロレンズアレイの表面をSEMにより撮影した図である。
図12Cは、実施例3に係るロール金型を用いて製造されたマイクロレンズアレイの表面をSEMにより撮影した図である。
図12Dは、比較例1に係るロール金型を用いて製造されたマイクロレンズアレイの表面をSEMにより撮影した図である。
【0081】
図11A-11Cに示すように、実施例1-3に係るロール金型においては、形状異常は観察されなかった。その結果、
図12A~
図12Cに示すように、実施例1-3に係るロール金型を用いて製造されたマイクロレンズアレイにおいても形状異常は観察されなかった。
【0082】
一方、
図11Dに示すように、比較例1に係るロール金型においては、隣り合う切削孔の境界付近で、形状異常が観察された。その結果、
図12Dに示すように、比較例1に係るロール金型を用いて製造されたマイクロレンズアレイにおいても形状異常が観察された。
【0083】
信号生成部15および制御部16は、例えば、メモリおよびプロセッサを備えるコンピュータにより構成される。信号生成部15および制御部16がコンピュータにより構成される場合、信号生成部15および制御部16は、メモリに記憶された本実施形態に係るプログラムをプロセッサが読み出して実行することで実現される。
【0084】
また、信号生成部15および制御部16の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムは、コンピュータが読取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。このような記録媒体を用いれば、プログラムをコンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録された記録媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMあるいはDVD-ROMなどの記録媒体であってもよい。
【0085】
本開示は、上述した各実施形態で特定された構成に限定されず、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、各構成部などに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部などを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。