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  • 特開-環状シール部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082715
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】環状シール部材
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20240613BHJP
   B65D 53/02 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
F16J15/10 U
F16J15/10 T
B65D53/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196754
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田窪 毅
(72)【発明者】
【氏名】林 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】柏原 一之
【テーマコード(参考)】
3E084
3J040
【Fターム(参考)】
3E084BA01
3E084HA05
3E084HB04
3E084HC03
3E084HD01
3J040AA18
3J040BA03
3J040EA02
3J040EA03
3J040EA16
3J040EA22
3J040FA06
3J040FA07
3J040HA03
3J040HA09
3J040HA21
(57)【要約】
【課題】環状シール部材において、蓋体で容器本体の開口部を閉じるときに、蓋体中心と開口部中心とがずれていても環状シール部材がめくれてしまって密閉効果が落ちないようにする。
【解決手段】蓋体2の取付溝2aに嵌め込まれて容器本体1のシール面1aとの間を封止する環状シール部材10であって、取付溝2aに嵌め込まれる環状のシール本体部11と、シール本体部11に連続し、断面釣り針状に湾曲し、先端側の湾曲部外周面12aがシール面1aに当接してシール面1aとの間を封止する突片部12と、突片部12の湾曲部外周面12aにおけるシール本体部11側に設けられ、蓋体2の取付溝2a周縁に当接する第1突起部13と、湾曲部外周面12aの第1突起部13よりも先端側に設けられ、取付溝2a周縁の第1突起部13よりもシール本体部11から離れた位置に当接する第2突起部14とが一体に成形されている。
【選択図】図2C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材の取付溝に嵌め込まれて第2部材のシール面との間を封止する環状シール部材であって、
前記取付溝に嵌め込まれる環状のシール本体部と、
前記シール本体部に連続し、断面釣り針状に湾曲し、先端側の湾曲部外周面が前記シール面に当接して前記シール面との間を封止する突片部と、
前記突片部の湾曲部外周面における前記シール本体部側に設けられ、前記第1部材の取付溝周縁に当接する第1突起部と、
前記湾曲部外周面の前記第1突起部よりも先端側に設けられ、前記取付溝周縁の前記第1突起部よりも前記シール本体部から離れた位置に当接する第2突起部とが一体に成形されている
ことを特徴とする環状シール部材。
【請求項2】
前記第2突起部と前記取付溝周縁との間の当接点と、前記突片部の先端との距離が前記突片部の厚さの0.5倍以上3倍以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の環状シール部材。
【請求項3】
前記第1突起部と前記第2突起部とが連続して1つの膨出部を形成している
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の環状シール部材。
【請求項4】
負荷の加わらない状態で、前記シール本体部の前記取付溝に当接する辺の延長線よりも前記第2突起部が出っ張っている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の環状シール部材。
【請求項5】
前記第1部材は、蓋体であり、
前記第2部材は、前記蓋体によって閉じられる開口部を有する容器であり、
前記突片部の湾曲部内周面側の内圧が湾曲部外周面側の圧力よりも高くなるように配置される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の環状シール部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1部材の取付溝に嵌め込まれて第2部材のシール面との間を封止する環状シール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の環状シールとしては、例えば、特許文献1のように、基板収納容器における、容器本体と蓋体との間に設けられる環状シール部材が知られている。図6及び図7A図7Dに示すように、この環状シール部材110は、蓋体102の取付溝102aに嵌められる本体部111と、この本体部111から延出された延出片112とで形成されている。この延出片112は、蓋体102の閉止方向において蓋体102の側に突出する突起部113と、突起部113よりも先端に位置するシール部112aとを有し、シール部112aは、シール面101aの側かつ本体部111の側にJ字状にシール面101aに接触するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018-221412号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の環状シール部材110では、矩形状の蓋体102の取付溝102aに矩形環状の本体部111を嵌め込んだ状態で、この蓋体102を、容器本体101の開口部103の周縁部に向かって押し込んで環状シール部材110によって密閉状態を保って開口部103を閉じるとき、蓋体102の中心と開口部103の中心とがずれていると、図7Aに示すように、通常よりも開口部103の周縁に近付く領域で、J字状(釣り針状)のシール部112aが開口部103の周縁のシール面101aに引っ掛かってしまう。
【0005】
その状態で蓋体をさらに押し込んでいくと、図7B及び図7Cのようにシール部112aが容器本体の外側にめくれた状態で蓋体102が閉じられることになる。
【0006】
すると、容器本体内の内圧が外気圧よりも高い場合に、このめくれた部分から気体が漏れやすくなるという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、蓋体で容器本体の開口部を閉じるときに、蓋体中心と開口部の中心とがずれていても環状シール部材がめくれてしまって密閉効果が落ちないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、シール部の変形を防止してめくれにくくするようにした。
【0009】
具体的には、第1の発明では、第1部材の取付溝に嵌め込まれて第2部材のシール面との間を封止する環状シール部材を対象とし、
前記環状シール部材は、
前記取付溝に嵌め込まれる環状のシール本体部と、
前記シール本体部に連続し、断面釣り針状に湾曲し、先端側の湾曲部外周面が前記シール面に当接して前記シール面との間を封止する突片部と、
前記突片部の湾曲部外周面における前記シール本体部側に設けられ、前記第1部材の取付溝周縁に当接する第1突起部と、
前記湾曲部外周面の前記第1突起部よりも先端側に設けられ、前記取付溝周縁の前記第1突起部よりも前記シール本体部から離れた位置に当接する第2突起部とが一体に成形されている。
【0010】
上記の構成によると、第1突起部よりもシール本体部から離れた位置、すなわち、シール面に近い位置に第2突起部をさらに設けることにより、突片部の湾曲した部分がめくれにくくなる。このため、最終的に蓋体が開口部縁部に密閉されるときには、突片部が湾曲した状態に保たれることで密閉性が確保される。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、
前記第2突起部と前記取付溝周縁との間の当接点と、前記突片部の先端との距離が前記突片部の厚さの0.5倍以上3倍以下である。
【0012】
つまり、突片部の厚さと同等の断面円形の突起部では、この距離が厚さの0.5倍以上となる。そして、3倍よりも大きいと、距離が離れすぎて突片部のめくれを防止する機能を発揮できない。しかし、上記の構成によると、適切な距離に保たれているので、突片部の湾曲した部分がめくれにくい。
【0013】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
前記第1突起部と前記第2突起部とが連続して1つの膨出部を形成している。
【0014】
上記の構成によると、第1突起部と第2突起部とが連続して一体となっていても、同様に突片部の湾曲した部分がめくれにくい。
【0015】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、
負荷の加わらない状態で、前記シール本体部の前記取付溝に当接する辺の延長線よりも前記第2突起部が出っ張っている。
【0016】
上記の構成によると、第2突起部が取付溝の内面に確実に当接し、突片部がめくれるのを確実に防止する。
【0017】
第5の発明では、第1から第4のいずれか1つの発明において、
前記第1部材は、蓋体であり、
前記第2部材は、前記蓋体によって閉じられる開口部を有する容器であり、
前記突片部の湾曲部内周面側の内圧が湾曲部外周面側の圧力よりも高くなるように配置される。
【0018】
上記の構成によると、突片部の断面釣り針状に湾曲した形状が保たれるので、内圧が高くなっても突片部がめくれず、密閉状態が保たれる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、蓋体で容器本体の開口部を閉じるときに、蓋体中心と開口部中心とがずれていてもシール部材がめくれてしまって密閉効果が落ちないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る環状シール部材の断面図である。
図2A】蓋体を閉じる状態を示す第1段階を示す断面図である。
図2B】蓋体を閉じる状態を示す第2段階を示す断面図である。
図2C】蓋体を閉じる状態を示す第3段階を示す断面図である。
図3】本発明の実施形態の変形例1に係る環状シール部材の断面図である。
図4】本発明の実施形態の変形例2に係る環状シール部材の断面図である。
図5】本発明の実施形態の変形例3に係る環状シール部材の断面図である。
図6】従来技術に係る環状シール部材の断面図である。
図7A】従来技術に係る、蓋体を閉じる状態を示す第1段階を示す断面図である。
図7B】従来技術に係る、蓋体を閉じる状態を示す第2段階を示す断面図である。
図7C】従来技術に係る、蓋体を閉じる状態を示す第3段階を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は本発明の実施形態の環状シール部材10を示し、この環状シール部材10は、図2Aに示す第1部材としての蓋体2の取付溝2aに嵌め込まれて第2部材としての基板収納容器の容器本体1のシール面1aとの間を封止する役割を果たす。
【0023】
詳しくは図示しないが、この基板収納容器は、特許文献1にも開示されている公知のものであり、例えば、矩形枠状の開口部3を正面側に有する。蓋体2は、この開口部3周縁に合わせた矩形板状のものである。
【0024】
具体的には、蓋体2の取付溝2aは、断面略矩形状の溝であり、その断面は、容器本体1側の内側内面2bよりも外側内面2cの方が、面積が広い。環状シール部材10は、この取付溝2aに嵌め込まれる環状のシール本体部11を備えている。
【0025】
環状シール部材10は、熱可塑性若しくは熱硬化性エラストマー、又は、フッ素ゴム、EPDM、NBR等のゴムを使用してJIS K 6253-3に規定されたタイプAデュロメータ硬さが40~90程度のものよりなり、充填剤などが添加されていてもよい。
【0026】
シール本体部11は、概ね矩形状断面を有し、取付溝2aの内側内面2bに当接する、間隔を開けて設けた本体側第1突起部11a及び本体側第2突起部11bとを有し、外側内面2cに接する側には、円孔状の凹部11cが設けられている。なお、シール本体部11の形状は、これに限定されない。
【0027】
そして、シール本体部11には、断面釣り針状(J字状)に湾曲し、先端側の湾曲部外周面12aがシール面1aに当接してシール面1aとの間を封止する突片部12が一体に形成されている。この突片部12は、シール本体部11に連続して形成され、環状シール部材10の外周全体に連続して形成されている。
【0028】
また、突片部12の湾曲部外周面12aにおけるシール本体部11側には、蓋体2の取付溝2a周縁(外側内面2c)に当接する第1突起部13が形成されている。
【0029】
さらに、湾曲部外周面12aの第1突起部13よりも先端側には、外側内面2cの第1突起部13よりもシール本体部11から離れた位置に当接する第2突起部14が一体に成形されている。
【0030】
そして、本実施形態の環状シール部材10では、図1に示すように負荷の加わらない状態で、シール本体部11の取付溝2aに当接する辺の延長線Hよりも第2突起部14が出っ張っている。
【0031】
図1及び図2Cに示す、第2突起部14と取付溝2a周縁(外側内面2c)との間の当接点P1と、突片部12の先端との距離Lは、突片部12の厚さtの0.5倍以上3倍以下である(0.5t≦L≦3t)。例えば、本実施形態では、t=0.6mmでL=1.4mmとなっている。
【0032】
次いで、上述した環状シール部材の作用について説明する。
【0033】
まず、図2Aに示すように、蓋体2の取付溝2aに環状シール部材10全体を引っ張るようにしてシール本体部11を圧入する。すると、その本体側第1突起部11a及び本体側第2突起部11bが内側内面2bに当接してしっかりと環状シール部材10が嵌まり込む。この状態で第1突起部13及び第2突起部14が外側内面2cに当接している。
【0034】
そして、蓋体2で開口部3を塞ぐときに、両者の中心がずれていると、図2Aに示すように、湾曲部外周面12aの一部がシール面1aに接触しながら蓋体2が閉じられる。
【0035】
すると、図7Aに示した従来の環状シール部材110における突起部113と取付溝102aの内面との当接点P3からシール部112aとシール面1aとの当接点P4との距離Xに比べた場合、第2突起部14と外側内面2cとの当接点P1から湾曲部外周面12aとシール面1aとの当接点P2との距離Yの方が明らかに短い(Y<X)ことが分かる。
【0036】
このため、図2B及び図2Cに示すように、当接点間の距離Xの長い従来品に比べて突片部12がめくれにくくなっている。
【0037】
このように、本実施形態では、第1突起部13よりもシール本体部11から離れた位置、すなわち、シール面1aに近い位置に第2突起部14をさらに設けることにより、突片部12の湾曲した部分がめくれにくくなる。このため、最終的に蓋体2が開口部縁部に密閉されるときには、図2Cに示すように、突片部12は、シール面1aに当接して少し変形するが、湾曲した状態が依然として保たれることで密閉性が確保される。このため、内圧が高くなっても突片部12がめくれず、密閉状態が保たれる。
【0038】
そして、本実施形態では、上記図1に示す距離Lが厚さtの0.5倍以上となっているが、この距離Lが厚さtの3倍よりも大きいと、上記図2Aに示す距離Yが離れすぎて突片部12のめくれを防止する機能を発揮できない。しかし、本実施形態では、適切な距離Lに保たれているので、突片部12のJ字状に湾曲した部分がめくれにくい。
【0039】
また、図1に示したように、第2突起部14が適度に出っ張っているので、第2突起部14が第1突起部13よりもさらに取付溝2aの内面に確実に当接して突片部12がめくれるのを確実に防止することができる。
【0040】
本実施形態では、基板収納容器の内圧が容器外の外圧よりも高くなる用途で用いられるが、蓋体2で開口部3を塞ぐときに、両者の中心が多少ずれていても、従来のように突片部12がめくれることがない。
【0041】
したがって、本実施形態に係る環状シール部材10によると、蓋体2で容器本体の開口部3を閉じるときに、蓋体2の中心と開口部3の中心とがずれていても環状シール部材10がめくれてしまって密閉効果が落ちないようにすることができる。
【0042】
-変形例1-
図3は本発明の実施形態の変形例1の環状シール部材10’を示し、第2突起部14’の形状が異なる点で上記実施形態と異なる。なお、以下の各変形例では、図1A図2と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0043】
本変形例では、第1突起部13’と第2突起部14’との間の距離が少し上記実施形態の距離よりも離れており、結果として第2突起部14’と取付溝2aとの当接点P1とシール面1aと突片部12’の当接点P2との距離Yが上記実施形態よりも短くなり、さらに突片部12’がめくれあがることはない。
【0044】
本実施形態では、上記実施形態よりもさらにシール面1aとの当接点P2との距離Yが小さくなるので、上記実施形態と同様に突片部12’の湾曲した部分がめくれにくい。
【0045】
-変形例2-
図4は本発明の実施形態の変形例2の環状シール部材10’’を示し、本変形例の環状シール部材10’’では、第1突起部と第2突起部とが連続して1つの膨出部15’’を形成したような突片部12’’の形状を有している。このように、上記実施形態における第1突起部13と第2突起部14とが連続して一体となった様な形状となっていても、最もシール面1aに近い当接点P1が上記実施形態と同様の位置にあるので、距離Yが小さく保たれる。このため、突片部12’’の湾曲した部分がめくれにくい。
【0046】
-変形例3-
図5は本発明の実施形態の変形例3の環状シール部材10’’’を示し、 本変形例の環状シール部材10’’’においても、第1突起部13と第2突起部14とが連続して1つの膨出部15’’’を形成したような形状となっている。本変形例では、上記変形例2よりもさらに膨出部15’’’の形状が丸みを帯びている。このように、第1突起部13と第2突起部14とが連続して一体となったより丸みを帯びた膨出部15’’’を設けても、最もシール面1aに近い当接点P1が上記実施形態と同様の位置にあるので、距離Yが小さく保たれる。このため、突片部12’’’の湾曲した部分がめくれにくい。
【0047】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0048】
1 容器本体(第2部材)
1a シール面
2 蓋体(第1部材)
2a 取付溝
2b 内側内面
2c 外側内面
10 環状シール部材
11 シール本体部
11a 本体側第1突起部
11b 本体側第2突起部
11c 凹部
12,12’,12’’,12’’’ 突片部
12a 湾曲部外周面
13,13’,13’’,13’’’ 第1突起部
14,14’ 第2突起部
15’’,15’’’ 膨出部
P1~P4 当接点
L,X,Y 距離
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C