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特開2024-82696ショベル、操作支援方法及び操作支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082696
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】ショベル、操作支援方法及び操作支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20240613BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
E02F9/22 E
E02F9/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196719
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】本田 圭二
(72)【発明者】
【氏名】平手 奨二
(72)【発明者】
【氏名】佐野 裕介
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 将
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB03
2D003BA01
2D003BA03
2D003BA04
2D003BA06
2D003CA02
2D003CA10
2D003DA04
2D003DB03
2D003DB04
2D003DB05
2D003FA02
(57)【要約】
【課題】マシンコントロール機能の実行時における車体BDの浮き上がりを好適に抑制する。
【解決手段】ショベル100は、アタッチメントATを有する車体BDと、コントローラ30とを備える。コントローラ30は、アタッチメントATの動作を制御するマシンコントロール機能、及び、車体BDの浮き上がりを抑制するジャッキアップ防止機能を実行可能であり、マシンコントロール機能の実行中に車体BDの浮き上がりのおそれがある場合、ジャッキアップ防止機能を実行する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アタッチメントを有する車体と、
前記アタッチメントの動作を制御するマシンコントロール機能、及び、前記車体の浮き上がりを抑制するジャッキアップ防止機能、を実行可能な制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記マシンコントロール機能の実行中に前記車体の浮き上がりのおそれがある場合、前記ジャッキアップ防止機能を実行する、
ショベル。
【請求項2】
前記アタッチメントは、ブーム、アーム及びバケットを含み、
前記制御部は、前記マシンコントロール機能による前記ブームの動作指令と、前記ジャッキアップ防止機能による前記ブームの動作指令とのうち、ブーム上げ指令値がより大きい方を指令出力とする、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記アタッチメントは、ブーム、アーム及びバケットを含み、
前記制御部は、オペレータによる前記ブームの操作が入力された場合、前記マシンコントロール機能による前記ブームの動作指令と、前記ジャッキアップ防止機能による前記ブームの動作指令と、オペレータの操作による前記ブームの動作指令とのうち、ブーム上げ指令値が最も大きいものを指令出力とする、
請求項1に記載のショベル。
【請求項4】
前記制御部は、オペレータによる前記ブームの操作入力がフルレバー操作である場合、当該オペレータの操作による前記ブームの動作指令を指令出力とする、
請求項3に記載のショベル。
【請求項5】
前記ブームの動作指令は、前記ブームの速度に関する指令値である、
請求項2に記載のショベル。
【請求項6】
アタッチメントを有する車体と、
前記アタッチメントの動作を制御するマシンコントロール機能、及び、前記車体の浮き上がりを抑制するジャッキアップ防止機能、を実行可能な制御部と、
を備えるショベルの操作支援方法であって、
前記制御部が、前記マシンコントロール機能の実行中に前記車体の浮き上がりのおそれがある場合、前記ジャッキアップ防止機能を実行する、
操作支援方法。
【請求項7】
アタッチメントを有する車体と、
前記アタッチメントの動作を制御するマシンコントロール機能、及び、前記車体の浮き上がりを抑制するジャッキアップ防止機能、を実行可能な制御部と、
を備えるショベルの操作支援プログラムであって、
前記制御部に、前記マシンコントロール機能の実行中に前記車体の浮き上がりのおそれがある場合、前記ジャッキアップ防止機能を実行させる、
操作支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベル、操作支援方法及び操作支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ショベルにおいて、アタッチメントの操作に応じて、バケットの作業部位が所定の施工動作を行うようにアタッチメント全体を制御する機能(以下、「マシンコントロール機能」)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
マシンコントロール機能は、バケットの作業部位が所定の目標施工面に沿うようにアタッチメントを制御するものであり、例えば地面の硬さ等は考慮されていない。そのため、マシンコントロール機能の実行中において、例えばバケットが硬い地面に当たる等して掘削反力が大きくなった場合、車体の浮き上がりが発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4455465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、マシンコントロール機能の実行時における車体の浮き上がりを好適に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るショベルは、
アタッチメントを有する車体と、
前記アタッチメントの動作を制御するマシンコントロール機能、及び、前記車体の浮き上がりを抑制するジャッキアップ防止機能、を実行可能な制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記マシンコントロール機能の実行中に前記車体の浮き上がりのおそれがある場合、前記ジャッキアップ防止機能を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、マシンコントロール機能の実行時における車体の浮き上がりを好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るショベルの側面図である。
図2】本実施形態に係るショベルを含むショベル管理システムの概略構成を示すブロック図である。
図3】MC機能によるショベルの動作例を示す図であって、(a)がアーム閉じ操作が行われる場合の図、(b)がアーム開き操作が行われる場合の図である。
図4】本実施形態に係る操作支援処理の流れを示すフローチャートである。
図5】本実施形態に係る操作支援処理におけるバケット位置とブーム動作指令の変化例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
[ショベルの構成]
図1は、本実施形態に係るショベル100の側面図である。
この図に示すように、ショベル100は、下部走行体1と、旋回機構2を介して旋回自在に下部走行体1に搭載される上部旋回体3と、各種作業を行うためのアタッチメントATと、キャビン10とを備える。
以下では、下部走行体1、旋回機構2、上部旋回体3及びアタッチメントATを、ショベル100の車体BDと呼ぶ場合がある。
【0011】
下部走行体1は、例えば、左右一対のクローラ1Cを含み、各クローラ1Cが走行油圧モータ1L、1R(図2参照)で油圧駆動されることにより、ショベル100を走行させる。
上部旋回体3は、旋回機構2が旋回油圧モータ21(図2参照)で油圧駆動されることにより、下部走行体1に対して旋回する。
【0012】
アタッチメントATは、ブーム4、アーム5及びバケット6を含む。
ブーム4は、上部旋回体3の前部中央に俯仰可能に取り付けられ、ブーム4の先端には、アーム5が上下回動可能に取り付けられ、アーム5の先端には、バケット6が上下回動可能に取り付けられる。
ブーム4、アーム5及びバケット6は、それぞれ、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9により油圧駆動される。
【0013】
バケット6は、エンドアタッチメントの一例である。バケット6は、例えば掘削作業等に用いられる。また、アーム5の先端には、作業内容等に応じて、バケット6の代わりに他のエンドアタッチメントが取り付けられてもよい。他のエンドアタッチメントは、例えば、大型バケット、法面用バケット、浚渫用バケット等の他の種類のバケットであってよい。また、他のエンドアタッチメントは、攪拌機、ブレーカ、グラップル等のバケット以外の種類のエンドアタッチメントであってもよい。
【0014】
キャビン10は、オペレータが搭乗する操縦室であり、例えば上部旋回体3の前部左側に搭載される。ショベル100は、キャビン10に搭乗するオペレータの操作に応じて、アクチュエータを動作させ、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5及びバケット6等の被駆動要素を駆動する。
【0015】
なお、ショベル100は、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5及びバケット6等の被駆動要素の少なくとも一部が電気駆動される構成であってもよい。すなわち、ショベル100は、被駆動要素の一部が電動アクチュエータで駆動される、ハイブリッドショベルや電動ショベル等であってもよい。
【0016】
また、ショベル100は、キャビン10のオペレータにより操作可能に構成されるのに代えて(又はこれに加えて)、ショベル100の外部(例えば後述の管理装置200又は端末装置300)から遠隔操作(リモート操作)が可能に構成されてもよい。ショベル100が遠隔操作される場合、キャビン10の内部は、無人状態であってもよい。
以下、オペレータの操作には、キャビン10のオペレータによる操作装置26に対する操作、及び外部のオペレータによる遠隔操作の少なくとも一方が含まれるものとする。
【0017】
また、ショベル100は、オペレータの操作の内容に依らず、自動でアクチュエータを動作させてもよい。これにより、ショベル100は、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5及びバケット6等の被駆動要素の少なくとも一部を自動で動作させる機能、すなわち「自動運転機能」を実現する。
【0018】
自動運転機能には、アタッチメントATを動作制御する「マシンコントロール(MC:Machine Control)機能」と、車体BDの浮き上がりを防止する「ジャッキアップ(JU:Jack-Up)防止機能」とが含まれる。MC機能とJU防止機能の内容については後述する。
また、自動運転機能には、オペレータの操作装置26に対する操作や遠隔操作に応じて、操作対象の被駆動要素(アクチュエータ)以外の被駆動要素を自動で動作させる機能、すなわち「半自動運転機能」が含まれてよい。また、自動運転機能には、オペレータの操作装置26に対する操作や遠隔操作がない前提で、複数の被駆動要素の少なくとも一部を自動で動作させる機能、すなわち「完全自動運転機能」が含まれてもよい。ショベル100において、完全自動運転機能が有効な場合、キャビン10の内部は無人状態であってよい。また、半自動運転機能や完全自動運転機能等には、自動運転の対象の被駆動要素の動作内容が予め規定されるルールに従って自動的に決定される態様が含まれてよい。また、半自動運転機能や完全自動運転機能等には、ショベル100が自律的に各種の判断を行い、その判断結果に沿って、自律的に自動運転の対象の被駆動要素(アクチュエータ)の動作内容が決定される態様(いわゆる「自律運転機能」)が含まれてもよい。
【0019】
図2は、ショベル100を含むショベル管理システム400の概略構成を示すブロック図である。図2において、機械的動力ライン、作動油ライン、パイロットライン、電気信号(又は通信)ラインは、それぞれ、二重線、実線、破線、点線で示されている。
【0020】
<<油圧駆動系>>
図2に示すように、ショベル100の油圧駆動系は、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6のそれぞれを油圧駆動する油圧アクチュエータを含む。油圧アクチュエータには、上述の如く、走行油圧モータ1L,1R、旋回油圧モータ21、ブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9等が含まれる。また、ショベル100の油圧駆動系は、エンジン11と、レギュレータ13と、メインポンプ14と、コントロールバルブ17とを含む。
【0021】
エンジン11は、油圧駆動系におけるメイン動力源であり、例えば、上部旋回体3の後部に搭載される。具体的には、エンジン11は、後述するコントローラ30による直接或いは間接的な制御下で、予め設定される目標回転数で一定回転し、メインポンプ14及びパイロットポンプ15を駆動する。エンジン11は、例えば、軽油を燃料とするディーゼルエンジンである。
【0022】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御する。例えば、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じて、メインポンプ14の斜板の角度(傾転角)を調節する。
【0023】
メインポンプ14は、例えば、エンジン11と同様、上部旋回体3の後部に搭載され、高圧油圧ラインを通じてコントロールバルブ17に作動油を供給する。メインポンプ14は、上述の如く、エンジン11により駆動される。メインポンプ14は、例えば、可変容量式油圧ポンプであり、コントローラ30の制御下で、レギュレータ13により斜板の傾転角が調節されることでピストンのストローク長が調整され、吐出流量(吐出圧)が制御される。
【0024】
コントロールバルブ17は、例えば、上部旋回体3の中央部に搭載され、オペレータによる操作装置26に対する操作に応じて、油圧駆動系の制御を行う。コントロールバルブ17は、高圧油圧ラインを介してメインポンプ14と接続され、メインポンプ14から供給される作動油を油圧アクチュエータ(走行油圧モータ1L,1R、旋回油圧モータ21、ブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9等)に選択的に供給する。例えば、コントロールバルブ17は、メインポンプ14から油圧アクチュエータのそれぞれに供給される作動油の流量と流れる方向を制御する制御弁(スプール弁)を含む。
また、ブームシリンダ7のロッド側油室とコントロールバルブ17との間の高圧油圧ラインにリリーフ弁を配置してもよい。リリーフ弁は、コントローラ30からの制御指令に応じて、ブームシリンダ7のロッド側油室の作動油を排出し、過剰な油圧上昇を抑制する。
【0025】
<<操作系>>
図2に示すように、ショベル100の操作系は、パイロットポンプ15と、操作装置26とを含む。また、ショベル100の操作系は、コントローラ30によるマシンコントロール機能に関する構成として、油圧制御弁31と、シャトル弁32とを含む。
【0026】
パイロットポンプ15は、例えば上部旋回体3の後部に搭載され、パイロットライン25を介して操作装置26や油圧制御弁31等の各種の油圧機器にパイロット圧を供給する。パイロットポンプ15は、例えば固定容量式油圧ポンプであり、エンジン11により駆動される。
【0027】
操作装置26は、キャビン10の操縦席付近に設けられ、オペレータがそれぞれの被駆動要素(下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5及びバケット6等)の操作を行うために用いられる。換言すれば、操作装置26は、オペレータがそれぞれの被駆動要素を駆動する油圧アクチュエータ(走行油圧モータ1L,1R、旋回油圧モータ21、ブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9等)の操作を行うために用いられる。
操作装置26は、被駆動要素(油圧アクチュエータ)ごとの個別の操作装置(以下、「個別操作装置」)を含む。例えば、操作装置26は、上部旋回体3(旋回油圧モータ21)、ブーム4(ブームシリンダ7)、アーム5(アームシリンダ8)、及びバケット6(バケットシリンダ9)のそれぞれを操作するためのレバー装置を含む。また、操作装置26は、例えば、下部走行体1の左右のクローラ(走行油圧モータ1L,1R)のそれぞれを操作するためのレバー装置或いはペダル装置を含む。
【0028】
操作装置26は、例えば油圧パイロット式である。操作装置26は、パイロットライン25を通じてパイロットポンプ15から供給される作動油のパイロット圧を用いて、その操作状態に対応するパイロット圧を二次側のパイロットライン27(パイロットライン27A,27B)に出力する。操作装置26に含まれる個別操作装置は、それぞれ、二次側のパイロットライン27Aを通じて直接的に、或いは、二次側のパイロットライン27Bに設けられるシャトル弁32を介して間接的に、コントロールバルブ17(内の対応する制御弁)にそれぞれ接続される。これにより、コントロールバルブ17には、操作装置26における被駆動要素(油圧アクチュエータ)ごとの操作状態に応じたパイロット圧が入力されうる。つまり、操作装置26の操作状態に応じて、コントロールバルブ17がそれぞれの油圧アクチュエータを駆動する。
なお、操作装置26は、操作状態に対応する電気信号(以下、「操作信号」)を出力する電気式であってもよい。この場合、コントローラ30が、操作装置26から入力される操作信号に応じて、コントロールバルブ17内の対応する制御弁を制御すればよい。この制御弁は、例えば、パイロットポンプ15と、コントロールバルブ17に内蔵される、各油圧アクチュエータに対応する制御弁(例えば電磁ソレノイド式スプール弁)との間を接続するパイロットラインに介設される油圧制御弁(以下、「操作用油圧制御弁」)であってもよい。これにより、コントローラ30は、操作信号に対応するパイロット圧を、操作用油圧制御弁からコントロールバルブ17内のそれぞれの制御弁に作用させることができる。
また、ショベル100が外部装置(例えば、ショベル100の稼働状況等を管理する管理装置200等)から遠隔操作される場合、コントローラ30は、例えば、外部装置からの操作指令に応じて、上述の操作用油圧制御弁を制御し、コントロールバルブ17にパイロット圧を供給させればよい。
【0029】
油圧制御弁31は、パイロットポンプ15とシャトル弁32との間を接続するパイロットライン25Bに設けられる。油圧制御弁31は、コントローラ30の制御下で、二次側に出力するパイロット圧を調整する。油圧制御弁31は、例えば、その流路面積を変更可能な比例弁である。これにより、コントローラ30は、操作装置26(個別操作装置)が操作されていない場合であっても、油圧制御弁31からコントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに所定のパイロット圧を作用させることができる。そのため、コントローラ30は、オペレータの操作に依らず、油圧制御弁31が接続される制御弁に対応する油圧アクチュエータに所望の動作を行わせることができる。つまり、油圧制御弁31は、コントローラ30がオペレータの操作に依らず自在に動作させることが可能な被駆動要素(以下、「自在被駆動要素」)及び油圧アクチュエータ(以下、「自在アクチュエータ」)ごとに設けられる。
自在被駆動要素は、例えば、少なくともブーム4及びバケット6を含む。つまり、自在アクチュエータは、少なくとも、ブームシリンダ7及びバケットシリンダ9を含む。また、自在被駆動要素は、例えば、アーム5を含んでもよい。つまり、自在アクチュエータは、アームシリンダ8を含んでもよい。また、全ての被駆動要素が自在被駆動要素であってもよいし、全ての油圧アクチュエータが自在アクチュエータであってもよい。
なお、操作装置26が電気式である場合、油圧制御弁31の機能は、上述の操作用油圧制御弁で代替される。
【0030】
シャトル弁32は、操作装置26に含まれる一部の個別操作装置の二次側のパイロットライン27Bに設けられる。つまり、シャトル弁32は、操作装置26が操作対象とする被駆動要素(油圧アクチュエータ)のうちの一部の自在被駆動要素(自在アクチュエータ)に対して設けられる。シャトル弁32は、2つの入口ポートと1つの出口ポートを有し、2つの入口ポートに入力されたパイロット圧のうちの高い方を有する作動油を出口ポートに出力させる。シャトル弁32は、2つの入口ポートのうちの一方が操作装置26(個別操作装置)に接続され、他方が油圧制御弁31に接続される。シャトル弁32の出口ポートは、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに接続される。これにより、シャトル弁32は、操作装置26(個別操作装置)が生成するパイロット圧と油圧制御弁31が生成するパイロット圧のうちの高い方を、対応する制御弁のパイロットポートに作用させる。つまり、コントローラ30は、油圧制御弁31を制御し、操作装置26からのパイロット圧よりも高いパイロット圧を油圧制御弁31から出力させることで、オペレータによる操作装置26の操作に依らず、自在被駆動要素(自在アクチュエータ)の動作を制御できる。
なお、操作装置26が電気式である場合、操作装置26から操作状態に対応するパイロット圧が出力されないため、シャトル弁32は省略される。
【0031】
<<制御系>>
図2に示すように、ショベル100の制御系は、操作圧センサ29と、コントローラ30と、表示装置50と、入力装置46とを含む。また、ショベル100の制御系は、動作・姿勢状態センサ42と、測位装置44と、音声出力装置60と、通信装置80とを含む。
【0032】
操作圧センサ29は、操作装置26の二次側のパイロット圧、すなわち操作装置26におけるそれぞれの被駆動要素(油圧アクチュエータ)に関する操作状態(例えば、操作方向や操作量等の操作内容)に対応するパイロット圧を検出する。操作圧センサ29が検出したパイロット圧の検出信号は、コントローラ30に出力される。これにより、コントローラ30は、操作装置26の操作状態(操作内容)を把握できる。
なお、操作圧センサ29の代わりに、操作装置26におけるそれぞれの被駆動要素に関する操作状態を検出可能な他のセンサ、例えば、レバー装置の操作量(傾倒量)や傾倒方向を検出可能なエンコーダやポテンショメータ等が設けられてもよい。また、操作装置26が電気式である場合、操作圧センサ29は省略される。操作装置26の操作状態を表す電気信号(操作信号)が操作装置26からコントローラ30に入力されるからである。
【0033】
コントローラ30(制御部の一例)は、例えばキャビン10の内部に設けられ、ショベル100に関する各種の制御を行う。コントローラ30は、その機能が任意のハードウェア、ソフトウェア、或いはその組み合わせにより実現されてよく、例えば、CPU,RAM,ROM,I/O等を含むマイクロコンピュータを中心に構成される。コントローラ30は、これらの他にも、例えばFPGAやASICなどを含んで構成されてもよい。
【0034】
また、コントローラ30は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の内部メモリに規定される記憶領域としての記憶部35を含む。
記憶部35は、ショベル100の各部を動作させるための各種プログラムや各種データ等を格納するほか、コントローラ30の作業領域としても機能する。本実施形態の記憶部35は、後述の操作支援処理を実行するプログラムを予め記憶している。
【0035】
表示装置50は、キャビン10内の操縦席の周辺に設けられ、コントローラ30の制御下で、オペレータに通知する各種画像情報を表示する。表示装置50は、例えば液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイであり、入力装置46の少なくとも一部を兼ねるタッチパネル式であってもよい。
【0036】
入力装置46は、キャビン10内の操縦席の周辺に設けられ、オペレータからの各種入力を受け付け、その入力に応じた信号をコントローラ30に出力する。入力装置46は、例えば、個別操作装置のレバー部先端に配置されるノブスイッチ、表示装置50の周囲に配置されるボタンスイッチ、レバー、トグル、回転ダイヤル等を含んでもよい。また、入力装置46は、ユーザ(オペレータ)の音声入力やジェスチャ入力を受付可能な音声入力装置やジェスチャ入力装置を含んでもよい。
入力装置46は、MC機能の有効/無効(ON/OFF)を切り替え可能なマシンコントロールスイッチ(以下、「MCスイッチ」)46aを含む。MCスイッチ46aは、例えば、アーム5に対応する個別操作装置のレバー部の先端に設けられ、その操作(例えば押圧操作)がされている間だけMC機能を有効にすることが可能な態様であってもよい。
【0037】
動作・姿勢状態センサ42は、ショベル100の動作状態や姿勢状態を検出するセンサであり、検出結果をコントローラ30に出力する。動作・姿勢状態センサ42は、ブーム角度センサと、アーム角度センサと、バケット角度センサと、三軸慣性センサ(IMU:Inertial Measurement Unit)と、機体傾斜センサと、旋回角度センサと、加速度センサとを含む。
これらのセンサは、対応する油圧シリンダのストロークセンサ、ロータリエンコーダ等の回転情報を取得するセンサで構成されてもよく、IMUで取得される加速度(速度、位置も含んでもよい)により代替されてもよい。
ブーム角度センサは、上部旋回体3を基準とするブーム4の回転角度(以下、「ブーム角度」と称する)を検出する。
アーム角度センサは、ブーム4を基準とするアーム5の回動角度(以下、「アーム角度」と称する)を検出する。
バケット角度センサは、アーム5を基準とするバケット6の回動角度(以下、「バケット角度」と称する)を検出する。
IMUは、ブーム4及びアーム5の各々に取り付けられ、所定の三軸に沿ったブーム4及びアーム5の加速度、及び、所定の三軸廻りのブーム4及びアーム5の角加速度を検出する。
機体傾斜センサは、所定の平面(例えば水平面)に対する機体(下部走行体1或いは上部旋回体3)の傾斜状態を検出する。機体傾斜センサは、例えば、上部旋回体3に取り付けられ、上部旋回体3の前後方向及び左右方向の2軸回りの傾斜角度を検出する。
旋回角度センサは、上部旋回体3の所定の角度方向を基準とする旋回角度を検出する。ただし、これに限られず、上部旋回体3に設けられたGPSやIMUセンサに基づいて旋回角度が検出されてもよい。
加速度センサは、上部旋回体3の旋回軸から離れた位置に取り付けられ、上部旋回体3の当該位置における加速度を検出する。加速度センサの検出結果に基づき、上部旋回体3が旋回しているのか、或いは、下部走行体1が走行しているのか等が判別されうる。
【0038】
測位装置44は、上部旋回体3の位置及び向きを測定する。測位装置44は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)コンパスであり、検出した情報をコントローラ30に出力する。また、測位装置44の機能のうち上部旋回体3の向きを検出する機能は、上部旋回体3に取り付けられる方位センサにより代替されてもよい。
なお、上部旋回体3の位置や向きに関する情報は、通信装置80を通じて外部装置(例えば、作業現場での作業機械の位置や地形形状等を測位する機器)から取得してもよい。この場合、測位装置44は、省略されてもよい。
【0039】
音声出力装置60は、キャビン10内の操縦席の周辺に設けられ、コントローラ30による制御の下、オペレータに通知する各種音声情報を出力する。音声出力装置60は、例えば、スピーカやブザー等である。
【0040】
通信装置80は、所定の無線通信規格に基づき、所定の通信ネットワークNWを通じて遠隔の外部機器や他のショベル100等と各種情報を送受信する通信デバイスである。通信ネットワークNWには、例えば、基地局を末端とする移動体通信網、上空の通信衛星を利用する衛星通信網、WiFiやブルートゥース(登録商標)等のプロトコルに準拠する近距離通信網、インターネット通信網等を含んでもよい。
【0041】
また、ショベル管理システム400は、少なくとも1台のショベル100と、当該ショベル100と通信可能な管理装置200及び端末装置300を含んで構成される。各ショベル100は、通信ネットワークNWを通じて、管理装置200や端末装置300と相互に通信を行うことができる。
【0042】
管理装置200(情報処理装置の一例)は、ショベル100及び端末装置300を所持するユーザ等と地理的に離れた位置に配置される。管理装置200は、例えば、ショベル100が作業する作業現場外に設けられる管理センタ等に設置され、一又は複数のサーバコンピュータ等を中心に構成されるサーバ装置である。この場合、サーバ装置は、システムを運用する事業者或いは当該事業者に関連する関連事業者が運営する自社サーバであってもよいし、レンタルサーバであってもよい。また、このサーバ装置は、いわゆるクラウドサーバであってもよい。また、管理装置200は、ショベル100の作業現場内の管理事務所等に配置されるサーバ装置(いわゆるエッジサーバ)であってもよいし、定置型或いは携帯型の汎用のコンピュータ端末であってもよい。
管理装置200は、上述の如く、通信ネットワークNWを通じて、ショベル100及び端末装置300のそれぞれと相互に通信を行うことができる。これにより、管理装置200は、ショベル100からアップロードされる各種情報を受信し、記憶(蓄積)しておくことができる。また、管理装置200は、端末装置300からの要求に応じて、端末装置300に各種情報を送信することができる。また、管理装置200は、複数のショベル100に関する情報をショベル100ごとに識別可能なように、各ショベル100のID情報に対応付けるなどして管理(記憶)している。
【0043】
端末装置300は、ユーザが利用するユーザ端末である。ユーザには、例えば、作業現場の監督者、管理者、ショベル100のオペレータ、ショベル100の管理者、ショベル100のサービスマン、ショベル100の開発者等が含まれてよい。端末装置300は、例えば、ユーザが所持するラップトップ型のコンピュータ端末、タブレット端末、スマートフォン等の汎用の携帯端末である。また、端末装置300は、デスクトップ型のコンピュータ等の定置型の汎用端末であってもよい。また、端末装置300は、情報の提供を受けるための専用の端末(携帯端末或いは定置端末)であってもよい。
端末装置300は、通信ネットワークNWを通じて、管理装置200と相互に通信を行うことができる。これにより、端末装置300は、管理装置200から送信される情報を受信し、自身に搭載される表示装置を通じて、ユーザに情報を提供することができる。また、端末装置300は、通信ネットワークNWを通じて、ショベル100と相互に通信可能に構成されてもよい。
【0044】
[マシンコントロール機能の概要]
ショベル100で実行される自動運転機能には、上述のとおり、アタッチメントATの動作を制御するMC機能が含まれる。
MC機能は、従来より公知の技術であるため(例えば、特開2022-154722号公報等参照)、詳細な説明は省略し、以下に簡単に説明する。
MC機能では、コントローラ30は、例えば、オペレータが手動で地面の掘削操作や均し操作等を行っている場合に、目標施工面と、アタッチメントATの先端部(具体的には、バケット6の作業部位に設定される、制御基準となる位置(以下、単に「制御基準」))とが一致するように、ブーム4、アーム5及びバケット6の少なくとも一つを自動的に動作させる。制御基準は、例えば、バケット6の作業部位としての爪先を構成する平面或いは曲面、当該平面或いは曲面上に規定される線分、当該平面或いは曲面上に規定される点等を含みうる。また、制御基準には、例えば、バケット6の作業部位としての背面を構成する平面或いは曲面、当該平面或いは曲面上に規定される線分、当該平面或いは曲面上に規定される点等を含みうる。
具体的には、オペレータが所定のアーム操作を行うと、コントローラ30は、オペレータによるアーム5の操作に応じて、目標施工面とバケット6の制御基準とが一致するように、ブーム4、アーム5及びバケット6を自動的に動作させる。これにより、オペレータは、簡便な操作で、目標施工面に沿った掘削作業や均し作業等をショベル100に実行させることができる。
【0045】
例えば、コントローラ30は、オペレータによるアーム5の閉じ操作(以下、「アーム閉じ操作」)に応じて、バケット6の作業部位が目標施工面に沿って移動するように目標軌道を設定する。そして、コントローラ30は、アタッチメントAT(ブーム4、アーム5及びバケット6の少なくとも1つ)を制御し、バケット6の爪先が目標軌道(目標施工面)に沿って移動するようにバケット6の爪先の位置制御を行う。これにより、図3(a)に示すように、ショベル100は、アーム閉じ操作に応じて、目標施工面SF1に沿ってバケット6の爪先を移動させ、目標施工面SF1よりも上に出ている部分を削り取ることができる。
あるいは、コントローラ30は、オペレータによるアーム5の開き操作(以下、「アーム開き操作」)に応じて、バケット6の作業部位の目標軌道を、目標施工面SF1から地面側に所定量αだけオフセットさせたオフセット面SF2に対応する軌道に設定する。所定量αは、予め規定される固定値であってもよいし、地面の平坦度等に応じた可変値であってもよい。そして、コントローラ30は、バケット6の背面が目標軌道(オフセット面)に沿って移動するようにバケット6の背面の位置制御を行う。これにより、図3(b)に示すように、ショベル100は、アーム開き操作に応じて、バケット6の背面を地面に押し付けながら、車体BDから離れる方向にバケット6を移動させることができる。具体的には、ショベル100は、バケット6の背面を地面よりも下のオフセット面SF2に一致させようとアタッチメントATを動作させる結果、所定の押し付け力Fでバケット6の背面を地面に押し付けることができる。
これらにより、ショベル100は、アーム閉じ操作に応じて平坦な地面(目標施工面SF1)を削り出し、アーム開き操作に応じて地面の締固め(転圧)を行うことができる。
【0046】
バケット6の作業部位は、例えば、オペレータ等による設定入力に応じて設定されてもよいし、ショベル100の作業内容に応じて自動的に設定されてもよい。具体的には、バケット6の作業部位は、ショベル100の作業内容が掘削作業等である場合、バケット6の爪先に設定され、ショベル100の作業内容が均し作業や転圧作業等である場合、バケット6の背面に設定されてよい。この場合、ショベル100の作業内容は、例えば撮像装置の撮像画像等に基づき自動的に判定されてもよいし、オペレータ等が選択或いは入力することにより設定されてもよい。
【0047】
[ジャッキアップ防止機能の概要]
ショベル100で実行される自動運転機能には、上述のとおり、車体BDの浮き上がり(掘削地点への引き摺られを含む)を防止するJU防止機能が含まれる。
JU防止機能は、従来より公知の技術であるため(例えば、特許第6974399号公報等参照)、詳細な説明は省略し、以下に簡単に説明する。
JU防止機能では、コントローラ30は、車体BDの浮き上がりを防止するために、ブームシリンダ7のロッド側油室における作動油の圧力を浮き上がり防止用許容最大圧力以下に制御する。浮き上がり防止用許容最大圧力は、ショベル100の姿勢(ブーム角度、アーム角度、バケット角度、傾斜角度及び旋回角度)に基づいて算出される。具体的に、コントローラ30は、ブーム上げ操作用パイロットポートにかかるパイロット圧を増大させてブームシリンダ7のロッド側油室の圧力を低下させ、ブーム4の上昇速度を増大させる。ブーム4の上昇速度が増大することで掘削反力の鉛直成分が減少し、車体BDの浮き上がりが抑制される。
その後、コントローラ30は、ブーム4の上昇速度を増大させたにもかかわらずブームシリンダ7のロッド側油室の圧力が浮き上がり防止用許容最大圧力に達した場合、アームシリンダ8のボトム側油室の圧力を低減させる。具体的に、コントローラ30は、アーム閉じ操作用パイロットポートにかかるパイロット圧を減少させてアームシリンダ8のボトム側油室の圧力を低減させ、アーム5の閉じ速度を低下させる。アーム5の閉じ速度が低下することで掘削反力の鉛直成分が減少し、車体BDの浮き上がりが抑制される。
なお、アーム5の閉じ速度を低下させたにもかかわらず、ブームシリンダ7のロッド側油室の圧力が浮き上がり防止用許容最大圧力を下回らない場合、コントローラ30は、メインポンプ14からアームシリンダ8のボトム側油室に流入する作動油の量を消失させてもよい。
【0048】
[操作支援処理]
続いて、自動運転機能におけるオペレータの操作を支援する操作支援処理について説明する。
図4は、操作支援処理の流れを示すフローチャートである。
操作支援処理は、例えばオペレータの操作に基づいて、コントローラ30が記憶部に格納された所定のプログラムを展開することで実行される。
ここでは、例えば、オペレータによりMC機能が有効にされ、オペレータによるショベル100の手動操作を自動的に支援する自動運転機能(半自動運転機能)に関する制御が行われるものとする。
【0049】
図4に示すように、操作支援処理が実行されると、まずショベル100のコントローラ30は、オペレータの操作に基づいて、掘削動作を開始する(ステップS1)。
具体的に、コントローラ30は、オペレータによるアーム5の操作に応じてバケット6の所定の作業部位が所定の施工動作を行うように、アタッチメントAT(ブーム4、アーム5及びバケット6の少なくとも1つ)を動作制御する。
またこのとき、コントローラ30は、JU防止機能も有効にする。
【0050】
次に、コントローラ30は、オペレータによりブーム4の操作が入力されたか否かを判定する(ステップS2)。
【0051】
ステップS2において、オペレータによるブーム4の操作が入力されていないと判定した場合(ステップS2;No)、コントローラ30は、MC機能とJU防止機能のうち、ブーム上げ指令値がより大きいブーム動作指令を指令出力とする(ステップS3)。
ここで、ブーム動作指令はブーム4の速度に関する指令値(速度指令値)である。つまり、このステップでは、MC機能とJU防止機能のうち、ブーム4の上昇速度が大きい動作指令を指令出力として優先させる。
【0052】
一方、ステップS2において、オペレータによるブーム4の操作が入力されたと判定した場合(ステップS2;Yes)、コントローラ30は、MC機能、JU防止機能、ブーム4の操作入力のうち、ブーム上げ指令値が最も大きいブーム動作指令を指令出力とする(ステップS4)。
【0053】
次に、コントローラ30は、操作支援処理を終了させるか否かを判定し(ステップS5)、終了させないと判定した場合には(ステップS5;No)、上述のステップS2へ処理を移行する。
そして、例えば作業完了等により、操作支援処理を終了させると判定した場合には(ステップS5;Yes)、コントローラ30は、操作支援処理を終了させる。
【0054】
[操作支援処理の動作例]
操作支援処理によるショベル100の動作例について説明する。
図5は、操作支援処理におけるバケット6位置とブーム動作指令の変化例を示す図である。なお、図5におけるバケット6の向き(姿勢)は実際の状態を反映したものではない。
図5に示すように、オペレータがアーム閉じ操作を行うと、これに伴ってアタッチメントATによる掘削動作が実行される。
具体的には、まずバケット6が柔らかい地面SGを掘削している間は掘削反力が小さいため、MC機能によるブーム動作指令(速度指令)Vmcは、JU防止機能によるブーム動作指令Vjuよりもブーム上げ指令値が大きい。そのため、MC機能によるブーム動作指令Vmcがブーム4の指令出力Vとされ、MC機能によりバケット6が目標施工面SF1に沿って移動するように、アタッチメントATが動作制御される(I~III)。
【0055】
その後、目標施工面SF1が柔らかい地面SGから硬い地面HGに入ると、掘削反力が増大する。そこで、掘削反力の鉛直成分を減少させて車体BDの浮き上がりを抑えるために、JU防止機能によるブーム動作指令Vjuが、MC機能によるブーム動作指令Vmcよりも、ブーム上げ指令値が大きくなる。そのため、JU防止機能によるブーム動作指令Vjuがブーム4の指令出力Vとされ、当該指令出力Vに応じてアタッチメントATが動作制御される(III~IV)。
【0056】
そして、オペレータによるブーム4の操作が入力され、当該オペレータの操作によるブーム動作指令Vopが、MC機能によるブーム動作指令Vmc及びJU防止機能によるブーム動作指令Vjuのいずれよりもブーム上げ指令値が大きくなると、当該オペレータの操作によるブーム動作指令Vopがブーム4の指令出力Vとされる。そのため、この指令出力Vとされたブーム動作指令Vopに応じて、アタッチメントATが制御される(IV~V)。
【0057】
このように、MC機能の実行中には、MC機能によるブーム動作指令Vmcと、JU防止機能によるブーム動作指令Vjuとのうち、ブーム上げ指令値のより大きい方が指令出力とされる。これにより、MC機能とJU防止機能とを不連続にすることなく滑らかに切り替えることができる。
ただし、操作支援処理では、コントローラ30は、MC機能の実行中に、車体BDの浮き上がりのおそれがあると判定した場合に、JU防止機能を実行すればよい。つまり、MC機能の実行中にJU防止機能を実行する実行態様は、上述した実施形態のものに限定されない。
【0058】
[本実施形態の技術的効果]
以上のように、本実施形態によれば、MC機能の実行中に車体BDの浮き上がりのおそれがある場合、JU防止機能が実行される。
これにより、MC機能の実行時における車体BDの浮き上がりを好適に抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、MC機能によるブーム動作指令Vmcと、JU防止機能によるブーム動作指令Vjuとのうち、ブーム上げ指令値がより大きい方が指令出力とされる。
これにより、MC機能とJU防止機能とを、不連続にすることなく滑らかに切り替えることができる。
また、MC機能がバケット6の軌道を求める制御であるのに対し、JU防止機能はバケット6の軌道を求める制御ではないため、これらの機能は単純に組み合わせることが難しい。しかし、ブーム上げ指令値の大きさに基づいてこれらの優先度を設定することにより、これらの機能を簡便な制御指令で組み合わせることができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、オペレータによるブーム4の操作が入力された場合、MC機能によるブーム動作指令Vmcと、JU防止機能によるブーム動作指令Vjuと、オペレータの操作によるブーム動作指令Vopとのうち、ブーム上げ指令値が最も大きいものが指令出力とされる。
これにより、MC機能とJU防止機能に加え、オペレータの操作が入力された場合でも、これらを不連続にすることなく滑らかに切り替えることができる。
【0061】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態やその変形例に限られない。
例えば、上記実施形態では、MC機能と、JU防止機能と、オペレータの操作入力とが重複した場合に、これらのうちブーム上げ指令値が大きい制御を優先させることとした。しかし、ブーム上げ指令値に基づいて優先度が判定される制御(機能)の内容は、MC機能、JU防止機能、オペレータの操作入力に限定されない。
ただし、オペレータによるフルレバー操作が入力された場合は、これが緊急操作であると考えられるため、当該フルレバー操作を優先させてもよい。ここで、「フルレバー操作」とは、所定のレバー操作量以上のレバー操作であり、例えば、80%以上のレバー操作量でブーム操作レバーを上げ方向に傾斜させることを意味する。なお、レバー操作量は、ブーム操作レバーが中立位置のときに0%を示し、最大傾斜位置のときに100%を示す。
【0062】
また、上記実施形態では、ブーム4の動作指令がブーム4の速度に関する指令値(速度指令値)であることとした。しかし、ブーム4の動作指令は、ブーム4の速度と一定の相関関係が有するパラメータに関する指令値であれば、速度指令値でなくともよい。例えば、ブーム4の動作指令は、ブーム4の位置又は角速度、ブーム操作レバーの角度又はパイロット圧、ブームシリンダ7の位置又は作動油の流入量等に関する指令値であってもよい。
【0063】
その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0064】
100 ショベル
1 下部走行体
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
26 操作装置
30 コントローラ(制御部)
46a マシンコントロールスイッチ(MCスイッチ)
AT アタッチメント
BD 車体
HG 硬い地面
SG 柔らかい地面
SF1 目標施工面
V ブームの指令出力
Vju ジャッキアップ防止機能によるブーム動作指令
Vmc マシンコントロール機能によるブーム動作指令
Vop オペレータの操作によるブーム動作指令
図1
図2
図3
図4
図5