(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082684
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】加熱炉
(51)【国際特許分類】
F27B 9/04 20060101AFI20240613BHJP
F27B 17/00 20060101ALI20240613BHJP
F27B 9/20 20060101ALN20240613BHJP
F27D 1/00 20060101ALN20240613BHJP
【FI】
F27B9/04
F27B17/00 C
F27B9/20
F27D1/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196704
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】大河内 賢次
【テーマコード(参考)】
4K050
4K051
【Fターム(参考)】
4K050AA01
4K050BA07
4K050CB07
4K050CG04
4K050DA06
4K051AA03
4K051AB01
4K051AB03
4K051AB05
4K051BA02
4K051BB04
(57)【要約】
【課題】加熱炉における排ガス流路のメンテナンス性を向上させること。
【解決手段】加熱炉1において、炉体10は、第1排気路40と第2排気路50と収容空間S1と取出口S2と有している。第1排気路40は、加熱空間10iに連通している。第2排気路50は、排気ダクト100に連通している。収容空間S1は、炉壁12の内部に形成され、排気路ユニット60が収容され、第1排気路40と第2排気路50とに通じている。取出口S2は、収容空間S1に通じている。排気路ユニット60は、収容空間S1に配置され、内部に空洞60sを有し、第1排気路40に通じる第1開口60h1と、第2排気路50に通じる第2開口60h2とを有するケース体である。排気路ユニット60は、取出口S2を通じて、炉壁12に対して排気ダクト100が取り付けられた状態で交換可能に設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物が加熱される加熱空間を囲う炉壁を有する炉体と、
前記炉体の上部に取付けられた排気ダクトと、
排気路ユニットと
を備え、
前記炉体は、
前記炉壁に形成され、前記加熱空間に連通した第1排気路と、
前記炉壁に形成され、前記排気ダクトに連通した第2排気路と、
前記炉壁内部に形成され、前記排気路ユニットが収容され、かつ、前記第1排気路と前記第2排気路とに通じる収容空間と、
前記炉壁に形成され、前記収容空間に通じる取出口と
を有し、
前記排気路ユニットは、
前記収容空間に配置され、内部に空洞を有し、前記第1排気路に通じる第1開口と、前記第2排気路に通じる第2開口とを有するケース体であり、
前記取出口を通じて、前記炉壁に対して前記排気ダクトが取り付けられた状態で交換可能に設けられている、加熱炉。
【請求項2】
前記排気路ユニットは、
開口と、該開口に対向する底壁と、該底壁から該開口に向かって延びた側壁と、を有し、該底壁に前記第1開口が設けられたケースと、
前記ケースの前記開口を塞ぐ蓋体であって、前記第2開口が設けられた蓋体と、
を備える、請求項1に記載された加熱炉。
【請求項3】
前記第1開口と前記第2開口とは、相互に異なる軸上に設けられ、かつ、相互に重ならない、請求項1に記載された加熱炉。
【請求項4】
前記ケースは、前記底壁と前記側壁とを二分する、相互に分離可能に取り付けられた第1部材と第2部材とを有し、
前記第1部材は、前記第2部材が取り付けられる、クランク形状を有する第1クランク部を有し、
前記第2部材は、前記第1部材が取り付けられる、前記第1クランク部の形状に対応する第2クランク部を有する、請求項2に記載された加熱炉。
【請求項5】
前記収容空間は、前記排気路ユニットが該収容空間の底部に沿って移動可能な大きさに設けられており、
前記排気路ユニットは、
前記取出口から前記収容空間内に入れられ、前記底部に沿って該取出口側から前記排気ダクト側に寄せられて、前記第1開口を介して前記第1排気路に通じられるとともに、前記第2開口を介して前記第2排気路に通じられ、かつ、
前記底部に沿って前記排気ダクト側から前記取出口側に寄せられて、該取出口から前記収容空間の外部に取り出される、
ように構成されている、請求項1から4までの何れか一項に記載された加熱炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加熱炉に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱炉に関し、特開2002-295978号公報には、炉壁と一体的に形成された煙道(排気路)と、煙道に接続された排気ダクトとを備えた焼成炉が開示されている。この焼成炉では、煙道は、導出穴と、水平路と、清掃穴と、蓋部材と、を含んでいる。導出穴は、炉壁を貫通して形成されている。水平路は、導出穴に連通し、炉壁に沿って所定長さに形成されている。清掃穴は、水平路を構成する側壁に貫通して設けられている。蓋部材は、清掃穴に着脱可能に設けられている。同公報では、これによって、焼成炉の操業中であっても、蓋部材を取り外すことで煙道内を清掃することができるため、煙道の清掃のために焼成炉の操業を長期間停止させる必要がない、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、加熱炉は、セラミック製品の製造において、焼成処理で用いられる。セラミック製品の製造では、焼成処理を実施する前に、焼成温度よりも低温で被処理物を加熱する脱バインダ処理が行われることがある。これによって、被処理物中のバインダを除去し、焼成中のクラックなどを抑制できる。この脱バインダ処理では、バインダを含む排ガスが発生する。排ガス流路の内壁には、排ガス中のバインダが付着することがある。このため、脱バインダ処理を行う加熱炉では、排ガス流路のメンテナンス(点検・清掃)が定期的に行われる。
【0005】
本発明者は、かかる加熱炉における排ガス流路のメンテナンス性を向上させたいと考えている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示される加熱炉は、被処理物が加熱される加熱空間を囲う炉壁を有する炉体と、炉体の上部に取付けられた排気ダクトと、排気路ユニットとを備える。炉体は、炉壁に形成され、加熱空間に連通した第1排気路と、炉壁に形成され、排気ダクトに連通した第2排気路と、炉壁内部に形成され、排気路ユニットが収容され、かつ、第1排気路と第2排気路とに通じる収容空間と、炉壁に形成され、収容空間に通じる取出口とを有する。排気路ユニットは、収容空間に配置され、内部に空洞を有し、第1排気路に通じる第1開口と、第2排気路に通じる第2開口とを有するケース体である。また、排気路ユニットは、取出口を通じて、炉壁に対して排気ダクトが取り付けられた状態で交換可能に設けられている。かかる構成によると、加熱炉における排ガス流路のメンテナンス性を向上させることができる。
【0007】
排気路ユニットは、開口と、開口に対向する底壁と、底壁から開口に向かって延びた側壁と、を有し、底壁に第1開口が設けられたケースと、ケースの開口を塞ぐ蓋体であって、第2開口が設けられた蓋体と、を備えていてもよい。
【0008】
第1開口と第2開口とは、相互に異なる軸上に設けられ、かつ、相互に重ならないものであってもよい。
【0009】
ケースは、底壁と側壁とを二分する、相互に分離可能に取り付けられた第1部材と第2部材とを有していてもよい。第1部材は、第2部材が取り付けられる、クランク形状を有する第1クランク部を有していてもよい。第2部材は、第1部材が取り付けられる、第1クランク部の形状に対応する第2クランク部を有していてもよい。
【0010】
収容空間は、排気路ユニットが収容空間の底部に沿って移動可能な大きさに設けられていてもよい。排気路ユニットは、取出口から収容空間内に入れられ、底部に沿って取出口側から排気ダクト側に寄せられて、第1開口を介して第1排気路に通じられるとともに、第2開口を介して第2排気路に通じられ、かつ、底部に沿って排気ダクト側から取出口側に寄せられて、取出口から収容空間の外部に取り出される、ように構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図2は、排気路ユニット60の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、ここで開示される技術の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施できる。
【0013】
図1は、加熱炉1の断面図である。なお、図面中に示された「L」、「R」、「U」、「D」の符号は、それぞれ、「左」、「右」、「上」、「下」を表すものとする。
図1に示されているように、加熱炉1は、炉体10と、排気ダクト100と、排気路ユニット60と、を備えている。以下、各構成を説明する。
【0014】
(1)加熱炉1
加熱炉1は、例えば、被処理物Aを加熱する炉である。この実施形態では、所定の方向に向かって(
図1では、手前側から奥側に向かって)、被処理物Aを搬送しながら連続的に加熱する連続加熱炉である。加熱炉1は、例えば、複数の搬送ローラ20を備えたローラハースキルンである。加熱炉1は、例えば、被処理物Aが搬送される方向(以下、単に「搬送方向」ともいう。)に沿って延びるトンネル状の炉体10を備えている。複数の搬送ローラ20は、例えば、上下方向における位置が揃うように、被処理物Aの搬送方向に沿って連続的に配置されている。
図1に示されているように、複数の搬送ローラ20の上に、被処理物Aが載置される。被処理物Aは、例えば、各々の搬送ローラ20を回転させることによって、所定の方向に向かって搬送される。なお、搬送ローラ20を回転させる機構は、従来公知の構成を特に制限なく採用でき、ここで開示される技術を限定するものではないため、説明を省略する。
【0015】
また、
図1は、加熱炉1の脱バインダ領域を示している。この脱バインダ領域では、例えば、後述する焼成領域よりも低温で被処理物Aを加熱する。これによって、被処理物A中のバインダを除去する。そして、この加熱処理(脱バインダ処理)によって、バインダを含む排ガスが被処理物Aから発生する。ここでは、加熱炉1の脱バインダ領域には、搬送方向に沿って、被処理物Aを加熱するヒータ30が複数配置されている。これらのヒータ30は、被処理物Aの搬送方向に沿って所定の間隔を空けて並べられている。なお、脱バインダ領域における加熱空間10iの温度は、バインダを適切に除去できるように、被処理物Aの種類に応じて適宜調整される。
【0016】
脱バインダ領域を通過した被処理物Aは、搬送方向の下流にさらに搬送される。図示を省略しているが、脱バインダ領域の前方には焼成領域が設けられる。焼成領域では、所定の温度で被処理物Aを焼成しながら搬送する。これによって、所望のセラミック製品を製造することができる。焼成領域における加熱温度は、目的とするセラミック製品の種類に応じて適宜変更されうる。また、この種の連続加熱炉では、脱バインダ領域および焼成領域以外の領域(冷却領域等)が設けられていることもある。ただし、脱バインダ領域以外の領域の構造は、従来公知の構成を特に制限なく採用でき、ここで開示される技術を限定するものではないため、説明を省略する。
【0017】
(2)炉体10
炉体10は、被処理物Aが加熱される部分である。
図1に示されているように、炉体10は、炉壁12を有している。炉壁12は、加熱空間10iを囲う部材である。この実施形態では、炉壁12は、内側(ここでは、加熱空間10i)から外側に向かって、第1壁13と、第2壁15と、第3壁17とを有している。炉壁12は、例えば、断熱材によって構成されている。炉壁12は、例えば、所定の形状に成形されたセラミックファイバーボードが重ねられて構成されているとよい。セラミックファイバーボードは、例えば、いわゆるバルクファイバーに無機フィラーと無機・有機結合材とが添加されて板状に成形された板材である。炉壁12を構成するセラミックファイバーボードが、例えば、厚み方向に積み重ねられているとよい。積み重ねられるセラミックファイバーボードの枚数は、特に限定されず、例えば、被処理物Aの加熱温度によって適宜設定されうる。また、セラミックファイバーボードの材質は、例えば、炉壁12における配置部位によって適宜変更されうる。例えば、相対的に緻密性と密度とが高いセラミックファイバーボードを炉壁12における加熱空間10i側に配置し、相対的に緻密性と密度とが低い(多孔性が高い)セラミックファイバーボードを炉壁12における外側に配置してもよい。
【0018】
図1に示された形態では、第1壁13と第2壁15とが二層構造をなし、さらに第2壁15の上面に沿って第3壁17が設けられている。この実施形態では、第1壁13は、炉壁12の最内面を構成している。
図1に示されているように、第1壁13には、貫通孔13hが設けられている。第1壁13は、例えば、炉壁12の耐久性を向上させる観点から、相対的に緻密性と密度とが高いセラミックファイバーボードで構成されている。図示を省略しているが、第1壁13は、複数のセラミックファイバーボードが積層され、組まれることによって構成されているとよい。
【0019】
第2壁15は、第1壁13よりも外側に設けられている。ここでは、第2壁15は、第1壁13の外表面を覆うように設けられている。
図1に示されているように、第2壁15には、貫通孔15hが設けられている。貫通孔15hは、例えば、後述の排気路ユニット60が収容される程度の大きさに設けられているとよい。第2壁15は、例えば、加熱空間10iの温度を制御しやすくする観点から、相対的に多孔性が高いセラミックファイバーボードで構成されている。図示を省略しているが、第2壁15は、複数のセラミックファイバーボードが積層され、組まれることによって構成されているとよい。
【0020】
第3壁17は、炉壁12の最上面を構成している。この実施形態では、第3壁17は、第2壁15の貫通孔15hの一部を塞ぐ蓋として機能しうる。一方で、第3壁17には、第1貫通孔17h1と第2貫通孔17h2とが設けられている。第1貫通孔17h1は、
図1に示されているように、貫通孔15hの一部と重なることによって、取出口S2となっている。第2貫通孔17h2には、
図1に示されているように、排気ダクト100が挿通されている。第3壁17は、例えば、第2壁15と同様、加熱空間10iの温度を制御しやすくする観点から、相対的に多孔性が高いセラミックファイバーボードで構成されている。また、図示を省略しているが、第3壁17は、複数のセラミックファイバーボードが積層され、組まれることによって構成されているとよい。
【0021】
図1に示されているように、炉体10は、第1排気路40と、第2排気路50と、収容空間S1と、取出口S2を備えている。第1排気路40は、例えば、炉壁12に形成され、加熱空間10iに連通している。
図1に示されているように、第1排気路40は、炉壁12の内壁面(ここでは、第1壁13の内表面)から上方に延びている。この実施形態では、第1排気路40は、第1壁13の貫通孔13hの内部である。第2排気路50は、炉壁12に形成され、排気ダクト100に連通している。
図1に示されているように、第2排気路50は、収容空間S1の内壁面(ここでは、第3壁17の下側表面)から上方に延びている。この実施形態では、第2排気路50は、第3壁17の第2貫通孔17h2の内部である。この実施形態では、第2貫通孔17h2の内部(ここでは、第2排気路50)には、排気ダクト100が挿通されている。これによって、第2排気路50と排気ダクト100との間が連通している。
図1に示された形態では、第1排気路40と第2排気路50とは、相互に異なる軸上に設けられている。また、第1排気路40と第2排気路50とは、互いに重ならないように設けられている。
【0022】
収容空間S1は、例えば、炉壁12の内部に形成され、排気路ユニット60が収容される空間である。この実施形態では、第1壁13と第2壁15と第3壁17とが構成されることで、第2壁15の貫通孔15hが炉壁12の内部で空間となり、さらに収容空間S1が形成されている。
図1に示されているように、収容空間S1は、第1壁13の外表面を底部S1aとし、第2壁15の貫通孔15hの内壁面を側壁部S1bとし、第3壁17の下側表面を天井S1cとした空間である。
【0023】
この実施形態では、収容空間S1は、第1排気路40と第2排気路50とに通じている。
図1では、収容空間S1の底部S1aに第1壁13の貫通孔13hがある。このため、収容空間S1は、第1排気路40と通じている。また、収容空間S1の天井S1cに第3壁17の第2貫通孔17h2があることで、収容空間S1は、第2排気路50に通じている。
【0024】
取出口S2は、例えば、排気路ユニット60を炉壁12の外部に取り出す開口である。取出口S2は、ここでは、炉壁12に形成され、収容空間S1に通じている。
図1に示された形態では、第3壁17の第1貫通孔17h1が取出口S2を構成している。また、この実施形態では、第2壁15の貫通孔15hと第3壁17の第1貫通孔17h1(取出口S2)とが一部重なっている。このため、貫通孔15hと第1貫通孔17h1(取出口S2)とが重なった部分から、排気路ユニット60を炉壁12の外部に取り出したり、収容空間S1に入れたりすることができる。なお、取出口S2には、封止部材70が取り付けられる。
【0025】
(3)排気ダクト100
排気ダクト100は、例えば、加熱空間10iと外部とを連通させる、中空筒状の部材である(
図1参照)。この実施形態では、排気ダクト100が排気路ユニット60の第2開口60h2に重ね合わせられることによって、排気ダクト100は、排気路ユニット60と通じ、延いては、加熱空間10iと通じる。また、
図1に示されているように、排気ダクト100の上端部は、外部に対して開放されている。なお、排気ダクト100の材料として、第1壁13と同じ材料が用いられるとよい。
【0026】
(4)排気路ユニット60
図2は、排気路ユニット60の平面図である。
図3は、
図2のIII-III断面図である。排気路ユニット60は、例えば、第1排気路40と第2排気路50とに通じる部材である。ここでは、排気路ユニット60は、内部に空洞60sを有するケース体である(
図1参照)。
図2および
図3に示されているように、排気路ユニット60は、ケース60Aと、蓋体60Bとを備えている。ケース60Aは、この実施形態では、六面体形状であり、矩形状の底壁6A1と、開口6AHを有している。底壁6A1には、この実施形態では、第1開口60h1が設けられている。開口6AHは、底壁6A1に対向している。ケース60Aは、例えば、一対の対向する第1側壁6A2と、一対の対向する第2側壁6A3とを有している。第1側壁6A2は、底壁6A1の対向する長辺部から延びている。第2側壁6A3は、底壁6A1の対向する短辺部から延びている。
【0027】
図2および
図3に示されているように、ケース60Aは、第1部材61と、第2部材62とを備えている。この実施形態では、第1部材61と第2部材62とは、相互に分離可能に構成されている。ここでは、第1部材61と第2部材62とは、ケース60Aの底壁6A1と第1側壁6A2とを二分している。例えば、第1部材61と第2部材62とを相互に組み合わせることで、ケース60Aを得ることができる。
【0028】
図2および
図3に示された形態では、第1部材61は、ケース60Aの左側の一部を構成している。ここでは、第1部材61は、底壁6A1の一部(図中では左側の部分)と、第1側壁6A2の一部(図中では左側の部分)と、一方の第2側壁6A3(図中では左側の第2側壁6A3)と、を有している。
図3に示されているように、第1部材61は、底壁6A1に第1開口60h1が設けられている。第1部材61は、例えば、第2側壁6A3と反対側(
図2中では右側)の端部601に、第2部材62が取り付けられる。
図2および
図3に示されているように、端部601における底壁6A1の断面に、第2部材62の端部602における底壁6A1の断面が重ね合わせられる。
【0029】
また、第1部材61は、端部601に、第1クランク部61aを有している。ここでは、端部601における第1側壁6A2の端部形状がクランク形状である。第1クランク部61aは、例えば、中間面61a1と、第1面61a2と、第2面61a3とからなる。
図3に示されているように、中間面61a1は、底壁6A1と略平行な面である。第1面61a2は、中間面61a1から開口6AHに向かって略直角に延びた面である。ここでは、第1面61a2は、中間面61a1よりも外側に張り出している。第2面61a3は、中間面61a1から底壁6A1に向かって略直角に延びた面である。ここでは、第2面61a3は、中間面61a1よりも内側(第2側壁6A3側)に設けられている。
【0030】
第2部材62は、ここでは、底壁6A1の一部(図中では右側の残部)と、第1側壁6A2の一部(図中では右側の残部)と、一方の第2側壁6A3(図中では右側の第2側壁6A3)と、を有している。第2部材62は、例えば、第2側壁6A3と反対側(
図2中では左側)の端部602に、第1部材61が取り付けられる。また、第2部材62は、端部602に、第2クランク部62aを有している。ここでは、端部602における第1側壁6A2の端部形状がクランク形状である。第2クランク部62aは、第1クランク部の形状に対応したクランク形状である。第2クランク部62aは、例えば、中間面62a1と、第1面62a2と、第2面62a3とからなる。
図3に示されているように、中間面62a1は、底壁6A1と略平行な面である。第1面62a2は、中間面62a1から開口6AHに向かって略直角に延びた面である。ここでは、第1面62a2は、中間面62a1よりも内側(第2側壁6A3側)に設けられている。第2面62a3は、中間面62a1から底壁6A1に向かって略直角に延びた面である。ここでは、第2面62a3は、中間面62a1よりも外側に張り出している。
【0031】
第1部材61に第2部材62が取り付けられるとき、ここでは、第1クランク部61aは、第2部材62の第2クランク部62aと重ね合わせられる。このとき、中間面61a1に第2クランク部62aの中間面62a1が重ね合わせられる。また、第1面61a2に、第2クランク部62aの第1面62a2が重ね合わせられる。また、第2面61a3に、第2クランク部62aの第2面62a3が重ね合わせられる。
【0032】
蓋体60Bは、例えば、開口6AHを塞ぐ板状の部材である。この実施形態では、蓋体60Bは、第1蓋体65と、第2蓋体66とを有している。ここでは、第1蓋体65と第2蓋体66とで、開口6AH全体を塞いでいる。第1蓋体65は、例えば、ケース60Aの第1部材61の上端部全体と、第2部材62の上端部の一部分とに戴置される。第1蓋体65は、ここでは、貫通孔、凹部、凸部等が設けられていない。第2蓋体66は、例えば、ケース60Aの第2部材62の上端部全体に戴置される。第2蓋体66には、ここでは、第2開口60h2が設けられている。なお、
図1および
図3に示されているように、第1蓋体65と第2蓋体66とは、それぞれが2枚重ねられた状態で開口6AHに戴置され、収容空間S1に配置される。また、熱が排気路ユニット60から漏れるのを抑制する観点から、
図1および
図3に示されているように、重ねられた2枚の第2蓋体66のうちの上側(
図1では、収容空間S1の天井S1c側)の第2蓋体66は、下側(図中では、開口6AH側)の第2蓋体66よりも大きくてもよい。ここでは、上側の第2蓋体66における開口6AHの長辺方向に沿った長さが、下側の第2蓋体66における同方向に沿った長さよりも大きい。また、上側の第2蓋体66によって、下側の第2蓋体66と第1蓋体65との境界が覆われている。
【0033】
排気路ユニット60は、第1排気路40と、第2排気路50とに通じている。
図1に示された形態では、排気路ユニット60の第1開口60h1が第1壁13の貫通孔13hに重なるように配置されている。これによって、排気路ユニット60が第1排気路40に通じている。また、
図1では、排気ダクト100が、排気路ユニット60の第2開口60h2に重なるように配置されている。これによって、排気路ユニット60が第2排気路50に通じている。この実施形態では、排気路ユニット60は、内部に空洞60sを有している。上述のとおり、第1開口60h1が第1排気路40に通じ、第2開口60h2が第2排気路50に通じることによって、排気路ユニット60の空洞60sが排ガスの排気路となっている。
【0034】
排気路ユニット60は、取出口S2を通じて、炉壁12に対して排気ダクト100が取り付けられた状態で交換可能に設けられている。
図1に示されているように、排気路ユニット60は、収容空間S1に収容可能、かつ、収容空間S1内で移動可能な大きさであるとよい。例えば、排気路ユニット60の底壁6A1は、収容空間S1の底部S1aよりも小さいとよい。このため、
図1に示されているように、収容空間S1に排気路ユニット60を収容すると、隙間が生じる。加熱炉1が運転される際には、
図1に示されているように、この隙間に、ブロック80が収容されるとよい。ブロック80は、例えば、第2壁15のセラミックファイバーボードと同じ材質で構成されたブロックであるとよい。
【0035】
ここで、排気路ユニット60の交換について説明する。
図4は、加熱炉1の断面図である。
図4には、排気路ユニット60を収容空間S1に収容する際の一過程が示されている。排気路ユニット60の収容空間S1への収容では、例えば、まず、第2部材62を取出口S2から収容空間S1に入れる。次いで、第2部材62を矢印Tの方向に移動させ、排気ダクト100側の側壁部S1bに寄せる。次いで、2つの第2蓋体66を取出口S2から収容空間に入れ、第2部材62の上端部に戴置させる(
図1および
図4参照)。このとき、
図1に示されているように、第2開口60h2と排気ダクト100とを重ね合わせて、第2排気路50と第2開口60h2とを繋げる。次いで、第1部材61を取出口S2から収容空間に入れる。次いで、第2部材62を矢印Tの方向に移動させ、第1クランク部61aと第2クランク部62aとを嵌め合わせることで、第1部材61と第2部材62とを一体化させる(
図3参照)。このとき、第1開口60h1と第1壁13の貫通孔13hとを重ね合わせて、第1排気路40と第1開口60h1とを繋げる。次いで、2つの第1蓋体65を取出口S2から収容空間に入れ、第1部材61の上端部に戴置させる(
図1参照)。次いで、排気路ユニット60を収容したときに生じる上記隙間に、ブロック80を収容する(
図1参照)。そして、封止部材70を取出口S2に取り付けることで、収容空間S1への排気路ユニット60の収容が完了する。
【0036】
排気路ユニット60の収容空間S1からの取り出しでは、まず、取出口S2から封止部材70を取り外し、ブロック80を取り除いて排気路ユニット60を構成する各部材が収容空間S1の内部で移動できる隙間を得る。次いで、例えば、第1蓋体65、第1部材61、第2蓋体66、および、第2部材62の順で、各部材を排気ダクト100側の側壁部S1bから取出口S2側の側壁部S1bに寄せるとともに、取出口S2から収容空間S1の外部に取り出せばよい。
【0037】
排気路ユニット60は、多孔性が高いセラミック材料で構成されているとよい。例えば、排気路ユニット60の材料として、第2壁15のセラミックファイバーボードと同じ材料が用いられるとよい。排気路ユニット60は、例えば、予め定められた形状のセラミック製のプレートが組み合わされて構成されているとよい。なお、排気路ユニット60の各部材は、同じ材料で構成されていてもよく、相互に異なる材料で構成されていてもよい。
【0038】
上述のとおり、加熱炉1は、炉体10と、排気ダクト100と、排気路ユニット60とを備えている。炉体10は、被処理物Aが加熱される加熱空間10iを囲う炉壁12を有する。排気ダクト100は、炉体10の上部に取付けられている。また、炉体10は、第1排気路40と、第2排気路50と、収容空間S1と、取出口S2と、を有している。第1排気路40は、炉壁12に形成され、加熱空間10iに連通している。第2排気路50は、炉壁12に形成され、排気ダクト100に連通している。収容空間S1は、炉壁12の内部に形成され、排気路ユニット60が収容され、かつ、第1排気路40と第2排気路50とに通じている。取出口S2は、炉壁12に形成され、収容空間S1に通じている。排気路ユニット60は、収容空間S1に配置され、内部に空洞60sを有し、第1排気路40に通じる第1開口60h1と、第2排気路50に通じる第2開口60h2とを有するケース体である。また、排気路ユニット60は、取出口S2を通じて、炉壁12に対して排気ダクト100が取り付けられた状態で交換可能に設けられている。
【0039】
加熱炉1では、第1排気路40と第2排気路50との間を、交換可能な排気路ユニット60で繋いでいる。このため、第1排気路40と第2排気路50との間の清掃は、既存の排気路ユニット60を新しい排気路ユニット60に交換することによって、容易に実施される。また、排気路ユニット60の交換は、排気ダクト100を取り付けた状態で実施することができる。このため、排ガス流路の清掃は、排気ダクト100を取り外す必要がなく、排気路ユニット60の交換のみで実施される。これによって、加熱炉1では、排ガス流路のメンテナンス性が向上されている。
【0040】
この実施形態では、排気路ユニット60は、ケース60Aと、蓋体60Bとを備えている。ケース60Aは、開口6AHを有している。ケース60Aは、開口6AHと、開口6AHに対向する底壁6A1と、底壁6A1から開口6AHに向かって延びた側壁(ここでは、第1側壁6A2、第2側壁6A3)と、を有している。また、ケース60Aの底壁6A1に第1開口60h1が設けられている。蓋体60Bは、ケース60Aを塞ぐ部材である。蓋体60Bには、第2開口60h2が設けられている。換言すれば、排気路ユニット60は、第1開口60h1が設けられたケース60Aと、第2開口60h2が設けられた蓋体60Bと、に分離される。このため、排気路ユニット60の交換時には、取出口S2における、ケース60Aの出し入れと、蓋体60Bの出し入れとをそれぞれ独立して実施することができる。このため、排ガス流路のメンテナンス性がより向上されている。
【0041】
この実施形態では、第1開口60h1と第2開口60h2とは、相互に異なる軸上に設けられている。これに加えて、第1開口60h1と第2開口60h2とは、相互に重ならない。この場合、排気路ユニット60内に、排ガス中のバインダを捕捉しやすくなる。このため、排気ダクト100に汚れが付着するのを抑制することができる。
【0042】
また、ケース60Aは、底壁6A1と側壁(ここでは、第1側壁6A2)とを二分する、相互に分離可能に取り付けられた第1部材61と第2部材62とを有している。第1部材61は、第2部材62が取り付けられる、クランク形状を有する第1クランク部61aを有している。第2部材62は、第1部材61が取り付けられる、第1クランク部61aの形状に対応する第2クランク部62aを有している。換言すれば、第1部材61と第2部材62とは、第1クランク部61aと第2クランク部62aとが嵌め合わされることによって一体化し、ケース60Aを構成している。このため、第1部材61と第2部材62では、相互に分離可能でありながら、収容空間S1内でケース60Aの形状が安定的に維持される構造が実現されている。
【0043】
この実施形態では、収容空間S1は、排気路ユニット60が収容空間S1の底部S1aに沿って移動可能な大きさに設けられている。排気路ユニット60は、取出口S2から収容空間S1内に入れられ、底部S1aに沿って取出口S2側から排気ダクト100側に寄せられて、第1開口60h1を介して第1排気路40に通じられるとともに、第2開口60h2を介して第2排気路50に通じられるように構成されている。排気路ユニット60は、底部S1aに沿って排気ダクト100側から取出口S2側に寄せられて、取出口S2から収容空間S1の外部に取り出されるように構成されている。これによって、収容空間S1における排気路ユニット60の交換が比較的容易に行われうる。
【0044】
以上、ここで開示される技術の一実施形態について説明した。しかし、上述した実施形態は、ここで開示される技術を限定することを意図したものではない。以下、ここで開示される技術の他の実施形態について説明する。
【0045】
上述したように、上記実施形態では、加熱炉1がローラハースキルンである場合について説明している。しかし、これに限定されない。例えば、ここで開示される技術は、レール上に載置された被処理物を押し出して搬送するプッシャー炉、金属製のメッシュベルトで被処理物を搬送するメッシュベルト炉、被処理物が載置された台車を搬送する台車炉などに適用することもできる。また、ここで開示される加熱炉は、ローラハースキルンやプッシャー炉等の連続加熱炉に限定されない。例えば、加熱炉は、密閉可能な箱型の炉体を有するバッチ炉でもよい。この種のバッチ炉では、密閉された炉体の内部に被処理物を収容し、炉体内の温度を変化させることによって脱バインダ処理や焼成処理を実施する。このようなバッチ炉においても、バインダを含む排ガスが生じる。このため、ここで開示される技術は、バッチ炉の排気路に適用することもできる。
【0046】
また、実施形態では、炉体10の脱バインダ領域の構成を説明している。しかし、これに限定されない。例えば、バインダを含む排ガスは、脱バインダ領域以外の領域に流れることもある。脱バインダ領域以外の領域に接続された排気路にも、排ガス中のバインダが付着することがある。このため、ここで開示される技術は、脱バインダ領域以外の領域(例えば、焼成領域)に接続された排気路に適用することもできる。
【0047】
-ここで開示される技術に包含される形態-
また、ここで開示される技術は、以下の項目1~項目5に記載の形態を包含する。
【0048】
<項目1>
被処理物が加熱される加熱空間を囲う炉壁を有する炉体と、
前記炉体の上部に取付けられた排気ダクトと、
排気路ユニットと
を備え、
前記炉体は、
前記炉壁に形成され、前記加熱空間に連通した第1排気路と、
前記炉壁に形成され、前記排気ダクトに連通した第2排気路と、
前記炉壁内部に形成され、前記排気路ユニットが収容され、かつ、前記第1排気路と前記第2排気路とに通じる収容空間と、
前記炉壁に形成され、前記収容空間に通じる取出口と
を有し、
前記排気路ユニットは、
前記収容空間に配置され、内部に空洞を有し、前記第1排気路に通じる第1開口と、前記第2排気路に通じる第2開口とを有するケース体であり、
前記取出口を通じて、前記炉壁に対して前記排気ダクトが取り付けられた状態で交換可能に設けられている、加熱炉。
【0049】
<項目2>
前記排気路ユニットは、
開口と、該開口に対向する底壁と、該底壁から該開口に向かって延びた側壁と、を有し、該底壁に前記第1開口が設けられたケースと、
前記ケースの前記開口を塞ぐ蓋体であって、前記第2開口が設けられた蓋体と、
を備える、項目1に記載された加熱炉。
【0050】
<項目3>
前記第1開口と前記第2開口とは、相互に異なる軸上に設けられ、かつ、相互に重ならない、項目1または2に記載された加熱炉。
【0051】
<項目4>
前記ケースは、前記底壁と前記側壁とを二分する、相互に分離可能に取り付けられた第1部材と第2部材とを有し、
前記第1部材は、前記第2部材が取り付けられる、クランク形状を有する第1クランク部を有し、
前記第2部材は、前記第1部材が取り付けられる、前記第1クランク部の形状に対応する第2クランク部を有する、項目2に記載された加熱炉。
【0052】
<項目5>
前記収容空間は、前記排気路ユニットが該収容空間の底部に沿って移動可能な大きさに設けられており、
前記排気路ユニットは、
前記取出口から前記収容空間内に入れられ、前記底部に沿って該取出口側から前記排気ダクト側に寄せられて、前記第1開口を介して前記第1排気路に通じられるとともに、前記第2開口を介して前記第2排気路に通じられ、かつ、
前記底部に沿って前記排気ダクト側から前記取出口側に寄せられて、該取出口から前記収容空間の外部に取り出される、
ように構成されている、項目1から4までの何れか一項に記載された加熱炉。
【0053】
以上、具体的な実施形態を挙げて説明を行ったが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。このように、請求の範囲に記載の技術には、以上に記載した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1 加熱炉
10 炉体
10i 加熱空間
12 炉壁
20 搬送ローラ
30 ヒータ
40 第1排気路
50 第2排気路
60 排気路ユニット
70 封止部材
80 ブロック
100 排気ダクト
A 被処理物
S1 収容空間
S2 取出口