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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082743
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】培土用撥水防止剤および培土
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/14 20060101AFI20240613BHJP
   A01G 24/30 20180101ALI20240613BHJP
【FI】
C09K17/14 H
A01G24/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196805
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000114318
【氏名又は名称】ミヨシ油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 文香
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翔
【テーマコード(参考)】
2B022
4H026
【Fターム(参考)】
2B022BA21
4H026AA07
4H026AA11
4H026AB03
4H026AB04
(57)【要約】
【課題】撥水防止性能を付与しつつも、極めて生育障害が生じにくい培土用撥水防止剤および培土を提供する。
【解決手段】本発明の培土用撥水防止剤は、エチレンオキシドの平均付加モル数が10以上であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩を含有することを特徴としている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンオキシドの平均付加モル数が10以上であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩を含有する培土用撥水防止剤。
【請求項2】
エチレンオキシドの平均付加モル数が10以上であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩および培土構成素材を含有する培土。
【請求項3】
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩の含有量が、培土構成素材100質量部に対して0.001~20質量部である、請求項2に記載の培土。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培土用撥水防止剤および培土に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜、果樹、花卉等の播種・育苗時に用いられる培土は、農業従事者の負担を軽減するために軽量化が進んでいる。培土を軽量化するには培土中の水分を下げることや軽い有機質土壌改良材を配合することで対応している。また、培土保管中のカビ発生防止、寒冷地での冬季凍結防止等の理由からも培土中の水分を下げる対応がされている。
【0003】
しかし、これらの対応策をとることで培土は撥水を示しやすくなり、それによって植物に水が行き渡らず、生育に悪影響を及ぼす。そこで、培土の撥水を防止するために培土に界面活性剤を混合する等の対策がとられている。しかし、界面活性剤の種類によって撥水防止性能には優れるが、その一方で植物への生育障害が生じやすくなり、撥水防止性能と生育障害とのバランスをとるのは難しいという問題があった。
【0004】
これらの問題を解決するために、以下のような技術が提案されている。
特許文献1~4では、界面活性剤として非イオン性界面活性剤を使用しているが、非イオン性界面活性剤は通常、植物への生育障害が生じる懸念がある。特許文献1ではアニオン性界面活性剤としてジアルキルスルホコハク酸塩の使用も提案しているが、ジアルキルスルホコハク酸塩も植物への生育障害が生じる懸念が大きい。
【0005】
特許文献5、6は、長鎖アルコールなどの化合物およびこれに界面活性剤、キレート剤を組み合わせた組成物を提案しているが、用途が植物への活力付与であり、培土の撥水防止性能については検討が行われていなかった。
【0006】
本出願人は、硫酸エステル塩型またはリン酸エステル塩型のアニオン性界面活性剤を使用した組成物が、上記したような従来技術に比べると植物の生育障害の抑制に効果があることを提案した(特許文献7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11-256160号公報
【特許文献2】特開2005-52012号公報
【特許文献3】特開2005-52013号公報
【特許文献4】特開2008-92955号公報
【特許文献5】特開2000-198703号公報
【特許文献6】特開2007-195546号公報
【特許文献7】特開2020-162599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、硫酸エステル塩型のアニオン性界面活性剤はリン酸エステル塩型のアニオン性界面活性剤と比較すると植物への生育障害が生じやすい。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩のアルコールのエチレンオキシド付加モル数についての検討は十分に行っていない。近年、撥水防止と生育障害の抑制には更なる性能向上の要求もあり、そのような背景において更なる技術改良が望まれていた。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、撥水防止性能を付与しつつも、極めて生育障害が生じにくい培土用撥水防止剤および培土を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明者は鋭意検討を行った結果、リン酸エステル塩型のアニオン性界面活性剤において、エチレンオキシドの平均付加モル数を従来の検討よりも高めると、撥水防止と生育障害の抑制について、いずれも顕著に性能が向上する新たな知見を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明の培土用撥水防止剤は、エチレンオキシドの平均付加モル数が10以上であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩を含有することを特徴としている。
本発明の培土は、エチレンオキシドの平均付加モル数が10以上であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩および培土構成素材を含有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の培土用撥水防止剤は、撥水を示す培土に対して撥水防止性能を付与しつつ、植物への生育障害を極めて抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態について具体的に説明する。
(培土用撥水防止剤)
本発明の培土用撥水防止剤は、エチレンオキシドの平均付加モル数が10以上であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩を含有する。
【0014】
本発明におけるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩のアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、飽和でも不飽和でもよい。
アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、例えば、炭素数10~22であり、好ましくは炭素数12~18である。
撥水防止性能がより向上し、また生育障害を抑制する観点では、炭素数は14以上が好ましく、16以上がより好ましく、18以上がさらに好ましい。また、アルキル基は不飽和であることが好ましい。
エチレンオキシドの平均付加モル数は10以上であり、例えば、10~60モルである。撥水防止性能がより向上する観点から、15以上が好ましく、20以上がより好ましく、25以上がさらに好ましい。
【0015】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンデシルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンミリスチルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンエイコシルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルリン酸エステル塩等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、本発明の効果を発揮させる観点から、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル塩等が好ましい。
【0016】
本発明のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩を構成する塩としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属塩、アミン塩またはアンモニウム塩等が挙げられる。アルカリ金属塩としては、特に限定されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。アミン塩としては、特に限定されないが、例えば、アミン化合物由来の塩等が挙げられる。
本発明の効果、特に生育障害がより生じにくく、その中でも培土を製造後、長期にわたりその効果を発揮する観点では、カリウム塩が好ましい。
【0017】
本発明を限定的に解釈するものではないが、本発明の効果については次の知見も考慮し得る。植物は根から水や養分を吸収しているが、水の吸収は浸透圧による拡散によって行われる一方で、養分は水に溶けてイオン態となったものがイオンチャネルやイオントランスポーターを介して細胞内に取り込まれ、根細胞から取り込まれたイオン態養分は根の道管に入り、水と一緒に地上部へ移動し、茎や葉に供給される。この養分吸収のメカニズムと同様に、培土に混合された界面活性剤が植物体内へ吸収されると考えられる。植物の3大栄養素として、窒素・リン酸・カリウムが挙げられ、これらは植物の生育中に肥料として施肥されることが多々ある。中でもリン酸は遺伝子や情報伝達のもととなるDNA・RNA(核酸)やリン脂質が主体である細胞膜の構成成分であり、光合成や窒素同化作用にも関わる重要な成分である。界面活性剤により植物に直接引き起こされる作用として(1)植物毒性(光合成や細胞分裂への影響)、(2)微細構造変化、(3)クチクラ膜の透過性などが示唆されている。本発明の培土用撥水防止剤の必須成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩は、他の種類の界面活性剤と比較して生育障害が生じにくいが、これは植物の生命活動に重要な役割を果たすリン酸が含まれていることによると考えられる。また、本発明の培土用撥水防止剤の必須成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩は、エチレンオキシド付加モル数が増えるにしたがって植物への生育障害が生じにくい傾向が見られているが、これは細胞壁を貫通して細胞膜同士をつなぐ原形質連絡の通過限界が分子量800程度であるといわれており、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩のエチレンオキサイド付加モル数が増え、分子量が大きくなることで細胞膜を通過しにくくなり、植物への生育障害が抑制されることによると考えられる。
【0018】
本発明の培土用撥水防止剤は、その剤型は特に限定されず、溶液状、固体状、ゲル状等が挙げられる。その中でも、噴霧や浸漬等により培土構成素材へ均一に付着させることが容易であるという観点から、溶媒にポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩を溶解または分散した溶液状であることが好ましい。
【0019】
溶媒としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩を溶解または分散できるものであれば特に限定されず、水、有機溶媒、およびこれらの混合物等が挙げられる。これらの中でも、水が好ましい。
【0020】
溶液とした場合におけるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩の濃度は、粘度、土壌への浸透性の点から観点から1~99質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましく、15~30質量%がさらに好ましい。
【0021】
本発明の培土用撥水防止剤には、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記以外の他の成分を原料として添加することができる。このような他の成分としては、特に限定されないが、例えば、アルコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩以外のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、塩類、消泡剤、増粘剤、減粘剤、殺菌剤、溶剤、香料、着色料、pH調整剤、栄養源やミネラル等の肥料分等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、炭素数1~8の1価アルコール、炭素数1~8の2価アルコール、炭素数1~8の3価アルコール、および炭素数2~8のアルコキシアルコールが挙げられ、炭素数1~8の1価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノール、ペンタノール、2-メチル-2-ブタノール、ヘキサノール、メチルペンタノール、ジメチルブタノール、2-エチルブタノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール等が挙げられる。
【0023】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩以外のアニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、スルホン酸塩型のアニオン性界面活性剤、硫酸エステル塩型のアニオン性界面活性剤、カルボン酸塩型のアニオン性界面活性剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
スルホン酸塩型のアニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、スルホコハク酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホ脂肪酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩等が挙げられる。
硫酸エステル塩型のアニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。
カルボン酸塩型のアニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸塩(N-アシル-L-グルタミン酸塩、N-アシル-L-アルギニンエチル-DL-ピロリドンカルボン酸塩等)、アルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩等が挙げられる。
【0025】
カチオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、N,N-ジアルキロイルオキシエチル-N-メチル,N-ヒドロキシエチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ステアリルジメチルベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0026】
非イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ヒマシ油脂肪酸エステル、硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセライド、ポリエチレングリコール脂肪酸モノエタノールアミド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラノリンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ラウリン酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油ピログルタミン酸脂肪酸ジエステル、ピログルタミン酸脂肪酸グリセリル、ポリオキシエチレングリセリルピログルタミン酸脂肪酸ジエステル、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。
【0027】
両性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、レシチン、水添レシチン、アルキルオキシヒドロキシプロピルアルギニン塩酸塩、ラウリルヒドロキシスルタイン、ラウリミノジプロピオン酸、ウンデシルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ラウリルアミノジフ酢酸ナトリウム、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N-[3-アルキルオキシ-2-ヒドロキシプロピル]-L-アルギニン塩酸塩、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルアミノジプロピオン酸ナトリウム、ジヒドロキシアルキルメチルグリシン、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム等が挙げられる。
【0028】
本発明の培土用撥水防止剤は、そのpHは特に限定されないが、生育障害がより生じにくい観点から、5~10が好ましく、6~8がより好ましい。
【0029】
(培土)
本発明の培土は、エチレンオキシドの平均付加モル数が10以上であるポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル塩および培土構成素材を含む。
【0030】
本発明の培土は、エチレンオキシドの平均付加モル数が10以上であるポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル塩の作用により、培土構成素材に撥水防止性能を付与しつつも、培土で生育させる植物の生育障害を極めて抑制することができる。
【0031】
本発明の培土におけるエチレンオキシドの平均付加モル数が10以上であるポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル塩は、上記したポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル塩と同様である。
【0032】
本発明の培土において、エチレンオキシドの平均付加モル数が10以上であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩の含有量は、培土成分100質量部に対して0.001~20質量部が好ましい。撥水性能がより向上する観点から、培土構成素材100質量部に対して、0.01質量部以上がより好ましい。また生育障害が生じにくい点と定植性の点から、培土構成素材100質量部に対して、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましい。
なお、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩の含有量は有効分換算である。
【0033】
本発明の培土における培土構成素材としては、特に限定されないが、通常農業用や園芸用の培土として用いられるものが挙げられ、例えば、植物性有機物質、多孔性構造の無機物質、非多孔性構造の無機物質、肥料、土等が挙げられる。これらの培土構成素材は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
植物性有機物質としては、例えば、ピートモス、ヤシガラ、モミガラ、オガクズ、竹粉、バガス、泥炭、草炭等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
多孔性構造の無機物質としては、例えば、バーミキュライト、アタパルジャイト、ケイソウ土、セピオライト、ゼオライト、パーライト等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
非多孔性構造の無機物質としては、例えば、珪砂、海砂、アルミナサンド、タルク、ベントナイト、炭酸カルシウム等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
肥料としては、例えば、窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料、水酸化カルシウム等のカルシウム化合物、水酸化マグネシウム等のマグネシウム化合物、酸化亜鉛等の亜鉛化合物等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
土としては、例えば、黒ボク土、赤玉土、鹿沼土、日向土、田土、黒土、まさ土、ケト土、山土、山砂、川砂、火山灰土、ボラ土、赤土等の天然土壌が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
これらの培土構成素材の中でも、本発明の効果が顕著に発揮される観点から、植物性有機物質であるピートモス、ヤシガラ、モミガラ、オガクズ等が含まれていることが好ましく、特に繊維状物質であるピートモス、ヤシガラが好ましい。培土構成素材におけるこれらのような植物性有機物質の含有量は、10体積%以上が好ましく、20~80体積%がより好ましい。
【0040】
本発明の培土中の水分量は、例えば、60質量%以下、50質量%以下、あるいは40質量%以下である。
【0041】
本発明の培土は、その用途は特に限定されないが、育苗用途として好適に使用できる。
育苗前の培土は、典型的には流動が容易な粒状の状態である。培土は、袋詰めされた粒状の状態で流通可能であるので、取り扱いが容易であり、様々な形状、セル数の育苗用容器に充填可能である。このため、農業従事者がすでに保有している育苗用容器を使用することが可能であり、農産物生産の低コスト化が可能である。
【0042】
本発明の培土を用いて植物を育苗する際には、例えば、播種機を用いて市販のセルトレイに培土を充填し展圧した後、風乾により固結させ、野菜等の植物の種子を1セルに対して1粒ずつ播種機を用いて播種し、培土で覆土した後、潅水を行う等通常の作業を行い発芽させ育苗をすることができる。また、培土に、あらかじめ野菜等の植物の種子を混合したものを、市販のセルトレイに播種機を用いて充填し、展圧した後、風乾により固結させて、潅水を行う等通常の作業を行い発芽させ育苗をすることもできる。また、種子以外にも挿し木して発根させ育苗をすることもできる。本発明の培土を用いて植物を育苗した後、移植機を用いてセル苗やポット苗等を分離し、根鉢を地床に移植する。
【0043】
本発明の培土は、野菜用、水稲用等の農業用や、園芸用に用いることができる。本発明の培土による育苗の対象となる植物の種類は特に限定されず、野菜、果実、花卉、樹木、果樹等に用いることができる。具体的には、例えば、葉菜類であるチンゲンサイ、コマツナ、レタス、ハーブ等、果実を収穫対象とする果菜であるトマト、ナス、ピーマン、メロン、スイカ、イチゴ等の栽培に好適に用いることができる。
【0044】
エチレンオキシドの平均付加モル数が10以上であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩と培土構成素材を混合させる方法としては、培土構成素材中に均一に分散させるために、通常用いられる方法を適宜に採用することができる。例えば、本発明の培土用撥水防止剤が室温で液状である場合には原液のまま、室温で固体またはペースト状である場合には加温溶融し液状として使用することができ、あるいは水が配合された本発明の培土用撥水防止剤を、水溶液として使用することができる。これらの形態の本発明の培土用撥水防止剤を培土構成素材にスプレー等で噴霧後混合し、あるいは培土構成素材を本発明の培土用撥水防止剤に浸漬するなどして、培土構成素材に本発明の培土用撥水防止剤を付着させることができる。
【0045】
本発明の培土は、育苗対象の植物種等に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内においてその他の成分を添加してもよい。その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、農業用薬剤等が挙げられる。農業用薬剤としては、例えば、除草剤、動物忌避剤、成長調整剤、土壌改良剤、有用微生物、有用菌、透水剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【実施例0046】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)培土用撥水防止剤の製造
表1に記載した各実施例および比較例に示す配合に従い、界面活性剤等の成分を室温で撹拌混合して培土用撥水防止剤を製造した。
【0047】
(2)培土の製造
培土構成素材(ピートモス:50%、バーミキュライト:40%、珪砂:10%)を使用し、この培土構成素材100質量部に対して、上記培土用撥水防止剤を表1に示す付着量となるように混合して培土を得た。付着量は、培土用撥水防止剤の有効分換算(質量部)を示す。
【0048】
(3)評価
上記において製造した各実施例および比較例の培土について以下の評価を行った。
<撥水防止性能>
[透水スピード]
農水省規格セルトレイ(30角、128穴)に播種機を用いて一定量の培土を充填し、展圧した後、一定量を灌水した。該水が培土中へ浸水するまで(水浮きがない状態)の時間(秒)を計測し、透水スピードを評価した。
計測は、灌水していない培土と、灌水50回目の培土について行った。なお、50回目とは、1日1回一定量を灌水して50日目の計測結果である。
培土は、製造直後と製造120日後のものを用いた。製造120日後の培土は、製造後、ポリ袋に培土を充填、密閉し、30℃で保管したものである。
【0049】
[透水性]
農水省規格セルトレイ(30角、128穴)に播種機を用いて一定量の培土を充填し、展圧した後、一定量を灌水した。灌水1分後、スパチュラで培土を掘り起し、全体に対する透水性について、以下の基準で観察評価した。
◎:90%以上
〇:60%以上90%未満
△:40%以上60%未満
×:40%未満
評価は、灌水していない培土と、灌水50回目の培土について行った。なお、50回目とは、1日1回一定量を灌水して50日目の評価結果である。
培土は、製造直後と製造120日後のものを用いた。製造120日後の培土は、製造後、ポリ袋に培土を充填、密閉し、30℃で保管したものである。
【0050】
<生育性>
[発芽率]
農水省規格セルトレイ(30角、128穴)に播種機を用いて一定量の培土を充填し、展圧した後、コマツナまたはレタスの種子を1セルにつき1粒ずつ再度播種機を用いて播種し、一定量の培土で覆土し、一定量を灌水して播種作業を完了した。播種後、1日1回一定量を灌水して育苗し、播種後7日後の発芽率を以下の基準で観察評価した。培土は、製造直後と製造120日後のものを用いた。製造120日後の培土は、製造後、ポリ袋に培土を充填、密閉し、30℃で保管したものである。
◎:95%以上
〇:90%以上95%未満
△:85%以上90%未満
×:85%未満
【0051】
[発根状況]
さらに、発芽後の生育状態を確認するため、コマツナの発根状況について、播種後30日の時点で苗を引き抜き、根についた土を水洗いし、発根状況を以下の基準で観察評価した。培土は、製造直後と製造120日後のものを用いた。製造120日後の培土は、製造後、ポリ袋に培土を充填、密閉し、30℃で保管したものである。
◎:良
〇:やや良
△:やや不良
×:不良
【0052】
[地上重]
また、コマツナの地上重について、播種後30日の時点で苗を全て引き抜き根に付いた土を水洗いし、地上部と根部を切り分けた後、試料の地上部と根とを別々に70℃で3日間乾燥させ、地上部の重量を測定した。コマツナ20本の平均を求め、さらに、撥水防止剤未添加(ブランク)の値を100%とした相対値を算出し、以下の基準で評価した。培土は、製造直後と製造120日後のものを用いた。製造120日後の培土は、製造後、ポリ袋に培土を充填、密閉し、30℃で保管したものである。
◎:95%以上
〇:90%以上95%未満
△:85%以上90%未満
×:85%未満
【0053】
上記評価の結果を表1に示す。
【0054】
【表1】