(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082730
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】タイリング型表示装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/30 20060101AFI20240613BHJP
H10K 59/18 20230101ALI20240613BHJP
H10K 59/121 20230101ALI20240613BHJP
H10K 50/85 20230101ALI20240613BHJP
G09F 9/33 20060101ALI20240613BHJP
H10K 59/90 20230101ALI20240613BHJP
【FI】
G09F9/30 308
G09F9/30 349Z
H10K59/18
H10K59/121
H10K50/85
G09F9/33
G09F9/30 365
H10K59/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196784
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 達弘
(72)【発明者】
【氏名】藤森 隆成
(72)【発明者】
【氏名】村井 淳人
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC33
3K107EE27
3K107EE61
3K107EE63
3K107FF06
3K107FF15
3K107GG53
5C094AA01
5C094BA21
5C094DA20
5C094FA01
5C094FB01
5C094JA08
5C094JA09
5C094JA13
(57)【要約】
【課題】基板間の間隙であるシーム部における反射光及び透過光のシームレス性を向上しつつ、シーム部のシームレス化を図ること。
【解決手段】板10と、基板10上に実装される発光素子20と、発光素子20に電圧を印加する電極部30と、を少なくとも有するモジュール110をタイリングしたものであって、隣接するモジュール110の間の間隙となるシーム部60には透明樹脂61が充填される。透明樹脂61は、基板10と透明樹脂61の可視光領域での屈折率差ΔRIが、-0.01≦ΔRI≦0.01の範囲にある。隣接するモジュール110の間隔Lは、0μm<L≦300μmである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に実装される発光素子と、前記発光素子に電圧を印加する電極部と、を少なくとも有するモジュールをタイリングしたタイリング型表示装置であって、
隣接する前記モジュールの間の間隙となるシーム部には透明樹脂が充填され、
前記透明樹脂は、前記基板と前記透明樹脂の可視光領域での屈折率差ΔRIが、-0.01≦ΔRI≦0.01の範囲にあり、
隣接する前記モジュールの間隔は、0μm<L≦300μmである、タイリング型表示装置。
【請求項2】
前記モジュールの角部は、外周部に沿って面取りされた面取り部が形成される、請求項1に記載のタイリング型表示装置。
【請求項3】
前記面取り部は、前記基板の表面を通る仮想線と、前記面取り部の加工面とで画成される角度θは、30°≦θ≦75°である、請求項2に記載のタイリング型表示装置。
【請求項4】
前記基板の片面又は両面に保護層が形成される、請求項1~3の何れか1項に記載のタイリング型表示装置。
【請求項5】
前記透明樹脂が充填された前記シーム部を覆うように低反射部を備える、請求項4に記載のタイリング型表示装置。
【請求項6】
前記低反射部は、前記保護層又は前記シーム部の表面の少なくとも一方に形成される、請求項5に記載のタイリング型表示装置。
【請求項7】
前記透明樹脂は、-10≦「前記シーム部の透過率」-「前記電極部の透過率」≦10の範囲の透過率を有する着色性透明樹脂である、請求項1に記載のタイリング型表示装置。
【請求項8】
前記基板は、前記基板の半分以下の厚さを有するモールディング層が、前記発光素子を覆うように形成される、請求項1に記載のタイリング型表示装置。
【請求項9】
前記透明樹脂は、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、及びそれらの組合せからなる群から選択される樹脂である、請求項1に記載のタイリング型表示装置。
【請求項10】
前記保護層は、ガラス又は有機系樹脂膜である、請求項4に記載のタイリング型表示装置。
【請求項11】
前記保護層を前記基板に接着する接着剤層は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、及びそれらの組合せからなる群から選択される樹脂である、請求項4に記載のタイリング型表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイリング型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基材に発光素子等を実装した表示部を有する単位モジュールを、規則性を持ってタイル状に複数並べて連結したタイリング型表示装置が知られている。タイリング型表示装置は、超大型化・スケーラブルなディスプレイ技術として広く検討されているが、隣接するモジュールの間の隙間にできるシーム部が視認されることが大きな課題となっている。
【0003】
非特許文献1には、LCDパネルのシーム部の端面にサイドブラックマスクを形成することでシーム部を視認させない方法が開示されている。また、シーム部の視認性において、透明ディスプレイでは外光反射だけでなく透過光の考慮も必要となる。そのため、特許文献1には、ガラスと透明樹脂の透明複合体組成物においてアッベ数が45以上(好ましくは50以上)で、透明樹脂とガラスの屈折率が0.01以下(好ましくは0.005以下)とすることが記載されている。
〈課題〉
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】シャープ技報 第69号・1997年12月 「シームレス接合技術による40型(1m)直視型 TFT-LCD」、81頁~84頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、非特許文献1の技術は、偏光板が貼合されているLCDには有効であるが、偏向板を有さない透明ディスプレイに適用した場合、サイドブラックマスクによる透過率の低下や屈折率差の波長依存性が制御されていないため、透明性が阻害されると共に、シーム部が容易に視認されてしまい、課題が解決されない。
【0007】
特許文献1に開示される透明複合体組成物は、屈折率差が0.01以下で、アッベ数が45以上であるが、波長により屈折率差が大きくなる事例があるためディスプレイの透明化が不十分であり、斜め方向から視認するとシーム部を通過する透過光の屈折やシーム部に入射する外光散乱が視認され、十分なシームレス性を確保できないという新たな問題が生じ得る。なお、「シームレス性」は、モジュール間のシーム部における透過光の散乱や反射による外光散乱が発生せず、シーム部を視認し難くなる特性を意味する。
【0008】
本願発明者等は、タイリング型表示装置においてシーム部における外光反射及び透過光の屈折・散乱によるシームレス性悪化を改善して十分なシームレス性を確保しつつ、シーム部のシームレス化を図るべく鋭意研究を重ねた結果、「シーム部に充填する透明樹脂とモジュールの基板の可視光領域での屈折率差を特定の範囲に制御し、更に隣接するシーム部の間隔を特定の範囲とすること」で十分なシームレス性を確保しつつシーム部のシームレス化が実現可能となることを突き止め、本発明の完成に至った。
【0009】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、具体的には、シーム部における反射光及び透過光のシームレス性を向上しつつ、シーム部のシームレス化が図れるタイリング型表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、下記(1)~(12)の何れか1つによって達成される。
【0011】
(1)基板と、前記基板上に実装される発光素子と、前記発光素子に電圧を印加する電極部と、を少なくとも有するモジュールをタイリングしたタイリング型表示装置であって、隣接する前記モジュールの間の間隙となるシーム部には透明樹脂が充填され、前記透明樹脂は、前記基板と前記透明樹脂の可視光領域での屈折率差ΔRIが、-0.01≦ΔRI≦0.01の範囲にあり、隣接する前記モジュールの間隔は、0μm<L≦300μmである、タイリング型表示装置。
【0012】
(2)前記モジュールの角部は、外周部に沿って面取りされた面取り部が形成される、上記(1)に記載のタイリング型表示装置。
【0013】
(3)前記面取り部は、前記基板の表面を通る仮想線と、前記面取り部の加工面とで画成される角度θは、30°≦θ≦75°である、上記(1)又は(2)に記載のタイリング型表示装置。
【0014】
(4)前記基板の片面又は両面に保護層が形成される、上記(1)~(3)の何れかに記載のタイリング型表示装置。
【0015】
(5)前記透明樹脂が充填された前記シーム部を覆うように低反射部を備える、上記(1)~(4)の何れかに記載のタイリング型表示装置。
【0016】
(6)前記低反射部は、前記保護層又は前記シーム部の表面の少なくとも一方に形成される、上記(5)に記載のタイリング型表示装置。
【0017】
(7)前記透明樹脂は、-10≦「前記シーム部の透過率」-「前記電極部の透過率」≦10の範囲の透過率を有する着色性透明樹脂である、上記(1)~(6)の何れかに記載のタイリング型表示装置。
【0018】
(8)前記基板は、前記基板の半分以下の厚さを有するモールディング層が、前記発光素子を覆うように形成される、上記(1)~(7)の何れかに記載のタイリング型表示装置。
【0019】
(9)前記透明樹脂は、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、及びそれらの組合せからなる群から選択される樹脂である、上記(1)~(8)の何れかに記載のタイリング型表示装置。
【0020】
(10)前記保護層は、ガラス又は有機系樹脂膜である、上記(1)~(9)の何れかに記載のタイリング型表示装置。
【0021】
(11)前記保護層を前記基板に接着する接着剤層は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、及びそれらの組合せからなる群から選択される樹脂である、上記(1)~(10)の何れかに記載のタイリング型表示装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、シーム部における反射光及び透過光のシームレス性を向上しつつ、シーム部のシームレス化が図れるタイリング型表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の好ましい一実施形態に係るタイリング型表示装置の図であり、(A)は平面図、(B)はA-A線で切断した断面図、(C)はB-B線で切断した断面図である。
【
図2】隣接するモジュールのシーム部周辺の部分断面図である。
【
図3】面取り部の他の形態を示す部分断面図である。
【
図4】基板上にモールディング層を設けた断面図である。
【
図5】本発明の好ましい一実施形態に係るタイリング型表示装置の図であり、(A)は平面図、(B)はC-C線で切断した断面図、(C)はD-D線で切断した断面図である。
【
図6】基板にモールディング層及び保護層を設けた形態におけるシーム部周辺の部分断面図である。
【
図7】実施例1~実施例4、比較例1、比較例2の製造工程の流れを示す図である。
【
図8】実施例1~実施例4、比較例1、比較例2の各サンプルの仕様及び評価結果を示す表である。
【
図9】比較例3~比較例5の製造工程の流れを示す図である。
【
図10】比較例3~比較例5の各サンプルの仕様及び評価結果を示す表である。
【
図11】比較例6、比較例7の製造工程の流れを示す図である。
【
図12】比較例8の製造工程の流れを示す図である。
【
図13】比較例6~比較例8の各サンプルの仕様及び評価結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ここで示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者等により考え得る実施可能な他の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範囲、要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0025】
更に、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状等について、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0026】
また、特記しない限り、操作及び物性などは、室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で測定する。
【0027】
なお、以下の説明において、「第1」、「第2」のような序数詞を付して説明する場合は、特に言及しない限り、便宜上用いるものであって何らかの順序を規定するものではない。
【0028】
本発明の一実施形態は、基板と、基板上に実装される発光素子と、発光素子に電圧を印加する電極部と、を少なくとも有するモジュールを、規則性を持ってタイル状に複数並べて連結したタイリング型表示装置であり、隣接するモジュールの間の間隙となるシーム部に透明樹脂で充填され、透明樹脂は、基板と透明樹脂の可視光領域での屈折率差ΔRIが、-0.01≦ΔRI≦0.01の範囲にあり、隣接するモジュールの間隔は、0μm<L≦300μmであるタイリング型表示装置に関する。
【0029】
以下の実施形態では、発光素子20としてLED素子を用いたLEDディスプレイの構成について説明する。しかし、本発明のタイリング型表示装置100は、ディスプレイ形式として、LEDディスプレイに限定されず、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ、液晶ディスプレイ等の他形式のディスプレイ装置にも適用可能である。
【0030】
本発明の一実施形態に係るタイリング型表示装置100の構成について
図1~
図5を適宜参照しながら説明する。ただし、
図1~
図5は、本発明の一実施形態に係るタイリング型表示装置100に関するものであって、本実施形態のタイリング型表示装置100は、これらの図によって説明される構成に限定されない。
【0031】
図1は、本発明の好ましい一実施形態に係るタイリング型表示装置100の平面図及び断面図が示されており、
図2は、タイリング型表示装置100の部分断面図が示されている。
図1において、(A)はタイリング型表示装置100の平面図、(B)は
図1(A)のA-A線で切断した断面図、(C)は
図1のB-B線で切断した断面図を示す。
【0032】
タイリング型表示装置100は、
図1(A)~(C)に示すように、基板10と、基板10の基板面(表面)に実装される発光素子20と、発光素子20の駆動に必要な電圧を印加する電極部30と、を少なくとも有するモジュール110が、マトリクス状のような規則性を有して配置される。隣接するモジュール110の間には、基板10間の間隙となるシーム部60が介在する。
図1(A)には、モジュール110が2×2で配置された形態が示されている。なお、タイリング型表示装置100のモジュール110の配置数は、
図1(A)に限定されず、任意の配置数とすることができる。
【0033】
タイリング型表示装置100は、
図1(A)に示すように、駆動回路40と、駆動回路40と電極部30とを接続するフレキシブル基板50と、を有する。タイリング型表示装置100は、駆動回路40の駆動によりフレキシブル基板50を介して電極部30に所定の駆動電圧が印加される。タイリング型表示装置100は、電極部30から発光素子20に所定の電圧が印加されることで発光素子20が発光して所定の表示内容を表示する。
【0034】
基板10は、無アルカリガラス、ポリイミド、PET、シリコーンなどの発光素子20が実装可能な材料で構成される。無アルカリガラスとしては、例えば、イーグルXG(コーニング株式会社製)等のガラス基板を好適に用いることができる。基板10は、前述した材料に限らず、発光素子20を実装する上で、発光素子20の実装面の平面平坦性や発光素子20を実装する際の耐熱性などを考慮して適切な材料を任意に選択することができる。
【0035】
発光素子20は、RGB各色の表面実装用のLED素子で構成され、基板10に実装される。発光素子20は、基板10の各画素内の3つの色要素を構成し、電極部30から印加される電圧により発光する。
【0036】
電極部30は、発光素子20とフレキシブル基板50とを繋ぐ各種配線、若しくはTFT(Thin Film Transistor)で構成される。電極部30は、フレキシブル基板50を介して駆動回路40と接続され、駆動回路40の制御に基づき発光素子20に所定の駆動電圧を印加する。
【0037】
タイリング型表示装置100は、以下の構造を有することで、シーム部60における反射光及び透過光のシームレス性を向上しつつ、シーム部60のシームレス化を図ることができる。
【0038】
タイリング型表示装置100は、隣接するモジュール110の間のシーム部60に透明樹脂61が充填される。透明樹脂61は、基板10と透明樹脂61の可視光領域での屈折率差ΔRIが、-0.01≦ΔRI≦0.01の範囲にあり、隣接するモジュール110の間隔は、0μm<L≦300μmである。
【0039】
基板10と透明樹脂61の可視光領域での屈折率差ΔRIは、-0.01≦ΔRI≦0.01であり、シーム部60における反射光及び透過光のシームレス性向上やシーム部60のシームレス化を図る観点から、-0.003≦ΔRI≦0.003の範囲とするのが好ましい。
【0040】
隣接するモジュール110の間隔Lは、
図2に示すように、隣接する一方のモジュール110における基板10の表面と面取り部120との境界位置P1と、隣接する他方のモジュール110における基板10の表面と面取り部120との境界位置P2との間の距離である。間隔Lは、第1長さL
1、第2長さL
2、第3長さL
3で構成される。
【0041】
第1長さL
1は、
図2に示すように、隣接するモジュール110の基板10の間の距離(基板間距離)である。第2長さL
2は、
図2に示すように、隣接する一方のモジュール110における基板10の端面10aと面取り部120との間の距離(面取り部120の面取り幅に相当)である。第3長さL
3は、
図2に示すように、隣接する他方のモジュール110における基板10の端面10aと面取り部120との間の距離(面取り部120の面取り幅に相当)である。このように、間隔Lは、隣り合う基板10間の端面10aの間の距離である第1長さL
1と、一方の基板10の面取り部120の面取り幅である第2長さL
2と、他方の基板10の面取り部120面取りの幅である第3長さL
3と、の合計値となる。
【0042】
タイリング型表示装置100は、隣接するモジュール110の間隔Lを0μm<L≦300μmの範囲に設定される。また、第1長さL1は0μm<L1<300μm、第2長さL2は0μm<L2<150μm、第3長さL3は0μm<L3<150μmの範囲で任意に設定することができる。
【0043】
タイリング型表示装置100は、発光素子20の接続位置等の制約を極力少なくするため、隣接するモジュール110を等間隔に配置することが好ましい。そのため、第2長さL2と第3長さL3は、略同一とするのが好ましい。なお、「略同一」とは、完全同一及び実質同一を含み、厳密に等しい状態のみならず、公差(±15μm程度)、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も含む。
【0044】
透明樹脂61は、基板10と透明樹脂61の可視光領域での屈折率差ΔRIは、-0.01≦ΔRI≦0.01の範囲に設定可能な透明性を有する樹脂が使用可能である。透明樹脂61は、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、及びそれらの組合せからなる群から選択される樹脂で構成することができる。
【0045】
また、透明樹脂61は、EHPE3150(株式会社ダイセル製)、デナコールEX-252(ナガセケムテックス株式会社製)、デナコールEX-141(ナガセケムテックス株式会社製)、デナコールEX-214L(ナガセケムテックス株式会社製)等の市販品の樹脂に、GA-H-1(キヤノン化成株式会社製)等の市販品の硬化剤を適量混合し、基板10と透明樹脂61の可視光領域での屈折率差ΔRIは、-0.01≦ΔRI≦0.01の範囲に調整した製造品を使用することができる。各材料の組み合わせや含有量等についての詳細の一例は、実施例にて記載する。その他、透明樹脂61は、基板10と透明樹脂61の可視光領域での屈折率差ΔRIは、-0.01≦ΔRI≦0.01の範囲にある市販品を用いることもできる。
【0046】
本発明のタイリング型表示装置100は、基板10と透明樹脂61の可視光領域での屈折率及び隣接するモジュール110の間隔Lを、前述の各範囲に制御する必要がある。タイリング型表示装置100は、ΔRIの範囲を前述の範囲に制御し、加えて隣接するモジュール110の間隔を前述の範囲に設定することで、シーム部60における反射光及び透過光のシームレス性を向上しつつ、シーム部60のシームレス化を図ることができる。
【0047】
ここで、基板10と透明樹脂61の可視光領域での屈折率と、隣接するモジュール110の間隔の何れか一方のみを前述の範囲に制御したとしても、シーム部60における反射光及び透過光のシームレス性は向上できず、シーム部60のシームレス化も図れない。
【0048】
タイリング型表示装置100は、シーム部60に充填する材料として、透明樹脂61の代わりに所定の色に着色した着色性透明樹脂を充填することができる。着色性透明樹脂は、視認性の観点から電極部30の色味に近い方が好ましく、一例として電極部30の色に合わせて黒色系、茶色系、黄色系のような系統の色となるように顔料や染料を配合することができる。
【0049】
着色性透明樹脂は、シーム部60における反射光及び透過光のシームレス性を向上しつつ、シーム部60のシームレス化を図るため、-10≦「シーム部60の透過率」-「電極部30の透過率」≦10の範囲の透過率を有するように設定される。
【0050】
タイリング型表示装置100におけるモジュール110の角部111は、外周部に沿って面取りされた面取り部120が形成される。面取り部120は、面取り用の回転刃を備える公知の加工装置を用いて面取り処理を行うことができる。
【0051】
面取り部120は、
図2に示すように、シームレス性向上とシーム部60のシームレス化を図る観点から、基板10の表面を通る仮想線Vと、面取り部120の加工面121とで画成される角度θが、30°≦θ≦75°の範囲であり、加工性の観点から好ましくは45°≦θ≦60°の範囲であり、強度的な観点から最も好ましいのは45°である。換言すると、角度θは、下限が30°、好ましくは45°である。角度θは、上限が75°、好ましくは60°である。
【0052】
また、面取り部120は、
図2に示すような平坦な切削面を有する切り欠き形状の他、
図3に示すように所定曲率で丸められたR加工を施してもよい。
【0053】
タイリング型表示装置100において、基板10は、
図4に示すように、基板10の半分以下の厚さを有するモールディング層70を、発光素子20を覆うように形成することができる。モールディング層70は、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂などの樹脂で構成され、耐熱性の観点からシリコーン樹脂が好ましい。
【0054】
モールディング層70の少なくとも一部を構成するための層状部材の形成方法は、特に制限されず、例えば、溶液流延法、溶融流延法、塗布法、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法、化学蒸着法(CVD法)などをはじめとする公知の方法によって形成することができる。
【0055】
タイリング型表示装置100は、
図5に示すように、耐衝撃性などの強度向上の観点から基板10の片面又は両面に保護層80を設けることが好ましい。
【0056】
保護層80は、ガラス又は有機系樹脂膜で構成することができる。有機系樹脂膜は、例えば光学フィルムとして使用可能な樹脂膜が適用可能であり、ポリエステル(PET)、TAC(Triacetylcellulose)、PMMA(Poly Methyl Methacrylate)、PC(Poly Carbonate)等が挙げられる。
【0057】
保護層80を基板10に接着するための接着剤層81は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、及びそれらの組合せからなる群から選択される樹脂である。
【0058】
タイリング型表示装置100は、保護層80の表面又はシーム部60の表面の少なくとも一方に低反射部90を形成することができる。
【0059】
低反射部90は、低反射となる材料で形成された膜からなる構成(例えば、黒色材料を含有したブラックマトリクス樹脂)や、低反射となるように所定の表面加工を施した構成(例えば、AR(Anti Reflection)処理、LR(Low Reflection)処理、AG(Anti Glare)処理、或いはこれら処理の組み合わせ)の少なくとの一方の構成を有する。
【0060】
タイリング型表示装置100のシーム部60に充填される透明樹脂61の屈折率は、アッベ屈折計 DR-M2(株式会社アタゴ製)を用いて、JIS K 7142に準拠する試験方法に基づき、ナトリウムのD線(589nm)、水素のF線(486.13nm)及び水素C線(656.27nm)の波長に対する屈折率nd、nf及びncを測定することができる。また、タイリング型表示装置100における隣接するモジュール110の間隔Lは、マイクロスコープを用いて測定することができる。
【0061】
以上説明したように、本実施形態に係るタイリング型表示装置100は、基板10と、基板10上に実装される発光素子20と、発光素子20に電圧を印加する電極部30と、を少なくとも有するモジュール110をタイリングしたものであって、隣接するモジュール110の間の間隙となるシーム部60には透明樹脂61が充填される。透明樹脂61は、基板10と透明樹脂61の可視光領域での屈折率差ΔRIが、-0.01≦ΔRI≦0.01の範囲にある。隣接するモジュール110の間隔Lは、0μm<L≦300μmである。透明樹脂61は、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、及びそれらの組合せからなる群から選択される樹脂で構成することができる。
【0062】
モジュール110の角部111は、外周部に沿って面取りされた面取り部120を形成するのが好ましい。面取り部120は、基板10の表面を通る仮想線Vと、面取り部120の加工面121とで画成される角度θは、30°≦θ≦75°とするのが好ましい。
【0063】
本実施形態に係るタイリング型表示装置100において、基板10の片面又は両面に保護層80を形成するのが好ましい。保護層80は、ガラス又は有機系樹脂膜で構成することができる。保護層80を基板10に接着する接着剤層81は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、及びそれらの組合せからなる群から選択される樹脂で構成することができる。
【0064】
本実施形態に係るタイリング型表示装置100は、透明樹脂61が充填されたシーム部60を覆うように低反射部90を備えることが好ましい。低反射部90は、保護層80又はシーム部60の表面の少なくとも一方に形成することができる。
【0065】
本実施形態に係るタイリング型表示装置100において、透明樹脂61は、-10≦「シーム部60の透過率」-「電極部30の透過率」≦10の範囲の透過率を有する着色性透明樹脂とすることができる。
【0066】
本実施形態に係るタイリング型表示装置100において、基板10は、基板10の半分以下の厚さを有するモールディング層70を、発光素子20を覆うように形成することができる。
【0067】
このような構成により、シーム部60における外光反射及び透過光の屈折・散乱によるシームレス性悪化が抑制できる。また、シーム部60をシームレス化させることができるため、正面からのシームレス性に加えて、斜め方向からのシームレス性向上も期待できる。したがって、タイリング型表示装置100は、恰も1枚のガラスモジュールのような外観を呈することが可能となり、小型から大型ディスプレイに至るまで幅広く好適に利用することができる。
【実施例0068】
本発明の効果を、以下の実施例及び比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0069】
[サンプルの製造]
実施例のサンプル(実施例1~4)、比較例のサンプル(比較例1~8)は、以下の工程に沿って作製した。
【0070】
〈透明樹脂の調合〉
基板間のシーム部に充填する透明樹脂として、自社処方の6種類の接着剤(接着剤1~接着剤6)を作製した。
【0071】
接着剤1は、EHPE3150(株式会社ダイセル製)24g、デナコールEX-252(ナガセケムテックス株式会社製)36g、デナコールEX-141(ナガセケムテックス株式会社製)6g、デナコールEX-214L(ナガセケムテックス株式会社製)34gを均一な溶液に調整後、硬化剤GA-H-1(キヤノン化成株式会社製)20gを混合して作製した。
【0072】
接着剤2は、EHPE3150(株式会社ダイセル製)26g、デナコールEX-252(ナガセケムテックス株式会社製)36g、デナコールEX-141(ナガセケムテックス株式会社製)10g、デナコールEX-214L(ナガセケムテックス株式会社製)28gを均一な溶液に調整後、硬化剤GA-H-1(キヤノン化成株式会社製)20gを混合して作製した。
【0073】
接着剤3は、EHPE3150(株式会社ダイセル製)20g、デナコールEX-252(ナガセケムテックス株式会社製)32g、デナコールEX-214L(ナガセケムテックス株式会社製)48gを均一な溶液に調整後、硬化剤GA-H-1(キヤノン化成株式会社製)20gを混合して作製した。
【0074】
接着剤4は、EHPE3150(株式会社ダイセル製)20g、デナコールEX-252(ナガセケムテックス株式会社製)34g、デナコールEX-141(ナガセケムテックス株式会社製)12g、デナコールEX-214L(ナガセケムテックス株式会社製)26g、エピクロンHP-7200(株式会社DIC製)8gを均一な溶液に調整後、硬化剤GA-H-1(キヤノン化成株式会社製)20gを混合して作製した。
【0075】
接着剤5は、EHPE3150(株式会社ダイセル製)10g、デナコールEX-252(ナガセケムテックス株式会社製)32g、デナコールEX-214L(ナガセケムテックス株式会社製)58gを均一な溶液に調整後、硬化剤GA-H-1(キヤノン化成株式会社製)20gを混合して作製した。
【0076】
接着剤6は、EHPE3150(株式会社ダイセル製)28g、デナコールEX-252(ナガセケムテックス株式会社製)22g、デナコールEX-141(ナガセケムテックス株式会社製)18g、デナコールEX-214L(ナガセケムテックス株式会社製)22g、エピクロンHP-7200(株式会社DIC製)10gを均一な溶液に調整後、硬化剤GA-H-1(キヤノン化成株式会社製)20gを混合して作製した。
【0077】
作製した接着剤1~接着剤6は、20mm×30mm×1mm厚のフッ素樹脂製の板を2枚準備し、うち1枚の中央部に5mm×20mmの大きさでくり抜き、2枚重ねて端部をクリップで固定した。次に、くり抜いた部分に接着剤を充填し、1日室温で保管して硬化させた。硬化した接着剤1~接着剤6は、アッベ屈折率計(DR-M2:アタゴ社製)を用いて、25℃で波長486nmの屈折率(nf)、波長589nmの屈折率(nd)及び波長656nmの屈折率(nc)をそれぞれ測定した。また、ガラス基板として使用したイーグルXG(コーニング株式会社製)との波長毎の屈折率差から屈折率差の平均値を算出した。接着剤1~接着剤6を硬化させた硬化物の各屈折率及びガラス基板の屈折率は、
図8のTable.1に示している。
【0078】
実施例1~実施例4のサンプルは、以下のように製造した。製造後、各サンプルの間隔Lは、マイクロスコープで測定した。使用したガラス基板の屈折率は、
図8のTable.1に示す通りであった。
【0079】
〈実施例1~実施例4のサンプルの製造工程〉
実施例1~実施例4のサンプルは、
図7に示すように、工程1~工程5を経て作製した。
【0080】
工程1では、ガラス基板として面取り角度45°(面取り幅:25μm)に面取りした50mm×50mm×0.5mm厚のイーグルXG(コーニング株式会社製)を3枚準備し、うち1枚を中央部で裁断した。
【0081】
工程2では、50μm厚、2mm幅の間隙調整用の粘着テープを、裁断した一方のガラス基板の面取り側の長辺、両側端面をそれぞれ覆うように、表面から裏面に亘って巻き付けるように貼付して第1基板10Aを作製した。次に、50μm厚、2mm幅の間隙調整用の粘着テープを、裁断した他方のガラスの裁断面側の長辺の両側端面をそれぞれ覆うように、表面から裏面に亘って巻き付けるように貼付して第2基板10Bを作製した。
【0082】
工程3では、裁断していない一方のガラス基板の表面に、接着剤を適量滴下し、第1基板10Aの面取り側端面と第2基板10Bの面取り側端面とを対向させた状態で、空気が巻き込まれないように接着剤を挟み込んで突き合せた後、工程4で残りのガラス基板を空気が巻き込まれないように積層した。工程4において、第1基板10Aと第2基板10Bとの間には間隙調整用の粘着テープが2枚(各端部1枚ずつ)介在した状態となる。
【0083】
工程5では、積層したガラス基板をクリップで固定し、1日室温で保管して接着剤を硬化させてサンプル作製を終了した。
【0084】
実施例1~実施例4の各サンプルの仕様は、
図8のTable.1に示す通りである。
【0085】
〈比較例1、比較例2のサンプルの製造工程〉
比較例1、比較例2は、実施例1~実施例4と同様、
図7に示す工程1~工程5を経て作製した。比較例1は接着剤5を使用し、比較例2は、接着剤6を使用した。製造後、各サンプルの間隔Lは、マイクロスコープで測定した。使用したガラス基板の屈折率は、
図8のTable.1に示す通りであった。また、比較例1、比較例2の各サンプルの仕様は、
図8のTable.1に示す通りである。
【0086】
比較例3~比較例5は、以下のように製造した。比較例3は接着剤1を使用し、比較例4は接着剤3を使用し、比較例5は接着剤4を使用した。製造後、各サンプルの間隔Lは、マイクロスコープで測定した。
【0087】
〈比較例3~比較例5のサンプルの製造工程〉
比較例3~比較例5のサンプルは、
図9に示すように、工程11~工程15を経て作製した。
【0088】
工程11では、ガラス基板として面取り角度45°(面取り幅:25μm)に面取りした50mm×50mm×0.5mm厚のイーグルXG(コーニング株式会社製)を3枚準備し、うち1枚を中央部で裁断した。
【0089】
工程12では、50μm厚、2mm幅の間隙調整用の粘着テープを2枚重ね合わせ、裁断した両方のガラス基板の面取り側の長辺の両側端面をそれぞれ覆うように、表面から裏面に亘って巻き付けるように貼付して第1基板10C、第2基板10Dを作製した。
【0090】
工程13では、裁断していない一方のガラス基板の表面に、接着剤を適量滴下し、第1基板10Cの面取り側端面と第2基板10Dの面取り側端面とを対向させた状態で、空気が巻き込まれないように接着剤を挟み込んで突き合せた後、工程14で、残りのガラス基板を空気が巻き込まれないように積層した。工程13において、第1基板10Cと第2基板10Dとの間には間隙調整用の粘着テープが8枚(各端部4枚ずつ)介在した状態となる。
【0091】
工程15では、積層したガラス基板をクリップで固定し、1日室温で保管して接着剤を硬化させてサンプル作製を終了した。
【0092】
比較例3~比較例5の各サンプルの仕様は、
図10のTable.3に示す通りである。
【0093】
比較例6~比較例8は、以下のように製造した。比較例6は接着剤1を使用し、比較例7は接着剤3を使用し、比較例8は接着剤1を使用した。製造後、各サンプルの間隔Lは、マイクロスコープで測定した。使用したガラス基板の屈折率は、
図13のTable.1に示す通りであった。
【0094】
〈比較例6、比較例7のサンプルの製造工程〉
比較例6、比較例7のサンプルは、
図11に示すように、工程21~工程25を経て作製した。
【0095】
工程21では、ガラス基板として面取り角度27°(面取り幅110μm)に面取りした50mm×50mm×0.5mm厚のイーグルXG(コーニング株式会社製)を3枚準備し、うち1枚を中央部で裁断した。
【0096】
工程22では、50μm厚、2mm幅の間隙調整用の粘着テープを、裁断した両方のガラス基板の面取り側の長辺の両側端面をそれぞれ覆うように、表面から裏面に亘って巻き付けるように貼付して第1基板10E、第2基板10Fを作製した。
【0097】
工程23では、裁断していない一方のガラス基板の表面に、接着剤を適量滴下し、前述の工程3で作製した実施例1の第2基板10Bの面取り側端面と、工程22で作製した第1基板10Eの面取り側端面とを対向させた状態で、空気が巻き込まれないように接着剤を挟み込んで突き合せた後、工程24で残りのガラス基板を空気が巻き込まれないように積層した。工程23において、第2基板10Bと第1基板10Eとの間には間隙調整用の粘着テープが2枚(各端部1枚ずつ)介在した状態となる。
【0098】
工程25では、積層したガラス基板をクリップで固定し、1日室温で保管して接着剤を硬化させてサンプル作製を終了した。
【0099】
〈比較例8のサンプルの製造工程〉
比較例8のサンプルは、
図12に示すように、工程31~工程35を経て作製した。
【0100】
工程31では、ガラス基板として面取り角度27°(面取り幅110μm)に面取りした50mm×50mm×0.5mm厚のイーグルXG(コーニング株式会社製)を3枚準備し、うち1枚を中央部で裁断した。
【0101】
工程32では、50μm厚、2mm幅の間隙調整用の粘着テープを、面取り角27°の裁断した一方のガラス基板の面取り側の長辺の両側端面を覆うように、表面から裏面に亘って巻き付けるように貼付して第1基板10Gを作製した。次に、面取り角27°の裁断したもう一方のガラス基板の裁断面側の長辺の両側端面を覆うように、表面から裏面に亘って巻き付けるように貼付して第2基板10Hを作製した。
【0102】
工程33では、裁断していない一方のガラス基板の表面に、接着剤を適量滴下し、第1基板10Gの面取り側端面と、第2基板10Hの面取り側端面とを対向させた状態で、空気が巻き込まれないように接着剤を挟み込んで突き合せた後、工程34で残りのガラス基板を空気が巻き込まれないように積層した。工程33において、第1基板10Gと第2基板10Hとの間には間隙調整用の粘着テープが2枚(各端部1枚ずつ)介在した状態となる。
【0103】
工程35では、積層したガラス基板をクリップで固定し、1日室温で保管して接着剤を硬化させてサンプル作製を終了した。
【0104】
比較例6~比較例8の各サンプルの仕様は、
図13のTable.5に示す通りである。
【0105】
[評価方法]
前述の手順により作製した実施例及び比較例の各サンプルを窓に固定し、被験者5人が1m離れた場所から様々な角度で各基板のシーム部となる繋ぎ目を観察して官能評価を行った。評価の基準は、以下の通りとし、被験者5人の評価値を平均化した四捨五入値を採用した。
・1:繋ぎ目が良く見える
・2:繋ぎ目が見える
・3:繋ぎ目がやや見える
・4:繋ぎ目が微かに見える
・5:繋ぎ目がほとんど見えない。
【0106】
[結果]
図8のTable.2に示すように、実施例1の視認試験の結果は「5」、実施例2の視認試験の結果は「5」、実施例3の視認試験の結果は「4」、実施例4の視認試験の結果は「4」となった。一方、
図8のTable.2、
図10のTable.4、
図13のTable.6の何れかに示すように、比較例1、比較例2の視認試験の結果は「3」、比較例3~比較例7の視認試験の結果は「2」、比較例8の視認試験の結果は「1」となった。
【0107】
実施例1~実施例4は、何れも基板と透明樹脂(接着剤1~接着剤4)の可視光領域での屈折率差ΔRIは、-0.01≦ΔRI≦0.01の範囲にあり、隣接するモジュールの間隔Lに相当するガラス基板間の間隔が0μm<L≦300μmの範囲にあった。特に、実施例1、実施例2は、屈折率差ΔRIが-0.003≦ΔRI≦0.003の範囲となったため、実施例3や実施例4と比べてよりシーム部のシームレス化が図れたことを示している。
【0108】
また、実施例1~4は、基板の表面を通る仮想線と、面取り部の加工面とで画成される角度θは、30°≦θ≦75°の範囲であった。このことから、タイリング型表示装置は、基板間の間隔Lと屈折率差ΔRIに加えて、面取り部の面取り角度を前述の範囲とすることで、シームレス性向上及びシーム部のシームレス化に作用することが確認された。したがって、実施例1~実施例4に示した本発明の技術を利用することで、複数のモジュールのタイリング構造であっても、恰も1枚のガラスモジュールのような外観を呈することが可能となり、小型から大型ディスプレイに至るまで幅広く好適に利用することができることが示された。
【0109】
一方、比較例1、比較例2は、屈折率差ΔRIが-0.01≦ΔRI≦0.01の範囲を外れ、比較例3~比較例5は、隣接するモジュールの間隔Lに相当するガラス基板間の間隔が0μm<L≦300μmの範囲の範囲から外れ、比較例6~比較例8は、面取り部の面取り角度が30°≦θ≦75°の範囲から外れていた。比較例1~比較例8は、何れも実施例1~実施例4と比べて、視認試験の結果が悪く、シームレス性やシームレス化の観点から販売品として十分な性能を確保できないことがわかった。このことから、タイリング型表示装置において、基板と透明樹脂の屈折率差ΔRI、隣接するモジュールの間隔L、面取り部の面取り角度が、シームレス性向上及びシームレス化に深く関与していることが確認され、特に基板と透明樹脂の屈折率差ΔRI及び隣接するモジュールの間隔Lはシームレス性向上及びシームレス化を図る上で重要な要素であることが確認できた。