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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082726
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】判定装置、判定方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G09B 19/00 20060101AFI20240613BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20240613BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20240613BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20240613BHJP
   G09B 5/04 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
G09B19/00 G
A61B5/02 310A
A61B5/0245 A
A61B5/16 100
G09B5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196774
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【氏名又は名称】阿形 直起
(72)【発明者】
【氏名】清水 秀樹
【テーマコード(参考)】
2C028
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
2C028AA12
2C028BA05
2C028BB06
2C028BC05
2C028BD01
4C017AA09
4C017AA10
4C017AB07
4C017AC26
4C017BB12
4C017BC11
4C038PP03
4C038PR04
4C038PS00
(57)【要約】
【課題】被検者の脳による音響識別能力を簡易に判定することを可能とする判定装置等を提供する。
【解決手段】判定装置は、背景音とランダムなタイミングで出力される所定音とが、背景音の主要音の周波数と所定音の主要音の周波数との差が所定条件を満たすように合成された合成音を出力する出力部と、合成音が出力されている間の被検者の脈拍数を検出する脈拍数検出部と、脈拍数に基づいて、被検者の脳による音響識別能力を判定する判定部と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背景音とランダムなタイミングで出力される所定音とが、前記背景音の主要音の周波数と前記所定音の主要音の周波数との差が所定条件を満たすように合成された合成音を出力する出力部と、
前記合成音が出力されている間の被検者の脈拍数を検出する脈拍数検出部と、
前記脈拍数に基づいて、被検者の脳による音響識別能力を判定する判定部と、
を有することを特徴とする判定装置。
【請求項2】
前記脈拍数に基づいて、被検者の情動を検出する情動検出部をさらに有し、
前記判定部は、前記被検者の情動に基づいて、前記被検者の脳による音響識別能力を判定する、
請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
前記所定音は、被検者の名前の音声であり、
前記背景音は、被検者によって選択された音楽である、
請求項1に記載の判定装置。
【請求項4】
被検者の操作に応じて、前記主要音の周波数の差に関するあらかじめ設定された複数の条件のうちの一つの条件の選択を受け付ける選択部をさらに有し、
前記出力部は、前記背景音の主要音の周波数と前記所定音の主要音の周波数との差が前記選択された条件を満たすように合成された合成音を出力する、
請求項1に記載の判定装置。
【請求項5】
判定装置によって実行される判定方法であって、
背景音とランダムなタイミングで出力される所定音とが、前記背景音の主要音の周波数と前記所定音の主要音の周波数との差が所定条件を満たすように合成された合成音を出力し、
前記合成音が出力されている間の被検者の脈拍数を検出し、
前記脈拍数に基づいて、被検者の脳による音響識別能力を判定する、
ことを含むことを特徴とする判定方法。
【請求項6】
背景音とランダムなタイミングで出力される所定音とが、前記背景音の主要音の周波数と前記所定音の主要音の周波数との差が所定条件を満たすように合成された合成音を出力し、
前記合成音が出力されている間の被検者の脈拍数を検出し、
前記脈拍数に基づいて、被検者の脳による音響識別能力を判定する、
ことをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判定装置、判定方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人の話し声や音楽といった日常の様々な音の中から、自分にとって重要な情報を無意識に選択する、カクテルパーティ効果と呼ばれる脳の作用が知られている。カクテルパーティ効果は耳ではなく脳の作用であるため、精神的なストレスによってその機能が低下すること、およびトレーニングによってその機能が改善することが知られている。
【0003】
特許文献1には、音声データに雑音データを重畳して作成された劣化音声データを患者に聴取させ、患者に音声データの内容を回答させることで患者の注意障害のリハビリテーションを行う装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5997369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の装置は言語聴覚士が患者に対するリハビリテーションをする際に用いられるものである。この装置において、患者は言語聴覚士の補助を受け、検査音声データが聞き取れた事を患者自身で回答しなければならないため、コミュニケーション能力が劣る患者に対しては適正に検査出来ないという課題がある。そこで、言語聴覚士の補助を受けることなく、より簡易にカクテルパーティ効果の判定を可能とすることが求められている。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、被検者の脳による音響識別能力を簡易に判定することを可能とする判定装置、判定方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る判定装置は、背景音とランダムなタイミングで出力される所定音とが、背景音の主要音の周波数と所定音の主要音の周波数との差が所定条件を満たすように合成された合成音を出力する出力部と、合成音が出力されている間の被検者の脈拍数を検出する脈拍数検出部と、脈拍数に基づいて、被検者の脳による音響識別能力を判定する判定部と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、判定装置は、脈拍数に基づいて、被検者の情動を検出する情動検出部をさらに有し、判定部は、被検者の情動に基づいて、被検者の脳による音響識別能力を判定することが好ましい。
【0009】
また、所定音は、被検者の名前の音声であり、背景音は、被検者によって選択された音楽であることが好ましい。
【0010】
また、判定装置は、被検者の操作に応じて、主要音の周波数の差に関するあらかじめ設定された複数の条件のうちの一つの条件の選択を受け付ける選択部をさらに有し、出力部は、背景音の主要音の周波数と所定音の主要音の周波数との差が選択された条件を満たすように合成された合成音を出力することが好ましい。
【0011】
本発明の実施形態に係る判定方法は、判定装置によって実行される判定方法であって、背景音とランダムなタイミングで出力される所定音とが、背景音の主要音の周波数と所定音の主要音の周波数との差が所定条件を満たすように合成された合成音を出力し、合成音が出力されている間の被検者の脈拍数を検出し、脈拍数に基づいて、被検者の脳による音響識別能力を判定する、ことを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の実施形態に係るプログラムは、背景音とランダムなタイミングで出力される所定音とが、背景音の主要音の周波数と所定音の主要音の周波数との差が所定条件を満たすように合成された合成音を出力し、合成音が出力されている間の被検者の脈拍数を検出し、脈拍数に基づいて、被検者の脳による音響識別能力を判定する、ことをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る判定装置、判定方法およびプログラムは、被検者の脳による音響識別能力を簡易に判定することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】判定装置1の概略構成を示す図である。
図2】設定画面G1の例を示す図である。
図3】結果画面G2の例を示す図である。
図4】判定処理の流れを示すフロー図である。
図5】脈拍数の検出方法について説明するための模式図である。
図6】(A)および(B)は、被検者の脳による音響識別能力の判定方法について説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の様々な実施形態について説明する。本発明の技術的範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る判定装置1の機能ブロック図である。判定装置1は、スマートフォン、携帯電話機、タブレット端末、PC(Personal Computer)、携帯ゲーム機等の情報処理端末である。判定装置1は、被検者の名前を読み上げる名前音声と背景音とが合成された合成音を出力する。また、判定装置1は、名前音声が出力されたときの被検者の脈拍数を検出することにより、被検者の脳による音響識別能力を判定する。判定装置1は、記憶部11、撮像部12、音声出力部13、表示部14、操作部15および処理部16を有する。
【0017】
記憶部11は、プログラムおよびデータを記憶するための構成であり、例えば半導体メモリを備える。記憶部11は、プログラムとして、処理部16による処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム等を記憶する。プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)等のコンピュータ読取可能かつ非一時的な可搬型記憶媒体から記憶部21にインストールされる。
【0018】
撮像部12は、感情誘導コンテンツを視聴する受講者を撮像するための構成であり、カメラを備える。カメラは、受光面に結像させるための結像光学系と、受光面に二次元に配列され、入射した光量に応じた電気信号を出力するCCD(Charge Coupled Device)センサ等の光電変換素子と、光電変換素子の出力に基づいて画像を生成する画像生成回路とを備える。撮像部12は、処理部16から供給される制御信号に基づいて画像を生成し、生成された画像を処理部16に供給する。
【0019】
音声出力部13は、音声を出力するための構成であり、スピーカを備える。音声出力部13は、処理部16から供給される電気信号を機械的な振動に変換することにより、音声を出力する。
【0020】
表示部14は、画像を表示するための構成であり、例えば液晶ディスプレイまたは有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイを備える。表示部14は、処理部16から供給された表示データに基づいて画像を表示する。
【0021】
操作部15は、利用者の操作を受け付けるための構成であり、例えばキーボード、キーパッド、マウスを備える。操作部15はタッチパネルを備え、表示部14と一体化されていてもよい。操作部15は、利用者の操作に応じた操作信号を生成し、処理部16に供給する。
【0022】
処理部16は、判定装置1の動作を統括的に制御するデバイスであり、一つまたは複数個のプロセッサおよびその周辺回路を備える。処理部16は、例えばCPU(Central Processing Unit)を備える。処理部16は、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等を備えてもよい。処理部16は、記憶部11に記憶されているプログラムおよび操作部15からの操作信号に基づいて判定装置1の各種処理が適切な手順で実行されるように、各構成の動作を制御するとともに、各種の処理を実行する。
【0023】
処理部16は、受付部161、生成部162、決定部163、画像取得部164、出力制御部165、脈拍数検出部166、判定部167を機能ブロックとして有する。これらの各部は、処理部16が実行するプログラムによって実現される機能モジュールである。これらの各部は、ファームウェアとして判定装置1に実装されてもよい。なお、判定部167は、情動検出部および判定部の一例である。
【0024】
図2は、表示部14に表示される設定画面G1の例を示す図である。設定画面G1は、被検者が合成音に関する設定を入力するための画面である。設定画面G1は、処理部16によって脳による音響識別能力を判定するための判定アプリケーションプログラムが実行されたことに応じて表示される。設定画面G1は、名前設定オブジェクトG11、背景音選択オブジェクトG12、難易度選択オブジェクトG13、音量設定オブジェクトG14および開始オブジェクトG15を含む。
【0025】
名前設定オブジェクトG11は、被検者の名前を設定するためのオブジェクトであり、例えばテキストボックスを含む。設定された被検者の名前は、名前音声の生成に用いられる。名前音声が適切に生成されるように、被検者の名前は、仮名文字、ローマ字等の、読み方が一意に確定する文字により入力されることが好ましい。
【0026】
背景音選択オブジェクトG12は、あらかじめ記憶された複数の背景音のうちから名前音声と合成される背景音を選択するためのオブジェクトである。図2に示す例では複数の背景音は音楽であるが、このような例に限られず、人の話し声、生活音、白色雑音、有色雑音等でもよい。
【0027】
難易度選択オブジェクトG13は、背景音の主要周波数と名前音声の主要周波数との差を選択するためのオブジェクトである。背景音の主要音の周波数(主要周波数)と名前音声の主要周波数との差が小さいほど、背景音と名前音声とが合成された合成音を聴取した被検者が名前音声を識別することが難しくなるため、難易度が高くなる。主要周波数は、音声の平均周波数である。主要周波数は、音声のスペクトラムのピークとなる周波数でもよい。
【0028】
音量設定オブジェクトG14は、合成音の音量を設定するためのオブジェクトである。
【0029】
開始オブジェクトG15は、合成音の出力を開始するためのオブジェクトである。開始オブジェクトG15が選択されると、所定時間の合成音の出力が開始される。
【0030】
図3は、表示部15に表示される結果画面G2の例を示す図である。結果画面G2は、合成音の出力が終了したときに表示される。結果画面G2は、合成音の出力が終了した旨、および被験者の脳による音響識別能力の判定結果を含む。図3に示す例では、判定結果として、被検者の脳による音響識別能力が合格であると判定されたことが示されている。
【0031】
図4は、判定装置1によって実行される判定処理の流れを示すフロー図である。判定処理は、脳による音響識別能力を判定するための判定アプリケーションプログラムが実行されたことに応じて実行される。判定処理は、記憶部11に記憶されたプログラムに基づいて、処理部16が判定装置1の他の構成と協働することにより実現される。
【0032】
最初に、受付部161は、被検者の操作に応じて、被検者の名前の設定、背景音の選択、難易度の選択および音量の設定を受け付ける(ステップS101)。受付部161は、設定画面G1の表示データを表示部14に供給することにより、設定画面G1を表示する。設定取得部161は、設定画面G1において開始オブジェクトG15が選択されたことに応じて、設定された被検者の名前、選択された背景音、選択された難易度および設定された音量を取得する。
【0033】
次に、生成部162は、被検者の名前の音声を生成する(ステップS102)。生成部162は、取得された被検者の名前に、隠れマルコフモデル、深層ニューラルネットワーク等に基づくテキスト音声合成技術を適用することにより、被検者の名前を読み上げる名前音声を生成する。
【0034】
また、生成部162は、背景音の主要周波数と名前音声の主要周波数との差が所定条件を満たすように、名前音声の主要周波数を変更する。例えば、生成部162は、名前音声にリサンプリングおよびタイムストレッチを適用することにより、名前音声の主要周波数を変更する。所定条件は、選択された難易度に基づく条件である。例えば、所定条件は、難易度が高い場合は差の絶対値が101Hz未満であることであり、難易度が中程度である場合は差の絶対値が101Hz以上201Hz未満であることであり、難易度が低い場合は差の絶対値が201Hz以上であることである。
【0035】
次に、決定部163は、背景音の出力が開始されてから終了するまでの間における名前音声の出力タイミングを決定する(ステップS103)。名前音声は、背景音の出力が開始されてから終了するまでの間に所定回数(例えば、10回)出力される。決定部163は、各回の名前音声が出力されるタイミングをランダムに決定する。
【0036】
次に、画像取得部164は、被検者の画像の取得を開始する(ステップS104)。画像取得部164は、撮像部12を制御して被検者を撮像する。画像取得部164は、順次、撮像部12によって生成された被検者の動画像データを記憶部11に記憶する。
【0037】
次に、出力制御部165は、背景音の出力を開始する(ステップS105)。出力制御部165は、あらかじめ記憶部11に記憶された、選択された背景音の音声データを取得する。出力制御部165は、音声データを音声出力部13に供給することにより、背景音を出力する。
【0038】
次に、出力制御部165は、名前音声の出力タイミングが到来したか否かを判定する(ステップS106)。出力制御部165は、背景音の出力が開始された時刻からの経過時間に基づいて、名前音声の出力タイミングが到来したか否かを判定する。
【0039】
出力タイミングが到来した場合(ステップS106-Yes)、出力制御部165は、背景音に重畳して名前音声を出力する(ステップS107)。出力制御部165は、生成された名前音声の音声データを音声出力部13に供給することにより、名前音声を出力する。このようにして、出力制御部165は、背景音とランダムなタイミングで出力される名前音声とが合成された合成音を出力する。
【0040】
出力タイミングが到来していない場合(ステップS106-No)、またはステップS107の次に、出力制御部165は、背景音の出力が終了したか否かを判定する(ステップS108)。出力制御部165は、背景音の出力が開始された時刻からの経過時間に基づいて、背景音の出力が終了したか否かを判定する。
【0041】
背景音の出力が終了していない場合(ステップS108-No)、判定処理はステップS105に戻り、出力制御部165は引き続き背景音を出力する。
【0042】
背景音の出力が終了した場合(ステップS108-Yes)、画像取得部164は、撮像部12を制御して、被検者の画像の取得を終了する(ステップS109)。
【0043】
次に、脈拍数検出部166は、被検者の画像に基づいて、背景音の出力が開始してから終了するまでの間における被検者の脈拍数を検出する(ステップS110)。
【0044】
図5は、脈拍数の取得方法について説明するための模式図である。図5のグラフの縦軸は脈波の振幅Aであり、横軸は時間tである。脈拍数検出部166は、利用者の動画像データから複数のフレーム画像を抽出する。脈拍数検出部166は、複数のフレーム画像に対して輪郭検知アルゴリズムまたは特徴点抽出アルゴリズムを適用し、各フレーム画像において利用者の額に対応する領域を特定する。脈拍数検出部166は、各フレーム画像の額に対応する領域に含まれる画素を抽出し、抽出した画素のRGBの画素値のうちG(緑)の画素値を取得することにより、Gの画素値の時間変化を算出する。額には毛細血脈が集中しており、額に対応する領域のGの画素値には利用者の血流が反映されるため、Gの画素値の時間変化に基づいて脈波が検出される。脈拍数検出部166は、Gの画素値の時間変化を示す信号に、人の脈波に対応する0.5Hz~3Hzの透過帯域を有するバンドパスフィルタを適用することにより、図5に示す脈波信号PWを抽出する。なお、脈拍数検出部166は、フレーム画像において、額とは異なる他の人体の皮膚露出部位に対応する領域を抽出してもよい。
【0045】
脈拍数検出部166は、抽出した脈波信号PWに基づいて、利用者の脈波間隔および脈拍数を算出する。例えば、脈拍数検出部166は、脈波信号PWのピーク点P(n)を特定する。脈拍数検出部166は、隣接する二つのピーク点(P(n)、P(n+1))の間の間隔を脈波間隔d(n)として算出して取得する。脈拍数検出部166は、脈波間隔の逆数の60倍を一分間あたりの脈拍数として算出して取得する。
【0046】
図4に戻り、次に、判定部167は、被検者の脈拍数に基づいて、被検者の脳による音響識別能力を判定する(ステップS111)。例えば、情動検出部167は、被検者の脈拍数に基づいて被検者の情動を検出し、情動に基づいて被検者の脳による音響識別能力を判定する。
【0047】
図6は、音響識別能力の判定方法について説明するための模式図である。図6(A)および(B)のグラフの縦軸は脈拍数Bであり、横軸は時間tである。判定部167は、被検者の脈拍数の時間変化に基づいて、被検者の情動を検出する。例えば、判定部167は、被検者の脈拍数の時間変化PRの極大値となる点の脈拍数b2と、極大値となる点の所定時間前の脈拍数b1とを抽出する。判定部167は、脈拍数b2が一般的な人の平均脈拍数bavよりも大きく、かつ、脈拍数b2と脈拍数b1との差分Δbが所定値以上である場合に、脈拍数b1の時刻t1に被検者の情動を検出する。
【0048】
判定部167は、名前音声が出力されている期間と被検者の情動が検出された時刻との関係に基づいて、被検者が名前音声を認識したか否かを判定する。例えば、判定部167は、名前音声が出力されている期間P1、または期間P1が経過してから所定時間が経過するまでの期間P2に被検者の情動が検出された場合に、被検者が名前音声を認識したと判定する。図6(A)に示す例では、脈拍数b1の時刻t1が期間P1に含まれているため、判定部167は、被検者が名前音声を認識したと判定する。
【0049】
一般に、人は、自分の名前を呼ばれたとき、意識的にまたは無意識に何らかの反応をし、その時に情動が検出される。人が自分の名前を呼ばれてから、脳がそのことを認識して身体による反応が現れるまでには時間を要するため、情動は、名前を呼ばれている期間、またはその後に検出される。判定部167は、名前音声が出力されている期間P1またはその後の期間P2に情動が検出された場合に被検者が名前音声を認識したと判定することにより、被検者が名前音声を認識したか否かを適切に判定することを可能とする。なお、期間P2は、一般に人が名前を呼ばれてから何らかの反応をするまでの期間に基づいて設定され、例えば1秒に設定される。
【0050】
また、名前を呼ばれた時の反応として、所定時間内に複数回の情動が検出されることがある。図6(B)に示す例では、時刻t1、t2およびt3に情動がそれぞれ検出されている。このように、所定時間内に複数の情動が検出された場合、判定部167は、名前音声が出力されている期間と、複数の情動のうちの最初の情動が検出された時刻との関係に基づいて、被検者が名前音声を認識したか否かを判定する。例えば、判定部167は、最初に情動が検出された時刻t1が期間P1またはP2に含まれるか否かに基づいて、被検者が名前音声を認識したか否かを判定する。図6(B)に示す例では、最初に情動が検出された時刻t1は期間P1よりも前であるため、判定部167は、被検者が名前音声を認識していないと判定する。
【0051】
図4に戻り、判定部167は、背景音の出力が開始してから終了するまでの間に被検者が名前音声を認識した回数を閾値と比較することにより、被検者の脳による音響識別能力を判定する。例えば、名前音声が10回出力される場合、閾値は8回に設定される。判定部167は、被検者が名前音声を認識した回数が閾値以上である場合、被検者の脳による音響識別能力が合格であると判定する。判定部167は、被検者が名前音声を認識した回数が閾値未満である場合、被験者の脳による音響識別能力が不合格であると判定する。
【0052】
判定部167は、判定結果を含む結果画面G2の表示データを生成し、表示部15に供給することにより、判定結果を出力する。以上で、判定処理が終了する。
【0053】
以上説明したように、判定装置1は、背景音と名前音声とが合成された合成音を出力し、合成音が出力されている間の被検者の脈拍数に基づいて被検者の脳による音響識別能力を判定する。判定装置1は、被検者の脈拍数に基づいて音響識別能力を判定するため、被検者による回答を要することなく、被検者の脳による音響識別能力を簡易に判定することを可能とする。
【0054】
また、判定装置1は、脈拍数に基づいて被検者の情動を検出し、被検者の情動に基づいて被検者の脳による音響識別能力を判定する。判定装置1は、人が名前音声に反応した際に自然に生じる情動を検出することにより、被検者の脳による音響識別能力を適切に判定することを可能とする。
【0055】
また、判定装置1は、背景音と被検者の名前を読み上げる名前音声とが合成された合成音を出力する。自分の名前を読み上げる音声はカクテルパーティ効果が最もはたらきやすい音声の一つであるため、判定装置1は、被検者の脳による音声識別能力をより高精度に判定することを可能とする。
【0056】
また、判定装置1は、被検者の操作に応じて、複数の難易度のうちの一つの難易度の選択を受け付け、背景音の主要周波数と所定音の主要周波数との差が選択された難易度に基づく条件を満たすように合成された合成音を出力する。これにより、判定装置1は、被検者の音響識別能力の判定に適した合成音を出力し、被検者の音声識別能力をより高精度に判定することを可能とする。
【0057】
上述した説明では、判定処理のステップS102において、生成部162が被検者の名前を読み上げる名前音声を生成するものとしたが、このような例に限られない。生成部162は、被検者の情動が検出されるような任意の音声を生成してもよい。例えば、生成部162は、被検者の近親者の名前や、被検者によって入力された任意の文字列を読み上げる音声を生成してもよい。
【0058】
上述した説明では、判定処理のステップS106-S107において、名前音声の出力タイミングが到来した場合に出力制御部165が背景音に重畳して名前音声を出力するものとしたが、このような例に限られない。出力制御部165は、背景音の出力が開始される前に、背景音と所定のタイミングで出力される名前音声とが合成された合成音の音声データをあらかじめ生成してもよい。
【0059】
上述した説明では、脈拍数検出部166は被検者の画像に基づいて被検者の脈拍数を検出するものとしたが、このような例に限られない。例えば、脈拍数検出部166は、被検者が装着する脈拍計等のセンサからインタフェースを介して脈拍数のデータを取得することにより、被検者の脈拍数を検出してもよい。
【0060】
当業者は、本発明の範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。例えば、上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 判定装置
161 設定取得部
162 生成部
163 決定部
164 画像取得部
165 出力制御部
166 脈拍数検出部
167 判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6