(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082693
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】盛土形状特定システム及び法面補間方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/026 20060101AFI20240613BHJP
G01C 7/04 20060101ALI20240613BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20240613BHJP
E02D 17/18 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
E02D3/026
G01C7/04
G01C15/00 104C
E02D17/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196716
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】黒田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】吉野 修
(72)【発明者】
【氏名】本木 章平
(72)【発明者】
【氏名】宮田 岩往
(72)【発明者】
【氏名】高尾 篤志
【テーマコード(参考)】
2D043
2D044
【Fターム(参考)】
2D043CB01
2D043EB06
2D044CA00
(57)【要約】
【課題】締固め機械が走行できない法面部の形状を簡易かつ高精度に補間する。
【解決手段】盛土形状特定システム1に、盛土構造物の締固めを行う締固め機械の施工履歴データから任意の施工日における施工面形状Aを取得する第一取得手段と、第一取得手段が取得した施工面形状Aと当該任意の施工日前日までの盛土形状Bに基づいて当該任意の施工日までの盛土形状Cを取得する第二取得手段と、第二取得手段が取得した盛土形状Cに基づいて走行エリアと非走行エリアの境界である法面不足部Dを抽出する抽出手段と、予め設定された非走行エリアの幅W及び標準法面勾配(法面傾斜角度θ)と抽出手段が抽出した法面不足部Dの高さHに基づいて直角台形をなす補間法面形状Eを設定する設定手段と、抽出手段が抽出した法面不足部Dに対し設定手段が設定した補間法面形状Eを用いて補間を行って当該任意の施工日における盛土形状Fを取得する補間手段と、を設ける。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
盛土構造物の締固めを行う締固め機械の施工履歴データに含まれる位置座標から、任意の施工日における施工面のうち前記締固め機械が走行した走行エリアの形状を、当該任意の施工日における施工面形状として取得する第一取得手段と、
前記第一取得手段によって取得された施工面形状と、前記任意の施工日前日までの盛土形状と、に基づいて前記任意の施工日までの盛土形状を取得する第二取得手段と、
前記第二取得手段によって取得された盛土形状に基づいて、前記走行エリアと、前記任意の施工日における施工面のうち前記締固め機械が走行しない非走行エリアと、の境界である法面不足部を抽出する抽出手段と、
予め設定されている前記非走行エリアの幅と、予め設定されている標準法面勾配と、前記抽出手段によって抽出された法面不足部の高さと、に基づいて直角台形をなす補間法面形状を設定する設定手段と、
前記抽出手段によって抽出された法面不足部に対し、前記設定手段によって設定された補間法面形状を用いて補間を行って、前記任意の施工日における盛土形状を取得する補間手段と、を備えることを特徴とする盛土形状特定システム。
【請求項2】
前記第二取得手段は、前記任意の施工日までの盛土形状を表すメッシュデータを作成し、
前記補間手段は、前記抽出手段によって抽出された法面不足部と、前記設定手段によって設定された補間法面形状と、に基づいて前記第二取得手段によって作成されたメッシュデータを補正することを特徴とする請求項1に記載の盛土形状特定システム。
【請求項3】
前記抽出手段は、前記第二取得手段によって作成されたメッシュデータに基づいて、隣接メッシュとの標高差が予め設定されている閾値以上となる個所を前記法面不足部として抽出することを特徴とする請求項2に記載の盛土形状特定システム。
【請求項4】
前記非走行エリアの幅及び前記標準法面勾配は、施工現場毎に予め設定されていることを特徴とする請求項1に記載の盛土形状特定システム。
【請求項5】
盛土構造物の締固めを行う締固め機械の施工履歴データに含まれる位置座標から、任意の施工日における施工面のうち前記締固め機械が走行した走行エリアの形状を、当該任意の施工日における施工面形状として取得する第一取得工程と、
前記第一取得工程で取得した施工面形状と、前記任意の施工日前日までの盛土形状と、に基づいて前記任意の施工日までの盛土形状を取得する第二取得工程と、
前記第二取得工程で取得した盛土形状に基づいて、前記走行エリアと、前記任意の施工日における施工面のうち前記締固め機械が走行しない非走行エリアと、の境界である法面不足部を抽出する抽出工程と、
予め設定されている前記非走行エリアの幅と、予め設定されている標準法面勾配と、前記抽出工程で抽出した法面不足部の高さと、に基づいて直角台形をなす補間法面形状を設定する設定工程と、
前記抽出工程で抽出した法面不足部に対し、前記設定工程で設定した補間法面形状を用いて補間を行って、前記任意の施工日における盛土形状を取得する補間工程と、を有することを特徴とする法面補間方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面部の形状を補間可能な盛土形状特定システム、及び法面部の形状を補間するための法面補間方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動追尾トータルステーション(以下「TS」という)又は衛星測位システム(以下「GNSS」という)を用いた盛土の締固め管理システムを搭載した締固め機械(振動ローラ等)は、転圧施工時にオペレータへの操作支援を行うため、施工中に3次元座標をリアルタイムで取得している。この3次元座標は車載パソコンに保存され、施工履歴データと呼ばれている。締固め機械の施工履歴データ、すなわち走行した領域の形状は、その施工日における盛土形状(出来形部分の形状)を表すことから、これを利活用することで、施工日毎に出来高を管理することが可能となる。
締固め機械は、盛土構造物の外縁部付近を走行すると、外縁部が締固め機械の荷重に耐えきれず崩壊する危険があることから、外縁部付近を走行することができない。そのため、締固め機械の施工履歴データを利用して出来形を取得する際には、法面部の形状が欠損する事例が発生する。
【0003】
特許文献1には、締固車両(締固め機械)により締固めが行われた盛土構築物の上面の外縁付近を含む全領域の出来形を特定するシステムが開示されている。具体的には、特許文献1に開示のシステムは、締固車両の地球上の位置を示す座標を測定する位置測定手段と、盛土構築物の上面のうち締固車両が走行した領域の形状を、位置測定手段が測定した複数の座標を近似する所定の特性の面で特定し、当該特定した面を盛土構築物の設計出来形まで拡張して、盛土構築物の現状の上面のうち締固車両が非走行の領域の形状を特定する形状特定手段と、を備えている。すなわち、引用文献1では、設計形状から法面部の形状を補間している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば大規模造成工事の場合は、1層を複数日に亘って施工したり、特定のエリアを先行して盛土したりすることがあり、そのような場合に設計形状から法面部の形状を補間すると、
図7に示すように、実際の盛土形状(
図7(a))と、設計形状を使用して補間した場合の盛土形状(
図7(b))と、に大幅な差異が生じてしまう。日々の出来高を把握するためには、日々の施工範囲に対応した法面を設定して補間する必要がある。
また、設計形状から法面部の形状を補間する場合、施工層毎に施工範囲を設定する必要が生じ、事前準備の手間が大きい、設計形状が変更となった場合の対応が困難となる等の課題がある。
そこで、本発明の目的は、締固め機械が走行できない法面部の形状を簡易かつ高精度に補間することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するための、請求項1に記載の発明は、盛土形状特定システムであって、
盛土構造物の締固めを行う締固め機械の施工履歴データに含まれる位置座標から、任意の施工日における施工面のうち前記締固め機械が走行した走行エリアの形状を、当該任意の施工日における施工面形状として取得する第一取得手段と、
前記第一取得手段によって取得された施工面形状と、前記任意の施工日前日までの盛土形状と、に基づいて前記任意の施工日までの盛土形状を取得する第二取得手段と、
前記第二取得手段によって取得された盛土形状に基づいて、前記走行エリアと、前記任意の施工日における施工面のうち前記締固め機械が走行しない非走行エリアと、の境界である法面不足部を抽出する抽出手段と、
予め設定されている前記非走行エリアの幅と、予め設定されている標準法面勾配と、前記抽出手段によって抽出された法面不足部の高さと、に基づいて直角台形をなす補間法面形状を設定する設定手段と、
前記抽出手段によって抽出された法面不足部に対し、前記設定手段によって設定された補間法面形状を用いて補間を行って、前記任意の施工日における盛土形状を取得する補間手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の盛土形状特定システムにおいて、
前記第二取得手段は、前記任意の施工日までの盛土形状を表すメッシュデータを作成し、
前記補間手段は、前記抽出手段によって抽出された法面不足部と、前記設定手段によって設定された補間法面形状と、に基づいて前記第二取得手段によって作成されたメッシュデータを補正することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の盛土形状特定システムにおいて、
前記抽出手段は、前記第二取得手段によって作成されたメッシュデータに基づいて、隣接メッシュとの標高差が予め設定されている閾値以上となる個所を前記法面不足部として抽出することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の盛土形状特定システムにおいて、
前記非走行エリアの幅及び前記標準法面勾配は、施工現場毎に予め設定されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、法面補間方法であって、
盛土構造物の締固めを行う締固め機械の施工履歴データに含まれる位置座標から、任意の施工日における施工面のうち前記締固め機械が走行した走行エリアの形状を、当該任意の施工日における施工面形状として取得する第一取得工程と、
前記第一取得工程で取得した施工面形状と、前記任意の施工日前日までの盛土形状と、に基づいて前記任意の施工日までの盛土形状を取得する第二取得工程と、
前記第二取得工程で取得した盛土形状に基づいて、前記走行エリアと、前記任意の施工日における施工面のうち前記締固め機械が走行しない非走行エリアと、の境界である法面不足部を抽出する抽出工程と、
予め設定されている前記非走行エリアの幅と、予め設定されている標準法面勾配と、前記抽出工程で抽出した法面不足部の高さと、に基づいて直角台形をなす補間法面形状を設定する設定工程と、
前記抽出工程で抽出した法面不足部に対し、前記設定工程で設定した補間法面形状を用いて補間を行って、前記任意の施工日における盛土形状を取得する補間工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、締固め機械が走行できない法面部の形状を簡易かつ高精度に補間することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】盛土形状特定システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】法面補間方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。ただし、本発明の範囲は、以下に開示された実施形態に限定されない。図面は例示のみのために提供されるため、本発明の範囲は図面の例示に限定されない。
【0014】
<盛土形状特定システム>
図1は、盛土形状特定システム1の構成の一例を示すブロック図である。盛土形状特定システム1は、基準局2(座標既知点)と、移動局3(締固め機械)と、管理局4(現場事務所等)と、を備えて構成される。
盛土形状特定システム1は、GNSSを用いた盛土の締固め管理システム(以下「GNSS締固め管理システム」という)で得られる施工履歴データを利用して、盛土(法面部を含む全体)の形状を特定する。具体的には、盛土形状特定システム1は、道路や造成の盛土工事現場を移動して転圧する締固め機械(振動ローラ等)の移動軌跡から盛土の出来高を取得するにあたり、締固め機械が走行できない法面部のデータを補間して、出来高の精度を向上させる法面部データ補間機能を有している。
【0015】
盛土の締固め管理システムは、締固め判定・表示機能、施工範囲の分割機能、締固め幅設定機能、オフセット機能、システムの起動とデータ取得機能、及び座標取得データの選択機能を有している。盛土の締固め管理システムが有するこれらの機能は、「TS・GNSSを用いた盛土の締固め管理要領(国土交通省)」に記載されているように従来公知の機能であるので、その説明を省略する。
【0016】
GNSS締固め管理システムは、座標既知点(基準局2)に設置したGNSS機器21から位置補正情報を無線等によって締固め機械(移動局3)に伝達し、移動局3側のGNSS機器31で基準局2からの補正情報を用いて移動局3の位置座標を求め、位置座標データを無線等によって車載パソコン33に伝達し、このデータを用いて車載パソコン33のモニタに各種分布図(締固め回数分布図等)を表示することが可能である。
【0017】
図1に示すように、基準局2には、GNSS機器21(アンテナ、受信機、三脚等)と、移動局3へのデータ送信用の通信機22と、図示しない電源装置等が設置されている。
また、移動局3には、GNSS機器31(アンテナ、受信機等)と、基準局2からのデータ受信用の通信機32と、車載パソコン33等が設置されている。車載パソコン33には、GNSS締固め管理システム用のデータ演算処理プログラムがインストールされている。すなわち、移動局3は、GNSS締固め管理システムを搭載した締固め機械(ICT締固め機械)である。
また、管理局4には、管理用パソコン41と、図示しないプリンタ等が設置されている。管理用パソコン41には、GNSS締固め管理システム用のデータ演算処理プログラムがインストールされている。
【0018】
本実施形態では、締固め機械として振動ローラを用いるが、これに限定されず、締固め作業に使用する締固め機械(移動局3)は、ブルドーザ、タイヤローラ、振動ローラ及びそれらに準ずる機械(ロードローラ、タンピングローラ等)であればよい。
なお、ネットワーク型RTK-GNSSを用いる場合には、携帯電話のサービスエリア内であれば現場に基準局2を設置しなくてもよい。
【0019】
GNSS締固め管理システムは、締固め機械の3次元座標の移動軌跡を取得している。この締固め機械の3次元座標を用いて、盛土形状を取得することにより、出来高を取得することが可能になる。
【0020】
オペレータは、毎回の締固め終了後に、車載パソコン33に記録された計測データ(ログファイル)を電子媒体(USBメモリ等)に保存し、管理局4においてログファイルに記録された3次元座標から盛土形状を特定する。すなわち、管理用パソコン41が、盛土形状の特定機能を有している。
ログファイルとは、締固め回数管理で得られる電子情報であり、締固め機械の作業中の時刻とその時の位置座標(3次元座標)を記録したものである。すなわち、締固め機械(移動局3)の車載パソコン33のログファイルには、施工中における締固め機械作業位置の3次元座標、取得時刻、その他機械の状態等の情報(施工履歴データ)が記録されている。
【0021】
締固め機械は、盛土構造物の上面(施工面)のうち外縁部付近を走行すると、外縁部が締固め機械の荷重に耐えきれず崩壊する危険があることから、外縁部付近を走行することができない。したがって、GNSS締固め管理システムでは、締固め機械が走行した走行エリアの盛土形状を取得できるが、締固め機械が走行しない非走行エリア(施工面の外縁部付近)や法面エリアの盛土形状を取得できない。これに対し、法面部データ補間機能では、締固め機械が走行した走行エリアの盛土形状(例えば当日の施工層厚)だけでなく、締固め機械が走行しない非走行エリアや法面エリアの盛土形状も取得できる。
法面部データ補間機能は、盛土形状特定システム1のうち、例えば管理用パソコン41が有している。すなわち、管理用パソコン41には、法面部データ補間機能を実現させるためのプログラムがインストールされている。なお、管理局4に、複数の管理用パソコン41を設置して、GNSS締固め管理システム用のデータ演算処理プログラムをインストールする管理用パソコン41と、法面部データ補間機能を実現させるためのプログラムをインストールする管理用パソコン41と、を分けてもよい。
【0022】
オペレータは、例えば一日の締固め作業終了後に、法面部データ補間機能を起動する。これにより、法面部データ補間機能は、現況の施工履歴データに基づき作成した盛土形状から、標高に段差が生じている個所(法面不足部)を抽出し、標準勾配の法面形状を補間して、出来高算出を行う。
具体的には、法面部データ補間機能は、
図2に示す手順で法面形状の補間を実施する。
【0023】
<法面補間方法>
図2は、法面補間方法の一例を示すフローチャートである。
図3~
図6は、法面補間方法の一例を説明する図である。
法面部データ補間機能は、まず、任意の施工日に取得された振動ローラの施工履歴データの三次元座標を用いて、当該任意の施工日における施工面形状Aを取得する(ステップS1)。
次いで、法面部データ補間機能は、
図3(a)に示すように、当該任意の施工日前日までの盛土形状Bに、ステップS1で取得した当該任意の施工日における施工面形状Aを追加して、
図3(b)に示すように、当該任意の施工日までの盛土形状Cを取得する(ステップS2)。
次いで、法面部データ補間機能は、当該任意の施工日における施工面形状Aと、当該任意の施工日前日までの盛土形状Bを比較して、
図3(b)に示すように、比高差が大きくなる個所を法面不足部Dとして抽出する(ステップS3)。
【0024】
次いで、法面部データ補間機能は、法肩の振動ローラが走行しない範囲(非走行エリア)と、標準法面勾配と、法面不足部Dと、に基づいて補間法面形状Eを設定する(ステップS4)。
図5に示すように、補間法面形状Eの縦断面は、直角台形状をなしている。非走行エリアの幅Wは、現場毎に予め設定されている。また、標準法面勾配1:n(すなわち法面傾斜角度θ)も、現場毎に予め設定されている。また、高さHは、法面不足部Dにおける比高差(施工面形状Aと盛土形状Bの標高差)である。したがって、幅Wと角度θと高さHが既知数であるので、これらの値を用いて、補間法面形状Eを設定することができる。
【0025】
次いで、法面部データ補間機能は、
図4(a)に示すように、当該任意の施工日までの盛土形状CのうちステップS3で抽出した法面不足部Dに、ステップS4で設定した補間法面形状Eを追加する。すなわち、法面不足部Dに対し補間を行って、当該任意の施工日における出来形部分の形状(盛土形状F)を取得する(ステップS5)。当該任意の施工日における出来形部分の形状(盛土形状F)とは、
図4(b)に示すように、当該任意の施工日までの出来形部分の形状(盛土形状C+補間法面形状E)から、当該任意の施工日前日までの出来形部分の形状(盛土形状B)を除いたものである。
次いで、法面部データ補間機能は、ステップS5で取得した当該任意の施工日における出来形部分の形状(盛土形状F)に基づいて、当該任意の施工日における出来高数量(土量)を算定する(ステップS6)。
これにより、法面の形状を補間し現地の盛土形状をより実態に近い形状で再現することができ、出来高算出の精度を向上することが可能となる。
【0026】
本実施形態の法面部データ補間機能は、ステップS1,S2において、例えば、振動ローラの施工履歴データを標準的なメッシュデータ形式に変換し、起工測量、任意の施工日までの全ての施工履歴メッシュデータに基づいて、
図6(a)に示すように、任意の施工日(ここでは「当日」という)における地表面形状を表すメッシュデータ(メッシュ形式の3Dデータ)を作成する。このように、施工履歴データを標準的なメッシュデータ形式に変換することで、データの扱いを容易にすることが可能となる。
【0027】
図6(a)の上図は、地表面形状を表すメッシュデータに基づき作成した平面図(以下「標高分布図」という)の一部を示す図である。
図6(a)の下図は、地表面形状を表すメッシュデータに基づき作成した断面図の一部を示す図であって、標高分布図における各区画(例えば一辺が0.5mの矩形領域)のうちG-G線(一点鎖線)が横切る区画の標高を矩形の高さで表した図である。すなわち、本実施形態の法面部データ補間機能は、現況の施工履歴データに基づいて盛土の3次元形状を作成することができる。
【0028】
また、本実施形態の法面部データ補間機能は、ステップS3において、例えば
図6(b)に示すように、隣接メッシュ(隣接する区画)との標高差が、予め定められた閾値以上である個所を法面部が欠損する個所(法面不足部D)として抽出する。すなわち、本実施形態の法面部データ補間機能は、現況の施工履歴データに基づき作成した盛土の3次元形状から、標高差が所定の閾値以上である個所(法面不足部D)を抽出することができる。
【0029】
また、本実施形態の法面部データ補間機能は、ステップS4,S5において、例えば
図6(b)に示すように、法面欠損個所(法面不足部D)に対し、標準勾配の法面(補間法面形状E)を貼り付けて、例えば
図6(c)に示すように、当該貼り付けた補間法面形状Eに基づき該当する区画の標高データを調整(更新)する。そして、補間法面形状Eに基づき調整された標高データを含む施工履歴データを、当日の施工履歴データとして記憶する。これにより、盛土の3次元形状を詳細に把握することが可能となり、日々の出来高を高精度で得ることができる。
【0030】
管理用パソコン41に記憶される当日の施工履歴データ(補間法面形状Eに基づき調整された標高データを含む施工履歴データ)は、続くステップS6(出来高数量の算定)で用いられたり、翌日以降においてメッシュデータの作成で用いられたりする。
図6(c)の下図において網掛けを付した矩形は、高さ寸法(標高データ)が調整された矩形である。この網掛けを付した矩形は、当該矩形の上辺における所定点(例えば中心点)が、補間法面形状Eの斜辺と交差するように高さ寸法が変更されている。また、
図6(c)の上図において太線で囲んだ領域は、補間領域(すなわち補間法面形状Eに基づいて標高データが調整された領域)である。
【0031】
また、本実施形態の法面部データ補間機能は、ステップS6において、例えば、当日の施工履歴データに基づいて標高分布図における各区画の施工層厚を算出し、算出した施工層厚に基づいて区画ごと(単位面積ごと)の体積を算出し、算出した体積の合計に基づいて当日における出来高数量(土量)を算定する。
区画の施工層厚とは、当日における締固め作業終了後の層厚、すなわち、当日における当該区画の最終標高と、前日における当該区画の最終標高の差分である。
【0032】
このように、本実施形態の法面部データ補間機能は、施工履歴データから法面部を判定し、不足する法面形状を補間することができる。具体的には、本実施形態の法面部データ補間機能は、日々得られる施工履歴データを集計し、隣接部との標高差が大きくなる個所を抽出して、不足個所に標準勾配の法面形状を貼り付けることで法面土量を補間する。これにより、簡易に法面形状を取得し、施工日毎の出来高算出の精度を向上することが可能となる。
【0033】
なお、車載パソコン33のログファイルに記録された施工履歴データにはデータの不足や標高の異常が生じている場合があるので、事前に(例えば、ステップS1を行う前に)、異常値・不足値を補正することで法面抽出の精度を向上させることが可能となる。
ステップS1からS6までの処理は、アプリケーションによって一連で自動的に行われる。これにより、日々の出来高を簡易かつ高い精度で取得することが可能となる。
また、盛土形状特定システム1は、GNSS締固め管理システムで得られる施工履歴データを利用して盛土(法面部を含む全体)の形状を特定するシステムに限られるものではなく、例えば、TSを用いた盛土の締固め管理システムで得られる施工履歴データを利用して盛土(法面部を含む全体)の形状を特定するシステムであってもよい。
【0034】
<効果>
本実施形態によれば、以下のような優れた効果を奏する。
本実施形態の盛土形状特定システム1は、盛土構造物の締固めを行う締固め機械(振動ローラ等の移動局3)の施工履歴データに含まれる位置座標(3次元座標)から、任意の施工日における施工面のうち締固め機械が走行した走行エリアの形状を、当該任意の施工日における施工面形状Aとして取得する第一取得手段(管理用パソコン41)と、第一取得手段によって取得された施工面形状Aと、当該任意の施工日前日までの盛土形状Bと、に基づいて当該任意の施工日までの盛土形状Cを取得する第二取得手段(管理用パソコン41)と、第二取得手段によって取得された盛土形状Cに基づいて、当該任意の施工日における施工面のうち締固め機械が走行した走行エリアと、当該任意の施工日における施工面のうち締固め機械が走行しない非走行エリアと、の境界である法面不足部Dを抽出する抽出手段(管理用パソコン41)と、予め設定されている非走行エリアの幅Wと、予め設定されている標準法面勾配(法面傾斜角度θ)と、抽出手段によって抽出された法面不足部Dの高さHと、に基づいて直角台形をなす補間法面形状Eを設定する設定手段(管理用パソコン41)と、抽出手段によって抽出された法面不足部Dに対し、設定手段によって設定された補間法面形状Eを用いて補間を行って、当該任意の施工日における盛土形状Fを取得する補間手段(管理用パソコン41)と、を備えている。
【0035】
したがって、本実施形態の盛土形状特定システム1によれば、任意の施工日における施工面のうち締固め機械が走行しない非走行エリアの幅Wと、標準法面勾配(法面傾斜角度θ)と、法面不足部Dの高さHと、に基づき設定した直角台形をなす補間法面形状Eを用いて補間を行う。すなわち、日々の施工範囲に対応した法面を設定して補間を行うので、締固め機械が走行できない法面の形状を高精度に補間することができ、ひいては日々の出来高を高い精度で得ることが可能である。
また、現況の施工履歴データ(任意の施工日までの施工履歴データ)に基づいて法面不足部Dを抽出し、予め設定されている非走行エリアの幅W及び標準法面勾配(法面傾斜角度θ)と、抽出した法面不足部Dの高さHと、に基づいて補間法面形状Eを設定するだけの簡単な処理で補間を行うことができる。すなわち、車載パソコン33のログファイルに当日記録された施工履歴データだけを用意(入力)すれば、補間を行うことができるので、締固め機械が走行できない法面の形状を簡易に補間することができ、ひいては日々の出来高を容易に得ることが可能である。
【0036】
また、本実施形態において、第二取得手段は、当該任意の施工日までの盛土形状Cを表すメッシュデータ(
図6(a))を作成し、補間手段は、抽出手段によって抽出された法面不足部Dと、設定手段によって設定された補間法面形状Eと、に基づいて第二取得手段によって作成されたメッシュデータを補正する(
図6(c))。
したがって、締固め機械の施工履歴データをメッシュデータ形式に変換して補間を行うので、データの扱い(法面不足部Dの抽出、補間法面形状Eの設定、補間等)が容易となる。
【0037】
また、本実施形態において、抽出手段は、第二取得手段によって取得されたメッシュデータに基づいて、隣接メッシュ(隣接区画)との標高差が予め設定されている閾値以上となる個所を法面不足部Dとして抽出する。
したがって、一のメッシュ(区画)の標高データと、当該一のメッシュに隣接するメッシュ(区画)の標高データと、を比較するだけで法面不足部Dを抽出できる。すなわち、締固め機械の施工履歴データをメッシュデータ形式に変換することで、法面不足部Dの抽出が容易となる。
なお、閾値は、施工現場等に応じて適宜選択可能である。
【0038】
また、本実施形態において、非走行エリアの幅W及び標準法面勾配(法面傾斜角度θ)は、施工現場毎に予め設定されている。
したがって、各施工現場に適した補間法面形状Eを設定できるので、締固め機械が走行できない法面の形状をより高精度に補間することが可能である。
【0039】
また、本実施形態の法面補間方法は、盛土構造物の締固めを行う締固め機械(振動ローラ等の移動局3)の施工履歴データに含まれる位置座標(3次元座標)から、任意の施工日における施工面のうち締固め機械が走行した走行エリアの形状を、当該任意の施工日における施工面形状Aとして取得する第一取得工程(ステップS1)と、第一取得工程で取得した施工面形状Aと、当該任意の施工日前日までの盛土形状Bと、に基づいて当該任意の施工日までの盛土形状Cを取得する第二取得工程(ステップS2)と、第二取得工程で取得した盛土形状Cに基づいて、当該任意の施工日における施工面のうち締固め機械が走行した走行エリアと、当該任意の施工日における施工面のうち締固め機械が走行しない非走行エリアと、の境界である法面不足部Dを抽出する抽出工程(ステップS3)と、予め設定されている非走行エリアの幅Wと、予め設定されている標準法面勾配(法面傾斜角度θ)と、抽出工程で抽出した法面不足部Dの高さHと、に基づいて直角台形をなす補間法面形状Eを設定する設定工程(ステップS4)と、抽出工程で抽出した法面不足部Dに対し、設定工程で設定した補間法面形状Eを用いて補間を行って、当該任意の施工日における盛土形状Fを取得する補間工程(ステップS5)と、を有している。
【0040】
したがって、本実施形態の法面補間方法によれば、任意の施工日における施工面のうち締固め機械が走行しない非走行エリアの幅Wと、標準法面勾配(法面傾斜角度θ)と、法面不足部Dの高さHと、に基づき設定した直角台形をなす補間法面形状Eを用いて補間を行う。すなわち、日々の施工範囲に対応した法面を設定して補間を行うので、締固め機械が走行できない法面の形状を高精度に補間することができ、ひいては日々の出来高を高い精度で得ることが可能である。
また、現況の施工履歴データ(任意の施工日までの施工履歴データ)に基づいて法面不足部Dを抽出し、予め設定されている非走行エリアの幅W及び標準法面勾配(法面傾斜角度θ)と、抽出した法面不足部Dの高さHと、に基づいて補間法面形状Eを設定するだけの簡単な処理で補間を行うことができる。すなわち、車載パソコン33のログファイルに当日記録された施工履歴データだけを用意(入力)すれば、補間を行うことができるので、締固め機械が走行できない法面の形状を簡易に補間することができ、ひいては日々の出来高を容易に得ることが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 盛土形状特定システム
3 移動局(締固め機械)
41 管理用パソコン(第一取得手段、第二取得手段、抽出手段、設定手段、算定手段)
A 任意の施工日における施工面形状
B 任意の施工日前日までの盛土形状
C 任意の施工日までの盛土形状
D 法面不足部
E 補間法面形状
F 任意の施工日における盛土形状
H 高さ
W 幅