(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082705
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】車両用内燃機関の排気センサ保護方法および装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/12 20160101AFI20240613BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20240613BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20240613BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20240613BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B60W20/12
F02D45/00 345
B60K6/46 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/08 900
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196736
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】池原 賢亮
(72)【発明者】
【氏名】吉村 太
【テーマコード(参考)】
3D202
3G384
【Fターム(参考)】
3D202AA07
3D202BB08
3D202BB09
3D202BB11
3D202DD10
3D202DD16
3D202DD18
3D202DD21
3D202DD24
3D202DD45
3D202DD50
3G384AA01
3G384AA28
3G384BA31
3G384CA21
3G384DA44
3G384EB02
3G384FA37Z
3G384FA40Z
3G384FA66Z
3G384FA75Z
(57)【要約】
【課題】排気通路における排気センサ上流側に凝縮水が溜まると、高温の排気センサに凝縮水が接触して排気センサの損傷が生じる。
【解決手段】車両のメインスイッチがキーオフされるであろう目的地の情報に基づき、車両が目的地から所定範囲内の第1の領域に入ったか判定し、車両が第1の領域に入ったとき(時間t2)に内燃機関をモータリングして排気通路内の排気ガスを掃気する。掃気後は、キーオフまで内燃機関の燃焼運転を禁止し、EV走行する。第1の領域の外側に設定される第2の領域に入ったとき(時間t1)に、SOCが第1の閾値SOC♯1未満であったら、目的地までのEV走行が可能なように事前に充電を行う。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリでの走行が可能なハイブリッド車両に搭載され、かつ排気通路に排気センサを備えてなる車両用内燃機関において、
車両のメインスイッチがキーオフされるであろう目的地の情報に基づき、車両が目的地から所定範囲内の第1の領域に入ったか判定し、
車両が第1の領域に入ったときに内燃機関をモータリングして排気通路内の排気ガスを掃気し、
掃気後は、キーオフまで内燃機関の燃焼運転を禁止する、
車両用内燃機関の排気センサ保護方法。
【請求項2】
上記目的地は、カーナビゲーションシステムに目的地として設定された地点と、過去の履歴からキーオフされる目的地と推定される地点と、を含む、
請求項1に記載の車両用内燃機関の排気センサ保護方法。
【請求項3】
内燃機関の燃焼運転中に車両が第1の領域に入ったときには、燃料カットを行い、モータリングに移行する、
請求項1に記載の車両用内燃機関の排気センサ保護方法。
【請求項4】
第1の領域の外側に設定される第2の領域に車両が入ったか判定し、
車両が第2の領域に入ったときに、その時点でのバッテリの充電状態が目的地までのバッテリでの走行が可能な第1の閾値未満であれば、内燃機関の燃焼運転による充電を開始する、
請求項1に記載の車両用内燃機関の排気センサ保護方法。
【請求項5】
充電開始後、車両が第1の領域に入る前にバッテリの充電状態が上記第1の閾値よりも高い第2の閾値に達したときは、その時点でモータリングによる掃気を実行し、かつキーオフまで内燃機関の燃焼運転を禁止する、
請求項4に記載の車両用内燃機関の排気センサ保護方法。
【請求項6】
車両が第1の領域に入って掃気を実行した後、目的地に到達するまでの間に、バッテリの充電状態が第3の閾値を下回ったときは、内燃機関の燃焼運転による充電を行い、その後バッテリの充電状態が上記第1の閾値に達したときに、モータリングによる掃気を再度実行してから内燃機関の燃焼運転を禁止する、
請求項4に記載の車両用内燃機関の排気センサ保護方法。
【請求項7】
バッテリでの走行が可能なハイブリッド車両に搭載され、かつ排気通路に排気センサを備えてなる車両用内燃機関と、
コントローラと、
を備え、
上記コントローラは、
車両のメインスイッチがキーオフされるであろう目的地の情報に基づき、車両が目的地から所定範囲内の第1の領域に入ったか判定し、
車両が第1の領域に入ったときに内燃機関をモータリングして排気通路内の排気ガスを掃気し、
掃気後は、キーオフまで内燃機関の燃焼運転を禁止する、
車両用内燃機関の排気センサ保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排気通路に排気センサを備えてなる車両用内燃機関において、凝縮水から排気センサを保護する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の運転が停止して排気通路の温度が低下すると、排気中に含まれていた水分が凝縮して凝縮水が生じる。この凝縮水が高温となっている排気センサに接触すると、排気センサが急冷され、損傷する懸念がある。そのため、一般に、排気系レイアウトは、適当な勾配を設けるなどにより、排気センサの上流側に凝縮水が溜まらないように設計する必要があり、設計の自由度が制限される。
【0003】
特許文献1には、電気加熱式触媒装置を具備したハイブリッド車両において、凝縮水による電気加熱式触媒装置の漏電を防止するために、エンジン停止時間が基準値以上となったときに、電動エアポンプの駆動もしくはエンジンのモータリングを行い、排気通路内に生成されるガス流によって電気加熱式触媒装置付近の凝縮水を下流へ導いて車外へ排出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の技術は、電気加熱式触媒装置付近に凝縮水が溜まる程度の長い時間エンジンが停止した段階で電動エアポンプの駆動やモータリングを行って凝縮水の排出を行うものであり、凝縮水の生成を未然に抑制しようとするものではない。凝縮水を押し流すためには、比較的に高いガス流速が必要となり、例えば車両が停止している状態で急に作動すると、乗員に違和感を与えてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る車両用内燃機関の排気センサ保護方法は、
バッテリでの走行が可能なハイブリッド車両に搭載され、かつ排気通路に排気センサを備えてなる車両用内燃機関において、
車両のメインスイッチがキーオフされるであろう目的地の情報に基づき、車両が目的地から所定範囲内の第1の領域に入ったか判定し、
車両が第1の領域に入ったときに内燃機関をモータリングして排気通路内の排気ガスを掃気し、
掃気後は、キーオフまで内燃機関の燃焼運転を禁止する。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれは、車両のメインスイッチがキーオフされる前に排気通路内の排気ガスが掃気されるので、排気通路内での凝縮水の生成が未然に抑制される。特に、目的地到達前の車両運転中にモータリングによる掃気が実行されるので、乗員に違和感を与えることがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】シリーズハイブリッド車両の構成を示す説明図。
【
図2】この発明が適用される内燃機関の排気系を含む構成を示した構成説明図。
【
図4】排気センサ保護制御の一例の動作を示したタイムチャート。
【
図5】排気センサ保護制御の第2の例の動作を示したタイムチャート。
【
図6】排気センサ保護制御の第3の例の動作を示したタイムチャート。
【
図7】排気センサ保護制御のキャンセル動作の例を示したタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1は、一実施例の内燃機関1が用いられるシリーズハイブリッド車両の構成を概略的に示している。このシリーズハイブリッド車両は、主に発電機として動作する発電用モータジェネレータ101と、この発電用モータジェネレータ101を電力要求に応じて駆動する発電用内燃機関として用いられる内燃機関1と、主にモータとして動作して駆動輪103を駆動する走行用モータジェネレータ104と、発電した電力を一時的に蓄えるバッテリ105と、バッテリ105とモータジェネレータ101,104との間で電力変換を行うインバータ装置106と、を備えて構成されている。内燃機関1が発電用モータジェネレータ101を駆動することによって得られた電力は、インバータ装置106を介してバッテリ105に蓄えられる。走行用モータジェネレータ104は、発電用モータジェネレータ101が発電した電力およびバッテリ105の電力を用いてインバータ装置106を介して駆動制御される。走行用モータジェネレータ104の回生時の電力は、やはりインバータ装置106を介してバッテリ105に蓄えられる。
【0011】
一実施例においては、内燃機関1の出力軸と発電用モータジェネレータ101の回転軸とが直列に連結されており、内燃機関1の回転速度と発電用モータジェネレータ101の回転速度とが等しい。他の例として、ギア列を介して内燃機関1と発電用モータジェネレータ101とを連結し、両者が一定のギア比でもって回転するように構成してもよい。いずれの構成にあっても、内燃機関1が駆動する発電用モータジェネレータ101によって、逆に内燃機関1のモータリングを行うことが可能である。
【0012】
モータジェネレータ101,104は、シリーズハイブリッド車両全体の制御を司る統合コントローラ107の指令に基づき、モータコントローラ109を介して、その動作が制御される。統合コントローラ107には、車両のアクセルペダル開度や車速、ブレーキ操作量等の信号が入力され、かつバッテリ105の充電状態(いわゆるSOC)を示す信号が入力されている。なお、充電状態(SOC)は、バッテリ105の端子電圧等に基づいて検出される。
【0013】
また、内燃機関1は、エンジンコントローラ108によって制御される。このエンジンコントローラ108と統合コントローラ107とモータコントローラ109とは車両内ネットワーク110を介して接続されており、互いに信号の授受を行っている。発電用モータジェネレータ101を駆動する内燃機関1は、このエンジンコントローラ108を介して、バッテリ105の充電状態(SOC)等を含む車両側からの電力要求に応じて運転される。つまり、車両のアクセルペダル開度や車速等に応じて統合コントローラ107からエンジンコントローラ108が電力要求を受けると、その電力要求に応じて内燃機関1が制御される。なお、統合コントローラ107とエンジンコントローラ108とモータコントローラ109とが一つのコントローラとして集約された構成であってもよい。
【0014】
一実施例の車両は、いわゆるGPSを利用したカーナビゲーションシステム111を備えており、目的地設定をした上での経路案内や目的地設定をせずに車両位置を含む周辺の地図表示などが可能である。後述する制御のために必要な信号がカーナビゲーションシステム111から統合コントローラ107に与えられ、これに基づいて内燃機関1のモータリングを利用した掃気が行われる。
【0015】
図2は、一実施例の内燃機関1の排気系を含む構成を概略的に示した構成説明図である。一実施例の内燃機関1は、上述したようにシリーズハイブリッド車両において、主に発電機として動作する発電用モータジェネレータ101を電力要求に応じて駆動する発電用内燃機関として用いられるものであり、4ストロークサイクルの火花点火式内燃機関(いわゆるガソリン機関)からなる。シリーズハイブリッド車両においては、内燃機関1は、電力要求に応じて間欠的に燃焼運転がなされる。つまり、車両のメインスイッチ(イグニッションスイッチとも呼ばれる)がオンである間、自動停止・自動再始動を繰り返す。
【0016】
図2に概略的に示すように、内燃機関1は、各気筒に、吸気弁2ならびに排気弁3および点火プラグ4を備えている。また図示例は、ポート噴射式機関として構成されており、各気筒の吸気ポート6へ向けて燃料を噴射するように燃料噴射弁5が配置されている。なお、筒内に燃料を噴射する筒内直接噴射式の構成であってもよい。
【0017】
各気筒の吸気ポート6に接続された吸気通路7のコレクタ部8上流側には、エンジンコントローラ108からの制御信号によって開度が制御される電子制御型スロットルバルブ10が介装されている。スロットルバルブ10の上流側に、吸入空気量を検出するエアフロメータ11が配設されており、さらに上流側に、エアクリーナ12が配設されている。
【0018】
各気筒の排気ポート13は、シリンダヘッド16の外部において1本の排気通路14として集合し、この排気通路14に、排気浄化のための三元触媒15が設けられている。三元触媒15は、例えば、微細な通路が形成されたモノリスセラミックス体の表面に触媒金属を含む触媒層をコーティングした、いわゆるモノリスセラミックス触媒である。なお、三元触媒15は、直列に配置された複数の触媒(例えば、マニホルド触媒と床下触媒)を含む構成であってもよい。
【0019】
排気通路14の三元触媒15の入口側つまり該三元触媒15よりも上流側の位置には、排気空燃比を検出するための上流側排気センサ19が配置されている。この上流側排気センサ19は、排気空燃比に応じた出力が得られるいわゆる広域空燃比センサである。さらに三元触媒15の下流側に、上流側排気センサ19を含む空燃比フィードバック制御系の較正や三元触媒15の劣化診断等のために、三元触媒15を通過した排気の組成に応答する下流側排気センサ20が配置されている。この下流側排気センサ20は、一例では、上流側排気センサ19と同じくいわゆる広域空燃比センサが用いられている。上流側排気センサ19や下流側排気センサ20は、いわゆるO2センサであってもよい。上流側排気センサ19および下流側排気センサ20は、素子を高温に保つために電気ヒータを内蔵している。
【0020】
排気センサ19,20やエアフロメータ11の検出信号は、エンジンコントローラ108に入力される。エンジンコントローラ108には、さらに、機関回転速度を検出するためのクランク角センサ21、冷却水温を検出する水温センサ22、等の多数のセンサ類の検出信号が入力されている。またエンジンコントローラ108は、上述したように、統合コントローラ107から始動・停止を含む種々の要求ないし指令を受ける。エンジンコントローラ108は、これらの入力信号に基づき、燃料噴射弁5による燃料噴射量および噴射時期、点火プラグ4による点火時期、スロットルバルブ10の開度、等を最適に制御している。
【0021】
次に、
図3の説明図および
図4のタイムチャートに基づいて、排気センサ保護制御の一例の動作を説明する。
【0022】
すなわち、
図2に例示した内燃機関1においては、排気ポート13から上流側排気センサ19に至る排気通路14の一部に、
図2に模式的に下方へ湾曲した形で示したように、凝縮水が溜まりやすい部位14aが存在する。そのため、内燃機関1の燃焼運転の停止後に排気通路14内で排気が冷却されて凝縮水が生じると、排気センサ19,20の上流側の部位14aに溜まり、これが高温状態にある排気センサ19,20に接触することで、排気センサ19,20の破損を招く恐れがある。そのため、一実施例においては、車両が目的地に近付いたときに、内燃機関1のモータリングによって排気通路14の掃気を行う。
【0023】
図3は、内燃機関1のモータリングが開始される第1の領域R1と、これよりも外側に設定される第2の領域R2と、の説明図である。車両のメインスイッチがオンとなってトリップが開始されると、メインスイッチがキーオフされるであろう目的地Dの地点情報がカーナビゲーションシステム111において取得され、この目的地Dから所定の範囲が第1の領域R1として設定される。目的地Dは、カーナビゲーションシステム111に目的地設定がなされた場合は、この目的地として設定された地点である。目的地設定がなされていない場合は、過去の履歴からキーオフされる目的地と推定される地点が目的地Dとなる。例えば、自宅や職場あるいは頻繁に訪問する地点などは、目的地設定がなくても、キーオフされる確率が高い地点として過去の履歴から容易に推定できる。例えば、曜日や時間帯等を考慮して複数の候補地点の中で最も確率の高い地点を目的地Dとすればよい。
【0024】
第1の領域R1は、例えば、目的地Dを中心として一定の距離(走行経路上の距離)に設定され、より詳しくは、掃気のために必要なモータリング時間が十分に確保できるように設定される。一例では、目的地Dからの距離が数百mないし1km程度の範囲でよい。第2の領域R2は、同様に目的地Dを中心として一定の距離(走行経路上の距離)に設定され、より詳しくは、後述するように、SOC不足時に第1の領域R1をEV走行(内燃機関1の燃焼運転を伴わないバッテリ105での走行)することができるだけの充電が可能なように設定される。一例では、目的地Dからの距離が2~3km程度でよい。
【0025】
なお、目的地Dまでの物理的な距離ではなく目的地Dまでの所要時間に基づいて第1の領域R1および第2の領域R2を定めるようにしてもよい。
【0026】
カーナビゲーションシステム111は、自車位置を検出することができ、従って、車両が第2の領域R2に入ったか、さらには、第1の領域R1に入ったか、を判定することができる。このような自車位置と第1の領域R1および第2の領域R2との位置関係の情報がカーナビゲーションシステム111から統合コントローラ107へ与えられる。なお、
図3に示した領域R1,R2は、仮想的なものであり、必ずしも領域R1,R2として地図上にマッピングされる必要はない。例えば、目的地Dまでの残り距離が所定値未満となったときに第1の領域R1に入ったと判定することが可能である。
【0027】
排気センサ保護制御としては、基本的には、車両が第1の領域R1に入ったときに、内燃機関1を発電用モータジェネレータ101によって適当な期間モータリングし、排気通路14内の排気ガスを掃気する。そして、以後の内燃機関1の燃焼運転を禁止し、キーオフまでEV走行とする。この掃気により、排気通路14内とりわけ排気センサ19,20上流側での凝縮水の発生が防止される。第1の領域R1に入ったときに、仮に内燃機関1の回転が停止している場合には、モータリングによって内燃機関1の回転が生じるが、この時点ではまだ車両の運転中(つまりキーオフ前)であるので、乗員に違和感を与えることがない。
【0028】
車両が第1の領域R1に入ったときに内燃機関1の燃焼運転中(つまり発電中)であった場合は、第1の領域R1に入ったときに燃料カットを行い、そのまま発電用モータジェネレータ101によるモータリングに移行する。そのため、乗員に違和感を与えることがない。特に、内燃機関1の回転が途切れずにモータリングが行われるので、違和感を回避する上でより有利である。
【0029】
一方、バッテリ105の充電状態つまりSOCが不十分であると、第1の領域R1内をEV走行して目的地Dに到達することができない。そのため、第2の領域R2に入った時点で、SOCが目的地DまでのEV走行が可能な第1の閾値SOC♯1以上であるかを判定し、第1の閾値SOC♯1未満であれば、内燃機関1の燃焼運転による発電つまりバッテリ105の充電を事前に行う。
【0030】
この発電は、車両が第1の領域R1に入るまで、あるいは、バッテリ105のSOCが所定の第2の閾値SOC♯2に達するまで継続される。第2の閾値SOC♯2は、第1の閾値SOC♯1に対し適当な余裕を有するように、第1の閾値SOC♯1よりも高く設定されている。つまり、車両が第1の領域R1に達する前にSOCが第2の閾値SOC♯2以上となったときは、その段階で発電つまり内燃機関1の燃焼運転を終了し、モータリングによる掃気を実行する。より詳しくは、第2の閾値SOC♯2に達したときに燃料カットを行い、そのまま発電用モータジェネレータ101によるモータリングに移行する。その後は、内燃機関1の燃焼運転を禁止し、キーオフまでEV走行とする。
【0031】
図4のタイムチャートは、第2の領域R2に入ったときに充電つまり内燃機関1の燃焼運転を開始し、第1の領域R1に入ったときに燃焼運転を終了してモータリングに移行した例の動作を示している。
【0032】
図4の(a)欄は、車両の位置つまり第2の領域R2および第1の領域R1の領域内であるかどうかを示す。(b)欄は、メインスイッチのオン・オフ状態を示す。時間t4において目的地Dに到達し、メインスイッチがオフとなる。(c)欄は、内燃機関1の運転要求(つまり発電要求)の有無を示す。(d)欄は、内燃機関1のクランクシャフトが回転しているかどうかを示し、ここには、燃焼運転による回転とモータリングによる回転とが含まれている。(e)欄は、燃料カット中であることを示す燃料カットフラグである。(f)欄は、モータリング中であることを示すモータリングフラグである。(g)欄は、排気通路14内とりわけ排気センサ19,20上流側での空燃比を示している。(h)欄は、バッテリ105のSOCの変化を示し、破線は、第2の領域R2内で充電を行わなかった場合の特性を示している。(i)欄は、内燃機関1の燃焼運転を禁止する運転禁止フラグを示している。
【0033】
この例では、時間t1において車両が第2の領域R2に入り、時間t2において第1の領域R1に入り、時間t4において目的地Dに到達する。時間t1において車両が第2の領域R2に入ったときに、バッテリ105のSOCが第1の閾値SOC♯1未満となっており、従って、内燃機関1の燃焼運転つまりバッテリ105の充電が開始される。なお、仮に充電を行わずにEV走行を続けると(h)欄の破線のようにSOCがEV走行の限界となる下限SOCまで低下してしまい、目的地DまでEV走行によって到達することができない。第1の閾値SOC♯1は、下限SOCおよび第1,第2の領域R1,R2の大きさを考慮して設定される。
【0034】
図4の例では、内燃機関1の燃焼運転つまりバッテリ105の充電を行ったまま時間t2において車両が第1の領域R1に入る。第1の領域R1に入ったときに燃料カットが行われ、燃焼運転が終了する。そして、直ちに発電用モータジェネレータ101によるモータリングに移行し、時間t3までの間、モータリングによる掃気が実行される((d)欄、(e)欄、(f)欄)。これにより、排気通路14内の排気ガスが空気に置換される((g)欄)。掃気が実行された後は内燃機関1の燃焼運転が禁止され、目的地DまでEV走行する。
【0035】
このように、車両の運転中に掃気のためのモータリングが実行されるので、乗員に違和感を与えることがない。特に、内燃機関1の燃焼運転に連続してモータリングが行われるので、より自然である。
【0036】
次に、
図5は、第2の領域R2内でバッテリ105の充電を行った結果、第1の領域R1に入る前にバッテリ105のSOCが目的地DまでEV走行するのに十分なレベル(第2の閾値SOC♯2以上)となった場合のタイムチャートを示している。第2の閾値SOC♯2は、第2の領域R2の大きさを考慮して第1の閾値SOC♯1に対し適当な余裕を有するように、第1の閾値SOC♯1よりも高く設定されている。
【0037】
この例では、時間t1において車両が第2の領域R2に入ったときに、SOCが第1の閾値SOC♯1未満であることから充電が開始される。充電開始後、車両が第1の領域R1に入る前に、時間t11において、SOCが第2の閾値SOC♯2に達したため、燃料カットが行われ、燃焼運転が終了する。そして、直ちに発電用モータジェネレータ101によるモータリングに移行し、時間t12までの間、モータリングによる掃気が実行される。掃気が完了した後は、内燃機関1の燃焼運転が禁止され、EV走行となる。
【0038】
このようにバッテリ105のSOCが早期に十分なレベルに達したときは第1の領域R1に入る前でも掃気に移行することで、不必要に充電を継続することが回避される。換言すれば、第2の領域R2の大きさの設定についての許容度が高くなる。
【0039】
次に、
図6のタイムチャートは、
図4の例で示したように第1の領域R1に入ったときに内燃機関1のモータリングにより掃気を行ったものの目的地Dに到達する前にバッテリ105の充電が必要となった場合の動作の例を示している。例えば、第1の領域R1内で渋滞していた場合や運転者が迂回走行したような場合等に、このような第1の領域R1内でのバッテリ105のSOCの想定以上の低下が生じ得る。
【0040】
図6の例では、時間t1において車両が第2の領域R2に入ったときに、SOCが第1の閾値SOC♯1未満であることから充電が開始され、時間t2において車両が第1の領域R1に入ったときに燃料カットが実行されて、時間t3までの間、モータリングによる掃気が実行される。その後は内燃機関1の燃焼運転が禁止されてEV走行となるが、時間t21においてバッテリ105のSOCが第3の閾値SOC♯3を下回ったため、内燃機関1の燃焼運転による充電が再開される。第3の閾値SOC♯3は、EV走行の限界となる下限SOCに対し適当な余裕を有するように、下限SOCよりも高い値に設定される。
【0041】
このように第1の領域R1内で再開した内燃機関1の燃焼運転つまりバッテリ105の充電は、バッテリ105のSOCが第1の閾値SOC♯1以上となったことを条件として終了する。
図6の例では、充電開始後、時間t22においてSOCが第1の閾値SOC♯1に達したため、燃料カットが行われ、燃焼運転が終了する。そして、直ちに発電用モータジェネレータ101によるモータリングに移行し、時間t23までの間、モータリングによる掃気が実行される。掃気が完了した後は、再び内燃機関1の燃焼運転が禁止され、EV走行となる。仮に目的地Dに到達する前にSOCが第3の閾値SOC未満となれば、同様の制御が繰り返されることとなる。
【0042】
従って、第1の領域R1内において内燃機関1の燃焼運転が行われた場合も、内燃機関1の燃焼運転終了後に排気通路14が掃気されることとなり、凝縮水の発生が確実に抑制される。
【0043】
車両が第2の領域R2に入ったものの第1の領域R1に入ることなく第2の領域R2から出た場合、あるいは、車両が第1の領域R1に入ったものの目的地Dでキーオフされることなく第1の領域R1から出た場合、は、それぞれセンサ保護制御がキャンセルされ、通常の走行制御に復帰する。
【0044】
図7の例では、時間t1において第2の領域R2に入ったときに、SOCが第1の閾値SOC♯1未満であることから充電が開始されるが、その後、第1の領域R1に入ることなく時間t31において第2の領域R2から出ている。そのため、時間t31においてセンサ保護制御がキャンセルされる。従って、センサ保護制御のための充電が時間t31において終了する。
【0045】
以上、この発明をシリーズハイブリッド車両の内燃機関に適用した一実施例を説明したが、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、この発明は、EV走行が可能な形式であれば、シリーズハイブリッド形式以外のハイブリッド車両の内燃機関にも適用が可能である。
【0046】
なお、
図2では凝縮水が溜まりやすい部位14aを模式的に描いてあるが、これは本発明の説明のために誇張して示したものに過ぎず、本発明における排気通路が必ずこのような部位14aを備えているという意味ではない。いずれにせよ、本発明によれば、排気通路の排気センサ上流側における凝縮水の生成が抑制される結果、排気系のレイアウトの自由度が高くなる。
【符号の説明】
【0047】
1…内燃機関
14…排気通路
19,20…排気センサ
101…発電用モータジェネレータ
105…バッテリ
107…統合コントローラ
108…エンジンコントローラ
111…カーナビゲーションシステム