(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008270
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】電源システムの制御方法及び電源システム
(51)【国際特許分類】
H02H 7/16 20060101AFI20240112BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20240112BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20240112BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20240112BHJP
【FI】
H02H7/16 E
H02J1/00 309H
B60L9/18 J
B60L3/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109996
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅野 雄一郎
【テーマコード(参考)】
5G053
5G165
5H125
【Fターム(参考)】
5G053AA09
5G053BA04
5G053CA08
5G053EB01
5G053EC01
5G053FA05
5G165BB01
5G165EA02
5G165GA02
5G165GA09
5H125AA01
5H125AC12
5H125BB00
5H125EE03
5H125EE06
(57)【要約】
【課題】Yコンデンサの電荷を十分に放電できる電源システムの制御方法を提供する。
【解決手段】負荷20に電力を出力する電源部11と、正極及び負極と接地電位30との間にそれぞれ介装される一組のYコンデンサ15B、15Cと、電源部11と負荷20との間に介装され、正極及び負極をそれぞれ断続する一組の正極スイッチ14P及び負極スイッチ14Nと、電源部11及び負極スイッチ14Nの間の電源ライン13と接地電位30との間に接続されるコンデンサ36を有し、電源部11と接地電位30との間の絶縁度を検出する絶縁検出回路35と、を備え、制御装置40は、電源システム1をシャットダウンするとき、正極スイッチ14Pをオフに制御すると共に負極スイッチ14Nをオンに制御してYコンデンサ15B、15Cの電荷を放電させ、負荷20に印加される電圧が所定電圧以下となった後に、負極スイッチ14Nをオフに制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源システムの制御方法であって、
前記電源システムは、正極及び負極からなる電源ラインを介して負荷に電力を出力する電源部と、前記正極及び前記負極と接地電位との間にそれぞれ介装される一組のYコンデンサと、前記電源部と前記負荷との間に介装され、前記正極及び前記負極をそれぞれ断続する一組の正極スイッチ及び負極スイッチと、前記電源部及び前記負極スイッチの間の電源ラインと前記接地電位との間に接続されるコンデンサを有し、前記電源部と前記接地電位との間の絶縁度を検出する絶縁検出回路と、前記正極スイッチ及び前記負極スイッチを制御する制御装置と、を備え、
前記電源システムをシャットダウンするとき、前記制御装置により、前記正極スイッチをオフに制御すると共に前記負極スイッチをオンに制御して一組の前記Yコンデンサの電荷を放電させ、
前記負荷に印加される電圧が所定電圧以下となった後に、前記負極スイッチをオフに制御する、
電源システムの制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電源システムの制御方法であって、
前記電源システムは、前記負荷の動作を制御する車両コントローラを備え、
前記電源システムをシャットダウンするとき、前記車両コントローラが前記負荷に関する故障を検出した場合は、検出した故障に応じて、前記負極スイッチをオンにしてからオフに制御にするまでのタイミングを決定し、決定した前記タイミングで、前記制御装置に、前記負極スイッチをオンオフ制御させる、
電源システムの制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の電源システムの制御方法であって、
前記車両コントローラが、前記負荷の電圧を取得できない故障を検出した場合は、
予め設定された最大時間が経過するまで、前記負極スイッチをオンに制御させる、
電源システムの制御方法。
【請求項4】
請求項2に記載の電源システムの制御方法であって、
前記車両コントローラが、前記負荷の電圧が低電圧となる故障を検出した場合は、
予め設定された最小時間が経過するまで、前記負極スイッチをオンに制御させる、
電源システムの制御方法。
【請求項5】
請求項2に記載の電源システムの制御方法であって、
前記車両コントローラが、前記負荷が過電流又は過電圧となる故障を検出した場合は、
前記負荷の電圧を検出し、検出した前記負荷の電圧に応じて、前記負極スイッチをオンからオフに制御するオフタイマーを設定し、
設定された前記オフタイマーが満了するまで、前記負極スイッチをオンに制御させる、
電源システムの制御方法。
【請求項6】
電源システムであって、
正極及び負極からなる電源ラインを介して負荷に電力を出力する電源部と、
前記正極及び前記負極と接地電位との間にそれぞれ介装される一組のYコンデンサと、
前記電源部と前記負荷との間に介装され、前記正極及び前記負極をそれぞれ断続する一組の正極スイッチ及び負極スイッチと、
前記電源部及び前記負極スイッチの間の電源ラインと前記接地電位との間に接続されるコンデンサを有し、前記電源部と前記接地電位との間の絶縁度を検出する絶縁検出回路と、
前記正極スイッチ及び前記負極スイッチをオンオフ制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記電源システムをシャットダウンするとき、前記正極スイッチをオフに制御すると共に前記負極スイッチをオンに制御して一組の前記Yコンデンサの電荷を放電させ、前記負荷に印加される電圧が所定電圧以下となった後に、前記負極スイッチをオフに制御する、
電源システム。
【請求項7】
請求項6に記載の電源システムであって、
前記負荷の動作を制御する車両コントローラを備え、
前記車両コントローラは、前記電源システムをシャットダウンするとき、前記負荷に関する故障を検出した場合は、検出した故障に応じて、前記負極スイッチをオンにしてからオフに制御にするまでのタイミングを決定し、決定した前記タイミングで、前記制御装置に、前記負極スイッチをオンオフ制御させる、
電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システムの制御方法及び電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
負荷に電力を供給する電源システムのノイズ対策として、電源ラインにYコンデンサを設けることが広く行われている。このような電源システムにおいて、メンテナンス等で電源システムのシャットダウンを行う場合には、Yコンデンサの電荷を放電しておく必要がある。
【0003】
特許文献1には、放電スイッチと放電抵抗とを備えるYコンデンサ放電回路を備え、放電が必要な場合に放電スイッチをオンとすることで、Yコンデンサの放電を実行させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
従来技術では、Yコンデンサの放電回路を備える場合であっても、正極側及び負極側のYコンデンサに充電された電荷にアンバランスが生じている場合、このアンバランスを解消して電荷を放電するのに、十分な放電時間が必要となる。また、回路構成によっては、十分な放電時間が経過した後であっても、アンバランスが解消されず、Yコンデンサに電荷が残ってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、Yコンデンサの電荷を十分に放電できる電源システムの制御技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、電源システムの制御方法に適用される。電源システムは、正極及び負極からなる電源ラインを介して負荷に電力を出力する電源部と、正極及び負極と筐体との間にそれぞれ介装される一組のYコンデンサと、電源部と負荷との間に介装され、正極及び負極をそれぞれ断続する一組の正極スイッチ及び負極スイッチと、電源部及び負極スイッチの間の電源ラインと接地電位との間に接続されるコンデンサを有し、電源部と接地電位との間の絶縁度を検出する絶縁検出回路と、正極スイッチ及び負極スイッチを制御する制御装置と、を備える。この電源システムの制御方法は、電源システムをシャットダウンするとき、正極スイッチをオフに制御すると共に負極スイッチをオンに制御して一組のYコンデンサの電荷を放電させ、負荷に印加される電圧が所定電圧以下となった後に、負極スイッチをオフに制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電源システムのシャットダウン時に、正極スイッチをオフに制御した後に、負荷に印加される電圧が所定電圧以下となるまで、負極スイッチをオンに制御する。このような制御により、正極及び負極のYコンデンサの電荷が均一でない場合であっても、負荷に印加される電圧に応じて負極スイッチをオンに制御することで、Yコンデンサの電荷を十分に放電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態の電源システムの説明図である。
【
図2】
図2は、制御装置が実行するフローチャートである。
【
図3】
図3は、車両コントローラが実行するフローチャートである。
【
図4】
図4は、オフタイマーの設定の説明図である。
【
図5】
図5は、車両コントローラが実行するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態の電源システム1の説明図である。
【0012】
電源システム1は、電源部11、メインリレー14、フィルタ回路15、負荷20、接地電位30、制御装置40及び車両コントローラ50を備えて構成される。
【0013】
電源部11は、バッテリ12と正極ライン13P及び負極ライン13Nからなる電源ライン13とを備える。電源部11は、バッテリ12から供給される直流電力を、電源ライン13を介して負荷20に出力する。バッテリ12は、直流の高電圧バッテリにより構成される。
【0014】
メインリレー14は、電源部11と負荷20との間の電源ライン13に介装され、電源部11と負荷20との間で電力の流通をオンオフする。メインリレー14は、正極ライン13Pに備えられて正極ライン13Pをオンオフする正極スイッチとしての正極リレー14Pと、負極ライン13Nに備えられて負極ライン13Nをオンオフする負極スイッチとしての負極リレー14Nとからなる。
【0015】
フィルタ回路15は、電源部11から負荷20へと出力される直流電流に含まれるノーマルモードノイズ及びコモンモードノイズを低減するコンデンサを備えて構成される。
【0016】
フィルタ回路15は、正極ライン13Pと負極ライン13Nとの間に配置されるXコンデンサ15Aと、正極ライン13Pと接地電位30との間に配置されるYコンデンサ15Bと、負極ライン13Nと接地電位30との間に配置されるYコンデンサ15Cと、を備える。
【0017】
Xコンデンサ15Aは、電源ライン13の正極ライン13Pと負極ライン13Nとの間に重畳するノーマルモードノイズを低減する。
【0018】
Yコンデンサ15Bは、正側電極が正極ライン13Pに、接地側電極が接地電位30にそれぞれ接続される。Yコンデンサ15Cは、正側電極が負極ライン13Nに、接地側電極が接地電位30にそれぞれ接続される。Yコンデンサ15B及びYコンデンサ15Cは、電源ライン13のコモンモードノイズを低減する。なお、Yコンデンサ15Bの静電容量とYコンデンサ15Cの静電容量とは、同一の値に設定される。
【0019】
負荷20は、モータ2と、モータ2に電力を供給するインバータ回路21とを備える。
【0020】
インバータ回路21は、パワーモジュールである複数のスイッチング素子を備え、電源ライン13を介してバッテリ12から供給される直流電流を交流電力に変換して、モータ2に出力する。また、インバータ回路21は、モータ2の回生電力を直流電流に変換して、電源ライン13を介してバッテリ12に出力する。
【0021】
接地電位30は、例えば電源部11と負荷20が収容される筐体や車両のボディにより構成される。接地電位30は、電源部11に対して基準電位(アース電位)となる。
【0022】
電源ライン13の負極ライン13Nと接地電位30との間には、これらの間の絶縁度を検出する絶縁検出回路35を備える。絶縁検出回路35は、コンデンサ36と検出センサ37とを備え、コンデンサ36の端子間電圧を検出することで、負極ライン13Nと接地電位30との絶縁度を検出する。絶縁検出回路35は、絶縁度が予め定めた基準値よりも低下した場合に、その旨を示す信号を制御装置40又は車両コントローラ50に出力する。
【0023】
本実施形態の電源システム1は、例えば電動車両に搭載され、車両コントローラ50の制御に基づきモータ2を駆動することで車両を走行させる。なお、負荷20をインバータ回路21及びモータ2により構成されるとして説明したがこれに限られない。電源部11から直流電流が供給されるものであれば、どのような負荷であってもよい。
【0024】
次に、このように構成された電源システム1のシャットダウン時の動作について説明する。
【0025】
電源システム1のメンテナンス等で電源システム1のシャットダウンを行う場合がある。このような場合には、シャットダウンに先立って、フィルタ回路15のXコンデンサ15A、Yコンデンサ15B及びYコンデンサ15Cに充電されている電荷を放電する必要がある。
【0026】
一般的に、Xコンデンサ15AとYコンデンサ15B、15Cとは、メインリレー14をオフに制御してインバータ回路21との間で閉回路を形成することにより、その電荷を放電させ、放電終了電圧(例えば50[V])まで低下させる。
【0027】
ここで、本実施形態のように、負極ライン13Nと接地電位30との間に絶縁検出回路35を備える場合、Yコンデンサ15BとYコンデンサ15Cとに充電される電荷が均一ではない場合が発生する。すなわち、絶縁検出回路35のコンデンサ36を備えていないと仮定した場合は、Yコンデンサ15Bの静電容量とYコンデンサ15Cの静電容量とは同一である。一方、負極ライン13Nと接地電位30との間にコンデンサ36が接続されている場合は、Yコンデンサ15Cとコンデンサ36とが接地電位30との間で並列となる。この場合、メインリレー14がONである場合は、負極側の静電容量(対地容量)が、正極側のYコンデンサ15Bの静電容量と比較して大きくなる(例えば正極ライン13Pと接地電位30との間の静電容量が1とした場合に、負極ライン13Nと接地電位30との間の静電容量が40となる)。
【0028】
Yコンデンサ15BとYコンデンサ15Cとの対地容量及び充電される電荷が均一でない場合は、メインリレー14をオフに制御して、インバータ回路21との間で閉回路を形成した場合に、正極側のYコンデンサ15Bの電荷が先に放電され、負極側のYコンデンサ15Cでは、電荷が十分に放電されず残留してしまう場合がある。この場合、十分に大きな時間を経過した後も、Yコンデンサ15Cの電荷が放電されず残留してしまう。Yコンデンサ15Cの電荷が十分に放電されない場合は、電源システム1のメンテナンスに影響を及ぼす。
【0029】
そこで本実施形態では、次に説明するように、Yコンデンサ15BとYコンデンサ15Cとに充電される電荷が均一でない場合であっても、規定時間内に電荷を十分に放電させるように構成した。
【0030】
図2は、本実施形態の制御装置40が実行する制御のフローチャートである。
【0031】
図2に示す制御は、例えばイグニッションキー(スタートスイッチ)がオフにされた場合など、電源システム1にシャットダウンが要求されたことを検出した場合に、実行される。
【0032】
電源システム1にシャットダウンが要求されたことを検出した場合は、制御装置40はまず、ステップS10において、メインリレー14のうち、正極リレー14Pのみをオフに制御し、負極リレー14Nはオンに制御したまま維持する。
【0033】
メインリレー14をこのように制御することにより、Xコンデンサ15Aでは、インバータ回路21との間に形成される閉回路により電荷が放電される。
【0034】
Yコンデンサ15B及びYコンデンサ15Cは、インバータ回路21との間に形成される閉回路により電荷が放電される。さらに、Yコンデンサ15Cでは、負極リレー14Nを介してコンデンサ36との間で閉回路が形成されるので、Yコンデンサ15Cでは、Yコンデンサ15Bと比較して、より多くの電荷が放電される。
【0035】
次に、制御装置40は、ステップS20において、車両コントローラ50を介して、インバータ回路21に備えられる電圧センサにより、インバータ回路側電圧を取得する。制御装置40は、取得したインバータ回路側電圧が所定電圧未満となったか否か、すなわち、最も電荷が大きく放電に最も時間がかかるYコンデンサ15Cの電荷が十分に放電されたと判断できる放電終了電圧を下回ったか否かを判断する。
【0036】
インバータ回路側電圧が所定電圧未満でない場合は、ステップS20を繰り返し、負極リレー14Nをオンに維持する。
【0037】
インバータ回路側電圧が所定電圧未満となった場合は、ステップS30に移行し、負極リレー14Nをオフに制御する。その後、
図2に示すフローチャートが終了する。
【0038】
このように、本実施形態では、制御装置40は、電源システム1をシャットダウンするときに、正極リレー14Pをオフに制御すると共に負極リレー14Nをオンに制御して負極側のYコンデンサ15Cの電荷をより多く放電させるように制御する。そして、インバータ側電圧が所定電圧未満となった後に、負極リレー14Nをオフに制御する。
【0039】
このような制御により、正極側のYコンデンサ15Bと負極側のYコンデンサ15Cとの電荷が均一でない場合であっても、インバータ回路側電圧に応じて負極リレー14Nをオンに維持することで、負極側のYコンデンサ15Cの電荷を、十分に放電することができる。
【0040】
次に、インバータ回路21における故障時の動作について説明する。
【0041】
車両コントローラ50は、電源システム1にシャットダウンが要求されたときに故障を検出した場合、又は、車両コントローラ50自身が故障を検出したことを契機として電源システム1のシャットダウンを行う場合に、次のような制御が実行される。
【0042】
図3は、本実施形態の車両コントローラ50が実行する故障時の制御のフローチャートである。
【0043】
電源システム1にシャットダウンが要求されたことを検出した場合は、車両コントローラ50は、まず、ステップS110において、電源システム1の故障を判断する。
【0044】
電源システム1の故障にはいくつかの故障モードがある。車両コントローラ50は、インバータ回路21に備えられる各種センサの検出値等に基づいて、故障モードを判断する。
【0045】
ここで、故障モードについて説明する。
【0046】
車両コントローラ50は、自身の故障、インバータ回路21に対する通信の異常、又は、インバータ回路21に備えられている電圧センサの異常等の要因により、インバータ回路21の電圧を正しく取得できないと判断した場合は、故障モードが電圧検出異常であると判断する。
【0047】
また、車両コントローラ50は、インバータ回路21の電圧センサから取得した電圧が、インバータ回路21が通常動作する電圧の範囲よりも低いと判断した場合は、故障モードが低電圧異常であると判断する。
【0048】
また、車両コントローラ50は、インバータ回路21の電流センサから取得した電流値が過電流を示す場合や電流センサ自身が異常である場合、インバータ回路21の温度センサから取得した温度が、インバータ回路21が通常動作する温度の範囲よりも高いと判断した場合であって、インバータ回路21の電圧センサから取得した電圧が、インバータ回路21が通常動作する電圧の範囲よりも高いと判断した場合は、故障モードを過電流・過電圧異常であると判断する。
【0049】
図3に戻り、車両コントローラ50は、ステップS120において、制御装置40に対して、正極リレー14Pのみをオフに制御させ、負極リレー14Nはオンに制御したまま維持させる。
【0050】
次に、車両コントローラ50は、ステップS110において判断された故障モードに応じて、次のようにして、負極リレー14Nのオフタイマーを設定する。
【0051】
故障モードが電圧検出異常である場合は、インバータ回路21に印加される電圧を正しく取得できない状態である。言い換えると、Yコンデンサ15Cにどの程度電荷が充電されているか不明である。この場合は、車両コントローラ50は、Yコンデンサ15Cに充電されている電荷が最大であると仮定し、仮定した最大の電荷を放電するために十分な時間である最大時間をオフタイマーとして設定する。なお、最大時間(例えば300[sec.])は、Yコンデンサ15Cの特性や電源システム1の回路構成に基づいて、予め実験やシミュレーションにより求めておく。
【0052】
故障モードが低電圧異常である場合は、インバータ回路21に印加される電圧が想定される電圧よりも低い状態である。この場合は、車両コントローラ50は、Yコンデンサ15Cに充電されている電荷が最小であると仮定し、仮定した最小の電荷を放電するために十分な時間である最小時間をオフタイマーとして設定する。なお、最小時間(例えば5[sec.])は、最大時間と同様に、Yコンデンサ15Cの特性や電源システム1の回路構成に基づいて、予め実験やシミュレーションにより求めておく。
【0053】
故障モードが過電流異常である場合は、インバータ回路21に印加される電圧は正しく取得できているが、インバータ回路21の状態が過電流を示している場合である。この場合は、車両コントローラ50は、Yコンデンサ15Cに充電されている電荷に基づく電圧、すなわち、インバータ回路21から取得した電圧に応じて、オフタイマーを設定する。
【0054】
図4は、故障モードが過電流・過電圧異常である場合に設定されるオフタイマーの時間を示す説明図である。
【0055】
オフタイマーは、インバータ回路側電圧の値に対応して決定される。この場合のオフタイマーは、Yコンデンサ15Cの特性や電源システム1の回路構成に基づいて、予め実験やシミュレーションにより求めておく。
【0056】
車両コントローラ50は、故障モードが高電圧異常である場合には、インバータ回路21から取得した電圧に応じて、
図4に示すように予め設定された対応表を参照して、オフタイマーを設定する。一例として、取得した電圧が500[V]であった場合に、
図4を参照して、オフタイマーを250[sec.]に設定する。
【0057】
次に、車両コントローラ50は、
図3のステップS140において、ステップS130で設定したオフタイマーのカウントが満了したか否かを判定する。オフタイマーが0より大きく、カウントが満了していないと判定した場合は、車両コントローラ50は、ステップS150に移行する。ステップS150では、オフタイマーの値を減算して、ステップS140に戻る。
【0058】
オフタイマーが0未満となり、カウントが満了したと判定した場合は、ステップS160に移行し、車両コントローラ50は、制御装置40に対して、負極リレー14Nをオフに制御させる。その後、
図3に示すフローチャートが終了する。
【0059】
図5は、本実施形態の車両コントローラ50により実行される故障時の制御のタイムチャートである。
【0060】
図5において、上段から、インバータ回路側電圧、正極リレー14Pのオンオフ状態、負極リレー14Nのオンの負状態がそれぞれ示されている。
【0061】
まず、タイミングT1において、電源システム1のシャットダウンが要求された場合、車両コントローラ50が、故障モードが低電圧異常であると判断した場合は(実線で示す)、
図4のステップS120において、正極リレー14Pのみをオフに制御し、負極リレー14Nはオンに制御する。その後、最小時間が経過した後(タイミングT2)、負極リレー14Nをオフに制御する。
【0062】
このようにすることで、タイミングT2においては、インバータ回路側電圧は、放電終了電圧を下回ることになり、放電が完了する。
【0063】
車両コントローラ50が、故障モードが電圧値異常であると判断した場合は(一点鎖線で示す)、
図4のステップS120において、正極リレー14Pのみをオフに制御し、負極リレー14Nはオンに制御する。その後、最大間が経過した後(タイミングT4)、負極リレー14Nをオフに制御する。
【0064】
このようにすることで、タイミングT4においては、インバータ回路側電圧は、放電終了電圧を下回ることになり、放電が完了する。
【0065】
車両コントローラ50が、故障モードが高電圧異常であると判断した場合は(点線で示す)、
図4のステップS120において、正極リレー14Pのみをオフに制御し、負極リレー14Nはオンに制御する。その後、インバータ回路21から取得した電圧に応じて
図4の対応表を参照してオフタイマーを設定する。その後、オフタイマーが満了した場合に(タイミングT3)、負極リレー14Nをオフに制御する。
【0066】
このようにすることで、インバータ回路側電圧の値が正常に検出できる場合は、この電圧に応じたオフタイマーを設定することで、オフタイマーが満了したタイミングT3においては、インバータ回路側電圧は、放電終了電圧を下回ることになり、放電が完了する。
【0067】
以上のように構成された本発明の実施形態は、電源システム1の制御方法であって、電源システム1は、正極及び負極からなる電源ライン13を介して負荷20に電力を出力する電源部11と、正極及び負極と接地電位30との間にそれぞれ介装される一組のYコンデンサ15B、15Cと、電源部11と負荷20との間に介装され、正極及び負極をそれぞれ断続する一組の正極スイッチ(正極リレー14P)及び負極スイッチ(負極リレー14N)と、電源部11及び負極リレー14Nの間の電源ライン13と接地電位30との間に接続されるコンデンサ36を有し、電源部11と接地電位30との間の絶縁度を検出する絶縁検出回路35と、を備える。制御装置40は、電源システム1をシャットダウンするとき、正極リレー14Pをオフに制御すると共に負極リレー14Nをオンに制御してYコンデンサ15B、15Cの電荷を放電させ、負荷20に印加される電圧が所定電圧以下となった後に、負極リレー14Nをオフに制御する。
【0068】
この構成によると、電源システム1をシャットダウンするときに、正極リレー14Pをオフに制御すると共に負極リレー14Nをオンに制御して負極側のYコンデンサ15Cの電荷をより多く放電させるように制御する。このような制御により、絶縁検出回路35を備えたことにより、正極側のYコンデンサ15Bと負極側のYコンデンサ15Cとの電荷が均一でない場合であっても、インバータ回路側電圧に応じて負極リレー14Nをオンに維持することで、Yコンデンサ15B、15Cの電荷を、十分に放電することができる。
【0069】
また、本実施形態では、負荷20の動作を制御する車両コントローラ50を備え、車両コントローラ50が負荷20に関する故障を検出した場合は、検出した故障に応じて、負極リレー14Nをオンからオフに制御にするタイミングを決定し、決定したタイミングで、制御装置40に、負極リレー14Nをオンオフ制御させる。
【0070】
この構成によると、インバータ回路21が正常でないと判断した場合は、インバータ回路側電圧に応じたタイミングであるオフタイマーを設定することで、オフタイマーが満了した時点でインバータ回路側電圧は、放電終了電圧を下回ることになり、Yコンデンサ15B、15Cの放電を完了させることができる。
【0071】
また、本実施形態では、車両コントローラ50が負荷20の電圧を取得できない故障を検出した場合は、予め設定された最大時間が経過するまで、負極リレー14Nをオンに制御させる。
【0072】
この構成によると、インバータ回路21の電圧が取得できない場合は、予め定めた最大時間が経過するまで、Yコンデンサ15B、15Cを放電させるので、負極側のYコンデンサ15Cの電荷を、より確実に放電させることができる。
【0073】
また、本実施形態では、車両コントローラ50が負荷20の電圧が低電圧となる故障を検出した場合は、予め設定された最小時間が経過するまで、負極リレー14Nをオンに制御させる。
【0074】
この構成によると、インバータ回路21の電圧が低電圧である場合は、負極側のYコンデンサ15Cに充電された電荷は十分に小さいので、予め定めた最小時間が経過するまで、Yコンデンサ15B、15Cを放電させることで、Yコンデンサ15B、15Cを最短の時間で放電させることができる。
【0075】
また、本実施形態では、車両コントローラ50が、過電流・過電圧異常を検出した場合は、インバータ回路側電圧を検出し、検出したインバータ回路側電圧に応じて、負極リレー14Nをオンからオフに制御するオフタイマーを設定し、設定されたオフタイマーが満了するまで負極リレー14Nをオンに制御させる。
【0076】
この構成によると、インバータ回路側電圧に応じたオフタイマーが満了するまで、Yコンデンサ15B、15Cを放電させることで、Yコンデンサ15B、15Cの電荷を、より確実に放電させることができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態、及びその変形例について説明したが、上記実施形態及び変形例は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0078】
前述した実施形態において、電源部11と負荷20との間で電力の流通をオンオフする正極リレー14P、負極リレー14Nは、必ずしもリレーに限られず、半導体スイッチやコンタクタなど、電力の流通をオンオフするスイッチとして機能するものであれば、どのようなものでもよい。
【符号の説明】
【0079】
1:電源システム、11:電源部、13N:負極ライン、13P:正極ライン、14:メインリレー、14N:負極リレー、14P:正極リレー、15:フィルタ回路、15A:Xコンデンサ、15B:Yコンデンサ、15C:Yコンデンサ、20:負荷、21:インバータ回路、30:接地電位、35:絶縁検出回路、36:コンデンサ、40:制御装置、50:車両コントローラ