(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082737
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】管拡径工具
(51)【国際特許分類】
B29C 65/56 20060101AFI20240613BHJP
F16H 25/22 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B29C65/56
F16H25/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196795
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢加部 晃一
【テーマコード(参考)】
3J062
4F211
【Fターム(参考)】
3J062AB22
3J062AC07
3J062CD04
3J062CD12
3J062CD23
4F211AA04
4F211AG08
4F211AR07
4F211AR13
4F211TA08
4F211TC11
4F211TN78
(57)【要約】
【課題】複数のジョーを備えたキャップを本体ハウジングに対して正規の位置まで装着できる管拡径工具が必要とされている。
【解決手段】合成樹脂製の流体管の端部を拡径する管拡径工具1は、本体ハウジング11内で前後方向に延出するねじ軸27と、ねじ軸27に螺合され、ねじ軸27の軸回りに回転することでねじ軸27を前後動させる雌ねじ部材26を有する。管拡径工具1は、ねじ軸27の前部に設けられた楔3に押されて径方向外方に相互に開く複数のジョー4と、複数のジョー4を径方向に開閉可能に支持しかつ本体ハウジング11に取外し可能に装着されるキャップ2を有する。管拡径工具1は、前後方向に移動可能かつ複数のジョー4の後面と係合して複数のジョー4とともにねじ軸27の軸回りに回転可能に設けられる受けカム51を有する。管拡径工具1は、受けカム51を前方へ付勢するコイルばね52を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の流体管の端部を拡径する管拡径工具であって、
本体ハウジング内で前後方向に延出するねじ軸と、
前記ねじ軸に螺合され、前記ねじ軸の軸回りに回転することで前記ねじ軸を前後動させる雌ねじ部材と、
前記ねじ軸の前部に設けられた楔に押されて径方向外方に相互に開く複数のジョーと、
前記複数のジョーを径方向に開閉可能に支持しかつ前記本体ハウジングに取外し可能に装着されるキャップと、
前後方向に移動可能かつ前記複数のジョーの後面と係合して前記複数のジョーとともに前記ねじ軸の軸回りに回転可能に設けられる受けカムと、
前記受けカムを前方へ付勢する付勢部材を有する管拡径工具。
【請求項2】
請求項1に記載の管拡径工具であって、
前記受けカムに係合して前記受けカムを前記ねじ軸の軸回りに回転させて前記複数のジョーを前記軸回りに回転させる回転ギヤを有する管拡径工具。
【請求項3】
請求項2に記載の管拡径工具であって、
前記回転ギヤは、前記ねじ軸および/または前記楔が挿通される円筒形状の円筒壁と、前記円筒壁から径方向内方へ延出するばね受け部を有し、
前記受けカムは、前記ねじ軸および/または前記楔が挿通されかつ前記回転ギヤと同軸上に配設される円筒形状であり、
前記付勢部材は、前記回転ギヤと前記受けカムの間に設けられるコイルばねであり、前記回転ギヤの内周側に配置され、前記付勢部材の後部が前記ばね受け部に当接する管拡径工具。
【請求項4】
請求項3に記載の管拡径工具であって、
前記本体ハウジングは、前記回転ギヤの前記円筒壁の外周面を摺動可能に支持する軸受を有する管拡径工具。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の管拡径工具であって、
前記回転ギヤには、前後方向に凸形状または凹形状のガイドが設けられ、
前記受けカムには、前記ガイドと前後方向に移動可能に係合するガイド係合部が設けられ、
前記ガイドと前記ガイド係合部は、前記受けカムが前記回転ギヤに対して前後動することを許容し、かつ前記回転ギヤが前記受けカムを前記ねじ軸の軸回りに回転させる管拡径工具。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の管拡径工具であって、
前記付勢部材は、前記回転ギヤと前記受けカムの間に設けられ、
前記付勢部材と前記回転ギヤと前記受けカムは、一体で前記ねじ軸の軸回りに回転する管拡径工具。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の管拡径工具であって、
前記受けカムの前面には、前後方向に凸形状または凹形状のカム係合部が設けられ、
前記複数のジョーの前記後面のそれぞれには、前後方向に凹形状または凸形状でかつ前記カム係合部と係合するジョー係合部が設けられ、
前記受けカムは、前記付勢部材に抗して前記カム係合部の前後長さ以上後方に移動可能である管拡径工具。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載の管拡径工具であって、
前記回転ギヤは、前記楔の後端と当接することで前記楔が異常に後方へ移動することを規制するストッパを有する管拡径工具。
【請求項9】
請求項8に記載の管拡径工具であって、
前記回転ギヤは、前記楔が挿通される円筒形状の円筒壁を有し、
前記ストッパは、前記円筒壁から径方向内方へ延出し、
前記付勢部材は、前記回転ギヤの内周側に配置され、
前記付勢部材の後部が前記ストッパに当接する管拡径工具。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つに記載の管拡径工具であって、
前記ねじ軸と前記雌ねじ部材の螺合部分にボールが介装される管拡径工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば合成樹脂製の流体管の端部を被接続体に接続するために拡径する管拡径工具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばPEX(Crоss-linked pоlyethylene:架橋ポリエチレン)を材料とする流体管を樹脂製のパイプ等の被接続体に接続する場合がある。PEX管の端部の内径を拡げる管拡径工具が従来提供されている。管拡径工具を用いてPEX管の端部を拡径し、拡径部分を被接続体に装着する。PEX管の端部は、弾性変形によって次第に元の径に戻るように縮径する。端部が縮径したPEX管は、被接続体に対して密に接続される。接続されたPEX管は、自身の弾性によって被接続体に強固に保持される。
【0003】
特許文献1には、電動モータを駆動源としてPEX管を拡径する管拡径工具が記載されている。管拡径工具は、略円錐状の楔と、楔の後部に連結されかつ前後方向に延出するねじ軸と、楔の前方で楔の周方向に並ぶ複数のジョーを有する。複数のジョーは、本体ハウジングの前部に装着されるキャップによって径方向に開閉可能に支持される。ねじ軸は、本体ハウジングに対して回り止めされている。ねじ軸は、ねじ軸の軸回りに回転可能に本体ハウジングに支持された雌ねじ部材と螺合される。
【0004】
雌ねじ部材を電動モータの駆動によって回転させると、回り止めされたねじ軸が前後動する。楔がねじ軸と共に前進する際、複数のジョーは楔に押されて楔の径方向外方に相互に開く。複数のジョーをPEX管の端部開口に進入させた状態で径方向外方に開くことで、PEX管の端部を拡げることができる。楔がねじ軸と共に後退する際、複数のジョーは楔からの押圧力から解放されて径方向内方へ閉じる。
【0005】
例えば管拡径工具が6つのジョーを有する場合、PEX管の端部は周方向等間隔に6箇所で各ジョーから径方向外方に開く力を受ける。そのため1回の拡径動作では、PEX管の端部が略六角形に拡径される。管拡径工具は、PEX管の端部を円筒形に拡径するために、複数のジョーを楔の周方向に回転させるジョー回転機構を有する。ジョー回転機構は、電動モータの駆動によって所定の角度(例えば15°)で所定の回転方向(例えば前方から見て反時計回り方向)に複数のジョーを回転させる。ねじ軸の移動による複数のジョーの拡径動作と、ジョー回転機構による複数のジョーの回転動作は交互に繰り返される。そのため各ジョーは、PEX管の内周面と接触する位置が周方向に順次移動する。これによりPEX管の端部は、均一に拡径されて円筒形に近づく。
【0006】
PEX管は、例えば管径(呼び径)が0.5インチ、0.75インチ、1インチ、1.5インチ等の複数種類のサイズのものが一般に利用されている。PEX管のサイズが大きくなるほどPEX管の端部を拡径するために必要な力が大きくなる。そのためPEX管のサイズに合わせて複数種類のジョーを用いることが望ましい。例えば径方向に第1肉厚を有する複数のジョーを備えた第1キャップと、第1肉厚よりも厚い第2肉厚を有する複数のジョーを備えた第2キャップを適宜選択して装着する。第1キャップと第2キャップは、例えばねじ係合によって本体ハウジングに取外し可能に装着される。
【0007】
ジョー回転機構から各ジョーへの回転動力の伝達は、例えばそれぞれの係合部に凹凸形状を設け、凹凸形状を相互に係合させることで一体に回転させることでなされる。キャップを本体ハウジングに装着する際、それぞれの係合部が正規の状態で係合しない場合がある。例えばジョー回転機構側の凸部分とジョー側の凸部分が前後方向に干渉した状態でキャップを本体ハウジングに装着する。この場合、キャップを最後方位置まで装着させることができず、作業者は最後方位置よりも前方で止まったキャップを最後方位置まで装着されていると認識してしまう。
【0008】
ジョー回転機構の係合部と各ジョーの係合部が正規に係合していない状態で作業者がキャップを最後方の正規の位置まで装着されていると認識してしまう場合がある。この場合、複数のジョーが径方向に所定の位置まで開かない、あるいは複数のジョーが周方向に所定の位置まで回転しないことが生じる。そのため管拡径工具が動作不良を起こす恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0261959号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって複数のジョーを備えたキャップを本体ハウジングに対して正規の位置まで装着できる管拡径工具が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の1つの特徴によると合成樹脂製の流体管の端部を拡径する管拡径工具は、本体ハウジング内で前後方向に延出するねじ軸を有する。管拡径工具は、ねじ軸に螺合され、ねじ軸の軸回りに回転することでねじ軸を前後動させる雌ねじ部材を有する。管拡径工具は、ねじ軸の前部に設けられた楔に押されて径方向外方に相互に開く複数のジョーを有する。管拡径工具は、複数のジョーを径方向に開閉可能に支持しかつ本体ハウジングに取外し可能に装着されるキャップを有する。管拡径工具は、前後方向に移動可能かつ複数のジョーの後面と係合して複数のジョーとともにねじ軸の軸回りに回転可能に設けられる受けカムを有する。管拡径工具は、受けカムを前方へ付勢する付勢部材を有する。
【0012】
したがって複数のジョーを備えたキャップを本体ハウジングに装着する際、受けカムは後方へ移動可能である。そのため受けカムと複数のジョーの後面との前後方向の干渉を抑制できる。これによりキャップを本体ハウジングに対して最後方位置よりも手前で止まることなく正規の最後方位置まで装着できる。キャップを最後方位置まで装着した後には、受けカムを複数のジョーに対して相対的にねじ軸の軸回りに回転させることで、前方へ付勢された受けカムと複数のジョーの後面とを正規の状態で係合させることができる。これにより受けカム51から複数のジョー4へ回転動力を伝達できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の実施例に係る管拡径工具の斜視図である。
【
図2】本体ハウジングを取り外した状態の工具本体を前側右方から見た斜視図である。
【
図4】本体ハウジングを取り外した状態の工具本体を後側右方から見た斜視図である。
【
図5】本体ハウジングを取り外した状態の工具本体を後側左方から見た斜視図であって、ねじ軸が後端位置に位置する状態を示す斜視図である。
【
図6】本体ハウジングを取り外した状態の工具本体を後側左方から見た斜視図であって、ねじ軸が前端位置に位置する状態を示す斜視図である。
【
図7】右方から見た工具本体の縦断面図であって、ねじ軸が後端位置に位置する状態を示す断面図である。
【
図8】右方から見た工具本体の縦断面図であって、ねじ軸が前端位置に位置する状態を示す断面図である。
【
図13】
図11中のXII-XII線断面において、ねじ軸が前端位置に位置する状態を示す断面図である。
【
図14】回転ギヤと受けカムと複数のジョーの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の他の特徴によると管拡径工具は、受けカムに係合して受けカムをねじ軸の軸回りに回転させて複数のジョーを軸回りに回転させる回転ギヤを有する。したがって受けカムと複数のジョーの後面が正規の状態で係合している場合、受けカムが前方へ付勢されることで、回転ギヤの回転動力を受けカムを介して複数のジョーに効率良く伝達できる。受けカムと複数のジョーの後面が正規の状態で係合していない場合、受けカムを付勢力に抗して後方へ移動させることで、受けカムと複数のジョーの後面の係合を正常な状態に復帰させることができる。
【0015】
本開示の他の特徴によると回転ギヤは、ねじ軸および/または楔が挿通される円筒形状の円筒壁を有する。回転ギヤは、円筒壁から径方向内方へ延出するばね受け部を有する。受けカムは、ねじ軸および/または楔が挿通されかつ回転ギヤと同軸上に配設される円筒形状である。付勢部材は、回転ギヤと受けカムの間に設けられるコイルばねである。付勢部材は、回転ギヤの内周側に配置され、付勢部材の後部がばね受け部に当接する。したがって付勢部材を回転ギヤの円筒壁の径方向内方でコンパクトに収容できる。そのため回転ギヤの外周領域と受けカムの外周領域をコンパクトにできる。これにより管拡径工具をコンパクトに設けることができ、例えば狭所に配設されるPEX管の端部を拡径する作業性を向上させることができる。また、受けカムは、周方向のいずれの箇所においても略均等な力で前方へ付勢される。そのため受けカムがねじ軸に対して傾くことを抑制できる。これにより受けカムを前後にスムーズに移動させることができる。
【0016】
本開示の他の特徴によると本体ハウジングは、回転ギヤの円筒壁の外周面を摺動可能に支持する軸受を有する。したがって本体ハウジングの大型化を抑制しながら、回転ギヤをねじ軸の軸回りに精度良く回転させることができる。そのため様々な箇所に配設されるPEX管の端部を拡径でき、かつPEX管の端部を均一な円筒形状に拡径できる。
【0017】
本開示の他の特徴によると回転ギヤには、前後方向に凸形状または凹形状のガイドが設けられる。受けカムには、ガイドと前後方向に移動可能に係合するガイド係合部が設けられる。ガイドとガイド係合部は、受けカムが回転ギヤに対して前後動することを許容し、かつ回転ギヤが受けカムをねじ軸の軸回りに回転させる。したがって回転ギヤから受けカムへ伝達される回転動力のロスを抑制でき、かつ受けカムが上下方向または左右方向に移動することを抑制できる。そのため複数のジョーをねじ軸の軸回りに回転させる際に余分なエネルギーロスが生じることを抑制できる。また、例えば付勢部材が受けカムを付勢しない自然長の状態の場合でも、回転ギヤと受けカムを一体で回転させることができる。そのため付勢部材の疲労破壊を抑制できる。
【0018】
本開示の他の特徴によると付勢部材は、回転ギヤと受けカムの間に設けられる。付勢部材と回転ギヤと受けカムは、一体でねじ軸の軸回りに回転する。したがって回転ギヤと受けカムをねじ軸の軸回りに回転させる際、付勢部材に圧縮エネルギーまたは伸長エネルギーが蓄積されることを抑制できる。そのため付勢部材が余分なエネルギーロスを生じることを抑制できる。また、付勢部材の圧縮または伸長の繰り返しを減らすことで付勢部材の疲労破壊を抑制できる。
【0019】
本開示の他の特徴によると受けカムの前面には、前後方向に凸形状または凹形状のカム係合部が設けられる。複数のジョーの後面のそれぞれには、前後方向に凹形状または凸形状でかつカム係合部と係合するジョー係合部が設けられる。受けカムは、付勢部材に抗してカム係合部の前後長さ以上後方に移動可能である。したがって受けカムの前面と各ジョーの後面が最も干渉している状態、すなわちカム係合部の最も突出した箇所と各ジョーの後面の最も突出した箇所が前後方向に当接している状態でも、受けカムを後方へ移動させることでカム係合部とジョー係合部を正規の係合状態に復帰させることができる。これによりキャップを最後方位置まで装着できる。
【0020】
本開示の他の特徴によると回転ギヤは、楔の後端と当接することで楔が異常に後方へ移動することを規制するストッパを有する。したがってストッパを回転ギヤに設けることでストッパの強度を確保できる。そのためねじ軸と係合する他の部材、例えばねじ軸を前後動させる送りねじ機構等に高負荷が掛かることを抑制できる。
【0021】
本開示の他の特徴によると回転ギヤは、楔が挿通される円筒形状の円筒壁を有する。ストッパは、円筒壁から径方向内方へ延出する。付勢部材は、回転ギヤの内周側に配置される。付勢部材の後部がストッパに当接する。したがって付勢部材の後部がストッパに当接することで、付勢部材は受けカムを前方へ付勢する付勢力を生じる。ストッパが付勢部材の支持部と楔の移動を規制する部材を兼ねることで、回転ギヤをコンパクトに設けることができる。しかも付勢部材を回転ギヤの内周側に配置することで付勢部材をコンパクトに収容できる。かくして本体ハウジングをコンパクトに設けることができる。
【0022】
本開示の他の特徴によるとねじ軸と雌ねじ部材の螺合部分にボールが介装される。したがって螺合部分に介装されたボールによって、雌ねじ部材からねじ軸への動力の伝達効率が向上する。そのため雌ねじ部材の回転駆動をねじ軸の前後動に効率良く変換できる。
【0023】
次に本開示の1つの実施例を
図1~14に基づいて説明する。
図1に示すように本実施例の管拡径工具1は、本体ハウジング11に収容される工具本体10と、本体ハウジング11の下部から下方に延出するグリップ5を有する。使用者は、管拡径工具1の概ね後方(
図1において左方奥側)に位置してグリップ5を把持する。以下の説明において、使用者の手前側を後方、使用者の手前側と反対側を前方とする。上下左右方向については使用者を基準とする。
【0024】
図1,7,12に示すように工具本体10の前部には、リング状のキャップ2が装着される。工具本体10の中央には、前後方向に延出する円柱状のねじ軸27が設けられる。ねじ軸27の前端には、略円錐状の楔3が装着される。楔3は、キャップ2の径方向内方に位置する。ねじ軸27と楔3は、工具本体10の中央で前後方向に延出するねじ軸軸線K上に配置される。ねじ軸27と楔3は、ねじ軸軸線Kに沿って後端位置と前端位置の間で前後方向に移動可能である。楔3の径方向外方かつキャップ2の径方向内方には、前後方向に延出する複数のジョー4が設けられる。複数のジョー4は、楔3の周方向に等間隔に並ぶ。管拡径工具1は、例えば6つのジョー4を有し、各ジョー4が楔3の周方向に60°間隔で配置される。複数のジョー4は、周方向に互いに密接して楔3を覆う閉じ位置と、径方向外方に相互に開いて楔3の先端を露出する開き位置の間で径方向に開閉可能である。
【0025】
図1に示すようにグリップ5の前面には、トリガ式のスイッチレバー6が設けられる。使用者は、グリップ5を把持した状態でスイッチレバー6を引いて操作することができる。グリップ5の内部には、スイッチレバー6の操作と連動してオンオフが切り替えられるスイッチ本体6aが設けられる。スイッチ本体6aは、スイッチレバー6を引いていない場合にオフ状態であり、スイッチレバー6を引いた場合にオン状態になる。管拡径工具1を使用する際、使用者は、グリップ5を把持して複数のジョー4を合成樹脂製のPEX管の端部に挿入する。スイッチレバー6を引くことで複数のジョー4が径方向に開閉する。これによりPEX管の端部が所定の径まで拡径される。グリップ5の下端には、前後方向および左右方向に拡径する略矩形箱形の膨出部7が設けられる。膨出部7には、コントローラ9が収容される。コントローラ9は、底浅の矩形箱形のケースと、ケース内に収容されかつ樹脂モールドされた制御基板を有する。コントローラ9は、厚み方向(ケースの最短辺が延びる方向)が上下方向に沿った姿勢で膨出部7に収容される。コントローラ9は、主として後述する電動モータ20の駆動を制御する。
【0026】
図1に示すように膨出部7の下面には、矩形箱形のバッテリ8を取り外し可能に装着できるバッテリ取付部7aが設けられる。バッテリ8は、前方へスライドさせることでバッテリ取付部7aから取り外すことができる。バッテリ8は、バッテリ取付部7aの前方から後方へスライドさせることでバッテリ取付部7aに装着できる。バッテリ8は、バッテリ取付部7aから取り外して別途用意した充電器で繰り返し充電して使用できる。バッテリ8は、他の電動工具の電源として流用することができる。バッテリ8は、電動モータ20に電力を供給する電源として動作する。
【0027】
図7に示すように本体ハウジング11は、工具本体10の外周を覆う外装ケース17と、外装ケース17内で相互に組付けられる前側機構ハウジング12と第1中央機構ハウジング13と第2中央機構ハウジング14と後側機構ハウジング15を含む。外装ケース17内には、前側機構ハウジング12と第1中央機構ハウジング13と第2中央機構ハウジング14と後側機構ハウジング15が前側から後方に順に収容される。前側機構ハウジング12と第1中央機構ハウジング13と第2中央機構ハウジング14は、前後方向に貫通する中空路を中央に有する略円筒形状である。後側機構ハウジング15は、前後方向を板厚方向とする板状に設けられる。前側機構ハウジング12と第1中央機構ハウジング13と第2中央機構ハウジング14と後側機構ハウジング15は、協働して機構ハウジングを形成する。機構ハウジングには、後述するギヤ軸23とアイドルギヤ24と雌ねじ部材26が収容される。
【0028】
図2,3に示すように前側機構ハウジング12の前部外周面には、雄ねじ12aが設けられる。キャップ2の後部内周面には、雄ねじ12aと螺合する雌ねじ2bが設けられる。雄ねじ12aと雌ねじ2bを螺合させることで、キャップ2が前側機構ハウジング12の前部に連結される。
【0029】
図2,3に示すように前側機構ハウジング12の外周面には、径方向外方に張り出した略矩形状でありかつ前後方向に貫通するねじ孔を4つの角部にそれぞれ備えたフランジ12eが設けられる。第1中央機構ハウジング13、第2中央機構ハウジング14、後側機構ハウジング15の外周面には、径方向外方に張り出した略円筒形状でありかつ前後方向に貫通する透孔を備えた4つのボス部13f,14h,15bがそれぞれ設けられる。フランジ12eの後方にボス部13f,14h,15bを前後方向に並べることにより、フランジ12eのねじ孔と各ボス部の透孔が前後方向に連通する。4本のボルト16を、連通した各透孔に後方から前方へ挿通させ、フランジ12eのねじ孔に締結させる。これにより前側機構ハウジング12,第1中央機構ハウジング13,第2中央機構ハウジング14,後側機構ハウジング15は前後方向に並んで連結される。
【0030】
図2,3に示すように第1中央機構ハウジング13は、円筒形状の下方に延出する外形略U字状の下方延出部13bを有する。第2中央機構ハウジング14は、円筒形状の下方に延出する外形略U字状の下方延出部14bを有する。下方延出部13bと下方延出部14bが前後方向に連結されることでギヤ軸23とアイドルギヤ24を収容するスペースが形成される。下方延出部13bには、前後方向に貫通する2つの透孔が前後に並列して設けられる。下側の透孔には、後述するギヤ軸23を支持するための凹部13cが設けられる。上側の透孔13dには、アイドルギヤ24を支持する軸部材24aが圧入される。下方延出部14bには、前後方向に貫通する2つの透孔が前後に並列して設けられる。下側の透孔には、ギヤ軸23を支持するための凹部14cが設けられる。上側の透孔14dには、軸部材24aが挿入される。
【0031】
図7に示すように外装ケース17の後方下部には、略円柱形状の電動モータ20が収容される。電動モータ20には、例えばDCブラシレスモータと称されるモータが用いられる。電動モータ20は、後端位置に位置するねじ軸27の下方かつグリップ5の上方に位置する。電動モータ20のモータ軸20aは、モータ軸線Jに沿ってねじ軸27の中心を通るねじ軸軸線Kと平行に前後方向に延出する。モータ軸20aは、外装ケース17に保持された軸受20e,20fによってモータ軸線Jを中心に回転可能に支持される。
【0032】
図7に示すように電動モータ20は、外装ケース17に対して回転不能に支持された固定子20bを有する。固定子20bは、モータ軸20aの径方向外方に配置される。電動モータ20の回転子20cは、固定子20bの内周側でモータ軸20aと一体に回転可能にモータ軸20aに取付けられる。回転子20cの前方には、回転数検知センサ20dが設けられる。回転数検知センサ20dは、回転子20cの回転角度を検知することでモータ軸20aの回転数を検知する。回転子20cと後方の軸受20fの前後方向の間には、電動モータ20に冷却風を導入するためのファン21がモータ軸20aに一体に取付けられる。モータ軸20aとともにファン21が回転すると、冷却風が電動モータ20の前方から後方に向けて流れる。
【0033】
図7に示すように電動モータ20の前方には、モータ軸20aの出力を減速するための遊星減速機構22が設けられる。遊星減速機構22は、電動モータ20と前後方向に並んで外装ケース17に収容される。モータ軸20aの回転駆動は、遊星減速機構22において2段階で減速されてギヤ軸23に伝達される。
【0034】
図7に示すようにギヤ軸23は、軸受23b,23cによってモータ軸線Jを中心に回転可能に支持される。前方の軸受23bは、第1中央機構ハウジング13の凹部13cに圧入される。後方の軸受23cは、第2中央機構ハウジング14の凹部14cに圧入される。ギヤ軸23は、軸受23b,23cの前後方向の間に駆動側ギヤ23aを有する。駆動側ギヤ23aは、ギヤ軸23と一体になってモータ軸線Jを中心に回転する。
【0035】
図7に示すようにギヤ軸23とねじ軸27の上下方向の間には、アイドルギヤ24が設けられる。アイドルギヤ24は、前後方向に延出する円柱状の軸部材24aによって軸部材24aの軸回りに回転可能に支持される。アイドルギヤ24は、下方の駆動側ギヤ23aと噛合し、かつ上方の従動側ギヤ26aと噛合する。
【0036】
図7に示すように工具本体10には、ボールねじ機構と称される送りねじ機構25が設けられる。送りねじ機構25は、ねじ軸27と雌ねじ部材26を有する。ねじ軸27の外周面には雄ねじ27aが設けられる。雌ねじ部材26は、ねじ軸27を周方向に覆う略円筒形状に形成される。雌ねじ部材26の内周面には雌ねじ26bが設けられる。雌ねじ26bは、複数のボール27bを介してねじ軸27の雄ねじ27aに螺合される。雌ねじ部材26の外周には、径方向外方に突出しかつアイドルギヤ24と噛み合う従動側ギヤ26aが設けられる。駆動側ギヤ23aとアイドルギヤ24との噛み合いと、アイドルギヤ24と従動側ギヤ26aとの噛み合いによって、ギヤ軸23の回転駆動が雌ねじ部材26に減速して伝達される。
【0037】
図7に示すように雌ねじ部材26は、工具本体10内に収容された軸受26c,26dによってねじ軸軸線Kを中心にして回転可能に支持される。前方の軸受26cは、第1中央機構ハウジング13の内周面13aに圧入される。後方の軸受26dは、第2中央機構ハウジング14の内周面14aに圧入される。雌ねじ部材26の後面と後側機構ハウジング15の前面15aとの間には、雌ねじ部材26を後方に押すスラスト荷重を受けるためのスラスト軸受26eが設けられる。
【0038】
図4,5に示すようにねじ軸27の後部には、ねじ軸27の回り止めをしかつねじ軸27の前後動をガイドするねじ軸ガイド28が取付けられる。ねじ軸ガイド28は、ねじ軸27の後端に連結されかつ左右方向に延出するローラシャフト28aを有する。ローラシャフト28aの左右両端には、ローラ28bが設けられる。第2中央機構ハウジング14の左右側部には、前後方向に延出するループ形状の一対のレール28cが取付けられる。ローラ28bは、レール28cと係合してレール28cに沿って前後方向に移動可能である。ねじ軸27は、ローラ28bに案内されてねじ軸ガイド28とともに前後方向に移動する。
【0039】
図5,6,12,13に示すように工具本体10は、複数のジョー4を回転させるジョー回転機構30を有する。複数のジョー4は、ジョー回転機構30によってねじ軸軸線Kの軸回りに回転する。ジョー回転機構30は、モータ軸20aの回転に連動して前後動するプッシュプレート34と、プッシュプレート34の前後動に連動して軸回りに回転するシャフト31を有する。
【0040】
図3,4に示すようにジョー回転機構30は、シャフト31に取付けられたボールリテーナ35を有する。ボールリテーナ35は、シャフト31の延出方向に沿って前後方向に移動可能である。シャフト31の右方には、シャフト31と平行に延出するガイドシャフト41が設けられる。第2中央機構ハウジング14の下方延出部14bには、後方へ突出する円筒状のガイドシャフト支持部14eが設けられる。ガイドシャフト支持部14eの中央には、前後方向に貫通する雌ねじが設けられる。ガイドシャフト41は、先端に設けられた雄ねじをガイドシャフト支持部14eの雌ねじに螺合させることで第2中央機構ハウジング14に固定される。
【0041】
図3に示すようにボールリテーナ35は、略円筒状のスリーブ装着部35aと、スリーブ装着部35aの右方に延出する側方延出部35dを有する。スリーブ装着部35aの中央には、前後方向に貫通するシャフト挿通孔35cが設けられる。シャフト挿通孔35cには、シャフト31が前後方向にスライド可能に挿通される。側方延出部35dには、前後方向に貫通する透孔35eが設けられる。透孔35eには、ガイドシャフト41が前後方向にスライド可能に挿通される。かくしてボールリテーナ35は、シャフト31とガイドシャフト41に案内されて前後方向にスライド可能であり、かつシャフト31の軸回りの回転を規制する。
【0042】
図4~6に示すようにプッシュプレート34は、板状に形成され、板厚方向を前後方向とする姿勢でローラシャフト28aに一体に取付けられる。プッシュプレート34は、ローラシャフト28aから下方に延出してスリーブ装着部35aの後方に配置される。プッシュプレート34は、前後方向に貫通する透孔34aを有する。透孔34aには、スリーブ装着部35aから後方へ突出したシャフト31が挿通される。プッシュプレート34は、ねじ軸27と一体で前後動する。ねじ軸27が前進する際、プッシュプレート34はボールリテーナ35の後面を前方へ押圧する。ねじ軸27が後退する際、プッシュプレート34はボールリテーナ35から離間するように移動する。そのためプッシュプレート34がボールリテーナ35を移動させる力は作用しない。
【0043】
図3に示すようにスリーブ装着部35aには、左右方向に貫通してシャフト挿通孔35cと連通するボール保持孔35bが設けられる。左右一対のボール保持孔35bには、それぞれボール38が挿入される。スリーブ装着部35aには、一対のボール38およびボール保持孔35bを径方向外方から覆うスリーブ36が装着される。スリーブ36をスリーブ装着部35aに装着することで、一対のボール38はボール保持孔35bから脱離しないように保持される。一対のボール38は、シャフト31の左方と右方それぞれに位置する。一対のボール38は、ボールリテーナ35が回り止めされることでシャフト31の軸回りの移動が規制される。スリーブ装着部35aの前部には、スリーブ36を保持するためのナット37が装着される。
【0044】
図3,12,13に示すようにシャフト31は、前シャフト32と後シャフト33を前後方向に組付けることで構成される。前シャフト32は、第1中央機構ハウジング13のシャフト支持部13eに軸回りに回転可能に支持される。後シャフト33は、第2中央機構ハウジング14のシャフト支持部14gに軸回りに回転可能に支持される。後シャフト33は、ボールリテーナ35に挿通される。後シャフト33の前部には、雄ねじ33aが設けられる。前シャフト32の後部には、雄ねじ33aと螺合する雌ねじ32aが設けられる。雌ねじ32aと雄ねじ33aを螺合させることで前シャフト32と後シャフト33が一体に取付けられる。
【0045】
図3,12,13に示すように後シャフト33の外周面には、一対のボール溝33bが設けられる。ボール溝33bは、概ね後シャフト33の長手方向に延出し、かつ後方から前方に向けてねじ溝のように周方向に延出する。ボール溝33bは、後方から前方に向けて第2回転R2(
図6参照)の方向へ延出する。一対のボール溝33bは、後シャフト33の軸中心に対して点対称の位置関係で配置される。各ボール溝33bには、ボールリテーナ35のボール保持孔35bからシャフト挿通孔35cへと径方向内方へ突出したボール38が係合する。
【0046】
図5,6に示すようにボールリテーナ35が後シャフト33に対して前後動する際、一対のボール38(
図3参照)はボール溝33bの延出方向に沿ってボール溝33b内を移動する。一対のボール38が後シャフト33の軸回りに移動しないため、後シャフト33は前後動するボールリテーナ35に対して軸回りに回転する。後シャフト33は、ボールリテーナ35が前進する場合、ボールリテーナ35に対して第1回転R1の方向に回転する。後シャフト33は、ボールリテーナ35が後退する場合、ボールリテーナ35に対して第2回転R2の方向に回転する。後シャフト33に螺合された前シャフト32は、後シャフト33と一体で軸回りに回転する。
【0047】
図12,13に示すように第2中央機構ハウジング14のシャフト支持部14gには、径方向に張り出したフランジ状のばね受け部14fが設けられる。ばね受け部14fとボールリテーナ35の前後方向の間には、ボールリテーナ35を後方へ付勢する圧縮ばね39が介装される。
【0048】
図11~13に示すようにジョー回転機構30は、円筒形状のワンウェイクラッチ42と駆動側ギヤ43を有する。ワンウェイクラッチ42と駆動側ギヤ43は、シャフト支持部13eの前方において前シャフト32の前部に装着される。ワンウェイクラッチ42は、前シャフト32と駆動側ギヤ43の径方向の間に設けられる。ワンウェイクラッチ42は、例えばスプラグ式と称される構造で径方向内周面側の一方向の回転のみを径方向外周面側へ伝達する。ワンウェイクラッチ42は、前シャフト32の第2回転R2(
図6参照)を駆動側ギヤ43へ伝達する。ワンウェイクラッチ42は、前シャフト32の第1回転R1(
図5参照)を駆動側ギヤ43へ伝達せず前シャフト32を空転させる。
【0049】
図5,6に示すように前シャフト32の後部には、前後方向に相互に平行に延出する一対の平面を具備する二面幅部32bが設けられる。二面幅部32bは、第1中央機構ハウジング13と第2中央機構ハウジング14の前後方向の間で第1中央機構ハウジング13および第2中央機構ハウジング14の外側へ露出する位置に配置される。後シャフト33の後端には、前後方向に相互に平行に延出する一対の平面を具備する二面幅部33cが設けられる。二面幅部32bをスパナ等で保持して前シャフト32の回り止めをした状態で、二面幅部33cをスパナ等で保持して後シャフト33を前シャフト32に螺合させることができる。
【0050】
図3,9,10に示すようにジョー回転機構30は、略円筒形状の回転ギヤ50と、略円筒形状の受けカム51を有する。回転ギヤ50は、雌ねじ部材26の前方に配置される。受けカム51は、回転ギヤ50の前方に配置される。回転ギヤ50と受けカム51は、前側機構ハウジング12の内周面によって同軸上で回転可能に支持される。前側機構ハウジング12は、ねじ軸軸線Kを中心とする円筒内周面である第1内周面12bと第2内周面12cを有する。第1内周面12bと第2内周面12cは、前後に並んで連通される。第2内周面12cは、第1内周面の前方に位置しかつ第1内周面12bよりも小径に設けられる。第1内周面12bの前端と第2内周面12cの後端は、径方向に延出する径方向延出面12dによって連結される。
【0051】
図3,12,13に示すように回転ギヤ50は、円筒状の円筒壁50bと、円筒壁50bの後部から径方向に突出する従動側ギヤ50aを有する。円筒壁50bの中央には、前後方向に貫通する挿通孔50cが設けられる。挿通孔50cは、ねじ軸27を挿通させてねじ軸27と楔3が前後方向に移動可能な径で設けられる。円筒壁50bの外周面は、前側機構ハウジング12の第1内周面12bと摺動することでねじ軸軸線Kの軸回りに回転する。そのため第1内周面12bは、本開示において円筒壁50bの外周面を摺動可能に支持する軸受に相当する。従動側ギヤ50aは、第1内周面12bよりも後方で駆動側ギヤ43と噛合する。駆動側ギヤ43の回転動力は、従動側ギヤ50aへ減速して伝達される。従動側ギヤ50aは、駆動側ギヤ43が第2回転R2(
図6参照)の方向に回転する時、前方から見て反時計回り方向に回転する。従動側ギヤ50aは、駆動側ギヤ43が第1回転R1(
図5参照)の方向に回転する時、前方から見て時計回り方向に回転する。
【0052】
図12,13に示すように回転ギヤ50は、円筒壁50bの後部から径方向内方へ延出するばね受け部50dを有する。ばね受け部50dは、従動側ギヤ50aの径方向内方に位置する。ばね受け部50dの内周面は、ねじ軸27を挿通可能かつ楔3の後端3aを通さない大きさで設けられる。ばね受け部50dの前面には後述するコイルばね52の後部が当接する。ばね受け部50dは、ねじ軸27が異常に後方へ移動することを抑制するストッパを兼ねる。通常、ねじ軸27が後退する際、楔3の後端3aはばね受け部50dよりも前方に位置する。万一、ねじ軸27が後端位置よりもさらに後方へ移動しようとする場合でも、楔3の後端3aがばね受け部50dの前面に当接することでねじ軸27の後方への移動が停止する。
【0053】
図3,14に示すように回転ギヤ50は、円筒壁50bの前面から前方へ突出する略矩形状のガイド50eを有する。ガイド50eは、円筒壁50bの周方向に180°間隔で計2つ設けられる。ガイド50eは、受けカム51を回転ギヤ50に対して相対回転しないようにかつ前後方向に移動するように案内する。
【0054】
図3,12~14に示すように受けカム51は、円筒状の円筒部51aを有する。円筒部51aの外周面は、前側機構ハウジング12の第2内周面12cと摺動することでねじ軸軸線Kの軸回りに回転する。円筒部51aの中央には、前後方向に貫通する挿通孔51bが設けられる。挿通孔51bは、ねじ軸27と楔3を挿通可能な径で設けられる。円筒部51aの後部には、径方向外方へフランジ状に突出する第2ばね受け部51cが設けられる。第2ばね受け部51cの外周面は、回転ギヤ50の円筒壁50bの外周面と略同じ径で設けられる。第2ばね受け部51cの外周面は、前側機構ハウジング12の第1内周面12bと摺動することでねじ軸軸線Kの軸回りに回転する。回転ギヤ50のばね受け部50dと受けカム51の第2ばね受け部51cとの間にコイルばね(付勢部材)52が介装される。受けカム51は、コイルばね52によって回転ギヤ50に対して前方へ付勢されている。コイルばね52による受けカム51の付勢方向は、ねじ軸軸線Kの延出方向に沿っている。
【0055】
図3,14に示すようにばね受け部51cには、径方向内方へ切り欠かれ、かつばね受け部51cを前後方向に貫通するガイド係合部51dが設けられる。ガイド係合部51dは、第2ばね受け部51cの周方向に180°間隔で計2つ設けられる。各ガイド係合部51dは、回転ギヤ50の各ガイド50eと係合する。受けカム51は、各ガイド係合部51dと各ガイド50eを係合させることで回転ギヤ50と一体でねじ軸軸線K(
図12参照)の軸回りに回転する。また、受けカム51は、各ガイド係合部51dと各ガイド50eを係合させることで回転ギヤ50に対して前後方向に相対移動可能である。
【0056】
図12~14に示すように受けカム51が前方位置P1に位置する時、コイルばね52は概ね自然長である。受けカム51が前方位置P1に位置する時、円筒壁50bの前面と第2ばね受け部51cの後面の間には、受けカム51の後方への移動を許容するスペースSが形成される。ガイド50eおよびガイド係合部51dの前後長さは、受けカム51が前方位置P1に位置する時にガイド50eとガイド係合部51dの係合が外れない長さで設けられる。
【0057】
図3,14に示すように受けカム51は、円筒部51aの前面51fから前方へ突出する複数のカム係合部51eを有する。各カム係合部51eは矩形状に形成される。カム係合部51eは、円筒部51aの周方向に60°間隔で計6つ設けられる。カム係合部51eの前後長さD1は、受けカム51が回転ギヤ50に対して前方位置P1から後方の退避位置P2まで移動可能な距離D2以下である。換言すると距離D2は、カム係合部51eの前後長さD1以上の長さである。なお、図ではガイド50eとガイド係合部51dの係合を明確にする前方位置P1で記載しているが、実際の前方位置P1はガイド50eとガイド係合部51dの係合が外れる直前の位置まで前方に設定可能である。
【0058】
図9,10,14に示すようにジョー4の後面には、受けカム51の複数のカム係合部51eのいずれか1つと係合する凹形状のジョー係合部(凹部)4bが設けられる。複数のジョー4は、各カム係合部51eを各ジョー4のジョー係合部4bと係合させることで、受けカム51と一体でねじ軸軸線Kの軸回りに回転する。各ジョー係合部4bの周方向両端には、ジョー係合部4bに対して後方へ凸形状の凸部4dが形成される。ジョー係合部4bと凸部4dの前後の間隔は、カム係合部51eの前後長さD1と略同じ長さである。
【0059】
図9,10に示すように各ジョー4の後部の径方向外周には、断面円弧状のリング収容溝4aが設けられる。複数のジョー4のリング収容溝4aは、周方向に連なって円環状の溝を形成する。複数のジョー4は、リング収容溝4aに挿入されかつ弾性的に伸縮可能なリング4cによって周方向に連結される。キャップ2の内周面には、リング4cを収容可能なジョー支持溝2aが径方向外方および周方向に延出して設けられる。ジョー支持溝2aは、リング4cの径方向の移動は許容するが、リング4cの前後方向の移動は規制する。複数のジョー4は、ジョー支持溝2aに支持されたリング4cを中心にして径方向に開閉する。
【0060】
図7,8に示すようにローラシャフト28aの上部には、磁石28dが取付けられる。外装ケース17の上部内周面には、ねじ軸27の前後位置を検知するねじ軸位置センサ29が設けられる。ねじ軸位置センサ29は、ホールICと称される磁界を検知するセンサである。ねじ軸位置センサ29は、後端位置センサ29aと前端位置センサ29bを含む。後端位置センサ29aは、ねじ軸27が後端位置に位置する際の磁石28dの直上位置に配置される。後端位置センサ29aは、磁石28dと前後方向にオーバーラップした時にねじ軸27の後端位置を検知し、コントローラ9(
図1参照)に信号を送信する。前端位置センサ29bは、ねじ軸27が前端位置に位置する際の磁石28dの直上位置に配置される。前端位置センサ29bは、磁石28dと前後方向にオーバーラップした時にねじ軸27の前端位置を検知し、コントローラ9に信号を送信する。
【0061】
図7~13を参照して送りねじ機構25とジョー回転機構30の駆動について説明する。先ず電動モータ20のモータ軸20aが回転する。モータ軸20aの回転駆動が遊星減速機構22で減速されてギヤ軸23に伝わる。ギヤ軸23が回転すると、駆動側ギヤ23aと噛合したアイドルギヤ24が回転する。従動側ギヤ26aでアイドルギヤ24と噛合した雌ねじ部材26がねじ軸軸線Kの軸回りに回転する。雌ねじ部材26が回転すると、ねじ軸ガイド28によって回り止めされたねじ軸27が前後動する。ねじ軸27が前進する際、ねじ軸27の前端に装着された楔3が複数のジョー4とリング4cを径方向外方の開き位置に移動するように押圧する。ねじ軸27が後退する際には、楔3の押圧力が解消されるため、リング4cが収縮して複数のジョー4が径方向内方の閉じ位置に戻る。
【0062】
電動モータ20は、コントローラ9によって正転と逆転が切り替えられる。ねじ軸27は、電動モータ20が正転する際に前進し、電動モータ20が逆転する際に後退する。コントローラ9は、後端位置センサ29aから送信される信号と前端位置センサ29bから送信される信号に基づいて電動モータ20の正転と逆転を切り替える。
【0063】
ねじ軸27が前進する際、ローラシャフト28aに装着されたプッシュプレート34も一体に前進する。プッシュプレート34は、ボールリテーナ35を圧縮ばね39の付勢力に抗して前方へ押圧する。ボールリテーナ35が前進すると、ボール38がボール溝33bと係合し、かつガイドシャフト41がボールリテーナ35を回り止めすることによって、シャフト31が第1回転R1の方向に回転する。この時、ワンウェイクラッチ42は、シャフト31の回転動力を駆動側ギヤ43に伝達しない。回転ギヤ50は、駆動側ギヤ43から回転動力が伝達されないため回転しない。そのため回転ギヤ50と連結される受けカム51と複数のジョー4は回転しない。かくして複数のジョー4は、ねじ軸軸線Kの軸回りに回転せず、楔3に押されて径方向外方に開く。
【0064】
ねじ軸27が前進する際、受けカム51は、回転ギヤ50やねじ軸27から周方向に回転する力も前後動する力も受けない。そのため受けカム51は、コイルばね52が概ね自然長である前方位置P1で保持される。概ね自然長のコイルばね52には、圧縮エネルギーが蓄積されない。
【0065】
ねじ軸27が後退する際、ローラシャフト28aに装着されたプッシュプレート34も一体に後退する。ボールリテーナ35は、プッシュプレート34の押圧力が解除されることで、圧縮ばね39に付勢されて後方へ移動する。ボールリテーナ35が後退すると、ボール38がボール溝33bと係合し、かつガイドシャフト41がボールリテーナ35を回り止めすることによって、シャフト31は第2回転R2の方向に回転する。この時、ワンウェイクラッチ42は、前シャフト32の回転動力を駆動側ギヤ43に伝達する。回転ギヤ50は、駆動側ギヤ43から回転動力が伝達されることで前方から見て反時計回り方向に回転する。受けカム51と複数のジョー4も、回転ギヤ50と一体に回転する。かくして複数のジョー4は、ねじ軸軸線Kの軸回りに前方から見て反時計回り方向に回転しながら径方向内方へ閉じる。
【0066】
ねじ軸27が後退する際、受けカム51は、回転ギヤ50から周方向に回転する力を受けるものの、回転ギヤ50やねじ軸27から前後動する力は受けない。そのため受けカム51は、コイルばね52が概ね自然長である前方位置P1で保持される。概ね自然長のコイルばね52には、圧縮エネルギーが蓄積されない。
【0067】
図1,14を参照するように管拡径工具1には、ジョー4の径方向の肉厚等が異なる複数種類のジョー4を取外し可能に装着できる。複数のジョー4を保持するキャップ2を本体ハウジング11から取外す際、各ジョー4のジョー係合部4bと受けカム51の各カム係合部51eとの係合が外れる。別の種類のジョー4を保持するキャップ2を本体ハウジング11に取付ける際、各ジョー4のジョー係合部4bと受けカム51の各カム係合部51eとが係合する。この時、ジョー係合部4bとカム係合部51eが正規の状態で係合しない場合がある。例えばジョー係合部4bの周方向両端の凸部4dとカム係合部51eが前後方向に当接する。この場合、各ジョー4は概ね前後長さD1分だけ、正規の位置よりも前方に位置する。そのためキャップ2を本体ハウジング11に十分に取付けられず、当該状態のままでは受けカム51から各ジョー4への回転駆動の伝達が良好に伝わらない。
【0068】
本開示のジョー回転機構30では、受けカム51をコイルばね52で前方位置P1へ付勢している。また、受けカム51は前方位置P1から退避位置P2まで、前後長さD1以上の距離D2を前後方向に移動できる。そのため凸部4dとカム係合部51eが前後方向に当接して相互に干渉した場合でも、カム係合部51eが距離D2だけ後方へ移動することで、凸部4dとカム係合部51eの干渉状態を解除できる。そのためジョー係合部4bとカム係合部51eを改めて正規の状態で係合させることができる。
【0069】
上述するように合成樹脂製の流体管の端部を拡径する管拡径工具1は、
図7,9に示すように本体ハウジング11内で前後方向に延出するねじ軸27を有する。管拡径工具1は、ねじ軸27に螺合され、ねじ軸27の軸回りに回転することでねじ軸27を前後動させる雌ねじ部材26を有する。管拡径工具1は、ねじ軸27の前部に設けられた楔3に押されて径方向外方に相互に開く複数のジョー4を有する。管拡径工具1は、複数のジョー4を径方向に開閉可能に支持しかつ本体ハウジング11に取外し可能に装着されるキャップ2を有する。管拡径工具1は、前後方向に移動可能かつ複数のジョー4の後面と係合して複数のジョー4とともにねじ軸27の軸回りに回転可能に設けられる受けカム51を有する。管拡径工具1は、受けカム51を前方へ付勢するコイルばね(付勢部材)52を有する。
【0070】
したがって複数のジョー4を備えたキャップ2を本体ハウジング11に装着する際、受けカム51は後方へ移動可能である。そのため受けカム51と複数のジョー4の後面との前後方向の干渉を抑制できる。これによりキャップ2を本体ハウジング11に対して最後方位置よりも手前で止まることなく最後方位置まで容易に装着できる。キャップ2を最後方位置まで装着した後には、受けカム51を複数のジョー4に対して相対的にねじ軸27の軸回りに回転させることで、前方へ付勢された受けカム51と複数のジョー4の後面とを正規の状態で係合させることができる。これにより受けカム51から複数のジョー4へ回転動力を伝達できる。
【0071】
図7,9に示すように管拡径工具1は、受けカム51に係合して受けカム51をねじ軸の軸回りに回転させて複数のジョー4を軸回りに回転させる回転ギヤ50を有する。したがって受けカム51と複数のジョー4の後面が正規の状態で係合している場合、受けカム51が前方へ付勢されることで、回転ギヤ50の回転動力を受けカム51を介して複数のジョー4に効率良く伝達できる。受けカム51と複数のジョー4の後面が正規の状態で係合していない場合、受けカム51を付勢力に抗して後方へ移動させることで、受けカム51と複数のジョー4の後面の係合を正常な状態に復帰させることができる。
【0072】
図7,9に示すように回転ギヤ50は、ねじ軸27および楔3が挿通される円筒形状の円筒壁50bを有する。回転ギヤ50は、円筒壁50bから径方向内方へ延出するばね受け部50dを有する。受けカム51は、ねじ軸27および楔3が挿通されかつ回転ギヤ50と同軸上に配設される円筒形状である。付勢部材52は、回転ギヤと受けカムの間に設けられるコイルばねである。コイルばね52は、回転ギヤ50の内周側に配置され、コイルばね52の後部がばね受け部50dに当接する。したがってコイルばね52を回転ギヤ50の円筒壁50bの径方向内方でコンパクトに収容できる。そのため回転ギヤ50の外周領域と受けカム51の外周領域をコンパクトにできる。これにより管拡径工具1をコンパクトに設けることができ、例えば狭所に配設されるPEX管の端部を拡径する作業性を向上させることができる。また、受けカム51は、周方向のいずれの箇所においても略均等な力で前方へ付勢される。そのため受けカム51がねじ軸27に対して傾くことを抑制できる。これにより受けカム51を前後にスムーズに移動させることができる。
【0073】
図7,9に示すように本体ハウジング11は、回転ギヤ50の円筒壁50bの外周面を摺動可能に支持する第1内周面(軸受)12bを有する。したがって本体ハウジング11の大型化を抑制しながら、回転ギヤ50をねじ軸27の軸回りに精度良く回転させることができる。そのため様々な箇所に配設されるPEX管の端部を拡径でき、かつPEX管の端部を均一な円筒形状に拡径できる。
【0074】
図3,14に示すように回転ギヤ50には、前後方向に凸形状または凹形状のガイド50eが設けられる。受けカム51には、ガイド50eと前後方向に移動可能に係合するガイド係合部51dが設けられる。ガイド50eとガイド係合部51dは、受けカム51が回転ギヤ50に対して前後動することを許容し、かつ回転ギヤ50が受けカム51をねじ軸27の軸回りに回転させる。したがって回転ギヤ50から受けカム51へ伝達される回転動力のロスを抑制でき、かつ受けカム51が上下方向または左右方向に移動することを抑制できる。そのため複数のジョー4をねじ軸27の軸回りに回転させる際に余分なエネルギーロスが生じることを抑制できる。また、例えばコイルばね52が受けカム51を付勢しない自然長の状態の場合でも、回転ギヤ50と受けカム51を一体で回転させることができる。そのためコイルばね52の疲労破壊を抑制できる。
【0075】
図7,9に示すようにコイルばね52は、回転ギヤ50と受けカム51の間に設けられる。コイルばね52と回転ギヤ50と受けカム51は、一体でねじ軸27の軸回りに回転する。したがって回転ギヤ50と受けカム51をねじ軸27の軸回りに回転させる際、コイルばね52に圧縮エネルギーまたは伸長エネルギーが蓄積されることを抑制できる。そのためコイルばね52が余分なエネルギーロスを生じることを抑制できる。また、コイルばね52の圧縮または伸長の繰り返しを減らすことでコイルばね52の疲労破壊を抑制できる。
【0076】
図14に示すように受けカム51の前面51fには、前後方向に凸形状のカム係合部51eが設けられる。複数のジョー4の後面のそれぞれには、前後方向に凹形状でかつカム係合部51eと係合するジョー係合部4bが設けられる。受けカム51は、コイルばね52に抗してカム係合部51eの前後長さ以上後方に移動可能である。したがって受けカム51の前面51fと各ジョー4の後面が最も干渉している状態、すなわちカム係合部51eの最も突出した箇所と凸部4dの最も突出した箇所が前後方向に当接している状態でも、受けカム51を後方へ移動させることでカム係合部51eとジョー係合部4bを正規の係合状態に復帰させることができる。これによりキャップ2(
図7参照)を最後方位置まで装着できる。
【0077】
図7,9に示すように回転ギヤ50は、楔3の後端と当接することで楔3が異常に後方へ移動することを規制するばね受け部(ストッパ)50dを有する。したがってストッパ50dを回転ギヤ50に設けることでストッパ50dの強度を確保できる。そのためねじ軸27と係合する他の部材、例えばねじ軸27を前後動させる送りねじ機構25等に高負荷が掛かることを抑制できる。
【0078】
図7,9に示すように回転ギヤ50は、楔3が挿通される円筒形状の円筒壁50bを有する。ストッパ50dは、円筒壁50bから径方向内方へ延出する。コイルばね52は、回転ギヤ50の内周側に配置される。コイルばね52の後部がばね受け部50dに当接する。したがってコイルばね52の後部がばね受け部50dに当接することで、コイルばね52は受けカム51を前方へ付勢する付勢力を生じる。ばね受け部50dがコイルばね52の支持部と楔3の後退を規制するストッパを兼ねることで、回転ギヤ50をコンパクトに設けることができる。しかもコイルばね52を回転ギヤ50の内周側に配置することでコイルばね52をコンパクトに収容できる。かくして本体ハウジング11をコンパクトに設けることができる。
【0079】
図7,9に示すようにねじ軸27と雌ねじ部材26の螺合部分にボール27bが介装される。したがって螺合部分に介装されたボール27bによって、雌ねじ部材26からねじ軸27への動力の伝達効率が向上する。そのため雌ねじ部材26の回転駆動をねじ軸27の前後動に効率良く変換できる。
【0080】
以上説明した本実施例の管拡径工具1には様々な変更を加えることができる。ジョー4を6つ有する管拡径工具1を例示した。これに代えて、例えば5つ以下または7つ以上のジョー4を有していても良い。
【0081】
前方から見て複数のジョー4を反時計回り方向に回転させるジョー回転機構30を例示した。これに代えて、前方から見て複数のジョー4を時計回り方向に回転させる構成としても良い。この場合、ワンウェイクラッチ42が駆動側ギヤ43に動力を伝達する前シャフト32の回転方向は、前方から見て反時計回り方向(
図5に示す第1回転R1の方向)である。
【0082】
ねじ軸27の雄ねじ27aと雌ねじ部材26の雌ねじ26bの間にボール27bが介装されるボールねじ機構と称される送りねじ機構25を例示した。これに代えて、例えば雄ねじ27aと雌ねじ26bが直接螺合してボールが介装されない送りねじ機構であっても良い。
【0083】
ねじ軸27と楔3の両方を挿通可能な回転ギヤ50の円筒壁50bを例示した。これに代えて円筒壁50bにはねじ軸27と楔3のいずれか一方のみ、例えばねじ軸27のみを挿通可能としても良い。ねじ軸27と楔3の両方を挿通可能な受けカム51の円筒部51aを例示した。これに代えて円筒部51aにはねじ軸27と楔3のいずれか一方のみ、例えば楔3のみを挿通可能としても良い。
【0084】
回転ギヤ50に凸形状のガイド50eを設け、受けカム51に凹形状のガイド係合部51dを設ける構成を例示した。ガイド50eとガイド係合部51dの凹凸を逆にしても良い。カム係合部51eとジョー係合部4bの凹凸を例示したものから逆に代えても良い。
【0085】
受けカム51を前方へ付勢する付勢部材としてコイルばね52を例示した。これに代えて例えば円筒状のゴム部材等であっても良い。コイルばね52を回転ギヤ50の円筒壁50bの内周側に設ける構成を例示した。これに代えてコイルばね52を回転ギヤ50の円筒壁50bの外周側に設けても良い。
【符号の説明】
【0086】
1…管拡径工具
2…キャップ、2a…ジョー支持溝、2b…雌ねじ
3…楔、3a…後端
4…ジョー、4a…リング収容溝、4b…ジョー係合部(凹部)、4c…リング
4d…凸部
5…グリップ
6…スイッチレバー、6a…スイッチ本体
7…膨出部、7a…バッテリ取付部
8…バッテリ
9…コントローラ
10…工具本体
11…本体ハウジング
12…前側機構ハウジング、12a…雄ねじ、12b…第1内周面(軸受)
12c…第2内周面、12d…径方向延出面、12e…フランジ
13…第1中央機構ハウジング、13a…内周面、13b…下方延出部、13c…凹部
13d…透孔、13e…シャフト支持部、13f…ボス部
14…第2中央機構ハウジング、14a…内周面、14b…下方延出部、14c…凹部
14d…透孔、14e…ガイドシャフト支持部、14f…ばね受け部
14g…シャフト支持部、14h…ボス部
15…後側機構ハウジング、15a…前面、15b…ボス部
16…ボルト
17…外装ケース
20…電動モータ、20a…モータ軸、20b…固定子、20c…回転子
20d…回転数検知センサ、20e,20f…軸受
21…ファン
22…遊星減速機構
23…ギヤ軸、23a…駆動側ギヤ、23b,23c…軸受
24…アイドルギヤ、24a…軸部材、24b…ラジアル軸受
25…送りねじ機構(ボールねじ機構)
26…雌ねじ部材、26a…従動側ギヤ、26b…雌ねじ、26c,26d…軸受
26e…スラスト軸受
27…ねじ軸、27a…雄ねじ、27b…ボール
28…ねじ軸ガイド、28a…ローラシャフト、28b…ローラ、28c…レール
28d…磁石
29…ねじ軸位置センサ、29a…後端位置センサ、29b…前端位置センサ
30…ジョー回転機構
31…シャフト
32…前シャフト、32a…雌ねじ、32b…二面幅部
33…後シャフト、33a…雄ねじ、33b…ボール溝、33c…二面幅部
34…プッシュプレート、34a…透孔
35…ボールリテーナ、35a…スリーブ装着部、35b…ボール保持孔
35c…シャフト挿通孔、35d…側方延出部、35e…透孔
36…スリーブ
37…ナット
38…ボール
39…圧縮ばね
41…ガイドシャフト
42…ワンウェイクラッチ
43…駆動側ギヤ
50…回転ギヤ、50a…従動側ギヤ、50b…円筒壁、50c…挿通孔
50d…ばね受け部(ストッパ)、50e…ガイド
51…受けカム、51a…円筒部、51b…挿通孔、51c…第2ばね受け部
51d…ガイド係合部、51e…カム係合部、51f…前面
52…コイルばね(付勢部材)
J…モータ軸線
K…ねじ軸軸線
R1…第1回転
R2…第2回転
S…隙間
D1…前後長さ
D2…移動距離
P1…前方位置
P2…退避位置