(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082698
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】トイレカーシステム
(51)【国際特許分類】
B60P 3/00 20060101AFI20240613BHJP
E03D 11/00 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B60P3/00 W
E03D11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196722
(22)【出願日】2022-12-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.令和4年6月20日,ウェブサイト 2.令和4年6月29日,展示 3.令和4年9月3日,展示 4.令和4年10月30日,展示 5.令和4年11月13日,展示
(71)【出願人】
【識別番号】000192073
【氏名又は名称】株式会社モリタホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】松田 智史
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039FA01
2D039FB00
(57)【要約】
【課題】トイレカーにおける清水タンクへの水補給や便槽タンクからの汚物の回収/排出を適切なタイミングで効率よく行えるトイレカーシステムを提供する。
【解決手段】便器21、清水タンク23、及び便槽タンク24を有するトイレ20が備え付けられた車両10と、車両10のトイレ20に関する情報を処理する情報処理装置40と、清水タンク23の水の貯量を測定する清水貯量測定器25と、便槽タンク24の汚物の貯量を測定する汚物貯量測定器26と、清水貯量測定器25及び汚物貯量測定器26の測定結果を情報処理装置40へ送信する通信機50とを備え、情報処理装置40は、水の貯量が所定以下となったとき、又は汚物の貯量が所定以上となったとき、予め登録されている宛先に対して、清水タンク23における水の貯量が所定以下となったこと、又は便槽タンク24における汚物の貯量が所定以上となったことを、車両10の配備位置と共に通知する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器、前記便器に流す前の水を貯留する清水タンク、及び前記便器に流された汚物を貯留する便槽タンクを有するトイレが備え付けられた車両と、
前記車両の前記トイレに関する情報を処理する情報処理装置と、
前記清水タンクにおける前記水の貯量の測定に用いる清水貯量測定器と、
前記便槽タンクにおける前記汚物の貯量の測定に用いる汚物貯量測定器と、
前記清水貯量測定器及び前記汚物貯量測定器の測定結果を前記情報処理装置へ送信する通信機と、を備え、
前記情報処理装置は、前記清水タンクにおける前記水の貯量が所定以下となったとき、又は前記便槽タンクにおける前記汚物の貯量が所定以上となったとき、予め登録されている宛先に対して、前記清水タンクにおける前記水の貯量が所定以下となったこと、又は前記便槽タンクにおける前記汚物の貯量が所定以上となったことを、前記車両の配備位置と共に通知することを特徴とするトイレカーシステム。
【請求項2】
前記トイレの利用者が緊急時に外部へ連絡するための緊急連絡手段を前記トイレ内に備え、
前記緊急連絡手段が操作されたとき、前記トイレにて緊急事態が発生したことを伝える緊急信号が前記通信機から前記情報処理装置へ送信され、
前記緊急信号を受信した前記情報処理装置は、予め登録されている宛先に対して、前記トイレにて緊急事態が発生したことを、前記車両の前記配備位置と共に通知することを特徴とする請求項1に記載のトイレカーシステム。
【請求項3】
前記トイレの電源としてのバッテリーと、前記バッテリーの残量を測定する電池残量測定器を前記車両に備え、
前記電池残量測定器の測定結果が前記通信機から前記情報処理装置へ送信され、
前記情報処理装置は、前記バッテリーの残量が所定以下となったとき、予め登録されている宛先に対して、前記バッテリーの残量が所定以下となったことを、前記車両の前記配備位置と共に通知することを特徴とする請求項1に記載のトイレカーシステム。
【請求項4】
前記車両は自車位置情報を取得する自車位置情報取得手段を備え、
前記自車位置情報が前記通信機から前記情報処理装置へ送信され、
前記情報処理装置は、受信した前記自車位置情報に基づいて、前記車両の前記配備位置を特定することを特徴とする請求項1に記載のトイレカーシステム。
【請求項5】
前記情報処理装置は、前記車両の前記トイレに関する情報をインターネット上の所定画面に表示することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のトイレカーシステム。
【請求項6】
前記トイレの利用状況に関する利用情報を取得する利用情報取得手段を備え、
前記利用情報が前記通信機から前記情報処理装置へ送信され、
前記情報処理装置は、前記利用情報に基づく前記トイレの空き情報を前記所定画面に表示することを特徴とする請求項5に記載のトイレカーシステム。
【請求項7】
前記車両の外に設置され前記トイレの空き情報を表示する表示装置を備えることを特徴とする請求項6に記載のトイレカーシステム。
【請求項8】
前記トイレの利用状況に関する利用情報を取得する利用情報取得手段を備え、
前記利用情報が前記通信機から前記情報処理装置へ送信され、
前記情報処理装置は、前記利用情報に基づく前記トイレの利用回数を前記配備位置と対応付けて記憶装置に記憶し、ユーザーからの要求に応じて前記利用回数と前記配備位置を含む利用履歴を前記所定画面に表示することを特徴とする請求項5に記載のトイレカーシステム。
【請求項9】
前記トイレ内の室温又は前記トイレ外の外気温の少なくとも一方を測定する温度計を備え、
測定された前記室温又は前記外気温が前記通信機から前記情報処理装置へ送信され、
前記情報処理装置は、前記室温又は前記外気温を前記所定画面に表示することを特徴とする請求項5に記載のトイレカーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避難所やイベント会場等に一時的な増設トイレとして配備される車両(トイレカー)に関する。
【背景技術】
【0002】
大規模自然災害の発生時に開設される避難所や、花火大会等のイベント会場等においては、トイレ不足を補うために仮設トイレが設置されることが多く、近年では、地面置きの仮設トイレやマンホールトイレに比べて設置/撤収や汚物処理が容易であり、使用の抵抗感が少ないといった利点を有するトイレカー(移動式トイレ)も活用されつつある。
ここで、特許文献1には、複数の壁と、壁につなげられたドアフレーム内のドアと、壁及びドアフレームの上部に配設された屋根と、仮設トイレの床を画定するように複数の壁及びドアフレームに設けられたベースであって、複数の壁、ドアフレーム内のドア、屋根、及びベースが一緒に、閉じた内部空間を画定し、かつベースが、その中に排泄物タンク、制御電子機器区画、及び清水タンクを画定している、ベースと、排泄物タンクの上に配設された便器と、制御電子機器区画内に配設された電源と、制御電子機器区画内に配設され、電源に接続されたマイクロプロセッサと、マイクロプロセッサに接続されたメモリと、排泄物タンク内に配設され、マイクロプロセッサに接続された排泄物レベルセンサと、清水タンク内に配設され、マイクロプロセッサに接続された清水レベルセンサと、ドアが開いているか又は閉じているかを感知するように配置され、マイクロプロセッサに接続されたドアセンサと、ドアがロックされているか又はロック解除されているかを感知するように配置され、マイクロプロセッサに接続されたドアロックセンサと、閉じた内部空間内に配設され、マイクロプロセッサに接続された照明と、マイクロプロセッサに接続され、清水タンク及び便器に動作可能に接続された電動ポンプを備える仮設トイレが開示されている。
また、特許文献2には、電気処理式トイレを荷台に搭載し、電気処理式トイレのための電力を提供するバッテリーと、電気処理式トイレへの供給電力を交流に変換する電力切替装置とを備える電気トイレカーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2018-529866号公報
【特許文献2】特開2020-172146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トイレカーは、地面置きの仮設トイレに比べると上述のように優位な点を多く有するが、清水タンクに貯留されている水量が一定以下となれば補給を要する点や、便槽(汚水)タンクに溜まった汚物が一定量以上となれば処理を要する点は同様である。このため、配備中のトイレカーを補給水車や汚物回収車が定期的に巡回して清水タンクへの水補給や便槽タンクの汲み取りを行うか、又は水源まで自走して清水タンクへ水を補給したり、し尿処理場まで自走して便槽タンクから汚物を排出したりする必要がある。しかし、清水タンク内の水の減り具合や便槽タンク内の汚物の溜まり具合は、トイレカーによってまちまちであるため、定期的な巡回では対応が十分でない場合がある。仮に清水タンクの水切れや便槽タンクのオーバーフローが発生すると、それらが解消されるまでトイレを使用できなくなってしまう。また、水源やし尿処理場まで自走する場合も、清水タンクや便槽タンクのレベルを定期的に目視確認する必要がある。
そこで、本発明は、トイレカーにおける清水タンクへの水補給や便槽タンクからの汚物の回収/排出を適切なタイミングで効率よく行えるトイレカーシステムを提供することを目的とする。
なお、特許文献1には、仮設トイレの排泄物のレベル等を監視し、サービスを必要とする場合に通知を行うことが記載されているが、特許文献1の仮設トイレは所定箇所まで運搬して地面に設置するものであり、トイレカーではない。
また、特許文献2記載の電気トイレカーは、当該車両において汚物を焼却処理等するものであり、配備位置で汚物を汲み取るか、又はし尿処理場まで自走して汚物を排出するトイレカーとは汚物の処理方法が異なる。また、清水タンクへの水の補給については何ら記載がない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明のトイレカーシステムは、便器21、便器21に流す前の水を貯留する清水タンク23、及び便器21に流された汚物を貯留する便槽タンク24を有するトイレ20が備え付けられた車両10と、車両10のトイレ20に関する情報を処理する情報処理装置40と、清水タンク23における水の貯量の測定に用いる清水貯量測定器25と、便槽タンク24における汚物の貯量の測定に用いる汚物貯量測定器26と、清水貯量測定器25及び汚物貯量測定器26の測定結果を情報処理装置40へ送信する通信機50とを備え、情報処理装置40は、清水タンク23における水の貯量が所定以下となったとき、又は便槽タンク24における汚物の貯量が所定以上となったとき、予め登録されている宛先に対して、清水タンク23における水の貯量が所定以下となったこと、又は便槽タンク24における汚物の貯量が所定以上となったことを、車両10の配備位置と共に通知することを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載のトイレカーシステムにおいて、トイレ20の利用者が緊急時に外部へ連絡するための緊急連絡手段27をトイレ20内に備え、緊急連絡手段27が操作されたとき、トイレ20にて緊急事態が発生したことを伝える緊急信号が通信機50から情報処理装置40へ送信され、緊急信号を受信した情報処理装置40は、予め登録されている宛先に対して、トイレ20にて緊急事態が発生したことを、車両10の配備位置と共に通知することを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1に記載のトイレカーシステムにおいて、トイレ20の電源としてのバッテリー28と、バッテリー28の残量を測定する電池残量測定器30を車両10に備え、電池残量測定器30の測定結果が通信機50から情報処理装置40へ送信され、情報処理装置40は、バッテリー28の残量が所定以下となったとき、予め登録されている宛先に対して、バッテリー28の残量が所定以下となったことを、車両10の配備位置と共に通知することを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1に記載のトイレカーシステムにおいて、車両10は自車位置情報を取得する自車位置情報取得手段60を備え、自車位置情報が通信機50から情報処理装置40へ送信され、情報処理装置40は、受信した自車位置情報に基づいて、車両10の配備位置を特定することを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のトイレカーシステムにおいて、情報処理装置40は、車両10のトイレ20に関する情報をインターネット上の所定画面に表示することを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項5に記載のトイレカーシステムにおいて、トイレ20の利用状況に関する利用情報を取得する利用情報取得手段31を備え、利用情報が通信機50から情報処理装置40へ送信され、情報処理装置40は、利用情報に基づくトイレ20の空き情報を所定画面に表示することを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項6に記載のトイレカーシステムにおいて、車両10の外に設置されトイレ20の空き情報を表示する表示装置70を備えることを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項5に記載のトイレカーシステムにおいて、トイレ20の利用状況に関する利用情報を取得する利用情報取得手段31を備え、利用情報が通信機50から情報処理装置40へ送信され、情報処理装置40は、利用情報に基づくトイレ20の利用回数を配備位置と対応付けて記憶装置に記憶し、ユーザーからの要求に応じて利用回数と配備位置を含む利用履歴を所定画面に表示することを特徴とする。
請求項9記載の本発明は、請求項5に記載のトイレカーシステムにおいて、トイレ20内の室温又はトイレ20外の外気温の少なくとも一方を測定する温度計32を備え、測定された室温又は外気温が通信機50から情報処理装置40へ送信され、情報処理装置40は、室温又は外気温を所定画面に表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、トイレカーにおける清水タンクへの水補給や便槽タンクからの汚物の回収/排出を適切なタイミングで効率よく行えるトイレカーシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施例によるトイレカーシステムの利用形態の概念図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の第1の実施の形態によるトイレカーシステムは、便器、便器に流す前の水を貯留する清水タンク、及び便器に流された汚物を貯留する便槽タンクを有するトイレが備え付けられた車両と、車両のトイレに関する情報を処理する情報処理装置と、清水タンクにおける水の貯量の測定に用いる清水貯量測定器と、便槽タンクにおける汚物の貯量の測定に用いる汚物貯量測定器と、清水貯量測定器及び汚物貯量測定器の測定結果を情報処理装置へ送信する通信機とを備え、情報処理装置は、清水タンクにおける水の貯量が所定以下となったとき、又は便槽タンクにおける汚物の貯量が所定以上となったとき、予め登録されている宛先に対して、清水タンクにおける水の貯量が所定以下となったこと、又は便槽タンクにおける汚物の貯量が所定以上となったことを、車両の配備位置と共に通知するものである。
本実施の形態によれば、清水タンク内の水量が所定値を下回った場合や、便槽タンク内の汚物量が所定値を上回った場合に通知が届くため、車両(トイレカー)の管理担当者等は、清水タンクの水切れや便槽タンクのオーバーフローが生じる前に、水の補給や、汚物の回収/排出を行うことができる。また、対応が実際に必要となったときに補給や回収/排出作業を行えるため、水量や汚物量に関わらず定期的に補給や回収/排出を行う場合や、タンクのレベルを定期的に確認する場合に比べて、作業効率を向上させることができる。
【0009】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態によるトイレカーシステムにおいて、トイレの利用者が緊急時に外部へ連絡するための緊急連絡手段をトイレ内に備え、緊急連絡手段が操作されたとき、トイレにて緊急事態が発生したことを伝える緊急信号が通信機から情報処理装置へ送信され、緊急信号を受信した情報処理装置は、予め登録されている宛先に対して、トイレにて緊急事態が発生したことを、車両の配備位置と共に通知するものである。
本実施の形態によれば、利用者に体調不良等の緊急事態が発生した場合に、車両管理担当者等が早期に対応することが可能となる。
【0010】
本発明の第3の実施の形態は、第1の実施の形態によるトイレカーシステムにおいて、トイレの電源としてのバッテリーと、バッテリーの残量を測定する電池残量測定器を車両に備え、電池残量測定器の測定結果が通信機から情報処理装置へ送信され、情報処理装置は、バッテリーの残量が所定以下となったとき、予め登録されている宛先に対して、バッテリーの残量が所定以下となったことを、車両の配備位置と共に通知するものである。
本実施の形態によれば、バッテリー切れによってトイレの使用に支障が出ることを回避できる。また、各車両を定期的に見回ってバッテリーの残量確認を行う手間を省くことができる。
【0011】
本発明の第4の実施の形態は、第1の実施の形態によるトイレカーシステムにおいて、車両は自車位置情報を取得する自車位置情報取得手段を備え、自車位置情報が通信機から情報処理装置へ送信され、情報処理装置は、受信した自車位置情報に基づいて、車両の配備位置を特定するものである。
本実施の形態によれば、車両の最新の配備位置を取得できるため、水の補給や、汚物の回収/排出を効率よく行える。また、突発的なトイレの設置要請が発生した際には、効率よく車両の配置指示を行うことができる。
【0012】
本発明の第5の実施の形態は、第1から第4のいずれか一つの実施の形態によるトイレカーシステムにおいて、情報処理装置は、車両のトイレに関する情報をインターネット上の所定画面に表示するものである。
本実施の形態によれば、車両管理担当者等は、インターネットに繋がった情報端末から、場所や時間を問わず、Webサイト等にアクセスして車両のトイレに関する各種情報を確認することができる。
【0013】
本発明の第6の実施の形態は、第5の実施の形態によるトイレカーシステムにおいて、トイレの利用状況に関する利用情報を取得する利用情報取得手段を備え、利用情報が通信機から情報処理装置へ送信され、情報処理装置は、利用情報に基づくトイレの空き情報を所定画面に表示するものである。
本実施の形態によれば、車両管理担当者等はトイレが使用中か否かを遠方監視することができる。
【0014】
本発明の第7の実施の形態は、第6の実施の形態によるトイレカーシステムにおいて、車両の外に設置されトイレの空き情報を表示する表示装置を備えるものである。
本実施の形態によれば、屋外に配備される車両付近でのトイレの順番待ちを減らし、特に炎天下や悪天候下において利用者の体調不良を防止できる。
【0015】
本発明の第8の実施の形態は、第5の実施の形態によるトイレカーシステムにおいて、トイレの利用状況に関する利用情報を取得する利用情報取得手段を備え、利用情報が通信機から情報処理装置へ送信され、情報処理装置は、利用情報に基づくトイレの利用回数を配備位置と対応付けて記憶装置に記憶し、ユーザーからの要求に応じて利用回数と配備位置を含む利用履歴を所定画面に表示するものである。
本実施の形態によれば、車両管理担当者等は、配備中の車両ごとの利用状況を随時確認し、それに応じて車両の変更や台数の増減を行うことで、トイレの待ち時間を減らすなどトイレ環境の改善を図ることができる。また、配備の計画段階においては、過去の利用履歴を参照することでトイレ需要の想定精度を高め、配備位置や台数を事前に最適化することができる。
【0016】
本発明の第9の実施の形態は、第5の実施の形態によるトイレカーシステムにおいて、トイレ内の室温又はトイレ外の外気温の少なくとも一方を測定する温度計を備え、測定された室温又は外気温が通信機から情報処理装置へ送信され、情報処理装置は、室温又は外気温を所定画面に表示するものである。
本実施の形態によれば、車両の管理担当者等は、トイレ内の室温やトイレ外の外気温を指標として、例えば冬季においては清水タンクや配管類に凍結防止対策を施すことができる。
【実施例0017】
以下、本発明の一実施例によるトイレカーシステムについて説明する。
図1は本実施例によるトイレカーシステムの利用形態の概念図、
図2はトイレカーの外観図、
図3はトイレカーの室内配置図、
図4はタンク類の設置状態を示す図である。
トイレカーシステムは、キャビン11の後方に位置する荷台部分にトイレ20が備え付けられた車両(トイレカー)10と、データセンター等に設置され車両10のトイレ20に関する情報を処理してユーザーに提供する情報処理装置40を備える。
車両10は、自走式のため、地面置きの仮設トイレと比べて設置や撤収が容易、設置後の状況変化に応じた場所の変更要請に機動的に対応可能、し尿処理場や水源まで自走可能等といった利点がある。また、キャンピングカーやトラックのような外見をしているため、地面置きの仮設トイレよりも使用への抵抗感が少なく、トイレ控えや飲食控えによる健康被害を減らすことができる。
車両10には、インターネットに接続した通信機50と、GPS等の自車位置情報取得手段60が備えられており、自車位置情報等の稼働データが通信機50から情報処理装置40に送信される。車両10の位置は、計画された配備位置を情報処理装置40に手入力することも可能であるが、車両10は上述のように機動的に場所を移動可能であり当初の配備位置から移動している場合があるため、情報処理装置40において、自車位置情報取得手段60により取得された自車位置情報に基づいて車両10の位置を特定することで、車両10の最新の配備位置を取得することができる。また、車両10の最新の配備位置を取得できることで、車両管理担当者等は、突発的なトイレの設置要請が発生した際にも、効率よく車両10の配置指示を行うことができる。
なお、車両10の稼働データの一部は、車両10が配備されている場所において利用者が見えるように設置したデジタルサイネージ等の表示装置70に表示させることができる。
【0018】
情報処理装置40は、インターネットに接続されており、クラウドサーバーやデータベース等で構成され、車両10のトイレ20に関する情報をWebサイトやアプリケーションソフト等の所定画面に表示する機能や、パソコンやタブレット等の情報端末へメール等による通知を行う機能等をもつ。
これにより、車両10を管理する民間企業や地方自治体の担当者、また水補給や汚物回収を請負う清掃業者の担当者等は、インターネットに繋がった情報端末があれば、場所や時間を問わず、Webサイト等にアクセスして車両10のトイレ20に関する各種情報を確認したり、通知を受け取ったりすることができる。
【0019】
車両10に備え付けられているトイレ20は、荷台全体を覆うように設けられた箱型の室内空間の中に、便器21と、手洗い場22と、便器21の洗浄用水や手洗い場22用の水を貯留する清水タンク(給水タンク)23と、便器21に流された水や排泄物を含む汚物を貯留する便槽タンク(汚水タンク)24と、清水貯量測定器25と、汚物貯量測定器26と、トイレ20の利用者が緊急時に外部へ連絡するための緊急連絡手段27と、トイレ20内の照明などに電力を供給するバッテリー28と、バッテリー28の出力電圧を変換するDCDCコンバータ29と、バッテリー28の残量を測定する電池残量測定器30と、トイレ20の利用状況に関する情報を取得する利用情報取得手段31と、室温又は外気温を計測する温度計32と、バッテリー28や通信機50等を制御するコントローラー33と、緊急連絡手段27や利用情報取得手段31等から無線送信されるデータを受信するIoT受信機34を備える。また、車両10の側面にはトイレ20のメンテナンス用ハッチ35が設けられ、車両10の後面にはトイレ20の出入口36が設けられている。
便器21には、小便器21Aと大便器21Bがあり、大便器21Bは鍵の掛かる個室に設置されている。
清水貯量測定器25、汚物貯量測定器26、DCDCコンバータ29、電池残量測定器30、温度計32、及びIoT受信機34は、コントローラー33と接続している。
【0020】
清水タンク23及び便槽タンク24は、便器21や手洗い場22が設置されている区画とは別の区画に設置されており、メンテナンス用ハッチ35を開けるとアクセスできる。
清水タンク23へは、水道ホースやポリタンクを用いて給水可能である。清水タンク23は便槽タンク24よりも上方に設置されており、両者を繋ぐ配管の途中に設けられた洗浄バルブ37を開けると清水タンク23の水が便槽タンク24内に流れ、便槽タンク24内の汚れを落とせるようになっている。
便槽タンク24の上部には吸引口24Aが設けられている。吸引口24Aには、内部の汚物を排出又は汲み取る際に、排出ホース(ドレンホース)、又は汚物回収車(バキュームカー)のホースが接続される。なお、排出ホースを用いた排出は、車両10をし尿処理場まで自走させ、し尿処理場にて行われる。
【0021】
清水貯量測定器25は、清水タンク23の貯量の測定に用いる。本実施例における清水貯量測定器25は二つの静電容量センサであり、清水タンク23の中が見える窓の部分において、満水時の1/3の高さに第一の静電容量センサ25Aが配置され、満水時の2/3の高さに第二の静電容量センサ25Bが配置されている。清水貯量測定器25はコントローラー33に有線接続されており、清水貯量測定器25の出力(ON/OFF)は、車両10の稼働データとして、コントローラー33を介して通信機50から情報処理装置40へ逐次送信される。
汚物貯量測定器26は、便槽タンク24の貯量の測定に用いる。本実施例における汚物貯量測定器26は二つの静電容量センサであり、便槽タンク24の中が見える窓の部分において、満杯時の1/3の高さに第三の静電容量センサ26Aが配置され、満杯時の2/3の高さに第四の静電容量センサ26Bが配置されている。汚物貯量測定器26はコントローラー33に有線接続されており、汚物貯量測定器26の出力(ON/OFF)は、車両10の稼働データとして、コントローラー33を介して通信機50から情報処理装置40へ逐次送信される。
【0022】
情報処理装置40は、清水貯量測定器25の出力状況と汚物貯量測定器26の出力状況に基づいて清水タンク23と便槽タンク24のそれぞれの貯量を判断し、Webサイトやアプリケーションソフトの所定画面に、車両10の配備位置と共に、清水タンク23の貯量(水の残量)と便槽タンク24の貯量(溜まった汚物の量)をリアルタイムに表示する。
例えば、清水タンク23の貯量については、第一の静電容量センサ25Aと第二の静電容量センサ25Bが共にON(反応有り)であれば水が2/3以上残っている状態であることを示す文字(例として「Full」)がWebサイト等の所定画面に表示され、第一の静電容量センサ25AがONで第二の静電容量センサ25BがOFF(反応無し)であれば水が1/3以上2/3未満残っている状態であることを示す記号(例として「-」)が所定画面に表示され、第一の静電容量センサ25Aと第二の静電容量センサ25Bが共にOFFであれば水が1/3未満になった状態であることを示す文字(例として「Empty」)が所定画面に表示される。なお、第一の静電容量センサ25AがOFFで第二の静電容量センサ25BがONの場合は、所定画面にエラーが表示されるようにしてもよい。
また、便槽タンク24の貯量については、第三の静電容量センサ26Aと第四の静電容量センサ26Bが共にOFFであれば空に近い状態であることを示す文字(例として「Empty」)が所定画面に表示され、第三の静電容量センサ26AがONで第四の静電容量センサ26BがOFFであれば汚物が1/3以上2/3未満溜まった状態であることを示す記号(例として「-」)が所定画面に表示され、第三の静電容量センサ26Aと第四の静電容量センサ26Bが共にONであれば汚物が2/3以上溜まった状態であることを示す文字(例として「Full」)が所定画面に表示される。なお、第三の静電容量センサ26AがOFFで第四の静電容量センサ26BがONの場合は、所定画面にエラーが表示されるようにしてもよい。
また情報処理装置40は、第一の静電容量センサ25Aと第二の静電容量センサ25Bが共にOFFになった場合は、予め登録されている宛先に対して、清水タンク23における水の貯量が所定以下となったことを、その車両10の配備位置と共にメール等により通知する。なお、第一の静電容量センサ25AがOFFで第二の静電容量センサ25BがONとなった場合は、予め登録されている宛先に対して、清水貯量測定器25にエラーが生じたことがメール等により通知されるようにしてもよい。
また情報処理装置40は、第三の静電容量センサ26Aと第四の静電容量センサ26Bが共にONになった場合は、予め登録されている宛先に対して、便槽タンク24における汚物の貯量が所定以上となったことを、その車両10の配備位置と共にメール等により通知する。なお、第三の静電容量センサ26AがOFFで第四の静電容量センサ26BがONとなった場合に、予め登録されている宛先に対して、汚物貯量測定器26にエラーが生じたことがメール等により通知されるようにしてもよい。
【0023】
このように、清水タンク23内の水量が所定値を下回った場合や、便槽タンク24内の汚物量が所定値を上回った場合には、車両管理担当者等が持つ情報端末に通知が届くため、車両管理担当者等は、清水タンク23の水切れや便槽タンク24のオーバーフローが生じる前に、水の補給や、汚物の回収/排出を行うことができる。また、対応が実際に必要となったときに補給や回収/排出作業を行えるため、水量や汚物量に関わらず定期的に補給や回収/排出を行う場合や、タンクのレベルを定期的に確認する場合に比べて、作業効率を向上させることができる。
さらに、Webサイト等の所定画面には清水タンク23の貯量と便槽タンク24の貯量がリアルタイムに表示されるため、車両管理担当者等は、補給水車や汚物回収車の空き状況や作業予定状況等を考慮して、通知が届く前に補給や回収/排出作業の準備や前倒しに着手することも可能である。また、各車両10の配備位置や清水タンク23及び便槽タンク24におけるリアルタイムの貯量状態を勘案して優先度をつけ、その優先度に応じた補給計画又は回収/排出計画(補給水車や汚物回収車の巡回ルート等)を策定することで、特に車両10の配備位置が点在している場合における作業効率を向上できる。
なお、清水貯量測定器25や汚物貯量測定器26は、静電容量センサに限らず、電波式センサやフロート式センサなど、他方式のセンサを用いた構成とすることもできる。
【0024】
本実施例では、緊急連絡手段27としての非常ボタンが大便器21Bの設置された個室の壁面に設けられている。非常ボタン27が押されると、車両10の稼働データとして、トイレ20にて緊急事態が発生したことを伝える緊急信号が、IoT受信機34を介して通信機50から情報処理装置40に送信される。
緊急信号を受信した情報処理装置40は、Webサイト等の所定画面に、緊急事態が発生したことを示す文字や記号等と共に、非常ボタン27が押された車両10の配備位置等を表示する。また同時に、予め登録されている宛先に対して、トイレ20にて緊急事態が発生したことを、その車両10の配備位置と共にメール等により通知する。これにより、利用者に体調不良等の緊急事態が発生した場合に、車両管理担当者等が早期に対応することが可能となる。
なお、シングルボードコンピュータ等により構成された受信機を表示装置70に接続し、その受信機が非常ボタン27からの緊急信号を受信できるようにした場合は、情報処理装置40を介さずとも表示装置70にて緊急事態の発生を知らせることができる。
【0025】
バッテリー28は、車両用バッテリーとは別の架装用のサブバッテリーである。トイレ20の各機器の動作に必要な電力はバッテリー28から供給されるため、車両10のトイレ20は、車両エンジンをOFFにした状態で使用可能である。
バッテリー28の残量は電池残量測定器30によって測定される。電池残量測定器30の測定結果は、車両10の稼働データとして、IoT受信機34を介して通信機50から情報処理装置40へ逐次送信される。
情報処理装置40は、受信した測定結果に基づいて、Webサイト等の所定画面に、バッテリー28の残量をリアルタイムに表示する。また、バッテリー28の残量が所定以下となった場合は、予め登録されている宛先に対して、バッテリー28の残量が所定以下になったことを、その車両10の配備位置と共にメール等により通知する。通知を受けた車両管理担当者等がバッテリー28の充電を行うことにより、電池切れによってトイレ20の使用に支障が出ることを回避できる。また、車両管理担当者等が各車両10を定期的に見回ってバッテリー28の残量確認を行う手間を省くことができる。なお、バッテリー28の充電は、車両エンジンをONにするか、又は外部電源を接続することにより自動的に開始される。
【0026】
利用情報取得手段31は、大便器21Bが設置されている個室の利用状況の取得に用いる。本実施例では、利用情報取得手段31として、個室の施錠と開錠を検知する施開錠センサが個室のロック機構と一体的に設けられており、個室が施錠又は開錠されるたびに施開錠センサから信号が出力される。この信号(利用情報)は、車両10の稼働データとして、IoT受信機34を介して通信機50から情報処理装置40へ毎回送信される。
情報処理装置40は、利用情報に基づいて、Webサイト等の所定画面に個室の空き情報をリアルタイムに表示する。これにより、車両管理担当者等はトイレ20が使用中か否かを遠方監視することができる。また、利用者が所定画面にアクセスしてトイレ20の空き状況を確認できるようにしてもよい。
また情報処理装置40は、利用情報に基づいて、各トイレ20の施錠から開錠までの継続時間をカウントして、継続時間が所定以上となった場合は、予め登録されている宛先に対して、所定時間以上にわたって使用中となっているトイレ20の個室があることを、その車両10の配備位置と共にメール等により通知することも可能である。これにより、車両管理担当者等は、利用者の体調不良等の異常発生を早期に検知して対応することができる。
【0027】
さらに、情報処理装置40は、施開錠センサ31から出力される信号(利用情報)に基づき、施錠と開錠の一セットを利用一回分としてカウントすることで車両10ごとのトイレ20の利用回数を導出し、導出した利用回数を配備位置と対応付けてデータベースに格納する。そして、ユーザーから要求があった場合は、利用回数と配備位置を含む利用履歴をWebサイト等の所定画面に表示する。
これにより、車両管理担当者等は、配備中の車両10ごとの利用状況を随時確認し、それに応じて車両10の変更や台数の増減を行うことで、トイレ20の待ち時間を減らすなどトイレ環境の改善を図ることができる。例えば、便器21が複数設置されている大型トイレカーの利用回数が当初想定よりも少ない場合は、それよりも便器21の数が少ない中・小型トイレカーと交換したり、中・小型トイレカーの利用回数が当初想定よりも多い場合は、大型トイレカーと交換するか、又は中・小型トイレカーを増車する等の対応を適切に行うことができる。
また、ユーザーは、データベースに蓄積されている過去のトイレ20の利用履歴をWebサイト等の所定画面で確認することもできる。これにより車両管理担当者等は、避難所や花火大会等に車両10を派遣するにあたっての計画段階において、同一規模の避難所又は過去の花火大会等における利用履歴を参照して検討することで、今回の現場におけるトイレ20の需要の想定精度を高め、配備位置や台数を事前に最適化することができる。
また情報処理装置40は、車両10ごとの所定期間における清水タンク23への水の補給頻度、便槽タンク24に溜まった汚物の回収/排出頻度、バッテリー28の充電頻度、外気温、室温、及び天候等の履歴も配備位置と対応付けて記憶装置に記憶し、ユーザーからの要求に応じてこれらの履歴を所定画面に表示することもできる。これにより、車両管理担当者等は、車両10の配備位置や台数の最適化をより一層図ることができる。
【0028】
トイレ20の個室の空き情報は、表示装置70にもリアルタイムに表示することができる。表示装置70を例えば避難所内に設置しておけば、利用者は表示装置70に表示されている空き情報を確認してから車両10に向かうことができるため、屋外に配備される車両10付近でのトイレ20の順番待ちを減らし、特に炎天下や悪天候下において利用者の体調不良を防止できる。
また、上記同様に受信機を表示装置70に接続し、その受信機が施開錠センサ31からの信号を受信できるようにした場合は、情報処理装置40を介さずとも表示装置70にトイレ20の空き状況等をリアルタイムに表示することができる。
なお、利用情報取得手段31は、施開錠センサに限らず、赤外線センサや温度センサ等、他方式のセンサを用いた構成とすることもできる。
【0029】
温度計32は、トイレ20内の室温を測定する。温度計32の測定データは、車両10の稼働データとして、通信機50から情報処理装置40へ定期的に送信される。
情報処理装置40は、受信した測定データに基づいて、Webサイト等の所定画面にトイレ20の室温をリアルタイムに表示する。これにより、車両管理担当者等はトイレ20の室温を指標として、例えば冬季においては清水タンク23や配管類に凍結防止対策を施すことができる。なお、トイレ20の室温が所定温度以下となった場合は、予め登録されている宛先に対して、トイレ20の室温が所定温度以下となったことを、その車両10の配備位置と共にメール等により通知することも可能である。
また、温度計32をトイレ20外に設置して外気温を測定し、外気温を凍結防止対策等の指標として活用してもよい。
また情報処理装置40は、車両10が配備されている場所の気象情報をインターネット等を通じて入手し、Webサイト等の所定画面に気象情報を提供することもできる。この場合、車両管理担当者等は、提供された気象情報に基づいてトイレ20のエアコンの設定温度を変更するなど、トイレ環境の改善を図ることができる。
また、トイレ20内の室温、トイレ20外の外気温、及び配備場所の気象情報は表示装置70にもリアルタイムに表示することができる。これにより利用者は、表示装置70に表示されている温度や気象情報を確認し、適切な服装で車両10に向かうことなどができる。