(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082724
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20240613BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196771
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石塚 正浩
(72)【発明者】
【氏名】蛭川 智史
(72)【発明者】
【氏名】増田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 剛司
(72)【発明者】
【氏名】阿部 友邦
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA03
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA22
5H050HA08
(57)【要約】
【課題】所望の密度の活物質層を備える電極の製造方法を提供すること。
【解決手段】集電箔上に電極材料を塗工する塗工工程と、前記電極材料をプレスすることにより活物質層を形成するプレス工程と、前記活物質層のプレス後の密度を測定する測定工程と、前記活物質層を加熱する加熱工程と、を備え、前記加熱工程において、前記活物質層のプレス後の密度に基づいて加熱温度が調整される、電極の製造方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電箔上に電極材料を塗工する塗工工程と、
前記電極材料をプレスすることにより活物質層を形成するプレス工程と、
前記活物質層のプレス後の密度を測定する測定工程と、
前記活物質層を加熱する加熱工程と、を備え、
前記加熱工程において、前記活物質層のプレス後の密度に基づいて加熱温度が調整される、電極の製造方法。
【請求項2】
前記電極材料は、負極材料である、請求項1に記載の電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2021-082504号公報)には、正極および負極を別工程でプレス形成するバイポーラ電極の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池の高容量化のため、正極は高密度に、電池の高出力化および高速充電化のため、負極は低密度から中密度に、それぞれプレスすることで正極および負極を所望の密度にすることが望ましい。
【0005】
しかしながら、正極および負極の作製において、集電箔上に形成された正極活物質層および負極活物質層がスプリングバックし、各活物質層の密度が変化するため、各活物質層の密度を設定した通りに製造することは困難である。
【0006】
本開示の目的は、所望の密度の活物質層を備える電極の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔1〕集電箔上に電極材料を塗工する塗工工程と、
前記電極材料をプレスすることにより活物質層を形成するプレス工程と、
前記活物質層のプレス後の密度を測定する測定工程と、
前記活物質層を加熱する加熱工程と、を備え、
前記加熱工程において、前記活物質層のプレス後の密度に基づいて加熱温度が調整される、電極の製造方法。
【0008】
プレスによる活物質層の密度の変化量により、電極の塑性変化量および弾性変形量が決定する。また、加熱により、活物質層に含まれるバインダーが軟化する。これにより、弾性変形量の残留応力によるスプリングバックを制御し、所望の密度の活物質層を得ることができると考えられる。
【0009】
〔2〕前記電極材料は、負極材料である、〔1〕に記載の電極の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態における電極の製造方法の概略を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、製造例における負極の加熱温度と加熱後の厚みとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態(以下「本実施形態」と略記され得る。)、および本開示の実施例(以下「本実施例」と略記され得る。)が説明される。ただし、本実施形態および本実施例は、本開示の技術的範囲を限定しない。なお、本明細書では、「正極」および「負極」を総称して「電極」と記す。
【0012】
<電極の製造方法>
図1は、本実施形態における電極の製造方法の概略を示すフローチャートである。
図1に示すように、本実施形態の電極の製造方法は、少なくとも(a)塗工工程と、(b)プレス工程と、(c)測定工程と、(d)加熱工程と、を備える。加熱工程において、活物質層のプレス後の密度に基づいて加熱温度は調整される。
【0013】
なお、本実施形態で製造される電極は、正極、負極またはバイポーラ電極のいずれであってもよい。
【0014】
《(a)塗工工程》
塗工工程では、集電箔上に電極材料を塗工する。
【0015】
(集電箔)
集電箔は、例えば、5μm以上150μm以下の厚さを有していてもよい。集電箔は、導電性を有する。集電箔としては、例えば、アルミニウム(Al)箔、Al合金箔、銅(Cu)箔、Cu合金箔、ニッケル(Ni)箔、Ni合金箔、チタン(Ti)箔、Ti合金箔等が挙げられる。電極が正極であるとき、集電箔は、例えば、Al箔等である。電極が負極であるとき、集電箔は、例えば、Cu箔等である。
【0016】
(電極材料)
電極材料は、電極活物質を含む。電極活物質は、正極活物質であってもよいし、負極活物質であってもよい。電極活物質が正極活物質である場合、電極材料は正極材料である。電極活物質が負極活物質である場合、電極材料は負極材料である。
【0017】
正極活物質は、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2等)、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム、およびリン酸鉄リチウムからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0018】
負極活物質は、例えば、黒鉛、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素等の炭素系負極活物質でもよいし、珪素(Si)、錫(Sn)等を含有する合金系負極活物質でもよい。
【0019】
電極材料は、バインダを含む。バインダとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。バインダの配合量は、100質量部の電極活物質に対して、例えば、0.1質量部以上10質量部以下であってもよい。
【0020】
電極材料は、さらに導電材を含んでいてもよい。導電材としては、例えば、アセチレンブラック(AB)、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)等が挙げられる。導電材の配合量は、100質量部の電極活物質に対して、例えば、0.001質量部以上10質量部以下であってもよい。
【0021】
電極材料は、溶媒を含んでいてもよい。溶媒は、例えば、水系溶媒、有機溶媒等が挙げられる。水系溶媒とは、水、または、水と極性有機溶媒とを含む混合溶媒を意味する。
【0022】
水系溶媒としては、例えば、水(イオン交換水)等が挙げられる。混合溶媒に使用可能な極性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類等が挙げられる。なお、水系溶媒は、負極製造用の溶媒として好適に用いることができる。
【0023】
有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等が挙げられる。なお、有機溶媒は、正極製造用の溶媒として好適に用いることができる。
【0024】
(塗工)
本工程では、任意の塗工装置により集電箔の表面に電極材料が塗工される。塗工装置としては、例えば、ダイコータ、ロールコータ等が使用されてもよい。電極材料は、集電箔の片面のみに塗工されてもよい。電極材料は、集電箔の表裏両面に塗工されてもよい。
【0025】
《(b)プレス工程》
プレス工程では、電極材料をプレスすることにより活物質層を形成する。
【0026】
圧力は、適宜調整され得る。例えば、0.1t/cm以上2.0t/cm以下の圧力が電極材料に加えられてもよい。
【0027】
《(c)測定工程(S30)》
測定工程では、活物質層のプレス後の密度を測定する。また、プレス後の活物質層の厚みも測定する。
【0028】
正極活物質層の密度は、例えば、1.7g/cm3以上3.5g/cm3以下である。このような密度とすることにより、正極が組み込まれた電池の高容量化が可能となる。正極活物質層の密度は、負極活物質層の密度より大きい。また、正極活物質層の厚みは、例えば、100μm以上500μm以下である。
【0029】
負極活物質層の密度は、例えば、1.0g/cm3以上1.5g/cm3以下である。このような密度とすることにより、負極が組み込まれた電池の急速充電性能を向上させることができる。また、負極活物質層の厚みは、例えば、100μm以上500μm以下である。
【0030】
一般的に、負極活物質層のスプリングバック量は、正極活物質層のスプリングバック量と比較して多い傾向である。したがって、負極活物質層のスプリングバックをより抑制する必要があると考えられる。
【0031】
《(d)加熱工程(S30)》
加熱工程では、活物質層を加熱する。加熱温度は、測定工程で測定した活物質層のプレス後の密度に基づいて調整される。
【0032】
加熱温度は、適宜調整される。加熱温度は、例えば、50~200℃であってもよい。加熱方法は、特に制限はないが、例えば、温風や熱風による加熱であってもよく、赤外線やレーザー等の熱源による加熱であってもよい。また、加熱時間も適宜調整される。加熱時間は、例えば、1分以上60分以下であってもよい。
【0033】
調整方法としては、例えば、以下のような方法が挙げられる。なお、以下の方法は例示であり、該方法に限定されるものではない。
【0034】
まず、プレス後の活物質層の密度が異なる複数の電極を作製する。例えば、密度がX-0.1(g/cm3)、X(g/cm3)およびX+0.1(g/cm3)である電極を作製する。この時、プレス前の電極材料の厚みおよびプレス後の活物質層の厚みを測定する。
【0035】
測定後、各活物質層を加熱する。各活物質層は、複数の異なる温度で加熱される。例えば、Y-10(℃)、Y(℃)、Y+10(℃)で各活物質層を加熱する。加熱後の各活物質層の厚みを測定する。得られた各活物質層の厚みをプロットし、プレス後の活物質層の密度毎に加熱温度と加熱後の厚みとの関係を示す検量線を作成する。これより、プレス後の密度に応じて加熱温度を変化させることで、加熱後の電極の厚み(狙い厚み)および加熱後の電極の密度(狙い密度)が調整される。
【0036】
<用途>
本開示の製造方法によって得られる電極は、例えば、リチウムイオン二次電池(非水電解質二次電池)の電極として用いることができる。そのリチウムイオン二次電池は、例えば、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)等の電源として用いることができる。また、本開示の製造方法によって得られる電極は、厚みのある電極を得る場合に好適である。ただし、本開示の製造方法によって得られる電極は、このような車載用途に限られず、あらゆる用途に適用可能である。
【実施例0037】
(製造例)
負極を製造するために、負極用の集電箔および負極材料が準備された。集電箔上に負極材料が塗工されたものが3種類準備された。
【0038】
次に、集電箔上の塗工された電極材料がプレスされ、活物質層が形成された。プレス後の活物質層の密度がそれぞれ1.1g/cm3、1.2g/cm3および1.3g/cm3となるように、圧力は調整された。
【0039】
次に、各活物質層を100℃、110℃および120℃で加熱した。加熱後、活物質層の厚みを測定した。得られた各活物質層の厚みをプロットし、プレス後の活物質層の密度毎に加熱温度と加熱後の厚みとの関係を示す検量線を作成した(
図2参照)。
【0040】
上記検量線より、プレス後の活物質層の密度に応じて加熱温度を変化させることで、狙い厚みおよび狙い密度の電極を得ることができる。
【0041】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。