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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082691
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】電解合成システム
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/23 20210101AFI20240613BHJP
   C10L 3/08 20060101ALI20240613BHJP
   C07C 1/04 20060101ALI20240613BHJP
   C07C 9/00 20060101ALI20240613BHJP
   C25B 1/042 20210101ALI20240613BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240613BHJP
   C25B 15/025 20210101ALI20240613BHJP
【FI】
C25B1/23
C10L3/08
C07C1/04
C07C9/00
C25B1/042
C25B9/00 A
C25B15/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196714
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】米田 英昭
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 和貴
(72)【発明者】
【氏名】牧 美里
(72)【発明者】
【氏名】毛里 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 潤平
【テーマコード(参考)】
4H006
4K021
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB44
4H006AC11
4H006BE20
4H006BE40
4K021AA01
4K021AA09
4K021BA02
4K021BB01
4K021BB05
4K021BC01
4K021BC05
4K021BC06
4K021DC03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】水素ガスおよび一酸化炭素ガスから炭化水素ガスへの合成に用いる触媒の長期使用を可能にし、炭化水素ガスの合成効率を向上させる電解合成システムを提供する。
【解決手段】電解合成システムは、合成装置(56A、56B)に酸素ガスが供給された状態において排ガス中の二酸化炭素ガスの濃度が所定の二酸化炭素濃度閾値を下回った場合、二酸化炭素量調整弁(82A、82B)を開弁することなく蒸気量調整弁(81A、81B)を開弁して電解装置(52A、52B)を介して合成装置に水素ガスを供給する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素ガスおよび水蒸気を電解して一酸化炭素ガスおよび水素ガスを生成する電解装置と、前記電解装置から排出される前記一酸化炭素ガスおよび前記水素ガスから触媒を用いて炭化水素ガスを合成する合成装置とが備えられる電解合成システムであって、
前記電解装置に供給される前記水蒸気の流量を調整する蒸気量調整弁と、
前記電解装置に供給される前記二酸化炭素ガスの流量を調整する二酸化炭素量調整弁と、
前記合成装置から排出される排ガス中の前記二酸化炭素ガスの濃度を計測する二酸化炭素濃度センサと、
制御装置と、
を備え、
前記合成装置に酸素ガスが供給された状態において前記排ガス中の前記二酸化炭素ガスの濃度が所定の二酸化炭素濃度閾値を下回った場合、前記制御装置は、前記二酸化炭素量調整弁を開弁することなく前記蒸気量調整弁を開弁して前記電解装置を介して前記合成装置に前記水素ガスを供給する、電解合成システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電解合成システムであって、
前記排ガス中の前記水素ガスの濃度を計測する水素濃度センサ、および、前記排ガス中の前記水蒸気の濃度を計測する水蒸気濃度センサの少なくとも1つをさらに備え、
前記合成装置に前記酸素ガスが供給された状態において、前記排ガス中の前記水素ガスの濃度が所定の水素濃度閾値を超える場合、または、前記排ガス中の前記水蒸気の濃度が所定の水蒸気濃度閾値を下回る場合、前記制御装置は、前記蒸気量調整弁および前記二酸化炭素量調整弁を開弁して、前記電解装置への前記二酸化炭素ガスおよび前記水蒸気の供給を開始する、電解合成システム。
【請求項3】
請求項1に記載の電解合成システムであって、
前記排ガス中の前記炭化水素ガスの濃度を計測する炭化水素濃度センサと、
前記合成装置に前記酸素ガスを供給するか否かを択一的に切り換える切換弁と、
をさらに備え、
前記合成装置に前記一酸化炭素ガスおよび前記水素ガスが供給されている状態において前記炭化水素ガスの濃度が所定の炭化水素濃度閾値を下回った場合、前記制御装置は、前記蒸気量調整弁および前記二酸化炭素量調整弁を閉弁して前記電解装置への前記二酸化炭素ガスおよび前記水蒸気の供給を停止し、
前記二酸化炭素ガスおよび前記水蒸気の供給の停止後、前記制御装置は、前記切換弁を制御して前記合成装置に前記酸素ガスを供給する、電解合成システム。
【請求項4】
請求項3に記載の電解合成システムであって、
前記制御装置は、前記二酸化炭素ガスの供給を停止した後に、前記水蒸気の供給を停止する、電解合成システム。
【請求項5】
請求項3に記載の電解合成システムであって、
前記電解装置と前記合成装置との間に設けられ、前記電解装置から前記合成装置に供給されるガスを冷却する熱交換器をさらに備え、
前記熱交換器は、前記制御装置により指定される温度に応じて、前記ガスの冷却度合いを調整可能であり、
前記制御装置は、前記ガスの種類に応じて、前記熱交換器に指定する前記温度を切り換える、電解合成システム。
【請求項6】
請求項3に記載の電解合成システムであって、
前記電解装置、前記合成装置および前記切換弁は、複数備えられ、
複数の前記合成装置の1つである第1合成装置は、複数の前記電解装置の1つである第1電解装置から排出される前記一酸化炭素ガスおよび前記水素ガスから触媒を用いて前記炭化水素ガスを合成し、
複数の前記合成装置の他の1つである第2合成装置は、複数の前記電解装置の他の1つである第2電解装置から排出される前記一酸化炭素ガスおよび前記水素ガスから触媒を用いて前記炭化水素ガスを合成し、
複数の前記切換弁の1つである第1切換弁は、前記第1電解装置において前記電解により副次的に生成される前記酸素ガスを前記第2合成装置に供給するか否かを択一的に切り換え、
複数の前記切換弁の1つである第2切換弁は、前記第2電解装置において前記電解により副次的に生成される前記酸素ガスを前記第1合成装置に供給するか否かを択一的に切り換え、
前記合成装置に前記一酸化炭素ガスおよび前記水素ガスが供給された状態において前記第1合成装置から排出される前記排ガス中の前記炭化水素ガスの濃度が所定の炭化水素濃度閾値を下回った場合、前記制御装置は、前記第2切換弁を制御して前記第1合成装置に前記酸素ガスを供給し、
前記合成装置に前記一酸化炭素ガスおよび前記水素ガスが供給された状態において前記第2合成装置から排出される前記排ガス中の前記炭化水素ガスの濃度が所定の炭化水素濃度閾値を下回った場合、前記制御装置は、前記第1切換弁を制御して前記第2合成装置に前記酸素ガスを供給する、電解合成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解合成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄物の発生防止、削減、再生利用および再利用により、廃棄物の発生の大幅な削減に向けた取り組みが活発化している。この実現に向けて、電解合成システムに関する研究開発が行われている。電解合成システムは、二酸化炭素ガスおよび水蒸気を電解し、電解により得られる水素ガスおよび一酸化炭素ガスに基づいてメタン等の炭化水素ガスを合成するシステムである。
【0003】
水素ガスおよび一酸化炭素ガスから炭化水素ガスへの合成に、触媒を用いる場合がある。この場合、触媒の長時間の使用によって触媒に炭素が析出する傾向がある。触媒に炭素が析出すると、炭化水素ガスの合成効率が低減する。
【0004】
下記特許文献1には、触媒の析出炭素と空気とを接触させて所定の温度で加熱すると、析出炭素が消失することが開示されている。したがって、炭化水素ガスを合成する触媒に炭素が析出した場合に、その析出炭素は除去可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-95722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、触媒の析出炭素と空気とを接触させて所定の温度で加熱すると、触媒が酸化する傾向にある。触媒が酸化すると、炭化水素ガスの合成効率が低減する。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、二酸化炭素ガスおよび水蒸気を電解して一酸化炭素ガスおよび水素ガスを生成する電解装置と、前記電解装置から排出される前記一酸化炭素ガスおよび前記水素ガスから触媒を用いて炭化水素ガスを合成する合成装置とが備えられる電解合成システムであって、前記電解装置に供給される前記水蒸気の流量を調整する蒸気量調整弁と、前記電解装置に供給される前記二酸化炭素ガスの流量を調整する二酸化炭素量調整弁と、前記合成装置から排出される排ガス中の前記二酸化炭素ガスの濃度を計測する二酸化炭素濃度センサと、制御装置と、を備え、前記合成装置に酸素ガスが供給された状態において前記排ガス中の前記二酸化炭素ガスの濃度が所定の二酸化炭素濃度閾値を下回った場合、前記制御装置は、前記二酸化炭素量調整弁を開弁することなく前記蒸気量調整弁を開弁して前記電解装置を介して前記合成装置に前記水素ガスを供給する。
【発明の効果】
【0009】
上記の態様によれば、水蒸気の電解により電解装置で生成される水素ガスを、電解装置から合成装置に供給することができる。その結果、触媒に析出した炭素の燃焼により酸化した触媒を、水素ガスとの反応により還元することができる。その結果、合成装置による炭化水素ガスの合成効率の低減を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態による電解合成システムの構成を示す概略図である。
図2図2は、第1ガス処理機構および第2ガス処理機構を示す図である。
図3図3は、第2ガス処理機構において炭素燃焼工程が実施される場合を示す図である。
図4図4は、第2ガス処理機構において触媒還元工程が実施される場合を示す図である。
図5図5は、第1ガス処理機構において炭素燃焼工程が実施される場合を示す図である。
図6図6は、第1ガス処理機構において触媒還元工程が実施される場合を示す図である。
図7図7は、第1電解装置または第2電解装置の燃料極のガスの推移を示す図である。
図8図8は、変形例による1つのガス処理機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態〕
図1は、実施形態による電解合成システム10の構成を示す概略図である。電解合成システム10は、蒸気発生器12と、原料ガス濃縮装置14と、酸素含有ガス供給器16と、第1ガス処理機構18Aと、第2ガス処理機構18Bと、熱交換器20と、除湿器22と、分離器24とを備える。
【0012】
蒸気発生器12は、水蒸気を発生させる装置である。蒸気発生器12は、水源から供給される水を蒸発させる。水源は、浄水処理設備であってもよいし、給水タンクであってもよい。蒸気発生器12で得られた水蒸気は、第1蒸気供給路31Aを介して第1ガス処理機構18Aに供給される。また、蒸気発生器12で得られた水蒸気は、第2蒸気供給路31Bを介して第2ガス処理機構18Bに供給される。
【0013】
原料ガス濃縮装置14は、原料ガスを濃縮する装置である。原料ガス濃縮装置14は、例えば、圧力変動吸着法(PSA法)を用いて、原料ガス源から供給される原料含有ガス中の原料ガスを濃縮する。原料ガスは、二酸化炭素ガスである。原料ガス源は、ゴミ処理場、製鉄所等のプラント設備であってもよいし、原料ガスタンクであってもよい。原料ガス濃縮装置14で濃縮された原料ガスは、第1原料ガス供給路32Aを介して第1ガス処理機構18Aに供給される。また、原料ガス濃縮装置14で濃縮された原料ガスは、第2原料ガス供給路32Bを介して第2ガス処理機構18Bに供給される。
【0014】
酸素含有ガス供給器16は、酸素ガスを含む酸素含有ガスを送り出す装置である。酸素含有ガス供給器16は、ブロワー(送風機)であってもよい。酸素含有ガスは、空気であってもよい。酸素含有ガス供給器16から送り出される酸素含有ガスは、第1酸素含有ガス供給路33Aを介して第1ガス処理機構18Aに供給される。また、酸素含有ガス供給器16から送り出される酸素含有ガスは、第2酸素含有ガス供給路33Bを介して第2ガス処理機構18Bに供給される。
【0015】
第1ガス処理機構18Aおよび第2ガス処理機構18Bは、炭化水素生成工程、炭素燃焼工程、触媒還元工程のいずれか1つを択一的に実施する機構である。炭化水素生成工程は、触媒を用いて、水蒸気および二酸化炭素ガスから炭化水素ガスを生成する工程である。炭素燃焼工程は、触媒に析出した炭素を酸素ガスと反応させて炭素を燃焼させる工程である。触媒還元工程は、炭素の燃焼により酸化された触媒を水素ガスと反応させて触媒を還元する工程である。
【0016】
第1ガス処理機構18Aは、炭化水素生成工程、炭素燃焼工程または触媒還元工程により得られる排ガスを、第1排ガス路34Aに排出する。第2ガス処理機構18Bは、炭化水素生成工程、炭素燃焼工程または触媒還元工程により得られる排ガスを、第2排ガス路34Bに排出する。炭化水素生成工程が実施される場合、排ガスには、炭化水素ガス、水蒸気、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガスが含まれる。一方、炭素燃焼工程が実施される場合、排ガスには、水蒸気、二酸化炭素ガス、酸素ガスが含まれる。他方、触媒還元工程が実施される場合、排ガスには、水蒸気、水素ガスが含まれる。第1ガス処理機構18Aおよび第2ガス処理機構18Bの詳細は後述する。
【0017】
熱交換器20には、排ガス合流路35と冷媒管(図示せず)とが通る。排ガス合流路35には、第1ガス処理機構18Aから第1排ガス路34Aを介して供給される排ガスと、第2ガス処理機構18Bから第2排ガス路34Bを介して供給される排ガスとが流れる。冷媒管には、冷媒タンク(図示せず)から供給される冷媒が流れる。熱交換器20は、冷媒と排ガスとの間で熱交換させて、排ガスを冷却する。
【0018】
除湿器22は、熱交換器20よりも下流の排ガス合流路35に配置される。除湿器22は、排ガス中の水分を取り出す。本実施形態では、除湿器22は、排ガスを冷却して水分を取り出す。除湿器22は、排ガスから取り出した水分を排水路36に排出する。排水路36に排出された水分は、蒸気発生器12に戻されてもよい。
【0019】
分離器24は、除湿器22よりも下流の排ガス合流路35に配置される。分離器24は、特定のガスを吸着する1以上の吸着剤を有する。本実施形態では、分離器24は、水素吸着剤と、一酸化炭素吸着剤と、二酸化炭素吸着剤とを有する。分離器24は、圧力変動吸着法(PSA法)を用いて、排ガス中の水素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガスを個別に分離する。排ガス中から分離された水素ガスは水素ガス排出路37に排出され、排ガス中から分離された一酸化炭素ガスは一酸化炭素ガス排出路38に排出され、排ガス中から分離された二酸化炭素ガスは二酸化炭素ガス排出路39に排出される。
【0020】
上述のように、第1ガス処理機構18Aおよび第2ガス処理機構18Bの少なくとも一方で炭化水素生成工程が実施される場合、排ガスには炭化水素ガスが含まれる。この場合、分離器24によって排ガス中の水素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガスが分離されるので、当該排ガス中の炭化水素ガスは濃縮される。濃縮された炭化水素ガスは、炭化水素ガス排出路40に排出される。
【0021】
制御装置26は、電解合成システム10を統括する装置である。制御装置26は、第1ガス処理機構18Aに炭化水素生成工程、炭素燃焼工程または触媒還元工程を実施させる。制御装置26は、第2ガス処理機構18Bに炭化水素生成工程、炭素燃焼工程または触媒還元工程を実施させる。制御装置26による制御の詳細は後述する。
【0022】
図2は、第1ガス処理機構18Aおよび第2ガス処理機構18Bを示す図である。第1ガス処理機構18Aの構成要素と対応する第2ガス処理機構18Bの構成要素について、同一の数字を付すとともにAに代えてBを付す。
【0023】
第1ガス処理機構18Aは、第1ヒータ50Aと、第1電解装置52Aと、第1熱交換器54Aと、第1合成装置56Aと、第1ガス分析計58Aとを、構成要素として備える。第2ガス処理機構18Bは、第2ヒータ50Bと、第2電解装置52Bと、第2熱交換器54Bと、第2合成装置56Bと、第2ガス分析計58Bとを、構成要素として備える。
【0024】
第1ガス処理機構18Aに備えられる上記の各構成要素と、第2ガス処理機構18Bに備えられる上記の各構成要素とは実質的に同じである。また、第1ガス処理機構18Aに備えられる上記の各構成要素の接続関係と、第2ガス処理機構18Bに備えられる上記の各構成要素の接続関係とは実質的に同じである。したがって、以下では、第2ガス処理機構18Bに備えられる上記の各構成要素と、当該構成要素の接続関係とに関する説明は省略する。
【0025】
第1ヒータ50Aは、加熱装置である。第1ヒータ50Aは、第1電解装置52Aに供給される水蒸気を加熱する。また、第1ヒータ50Aは、第1電解装置52Aに供給される原料ガス(二酸化炭素ガス)を加熱する。第1ヒータ50Aには、第1蒸気供給路31Aの下流端部と第1原料ガス供給路32Aの下流端部と第1混合ガス供給路41Aの上流端部とが配置される。第1蒸気供給路31Aの下流端部と第1原料ガス供給路32Aの下流端部とは、第1混合ガス供給路41Aの上流端部に接続される。第1混合ガス供給路41Aの下流端部は、第1電解装置52Aに接続される。
【0026】
第1電解装置52Aは、二酸化炭素ガスおよび水蒸気を電解する電解装置である。第1電解装置52Aは、複数の電解セル61を有する。各電解セル61は、電解質膜62と、燃料極63と、酸素極64とを有する。電解質膜62は、燃料極63と酸素極64とに挟持される。電解質膜62は、例えば、イットリア安定化ジルコニア等の固体電解質膜である。
【0027】
燃料極63は、カソード電極と称される場合がある。燃料極63は、第1混合ガス供給路41Aおよび第1蒸気供給路31Aを介して蒸気発生器12に接続される。また、燃料極63は、第1混合ガス供給路41Aおよび第1原料ガス供給路32Aを介して原料ガス濃縮装置14に接続される。また、燃料極63は、第1混合ガス排出路42Aを介して第1合成装置56Aに接続される。
【0028】
酸素極64は、アノード電極と称される場合がある。酸素極64は、第1酸素含有ガス供給路33Aを介して酸素含有ガス供給器16に接続される。また、酸素極64は、第1酸素含有ガス排出路43Aを介して酸素排出部に接続される。酸素排出部は、酸素ガスタンクであってもよいし、大気空間であってもよい。
【0029】
第1熱交換器54Aは、第1電解装置52Aと第1合成装置56Aとの間に設けられる。第1熱交換器54Aには、第1混合ガス排出路42Aと冷媒管(図示せず)とが通る。第1熱交換器54Aは、冷媒管を流れる冷媒と第1混合ガス排出路42Aを流れるガスとの間で熱交換させて、第1合成装置56Aに供給されるガスを冷却する。第1熱交換器54Aは、制御装置26(図1)により指定される温度に応じて、ガスの冷却度合いを調整可能である。本実施形態では、第1熱交換器54Aは、冷媒管に流れる冷媒の流量を増減して、ガスの冷却度合いを調整する。
【0030】
第1合成装置56Aは、一酸化炭素ガスおよび水素ガスから炭化水素ガスを合成する合成装置である。一酸化炭素ガスおよび水素ガスは、第1ガス処理機構18Aにおいて炭化水素生成工程が実施される場合に、第1電解装置52Aから第1合成装置56Aに供給される。第1合成装置56Aは、触媒を用いて炭化水素ガスを合成する。触媒は、例えば、ニッケル等の金属を含む触媒である。
【0031】
触媒の長時間の使用によって触媒には炭素が析出する場合がある。この場合、第1ガス処理機構18Aにおいて炭素燃焼工程が実施される。炭素燃焼工程が実施されると、第1合成装置56Aには、第1電解装置52Aから酸素ガスが供給される。この場合、第1合成装置56Aでは、触媒に析出した炭素と酸素ガスとの燃焼反応により二酸化炭素ガスと水(水蒸気)とが生成される。
【0032】
触媒に析出した炭素と酸素ガスとの反応により触媒が酸化する傾向にある。そのため、本実施形態では、炭素燃焼工程後に触媒還元工程が実施される。触媒還元工程が実施されると、第1合成装置56Aには、第1電解装置52Aから水素ガスが供給される。この場合、第1合成装置56Aでは、酸化された触媒と水素ガスとの還元反応により水(水蒸気)が生成される。
【0033】
第1ガス分析計58Aは、第1合成装置56A近くの第1排ガス路34Aに設けられる。第1ガス分析計58Aは、炭化水素濃度センサ71、二酸化炭素濃度センサ72、水素濃度センサ73、および、水蒸気濃度センサ74を含む。炭化水素濃度センサ71は、排ガス中の炭化水素ガスの濃度を検出する。二酸化炭素濃度センサ72は、排ガス中の二酸化炭素ガスの濃度を検出する。水素濃度センサ73は、排ガス中の水素ガスの濃度を検出する。水蒸気濃度センサ74は、排ガス中の水蒸気の濃度を検出する。
【0034】
次に、炭化水素生成工程、炭素燃焼工程、触媒還元工程を切り換える制御装置26(図1)に関して説明する。
【0035】
制御装置26は、電解合成システム10を制御するコンピュータである。制御装置26は、操作ユニットと、記憶ユニットと、演算ユニットとを備える。操作ユニットは、オペレータの指示を受け付け可能な入力装置である。記憶ユニットは、揮発性メモリと不揮発性メモリとによって構成され得る。揮発性メモリとしては、例えばRAM等が挙げられる。不揮発性メモリとしては、例えばROM、フラッシュメモリ等が挙げられる。演算ユニットは、CPU、MPU等のプロセッサを含む。
【0036】
制御装置26は、第1ガス処理機構18Aに備えられる複数の弁を制御して、炭化水素生成工程、炭素燃焼工程または触媒還元工程を第1ガス処理機構18Aに実施させる。制御装置26は、第2ガス処理機構18Bに備えられる複数の弁を制御して、炭化水素生成工程、炭素燃焼工程または触媒還元工程を第2ガス処理機構18Bに実施させる。図中、弁が開弁している場合は白で示され、弁が閉弁している場合は黒で示されている。
【0037】
第1ガス処理機構18Aに備えられる複数の弁は、第1蒸気量調整弁81Aと、第1二酸化炭素量調整弁82Aと、第1酸素開閉弁83Aと、第1切換弁84Aと、第1酸素路切換弁85Aと、第1混合路切換弁86Aとを含む。第2ガス処理機構18Bに備えられる複数の弁は、第2蒸気量調整弁81Bと、第2二酸化炭素量調整弁82Bと、第2酸素開閉弁83Bと、第2切換弁84Bと、第2酸素路切換弁85Bと、第2混合路切換弁86Bとを含む。
【0038】
第1ガス処理機構18Aに備えられる上記の各弁と、第2ガス処理機構18Bに備えられる上記の各弁とは実質的に同じである。したがって、以下では、第2ガス処理機構18Bに備えられる上記の各弁に関する説明は省略する。
【0039】
第1蒸気量調整弁81Aは、第1蒸気供給路31Aに設けられる。第1蒸気量調整弁81Aは、第1電解装置52Aに供給される水蒸気の流量を調整する流量調整弁である。第1蒸気量調整弁81Aは、制御装置26の制御にしたがって閉弁または開弁する。第1蒸気量調整弁81Aの開弁量は、制御装置26により設定されてもよいし、デフォルトとして予め設定されてもよい。
【0040】
第1二酸化炭素量調整弁82Aは、第1原料ガス供給路32Aに設けられる。第1二酸化炭素量調整弁82Aは、第1電解装置52Aに供給される二酸化炭素ガスの流量を調整する流量調整弁である。第1二酸化炭素量調整弁82Aは、制御装置26の制御にしたがって閉弁または開弁する。第1二酸化炭素量調整弁82Aの開弁量は、制御装置26により設定されてもよいし、デフォルトとして予め設定されてもよい。
【0041】
本実施形態では、第1蒸気量調整弁81Aの開弁量と、第1二酸化炭素量調整弁82Aの開弁量とは、第1合成装置56Aで合成される炭化水素ガスの種類に応じた比率で設定される。例えば、炭化水素ガスの種類がメタンガスである場合、第1蒸気量調整弁81Aの開弁量と、第1二酸化炭素量調整弁82Aの開弁量とは、「3:1」の比率で設定される。或いは、炭化水素ガスの種類がメタノールである場合、第1蒸気量調整弁81Aの開弁量と、第1二酸化炭素量調整弁82Aの開弁量とは、「2:1」の比率で設定される。或いは、炭化水素ガスの種類がエタノールである場合、第1蒸気量調整弁81Aの開弁量と、第1二酸化炭素量調整弁82Aの開弁量とは、「3:2」の比率で設定される。
【0042】
第1酸素開閉弁83Aは、第1酸素含有ガス供給路33Aに設けられる。第1酸素開閉弁83Aは、電磁弁である。第1酸素開閉弁83Aは、制御装置26の制御にしたがって閉弁または開弁する。
【0043】
第1切換弁84Aは、第1酸素含有ガス排出路43Aに設けられる。第1切換弁84Aは、例えば、制御装置26の制御により経路を切換可能な三方弁である。第1切換弁84Aは、第1合成装置56Aに酸素ガスを供給するか否かを切り換える。この切り換えは、制御装置26により制御される。
【0044】
第1切換弁84Aが第1合成装置56Aに酸素ガスを供給する場合、酸素ガスは、第1酸素含有ガス排出路43Aから分岐する第1連通路44Aに流れる。この場合、酸素ガスは、第1連通路44Aの下流端部が接続される第1混合ガス排出路42Aを介して、第1合成装置56Aに供給される。一方、第1切換弁84Aが第1合成装置56Aに酸素ガスを供給しない場合、酸素ガスは、第1酸素含有ガス排出路43Aの下流に向かって流れる。
【0045】
第1酸素路切換弁85Aは、第1切換弁84Aよりも下流の第1酸素含有ガス排出路43Aに設けられる。第1酸素路切換弁85Aは、例えば、制御装置26の制御により経路を切換可能な三方弁である。第1酸素路切換弁85Aは、第2電解装置52Bに酸素ガスを供給するか否かを切り換える。この切り換えは、制御装置26により制御される。
【0046】
第1酸素路切換弁85Aが第2電解装置52Bに酸素ガスを供給する場合、酸素ガスは、第1酸素含有ガス排出路43Aから分岐する第1連通路45Aに流れる。この場合、酸素ガスは、第1連通路45Aの下流端部が接続される第2酸素含有ガス供給路33Bを介して、第2電解装置52Bに供給される。一方、第1酸素路切換弁85Aが第2電解装置52Bに酸素ガスを供給しない場合、酸素ガスは、第1酸素含有ガス排出路43Aの下流に向かって流れる。この場合、酸素ガスは、酸素排出部に供給される。
【0047】
第1混合路切換弁86Aは、第1混合ガス排出路42Aに設けられる。第1混合路切換弁86Aは、例えば、制御装置26の制御により経路を切換可能な三方弁である。第1混合路切換弁86Aは、第1合成装置56Aに酸素ガスを供給するか否かを切り換える。この切り換えは、制御装置26により制御される。
【0048】
第1混合路切換弁86Aが第1合成装置56Aに酸素ガスを供給する場合、酸素ガスは、第1連通路44Aから第1混合ガス排出路42Aに流れる。この場合、酸素ガスは、第1合成装置56Aに供給される。一方、第1混合路切換弁86Aが第1合成装置56Aに酸素ガスを供給しない場合、第1電解装置52Aから第1混合ガス排出路42Aに排出されるガスが第1合成装置56Aに供給される。
【0049】
次に、制御装置26が第1ガス処理機構18Aに炭化水素生成工程を実施させる場合に関して説明する。
【0050】
第1ガス処理機構18Aに炭化水素生成工程を実施させる場合、制御装置26は、第1蒸気量調整弁81A、第1二酸化炭素量調整弁82Aおよび第1酸素開閉弁83Aを開弁する(図2参照)。この場合、第1電解装置52Aでは、蒸気発生器12から供給される水蒸気と、原料ガス濃縮装置14から供給される二酸化炭素ガスとの電解が実施される。電解が実施されると、一酸化炭素ガスおよび水素ガスが燃料極63に生成され、酸素ガスが酸素極64に生成される。
【0051】
第1ガス処理機構18Aに炭化水素生成工程を実施させる場合、制御装置26は、第1混合路切換弁86Aを制御して、第1電解装置52Aの燃料極63から第1合成装置56Aへのガスの経路を形成する(図2参照)。この場合、燃料極63に生成された一酸化炭素ガスおよび水素ガスは、第1混合ガス排出路42Aを介して、第1合成装置56Aに供給される。第1合成装置56Aでは、一酸化炭素ガスおよび水素ガスから炭化水素ガスへの合成が触媒を用いて実施される。
【0052】
第1ガス処理機構18Aに炭化水素生成工程を実施させる場合、制御装置26は、第1熱交換器54Aに第1温度を指定する。第1温度は、一酸化炭素ガスおよび水素ガスから炭化水素ガスへの合成反応に適した温度に設定される。例えば、第1温度は300℃である。
【0053】
第1ガス処理機構18Aに炭化水素生成工程を実施させる場合、制御装置26は、第1切換弁84Aおよび第1酸素路切換弁85Aを制御して、第1電解装置52Aの酸素極64から酸素排出部へのガスの経路を形成する(図2参照)。この場合、酸素極64に生成された酸素ガスは、酸素含有ガス供給器16から供給される酸素含有ガスとともに、第1酸素含有ガス排出路43Aを介して、酸素排出部に供給される。酸素含有ガス供給器16から酸素極64に酸素含有ガスが供給されることで、酸素極64に生成される酸素ガスが電解セル61に停滞することが抑制される。
【0054】
第1ガス処理機構18Aにおける炭化水素生成工程の実施中、制御装置26は、第1ガス分析計58Aの炭化水素濃度センサ71によって検出された炭化水素濃度を、所定の炭化水素濃度閾値と比較する。
【0055】
次に、制御装置26が第2ガス処理機構18Bに炭化水素生成工程を実施させる場合に関して説明する。制御装置26は、第2ガス処理機構18Bに炭化水素生成工程を実施させる場合、第1ガス処理機構18Aと同様に、第2熱交換器54Bに第1温度を指定する。また、制御装置26は、第1ガス処理機構18Aと同様に、複数の弁を制御する。
【0056】
すなわち、制御装置26は、第2蒸気量調整弁81B、第2二酸化炭素量調整弁82Bおよび第2酸素開閉弁83Bを開弁する(図2参照)。また、制御装置26は、第2混合路切換弁86Bを制御して、第2電解装置52Bの燃料極63から第2合成装置56Bへのガスの経路を形成する(図2参照)。また、制御装置26は、第2切換弁84Bおよび第2酸素路切換弁85Bを制御して、第2電解装置52Bの酸素極64から酸素排出部へのガスの経路を形成する(図2参照)。この場合、第1ガス処理機構18Aと同様に、第2電解装置52Bでは水蒸気および二酸化炭素ガスの電解が実施され、第2合成装置56Bでは炭化水素ガスの合成が実施される。
【0057】
第2ガス処理機構18Bにおける炭化水素生成工程の実施中、制御装置26は、第2ガス分析計58Bの炭化水素濃度センサ71によって検出された炭化水素濃度を、所定の炭化水素濃度閾値と比較する。
【0058】
次に、制御装置26が第2ガス処理機構18Bに実施させる工程を炭化水素生成工程から炭素燃焼工程に切り換える場合に関して説明する。
【0059】
第2合成装置56Bの触媒に炭素が析出すると、第2合成装置56Bでの炭化水素ガスの合成効率が下がって、第2合成装置56Bから排出される排ガス中の炭化水素ガス濃度が減少する傾向にある。したがって、第2合成装置56Bの触媒に析出する炭素の量が増加するほど、第2合成装置56Bから排出される排ガス中の炭化水素ガス濃度の減少度合いが大きくなる。
【0060】
第2ガス分析計58Bの炭化水素濃度センサ71によって検出された炭化水素濃度が炭化水素濃度閾値を下回った場合、制御装置26は、第2合成装置56Bの触媒に析出している炭素の除去が必要と判定する。この場合、制御装置26は、第2ガス処理機構18Bに炭素燃焼工程を実施させる。図3は、第2ガス処理機構18Bにおいて炭素燃焼工程が実施される場合を示す図である。
【0061】
第2ガス処理機構18Bに炭素燃焼工程を実施させる場合、制御装置26は、第2蒸気量調整弁81Bおよび第2二酸化炭素量調整弁82Bを閉弁する(図3参照)。この場合、第2電解装置52Bの燃料極63には水蒸気および二酸化炭素ガスが供給されない。そのため、第2電解装置52Bでは水蒸気および二酸化炭素ガスの電解が実施されず、第2合成装置56Bでは炭化水素ガスの合成が実施されない。
【0062】
第2ガス処理機構18Bに炭素燃焼工程を実施させる場合、制御装置26は、第2熱交換器54Bに指定する温度を第1温度から第2温度に切り換える。第2温度は、触媒に析出した炭素と酸素ガスとの燃焼反応に適した温度に設定される。第2温度は、第1温度よりも高い。例えば、第2温度は500℃である。
【0063】
第2ガス処理機構18Bに炭素燃焼工程を実施させる場合、制御装置26は、第2酸素開閉弁83Bを閉弁する(図3参照)。また、制御装置26は、第1酸素路切換弁85Aを制御して、第1電解装置52Aの酸素極64から第2電解装置52Bへのガスの経路を形成する(図3参照)。また、制御装置26は、第2切換弁84Bおよび第2混合路切換弁86Bを制御して、第2電解装置52Bの酸素極64から第2合成装置56Bへのガスの経路を形成する(図3参照)。この場合、第1電解装置52Aで生成された酸素ガスが第2合成装置56Bに供給される。酸素ガスは、第1酸素含有ガス排出路43A、第1連通路45A、第2酸素含有ガス供給路33B、第2酸素含有ガス排出路43B、第2連通路44B、第2混合ガス排出路42Bの順に流れる。
【0064】
第1電解装置52Aの電解時、第1電解装置52Aは700℃~800℃程度の高温になる。そのため、第1電解装置52Aで生成された酸素ガスは高温である。高温の酸素ガスが第2合成装置56Bに供給される前に第2電解装置52Bを経由することで、電解停止中の第2電解装置52Bを温めることができる。したがって、高温の酸素ガスが第2電解装置52Bを経由しない場合に比べて、早期に第2電解装置52Bを復帰させて、第2電解装置52Bに電解を再開させることができる。
【0065】
第2合成装置56Bに酸素ガスが供給されると、当該第2合成装置56Bの触媒に析出した炭素の量は、酸素ガスとの燃焼反応により減少する。第2ガス処理機構18Bにおける炭素燃焼工程の実施中、制御装置26は、第2ガス分析計58Bの二酸化炭素濃度センサ72によって検出された二酸化炭素濃度を、所定の二酸化炭素濃度閾値と比較する。
【0066】
次に、制御装置26が第2ガス処理機構18Bに実施させる工程を炭素燃焼工程から触媒還元工程に切り換える場合に関して説明する。
【0067】
二酸化炭素濃度が二酸化炭素濃度閾値を下回った場合、制御装置26は、炭化水素ガスの合成に影響が殆どない程度にまで、第2合成装置56Bの触媒に析出した炭素の量が減少したと判定する。この場合、制御装置26は、第2ガス処理機構18Bに触媒還元工程を実施させる。図4は、第2ガス処理機構18Bにおいて触媒還元工程が実施される場合を示す図である。
【0068】
第2ガス処理機構18Bに触媒還元工程を実施させる場合、制御装置26は、第2二酸化炭素量調整弁82Bを閉弁した状態で、第2蒸気量調整弁81Bを開弁する(図4参照)。この場合、第2電解装置52Bの燃料極63には水蒸気が供給され、二酸化炭素ガスが供給されない。そのため、第2電解装置52Bでは水蒸気の電解が実施される。
【0069】
第2ガス処理機構18Bに触媒還元工程を実施させる場合、制御装置26は、第2熱交換器54Bに指定する温度を第2温度から第3温度に切り換える。第3温度は、炭素燃焼工程により酸化した触媒と水素ガスとの還元反応に適した温度に設定される。第3温度は、第1温度よりも高く、第2温度よりも低い。例えば、第3温度は400℃である。
【0070】
第2ガス処理機構18Bに触媒還元工程を実施させる場合、制御装置26は、第2酸素開閉弁83Bを開弁する(図4参照)。また、制御装置26は、第2切換弁84Bを制御して、第2電解装置52Bの酸素極64から酸素排出部へのガスの経路を形成する(図4参照)。また、制御装置26は、第2混合路切換弁86Bを制御して、第2電解装置52Bの燃料極63から第2合成装置56Bへのガスの経路を形成する(図4参照)。この場合、第2電解装置52Bにおける水蒸気の電解により生成された水素ガスは、第2混合ガス排出路42Bを介して、第2合成装置56Bに供給される。
【0071】
第2合成装置56Bに水素ガスが供給されると、炭素燃焼工程において酸化された触媒は、水素ガスと反応して還元され、徐々に酸化前の状態に戻る。第2ガス処理機構18Bにおける触媒還元工程の実施中、制御装置26は、第2ガス分析計58Bの水素濃度センサ73によって検出された水素濃度を、所定の水素濃度閾値と比較する。
【0072】
水素濃度が水素濃度閾値を超えた場合、制御装置26は、炭化水素ガスの合成に影響が殆どない程度にまで、酸化された触媒の還元が実施されたと判定する。この場合、制御装置26は、第2ガス処理機構18Bに炭化水素生成工程を実施させる。
【0073】
なお、制御装置26は、排ガス中の水蒸気濃度に基づいて、炭化水素ガスの合成に影響が殆どない程度にまで、酸化された触媒の還元が実施されたか否かを判定してもよい。この場合、第2ガス処理機構18Bにおける触媒還元工程の実施中、制御装置26は、第2ガス分析計58Bの水蒸気濃度センサ74によって検出された水蒸気濃度を、所定の水蒸気濃度閾値と比較する。水蒸気濃度が水蒸気濃度閾値を下回ると、制御装置26は、第2ガス処理機構18Bに炭化水素生成工程を実施させる。
【0074】
次に、制御装置26が第1ガス処理機構18Aに実施させる工程を炭化水素生成工程から炭素燃焼工程に切り換える場合に関して説明する。
【0075】
第1ガス分析計58Aの炭化水素濃度センサ71によって検出された炭化水素濃度が炭化水素濃度閾値を下回った場合、制御装置26は、第1合成装置56Aの触媒に析出している炭素の除去が必要と判定する。この場合、制御装置26は、第1ガス処理機構18Aに炭素燃焼工程を実施させる。図5は、第1ガス処理機構18Aにおいて炭素燃焼工程が実施される場合を示す図である。
【0076】
第1ガス処理機構18Aに炭素燃焼工程を実施させる場合、制御装置26は、第1熱交換器54Aに指定する温度を第1温度から第2温度に切り換える。また、制御装置26は、第1蒸気量調整弁81Aおよび第1二酸化炭素量調整弁82Aを閉弁する(図5参照)。この場合、第1電解装置52Aでは水蒸気および二酸化炭素ガスの電解が実施されず、第1合成装置56Aでは炭化水素ガスの合成が実施されない。
【0077】
第1ガス処理機構18Aに炭素燃焼工程を実施させる場合、制御装置26は、第1酸素開閉弁83Aを閉弁する(図5参照)。また、制御装置26は、第2酸素路切換弁85Bを制御して、第2電解装置52Bの酸素極64から第1電解装置52Aへのガスの経路を形成する(図5参照)。また、制御装置26は、第1切換弁84Aおよび第1混合路切換弁86Aを制御して、第1電解装置52Aの酸素極64から第1合成装置56Aへのガスの経路を形成する(図5参照)。この場合、第2電解装置52Bで生成された酸素ガスが第1合成装置56Aに供給される。酸素ガスは、第2酸素含有ガス排出路43B、第2連通路45B、第1酸素含有ガス供給路33A、第1酸素含有ガス排出路43A、第1連通路44A、第1混合ガス排出路42Aの順に流れる。
【0078】
第1合成装置56Aに酸素ガスが供給されると、当該第1合成装置56Aの触媒に析出した炭素は、酸素ガスとの燃焼反応により減少する。第1ガス処理機構18Aにおける炭素燃焼工程の実施中、制御装置26は、第1ガス分析計58Aの二酸化炭素濃度センサ72によって検出された二酸化炭素濃度を、所定の二酸化炭素濃度閾値と比較する。
【0079】
次に、制御装置26が第1ガス処理機構18Aに実施させる工程を炭素燃焼工程から触媒還元工程に切り換える場合に関して説明する。
【0080】
二酸化炭素濃度が二酸化炭素濃度閾値を下回った場合、制御装置26は、炭化水素ガスの合成に影響が殆どない程度にまで、第1合成装置56Aの触媒に析出した炭素の量が減少したと判定する。この場合、制御装置26は、第1ガス処理機構18Aに触媒還元工程を実施させる。図6は、第1ガス処理機構18Aにおいて触媒還元工程が実施される場合を示す図である。
【0081】
第1ガス処理機構18Aに触媒還元工程を実施させる場合、制御装置26は、第1熱交換器54Aに指定する温度を第2温度から第3温度に切り換える。また、制御装置26は、第1二酸化炭素量調整弁82Aを閉弁した状態で、第1蒸気量調整弁81Aを開弁する(図6参照)。この場合、第1電解装置52Aの燃料極63には水蒸気が供給され、二酸化炭素ガスが供給されない。そのため、第1電解装置52Aでは水蒸気の電解が実施される。
【0082】
第1ガス処理機構18Aに触媒還元工程を実施させる場合、制御装置26は、第1酸素開閉弁83Aを開弁する(図6参照)。また、制御装置26は、第1切換弁84Aを制御して、第1電解装置52Aの酸素極64から酸素排出部へのガスの経路を形成する(図6参照)。また、制御装置26は、第1混合路切換弁86Aを制御して、第1電解装置52Aの燃料極63から第1合成装置56Aへのガスの経路を形成する(図6参照)。この場合、第1電解装置52Aにおける水蒸気の電解により生成された水素ガスは、第1混合ガス排出路42Aを介して、第1合成装置56Aに供給される。
【0083】
第1合成装置56Aに水素ガスが供給されると、炭素燃焼工程において酸化された触媒は、水素ガスと反応して還元され、徐々に酸化前の状態に戻る。第1ガス処理機構18Aにおける触媒還元工程の実施中、制御装置26は、第1ガス分析計58Aの水素濃度センサ73によって検出された水素濃度を、所定の水素濃度閾値と比較する。
【0084】
水素濃度が水素濃度閾値を超えた場合、制御装置26は、炭化水素ガスの合成に影響が殆どない程度にまで、酸化された触媒の還元が実施されたと判定する。この場合、制御装置26は、第1ガス処理機構18Aに炭化水素生成工程を実施させる。
【0085】
なお、制御装置26は、排ガス中の水蒸気濃度に基づいて、炭化水素ガスの合成に影響が殆どない程度にまで、酸化された触媒の還元が実施されたか否かを判定してもよい。この場合、第1ガス処理機構18Aにおける触媒還元工程の実施中、制御装置26は、第1ガス分析計58Aの水蒸気濃度センサ74によって検出された水蒸気濃度を、所定の水蒸気濃度閾値と比較する。水蒸気濃度が水蒸気濃度閾値を下回ると、制御装置26は、第1ガス処理機構18Aに炭化水素生成工程を実施させる。
【0086】
以上のように、本実施形態では、第1電解装置52Aへの二酸化炭素ガスおよび水蒸気の供給中に、制御装置26は、第1合成装置56Aから排出される排ガス中の炭化水素濃度を監視する。炭化水素濃度が所定の炭化水素濃度閾値を下回ると、制御装置26は、第1蒸気量調整弁81Aおよび第1二酸化炭素量調整弁82Aを閉弁して、二酸化炭素ガスおよび水蒸気の供給を停止する。その後、制御装置26は、第1切換弁84Aおよび第1混合路切換弁86Aを制御して第1合成装置56Aに酸素ガスを供給する。これにより、第1合成装置56Aに備えられる触媒に析出した炭素を酸素ガスにより燃焼させることができる。
【0087】
また、本実施形態では、第1合成装置56Aに酸素ガスが供給された状態において、制御装置26は、第1合成装置56Aから排出される排ガス中の二酸化炭素濃度を監視する。二酸化炭素濃度が所定の二酸化炭素濃度閾値を下回ると、制御装置26は、第1二酸化炭素量調整弁82Aを開弁することなく第1蒸気量調整弁81Aを開弁して第1電解装置52Aに水蒸気を供給する。これにより、水蒸気の電解により第1電解装置52Aで生成される水素ガスを、第1電解装置52Aから第1合成装置56Aに供給することができる。その結果、触媒に析出した炭素の燃焼により酸化した触媒を、水素ガスとの反応により還元することができる。
【0088】
また、本実施形態では、制御装置26は、第1合成装置56Aに供給されるガスの種類に応じて、第1熱交換器54Aに指定する温度を切り換える。これにより、第1合成装置56Aにおいて互いに異なる複数の化学反応のそれぞれを適切に実施させることができる。
【0089】
一方、第2電解装置52Bへの二酸化炭素ガスおよび水蒸気の供給中に、制御装置26は、第2合成装置56Bから排出される排ガス中の炭化水素濃度を監視する。第2合成装置56Bから排出される排ガス中の炭化水素濃度が所定の炭化水素濃度閾値を下回ると、制御装置26は、第2蒸気量調整弁81Bおよび第2二酸化炭素量調整弁82Bを閉弁して、二酸化炭素ガスおよび水蒸気の供給を停止する。その後、制御装置26は、第2切換弁84Bを開弁して第2合成装置56Bに酸素ガスを供給する。これにより、第2合成装置56Bに備えられる触媒に析出した炭素を酸素ガスにより燃焼させることができる。
【0090】
また、本実施形態では、第2合成装置56Bに酸素ガスが供給された状態において、制御装置26は、第2合成装置56Bから排出される排ガス中の二酸化炭素濃度を監視する。二酸化炭素濃度が所定の二酸化炭素濃度閾値を下回ると、制御装置26は、第2二酸化炭素量調整弁82Bを開弁することなく第2蒸気量調整弁81Bを開弁して第2電解装置52Bに水蒸気を供給する。これにより、水蒸気の電解により第2電解装置52Bで生成される水素ガスを、第2電解装置52Bから第2合成装置56Bに供給することができる。その結果、触媒に析出した炭素の燃焼により酸化した触媒を、水素ガスとの反応により還元することができる。
【0091】
また、本実施形態では、制御装置26は、第2合成装置56Bに供給されるガスの種類に応じて、第2熱交換器54Bに指定する温度を切り換える。これにより、第2合成装置56Bにおいて互いに異なる複数の化学反応のそれぞれを適切に実施させることができる。
【0092】
図7は、第1電解装置52Aまたは第2電解装置52Bの燃料極63のガスの推移を示す図である。上述のように、炭化水素生成工程から炭素燃焼工程に移行する場合、第1蒸気量調整弁81A(または第2蒸気量調整弁81B)と、第1二酸化炭素量調整弁82A(または第2二酸化炭素量調整弁82B)とは閉弁される。本実施形態では、第1蒸気量調整弁81A(または第2蒸気量調整弁81B)が閉弁されるタイミングT1は、第1二酸化炭素量調整弁82A(第2二酸化炭素量調整弁82B)が閉弁されるタイミングT2よりも遅い。
【0093】
すなわち、制御装置26は、第1二酸化炭素量調整弁82A(または第2二酸化炭素量調整弁82B)を閉弁した後に、第1蒸気量調整弁81A(または第2蒸気量調整弁81B)を閉弁する。これにより、燃料極63に残留する二酸化炭素ガスおよび一酸化炭素ガスを、水蒸気により燃料極63から排出することができる。したがって、調整弁を閉弁するタイミングが同じである場合に比べて、炭素燃焼工程後に実施される触媒還元工程で用いられる水素ガスを生成する燃料極63での水電解の効率を高めることができる。その結果、触媒還元工程の時間を短縮することができる。
【0094】
〔変形例〕
上記実施形態は、以下のように変形してもよい。
【0095】
(変形例1)
制御装置26は、第1合成装置56Aまたは第2合成装置56Bに供給される酸素ガスの流量を調整してもよい。この場合、第1連通路44Aおよび第2連通路44Bの各々には、酸素濃度センサおよび酸素量調整弁が設けられる。酸素量調整弁は、酸素濃度センサよりも下流に配置される。
【0096】
酸素濃度センサは、第1連通路44Aまたは第2連通路44Bを流れる酸素含有ガス中の酸素ガスの濃度を検出するセンサである。酸素量調整弁は、第1合成装置56Aまたは第2合成装置56Bに供給される酸素ガスの流量を調整する流量調整弁である。
【0097】
第2ガス処理機構18Bに炭素燃焼工程を実施させる場合(図3参照)、制御装置26は、第2連通路44Bに設けられる酸素濃度センサを用いて、第2連通路44Bに設けられる酸素量調整弁の開度を制御する。この場合、制御装置26は、酸素濃度センサにより検出される酸素ガスの濃度が大きいほど、酸素量調整弁の開度を小さくする。これにより、第2合成装置56Bに酸素ガスを過不足なく供給することができる。
【0098】
一方、第1ガス処理機構18Aに炭素燃焼工程を実施させる場合(図5参照)、制御装置26は、第1連通路44Aに設けられる酸素濃度センサを用いて、第1連通路44Aに設けられる酸素量調整弁の開度を制御する。この場合、制御装置26は、酸素濃度センサにより検出される酸素ガスの濃度が大きいほど、酸素量調整弁の開度を小さくする。これにより、第1合成装置56Aに酸素ガスを過不足なく供給することができる。
【0099】
(変形例2)
第1ガス処理機構18Aと第2ガス処理機構18Bとの組が複数組備えられてもよい。
【0100】
(変形例3)
制御装置26は、第1ガス処理機構18Aにおける炭素燃焼工程および触媒還元工程と、第2ガス処理機構18Bにおける炭素燃焼工程および触媒還元工程とを、単位時間ごとに交互に実施させてもよい。この場合、炭化水素濃度センサ71を取り外すことができる。また、炭化水素濃度センサ71によって検出された炭化水素濃度と炭化水素濃度閾値とを比較する制御装置26の処理がなくなるため、制御装置26の処理負荷を低減することができる。
【0101】
(変形例4)
第1ガス処理機構18Aと第2ガス処理機構18Bとの一方は取り外されてもよい。図8は、変形例による1つのガス処理機構18を示す図である。図8では、実施形態における構成要素の名称に付された「第1」および「第2」と、記号「A」および「B」とが外されている。
【0102】
本変形例では、第1ガス処理機構18Aおよび第2ガス処理機構18Bの一方で生成された酸素ガスを、第1ガス処理機構18Aおよび第2ガス処理機構18Bの他方に供給することはない。そのため、ガス処理機構18では、第1酸素路切換弁85A(または第2酸素路切換弁85B)と、第1混合路切換弁86A(または第2混合路切換弁86B)と、第1連通路44A(または第2連通路44B)と、第1連通路45A(または第2連通路45B)とは外される。
【0103】
一方、ガス処理機構18では、酸素含有ガス排出路43から分岐し、熱交換器54を介して合成装置56に接続される連結管90が設けられる。
【0104】
ガス処理機構18に対する制御装置26の制御は、上記実施形態と同様であるが、簡単に説明する。ガス処理機構18に炭化水素生成工程を実施させる場合、制御装置26は、熱交換器54に第1温度を指定する。また、制御装置26は、蒸気量調整弁81、二酸化炭素量調整弁82および酸素開閉弁83を開弁する(図8参照)。これに加えて、制御装置26は、切換弁84を制御して、酸素極64から酸素排出部へのガスの経路を形成する。
【0105】
合成装置56から排出される排ガス中の炭化水素濃度が炭化水素濃度閾値を下回ると、制御装置26は、熱交換器54に指定する温度を第1温度から第2温度に切り換える。また、制御装置26は、蒸気量調整弁81および二酸化炭素量調整弁82を閉弁する。また、制御装置26は、切換弁84を制御して、酸素極64から合成装置56へのガスの経路を形成する。
【0106】
合成装置56から排出される排ガス中の二酸化炭素濃度が二酸化炭素濃度閾値を下回ると、制御装置26は、熱交換器54に指定する温度を第2温度から第3温度に切り換える。また、制御装置26は、二酸化炭素量調整弁82を閉弁した状態で、蒸気量調整弁81を開弁する。また、制御装置26は、切換弁84を制御して、酸素極64から酸素排出部へのガスの経路を形成する。
【0107】
このように、第1ガス処理機構18Aと第2ガス処理機構18Bとの一方は取り外されても、制御装置26の制御は、上記実施形態と同様である。したがって、1つのガス処理機構18であっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0108】
(変形例5)
第1連通路44Aまたは第2連通路44Bは、連結管90に置換されてもよい。この場合、第1混合路切換弁86Aまたは第2混合路切換弁86Bを取り外すことができる。
【0109】
以上の記載から把握し得る発明および効果について以下に記載する。
【0110】
(1)本発明は、二酸化炭素ガスおよび水蒸気を電解して一酸化炭素ガスおよび水素ガスを生成する電解装置(52、52A、52B)と、前記電解装置から排出される前記一酸化炭素ガスおよび前記水素ガスから触媒を用いて炭化水素ガスを合成する合成装置(56、56A、56B)とが備えられる電解合成システム(10)である。電解合成システムは、前記電解装置に供給される前記水蒸気の流量を調整する蒸気量調整弁(81、81A、81B)と、前記電解装置に供給される前記二酸化炭素ガスの流量を調整する二酸化炭素量調整弁(82、82A、82B)と、前記合成装置から排出される排ガス中の前記二酸化炭素ガスの濃度を計測する二酸化炭素濃度センサ(72)と、制御装置(26)と、を備える。前記合成装置に酸素ガスが供給された状態において前記排ガス中の前記二酸化炭素ガスの濃度が所定の二酸化炭素濃度閾値を下回った場合、前記制御装置は、前記二酸化炭素量調整弁を開弁することなく前記蒸気量調整弁を開弁して前記電解装置を介して前記合成装置に前記水素ガスを供給する。
【0111】
これにより、水蒸気の電解により電解装置で生成される水素ガスを、電解装置から合成装置に供給することができる。その結果、触媒に析出した炭素の燃焼により酸化した触媒を、水素ガスとの反応により還元することができる。その結果、合成装置による炭化水素ガスの合成効率の低減を抑制することができる。これに加えて、電解中に高温になる電解装置によって合成装置に供給される水素ガスを温めることができる。その結果、電解装置を介さずに合成装置に水素ガスを供給する場合に比べて、ヒータ等を用いる必要がなく効率的である。
【0112】
(2)本発明は、上記(1)に記載の電解合成システムであって、前記排ガス中の前記水素ガスの濃度を計測する水素濃度センサ(73)、および、前記排ガス中の前記水蒸気の濃度を計測する水蒸気濃度センサ(74)の少なくとも1つをさらに備え、前記合成装置に前記酸素ガスが供給された状態において、前記排ガス中の前記水素ガスの濃度が所定の水素濃度閾値を超える場合、または、前記排ガス中の前記水蒸気の濃度が所定の水蒸気濃度閾値を下回る場合、前記制御装置は、前記蒸気量調整弁および前記二酸化炭素量調整弁を開弁して、前記電解装置への前記二酸化炭素ガスおよび前記水蒸気の供給を開始してもよい。これにより、触媒が還元されても水素ガスを供給し続けることを抑制することができる。その結果、水素ガスの利用効率を高めることができる。
【0113】
(3)本発明は、上記(1)に記載の電解合成システムであって、前記排ガス中の前記炭化水素ガスの濃度を計測する炭化水素濃度センサ(71)と、前記合成装置に前記酸素ガスを供給するか否かを択一的に切り換える切換弁(84、84A、84B)と、をさらに備え、前記合成装置に前記一酸化炭素ガスおよび前記水素ガスが供給されている状態において前記炭化水素ガスの濃度が所定の炭化水素濃度閾値を下回った場合、前記制御装置は、前記蒸気量調整弁および前記二酸化炭素量調整弁を閉弁して前記電解装置への前記二酸化炭素ガスおよび前記水蒸気の供給を停止し、前記二酸化炭素ガスおよび前記水蒸気の供給の停止後、前記制御装置は、前記切換弁を制御して前記合成装置に前記酸素ガスを供給してもよい。これにより、合成装置に備えられる触媒に析出した炭素を酸素ガスにより燃焼させることができる。
【0114】
(4)本発明は、上記(3)に記載の電解合成システムであって、前記制御装置は、前記二酸化炭素ガスの供給を停止した後に、前記水蒸気の供給を停止してもよい。これにより、電解装置に残留する二酸化炭素ガスおよび一酸化炭素ガスを、水蒸気によって電解装置から押し出すことができる。したがって、二酸化炭素ガスの供給の停止タイミングと、水蒸気の供給の停止タイミングとが同じである場合に比べて、炭素燃焼工程後に実施される触媒還元工程で用いられる水素ガスを生成する電解装置での水電解の効率を高めることができる。その結果、触媒還元工程の時間を短縮することができる。
【0115】
(5)本発明は、上記(3)に記載の電解合成システムであって、前記電解装置と前記合成装置との間に設けられ、前記電解装置から前記合成装置に供給されるガスを冷却する熱交換器(54、54A、54B)をさらに備え、前記熱交換器は、前記制御装置により指定される温度に応じて、前記ガスの冷却度合いを調整可能であり、前記制御装置は、前記ガスの種類に応じて、前記熱交換器に指定する前記温度を切り換えてもよい。これにより、合成装置において互いに異なる複数の化学反応のそれぞれを適切に実施させることができる。
【0116】
(6)本発明は、上記(3)に記載の電解合成システムであって、前記電解装置、前記合成装置および前記切換弁は、複数備えられ、複数の前記合成装置の1つである第1合成装置(56A)は、複数の前記電解装置の1つである第1電解装置(52A)から排出される前記一酸化炭素ガスおよび前記水素ガスから触媒を用いて前記炭化水素ガスを合成し、複数の前記合成装置の他の1つである第2合成装置(56B)は、複数の前記電解装置の他の1つである第2電解装置(52B)から排出される前記一酸化炭素ガスおよび前記水素ガスから触媒を用いて前記炭化水素ガスを合成し、複数の前記切換弁の1つである第1切換弁(84A)は、前記第1電解装置において前記電解により副次的に生成される前記酸素ガスを前記第2合成装置に供給するか否かを択一的に切り換え、複数の前記切換弁の1つである第2切換弁(84B)は、前記第2電解装置において前記電解により副次的に生成される前記酸素ガスを前記第1合成装置に供給するか否かを択一的に切り換え、前記合成装置に前記一酸化炭素ガスおよび前記水素ガスが供給された状態において前記第1合成装置から排出される前記排ガス中の前記炭化水素ガスの濃度が所定の炭化水素濃度閾値を下回った場合、前記制御装置は、前記第2切換弁を制御して前記第1合成装置に前記酸素ガスを供給し、前記合成装置に前記一酸化炭素ガスおよび前記水素ガスが供給された状態において前記第2合成装置から排出される前記排ガス中の前記炭化水素ガスの濃度が所定の炭化水素濃度閾値を下回った場合、前記制御装置は、前記第1切換弁を制御して前記第2合成装置に前記酸素ガスを供給してもよい。
【0117】
これにより、酸素ガスの利用効率を高めることができる。また、電解が実施される第1電解装置により温められた酸素ガスを、電解停止状態である第2電解装置を経由して、第2合成装置に供給することができる。同様に、電解が実施される第2電解装置により温められた酸素ガスを、電解停止状態である第1電解装置を経由して、第1合成装置に供給することができる。したがって、電解停止状態である電解装置を早期に復帰させて、電解装置に電解を再開させることができる。
【0118】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0119】
10…電解合成システム 12…蒸気発生器
14…原料ガス濃縮装置 16…酸素含有ガス供給器
18(18A、18B)…ガス処理機構(第1ガス処理機構、第2ガス処理機構)
20…熱交換器 22…除湿器
24…分離器 26…制御装置
52(52A、52B)…電解装置(第1電解装置、第2電解装置)
54(54A、54B)…熱交換器(第1熱交換器、第2熱交換器)
56(56A、56B)…合成装置(第1合成装置、第2合成装置)
58(58A、58B)…ガス分析計(第1ガス分析計、第2ガス分析計)
63…燃料極 64…酸素極
71…炭化水素濃度センサ 72…二酸化炭素濃度センサ
73…水素濃度センサ 74…水蒸気濃度センサ
81(81A、81B)…蒸気量調整弁(第1蒸気量調整弁、第2蒸気量調整弁)
82(82A、82B)…二酸化炭素量調整弁(第1二酸化炭素量調整弁、第2二酸化炭素量調整弁)
83(83A、83B)…酸素開閉弁(第1酸素開閉弁、第2酸素開閉弁)
84(84A、84B)…切換弁(第1切換弁、第2切換弁)
85(85A、85B)…酸素路切換弁(第1酸素路切換弁、第2酸素路切換弁)
86(86A、86B)…混合路切換弁(第1混合路切換弁、第2混合路切換弁)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8