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  • 特開-エレベータ給電システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000827
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】エレベータ給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20231226BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20231226BHJP
【FI】
H02J9/06 110
H02J50/10
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099763
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】井上 祐紀
【テーマコード(参考)】
5G015
【Fターム(参考)】
5G015GA06
5G015HA15
5G015JA05
5G015JA32
(57)【要約】
【課題】停電時に、制御盤と乗りかご制御装置との間の無線通信をより長い時間行うことができるエレベータ給電システムを提供する。
【解決手段】エレベータ給電システム(100)は、乗りかご(20)に設けられ、エレベータシステム全体の動作を制御するエレベータ制御盤(10)と無線通信を行う乗りかご制御装置(21)と、乗りかご制御装置(21)に電力を非接触で給電する非接触給電装置(40)と、停電時にエレベータ制御盤(10)に給電する無停電電源装置(30)と、を備え、非接触給電装置(40)は、少なくとも停電時に、無停電電源装置(30)から供給された電力を用いて給電する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータシステムの乗りかごに設けられ、前記エレベータシステム全体の動作を制御するエレベータ制御盤と無線通信を行う乗りかご制御装置と、
前記乗りかご制御装置に電力を非接触で給電する非接触給電装置と、
停電時に前記エレベータ制御盤に給電する無停電電源装置と、を備え、
前記非接触給電装置は、少なくとも前記停電時に、前記無停電電源装置から供給された電力を用いて給電する、
エレベータ給電システム。
【請求項2】
前記非接触給電装置は、停電時以外は商用電源から給電されている、
請求項1に記載のエレベータ給電システム。
【請求項3】
前記非接触給電装置の電源入力の接続先を切り替える切替部を備え、
前記切替部は、前記商用電源による給電の停止を検知すると、前記接続先を前記商用電源から前記無停電電源装置に切り替える、
請求項2に記載のエレベータ給電システム。
【請求項4】
停電時において、前記乗りかご制御装置は、前記乗りかごに設けられている少なくとも1つの電気機器の消費電力を下げる制御を行う、
請求項1から3のいずれか1項に記載のエレベータ給電システム。
【請求項5】
停電時において、前記乗りかご制御装置は、前記乗りかごの内部を照明する照明装置、前記乗りかごの内部の空調を行う空調装置、前記乗りかご内の換気を行うファン、および、アクティブローラガイド、の少なくともいずれか1つの消費電力を下げる制御を行う、
請求項4に記載のエレベータ給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗りかごに非接触給電を行うエレベータ給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータの乗りかごへの給電や通信はトラベリングケーブルを介して行われていた。しかしながら、建物の高層化に伴い、地震時にトラベリングケーブルが揺れて塔内機器に接触する可能性が高まっている。これに対して、乗りかごへの給電を非接触とし、制御盤と乗りかごとの通信を無線通信とした、トラベリングケーブルの無いエレベータが提案されている。
【0003】
一方、特許文献1には、制御盤と乗りかごとの通信を無線通信とした場合において、エレベータの安全に関わる第1のデータを含むパケットが生成されるとともに、他のエレベータの制御に関わる第2のデータおよびエレベータの制御に関わらない第3のデータは、第1のデータに組み合わされパケットとして伝送される技術が開示されている。これにより、特許文献1に記載されている技術は、安全にかかわるデータを優先的に伝送する安全通信が実現されている。また、一般的なPROFIsafe(登録商標)などのプロトコルで安全通信が行われることも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-048474
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような安全通信を採用するエレベータでは、制御盤と乗りかご制御装置との無線通信が途切れると、上記無線通信を復旧するために、通信の自動復旧モードの実行、または、作業員による安全確認やリセット操作が必要となる。つまり、上記無線通信が一旦途切れてしまうと、上記無線通信を復旧するために一定の時間を要する。
【0006】
そのため、停電により制御盤側および乗りかご制御装置側のいずれか一方の無線通信装置への給電が途絶えてしまうと、上記無線通信が途切れ、停電時の所定の管制運転(例えば、荷下げ方向に運転し、最寄階停止し、戸開する、等)が遅れる可能性がある。
【0007】
本発明の一態様は、停電時に、制御盤と乗りかご制御装置との間の無線通信をより長い時間行うことができるエレベータ給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るエレベータ給電システムは、エレベータシステムの乗りかごに設けられ、前記エレベータシステム全体の動作を制御するエレベータ制御盤と無線通信を行う乗りかご制御装置と、前記乗りかご制御装置に電力を非接触で給電する非接触給電装置と、停電時に前記エレベータ制御盤に給電する無停電電源装置と、を備え、前記非接触給電装置は、少なくとも前記停電時に、前記無停電電源装置から供給された電力を用いて給電する。
【0009】
上記構成によれば、停電時において、エレベータ制御盤および乗りかご制御装置が、共通の無停電電源装置から給電される。これにより、停電時にエレベータ制御盤および乗りかご制御装置のどちらか一方が他方に比べて早期にシャットダウンすることを抑制することができる。その結果、停電時において、制御盤と乗りかご制御装置との間の無線通信をより長い時間行うことができるエレベータ給電システムを提供することができる。
【0010】
本発明の他の態様に係るエレベータ給電システムでは、前記非接触給電装置は、停電時以外は商用電源から給電されていてもよい。
【0011】
上記構成によれば、停電時以外の通常時においては、非接触給電装置は商用電源から給電されている。これにより、非接触給電装置は通常時には無停電電源装置の容量の影響を受けないので、通常時は大容量の電力を乗りかご制御装置に給電することができる。
【0012】
本発明の他の態様に係るエレベータ給電システムでは、前記非接触給電装置の電源入力の接続先を切り替える切替部を備え、前記切替部は、前記商用電源による給電の停止を検知すると、前記接続先を前記商用電源から前記無停電電源装置に切り替えてもよい。
【0013】
上記構成によれば、停電時において、非接触給電装置の電源入力の接続先を商用電源から無停電電源装置に自動的に切り替えることができる。
【0014】
本発明の他の態様に係るエレベータ給電システムでは、停電時において、前記乗りかご制御装置は、前記乗りかごに設けられている少なくとも1つの電気機器の消費電力を下げる制御を行ってもよい。
【0015】
上記構成によれば、停電時に、乗りかごにおける消費電力を抑えることができる。これにより、非接触給電装置からの給電量を低減することができるので、無停電電源装置からの給電によるエレベータ制御盤および乗りかご制御装置の稼働可能時間をより長くすることができる。
【0016】
本発明の他の態様に係るエレベータ給電システムでは、停電時において、前記乗りかご制御装置は、前記乗りかごの内部を照明する照明装置、前記乗りかごの内部の空調を行う空調装置、前記乗りかご内の換気を行うファン、および、アクティブローラガイド、の少なくともいずれか1つの消費電力を下げる制御を行ってもよい。
【0017】
上記構成によれば、停電時において、緊急時には必要性の低い電気機器の消費電力を下げることができるので、安全性を損なうことなく、無停電電源装置の充電消費量をより少なくすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、停電時に、制御盤と乗りかご制御装置との間の無線通信をより長い時間行うことができるエレベータ給電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係るエレベータ給電システムの機能ブロック図である。
図2】上記エレベータ給電システムの電気的な接続例を示す模式図である。
図3】上記エレベータ給電システムの動作の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔実施形態〕
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。ただし、以下の説明は本発明に係るエレベータ給電システム100の一例であり、本発明の技術的範囲は図示例に限定されるものではない。
【0021】
<エレベータ給電システム100>
エレベータ給電システム100は、乗りかご20への給電を非接触とし、エレベータ制御盤10と乗りかご制御装置21とが無線通信を行うエレベータシステムに給電を行うシステムである。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係るエレベータ給電システム100の機能ブロック図である。図1に示すようにエレベータ給電システム100は、エレベータ制御盤10と、乗りかご20と、無停電電源装置30と、非接触給電装置40と、切替部50と、を備えている。
【0023】
エレベータ給電システム100において、各構成の数は特に制限されない。例えば複数の乗りかご20に対して1つのエレベータ制御盤10が備えられていてもよく、複数のエレベータ制御盤10および乗りかご20に対して、1つの無停電電源装置30が設けられていてもよい。
【0024】
なお、当該エレベータ給電システム100を含むエレベータシステムは、さらに、図示しない構成、例えば、乗りかご20を昇降させるモータおよび乗場の操作盤等を含む。
【0025】
(無停電電源装置30)
無停電電源装置30(UPS:Uninterruptible Power Supply)は、少なくとも停電時にエレベータ制御盤10および非接触給電装置40に給電する。無停電電源装置30は、制御部31と、停電検知部32と、給電部33とを備えている。
【0026】
停電検知部32は、停電を検知する。具体的には、停電検知部32は、商用電源200による給電の停止を停電として検知する。停電検知部32は、停電を検知すると、停電が起こったことを示す停電情報を制御部31に出力する。
【0027】
給電部33は、後述する給電制御部312の制御に基づき、停電時に、無停電電源装置30が備えるバッテリーに蓄積された電力により、無停電電源装置30に接続されている各機器に給電する。
【0028】
制御部31は、無停電電源装置30の各部を統括的に制御する。制御部31の機能は、記憶部(図示無し)に記憶されたプログラムを、CPU(Central Processing Unit)が実行することで実現されてよい。制御部31は、停電検知部32によって停電が検知されると、その情報を例えばLAN(Local Area Network)やUSB(Universal Serial Bus)などを経由してエレベータ制御盤10に送信する。また、制御部31は、給電制御部312を備えている。
【0029】
給電制御部312は、無停電電源装置30が行う給電を制御する。給電制御部312は、通常時には、商用電源200からの電力を受電して、無停電電源装置30に接続されている各機器に出力(給電)する。給電制御部312は、停電検知部32が停電を検知すると、無停電電源装置30が備えるバッテリーに蓄積された電力を無停電電源装置30に接続されている各機器に出力する。
【0030】
図2は、エレベータ給電システム100の電気的な接続例を示す模式図である。図2に示すように、無停電電源装置30の入力側には商用電源200が接続され、出力側にはエレベータ制御盤10および切替部50が接続されている。
【0031】
(非接触給電装置40)
非接触給電装置40は、乗りかご制御装置21に電力を非接触で給電する。非接触給電装置40は、非接触送電部41を備えている。
【0032】
以下に、非接触給電装置40による乗りかご20への非接触給電の一例を示す。例えば、図2に示すように、非接触送電部41は、乗りかご20が昇降する塔内に、昇降方向に沿って配置される。非接触送電部41には非接触給電装置40により交流電流が流される。乗りかご20には、乗りかご20の移動中も含め、非接触受電部25が非接触送電部41に常に近接するように設けられ、非接触送電部41と非接触受電部25とが近接することで、電磁誘導により非接触受電部25に起電力が発生する。これにより、非接触給電装置40は、乗りかご20に非接触で給電を行う。
【0033】
非接触給電装置40は、停電時以外は商用電源200から給電されている。また、非接触給電装置40は、少なくとも停電時に、無停電電源装置30から供給された電力を用いて乗りかご制御装置21に給電する。
【0034】
停電時は、切替部50により、非接触給電装置40の電源入力の接続先が商用電源200から無停電電源装置30に切り替えられる。そのため、停電時は無停電電源装置30から非接触給電装置40に電力が供給される。これにより、非接触給電装置40は、少なくとも停電時に、無停電電源装置30から供給された電力を用いて乗りかご制御装置21に給電することができる。
【0035】
切替部50による非接触給電装置40の電源入力の接続先の切り替えについて、詳しく説明する。
【0036】
(切替部50)
切替部50は、非接触給電装置40の電源入力の接続先を切り替える。切替部50は、停電検知部51と、スイッチ52と、を備えている。
【0037】
停電検知部51は、停電を検知する。具体的には、停電検知部51は、商用電源200による給電の停止を停電として検知する。停電検知部51は、停電を検知すると、停電情報をスイッチ52に出力する。
【0038】
スイッチ52は、停電検知部51が商用電源200による給電の停止を検知すると、非接触給電装置40の電源入力の接続先を商用電源200から無停電電源装置30に切り替える。
【0039】
図2に示すように、スイッチ52は、スイッチ52aおよびスイッチ52bを有する。スイッチ52aがONされると、商用電源200と非接触給電装置40の入力側とが接続され、スイッチ52aがOFFされると、商用電源200と非接触給電装置40の入力側とが切り離される。スイッチ52bがONされると、無停電電源装置30の出力側と非接触給電装置40の入力側とが接続され、スイッチ52bがOFFされると、無停電電源装置30の出力側と非接触給電装置40の入力側とが切り離される。
【0040】
通常時は、図2に示すように、スイッチ52aがONされ、スイッチ52bがOFFされている。そのため、通常時は、商用電源200と非接触給電装置40の入力側とが接続され、非接触給電装置40は商用電源200から給電される。これにより、通常時は、非接触給電装置40への給電は無停電電源装置30の容量の影響を受けないため、非接触給電装置40は大容量の電力を乗りかご制御装置21に給電することができる。
【0041】
一方、停電検知部51が停電を検知した場合、スイッチ52aがOFFされ、スイッチ52bがONされる。そのため、停電時は、無停電電源装置30の出力側と非接触給電装置40の入力側とが接続され、非接触給電装置40は無停電電源装置30から給電される。すなわち、停電時は、エレベータ制御盤10および乗りかご制御装置21が、共通の無停電電源装置30から給電される。
【0042】
なお、図2では切替部50は単独でエレベータ給電システム100に設けられているが、上記に限らない。例えば、切替部50はエレベータ制御盤10内に設けられていてもよい。
【0043】
(エレベータ制御盤10)
エレベータ制御盤10は、エレベータシステム全体の動作を制御する。エレベータ制御盤10は制御部11と、記憶部12と、無線通信部13と、受電部14と、を備えている。
【0044】
記憶部12は、エレベータ制御盤10が実行する各種のプログラム、およびプログラムによって使用されるデータを格納する。無線通信部13は、通信制御部113の制御に基づき、乗りかご20の無線通信部24と無線により各情報の送受信を行う。受電部14は、無停電電源装置30から電力を受電する。エレベータ制御盤10において、無停電電源装置30から受電した電力は、受電部14を介してエレベータ制御盤10の各構成に供給される。
【0045】
(制御部11)
制御部11はエレベータ制御盤10の各部を統括的に制御する。制御部11の機能は、記憶部12に記憶されたプログラムを、CPUが実行することで実現されてよい。制御部11は、情報取得部111と、運行制御部112と、通信制御部113と、を備えている。
【0046】
情報取得部111は、乗りかご20の運行情報を取得する。乗りかご20の運行情報は、乗りかご20の現在位置階情報および現在運転方向情報等を含む。
【0047】
情報取得部111は、無停電電源装置30により停電が検知されると、停電情報を無停電電源装置30から取得する。
【0048】
なお、切替部50がエレベータ制御盤10内に設けられている場合、情報取得部111は、停電検知部51により停電が検知されると、停電情報を切替部50から取得する。
【0049】
運行制御部112は、乗りかご20の運行を制御する。運行制御部112は、例えば、利用者により呼び登録がされている場合、乗りかご20の運行情報および利用者の呼び登録に基づき、乗りかご20を利用者の乗車階から行先階まで運行するよう乗りかご20を制御する。
【0050】
また、運行制御部112は、情報取得部111が停電情報を取得した場合、所定の管制運転を行うように乗りかご20の運行を制御する。所定の管制運転では、運行制御部112は、例えば、乗りかご20を荷下げ方向に運転し、最寄階に停止させ、戸開する等の運転を行う。
【0051】
また、運行制御部112は、情報取得部111が停電情報を取得した場合、その旨を停電発生情報として、無線通信部13を介して乗りかご制御装置21に送信するように通信制御部113を制御する。
【0052】
通信制御部113は、エレベータ制御盤10の通信を制御する。具体的には、通信制御部113は、乗りかご制御装置21とエレベータ制御盤10とが無線通信を行うように無線通信部13を制御する。通信制御部113は、例えば、乗りかご20の運行状態情報や、停電発生情報を送受信するよう無線通信部13を制御する。ここで、乗りかご20の運行状態情報は、乗りかご20の位置情報や移動状態情報(移動方向または停止状態)等を含む。
【0053】
なお、図示にはないが、エレベータ制御盤10は瞬停回避部を備えている。瞬停回避部は、供給される電力に瞬間的な電圧変動が生じても影響を受けずに連続動作が可能な程度のバッテリーまたはキャパシタを備えている。当該瞬停回避部は、例えば、エレベータ制御盤10内に組み込まれていてもよい。
【0054】
(乗りかご20)
乗りかご20は、エレベータ給電システム100を有するエレベータシステムにおいて例えば、利用者を乗せて塔内を昇降する筐体である。乗りかご20は、乗りかご制御装置21と、電気機器26と、を備えている。
【0055】
電気機器26は、図1に示すように、乗りかご20の内部を照明する照明装置261、乗りかご20の内部の空調を行う空調装置262、乗りかご20内の換気を行うファン263、および、乗りかご20を水平方向に変位させることで乗りかご20の振動を抑えるアクティブローラガイド264等を含む。
【0056】
(乗りかご制御装置21)
乗りかご制御装置21は、エレベータ給電システム100を有するエレベータシステムの乗りかご20に設けられ、エレベータ制御盤10と無線通信を行い、乗りかご20全体の動作を制御する。乗りかご制御装置21は、制御部22と、記憶部23と、無線通信部24と、非接触受電部25と、を備えている。
【0057】
記憶部23は、乗りかご制御装置21が実行する各種のプログラム、およびプログラムによって使用されるデータを格納する。無線通信部24は、通信制御部223の制御に基づき、エレベータ制御盤10の無線通信部13と無線により各情報の送受信を行う。非接触受電部25は、非接触給電装置40から電力を非接触で受電する。乗りかご制御装置21において、非接触給電装置40から受電した電力は、非接触受電部25を介して電気機器26を含む乗りかご20の各構成に供給される。
【0058】
(制御部22)
制御部22は乗りかご20の各部を統括的に制御する。制御部22の機能は、記憶部23に記憶されたプログラムを、CPUが実行することで実現されてよい。制御部22は、情報取得部221と、機器制御部222と、通信制御部223と、を備えている。
【0059】
情報取得部221は、エレベータ制御盤10からの乗りかご20の運行状態情報を取得する。制御部22は、取得した運行状態情報により、運行状態に応じた扉の開閉動作、運行状態の乗りかご20内での表示や音声出力などを制御する。また、情報取得部221は、エレベータ制御盤10より無線通信部24を介して停電発生情報を取得する。
【0060】
機器制御部222は、記憶部23に予め記憶された設定に基づいて電気機器26を制御する。また、機器制御部222は、停電時において、乗りかご20に設けられている電気機器26である、照明装置261、空調装置262、ファン263、および、アクティブローラガイド264、の少なくともいずれか1つの消費電力を下げる制御を行う。
【0061】
具体的には、機器制御部222は、停電時において、照明装置261の照度を下げる、空調装置262およびファン263を停止する、アクティブローラガイド264の機能を停止する、等の制御を行い、電気機器26の消費電力を下げる。
【0062】
これにより、停電時に、乗りかご20における消費電力を抑えることができるので、非接触給電装置40からの給電量を低減することができる。その結果、無停電電源装置30からの給電によるエレベータ制御盤10および乗りかご制御装置21の稼働可能時間をより長くすることができる。
【0063】
上記のように停電時において、緊急時には必要性の低い電気機器26の消費電力を下げることにより乗りかご20の消費電力を下げることができるので、安全性を損なうことなく、無停電電源装置30の充電消費量をより少なくすることができる。
【0064】
また、無停電電源装置30の充電消費量をより少なくすることで、無停電電源装置30の必要容量を抑えることができる。さらに、乗りかご20への給電は、通常時には三相で行われるが、上記のように停電時に消費電力を下げることにより、単相での給電でも十分に動作できるようになる。すなわち、無停電電源装置30の入力を三相ではなく単相とすることも可能となるので、無停電電源装置30自体のコストを下げることができる。
【0065】
なお、停電時において消費電力を下げる電気機器26は上記に限らず、適宜設定することができる。また、乗りかご20は、瞬停回避部27を備えている。瞬停回避部27は、供給される電力に瞬間的な電圧変動が生じても影響を受けずに連続動作が可能な程度のバッテリーまたはキャパシタを備えている。
【0066】
通信制御部223は、乗りかご制御装置21の通信を制御する。具体的には、通信制御部223は、乗りかご制御装置21とエレベータ制御盤10とが無線通信を行うように無線通信部24を制御する。通信制御部223は、例えば、乗りかご20の運行状態情報および停電発生情報などの各種情報を送受信するよう無線通信部24を制御する。
【0067】
<エレベータ給電システムの動作の一例>
図3は、エレベータ給電システム100の動作の一例を示すフロー図である。図3に基づき、エレベータ給電システム100の動作の一例について説明する。
【0068】
まず、スイッチ52aがONされ、スイッチ52bがOFFされた状態で、エレベータシステムが稼働する(S01)。これにより、商用電源200から非接触給電装置40に給電される(S02)。
【0069】
次に、切替部50は、停電が発生した場合に停電を検知する(S03)。切替部50が停電を検知した場合(S03でYES)、切替部50は非接触給電装置40の電源入力の接続先を切り替え、非接触給電装置40は無停電電源装置30から給電される(S04)。
【0070】
その後、乗りかご制御装置21が乗りかご20の所定の電気機器26の消費電力を下げ(S05)、エレベータ制御盤10により乗りかご20が所定の管制運転を行うように制御される(S06)。
【0071】
なお、切替部50が停電を検知していない場合(S03でNO)、切替部50は停電の検知を継続する。
【0072】
(効果)
エレベータ給電システム100では、停電時において、エレベータ制御盤10および乗りかご制御装置21が、共通の無停電電源装置30から給電される。これにより、停電時にエレベータ制御盤10および乗りかご制御装置21のどちらか一方が他方に比べて早期にシャットダウンすることを抑制することができる。その結果、停電時において、エレベータ制御盤10と乗りかご制御装置21との間の無線通信をより長い時間行うことができるので、停電時における乗りかご20の所定の管制運転を確実に実行することが可能となる。
【0073】
また、このような効果は、災害時における建物内での被害を抑えることにつながり、例えば、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の目標11の「包摂的で安全かつ強靭で持続可能な都市および人間居住を実現する」等の達成にも貢献するものである。
【0074】
また、エレベータ制御盤10および乗りかご制御装置21それぞれに対して無停電電源装置30を設置する場合と比較して、設置コストを抑制することができる。
【0075】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
10 エレベータ制御盤
21 乗りかご制御装置
26 電気機器
30 無停電電源装置
40 非接触給電装置
50 切替部
52、52a、52b スイッチ
100 エレベータ給電システム
200 商用電源
261 照明装置
262 空調装置
263 ファン
264 アクティブローラガイド
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-09-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータシステムの乗りかごに設けられ、前記エレベータシステム全体の動作を制御するエレベータ制御盤と無線通信を行う乗りかご制御装置と、
前記乗りかご制御装置に電力を非接触で給電する非接触給電装置と、
停電時に前記エレベータ制御盤に給電する無停電電源装置と、を備え、
前記非接触給電装置は、前記乗りかごが昇降する塔内に、昇降方向に沿って配置される非接触送電部を有し、
前記乗りかご制御装置は、前記非接触送電部と近接することで、前記非接触送電部から給電される非接触受電部を有し、
前記非接触送電部と前記非接触受電部とは、前記乗りかごが前記塔内を移動中において常に近接するように設けられ、
前記無線通信は、前記乗りかご制御装置が有する無線通信部を介して行われ、前記無線通信部は前記乗りかご制御装置から電力を供給され、
前記非接触給電装置は、少なくとも前記停電時に、前記無停電電源装置から供給された電力を用いて給電する、
エレベータ給電システム。
【請求項2】
前記非接触給電装置は、停電時以外は商用電源から給電されている、
請求項1に記載のエレベータ給電システム。
【請求項3】
前記非接触給電装置の電源入力の接続先を切り替える切替部を備え、
前記切替部は、前記商用電源による給電の停止を検知すると、前記接続先を前記商用電源から前記無停電電源装置に切り替える、
請求項2に記載のエレベータ給電システム。
【請求項4】
停電時において、前記乗りかご制御装置は、前記乗りかごに設けられている少なくとも1つの電気機器の消費電力を下げる制御を行う、
請求項1から3のいずれか1項に記載のエレベータ給電システム。
【請求項5】
停電時において、前記乗りかご制御装置は、前記乗りかごの内部を照明する照明装置、前記乗りかごの内部の空調を行う空調装置、前記乗りかご内の換気を行うファン、および、アクティブローラガイド、の少なくともいずれか1つの消費電力を下げる制御を行う、請求項4に記載のエレベータ給電システム。
【請求項6】
前記無停電電源装置は、通常時には、商用電源からの電力を受電して前記エレベータ制御盤に給電し、停電時には前記無停電電源装置が備えるバッテリーに蓄積された電力を前記エレベータ制御盤に給電し、
前記非接触給電装置は、少なくとも前記停電時に、前記無停電電源装置が備えるバッテリーから供給された電力を用いて給電する、請求項3に記載のエレベータ給電システム。