(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082732
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】カテーテルデバイス、医療システム及びカテーテルデバイスの留置方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
A61M25/00 540
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196786
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉永 健
(72)【発明者】
【氏名】澤田 賢志
(72)【発明者】
【氏名】森田 のぞみ
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA03
4C267BB02
4C267BB26
4C267BB62
4C267CC26
(57)【要約】
【課題】生体内に留置した留置部の意図しない脱落を抑制すること。
【解決手段】生体内に留置する留置部20を有するカテーテルデバイス1であって、留置部20は、拡張及び収縮可能な複数本のアーム部21を有し、アーム部21は、流体の流入及び排出に伴い膨張及び収縮可能な膨縮用ルーメン23を有する管状体で構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内に留置する留置部を有するカテーテルデバイスであって、
前記留置部は、拡張及び収縮可能な複数本のアーム部を有し、
前記アーム部は、流体の流入及び排出に伴い膨張及び収縮可能な管状体で構成される、カテーテルデバイス。
【請求項2】
前記アーム部は、径方向外側への変形を促して拡張させるための拡張誘導部を有する、請求項1に記載のカテーテルデバイス。
【請求項3】
前記拡張誘導部は、前記アーム部の外周面に形成された凹部、又は前記アーム部の基端よりも幅が狭い幅狭部のうち、少なくとも何れか1つを有する、請求項2に記載のカテーテルデバイス。
【請求項4】
前記生体は、膀胱である、請求項1~3の何れか1項に記載のカテーテルデバイス。
【請求項5】
前記カテーテルデバイスは、
長尺なカテーテル本体と、前記膀胱内の尿を生体外に導く導出ルーメンと、前記導出ルーメンと連通する導出口と、を有し、
前記アーム部は、前記導出口付近から先端側に延在する、請求項4に記載のカテーテルデバイス。
【請求項6】
前記留置部は、周方向で隣り合う前記アーム部の間に形成される複数のスリットを有し、
前記カテーテルデバイスは、軸方向から見て前記スリットの基端と径方向で重なるように前記導出口付近に配置され生体情報を取得するセンサ部を有する、請求項5に記載のカテーテルデバイス。
【請求項7】
前記カテーテル本体は、前記導出ルーメンと平行に配置され、前記センサ部を収納するセンサ用ルーメンを有する、請求項6に記載のカテーテルデバイス。
【請求項8】
前記カテーテルデバイスは、前記アーム部の軸方向への移動により前記アーム部を変形させて拡張及び収縮する拡張収縮部を有する、請求項5に記載のカテーテルデバイス。
【請求項9】
前記拡張収縮部は、前記カテーテル本体の内部の先端まで挿通可能で、先端が前記アーム部を軸方向に移動可能に接続された心棒である、請求項8に記載のカテーテルデバイス。
【請求項10】
前記拡張収縮部は、前記導出口と、前記導出口と連通して前記導出ルーメンとして機能する内腔と、を有し、前記カテーテル本体の内部の先端まで挿通可能で、先端が前記アーム部を軸方向に移動可能に接続された中空パイプである、請求項8に記載のカテーテルデバイス。
【請求項11】
前記カテーテルデバイスは、前記留置部の先端に配置される先端チップを有し、
前記先端チップは、先端が前記膀胱と連通し、基端が前記導出ルーメンと連通する連通孔を有する、請求項8に記載のカテーテルデバイス。
【請求項12】
前記先端チップは、外周部に前記アーム部の先端部が接続されると共に、前記拡張収縮部に接続される底部を有し、
前記底部は、前記拡張収縮部の軸方向への移動に伴い、前記外周部が軸方向外側に傾斜して変形する、請求項11に記載のカテーテルデバイス。
【請求項13】
前記アーム部は、中心軸を基準として、径方向で前記センサ部と対峙する側に偏心して配置される、請求項6に記載のカテーテルデバイス。
【請求項14】
前記スリットは、前記アーム部の収縮時では軸方向にねじれて形成される、請求項6に記載のカテーテルデバイス。
【請求項15】
前記留置部は、周方向で隣り合う前記アーム部同士を連結するように前記スリットの基端側に形成された膜部を有し、
前記膜部は、前記スリットのうち、基端が軸方向から見て前記センサ部と径方向で重ならない前記スリットの少なくとも1つに形成される、請求項6に記載のカテーテルデバイス。
【請求項16】
前記センサ部は、前記生体情報として前記尿中の酸素分圧を検出可能な酸素センサ本体を有する酸素センサ、又は、前記生体情報として前記尿の温度を測定可能な温度センサ本体を有する温度センサの少なくとも何れかを含む、請求項6に記載のカテーテルデバイス。
【請求項17】
前記酸素センサ本体は、前記導出ルーメン内に流入した前記尿と接するように一部を露出した状態で配置される、請求項16に記載のカテーテルデバイス。
【請求項18】
前記温度センサ本体は、前記導出ルーメン内に流入した前記尿と接しないように先端側が前記導出ルーメン内に露出しない状態で配置される、請求項16に記載のカテーテルデバイス。
【請求項19】
前記センサ用ルーメンは、前記センサ部を液密に収容する、請求項7に記載のカテーテルデバイス。
【請求項20】
前記酸素センサは、蛍光式酸素センサである、請求項16に記載のカテーテルデバイス。
【請求項21】
請求項6に記載の前記カテーテルデバイスと、
前記センサ部で検出された前記生体情報を解析する解析部と、前記解析部で解析された結果を通信先に送信する処理制御部と、を少なくとも含み、生体外に配置される測定装置と、を備える、医療システム。
【請求項22】
生体内に留置する留置部を有するカテーテルデバイスの留置方法であって、
前記留置部は、変形に伴い拡張及び収縮すると共に、流体の流入及び排出に伴い膨張及び収縮可能な管状体で構成される複数のアーム部を有し、
留置位置まで送達した前記留置部の前記アーム部を変形させて拡張させるステップと、
拡張した前記アーム部に前記流体を流入して膨張させて前記留置部を前記留置位置に留置させるステップと、
を含む、カテーテルデバイスの留置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内に留置されるカテーテルデバイス、該デバイスを用いた医療システム、及びカテーテルデバイスの留置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、先端近辺に長手方向に延びる複数本のスリットを備えた可撓性を有するマレコットチューブと、マレコットチューブに沿って軸方向に移動自在に配置され、先端がマレコットチューブの先端に配置されたマレコット部(留置部)に固定されている可撓性を有する心線と、マレコットチューブの基端側に固定され、その端部から心線の基端を突出させている筒状のコネクタと、心線の勝手な移動を拘束するゴム体とを備えた留置カテーテルについて開示されている。この留置カテーテルは、心線の基端に取り付けたノブを手前に引くと、心線が手前にスライドしてマレコット部が拡張し、心線を押し込むと、マレコット部が閉じて生体外にカテーテルを抜くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
膀胱留置用カテーテルは、管腔臓器である尿道に挿入して使用するため、JIS規格(JIS T 3214)に記載のように、安全性に関する要求として例えば16Frの場合はバルーン部が1.0kg以上の保持力を有する必要がある。
【0005】
特許文献1のカテーテルは、一般的なバルーン型の膀胱留置カテーテルに比べて簡易的にマレコット部の拡張及び収縮が可能となる一方、マレコット部は、カテーテルに形成された複数本のスリットによりカテーテルの一部を拡張及び収縮させる簡素な構成なため、前述のJIS規格に準拠した保持力を確保することが難しい。このように、マレコット部は、一般的なバルーン型のバルーンと比べて保持力が弱く、膀胱内から抜け易いという欠点がある。
【0006】
そのため、特許文献1のカテーテルは、マレコット部を膀胱内に留置した際、外力等によるマレコット部の拡張部分の変形等により膀胱内から脱落するおそれがあり改善の余地がある。
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、具体的には、生体内に留置した留置部の意図しない脱落を抑制することができるカテーテルデバイス、該カテーテルデバイスを用いた医療システム及び該カテーテルデバイスの留置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記(1)~(22)の何れか1つによって達成される。
【0009】
(1)生体内に留置する留置部を有するカテーテルデバイスであって、前記留置部は、拡張及び収縮可能な複数本のアーム部を有し、前記アーム部は、流体の流入及び排出に伴い膨張及び収縮可能な管状体で構成される、カテーテルデバイス。
【0010】
(2)前記アーム部は、径方向外側への変形を促して拡張させるための拡張誘導部を有する、上記(1)のカテーテルデバイス。
【0011】
(3)前記拡張誘導部は、前記アーム部の外周面に形成された凹部、又は前記アーム部の基端よりも幅が狭い幅狭部のうち、少なくとも何れか1つを有する、上記(2)のカテーテルデバイス。
【0012】
(4)前記生体は、膀胱である、上記(1)~(3)の何れかのカテーテルデバイス。
【0013】
(5)前記カテーテルデバイスは、長尺なカテーテル本体と、前記膀胱内の尿を生体外に導く導出ルーメンと、前記導出ルーメンと連通する導出口と、を有し、前記アーム部は、前記導出口付近から先端側に延在する、上記(4)のカテーテルデバイス。
【0014】
(6)前記留置部は、周方向で隣り合う前記アーム部の間に形成される複数のスリットを有し、前記カテーテルデバイスは、軸方向から見て前記スリットの基端と径方向で重なるように前記導出口付近に配置され生体情報を取得するセンサ部を有する、上記(5)のカテーテルデバイス。
【0015】
(7)前記カテーテル本体は、前記導出ルーメンと平行に配置され、前記センサ部を収納するセンサ用ルーメンを有する、上記(5)又は(6)のカテーテルデバイス。
【0016】
(8)前記カテーテルデバイスは、前記アーム部の軸方向への移動により前記アーム部を変形させて拡張及び収縮する拡張収縮部を有する、上記(5)~(7)の何れかのカテーテルデバイス。
【0017】
(9)前記拡張収縮部は、前記カテーテル本体の内部の先端まで挿通可能で、先端が前記アーム部を軸方向に移動可能に接続された心棒である、上記(8)のカテーテルデバイス。
【0018】
(10)前記拡張収縮部は、前記導出口と、前記導出口と連通して前記導出ルーメンとして機能する内腔と、を有し、前記カテーテル本体の内部の先端まで挿通可能で、先端が前記アーム部を軸方向に移動可能に接続された中空パイプである、上記(8)のカテーテルデバイス。
【0019】
(11)前記カテーテルデバイスは、前記留置部の先端に配置される先端チップを有し、前記先端チップは、先端が前記膀胱と連通し、基端が前記導出ルーメンと連通する連通孔を有する、上記(5)~(8)の何れかのカテーテルデバイス。
【0020】
(12)前記先端チップは、外周部に前記アーム部の先端部が接続されると共に、前記拡張収縮部に接続される底部を有し、前記底部は、前記拡張収縮部の軸方向への移動に伴い、外周部が軸方向外側に傾斜して変形する、上記(11)のカテーテルデバイス。
【0021】
(13)前記アーム部は、中心軸を基準として、径方向で前記センサ部と対峙する側に偏心して配置される、上記(6)のカテーテルデバイス。
【0022】
(14)前記スリットは、前記アーム部の収縮時では軸方向にねじれて形成される、上記(6)のカテーテルデバイス。
【0023】
(15)前記留置部は、周方向で隣り合う前記アーム部同士を連結するように前記スリットの基端側に形成された膜部を有し、前記膜部は、前記スリットのうち、基端が軸方向から見て前記センサ部と径方向で重ならない前記スリットの少なくとも1つに形成される、上記(6)のカテーテルデバイス。
【0024】
(16)前記センサ部は、前記生体情報として前記尿中の酸素分圧を検出可能な酸素センサ本体を有する酸素センサ、又は、前記生体情報として前記尿の温度を測定可能な温度センサ本体を有する温度センサの少なくとも何れかを含む、上記(6)のカテーテルデバイス。
【0025】
(17)前記酸素センサ本体は、前記導出ルーメン内に流入した前記尿と接するように一部を露出した状態で配置される、上記(16)のカテーテルデバイス。
【0026】
(18)前記温度センサ本体は、前記導出ルーメン内に流入した前記尿と接しないように先端側が前記導出ルーメン内に露出しない状態で配置される、上記(16)のカテーテルデバイス。
【0027】
(19)前記センサ用ルーメンは、前記センサ部を液密に収容する、上記(7)のカテーテルデバイス。
【0028】
(20)前記酸素センサは、蛍光式酸素センサである、上記(16)~(18)の何れかのカテーテルデバイス。
【0029】
(21)上記(6)の前記カテーテルデバイスと、前記センサ部で検出された前記生体情報を解析する解析部と、前記解析部で解析された結果を通信先に送信する処理制御部と、を少なくとも含み、生体外に配置される測定装置と、を備える、医療システム。
【0030】
(22)生体内に留置する留置部を有するカテーテルデバイスの留置方法であって、前記留置部は、変形に伴い拡張及び収縮すると共に、流体の流入及び排出に伴い膨張及び収縮可能な管状体で構成される複数のアーム部を有し、前記留置部を留置位置まで送達された前記留置部の前記アーム部を変形させて拡張させるステップと、拡張した前記アーム部に前記流体を流入して膨張させて前記留置部を前記留置位置に留置させるステップと、を含む、カテーテルデバイスの留置方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一実施形態のカテーテルデバイスによれば、留置部が拡張後に膨張することで留置位置から抜け難くなるため、生体内からの意図しない脱落を抑制することができる。
【0032】
また、本発明の一実施形態の医療システムによれば、生体内に留置した留置部の意図しない脱落を抑制できるカテーテルデバイスを用いて生体情報の解析及び送信が可能なため、患者のバイタルを適切にモニタリングすることができる。
【0033】
また、本発明の一実施形態のカテーテルデバイスの留置方法によれば、留置部のアーム部を拡張した後、アーム部に流体を流入して膨張させた状態で留置部を留置させることができるため、留置位置からの留置部の意図しない脱落を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】第1実施形態に係るカテーテルデバイスの留置部の拡張前の状態を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係るカテーテルデバイスの留置部の膨張後の状態を示す先端側周辺の部分拡大図である。
【
図3A】
図1に示すA-A線で切断した軸方向視の断面図である。
【
図3B】
図1に示すB-B線で切断した軸方向視の断面図である。
【
図4A】アーム部の先端部及び先端チップの部分拡大図である。
【
図4B】アーム部の基端部周辺の部分拡大図である。
【
図5】第1実施形態に係るカテーテルデバイスのスリットの基端からセンサ部に尿が流れ込んでいる状態を示す概念図である。
【
図6B】留置部の拡張を促す他の構成を示す図である。
【
図6C】留置部の拡張を促す他の構成を示す図である。
【
図7A】第1実施形態に係るカテーテルデバイスの変形例を示す図である。
【
図8A】第1実施形態に係るカテーテルデバイスの他の変形例を示す図である。
【
図9A】第1実施形態に係るカテーテルデバイスの動作例を示す図である。
【
図9B】第1実施形態に係るカテーテルデバイスの動作例を示す図である。
【
図9C】第1実施形態に係るカテーテルデバイスの動作例を示す図である。
【
図9D】第1実施形態に係るカテーテルデバイスの動作例を示す図である。
【
図10】本実施形態に係る医療システムの機能ブロック図である。
【
図11】本実施形態に係る医療システムの変形例を示す機能ブロック図である。
【
図12】変形例の医療システムにおけるセンサ部の配置位置を示す図である。
【
図13A】第2実施形態に係るカテーテルデバイスの留置部の拡張前の状態を示す図である。
【
図13B】第2実施形態に係るカテーテルデバイスの留置部の膨張後の状態を示す図である。
【
図14A】第3実施形態に係るカテーテルデバイスの留置部の拡張前の状態を示す図である。
【
図14B】第3実施形態に係るカテーテルデバイスの留置部の膨張後の状態を示す図である。
【
図15A】第4実施形態に係るカテーテルデバイスの留置部の拡張前の状態を示す図である。
【
図15B】第4実施形態に係るカテーテルデバイスの留置部の膨張後の状態を示す図である。
【
図16】第5実施形態に係るカテーテルデバイスの留置部の膨張後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ここで示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者等により考え得る実施可能な他の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範囲、要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0036】
更に、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状等について、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0037】
本明細書において、説明の便宜上、以下の方向について定義する。
図1において、「長軸方向」は、カテーテルデバイス1の長手方向(図中左右方向)であって、カテーテルデバイス1の中心軸Cに沿う方向とする。「径方向」は、カテーテルデバイス1の中心軸Cに対して離隔又は接近する方向とする。「周方向」は、カテーテルデバイス1の中心軸Cを基準軸とした回転方向とする。
【0038】
図1において、「先端」は、生体内へ挿入する側(図中左側)とし、先端と反対側(図中右側のハブ50が配置される側)を「基端」とする。
【0039】
なお、以下の説明において、「第1」、「第2」のような序数詞を付して説明する場合は、特に言及しない限り、便宜上用いるものであって何らかの順序を規定するものではない。
【0040】
本発明に係るカテーテルデバイス1は、一部が生体内に留置され、生体内から所定の体液を生体外に排出すると共に、体液から所定の生体情報を測定して臓器のバイタルをモニタリングすることを目的とする医療器具である。カテーテルデバイス1は、例えば留置部位となる留置部20を膀胱内に留置し、留置部20の基端側から膀胱300に蓄尿される尿310を逐次排出すると共に、尿310中の酸素分圧を測定するためのデバイスとして使用することができる(
図9D、
図10等を参照)。
【0041】
なお、カテーテルデバイス1の留置部位は、膀胱300に限らず、カテーテルデバイス1が留置可能な生体管腔内であればよい。また、生体情報を測定する体液についても、尿310に限らず、生体外に排出可能であり、かつ生体情報が測定可能な生体中に存在し得る流体であればよい。
【0042】
[第1実施形態]
図1~
図5を参照しながら、第1実施形態のカテーテルデバイス1の構成について説明する。
【0043】
第1実施形態に係るカテーテルデバイス1は、
図1又は
図2に示すように、長尺なカテーテル本体10と、カテーテル本体10の先端側に配置される留置部20と、留置部20の先端に配置される先端チップ30と、留置部20を拡張及び収縮させる拡張収縮部40と、カテーテル本体10の基端部10bに取り付けられるハブ50と、生体情報を取得するセンサ部60と、を備える。
【0044】
図1には、カテーテルデバイス1の挿入時及び抜去時の状態が示されており、
図2には、カテーテルデバイス1の留置時の状態が示されている。カテーテルデバイス1は、
図1に示すように、挿入時及び抜去時には留置部20のアーム部21が収縮した状態となり、
図2に示すように、留置時には留置部20のアーム部21が拡張し膨張した状態となる。
【0045】
〈カテーテル本体〉
カテーテル本体10は、
図1又は
図2に示すように、先端から基端に向かって連通する内腔10cを有する長尺な管状部材で構成される。カテーテル本体10は、先端側に留置部20が配置される。カテーテル本体10の先端部10a(留置部20の先端に相当)には先端チップ30が配置され、基端部10bは、ハブ50の先端開口部51と連通する。
【0046】
カテーテル本体10に形成された内腔10cのうち、留置部20よりも基端側の部分は、膀胱300内の尿310を生体外に排出するための導出ルーメン11として機能する。また、カテーテル本体10において、留置部20の基端付近に形成される開口部10dは、導出ルーメン11の先端開口と一致し、膀胱300内の尿310を導出口12として機能する。
【0047】
カテーテル本体10は、開口部10d付近から基端部10b付近に向かって導出ルーメン11と軸方向で平行に配置されるセンサ用ルーメン13を有する。センサ用ルーメン13は、
図3Aに示すように、軸方向から見てスリット22の基端22bと径方向で重なるようにカテーテル本体10における導出ルーメン11の中心から径方向外側に偏心した位置に配置される。
【0048】
センサ用ルーメン13は、生体情報を測定する各種センサで構成されるセンサ部60(酸素センサ本体61a、温度センサ本体62a、流速センサ本体63a)及びセンサ部60から引き出された伝送部(酸素用伝送部61b、温度用伝送部62b、流速用伝送部63b)を収容する。センサ用ルーメン13は、
図1に示すように、導出ルーメン11の先端から若干基端側に入り込んだカテーテル本体10の開口部10d付近を始点位置として基端は第1分岐部14と連通する。センサ部60は、センサ用ルーメン13の先端側に配置されていてもよいし、先端側に固定されていてもよい。
【0049】
センサ用ルーメン13は、
図3Aに示すように、軸方向と交差する方向に延びる壁部13aが先端に形成されている。壁部13aは、センサ用ルーメン13の先端開口を閉塞する。壁部13aには、先端側の一部が露出した状態の酸素センサ本体61aが埋設される。センサ部60は、導出ルーメン11とは別のセンサ用ルーメン13に液密に収容可能となるため、尿310の排出を妨げず、またセンサ用ルーメン13への尿310の流入が阻止されてセンサ部60の故障や感電等が防止できる。
【0050】
カテーテル本体10は、
図1に示すように、生体情報を取得するセンサ部60の伝送部(酸素用伝送部61b、温度用伝送部62b、流速用伝送部63b)を生体外に引き出すための第1分岐部14を有する。第1分岐部14内で、生体情報を取得するセンサ部60の伝送部(酸素用伝送部61b、温度用伝送部62b、流速用伝送部63b)は、軸方向に摺動可能に挿通されてよい。また、カテーテル本体10は、
図1に示すように、アーム部21の膨縮用ルーメン23に対して流体を流入及び排出するための第2分岐部15を有する。第2分岐部15は、インデフレーターやシリンジ等のアーム部21を膨張及び収縮可能なデバイスと接続可能に構成される。
【0051】
カテーテル本体10は、留置部20を膨張及び収縮させるための流体が流通する流体用ルーメン16を有する。流体用ルーメン16は、
図3Aに示すように、カテーテル本体10の肉厚部の異なる2箇所のスリット22同士の間に形成される。流体用ルーメン16の先端は、
図4Aに示すように、膨縮用ルーメン23の基端と接続される。流体用ルーメン16の形成位置は、特に制限されないが、流体の流通によるセンサ部60への影響を考慮すると、例えば径方向でセンサ部60と対向する側の肉厚部等のセンサ部60から離れた位置に形成するのが好ましい。
【0052】
カテーテル本体10の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、軟質ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等の各種ゴム類、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー等の各種エラストマー、ポリアミド、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、結晶性ポリエチレン、結晶性ポリプロピレン等の結晶性プラスチックを用いることができる。これらの材料中に、例えば、ヘパリン、プロスタグランジン、ウロキナーゼ、アルギニン誘導体等の抗血栓性物質を配合し、抗血栓性を有する材料とすることも可能である。
【0053】
<留置部>
留置部20は、カテーテル本体10の先端側に配置され、生体内の所定の留置位置(膀胱300)に留置される。留置部20は、カテーテルデバイス1の生体内への挿入状態を維持するための部位である。留置部20は、拡張収縮可能な複数のアーム部21と、周方向で隣り合うアーム部21の間に形成されるスリット22と、を有する。
【0054】
アーム部21は、流体の流入及び排出に伴い膨張及び収縮可能な管状体で構成される。アーム部21は、先端部21aが先端チップ30の底部31に接続され、基端部21bがカテーテル本体10の開口部10d周囲の肉厚部に接続される。アーム部21は、
図2に示すように、周方向に等間隔に4つ設けることができる。アーム部21は、カテーテル本体10に対し、周方向に等間隔に配置することで留置時の姿勢を安定させることができる。
【0055】
アーム部21は、自然状態で拡張するように成形されている。
図1に示した状態から拡張収縮部40の操作によって先端部21aを基端側に移動すると、アーム部21の一部が自然状態に戻り、径方向外側に屈曲して拡張する(
図9Bを参照)。アーム部21は、拡張後、流体が膨縮用ルーメン23に流入すると屈曲した状態で膨張する(
図2、
図9Cを参照)。アーム部21は、拡張収縮部40の操作によって拡張状態のアーム部21の先端部21aを先端側に移動すると、径方向外側に屈曲した部分が元の形状に戻って収縮する(
図1、
図9Aを参照)。なお、アーム部21は自然状態で収縮した状態(軸方向に延びた状態)としてもよい。
【0056】
スリット22は、アーム部21が拡張及び収縮可能なようにカテーテル本体10の軸方向に沿って形成される。スリット22の先端22aは、先端チップ30の底部31付近まで延び、基端22bは、カテーテル本体10の開口部10d付近まで延びる。スリット22は、アーム部21が拡張した際、隣り合うアーム部21の側面が周方向に離隔することで、開口部22cを形成する。開口部22cは、導出ルーメン11の先端に位置する導出口12と連通し、膀胱300内の尿310を導出口12へ導く。
【0057】
膨縮用ルーメン23は、アーム部21内に形成され、アーム部21の先端部21aから基端部21bに向かって連通する内腔である。膨縮用ルーメン23は、
図4Aに示すように先端が先端チップ30の底部31に形成される孔部34を通じて内部空間33と連通し、
図4Bに示すように基端が流体用ルーメン16と連通する。
【0058】
膨縮用ルーメン23は、複数のアーム部21にそれぞれ設けられ、流体用ルーメン16と連通するのはこのうちの少なくとも1つである。流体用ルーメン16と連通する膨縮用ルーメン23は、流体用ルーメン16を流通する流体を先端チップ30の内部空間33まで流通させることができる。また、膨縮用ルーメン23のそれぞれに充填された流体は、先端チップの内部空間33を通った後、流体用ルーメン16と連通する膨縮用ルーメン23を通じて流体用ルーメン16に排出することができる。
【0059】
このように、留置部20は、拡張収縮部40の軸方向への移動による拡張及び収縮に加えて、流体により膨張及び収縮可能な構成なため、膀胱300内に留置した際、従来のバルーン型の膀胱留置カテーテルと同等の保持力を確保することができる。また、従来のバルーン型の膀胱留置カテーテルでは、カテーテル内に尿を取り込む導尿口がバルーンの先端側となるため、膀胱内に一定程度尿が蓄積されないと排尿に至らなかった。これに対し、本実施形態のカテーテルデバイス1においては、複数のアーム部21の間の開口部22cからカテーテル内に尿310を取り込むことができるため、膀胱300内の尿310の量が少なくてもカテーテルデバイス1の導出ルーメン11内に尿310を取り込むことができる。
【0060】
留置部20の構成材料としては、拡張及び収縮可能であって、かつ流体による膨張及び収縮可能な生体適合性を有する材料であれば特に制限されず、例えばカテーテル本体10や公知のバルーンカテーテルのバルーンに使用される材料と同様のものを適用することができる。
【0061】
<先端チップ>
先端チップ30は、留置部20の先端となるアーム部21の先端部21aから連続して配置される。先端チップ30が設けられることによって、カテーテルデバイス1は、先端が生体器官(管腔内壁等)に接触した際に、生体器官に損傷等が生じることを好適に防止できる。
【0062】
先端チップ30の底部31には、アーム部21の先端部21aが接続される。また、底部31には、拡張収縮部40の先端部40aが着脱可能な凹部32が形成されている。
【0063】
先端チップ30は、
図4Aに示すように、流体が流入可能な内部空間33が形成される。内部空間33は、底部31に形成された孔部34を通じてアーム部21の膨縮用ルーメン23のそれぞれと流体が流通可能に連通している。孔部34の形状や形成数は特に制限されないが、少なくともアーム部21のそれぞれに対して1つ以上設ければよい。
【0064】
先端チップ30は、外表面と底部31とを連通する連通孔35が形成される。連通孔35は、カテーテル本体10の内腔10cと連通している。そのため、カテーテルデバイス1を膀胱300内に送達した際、先端チップ30が膀胱300に到達したか否かを、連通孔35を介して排出される尿310で確認することができる。
【0065】
先端チップ30の構成材料は、カテーテル本体10と同様の材料を適用することができる。また、先端チップ30は、血管内壁への損傷防止の観点から、カテーテル本体10よりも柔軟な材料で構成することができる。
【0066】
<拡張収縮部>
拡張収縮部40は、長尺な心棒で構成され、留置部20を拡張及び収縮する際に操作される。拡張収縮部40は、カテーテル本体10の内部の先端(詳細には、開口部10dを通過して先端チップ30の底部31との接続部分)まで挿通可能で、基端側への引き操作により先端チップ30を基端側に移動させると、これに追従してアーム部21の先端部21aが基端側へ移動して留置部20を拡張する。拡張収縮部40は、先端側への押し操作により先端チップ30を先端側に移動させると、これに追従してアーム部21の先端部21aが先端側へ移動して留置部20を収縮する。
【0067】
拡張収縮部40の先端部40aは、先端チップ30の凹部32に嵌合した状態で固定され、基端部40bはハブ50に固定される。これにより、拡張収縮部40の軸方向への移動は、ハブ50の軸方向への移動に追従する。したがって、カテーテルデバイス1は、留置部20を膀胱300内に送達した後にハブ50の軸方向へ移動させると、生体外からアーム部21を変形させて拡張及び収縮できる。なお、留置部20の各アーム部21が、流体で膨張された状態で拡張状態を維持できるように癖付けされている場合には、拡張収縮部40は、先端チップ30の凹部32に対して着脱可能とし、留置部20の拡張時に生体外に引き抜ける構成とすることもできる。
【0068】
拡張収縮部40の構成材料は、留置部20の拡張及び収縮時に先端チップ30を軸方向に移動可能な剛性を有する材料であれば特に制限されない。
【0069】
<ハブ>
ハブ50は、医療分野において公知のコネクタ(Yコネクタ等)と接続可能に構成され、コネクタを介して接続される採尿チューブを通って蓄尿バッグに排出することができる。ハブ50の先端開口部51は、カテーテル本体10の基端部10bと接続され、導出ルーメン11は、ハブ50の先端開口部51と連通する。これにより、導出口12から流入した尿310は、導出ルーメン11を流通してハブ50の先端開口部51から生体外に排出できる。
【0070】
ハブ50は、
図1、
図2に示すように、カテーテル本体10に対して軸方向に相対移動可能に構成される。ハブ50には、拡張収縮部40の基端部40bが固定されているため、拡張収縮部40の軸方向への引き操作及び押し操作は、ハブ50の軸方向への摺動操作により行うことができる。
【0071】
<センサ部>
センサ部60は、所定の生体情報を取得する。センサ部60は、
図3Aに示すように、軸方向から見たとき、スリット22の基端22bの位置と径方向で重なるように配置される。センサ部60は、酸素センサ61、又は、温度センサ62、又は、流速センサ63の少なくとも一つ以上のセンサで構成することができる。また、センサ部60は、前述のセンサに限定されず、例えば、光センサ、超音波センサ、圧センサ、流量センサ、加速度センサ、導電率センサ、バイオマーカーセンサ等の目的とする生体情報が取得可能なセンサを含めて構成することができる。
【0072】
酸素センサ61は、所謂、公知の蛍光式(光学式)酸素センサとして構成され、励起光の照射を受けることで尿310に含まれる酸素濃度に応じた強度の蛍光を発するように構成される。酸素センサ61は、尿310に含まれる酸素を測定する酸素センサ本体61aと、酸素センサ本体61aと光学的に接続可能な酸素用伝送部61bと、を有する。
【0073】
酸素センサ本体61aの先端には、尿310中の酸素を光学的に測定可能な測定部61cが配置される。測定部61cは、
図1に示すように、光透過性を有する基板61dと、基板61dの片方の面の略全体に塗布された蛍光体61eと、で構成される。
【0074】
酸素センサ本体61aは、
図3Aに示すように、先端の測定部61cを導出口12側に向け、少なくとも測定部61cが導出ルーメン11内に露出するように一部が壁部13aに埋め込まれて配置される。また、酸素センサ本体61aは、
図3Aに示すように、軸方向から見たとき、先端に位置する測定部61cと、スリット22の基端22bの位置とが径方向で重なるように配置される。これにより、スリット22を伝って導出ルーメン11内に流れ込む尿310は、
図5に示すように、スリット22の基端22bからその下方に配置される測定部61cへと流れ込む。したがって、酸素センサ本体61aは、スリット22の基端22bを伝って流れ込む尿310と効率的に接触するため、膀胱300内に流入してから一定の畜尿を待たずして、尿310の酸素分圧を高精度に測定することができる。
【0075】
酸素センサ61は、スリット22の基端22bを伝って流れ込む尿310と効率的に接触可能なように、基端22bの直下にある導出ルーメン11の内周面に沿って配置するのが好ましい。
【0076】
なお、酸素センサ本体61aは、少なくとも測定部61cが軸方向から見てスリット22の基端22bと径方向で重なる配置であれば、導出口12に対し先端面(測定部61c)が軸方向と交差する方向に傾いて配置してもよい。酸素センサ本体61aは、軸方向から見たとき、スリット22の基端22bの位置と径方向で重なり、径方向から見た時、スリット22の基端22bの位置と軸方向で重なるように配置してもよい。
【0077】
酸素用伝送部61bは、光ファイバで構成され、酸素センサ本体61aの測定部61cと光学的に接続される。酸素用伝送部61bは、蛍光体61eに励起光を照射可能で、かつ蛍光体61eからの蛍光を受光可能であって、先端面が蛍光体61eに対して位置決めされた状態でセンサ用ルーメン13に固定されている。酸素用伝送部61bは、後述する光源部220からの励起光を蛍光体61eに照射すると共に、励起光により励起した蛍光体61eが発した蛍光を光電変換部230の受光部231に伝送する。酸素用伝送部61bの基端は、第1分岐部14を介してケーブルコネクタ211に接続される。
【0078】
温度センサ62は、膀胱300内温度の測定が可能であって、より具体的には、膀胱300内の尿310の温度を測定する。温度センサ62は、導出ルーメン11を流れる尿310の温度を測定してもよい。温度センサ62は、尿310の温度を測定する温度センサ本体62aと、温度センサ本体62aに電気的に接続可能な温度用伝送部62bと、を有する。
【0079】
温度センサ本体62aは、熱電対、測温抵抗体又はサーミスタ等の温度測定が可能な機器で構成され、酸素用伝送部61bの先端外周面に固定された状態でセンサ用ルーメン13に収容される。温度センサ本体62aは、酸素センサ本体61aと異なり、先端又は先端面が導出ルーメン11に露出しない、すなわち尿310に直接接触しないように配置されるのが望ましい。あるいは、温度センサ本体62aは、酸素センサ本体61aより基端側に配置されて、先端又は先端面が導出ルーメン11に露出しないように配置されてもよい。より具体的には、温度センサ本体62aは、酸素センサ本体61aより基端側であって、カテーテルデバイス1の中心軸Cと直交する方向に酸素センサ本体61aと隣接して配置され、先端又は先端面が導出ルーメン11に露出しないように配置されてもよい。これにより、温度センサ62は、導出ルーメン11とは別のセンサ用ルーメン13に液密に収容可能となるため、センサ用ルーメン13への尿310の流入が阻止されてセンサ部60の故障や感電等が防止できる。温度センサ本体62aは、膀胱300内温度の測定が可能であって、膀胱300内の尿310の温度を測定する。温度センサ本体62aは、導出ルーメン11を流れる尿310の温度を測定してもよい。温度センサ本体62aは、センサ用ルーメン13に、2つ以上設けられてもよく、2つ以上設けることで例えば、2つの温度センサ本体62aの間にヒーターを設けて、温度センサ62を熱式流量計として使用することも可能である。
【0080】
温度用伝送部62bは、温度センサ本体62aに電気的に接続され、温度センサ本体62aで測定した尿310の温度値に基づく電気信号を外部(制御部240)に伝送する。温度用伝送部62bは、酸素用伝送部61bの外周面に固定され、基端は第1分岐部14を介してケーブルコネクタ211に接続される。
【0081】
流速センサ63は、尿量を測定可能な流速センサ本体63aと、流速センサ本体63aと電気的に接続可能な流速用伝送部63bと、で構成される。流速センサ63は、導出ルーメン11内を流通する尿量の測定が可能なように、例えば、導出ルーメン11の基端側の壁面に流速センサ本体63aと尿310が接触するように設けられる。流速用伝送部63bの基端は、第1分岐部14を介してケーブルコネクタ211に接続される。流速センサ本体63aは、尿310と接触することが可能な位置であれば配置は限定されない。例えば、流速センサ本体63aは、流速センサ本体63aと尿310が接触するように、導出口12付近に配置されても良いし、ハブ50より基端側の導出ルーメン11に設けられてもよい。
【0082】
カテーテルデバイス1は、
図6A~
図6Cに示すように、留置部20を正しく拡張させるための構造を追加することができる。
【0083】
留置部20は、
図6A、
図6Bに示すように、アーム部21の径方向外側への変形を促して拡張させるための拡張誘導部24を有する構成とすることができる。拡張誘導部24は、
図6A、
図6Bに示すように、アーム部21の外周面に形成された凹部24a、又はアーム部21の基端よりも幅が狭い幅狭部24bのうち、少なくとも何れか1つで構成することができる。拡張誘導部24は、拡張収縮部40の軸方向への移動に伴い、アーム部21の変形を径方向外側へと誘導して拡張を促す。
【0084】
先端チップ30の底部31は、
図6Cに示すように、外周部31aにアーム部21の先端部21aが接続されると共に、拡張収縮部40に接続される。底部31は、拡張収縮部40の軸方向への移動に伴い、外周部31aが軸方向外側に傾斜して変形し、アーム部21の変形を径方向外側へと誘導して拡張を促す。なお、底部31は、留置部20の拡張を促す観点から、拡張収縮部40の移動を問わず常に外周部31aが軸方向外側に傾斜した形状とすることもできる。
【0085】
カテーテルデバイス1は、アーム部21に拡張誘導部24を設けた構成や、先端チップ30の底部31の変形により、アーム部21を径方向外側へ正しく拡張させることができるため、留置部20の意図しない脱落を効果的に抑制することができる。
【0086】
なお、カテーテルデバイス1のアーム部21は、周方向に等間隔に4つ設けることができると述べたが、アーム部21の形成数は4つに限定されず、変形例として、アーム部21の形成数を変更することができる。
【0087】
図7Aには、カテーテルデバイス1の変形例として、留置部20のアーム部21の形成数を3つにした構成が示されており、
図7Bには、
図7Aの留置部20を拡張した状態が示されている。
図8Aには、カテーテルデバイス1の他の変形例として、留置部20のアーム部21の形成数を2つにした構成が示されており、
図8Bには、
図8Aの留置部20を拡張した状態が示されている。このように、カテーテルデバイス1は、アーム部21の形成数を前述の形態から減らすことで、アーム部21個々の幅が広くなり、留置時の保持力を高めることができる。
【0088】
[動作]
次に、カテーテルデバイス1の留置時の動作について、
図9A~
図9Dを適宜参照しながら説明する。
【0089】
術者は、
図9Aに示すように、外尿道口からカテーテルデバイス1を挿入し、留置部20を膀胱300内まで送達させる。
【0090】
続いて、術者は、拡張収縮部40を基端側に引き操作し、先端チップ30を基端側へ移動させる。留置部20は、
図9Bに示すように、拡張収縮部40の引き操作によってアーム部21が径方向外側に拡張する。
【0091】
続いて、術者は、
図9Cに示すように、第2分岐部15から流体を流入させ、アーム部21を膨張させる。このとき、流体用ルーメン16を流通する流体は、流体用ルーメン16と連通する膨縮用ルーメン23に流れて先端チップ30の内部空間33に流れ込んだ後、孔部34を通じてアーム部21それぞれの膨縮用ルーメン23に充填される。
【0092】
そして、術者は、留置部20の拡張及び膨張が確認されると、カテーテルデバイス1の留置部20は、
図9Dに示すように、膀胱300内に留置され、カテーテルデバイス1の留置処理が終了する。カテーテルデバイス1を留置した後、膀胱300内の尿310は、スリット22の開口部22cから流入し、スリット22を伝ってセンサ部60及び導出口12に流れ込み、導出ルーメン11を介して生体外に導かれる。
【0093】
以上説明したように、第1実施形態に係るカテーテルデバイス1は、長尺なカテーテル本体10と、膀胱300内の尿310を生体外に導く導出ルーメン11と、導出ルーメン11と連通する導出口12と、導出ルーメン11と平行に配置され、センサ部60を収納するセンサ用ルーメン13と、膀胱300内に留置される留置部20と、アーム部21の軸方向への移動によりアーム部21を変形させて拡張及び収縮する拡張収縮部40と、生体情報を取得するセンサ部60と、を有する。留置部20は、導出口12付近から先端側に延在する拡張及び収縮可能な複数本のアーム部21と、周方向で隣り合うアーム部21の間に形成される複数のスリット22と、を有する。センサ部60は、軸方向から見てスリット22の基端22bと径方向で重なるように導出口12付近に配置される。
【0094】
カテーテルデバイス1は、上記構成を有するため、膀胱300内の尿310は、アーム部21が拡張した際に形成される開口部22cからスリット22の基端22bを伝って導出ルーメン11へと流入されるため、尿310を逐次排出することができる。また、センサ部60は、軸方向から見てスリット22の基端と径方向で重なるように導出口12付近に配置されるため、スリット22の基端22bを伝って導出口12に流れ込んだ尿310と接触することができる。尿310の酸素分圧は、時間経過と共に変化するが、カテーテルデバイス1であれば、膀胱300内の尿310を逐次測定することができるため、尿310の酸素分圧を高精度に測定することができる。
【0095】
[医療システム]
次に、前述のカテーテルデバイス1を含む医療システム200について説明する。医療システム200は、
図10に示すように、光電変換部230と、制御部240と、入力部250と、操作表示部260と、を備える外部デバイスである測定装置210と、カテーテルデバイス1とが電気的及び光学的に接続されて構成される。
【0096】
測定装置210は、ケーブルコネクタ211に連結された長尺な伝送ケーブル212を介してカテーテルデバイス1と電気的及び光学的に接続される。ケーブルコネクタ211は、酸素用伝送部61b、温度用伝送部62b及び流速用伝送部63bが接続される。伝送ケーブル212は、酸素用伝送部61bと光学的に接続可能な光ファイバ(導光路221)と、温度用伝送部62b及び流速用伝送部63bと電気的に接続可能な電線とが1つにまとめられ測定装置210まで延在している。
【0097】
<光源部>
光源部220は、例えば、発光ダイオードであって、酸素用伝送部61bに所定波長の励起光を発光する。光源部220は、導光路221を介してケーブルコネクタ211に接続される。光源部220が放射する光には、蛍光体61eが放射する蛍光の波長は殆ど含まれない。光源部220が放射する光に蛍光体61eが放射する蛍光の波長が含まれる場合、又は励起光の波長を正確な励起波長にすることが望ましい場合には、光学フィルタを配置していてもよい。
【0098】
<光電変換部>
光電変換部230は、受光部231と、A/D変換部232と、を備える。受光部231は、例えば、フォトダイオードであって、酸素用伝送部61bから伝送された蛍光が入射される。A/D変換部232は、受光部231の受光信号をディジタル信号(ディジタル値)に変換して制御部240に出力する。
【0099】
<制御部>
制御部240は、記憶部241と、解析部242と、処理制御部243と、を有する。また、制御部240は、温度センサ62の出力信号が入力される図示しない温度入力部と、流速センサ63の出力信号が入力される図示しない流速入力部を備える。
【0100】
制御部240は、各種機能実現部を備える。機能実現部は、CPU(中央処理ユニット)が記憶部241に記憶されているプログラムを実行することにより機能が実現されるソフトウエア機能部であるが、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路からなるハードウエア機能部により実現することもできる。
【0101】
記憶部241は、書き込み可能な不揮発性メモリ(例えば、フラッシュメモリ)を備えており、操作表示部260を介して入力された情報や制御部240で算出された情報等を記憶することができる。
【0102】
解析部242は、酸素分圧算出部242aと、尿量算出部242bと、流速算出部242cと、流速判定部242dと、尿量条件設定部242eと、尿量判定部242fと、を有する。解析部242は、センサ部60で取得した生体情報に基づき所定の解析処理を行う。
【0103】
酸素分圧算出部242aは、酸素センサ61の出力信号と温度センサ62の出力信号とに基づいて尿中の酸素分圧を算出する。尿量算出部242bは、流速センサ63の出力信号に基づいて尿量を算出する。流速算出部242cは、流速センサ63からの出力信号に基づいて導出ルーメン11内の尿310の流速Vを算出する。
【0104】
尿量条件設定部242eは、所定の尿量条件を設定する。具体的に、尿量条件設定部242eは、第1尿量判定値及び第2尿量判定値を設定する。第1尿量判定値は、例えば、急性腎障害(AKI)の第1ステージ及び第2ステージの判定に用いられる第1尿量基準値(0.5ml/kg/h)に患者の体重を乗算することによって算出される。第2尿量判定値は、急性腎障害の第3ステージの判定に用いられる第2尿量基準値(0.3ml/kg/h)に患者の体重を乗算することによって算出される。ただし、尿量条件設定部242eは、任意の条件を設定することができる。尿量判定部242fは、尿量算出部242bによって算出された尿量が所定の尿量条件に合致するか否かを判定する。
【0105】
処理制御部243は、解析部242の各部で解析処理された各種解析結果を所定の通信先に送信及び所定の処理制御を行う。処理制御部243から送信されるデータは、通信先で処理可能なデータ形式に変換され送信される。処理制御部243は、例えば通信先として操作表示部260に表示可能な表示データを送信する場合、流速センサ63の出力信号に基づいて取得された尿310の流速Vに応じて酸素分圧の表示形式を変化させる表示データを送信して操作表示部260の表示制御を行うことができる。
【0106】
また、処理制御部243は、通信先として、携帯端末(スマートフォン、タブレット端末、携帯電話等)、PC等の外部端末(外部の管理サーバ等も含む)のような有線若しくは無線通信可能な端末とした場合、制御部240の各部の解析結果に基づく送信データを生成し、所定の通信網を介して通信先に送信可能なネットワークインターフェースの機能を追加することもできる。
【0107】
<入力部>
入力部250は、モニタリングの開始又は停止の指示を行う押しボタン等の機械式スイッチで構成される。入力部250は、尿中の酸素分圧の測定を開始する際や測定を停止する際に操作される。なお、測定装置210には、図示しない電源ボタン等も設けられる。
【0108】
<操作表示部>
操作表示部260は、制御部240で解析された解析結果(算出された尿中の酸素分圧等)を表示可能に構成されている。操作表示部260は、液晶ディスプレイや無機/有機ELディスプレイ等の表示機器で構成される。操作表示部260は、タッチパネル機能を備えており、測定装置210に対して所定の情報を入力する入力部としても機能する。操作表示部260による入力形式は、タッチパネル式以外にもマウスカーソール式、タッチペン式、タッチパッド式等のポインティングデバイスが利用可能である。なお、測定装置210に対する情報の入力は、操作表示部260による入力に限定されず、図示しないテンキーやキーボード等の各種入力機器等から入力することもできる。
【0109】
このように、医療システム200は、膀胱300等の生体内に留置したカテーテルデバイス1で取得した各種生体情報を解析し、解析結果を操作表示部260や携帯端末等の所定の通信先へ送信することができる。そのため、医師や看護師等の医療従事者は、カテーテルデバイス1で取得された高精度な生体情報に基づき、患者のバイタルを逐次把握することができる。
【0110】
また、医療システム200は、以下の変形例とすることもできる。なお、変形例の説明において、特に言及しない構成等については、前述した医療システム200の構成及び機能と同様のものとすることができる。
【0111】
図11には、複数の蛍光センサを有する変形例の医療システム200Aの変更部分の概略を示すブロック図が示されており、
図12には尿中の酸素に反応する蛍光体を有する2個以上の蛍光センサ611、612の配置位置を例示した図が示されている。なお、医療システム200Aにおいて、
図11に図示されていないシステム上の他の構成については前述した医療システム200の構成(
図10を参照)と同様である。
【0112】
医療システム200Aは、酸素センサ61に配置された複数種類の蛍光体61eから放射された蛍光を1本の酸素用伝送部61bで受光し、測定装置210で分光して各センサの蛍光を解析することで複数のパラメータを取得可能な構成とした点が、前述の医療システム200と相違する。
【0113】
変形例の医療システム200Aにおいて、測定装置210Aの光電変換部230Aは、第1ビームスプリッタ233と、第2ビームスプリッタ234と、第1蛍光検出部235及び第2蛍光検出部236の2つの蛍光検出部を備える。第1蛍光検出部235及び第2蛍光検出部236は、同一の制御部240に接続される。
【0114】
光源部220Aは、導光路221を介して第1ビームスプリッタ233に接続されている。第1ビームスプリッタ233は、導光路221を介してケーブルコネクタ211に接続される。第2ビームスプリッタ234は、導光路221を介して第1ビームスプリッタ233に接続されている。
【0115】
第1蛍光検出部235及び第2蛍光検出部236は、それぞれ導光路221を介して第2ビームスプリッタ234に接続される。第2ビームスプリッタ234は、入射した光を波長に基づいて光学的に分離する、ダイクロイックビームスプリッタである。
【0116】
2つの蛍光センサ611、612は、測定装置210Aに接続される。一方の蛍光センサ611は、第1蛍光体611eを有する。他方の蛍光センサ612は、第2蛍光体612eを有する。第1蛍光体611eと第2蛍光体612eとは、尿中のそれぞれ異なる成分等に反応して、異なる波長の蛍光を発する。1つの蛍光センサ611(又は蛍光センサ612)に、第1蛍光体611eと第2蛍光体612eとが含まれていてもよいし、蛍光センサ611、612毎に異なる蛍光体を有していてもよい。
【0117】
2つの蛍光センサ611、612は、
図12に示すように、少なくとも先端の測定部分が導出ルーメン11内に露出し、更に軸方向から見たとき、先端がスリット22の基端22bの位置と、が径方向で重なるように配置される。スリット22と、蛍光センサ611、612のそれぞれは、一対一となるように配置される。なお、スリット22に対する蛍光センサの配置数は特に制限されず、一のスリット22に対し径方向に沿って複数配置することもできる。
【0118】
光源部220Aは、第1蛍光体611eと第2蛍光体612eとの両方を励起する励起光を放射する。光源部220Aから放射された励起光は、導光路221、第1ビームスプリッタ233及び酸素用伝送部61bを介して第1蛍光体611e及び第2蛍光体612eを照射する。第1蛍光体611e及び第2蛍光体612eは、尿310に接触した場合にそれぞれ蛍光を発光する。
【0119】
蛍光は、酸素用伝送部61b及び導光路221を介して第1ビームスプリッタ233に入射する。第1ビームスプリッタ233により、蛍光は第2ビームスプリッタ234に繋がる導光路221に入射する。第2ビームスプリッタ234により、蛍光は第1蛍光体611eにより放射された蛍光と、それ以外の光とに分離される。第1蛍光体611eにより放射された蛍光は第1蛍光検出部235に入射し、それ以外の光は第2蛍光検出部236に入射する。第2ビームスプリッタ234は、複数の蛍光センサ611、612から取得された蛍光を分光する分光部の機能を果たす。
【0120】
第1蛍光検出部235及び第2蛍光検出部236は、入射した光を電気信号に変換して制御部240に出力する。制御部240は、入力した電気信号を解析部242で解析してそれぞれの蛍光センサ611、612に対応する複数のパラメータ(例えば、尿中の酸素分圧、Na、K、pH、尿比重、Cr、pCO2、SpO2、圧力、温度、流量など)を取得する。
【0121】
このように、変形例の医療システム200Aは、複数の蛍光センサ611、612を用いて各センサで検出した蛍光を分光した後に解析することで、例えば酸素分圧及び酸素分圧以外の所定のパラメータを取得することが可能となる。また、蛍光センサ611、612は、スリット22の基端22bに1対1で配置されるため、各スリット22を伝って流れた尿310から各種パラメータを高精度に測定することができる。
【0122】
次に、本発明に係るカテーテルデバイスの改変例となる第2実施形態~第5実施形態について説明する。なお、以下の各形態の説明では、主に前述した形態との相違点について説明し、他の形態と同等の機能を有する構成要件については同一又は関連する符号を付して詳細な説明を省略し、特に言及しない。また、構成、部材、及び使用方法等については、各形態と同様のものとしてよい。更に、第1実施形態~第5実施形態に示す形態は、本発明の要旨を逸脱しない範囲の中で任意に組み合わせて実施することもできる。
【0123】
[第2実施形態]
第2実施形態に係るカテーテルデバイス1Aについて
図13A、
図13Bを参照しながら説明する。
【0124】
第2実施形態のカテーテルデバイス1Aは、拡張収縮部40Aの構成が他の実施形態と相違する。
【0125】
カテーテルデバイス1Aは、
図13A、
図13Bに示すように、長尺なカテーテル本体10Aと、カテーテル本体10Aの先端側に配置される留置部20Aと、留置部20Aの先端に配置される先端チップ30Aと、留置部20Aを拡張及び収縮させる拡張収縮部40Aと、カテーテル本体10Aの基端部10bに取り付けられるハブ50Aと、生体情報を取得するセンサ部60Aと、を備える。
【0126】
図13Aは、第2実施形態のカテーテルデバイス1Aの挿入時及び抜去時の状態が示されており、
図13Bには、第2実施形態のカテーテルデバイス1Aの留置時の状態が示されている。カテーテルデバイス1Aは、
図13Aに示すように、挿入時及び抜去時には留置部20のアーム部21が収縮した状態となり、
図13Bに示すように、留置時には留置部20のアーム部21が拡張した状態となる。
【0127】
カテーテル本体10Aは、基端側の一部が軸方向に分離可能に構成される。カテーテル本体10Aは、軸方向に近接及び離隔可能な分離部10Aaを備える。分離部10Aaは、ハブ50Aと接続される。カテーテル本体10Aの分離部10Aaに対する当接面10Abと、分離部10Aaのカテーテル本体10Aに対する当接面10Acは、共に軸方向で対向している。
図13Aに示すように、挿入時及び抜去時には、当接面10Abと当接面10Acとが当接し、
図13Bに示すように、デバイス留置時には軸方向で相対移動して各面は離隔する。
図13Bに示すように、当接面10Abと当接面10Acの間には、両者の間隔を埋めるための拡張用チューブ70が装着される。
【0128】
拡張用チューブ70は、留置部20Aの拡張時にカテーテル本体10Aの当接面10Abと分離部10Aaの当接面10Acとの間を埋めるための着脱可能な部材である。拡張用チューブ70の軸方向長さは、当接面10Abと当接面10Acの分離時の距離(すなわち、留置部20Aを拡張した際の拡張収縮部40の移動量)に合わせて設定される。
【0129】
拡張用チューブ70は、留置部20Aの拡張後に当接面10Abと当接面10Acの間に装着され、固定具80により固定される。固定具80の形態は、カテーテル本体10A及び分離部10Aaと係合し、使用中に拡張用チューブ70の意図しない脱落が防止可能な構成を有していれば、任意に設計することができる。
【0130】
拡張収縮部40Aは、カテーテル本体10Aの内部の先端(詳細には、開口部10dを通過して先端チップ30Aの底部31との接続部分)まで挿通可能で、先端がアーム部21を軸方向に移動可能に接続される。拡張収縮部40Aは、内腔41を有し、先端部40aが先端チップ30Aの底部31に接続され、基端部40bがハブ50Aの先端開口部51に連通して接続される長尺な中空パイプで構成される。
【0131】
拡張収縮部40Aは、膀胱300内の尿310を内腔41へ導く導出口12が形成される。内腔41は、基端がハブ50の先端開口部51と連通し、導出口12から流入した尿310をハブ50まで導く導出ルーメン11として機能する。
【0132】
拡張収縮部40Aは、連結されるハブ50を軸方向に移動することで先端チップ30Aを軸方向に移動させ、この移動に追従して留置部20Aのアーム部21を拡張及び収縮させる。拡張収縮部40Aは、基端側への引き操作により先端チップ30Aを基端側に移動させると、これに追従してアーム部21の先端部21aが基端側へ移動して留置部20を拡張させる(
図13Bを参照)。また、留置部20を拡張した際、カテーテル本体10Aの当接面10Abと分離部10Aaの当接面10Acの間には拡張用チューブ70が装着され、固定具80により固定される。拡張収縮部40Aは、先端側への押し操作により先端チップ30Aを先端側に移動させると、これに追従してアーム部21の先端部21aが先端側へ移動して留置部20を収縮させる(
図13Aを参照)。
【0133】
導出口12は、
図13Aに示すように、挿入時及び抜去時には導出口12がカテーテル本体10Aの開口部10dから軸方向先端側に離れた位置にあり、
図13Bに示すように、留置時には拡張収縮部40Aの基端側への移動に伴いカテーテル本体10Aの開口部10d付近まで移動する。導出口12は、径方向において、センサ部60側に開口するように形成される。
【0134】
導出口12は、アーム部21の拡張時に拡張収縮部40Aが操作されると、拡張前の位置からカテーテル本体10の先端付近まで軸方向基端側へ移動する。尿310は、
図11Cに示すように、留置部20Aのスリット22の基端22bを伝って導出口12に流入する過程でセンサ部60Aと接触しつつ、導出口12へと流れ込む。なお、尿310は、スリット22を伝ってカテーテル本体10の開口部10dから内腔10cに一部流れ込むこともが、カテーテル本体10の基端部10bは内腔10cを通じてハブ50と連通しているため、ハブ50を介して生体外へと排出される。なお、尿310が、スリット22を伝ってカテーテル本体10の開口部10dから内腔10cに一部流れ込むことを防止するために、内腔10cを液密にしてもよい。内腔10cを液密に保つ構造として、開口部10dを埋める構造を有してもよい。
【0135】
センサ部60Aの流速センサ63は、拡張収縮部40Aの内腔41を流れる尿310の流速Vが測定可能な位置に配置される。
【0136】
以上のように、第2実施形態のカテーテルデバイス1Aは、拡張収縮部40Aの構成として第1実施形態の心棒に代えて中空パイプを採用することができる。カテーテルデバイス1Aは、留置部20の拡張時にスリット22の基端22b付近まで導出口12が移動するため、スリット22の基端22bを伝って導出口12から流入した尿310は、導出口12付近に配置されたセンサ部60Aに流れ込む。したがって、カテーテルデバイス1Aは、高精度に酸素分圧を測定することができる。
【0137】
[第3実施形態]
第3実施形態に係るカテーテルデバイス1Bについて、
図14A、
図14Bを参照しながら説明する。
【0138】
第3実施形態のカテーテルデバイス1Bは、アーム部21の配置及び拡張収縮部40Bの形状が他の実施形態と相違する。
【0139】
カテーテルデバイス1Bは、
図14A、
図14Bに示すように、長尺なカテーテル本体10Bと、カテーテル本体10Bの先端側に配置される留置部20Bと、留置部20Bの先端に配置される先端チップ30Bと、留置部20Bを拡張及び収縮させる拡張収縮部40Bと、生体情報を取得するセンサ部60Bと、を備える。
【0140】
カテーテル本体10Bの側面には、拡張収縮部40Bが摺動可能な軸方向に延びる係合溝17が形成される。係合溝17は、センサ用ルーメン13と平行に延びて、中心軸Cを基準としてアーム部21と対峙する側に偏心して配置される。係合溝17には、拡張収縮部40Bが軸方向に摺動可能に係合される。
【0141】
留置部20Bのアーム部21は、中心軸Cを基準として径方向でセンサ部60Bと対峙する側に偏心して配置される。アーム部21は、
図14Cに示すように、中心軸Cを基準として径方向でセンサ部60Bと対峙する側に偏心して、カテーテル本体10Bの先端に等間隔3つ配置することができる。なお、カテーテルデバイス1Bにおいて、拡張収縮部40Bとスリット22との間には十分な開口部22cが確保されるため、センサ部60Bとスリット22の基端22bとの位置関係は、略径方向に重なるような配置であってもよい。すなわち、センサ部60Bは、スリット22の基端22b付近に配置されてもよい。
【0142】
アーム部21の形成数は、3つに限らず少なくとも2つ以上であればよい。
【0143】
拡張収縮部40Bは、カテーテル本体10Bの外周面及び肉厚部を兼ねる長尺部材で構成される。拡張収縮部40Bは、アーム部21の偏心位置に基づき、中心軸Cを基準としてアーム部21と対峙する側に偏心して配置される。
【0144】
拡張収縮部40Bの先端部40aは、先端チップ30Bの底部31と接続し、先端チップ30Bの移動方向を軸方向に沿うように案内しながら支持する。拡張収縮部40Bの基端部40bは、カテーテル本体10Bの基端部10b付近まで延在する。拡張収縮部40Bは、カテーテル本体10Bに形成された係合溝17に摺動可能に係合される。なお、拡張収縮部40Bは、留置部20の拡張及び収縮動作し易いように、基端側に操作用の突起部等を設けることができる。
【0145】
拡張収縮部40Bは、内部に流体用ルーメン16が形成される。流体用ルーメン16は、先端が先端チップ30の底部31と連通し、基端が第2分岐部15と連通する。
【0146】
カテーテルデバイス1Bは、留置部20Bを拡張する際、拡張収縮部40Bを係合溝17に沿って基端側に引き操作すると、先端チップ30Bの基端側への移動に伴ってアーム部21が径方向外側に屈曲して拡張する(
図14Bを参照)。また、カテーテルデバイス1Bは、留置部20を収縮させる際、拡張収縮部40Bを先端側に押し操作すると、先端チップ30Bの先端側への移動に伴ってアーム部21が元の形状に戻って収縮する(
図14Aを参照)。
【0147】
以上のように、第3実施形態のカテーテルデバイス1Bは、拡張収縮部40B及びセンサ部60Bを、中心軸Cを基準として互いに対峙する側に配置し、これに伴い、センサ部60Bを収容するセンサ用ルーメン13及びアーム部21の偏心位置に応じてカテーテル本体10B外周面側に偏心して配置された拡張収縮部40Bは、カテーテル本体10Bの肉厚部の所定箇所に集約することができる。したがって、カテーテルデバイス1Bは、
図14Cに示すように、導出ルーメン11の開口面積が拡大できるため、尿量の多い患者であっても、膀胱300内に溜めずに逐次排出することができる。
【0148】
[第4実施形態]
第4実施形態に係るカテーテルデバイス1Cについて
図15A、
図15Bを参照しながら説明する。
【0149】
第4実施形態のカテーテルデバイス1Cは、スリット22の形状が他の実施形態と相違する。
【0150】
カテーテルデバイス1Cは、
図15Aに示すように、留置部20Cのスリット22が、アーム部21の収縮時では軸方向にねじれて形成される。スリット22は、先端22aから基端22bに向かう過程で、先端22aから所定距離までは軸方向に沿って延び、途中で軸方向にねじれるように曲がり、再び軸方向に沿って延びて基端22bに達する。
【0151】
カテーテルデバイス1Cは、留置部20Cを拡張する際、拡張収縮部40Cを基端側に引き操作すると、先端チップ30Cの基端側への移動に伴ってアーム部21が径方向外側に屈曲して拡張する。この際、アーム部21は、
図15Bに示すように、スリット22が軸方向にねじれて形成されるため、先端チップ30Cの基端側への移動量が他の実施形態よりも低減され、かつ開口部22cの開口面積が拡大される。すなわち、カテーテルデバイス1Cは、他の実施形態に比べて拡張時の移動量は少なく、留置部20Cの拡張時の径方向のサイズは大きくなる。
【0152】
また、カテーテルデバイス1Cは、留置部20を収縮させる際、拡張収縮部40Cを先端側に押し操作し、先端チップ30Cの先端側への移動に伴ってアーム部21が元の形状に戻って収縮する。この際も、スリット22が軸方向にねじれて形成されるため、基端側への移動量が他の実施形態よりも短いため、先端チップ30Cの移動量が低減される。
【0153】
以上のように、第4実施形態のカテーテルデバイス1Cは、スリット22が軸方向にねじれて形成されるため、先端チップ30Cの軸方向への移動量が低減される。そのため、カテーテルデバイス1Cは、留置部20Cの拡張及び収縮操作の際、先端チップ30Cの移動に伴う膀胱300に対する不意な圧迫や押し込みが防止できる。また、カテーテルデバイス1Cは、スリット22を軸方向にねじれて形成することで、開口部22cの開口面積が拡大され、尿310がセンサ部60Cに流れ込み易く排出もスムーズに行える。
【0154】
[第5実施形態]
第5実施形態に係るカテーテルデバイス1Dについて
図16を参照しながら説明する。
【0155】
第5実施形態のカテーテルデバイス1Dは、スリット22の基端側に尿310を導出ルーメン11へと効果的に導くための構造が他の実施形態と相違する。
【0156】
カテーテルデバイス1Dは、スリット22の基端側に、周方向で隣り合うアーム部21同士を連結するように膜部90が形成される。膜部90は、シリコーン膜等の柔軟性及び変形可能な材料で構成することができる。
【0157】
膜部90は、スリット22の基端22bが軸方向から見てセンサ部60Dと径方向で重ならないスリット22の少なくとも1つに形成することができる。膜部90は、軸方向から見てスリット22の基端22bとセンサ部60とが径方向で重なるスリット22に形成すると、センサ部60の上方に膜部90があるため、尿310がセンサ部60に接触し難くなるため好ましくない。一方、膜部90は、軸方向から見てスリット22の基端22bとセンサ部60とが径方向で重ならないスリット22に形成すれば、センサ部60への尿310の流れ込みを妨げずに他のスリット22を伝って流れ込んだ尿310を導出ルーメン11やセンサ部60Dに導き易くなり、効率的に尿310を排出することができる。
【0158】
膜部90の形成領域は、スリット22の基端側であり、尿310の排出の妨げとならないようアーム部21の収縮時においてスリット22の全長の50%以下とするのが好ましい。
【0159】
膜部90の形成数は特に制限されず、スリット22の基端22bが、軸方向から見てセンサ部60Dと径方向で重ならないスリット22のうち、周方向で交互に配置したり、対称となるスリット22全てに配置したりできる。
【0160】
以上のように、第5実施形態のカテーテルデバイス1Dは、スリット22の基端22bが軸方向から見てセンサ部60Dと径方向で重ならないスリット22の基端側に少なくとも1つに形成されるため、センサ部60Dへの尿310の流れ込みを妨げない。また、膜部90は、スリット22を伝って流れ込んだ尿310を導出ルーメン11やセンサ部60Dに導き易くなるため、効率的に尿310を排出することができる。
【0161】
[作用効果]
以上説明したように、本実施形態に係るカテーテルデバイス1は、生体内に留置する留置部20を有するデバイスであって、留置部20は、拡張及び収縮可能な複数本のアーム部21を有し、アーム部21は、流体の流入及び排出に伴い膨張及び収縮可能な管状体で構成される。
【0162】
このような構成により、生体内(例えば膀胱300内)に留置部20を留置した際、アーム部21が拡張した後、流体により膨張して留置位置から抜け難くなるため、生体内からの意図しない脱落を抑制することができる。
【0163】
本実施形態に係るカテーテルデバイス1において、アーム部21は、径方向外側への変形を促して拡張させるため、アーム部21の外周面に形成された凹部24a、又はアーム部21の基端よりも幅が狭い幅狭部24bのうち、少なくとも何れか1つを有する拡張誘導部24を備えた構成としてもよい。
【0164】
このような構成により、アーム部21は、拡張誘導部24の作用により径方向外側に正しく拡張することができるため、留置部20の意図しない脱落を効果的に抑制することができる。
【0165】
本実施形態に係るカテーテルデバイス1において、生体は、膀胱300であり、カテーテルデバイス1は、長尺なカテーテル本体10と、膀胱300内の尿310を生体外に導く導出ルーメン11と、導出ルーメン11と連通する導出口12と、を有し、アーム部21は、導出口12付近から先端側に延在するように構成してもよい。
【0166】
このような構成により、カテーテルデバイス1は、膀胱300内に留置部20を留置した際、アーム部21が拡張した後、流体により膨張することができるため、膀胱300から意図しない脱落が防止できると共に、導出口12から流入した尿310を、導出ルーメン11を通じて生体外に排出可能な膀胱留置カテーテルとして適用することができる。
【0167】
本実施形態に係るカテーテルデバイス1において、留置部20は、周方向で隣り合うアーム部21の間に形成される複数のスリット22を有し、カテーテルデバイス1は、軸方向から見てスリット22の基端22bと径方向で重なるように導出口12付近に配置され生体情報を取得するセンサ部60を有するように構成してもよい。
【0168】
このような構成により、膀胱300内の尿310は、アーム部21が拡張した際に形成される開口部22cからスリット22の基端22bを伝って導出ルーメン11へと流入されるため、尿310を逐次排出することができる。また、センサ部60は、軸方向から見てスリット22の基端と径方向で重なるように導出口12付近に配置されるため、スリット22の基端22bを伝って導出口12に流れ込んだ尿310と接触することができる。生体情報として、尿310の酸素分圧を取得する場合、尿中の酸素分圧は時間経過と共に変化するが、カテーテルデバイス1であれば、膀胱300内の尿310を逐次測定することができるため、尿310の酸素分圧を高精度に測定することができる。
【0169】
本実施形態に係るカテーテルデバイス1において、カテーテル本体10は、導出ルーメン11と平行に配置され、センサ部60を収納するセンサ用ルーメン13を有する構成としてもよい。
【0170】
このような構成により、導出ルーメン11とは別のセンサ用ルーメン13にセンサ部60が収容可能となるため、尿310の排出を妨げとならない。また、センサ部60の露出部分以外の箇所に尿310が接触しないため、センサ部60の故障や感電等を防止できる。
【0171】
本実施形態に係るカテーテルデバイス1は、アーム部21の軸方向への移動によりアーム部21を変形させて拡張及び収縮する拡張収縮部40を有するように構成してもよい。また、拡張収縮部40は、カテーテル本体10の内部の先端まで挿通可能で、先端部40aがアーム部21を軸方向に移動可能に接続された心棒で構成してもよいし、導出口12と、導出口12と連通して導出ルーメン11として機能する内腔41と、を有し、カテーテル本体10の内部の先端まで挿通可能で、先端部40aがアーム部21を軸方向に移動可能に接続された中空パイプで構成してもよい。
【0172】
このような構成により、カテーテルデバイス1は、留置部20を膀胱300内に送達した後、拡張収縮部40の軸方向への操作に基づき、生体外からアーム部21を変形させて拡張及び収縮できるため、手技の簡便化が図れる。
【0173】
本実施形態に係るカテーテルデバイス1は、留置部20の先端に配置される先端チップ30を有し、先端チップ30は、先端が膀胱300と連通し、基端が導出ルーメン11と連通する連通孔35を有するように構成してもよい。
【0174】
このような構成により、カテーテルデバイス1を膀胱300内に送達した際、先端チップ30が膀胱300に到達したか否かを、連通孔35を介して排出される尿310で確認することができる。
【0175】
本実施形態に係るカテーテルデバイス1において、先端チップ30は、外周部31aにアーム部21の先端部21aが接続されると共に、拡張収縮部40に接続される底部31を有し、底部31は、拡張収縮部40の軸方向への移動に伴い、外周部31aが軸方向外側に傾斜して変形するように構成してもよい。
【0176】
このような構成により、アーム部21は、底部31の変形に径方向外側に正しく拡張することができるため、留置部20の意図しない脱落が防止できる。
【0177】
本実施形態に係るカテーテルデバイス1Bにおいて、アーム部21は、中心軸Cを基準として径方向でセンサ部60Bと対峙する側に偏心して配置されるように構成してもよい。
【0178】
このような構成により、センサ部60Bを収容するセンサ用ルーメン13及びアーム部21の偏心位置に応じてカテーテル本体10B外周面側に偏心して配置された拡張収縮部40Bは、カテーテル本体10Bの肉厚部の所定箇所に集約することができる。したがって、カテーテルデバイス1Bは、導出ルーメン11の開口面積が拡大できるため、尿量の多い患者であっても、尿310を膀胱300内に溜めずに逐次排出することができる。
【0179】
本実施形態に係るカテーテルデバイス1Cにおいて、スリット22は、アーム部21の収縮時では軸方向にねじれて形成されるように構成してもよい。
【0180】
このような構成により、カテーテルデバイス1Cは、先端チップ30Cの軸方向への移動量が低減され、留置部20Cの拡張及び収縮操作の際、先端チップ30Cの移動に伴う膀胱300に対する不意な圧迫や押し込みが防止できる。
【0181】
本実施形態に係るカテーテルデバイス1Dにおいて、留置部20Dは、周方向で隣り合うアーム部21同士を連結するようにスリット22の基端側に形成された膜部90を有し、膜部90は、複数のスリット22のうち、基端22bが軸方向から見てセンサ部60Dと径方向で重ならないスリット22の少なくとも1つに形成されるように構成してもよい。
【0182】
このような構成により、カテーテルデバイス1Dは、膜部90がセンサ部60Dへの尿310の流れ込みを妨げず、スリット22を伝って流れ込んだ尿310を導出ルーメン11やセンサ部60Dに導き易くなるため、効率的に尿310を排出することができる。
【0183】
本実施形態に係るカテーテルデバイス1において、センサ部60は、生体情報として尿中の酸素分圧を検出可能な酸素センサ本体61aを有する酸素センサ61、又は、生体情報として尿310の温度を測定可能な温度センサ本体62aを有する温度センサ62の少なくとも何れかを含み、酸素センサ本体61aは、導出ルーメン11内に流入した尿310と接するように先端側が導出ルーメン11内に露出した状態で配置される蛍光式酸素センサで構成してもよいし、温度センサ本体62aは、導出ルーメン11内に流入した尿310と接しないように先端側が導出ルーメン11内に露出しない状態で配置されるように構成してもよい。また、センサ用ルーメン13は、感電や故障等を防止する観点から、センサ部60を液密に収容する構成とするのが好ましい。
【0184】
このような構成により、カテーテルデバイス1は、膀胱300に留置された状態で尿310の酸素分圧を測定することができる。また、酸素センサ本体61aは、導出ルーメン11に測定部61cが配置された先端側が導出ルーメン11内に露出して配置されるため、導出口12付近でスリット22を伝って流れ込む尿310の酸素分圧を高精度に測定することができる。また、センサ用ルーメン13は、センサ部60を液密に収容可能に構成すれば、センサ用ルーメン13への尿310の流入が阻止されてセンサ部60の故障や感電等が防止できる。
【0185】
本実施形態に係る医療システム200は、上記何れかのカテーテルデバイス1と、センサ部60で検出された生体情報を解析する解析部242と、解析部242で解析された結果を通信先に送信する処理制御部243と、を少なくとも含み、生体外に配置される測定装置210と、を備える。
【0186】
このような構成により、膀胱300等の生体内に留置したカテーテルデバイス1で取得した各種生体情報を解析し、解析結果を操作表示部260や携帯端末等の所定の通信先へ送信することができる。そのため、医師や看護師等の医療従事者は、カテーテルデバイス1で取得された高精度な生体情報に基づき、患者のバイタルを逐次把握することができる。
【0187】
本実施形態に係るカテーテルデバイス1の留置方法は、生体内に留置する留置部20を有するカテーテルデバイス1の留置方法であって、留置部20は、変形に伴い拡張及び収縮すると共に、流体の流入及び排出に伴い膨張及び収縮可能な管状体で構成される複数のアーム部21を有し、留置位置まで送達した留置部20のアーム部21を変形させて拡張させるステップと、拡張したアーム部21に流体を流入して膨張させて留置部20を留置位置に留置させるステップと、を含む。
【0188】
このような構成により、留置部20を生体内に送達した後、変形により拡張させた状態でアーム部21に流体を流入して膨張させることができるため、カテーテルデバイス1を膀胱留置カテーテルとして使用した場合、膀胱300に留置される留置部20の意図しない脱落が防止できる。
【符号の説明】
【0189】
1、1A~1D カテーテルデバイス、
10、10A~10D カテーテル本体(10a 先端部、10b 基端部10c 内腔10c、10d 開口部)、
11 導出ルーメン、
12 導出口、
13 センサ用ルーメン、
14 第1分岐部、
15 第2分岐部、
16 流体用ルーメン、
17 係合溝、
20、20A~20D 留置部、
21 アーム部、
22 スリット、
23 膨縮用ルーメン、
24 拡張誘導部、
30、30A~30D 先端チップ、
31 底部(31a 外周部)、
33 内部空間、
35 連通孔、
40、40A~40D 拡張収縮部、
50、50A ハブ、
51 先端開口部、
60、60A~60D センサ部、
61 酸素センサ(61a 酸素センサ本体、61b 酸素用伝送部、61c 測定部、61d 基板、61e 蛍光体)、
62 温度センサ(62a 温度センサ本体、62b 温度用伝送部)、
63 流速センサ(63a 流速センサ本体、63b 流速用伝送部)、
70 拡張用チューブ、
80 固定具、
90 膜部、
100 留置デバイス、
200、200A 医療システム、
210、210A 測定装置、
220 光源部、
230 光電変換部、
240 制御部、
241 記憶部、
242 解析部、
243 処理制御部、
250 入力部、
260 操作表示部、
300 膀胱、
310 尿、
C 中心軸。