(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082709
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】抗菌剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20240613BHJP
A61K 36/48 20060101ALI20240613BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240613BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240613BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240613BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240613BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20240613BHJP
A61K 127/00 20060101ALN20240613BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K36/48
A61P17/00
A61P37/08
A61P31/04
A61Q19/00
A61Q19/10
A61K127:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196741
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】関 兵馬
(72)【発明者】
【氏名】赤座 誠文
(72)【発明者】
【氏名】坂井田 勉
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA082
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB312
4C083AB352
4C083AB432
4C083AC022
4C083AC082
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC482
4C083AC542
4C083AC842
4C083AD092
4C083AD112
4C083AD272
4C083AD352
4C083AD512
4C083BB48
4C083CC02
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC07
4C083CC12
4C083CC25
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE13
4C083EE14
4C083FF01
4C088AB59
4C088AC05
4C088BA09
4C088BA10
4C088CA05
4C088CA06
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZB13
4C088ZB35
(57)【要約】 (修正有)
【課題】抗菌作用に優れた新規な外用剤を提供する。
【解決手段】波長域570~730nmと400~515nmとの光合成光量子束密度(PPFD)比が4:1~2:1の光を照射して栽培したメリロートの、水、低級アルコール及び液状多価アルコールから選ばれる1種又は2種以上の溶媒による抽出物を含有することを特徴とする抗菌剤である。
【効果】本願発明の特定のメリロート抽出物は、皮膚にとって有益な菌を残しつつ、有害な菌を抑制できる優れた選択的な抗菌作用を有し、安定性にも優れ、健康用素材、化粧品、医薬部外品及び医薬品等への応用が期待される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長域570~730nmと400~515nmとの光合成光量子束密度(PPFD)比が4:1~2:1の光を照射して栽培したメリロートの水、低級アルコール及び液状多価アルコールから選ばれる1種又は2種以上の溶媒による抽出物を含有することを特徴とする抗菌剤。
【請求項2】
波長域570~730nmと400~515nmとの光合成光量子束密度(PPFD)比が8:1~1:1の光を照射して栽培したメリロートの水、低級アルコール及び液状多価アルコールから選ばれる1種又は2種以上の溶媒による抽出物を含有することを特徴とする抗菌剤。
【請求項3】
アクネ菌に対して抗菌性を示すことを特徴とする請求項1又は2に記載の抗菌剤。
【請求項4】
マラセチア・レストリクタに対して抗菌性を示すことを特徴とする請求項1又は2に記載の抗菌剤。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のメリロートの抽出物を含有することを特徴とするニキビ抑制剤。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のメリロートの抽出物を含有することを特徴とする脂漏性皮膚炎抑制剤。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のメリロートの抽出物を含有することを特徴とするアトピー性皮膚炎抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚にとって有益な菌を残しつつ、有害な菌を抑制できる抗菌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト健常皮膚表面には皮膚常在菌と称される様々な微生物が生息しており、皮膚常在菌叢を形成している。個人差や部位差等があるが、皮膚常在菌叢は様々な微生物で構成されており、アクネ菌(Cutibacterium acnes:C.acnes)や表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis:S.epidermidis)等の細菌や、マラセチア・レストリクタ(Malassezia restricta:M.restricta)やマラセチア・シンポディアリス(Malassezia sympodialis:M.sympodialis)といったマラセチア属酵母等の真菌が例として挙げられる。
【0003】
皮膚常在菌は、通常は皮脂膜の一部を構成し、ヒトにとって有益な役割を担っている。例えば、病原菌の排除がある。健康な皮膚は弱酸性であり、皮膚のpHは、皮脂中の汗に含まれる乳酸等様々な因子によって調節されており、その中には皮膚常在菌も含まれる。例えばアクネ菌は皮脂中の中性脂肪(トリグリセリド)を分解し、生成したグリセリンを資化し、代謝産物としてプロピオン酸や酢酸を産生し、これらの働きによって皮膚はpH5.0~5.5程度の弱酸性に保たれている。一方、病原菌である黄色ブドウ球菌は増殖至適pHが中性であるため、弱酸性に保たれた皮膚では増殖が抑制される。また、皮膚常在菌が中性脂肪を分解することで生成されるグリセリンは、皮膚の潤いを保つ天然の保湿成分として役立っている。しかし、何らかの原因によって特定の皮膚常在菌が過剰増殖したりすると、様々な皮膚疾患を引き起こす。皮膚常在菌を理解し、制御することは、皮膚の健康維持のために重要といえる。
【0004】
アクネ菌はヒトの皮膚における最優勢菌である(非特許文献1)。アクネ菌はヒトの皮脂腺から分泌される皮脂を栄養源としており、また嫌気的な性質から、脂腺性毛包(皮脂腺が発達した毛包)の奥の方に多く常在すると言われている。アクネ菌はニキビ(尋常性ざ瘡)の原因菌と考えられている。閉塞した毛穴内は嫌気状態になるため、アクネ菌が活発に増殖する。アクネ菌はリパーゼによって皮脂を分解し、発生した遊離脂肪酸によって炎症が引き起こされる。また、アクネ菌に対するヒトの自然免疫反応がニキビの炎症に関与すると考えられている(非特許文献2)。
【0005】
表皮ブドウ球菌は、アクネ菌と競合する菌であるといえる。表皮ブドウ球菌がアクネ菌の増殖を阻害するという報告は複数ある(非特許文献3、4)。つまり、アクネ菌の過剰増殖を防ぐためには表皮ブドウ球菌を減らさないようにすることが望ましいと考えられる。また、表皮ブドウ球菌は抗菌ペプチドの発現を促進することで病原菌への抵抗力を高めるといわれている。さらに表皮ブドウ球菌が皮脂を分解して、天然の保湿剤であるグリセリンを産生することで皮膚の保湿に貢献しているという報告があり、ヒトにとって有益な菌だと考えられている(非特許文献5)。
【0006】
マラセチア・レストリクタは脂漏性皮膚炎やアトピー性皮膚炎に深く関与している菌といわれている(非特許文献6、7)。リパーゼによって皮脂を分解し、発生した遊離脂肪酸によって炎症が引き起こされる。また、マラセチア・レストリクタに対するヒトの自然免疫反応がニキビの炎症に関与すると考えられている。
【0007】
一方、マラセチア・シンポディアリスはヒトの皮膚上に生育しているものの、皮膚疾患の原因となるような報告はない。同じマラセチア属であることから、マラセチア・レストリクタとは生息域や皮脂等の栄養源の面で競合する関係にあると推察され、ヒトにとって有益な菌だといえる。
【0008】
皮膚常在菌は、各菌のバランスが取れているときはヒトと共生し、ヒトの皮膚を守ってくれる有益な存在であるが、特定の菌が過剰増殖したときに皮膚疾患の原因となりうるため、菌のバランスを適切な状態に保つことが重要だといえる。しかし現在、皮膚常在菌に対する抗菌剤としては、細菌に対してはナジフロキサシンや過酸化ベンゾイルが汎用されているが、アクネ菌のみならず表皮ブドウ球菌に対しても抗菌性を発揮し、選択的な抗菌性を得ることが難しい。また、真菌に対してはケトコナゾールやルリコナゾールが汎用されているが、マラセチアの菌種ごとに選択的な抗菌性を得ることが難しい。皮膚にとって有益な菌を残しつつ、有害な菌を抑制できる抗菌剤が望まれている。これまでにも特定の菌種にのみ抗菌性を発揮する素材や成分の検討がされてきた(特許文献1~4)。しかし、細菌及び真菌のどちらにおいても皮膚にとって有益な菌を残して有害な菌を減らす素材又は成分が十分提供されているとは言い難い。
【0009】
メリロート(学名:Melilotus officinalis)は、マメ科シナガワハギ属に属する多年草である。これまでメリロートは、美白効果(特許文献5)及びコラーゲン産生促進効果(特許文献6)を持つと知られている。一方、抗菌性については知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2021-161043号公報
【特許文献2】特開2014-062059号公報
【特許文献3】特開2018-150266号公報
【特許文献4】特開2013-249293号公報
【特許文献5】特開平05-163115号公報
【特許文献6】特開2008-024622号公報
【非特許文献1】J Invest Dermatol,Vol.133(9),PP.2152-2160(2013)
【非特許文献2】「変貌するざ瘡マネージメント」中山書店,103-108項(2012)
【非特許文献3】Appl Microbiol Biotechnol,Vol.98(1),PP.411-424(2014)
【非特許文献4】Exp Dermatol,Vol.26(9),PP.798-803(2017)
【非特許文献5】Immunity,Vol.42,PP.756-766(2015)
【非特許文献6】日本医真菌学会雑誌,Vol.46(3),PP.163-167(2005)
【非特許文献7】日本医真菌学会雑誌,Vol.53(2),PP.97-102(2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
安全性に優れ、皮膚にとって有益な菌を残しつつ、有害な菌を抑制できる選択的な抗菌作用を持つ素材が望まれているが、未だ十分満足し得るものが提供されていないのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような事情により、本発明者らは鋭意検討した結果、特定の波長域を有する2種の人工光を照射して栽培したメリロートの抽出物が、皮膚にとって有益な菌を残しつつ、有害な菌を抑制できる優れた選択的な抗菌性を有することを見出した。具体的には、過剰増殖によってヒトに有害な影響を及ぼすアクネ菌及びマラセチア・レストリクタの増殖を選択的に抑制する効果を見出した。更に、その抽出物を含有する外用剤が、皮膚にとって有益な菌を残しつつ、有害な菌を抑制できる選択的な抗菌性を持つ健康用素材、化粧品、医薬部外品及び医薬品と成り得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
【0014】
(1)波長域570~730nmと400~515nmとの光合成光量子束密度(PPFD)比が4:1~2:1の光を照射して栽培したメリロートの水、低級アルコール及び液状多価アルコールから選ばれる1種又は2種以上の溶媒による抽出物を含有することを特徴とする抗菌剤。
(2)波長域570~730nmと400~515nmとの光合成光量子束密度(PPFD)比が8:1~1:1の光を照射して栽培したメリロートの水、低級アルコール及び液状多価アルコールから選ばれる1種又は2種以上の溶媒による抽出物を含有することを特徴とする抗菌剤。
(3)アクネ菌に対して抗菌性を示すことを特徴とする(1)又は(2)に記載の抗菌剤。
(4)マラセチア・レストリクタに対して抗菌性を示すことを特徴とする(1)又は(2)に記載の抗菌剤。
(5)(1)又は(2)に記載のメリロートの抽出物を含有することを特徴とするニキビ抑制剤。
(6)(1)又は(2)に記載のメリロートの抽出物を含有することを特徴とする脂漏性皮膚炎抑制剤。
(7)(1)又は(2)に記載のメリロートの抽出物を含有することを特徴とするアトピー性皮膚炎抑制剤。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、特定の波長域を有する2種の人工光を照射して栽培したメリロートの抽出物を有効成分として含有する、皮膚にとって有益な菌を残しつつ、有害な菌を抑制できる選択的な抗菌剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に用いるメリロート(学名:Melilotus officinails)は、別名シナガワハギ、セイヨウエビラハギと呼ばれ、マメ科シナガワハギ属に属する多年生植物である。本発明において、メリロートの抽出物は、その花、種子、葉、茎、根等の植物体の一部又は植物体全体(全草)、あるいはそれらの混合物の抽出物をいうが、本発明において抽出原料として使用する部位は、葉が好ましい。また、抽出には、植物体をそのまま使用しても良く、乾燥、粉砕、細切等の処理を行っても良い。
【0017】
栽培方法としては、土を用いた栽培や水耕栽培を行うことができる。水耕栽培を行う場合には、種子を播種後、出根した状態で、水耕栽培に供することができる。栽培は、温度、光、二酸化炭素濃度が制御された施設で栽培することが好ましい。栽培温度は、15~30℃、好ましくは20~25℃である。栽培期間は、照射する条件によって異なるが、概ね10~30日で収穫できる。これ以上の期間で栽培することも可能である。
【0018】
光源は、植物の栽培施設で用いる光源等を使用することができ、中でもLED等の人工光が最も好ましい。人工光は、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード等の光半導体素子が挙げられるが、特定の範囲の波長域が選択的に照射できる光源であれば良い。
【0019】
メリロートの栽培において、照射する波長としては、波長域400~515nmの青色光、570~730nmの赤色光であることが好ましく、波長域430~460nm、630~680nmの光がさらに好ましい。これらの光は、同時に照射することが最も好ましい。このときの波長は、照射スペクトルの極大波長(ピーク波長)のことをいう。このような波長のピークを有する光源であれば、独自に作製したものや市販のものを使用することもできる。また、上記波長を選択的に照射できるように、光学フィルタを用いても良い。上記の2種の範囲の光に加え、太陽光や蛍光灯等の光源も使用することもできる。
【0020】
照射する光量としては、光合成光量子束密度(PPFD)として表される。発光体を2種組み合わせて照射する場合には、その合計の光量を意味する。その光量は、発芽後は10~300μmol・m-2s-1が好ましく、50~200μmol・m-2s-1がさらに好ましい。この範囲外の光強度の場合は、生育障害、生育不良になる場合がある。照射は、メリロートの上部10~50cmの位置から照射することが好ましい。照射時間は、植物の特性や目的に応じて適宜変更できるが、6時間以上が好ましく、12~24時間がより好ましい。
【0021】
赤色と青色の光量比においては、それぞれのPPFDの比を意味しており、収量や有効性等の目的に応じて選択が可能である。
【0022】
中でも、植物体の収量を高めるには、赤色と青色の光量比が8:1~1:1が好ましく、その中でも4:1~2:1がより好ましく、その中でも特に3:1の場合が最も好ましい。
【0023】
抽出方法は、特に限定されないが、水もしくは熱水、又は水と有機溶媒の混合溶媒を用い、撹拌又はカラム抽出する方法等により行うことができる。抽出溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等)、液状多価アルコール類(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)が挙げられる。好ましくは、水、低級アルコール及び液状多価アルコール等の極性溶媒が良く、特に好ましくは、水、エタノール、1,3-ブチレングリコール及びプロピレングリコールが良い。これらの溶媒は1種でも2種以上を混合して用いても良い。特に好ましい抽出溶媒としては、水、水-エタノールの混合極性溶媒又は水-1,3-ブチレングリコールの混合極性溶媒が挙げられる。
【0024】
溶媒の使用量については、特に限定はなく、例えばメリロートの葉(乾燥重量)に対し、10倍以上、好ましくは20倍以上であれば良いが、抽出後に濃縮を行ったり、単離したりする場合の操作の便宜上100倍以下であることが好ましい。また、抽出温度や時間は、用いる溶媒の種類や抽出時の圧力等によって適宜選択できる。
【0025】
上記抽出物は、抽出した溶液のまま用いても良いが、必要に応じて、本発明の効果を奏する範囲で、濃縮(減圧濃縮、膜濃縮等による濃縮)、希釈、濾過、活性炭等による脱色、脱臭、エタノール沈殿等の処理を行ってから用いても良い。さらには、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いても良い。
【0026】
また、上記抽出剤による抽出物は、抽出物の効果を損なわない範囲で、化粧品、医薬部外品又は医薬品等に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、キレート剤、賦形剤、皮膜剤等の成分が含有されていても良い。
【0027】
本発明は、化粧品、医薬部外品、医薬品のいずれにも用いることができ、その剤形としては、例えば、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、軟膏、パップ剤等が挙げられる。
【0028】
外用の場合、本発明に用いる上記抽出物の含有量は、固形物に換算して0.0001重量%以上が好ましく、0.001~10重量%がより好ましい。更に、0.01~5重量%が最も好ましい。0.0001重量%未満では十分な効果は望みにくい。10重量%を超えると、効果の増強は認められにくく不経済である。
【0029】
次に本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明に用いる抽出物の製造例、処方例及び実験例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。製造例と処方例に示す%とは重量%を示す。
【実施例0030】
(1)実験材料及び生育条件
水分を含んだバーミキュライトにメリロートの種子を播種し、室温22~25℃、暗所で発芽させ、22~26℃で蛍光灯下にて栽培し、育苗した。その後、幼芽をスポンジに包み、水耕栽培装置を用いて、室温21~25℃に24時間設定し、植物の真上30cmの位置から、赤色LED(ピーク波長660nm)及び青色LED(ピーク波長450nm)を同時に照射し、赤色と青色LEDの合計光合成光量子束密度100μmol・m-2s-1となるように、赤色と青色の光量比を8:1~1:1にして、栽培を行った。尚、栽培中は光量比を変えなかった。また、太陽光下でも栽培を行った。いずれも4週間栽培した後、収穫し、約60℃で温風乾燥させることで、メリロートの乾燥物を得た(表1)。
【0031】
【0032】
(2)メリロートの抽出物の製造例
メリロートの抽出物を以下の通り製造した。製造例1A~4Aにおいて、抽出材料には赤色と青色の光量比が2:1の条件で栽培したメリロートの葉を用いた。
【0033】
(製造例1A)メリロートの熱水抽出物の調製
メリロートの乾燥物10gに200mLの水を加え、95~100℃で2時間抽出した。得られた抽出液を濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してメリロートの熱水抽出物を2.6g得た。
【0034】
(製造例2A)メリロートの50%エタノール抽出物の調製
メリロートの乾燥物10gを200mLの50%エタノール水溶液に室温で7日間浸漬し、抽出を行った。得られた抽出液を濾過した後、エバポレーターで濃縮乾固してメリロートの50%エタノール抽出物を2.1g得た。
【0035】
(製造例3A)メリロートのエタノール抽出物の調製
メリロートの乾燥物10gを200mLのエタノールに室温で7日間浸漬し、抽出を行った。得られた抽出液を濾過した後、エバポレーターで濃縮乾固してメリロートのエタノール抽出物を0.55g得た。
【0036】
(製造例4A)メリロートの1,3-ブチレングリコール抽出物の調製
メリロートの乾燥物10gを200mLの1,3-ブチレングリコールに室温で7日間浸漬し、抽出を行った。得られた抽出液を濾過して、メリロートの1,3-ブチレングリコール抽出物を195g得た。
【0037】
上記と同様に、赤色と青色LEDの合計光合成光量子束密度100μmol・m-2s-1となるように、赤色と青色の光量比を変化させて栽培したメリロート及び太陽光で栽培したメリロートを用い、上記の製造例1A~4Aと同様に抽出し、製造例1B~4B、1C~4C、製造例P~Sとした(表2)。
【0038】