(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008267
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】デジタルサイネージ装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20240112BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20240112BHJP
G09F 19/22 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G09F9/00 304B
G09F9/00 347A
G09F9/00 350Z
G02F1/1333
G09F19/22 P
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109992
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】516043410
【氏名又は名称】株式会社ユニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100110881
【弁理士】
【氏名又は名称】首藤 宏平
(72)【発明者】
【氏名】船橋 武
(72)【発明者】
【氏名】梅田 剛
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 友崇
【テーマコード(参考)】
2H189
5G435
【Fターム(参考)】
2H189AA52
2H189AA70
2H189AA84
2H189AA86
2H189AA87
2H189LA24
5G435BB12
5G435EE02
5G435EE09
5G435EE13
5G435GG44
5G435KK02
5G435LL19
(57)【要約】
【課題】 外部から空気を取り入れて排出する機構を設けることなく密閉構造の筐体内で表示機器を冷却して温度上昇を抑制し得るデジタルサイネージ装置を提供する。
【解決手段】 所定の情報を表示するデジタルサイネージ装置(1)は、表示面を有する表示部(22)と、表示部を収納する密閉構造の筐体(40~44)と、筐体内部の下端に配置された1又は複数の循環ファン(24)と、筐体内部の温度を測定する温度センサと、温度センサの測定結果に応じて循環ファンの動作を制御する制御部を備え、循環ファンの動作時には筐体内部の空気が表示部の前面及び後面において筐体の下端から上端に向かった後に上端から下端に向かって循環する(P1、P2)ことを特徴としている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外に設置され、所定の情報を表示するデジタルサイネージ装置であって、
前記デジタルサイネージ装置の設置面に平行な第1の方向及び前記設置面に直交する第2の方向に延在する表示面を有する表示部と、
前記表示部を収納する密閉構造の筐体と、
少なくとも前記筐体内部の下端に配置される1又は複数の循環ファンと、
前記筐体内部の温度を測定する温度センサと、
前記温度センサの測定結果に応じて、前記1又は複数の循環ファンの動作を制御する制御部と、
を備え、
前記1又は複数の循環ファンの動作時には、前記筐体内部の空気が、前記表示部の前面及び後面において前記第2の方向に沿って前記筐体の下端から上端に向かった後に前記上端から前記下端に向かって循環することを特徴とするデジタルサイネージ装置。
【請求項2】
前記1又は複数の循環ファンは、前記第1の方向に一致する回転軸を有する1又は複数のクロスフローファンであることを特徴とする請求項1に記載のデジタルサイネージ装置。
【請求項3】
前記表示部は、反射型の液晶パネルを用いて構成されることを特徴とする請求項1に記載のデジタルサイネージ装置。
【請求項4】
ソーラーパネルと、
電力を蓄える蓄電池と、
前記ソーラーパネルと前記蓄電池との間の充放電を制御する電源制御部と、
を更に備え、
前記デジタルサイネージ装置は前記ソーラーパネル及び前記蓄電池からの電力供給により動作することを特徴とする請求項1に記載のデジタルサイネージ装置。
【請求項5】
前記筐体を構成するフレームの主要部は、アルミニウムを用いて押し出し方式により形成されることを特徴とする請求項1に記載のデジタルサイネージ装置。
【請求項6】
前記表示部の背面側の前記フレームの中央部に形成された開口部を覆う放熱板を更に備え、
前記放熱板はアルミニウムを用いて形成され、前記放熱板の内面に複数の電子デバイスが載置されていることを特徴とする請求項1に記載のデジタルサイネージ装置。
【請求項7】
遠隔地に設置されたコントールセンターとの間で通信ネットワークを介して情報を送受信し、前記コントロールセンターによる遠隔操作を可能に構成された請求項1に記載のデジタルサイネージ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多様な場所に設置され、所定の情報を液晶パネル等の表示画面に表示するデジタルサイネージ装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、工事現場や建設現場などにおいて、液晶パネルを用いた屋外向けデジタルサイネージが設置される例が増えている(例えば、特許文献1参照)。この種のデジタルサイネージの用途としては、朝礼時に作業員に所定の情報を説明することや、建設現場の仕切り塀の一角に設置して近隣住民に告知することなどを挙げることができる。このような屋外向けデジタルサイネージは、太陽光が表示面に当たると著しく見づらくなるので、液晶パネルのバックライトを十分に発光させることで視認性を確保する必要がある。しかし、バックライド輝度を高めることは、機器内の温度上昇をもたらし、結果的に内部の電子デバイス等の正常動作が保たれなくなる恐れがある。そのための対策として、表示機器の筐体に吸気口と排気口を形成し、吸気口から外部の空気を筐体内に取り入れて表示機器を冷却し、筐体内の空気を排気口から排出する吸排気機構が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6410039号公報
【特許文献2】特開2017-173406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のデジタルサイネージのように外部の空気を筐体内に取り入れる機構を採用すると、屋外に設置された状態で雨天の際には、極めて高い湿気を持つ空気を筐体内に取り込むことになる。これにより、デジタルサイネージ内の湿気に弱い電子機器に悪影響を及ぼす恐れがある。また、屋外向けのデジタルサイネージは、鉄道の近傍に設置される場合には鉄道から浮遊する鉄粉を取り込んだり、火山の近傍に設置される場合は硫黄が充満する空気を取り込んだりする懸念があり、いずれの場合も電子機器への悪影響は避けられない。また、表示機器として液晶パネルを用いる場合は、外部から空気とともに取り込まれた埃が液晶前面に配置されたガラスの内側に張り付き、表示状態に支障を来す恐れがある。さらに、外部から空気を取り入れて排出するための吸排気機構は大きな電力を必要とするので、電源インフラが整備されていない環境においてデジタルサイネージを設置することは難しい。
【0005】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、屋外に設置されるデジタルサイネージ装置において、外部から空気を取り入れて排出する機構を設けることのない密閉構造の筐体を用いつつ、表示部やその他のデバイス群の温度上昇に起因する不具合を防止し得るデジタルサイネージ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のデジタルサイネージ装置は、屋外に設置され、所定の情報を表示するデジタルサイネージ装置(1)であって、前記デジタルサイネージ装置の設置面に平行な第1の方向(X)及び前記設置面に直交する第2の方向(Z)に延在する表示面を有する表示部(22)と、前記表示部を収納する密閉構造の筐体と、少なくとも前記筐体内部の下端に配置される1又は複数の循環ファン(24)と、前記筐体内部の温度を測定する温度センサ(25)と、前記温度センサの測定結果に応じて、前記1又は複数の循環ファンの動作を制御する制御部(21)とを備えている。前記1又は複数の循環ファンの動作時には、前記筐体内部の空気が、前記表示部の前面及び後面において前記第2の方向に沿って前記筐体の下端から上端に向かった後に前記上端から前記下端に向かって循環することを特徴としている。
【0007】
本発明のデジタルサイネージ装置によれば、デジタルサイネージ装置の筐体に吸排気機構を設ける必要がなくなるので、外部からの湿気や埃やその他の物質が筐体内に取り込まれることに起因する不具合を確実に防ぐことができる。また、表示部や他の電子機器により筐体内部の温度が上昇すると、温度センサの測定結果に応じて制御部が1又は複数の循環ファンを動作させ、筐体内部の下端に配置された循環ファンから空気が第2の方向に沿って筐体の上端に向かった後に下端に向かうことで、表示部の前面及び後面において空気の循環を生じさせる。これにより、1又は複数の循環ファンによる空気の循環が表示部や電子機器の温度上昇を効果的に抑制し、筐体内の温度を均一化させるので、表示部や電子機器の動作の不具合を有効に防止することができる。
【0008】
本発明の1又は複数の循環ファンとして、前記第1の方向に一致する回転軸を有する1又は複数のクロスフローファンを用いることができる。これにより、回転軸の方向に細長いクロスフローファンは、コンパクトで薄型の筐体内への配置が容易であるとともに、上下方向の空気の流れを確実に作り出すことができる。
【0009】
本発明の表示部は、反射型の液晶パネルを用いて構成することができる。これにより、日中は太陽光の反射を利用して表示可能となるので、強力なバックライトが不要になり、液晶パネルの消費電力を低減して発熱を小さくすることが可能となる。
【0010】
本発明において、ソーラーパネルと、電力を蓄える蓄電池と、ソーラーパネルと蓄電池との間の充放電を制御する電源制御部とを更に設け、デジタルサイネージ装置をソーラーパネル及び蓄電池からの電力供給により動作させることができる。これにより、ソーラーパネルと蓄電池を組み合わせて、電源インフラがない環境下であってもデジタルサイネージ装置を稼働させることができるとともに、全体の消費電力の低減が可能となる。
【0011】
本発明の筐体を構成するフレームの主要部は、アルミニウムを用いた押し出し方式により形成することができる。これにより、フレームの断面構造の突起物からの放熱を増加させ、筐体外部への効果的な放熱が可能となる。
【0012】
本発明において、表示部の背面側のフレームの中央部に形成された開口部を覆う放熱板を更に設け、この放熱板はアルミニウムを用いて形成され、放熱板の内側には複数の電子デバイスを載置することができる。これにより、発熱量の大きい電子デバイス群を集中的に配置することで、効率的な放熱が可能になるとともに、各種スイッチや配線を集中させることで、操作者による操作が容易になる。
【0013】
本発明において、遠隔地に設置されたコントールセンターとの間で通信ネットワークを介して情報を送受信し、コントロールセンターによる遠隔操作を可能に構成することができる。これにより、多数のデジタルサイネージ装置を分散して設置した場合であっても、それらを遠隔地のコントロールセンターから効率的に制御するとともに、カメラの画像情報等を収集して管理可能となる。
【発明の効果】
【0014】
以上述べたように、本発明によれば、屋外に設置されるデジタルサイネージ装置において、密閉構造の筐体内に表示部を収納しつつ、1又は複数の循環ファンを用いて表示部の周囲で空気を循環させるようにしたので、表示部の温度上昇を効果的に抑制するとともに、筐体に吸排気機構を設けることによる湿気、埃その他の物質の取り込みに起因する不具合を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態のデジタルサイネージ装置1の外観を示す図である。
【
図2】デジタルサイネージ装置1の機能ブロックを示す図である。
【
図3】デジタルサイネージ本体2の模式的な分解図である。
【
図4】デジタルサイネージ本体2の内部構造において、クロスフローファン24による空気の流れを模式的に示した図である。
【
図5】クロスフローファン24の断面構造を示す図である。
【
図6】放熱板44の外面の構造と内面の構造とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用したデジタルサイネージ装置の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のデジタルサイネージ装置1全体の外観を示す図であって、前方から見た正面図を
図1(A)に示すとともに、斜め後方から見た斜視図を
図1(B)に示している。
図1において、本実施形態のデジタルサイネージ装置1は、デジタルサイネージ本体2と、電源制御ユニット3と、ソーラーパネル4と、台座部5とにより構成されている。
【0017】
本実施形態のデジタルサイネージ装置1は、例えば、工事現場や建設現場などの屋外に設置される。そして、複数の支持脚や複数の支持台を組み合わせてなる台座部5が平坦な設置面に設置され、その台座部5にデジタルサイネージ本体2と、電源制御ユニット3と、ソーラーパネル4がそれぞれ取り付けられている。デジタルサイネージ本体2の全体は密閉構造の筐体に収納され、その前面側には、表示部である後述の液晶パネルが配置され、作業員や付近の民間人が前面側から表示情報を視認できるようになっている。デジタルサイネージ本体2の構成及び内部構造については後述する。ソーラーパネル4は太陽光を電力に変換し、電源制御ユニット5はソーラーパネル4から送られる電力を後述の蓄電池に充電しつつデジタルサイネージ本体2への電源供給を制御する。
【0018】
次に
図2は、本実施形態のデジタルサイネージ装置1の機能ブロックを示す図である。
図2に示すデジタルサイネージ装置1は、
図1を用いて説明したように、デジタルサイネージ本体2と、電源制御ユニット3と、ソーラーパネル4とに機能区分されるとともに、通信ネットワークNを介して外部のコントールセンター6と接続されている。このコントールセンター6は、遠隔地からデジタルサイネージ装置1との間で種々の情報を送受信して動作を制御する役割がある。また、通信ネットワークNは、例えば、インターネットとそれに接続される移動通信回線や無線LANなどが含まれる。
【0019】
図2において、デジタルサイネージ本体2は、電源部20と、メイン制御部21と、液晶パネル22と、スピーカ23と、クロスフローファン24と、温度センサ25と、人感センサ26と、照度センサ27と、カメラ28と、PC29とを備えて構成されている。また、
図2において、電源制御ユニット3は、電源制御部30と、変換部31と、蓄電池32と、温度センサ33と、ヒータ34とを備えて構成されている。
【0020】
以上の構成において、ソーラーパネル4は、日中に照射される太陽光により発電を行い、得られた電力を電源制御ユニット3に送出する。電源制御ユニット3のうち電源制御部30は、ソーラーパネル4から供給される電力を受け、蓄電池32に対し充放電する。そして、変換部31は、電源制御部30から出力される直流電圧を、インバータ等を用いて交流電圧に変換し、その交流電圧をデジタルサイネージ本体2に出力する。ここで、所定温度以下の場合は蓄電池32への充電に支障を来すので、電源制御部30は温度センサ33からの出力に応じて、ヒータ34を動作させ、蓄電池32が十分な温度を保つように制御する。なお、
図2には示されないが、ソーラーパネル4に加えて、一般的な外部交流電源への接続手段を併設し、いずれかを選択的に用いる構成を採用してもよい。
【0021】
次に、デジタルサイネージ本体2のうち電源部20は、電源制御部30から供給される交流電圧を直流電圧に変換し、デジタルサイネージ本体2内の各部に供給する。なお、電源部20には、デジタルサイネージ本体2を起動させる電源スイッチ(
図6)が設けられている。メイン制御部21は、デジタルサイネージ本体2における各種センサの監視及びその結果に応じた制御を行い、電源制御ユニット3の電源制御部30、液晶パネル22のバックライト22a、クロスフローファン24などへの制御信号を送出する。なお、メイン制御部21により行われる具体的な制御については後述する。
【0022】
図2において、液晶パネル22は内部にバックライト22aを有し、一体的に所定の情報を表示する表示部を構成している。本実施形態のデジタルサイネージ装置1では、反射型の液晶パネル22を採用し、太陽光の反射による光とバックライト22aからの透過光のそれぞれを用いた表示を可能としている。例えば、液晶パネル22の反射電極に透過用の多数の穴を形成することで、日中の太陽光の照射時には反射光を利用して表示可能であるため、バックライト22aを消灯させたとしても視認性を確保できる。一方、夜間には反射光が利用できないため、バックライト22aからの少しの光を透過させる機能を有する。そのため、メイン制御部21は、照度センサ27により検知される照度に応じて、バックライト22aの動作を制御している。このような構成の表示部を採用することで、比較的小さい電力で表示部を動作させることができ、機器内の発熱を抑制することができる。
【0023】
液晶パネル22の前面上部には温度センサ25が設けられている。なお、目的に応じて複数の温度センサ25を設けることができる。メイン制御部21は、温度センサ25により検知される温度に応じて、デジタルサイネージ本体2の底面に設置されたクロスフローファン24の動作を制御する。クロスフローファン24は、温度が所定値より上昇したときに、主に液晶パネル22の前面及び後面に沿って空気の流れを循環させることで、表示部内の温度を均一化する役割があるが、具体的な構造及び動作については後述する。また、デジタルサイネージ本体2上部には人感センサ26が設けられている。人感センサ26は、デジタルサイネージ装置1の前面領域に人が存在することを検知し、人が存在しない場合には表示部の情報の表示は不要となるので、メイン制御部21がデジタルサイネージ本体2内部の主要機器の電源を停止してスリープ状態に移行する。
【0024】
また、デジタルサイネージ本体2には、一般的なオペレーティングシステムにより動作するPC(Personal Computer)29が設置されている。PC29は、コントロールセンター6と通信ネットワークNを介して通信を行い、メイン制御部21、液晶パネル22、スピーカ23のそれぞれの動作を制御し、かつカメラ28からの画像情報を受信する。すなわち、PC29は、コントロールセンター6の遠隔制御に応じて、メイン制御部21と制御情報をやり取りしつつ、液晶パネル22への所定の情報の表示及びスピーカ23からの音声出力を行うとともに、必要に応じてカメラ28からの画像情報を収集してコントロールセンター6に送信する。カメラ28の画像情報により、デジタルサイネージ装置1の前にいる人物や通行人などを判断可能となる。
【0025】
次に、
図3~
図6を用いて、デジタルサイネージ本体2の構造及び冷却方法について説明する。
図3は、デジタルサイネージ本体2の模式的な分解図を示している。本実施形態におけるデジタルサイネージ本体2の構造上の特徴は、密閉構造の筐体を採用している点である。なお、
図3においては、説明の便宜のため、互いに直交するX方向、Y方向、Z方向をそれぞれ矢印にて示している。このうち、Z方向(本発明の第2の方向)はデジタルサイネージ装置1の設置面に対して垂直方向(上下方向)であり、X方向(本発明の第1の方向)及びY方向は設置面に平行な方向である。また、デジタルサイネージ本体2の表示面は、XZ平面に延在するとともに、Y方向に対して直交している。
【0026】
図3に示すように、デジタルサイネージ本体2の中央には液晶パネル22が収納されており、液晶パネル22を取り囲むように外装フレーム40と、パッキン41と、本体フレーム42と、背面カバー43と、放熱板44が一体的に筐体を構成している。外装フレーム40はアルミニウム材からなり、その前面にはコーキング材で張り付けた強化ガラスであるフロントガラス40aが設けられている。本体フレーム42は鉄板からなり、液晶パネル22の後面側に固定されている。液晶パネル22の背面全体を覆う背面カバー43はアルミニウム材からなり、ゴム製のパッキン41を介して外装フレーム40と一体化される。パッキン41により、筐体内への水の侵入を防ぐことができる。放熱カバー44もアルミウム材からなり、背面カバー43の中央部に形成された開口を覆うように取り付けられており、後述するように放熱板44の内面側には複数のデバイスが実装されている。
【0027】
デジタルサイネージ本体2のうち、外装フレーム40は、熱伝導率の高いアルミニウムによる押し出し方式で形成され、4隅が溶接されている。そのため、外装フレーム40の内部には、上面や底面の断面構造に多くの突起物を有し、それが放熱の役割を担う。すなわち、押し出し方式による多くの突起物は気流を妨げない方向に存在するため、外部への効果的な放熱が可能となる。そして、同様にアルミニウムを用いた背面カバー43及び放熱板44による外部の放熱の作用と相まって、筐体全体の放熱効率を高めることができる。
【0028】
図3において、デジタルサイネージ本体2の下部には、2つのクロスフローファン24がX方向に並んで配置されている。また、デジタルサイネージ本体2の上部には、クロスフローファン24の動作の制御に用いる温度センサ25(
図4)が取り付けられている。クロスフローファン24は、密閉構造の筐体を有するデジタルサイネージ本体2の温度を均一化する循環ファンとしての役割がある。
【0029】
以下、
図4及び
図5を参照して、クロスフローファン24の動作と筐体内部の冷却手法について説明する。
図4は、液晶パネル22の背面側からY方向に沿ってみたデジタルサイネージ本体2の内部構造において、クロスフローファン24による空気の流れを模式的に示した図である。
図4に示すように、2つのクロスフローファン24(1)、24(2)は、外装フレーム40の底辺に長手方向がX方向に一致するように並べて配置されている。ここで、
図5は、クロスフローファン24の断面構造を示す図であり、個々のクロスフローファン24の長手方向に一致する回転軸に垂直な断面で見たときの構造と空気の流れを示している。
【0030】
図5に示すように、クロスフローファン24は軸方向に一様な複数の翼50を備え、X方向に長いケース51に取り囲まれている。クロスフローファン24の起動時には、それぞれの翼50が方向Rに回転する。これにより、クロスフローファン24の軸方向からの空気の流入はなく、
図5の右側の開口部から空気が吸い込まれ、複数の翼50を横切って左側の開口部から空気を吐き出す流れが生じる。よって、X方向の細長い領域である外装フレーム40の下端にクロスフローファン24を置くと、
図4に示すように、クロスフローファン24から経路P1(破線)に沿って上昇する空気の流れと、外装フレーム40の上端を介して経路P2(実線)に沿って下端に向かって下降する空気の流れが生じ、筐体内部の空気をZ方向の上下に循環させることができる。
【0031】
ここで、
図3に示すデジタルサイネージ本体2内部において、
図4と同様、上昇方向の経路P1の空気の流れと、下降方向の経路P2の空気の流れを重ねて示している。まず、上昇方向の経路P1は、液晶パネル22の前面側において液晶パネル22とフロントガラス40aの間の領域を通る一方、下降方向の経路P2は、液晶パネル22の後面側の間の領域を通る。これにより、下部で冷やされた空気が液晶パネル22の前面側を通って上方に送られ、上部で温まった空気が液晶パネル22の後面側を通って下方に向かうので、液晶パネル22の前面側と後面側を含む全体に空気を循環させることができる。これに加えて、液晶パネル22の冷却とデジタルサイネージ本体2の温度の均一化の効果がある。この場合、X方向に細長いクロスフローファン24を用いるので、循環する空気は、X方向に拡がりつつ平べったい形状となるので、デジタルサイネージ本体2がY方向に薄い形状であっても、液晶パネル22を有効に冷却することができる。
【0032】
また、クロスフローファン24の機動は、
図4の温度センサ25により検知される温度に応じて制御される。すなわち、メイン制御部21は、温度センサ25により検知されたデジタルサイネージ本体2の上部の温度が上昇し、予め設定された温度を超えたと判断すると、クロスフローファン24を起動させるように制御する。そして、クロスフローファン24が起動すると、前述のメカニズムにより、さらなる温度上昇が抑制される。なお、液晶パネル22は温度上昇によりブラックアウト状態になり、正常な表示ができなくなるため、クロスフローファン24を起動する温度は、ブラックアウトが生じる温度より十分に低く設定する必要がある。
【0033】
本実施形態では、X方向に並ぶ2個のクロスフローファン24を用いる場合を示したが、クロスフローファン24の個数は1個あるいは3個以上であってもよい。すなわち、液晶パネル22や他の電子機器の発熱量、あるいは筐体のサイズに応じて、クロスフローファン24の個数を増減させることができる。また、
図4では、2個のクロスフローファン24がデジタルサイネージ本体2の底面に設置されているが、これに加えてデジタルサイネージ本体2の側面にクロスフローファン24を設置してもよい。この場合のクロスフローファン24は、回転軸の方向がZ方向に一致することになる。
【0034】
次に、
図6を用いて、
図3の放熱板44の構造と役割について説明する。放熱板44は、筐体外部への放熱の役割に加えて、デジタルサイネージ本体2の背面の操作カバーを兼ねている。
図6(A)は放熱板44の外面の構造を示しており、配線用クランプ60と、電源コード用クランプ61と、電源スイッチ62と、LCDディスプレイ63が設けられている。また。
図6(B)は放熱板44の内面の構造を示しており、
図2で説明したPC29と、電源部20及びメイン制御部21を構成する電子部品やICなどを含む複数の電子デバイス64とが設けられている。
【0035】
図6(A)(B)において、配線用クランプ60は、電源制御ユニット3とデジタルサイネージ本体2の間の配線群を接続する役割がある。電源コード用クランプ61は、電源制御ユニット3からデジタルサイネージ本体2への電源を供給する電源コードを接続する役割がある。電源スイッチ62は、
図1で説明したように、デジタルサイネージ本体2を起動するスイッチである。LCDディスプレイ63は、背面側の電子デバイス64のドライバにより駆動され、所定の制御情報を表示する役割がある。また、PC29については
図1を用いて説明した通りであり、複数の電子デバイス64は
図1の電源部20やメイン制御部21の主要な構成要素である。
【0036】
PC29と複数の電子デバイス64は、いずれも動作時の発熱量が大きい。本実施形態では、
図6のような構造の発熱板44を採用することにより、発熱量が大きいデバイス群をデジタルサイネージ本体2のXZ平面の略中央に集中的に配置させ、放熱板44を経由して外部への効率的な放熱が可能となる。また、各種クランプ(60、61)、電源スイッチ62、LCDディスプレイ63が比較的小さい放熱板44に集中しているので、操作者は必要な操作を容易に行うことができる。
【0037】
さらに、
図6の発熱板44の外面に軸受防水ファンを取り付けてもよい。軸受防水ファンにより、外部の空気を発熱板44の外面に送風することにより強制空冷することができる。これにより、筐体の密閉構造を保ったまま、デジタルサイネージ本体2の内部と外部を完全に分離した状態で、発熱版44を経由して外部への効率的な放熱を行うことができる。例えば、非常な高温な地域でデジタルサイネージ装置1を設置する場合には、有効な方策である。
【0038】
以上、
図3~
図6を用いて説明したように、本実施形態のデジタルサイネージ装置2は、密閉構造の筐体とその内部の温度上昇を抑制する冷却方法とを組み合わせることで、従来のサイネージ装置のように筐体内に外部の空気を取り入れて排出する吸排気機構を設ける必要がなくなる。すなわち、筐体には吸気口と排気口がないため、雨天の際に極めて高い湿気を持つ空気が筐体内に入り込むことや、空気中の埃や、鉄道から浮遊する鉄粉や、火山による硫黄などを含む空気が筐体内に入り込む事態を防止し、これらに起因する電子機器への悪影響を抑制することができる。また、筐体に吸排気機構が不要になると、デジタルサイネージ装置1の設置場所の制約が少なくなり、消費電力も小さくすることができる。
【0039】
また、液晶パネル22の周囲で空気を循環させるためのクロスフローファン24を採用したことで、液晶パネル22の温度上昇を効果的に抑制するとともに、その近傍で温度が均一化するので、局所的な温度上昇を防止することができる。この場合、電子装置で一般的に用いられる軸流ファンを用いると、設置のためのスペースが大きくなるのに対し、回転軸に沿って細長い形状のクロスフローファン24は筐体の形状に適合し、設置スペースが小さくて済む。このようにクロスフローファン24自体の形状と、それによる平べったい形状の空気の流れは、コンパクトかつ薄型のデジタルサイネージ本体2の形状に適している。
【0040】
また、反射型の液晶パネル22を採用したことと、ソーラーパネル4及び蓄電池32を用いて電源供給を行うことは、デジタルサイネージ装置1の消費電力の低減に有効であり、電源インフラがない環境であっても稼働可能な効果がある。さらに、クロスフローファン24の設置に加えて、筐体の主要なフレームを熱伝導率の高いアルミニウムを用いて形成し、かつ外装フレーム40を押し出し方式で形成し、発熱量が大きいデバイス群を放熱板44に集中的に配置したので、筐体全体の放熱効率を一層高めることが可能となる。
【0041】
本実施形態では、
図5に示す構造を有するクロスフローファン24を用いる場合を説明したが、デジタルサイネージ本体2の内部で
図4の経路P1から経路P2に沿って空気を循環させることが可能であれば、
図5と異なる構造の循環ファンを採用する場合であっても本発明の適用が可能である。また、デジタルサイネージ本体2内の温度上昇を十分に抑制することが可能であれば、反射型とは異なる原理の液晶パネル22を用いたり、
図6の放熱板44の構造を設けないフレームを用いる場合であっても本発明の適用が可能である。
【符号の説明】
【0042】
1…デジタルサイネージ装置
2…デジタルサイネージ本体
3…電源制御ユニット
4…ソーラーパネル
5…台座部
6…コントロールセンター
20…電源部
21…メイン制御部
22…液晶パネル
22a…バックライト
24…循環ファン
25…温度センサ
26…人感センサ
27…照度センサ
28…カメラ
29…PC
30…電源制御部
31…変換部
32…蓄電池
33…温度センサ
34…ヒータ
40…外装フレーム
40a…フロントガラス
41…パッキン
42…本体フレーム
43…背面カバー
44…放熱板
50…翼
51…ケース
60…配線用クランプ
61…電源コード用クランプ
62…電源スイッチ
63…LCDディスプレイ
64…電子デバイス
N…通信ネットワーク