IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大成建設株式会社の特許一覧

特開2024-82710柱支持構造および柱支持構造の構築方法
<>
  • 特開-柱支持構造および柱支持構造の構築方法 図1
  • 特開-柱支持構造および柱支持構造の構築方法 図2
  • 特開-柱支持構造および柱支持構造の構築方法 図3
  • 特開-柱支持構造および柱支持構造の構築方法 図4
  • 特開-柱支持構造および柱支持構造の構築方法 図5
  • 特開-柱支持構造および柱支持構造の構築方法 図6
  • 特開-柱支持構造および柱支持構造の構築方法 図7
  • 特開-柱支持構造および柱支持構造の構築方法 図8
  • 特開-柱支持構造および柱支持構造の構築方法 図9
  • 特開-柱支持構造および柱支持構造の構築方法 図10
  • 特開-柱支持構造および柱支持構造の構築方法 図11
  • 特開-柱支持構造および柱支持構造の構築方法 図12
  • 特開-柱支持構造および柱支持構造の構築方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082710
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】柱支持構造および柱支持構造の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/24 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
E04B1/24 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196742
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】井瀬 弘志
(57)【要約】
【課題】コンクリートを密実に充填しやすく、かつ、水平抵抗性能の向上を図ることを可能とした柱支持構造およびこの柱支持構造の構築方法を提案する。
【解決手段】土台2と、アンカーボルト3を介して土台2に固定されたベースプレート41と、土台2とベースプレート41との間に介設された補強ベースプレート5とを備える柱支持構造1である。補強ベースプレート5には、開口51が形成されているとともに、アンカーボルト3の位置に対応してボルト挿通孔52が形成されている。また、補強ベースプレート5の下面には、土台2に埋設されるシアコッター6が形成されている。さらに、補強ベースプレート5はベースプレート41に一体に固定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土台と、アンカーボルトを介して前記土台に固定されたベースプレートと、前記土台と前記ベースプレートとの間に介設された補強ベースプレートと、を備える柱支持構造であって、
前記補強ベースプレートに開口が形成されているとともに、前記アンカーボルトの位置に対応してボルト挿通孔が形成されており、
前記補強ベースプレートの下面には、前記土台に埋設されるシアコッターが形成されていて、
前記補強ベースプレートは、前記ベースプレートに一体に固定されていることを特徴とする、柱支持構造。
【請求項2】
前記シアコッターが、前記開口を囲むように前記補強ベースプレートの下面から下向きに突設された筒状部分を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の柱支持構造。
【請求項3】
前記シアコッターが、前記補強ベースプレートの下面に固定された鋼管であることを特徴とする、請求項2に記載された柱支持構造。
【請求項4】
アンカーフレームを配設するアンカーフレーム設置工程と、
鉄筋を配筋する鉄筋組立工程と、
型枠を設置する型枠組立工程と、
前記型枠内にコンクリートを打設して土台を形成する土台形成工程と、
ベースプレートを設置するベースプレート設置工程と、を備える柱支持構造の構築方法であって、
前記アンカーフレーム設置工程では、前記アンカーフレームに、中央に開口が形成されているとともに前記土台に埋設されるシアコッターが形成された補強ベースプレートを設置するとともに、前記土台の上面から突出するアンカーボルトを配設し、
前記土台形成工程では、前記開口から前記型枠内にコンクリートを打設し、
前記ベースプレート設置工程では、前記補強ベースプレートの上に前記ベースプレートを設置して、当該ベースプレートを前記補強ベースプレートに一体に固定するとともに、前記補強ベースプレートおよび前記ベースプレートを貫通させた前記アンカーボルトの頭部を前記ベースプレートの上面に固定することを特徴とする、柱支持構造の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱支持構造および柱支持構造の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート造の土台上に鉄骨柱を立設する手法として、アンカーボルトを介して柱脚のベースプレートを土台に固定する場合がある。
このような柱支持構造に対して、地震などによる外力が作用すると、せん断力がアンカーボルトに集中する。そのため、アンカーボルトは、せん断力に対して十分な耐力を確保する必要がある。また、アンカーボルトに大きなせん断力が作用すると、アンカーボルトにより土台が押圧され、水平方向のコーン破壊が生じるおそれがある。
そのため、特許文献1には、ベースプレートにシアコッター(突出部材)を一体的に形成し、土台(基礎コンクリート)に埋め込んだシアコッターによりせん断力の一部を受け持つことで、アンカーボルトへの負荷を軽減する構造が開示されている。
また、特許文献2には、ベースプレートにシアコッター(突出部材)を一体的に形成し、基礎梁の長さ途中部に設けられたモルタル層にシアコッターを埋設した柱支持構造が開示されている。
さらに、特許文献3には、ペースプレートの下面にシアコッターが形成された接合金物によりせん断力の一部を受け持つ構造が開示されている。特許文献3では、打設用型枠の内部に箱抜き用型枠を設けた状態でコンクリートを打設することで、上面に開口する凹部が形成された土台を形成し、当該凹部に接合金物のシアコッターを配置した状態で、凹部にモルタルを充填している。
特許文献1のシアコッター付きのベースプレートは、コンクリートまたはモルタルの打設前に設置する必要があるため、打設作業の妨げになる虞がある。また、シアコッターの周囲に充填不良が生じることがないように、打設作業を慎重に行う必要があった。
また、特許文献2の柱支持構造は、基礎梁の長さ途中部にモルタル層を形成するための空間を形成するため、手間と費用がかかる。
さらに、特許文献3の柱支持構造は、箱抜き用型枠などを利用して、土台に凹部を形成する必要があるため、手間と費用が掛かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-173018号公報
【特許文献2】特開2021-173022号公報
【特許文献3】特開2021-173023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、コンクリートを密実に充填しやすく、かつ、水平抵抗性能の向上を図ることを可能とした柱支持構造およびこの柱支持構造の構築方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の柱支持構造は、土台と、前記土台にアンカーボルトを介して固定されたベースプレートと、前記土台と前記ベースプレートとの間に介設された補強ベースプレートとを備えている。前記補強ベースプレートには、開口が形成されているとともに、前記アンカーボルトの位置に対応してボルト挿通孔が形成されており、前記補強ベースプレートの下面には、前記土台に埋設されるシアコッターが形成されていて、前記補強ベースプレートは前記ベースプレートに一体に固定されている。
また、この柱支持構造の構築方法は、アンカーフレームを配設するアンカーフレーム設置工程と、鉄筋を配筋する鉄筋組立工程と、型枠を設置する型枠組立工程と、前記型枠内にコンクリートを打設して土台を形成する土台形成工程と、ベースプレートを設置するベースプレート設置工程とを備えている。前記アンカーフレーム設置工程では、前記アンカーフレームに、中央に開口が形成されているとともに前記土台に埋設されるシアコッターが形成された補強ベースプレートを設置するとともに、前記土台の上面から突出するアンカーボルトを配設する。また、前記土台形成工程では、前記開口から前記型枠内にコンクリートを打設する。さらに、前記ベースプレート設置工程では、前記補強ベースプレートの上に前記ベースプレートを設置して、当該ベースプレートを前記補強ベースプレートに一体に固定するとともに、前記補強ベースプレートおよび前記ベースプレートを貫通させた前記アンカーボルトの頭部を前記ベースプレートの上面に固定する。
かかる柱支持構造および柱支持構造の構築方法によれば、補強ベースプレートにシアコッターが形成されているため、柱脚部に作用するせん断力がアンカーボルトのみに集中することを防止し、柱脚部に作用するせん断力を効率よく土台に伝達できる。
また、補強ベースプレートに形成された開口を利用してコンクリートを型枠内に流し込めるので、コンクリートを効率的に充填でき、シアコッターの周囲での打設不良が生じ難くなる。
なお、前記シアコッターは、前記開口を囲むように前記補強ベースプレートの下面から下向きに突設された筒状部分を備えているのが望ましい。このようなシアコッターは、前記補強ベースプレートの下面に鋼管を固定することにより形成すればよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の柱支持構造および柱支持構造の構築方法によれば、コンクリートを密実に充填しやすく、かつ、水平抵抗性能の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第一実施形態の柱支持構造を示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図2】第一実施形態の補強ベースプレートを示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図3】第一実施形態の柱支持構造の構築方法を示すフローチャートである。
図4】第一実施形態の柱支持構造の構築方法の各工程の概要を示す図であって、(a)はアンカーフレーム設置工程、(b)は型枠組立工程である。
図5】第一実施形態の土台形成工程の概要を示す断面図であって、(a)はコンクリート流し込み状況、(b)は養生状況である。
図6】第一実施形態のベースプレート設置工程を示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図7】第二実施形態の柱支持構造を示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図8】第二実施形態の補強ベースプレートを示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図9】第二実施形態の柱支持構造の構築方法を示すフローチャートである。
図10】第二実施形態の柱支持構造の構築方法の各工程の概要を示す図であって、(a)は型枠組立工程、(b)はシアコッター形成工程、(c)は鋼板配設工程である。
図11図10に続く柱支持構造の構築方法の各工程の概要を示す断面図であって、(a)は土台形成工程、(b)はモルタル充填工程である。
図12】第二実施形態のベースプレート設置工程を示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図13】変形例に係る柱支持構造を示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、柱脚部の支承とコンクリート製の土台との接合部において、支承のベースプレートの下面に密実にコンクリートを充填でき、かつ、優れた水平抵抗性能を備えた柱支持構造およびこの柱支持構造の構築方法である。図1に本発明の実施形態に係る柱支持構造を示す。
【0009】
<第一実施形態>
第一実施形態の柱支持構造1は、図1(a)および(b)に示すように、土台2と、土台2に埋設されたアンカーボルト3と、アンカーボルト3を介して土台2に固定された支承4とを備えている。土台2と支承4のベースプレート41との間には、補強ベースプレート5が介設されている。
本実施形態の土台2は一辺が800mmの平面視正方形の角柱状を呈した鉄筋コンクリート製である。また、本実施形態の土台2には、M42のアンカーボルト3を埋設する。
【0010】
支承4は、いわゆるボールジョイントであって、図1(a)および(b)に示すように、ベースプレート41と、ベースプレート41の上面に立設された台座42と、台座42に支持された球状支承グローブ43と、台座42の周囲においてベースプレート41の上面に立設された複数のリブ44,44,…とを備えている。
ベースプレート41は、一辺が640mm、厚さが36mmの鋼板からなる。ベースプレート41には、アンカーボルト3の位置に対応して120×100mmのボルト挿通孔45が形成されている。ベースプレート41は、周縁を溶接Wすることにより、補強ベースプレート5に一体に固定されている。
アンカーボルト3の頭部は、土台2の上面から突出しており、ベースプレート41に形成されたボルト挿通孔45を貫通し、ナット31によりベースプレート41の上面に固定されている。本実施形態では、ボルト挿通孔45を覆う座金33に、アンカーボルト3のナット31を締着する。座金33は、200×190mm、厚さが22mmの鋼板からなり、周囲を溶接Wすることによりベースプレート41に固定されている。また、本実施形態では、緩み防止を目的として、ダブルナットとする。
【0011】
図2に補強ベースプレート5を示す。補強ベースプレート5は、1辺が740mm、厚さが36mmの平面視正方形の鋼板からなり、図2に示すように、中央部に直径180mmの開口51が形成されているとともに、アンカーボルト3(図1参照)の位置に対応してφ47mmのボルト挿通孔52が形成されている。また、開口51の周囲には、複数(本実施形態では4カ所)のエア抜き孔53が形成されている。さらに、この補強ベースプレート5の下面には、土台2に埋設されるシアコッター6が固定されている。開口51は、土台2を形成する際に使用するコンクリート圧送管の外径よりも大きな内径を有している。
【0012】
シアコッター6は、開口51の周縁に沿って形成されていて、補強ベースプレート5の下面から下向きに突出している。シアコッター6は、開口51を囲むように補強ベースプレート5の下面にφ180mm、長さ200mmの円形断面の筒状部分である。本実施形態のシアコッター6は、鍛造等によって補強ベースプレート5に予め一体に形成されている。
【0013】
以下、柱支持構造の構築方法について説明する。図3に柱支持構造の構築方法を示す。
柱支持構造の構築方法は、図3に示すように、アンカーフレーム設置工程S11と、鉄筋組立工程S12と、型枠組立工程S13と、土台形成工程S14と、ベースプレート設置工程S15とを備えている。
図4(a)にアンカーフレーム設置工程S11を示す。アンカーフレーム設置工程S11は、図4(a)に示すように、土台2を形成する位置において、アンカーボルト3および補強ベースプレート5を支持するアンカーフレーム32を配設する工程である。アンカーフレーム32を設置したら、アンカーボルト3および補強ベースプレート5を配設する。補強ベースプレート5を配設する際には、ボルト挿通孔52にアンカーボルト3の頭部を挿通させておく。アンカーボルト3は、支承4を固定するために必要な長さを確保できるように、補強ベースプレート5の上面から上方に突出させておく。アンカーボルト3の下端部には、定着部材が形成されている。
【0014】
鉄筋組立工程S12は、土台2の鉄筋(図示せず)を組み立てる工程である。鉄筋は、アンカーボルト3(アンカーフレーム32)の周囲に配筋する。
型枠組立工程S13は、図4(b)に示すように、土台2を形成する位置において、型枠7を組み立てる工程である。型枠7は、アンカーボルト3、アンカーフレーム32および鉄筋の周囲を囲うように組み立てる。
【0015】
図5(a)に土台形成工程S14を示す。土台形成工程S14は、図5(a)に示すように、土台2を形成する工程である。土台2は、型枠7内に設計基準強度Fc=30N/mmのコンクリート21を流し込んで、所定の強度が発現されるまで養生することにより形成する。補強ベースプレート5の下面に形成されたシアコッター6は、土台2(コンクリート21)に所定長(本実施形態では200mm)挿入される。コンクリート21は、開口51に圧送管Pを挿入した状態で、圧送管Pを介して型枠7内に流し込む(打設する)。コンクリート21は、図5(b)に示すように、上面が補強ベースプレート5に当接するまで流し込む。
【0016】
ベースプレート設置工程S15は、補強ベースプレート5の上にベースプレート41(支承4)を設置する工程である。図6にベースプレート設置工程S15を示す。図6(a)および(b)に示すように、ベースプレート41は、周縁を補強ベースプレート5に溶接Wして、補強ベースプレート5と一体化する。また、ベースプレート設置工程S15では、補強ベースプレート5およびベースプレート41を貫通させたアンカーボルト3を挿通させた座金33をベースプレート41上に設置するとともに、座金33の周縁をベースプレート41に溶接Wする。そして、アンカーボルト3の頭部にナット31を螺着し、アンカーボルト3の頭部をベースプレート41(座金33)の上面に固定する。
【0017】
本実施形態の柱支持構造1によれば、補強ベースプレート5にシアコッター6が形成されているため、柱脚部に作用するせん断力がアンカーボルト3のみに集中することを防止し、柱脚部に作用するせん断力を効率よく土台2に伝達できる。そのため、柱脚にスラスト力が発生する場合であっても、アンカーボルト3の規格(径や鋼材強度)を大きくする必要がなく、また、アンカーボルト3による水平方向のコーン破壊の危険性も低減できる。
また、補強ベースプレート5に形成された開口51を利用してコンクリート21を型枠7内に流し込めるので、コンクリート21を効率的に充填でき、シアコッター6の周囲に打設不良が生じ難くなる。また、補強ベースプレート5の開口は、コンクリート21の圧送管Pの外径よりも大きな内径を有しているため、漏斗等を要することなくコンクリート21を打設できるようになり、作業効率を向上できる。
【0018】
<第二実施形態>
第二実施形態の柱支持構造10は、図7(a)および(b)に示すように、土台2と、土台2に埋設されたアンカーボルト3と、アンカーボルト3を介して土台2に固定された支承4とを備えている。土台2と支承4のベースプレート41との間には、補強ベースプレート5が介設されている。
本実施形態の土台2は一辺が800mmの平面視正方形の角柱状を呈した鉄筋コンクリート製である。また、本実施形態の土台2には、M42のアンカーボルト3を埋設する。
【0019】
支承4は、いわゆるボールジョイントであって、図7(a)および(b)に示すように、ベースプレート41と、ベースプレート41の上面に立設された台座42と、台座42に支持された球状支承グローブ43と、台座42の周囲においてベースプレート41の上面に立設された複数のリブ44,44,…とを備えている。
ベースプレート41は、一辺が640mm、厚さが36mmの鋼板からなる。ベースプレート41には、アンカーボルト3の位置に対応して120×100mmのボルト挿通孔45が形成されている。ベースプレート41は、周縁を溶接Wすることにより、補強ベースプレート5に一体に固定されている。
アンカーボルト3の頭部は、土台2の上面から突出しており、ベースプレート41に形成されたボルト挿通孔45を貫通し、ナット31によりベースプレート41の上面に固定されている。本実施形態では、ボルト挿通孔45を覆う座金33に、アンカーボルト3のナット31を締着する。座金33は、200×190mm、厚さが22mmの鋼板からなり、周囲を溶接Wすることによりベースプレート41に固定されている。また、本実施形態では、緩み防止を目的として、ダブルナットとする。
【0020】
図8に補強ベースプレート5を示す。補強ベースプレート5は、1辺が740mm、厚さが36mmの平面視正方形の鋼板からなり、図8に示すように、中央部に直径180mmの開口51が形成されているとともに、アンカーボルト3(図7参照)の位置に対応してφ47mmのボルト挿通孔52が形成されている。また、補強ベースプレート5には、開口51の周囲に複数の空気抜き孔53が形成されている。さらに、補強ベースプレート5の下面には、土台2に埋設されるシアコッター6が固定されている。開口51は、土台2を形成する際に使用するコンクリート圧送管の外径よりも大きな内径を有している。
【0021】
シアコッター6は、開口51の周縁に沿って形成されていて、補強ベースプレート5の下面から下向きに突出している。シアコッター6は、開口51を囲むように補強ベースプレート5の下面にφ180mm、長さ250mmの円形断面の鋼管を固定することにより形成されている。
【0022】
以下、柱支持構造の構築方法について説明する。図9に柱支持構造の構築方法を示す。
柱支持構造の構築方法は、図9に示すように、型枠組立工程S21と、シアコッター形成工程S22と、鋼板配設工程S23と、土台形成工程S24と、モルタル充填工程S25と、ベースプレート設置工程S26とを備えている。
図10(a)に型枠組立工程S21を示す。型枠組立工程S21は、図10(a)に示すように、土台2を形成する位置において、型枠7を組み立てる工程である。型枠組立工程S1では、型枠7の組立に伴って、型枠7内に土台2の鉄筋(図示省略)を配筋するとともに、アンカーボルト3を配設する。アンカーボルト3は、支承4を固定するために必要な長さを確保できるように、型枠7の上端よりも上方に突出させておく。アンカーボルト3の下端部には、定着部材が形成されている。
【0023】
図10(b)にシアコッター形成工程S22を示す。シアコッター形成工程S22は、図10(b)に示すように、シアコッター6を形成する工程である。シアコッター6は、補強ベースプレート5の下面に鋼管を接合(溶接)することにより形成する。補強ベースプレート5には、予め開口51が形成されており、シアコッター6となる鋼管は、開口51の周縁に沿った状態で固定する。鋼管の内径は、開口51の内径と同等である。なお、型枠設置工程S21とシアコッター形成工程S22との順序は限定されるものではなく、シアコッター形成工程S22が先でもよいし、同時でもよい。また、シアコッター6が予め補強ベースプレート5に一体に形成されている場合には、シアコッター形成工程S22は省略する。
【0024】
図10(c)に鋼板配設工程S23を示す。鋼板配設工程S23は、図10(c)に示すように、補強ベースプレート5を配設する工程である。補強ベースプレート5を配設する際には、ボルト挿通孔52にアンカーボルト3の頭部を挿通させておく。図示は省略するが、補強ベースプレート5は、型枠7により支持する。補強ベースプレート5の支持構造は限定されるものではなく、例えば、型枠7の上端面に上載してもよいし、治具等を介して型枠7に固定してもよい。また、補強ベースプレート5は、アンカーボルト3に固定してもよい。本実施形態では、土台2の上面と補強ベースプレート5との間に所定の高さの隙間(本実施形態では50mm)を確保できる位置に補強ベースプレート5を配設する。
【0025】
図11(a)に土台形成工程S24を示す。土台形成工程S24は、図11(a)に示すように、土台2を形成する工程である。土台2は、型枠7内に設計基準強度Fc=30N/mmのコンクリート21を流し込んで、所定の強度が発現されるまで養生することにより形成する。補強ベースプレート5の下面に形成されたシアコッター6は、土台2(コンクリート21)に所定長(本実施形態では200mm)挿入される。コンクリート21は、開口51に圧送管Pを挿入した状態で、圧送管Pを介して型枠7内に流し込む(打設する)。
【0026】
図11(b)にモルタル充填工程S25を示す。モルタル充填工程S25は、図11(b)に示すように、土台2の上面と補強ベースプレート5との隙間に無収縮モルタル22を充填する工程である。無収縮モルタル22は、補強ベースプレート5の下面に気泡が残存しないように、充填する。無収縮モルタル22には、土台2を構成するコンクリートと同じ設計基準強度(Fc=30N/mm)のものを使用する。
【0027】
ベースプレート設置工程S26は、補強ベースプレート5の上にベースプレート41(支承4)を設置する工程である。図12にベースプレート設置工程S26を示す。図12(a)および(b)に示すように、ベースプレート41は、周縁を補強ベースプレート5に溶接Wして、補強ベースプレート5と一体化する。また、ベースプレート設置工程S26では、補強ベースプレート5およびベースプレート41を貫通させたアンカーボルト3を挿通させた座金33をベースプレート41上に設置するとともに、座金33の周縁をベースプレート41に溶接Wする。そして、アンカーボルト3の頭部にナット31を螺着し、アンカーボルト3の頭部をベースプレート41(座金33)の上面に固定する。
【0028】
第二実施形態の柱支持構造10によれば、第一実施形態の柱支持構造1と同様の作用効果が得られる。
【0029】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、シアコッター6を構成する鋼管の断面形状は円形に限定されるものではない。鋼管は、例えば、図13(a)および(b)に示すように、角筒状であってもよい。また、シアコッター6を構成する鋼管の寸法は限定されるものではない。
また、シアコッター6の形成方法は、鍛造により補強ベースプレート5と一体に形成する場合や、補強ベースプレート5の下面に鋼管を固定する場合に限定されるものではなく、例えば、補強ベースプレート5の下面に固定された鋼板や複数の鋼棒等により形成してもよい。
また、シアコッター6は、必ずしも周方向に連続した筒体である必要はなく、例えば、スリット等を有して間欠的に形成されていてもよい。また、シアコッター6を構成する鋼管には、複数の孔が形成されていてもよい。
【0030】
補強ベースプレート5と土台2との間には、無収縮モルタル22以外のモルタルを充填してもよい。また、コンクリート21および無収縮モルタル22の設計基準強度は適宜決定すればよく、前記実施形態で示したものに限定されるものではない。
支承4の構成は限定されるものではなく、必ずしもボールジョイントである必要はない。また、支承4は必要に応じて設ければよい。
ベースプレート41は、柱を構成する部材の下端に直接固定されていてもよい。
また、土台2、ベースプレート41、補強ベースプレート5等の寸法、形状などは適宜決定すればよく、前記実施形態で示したものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0031】
1 柱支持構造
2 土台
3 アンカーボルト
4 支承
41 ベースプレート
5 補強ベースプレート
51 開口
52 ボルト挿通孔
6 シアコッター
S11 アンカーフレーム設置工程
S12 鉄筋組立工程
S13 型枠組立工程
S14 土台形成工程
S15 ベースプレート設置工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13