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特開2024-82744噴霧用土壌透水剤およびそれを用いた土壌の透水性向上方法
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  • 特開-噴霧用土壌透水剤およびそれを用いた土壌の透水性向上方法 図1
  • 特開-噴霧用土壌透水剤およびそれを用いた土壌の透水性向上方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082744
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】噴霧用土壌透水剤およびそれを用いた土壌の透水性向上方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/14 20060101AFI20240613BHJP
   C09K 17/18 20060101ALI20240613BHJP
   A01G 24/30 20180101ALI20240613BHJP
【FI】
C09K17/14 H
C09K17/18 H
A01G24/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196806
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000114318
【氏名又は名称】ミヨシ油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 文香
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翔
【テーマコード(参考)】
2B022
4H026
【Fターム(参考)】
2B022BA21
4H026AA07
4H026AA09
4H026AB01
4H026AB04
(57)【要約】
【課題】噴霧により土壌の透水性改善効果を付与しつつも、噴霧時に葉に触れた際に葉が枯れる生育障害を抑制できる噴霧用土壌透水剤およびそれを用いた土壌の透水性向上方法を提供する。
【解決手段】本発明の噴霧用土壌透水剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩を含有する、噴霧用土壌透水剤。
【請求項2】
請求項1に記載の噴霧用土壌透水剤を土壌に噴霧する、土壌の透水性向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧用土壌透水剤およびそれを用いた土壌の透水性向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌は潅水ムラや土壌の固結、土壌の撥水性等によって透水性が低下する。土壌の透水性低下を引き起こすこれらの原因の中で最も多いものは土壌の撥水性である。一旦土壌の含水率が低下し、撥水性を示すようになると、潅水しても水が浸透しにくくなり、植物の生育に悪影響を及ぼす。
【0003】
土壌の撥水を防止するためには、土壌の含水率を低下させないことや土壌の濡れ性を改善することが重要であると考えられ、潅水管理の徹底、透水剤や保水剤を添加する対策がとられている。
【0004】
しかしながら、潅水管理の徹底には多大な労力が必要であり、また、従来の透水剤や保水剤には十分な効果が得られない場合や、植物への生育障害、具体的には噴霧して添加したときに葉に触れると葉が枯れる現象を引き起こす場合がある。
【0005】
従来、透水剤や保水剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤や水溶性高分子が用いられており、透水性の改善効果は得られるが、植物の生育障害として葉に触れた際に葉が枯れやすいという問題点があった。また、近年、地球温暖化の影響で気温が上昇傾向にあり、それによって土壌の含水率が低下し、土壌が撥水性を示しやすくなっている。その結果、植物の生育不良や品質低下が問題となっており、その改善が求められている。そこで、撥水性を示す土壌に透水剤などを噴霧することで土壌の透水性を改善する方法などが実施されている。
【0006】
土壌の透水性や撥水防止の改良などを図る技術としては、界面活性剤などを添加することが提案されている。
特許文献1~7は、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を使用しているが、噴霧した場合、植物への生育障害として葉に触れた際に葉が枯れる懸念が大きく、用途もゴルフ場の芝生面に発生するドライスポットに対してのものや培土に混合するものといった限定的な用途でしか検討されていなかった。特許文献8~10は、主基剤として長鎖アルコールなどの化合物を用いているが、添加目的が果菜類の増収栽培や、植物への活力付与であり、撥水防止については検討されていなかった。
特許文献11は、保水性と排水性を目的として界面活性剤を含有する人工培養土を提案し、界面活性剤として陰イオン界面活性剤も例示しているが、対象培土の組成が限定された場合しか検討されておらず、効果が十分ではなかった。特許文献12は、用途は透水性の低下した土壌に対しての透水性付与であるが、陰イオン界面活性剤としてオレフィンスルホン酸塩と共に非イオン界面活性剤を併用しているため、生育する植物の葉に触れた際に葉が枯れる生育障害の懸念があった。
【0007】
本出願人は、撥水防止性能を付与する培養土処理用組成物として、硫酸エステル塩型またはリン酸エステル塩型のアニオン性界面活性剤を使用した組成物を提案した(特許文献13)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10-60437号公報
【特許文献2】特開2002-20749号公報
【特許文献3】特開2005-52013号公報
【特許文献4】特開2008-92955号公報
【特許文献5】国際公開第2012/063899号
【特許文献6】特開2015-74677号公報
【特許文献7】特開2020-196814号公報
【特許文献8】特開2006-51021号公報
【特許文献9】特開2000-198703号公報
【特許文献10】特開2007-195546号公報
【特許文献11】特開2005-52012号公報
【特許文献12】特開2022-97802号公報
【特許文献13】特開2020-162599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記アニオン性界面活性剤を培養土に予め混合して植物を育成し、その発芽率、発根状況、子葉の展開状況などから生育障害を評価しているが、噴霧をして葉に触れた際に葉が枯れる現象の生育障害については検証していない。
【0010】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、噴霧により土壌の透水性改善効果を付与しつつも、噴霧時に葉に触れた際に葉が枯れる生育障害を抑制できる噴霧用土壌透水剤およびそれを用いた土壌の透水性向上方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、噴霧用に適する土壌透水剤について本発明者は鋭意検討を行った結果、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩が、透水性改善効果を付与しつつも、噴霧時に葉に触れても葉が枯れることを顕著に抑制できるという新たな知見を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の噴霧用土壌透水剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩を含有することを特徴としている。
本発明の土壌の透水性向上方法は、前記噴霧用土壌透水剤を土壌に噴霧することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の噴霧用土壌透水剤およびそれを用いた土壌の透水性向上方法によれば、噴霧により土壌の透水性改善効果を付与しつつも、噴霧時に葉に触れた際に葉が枯れる生育障害を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例および比較例の葉面噴霧試験における評価基準の一例である、葉の様子を示す写真である。
図2】実施例8、比較例2、比較例3の葉面噴霧試験後の葉の様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(噴霧用土壌透水剤)
本発明の噴霧用土壌透水剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩を含有する。
【0015】
本発明におけるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩のアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、飽和でも不飽和でもよい。
アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、例えば、炭素数10~22であり、好ましくは炭素数12~18である。
透水性がより向上し、また噴霧時に触れたときに葉が枯れる生育障害を抑制する観点では、炭素数は14以上が好ましく、16以上がより好ましく、18以上がさらに好ましい。また、アルキル基は不飽和であることが好ましい。
エチレンオキシドの平均付加モル数は、特に限定されないが、例えば、1~70モルである。その下限値については、透水性がより向上する観点では、エチレンオキシドの平均付加モル数は、より多いほど好ましい。また噴霧時に触れたときに葉が枯れる生育障害を抑制する観点では、エチレンオキシドの平均付加モル数は、4以上が好ましく、6以上がより好ましく、8以上がさらに好ましい。これらを合わせて考慮すると、10以上が特に好ましい。上限値は、ハンドリング性の観点では、60モル以下が好ましい。
【0016】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンデシルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンミリスチルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンエイコシルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルリン酸エステル塩等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、本発明の効果を発揮させる観点から、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル塩等が好ましい。
【0017】
本発明のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩を構成する塩としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属塩、アミン塩またはアンモニウム塩等が挙げられる。アルカリ金属塩としては、特に限定されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。アミン塩としては、特に限定されないが、例えば、アミン化合物由来の塩等が挙げられる。
本発明の効果、特に噴霧時に触れたときに葉が枯れる生育障害が生じにくいという観点から、カリウム塩が好ましい。
【0018】
本発明を限定的に解釈するものではないが、本発明の効果については次の知見も考慮し得る。葉面にはエピクラワックス、クチクラ層及びクチン層の3層から構成されるクチクラ膜が存在し、このクチクラ膜はペクチン層およびセルロース細胞壁を経て表皮細胞の細胞膜に結合している。クチクラ膜の主な役割として、植物内部の水分損失の防御、物理的な損傷や微生物、害虫からの植物内部の保護、内部組織への紫外線透過量の減少などが挙げられる。葉に界面活性剤が付着すると、その濃度によっては、葉面のクチクラ膜が溶解し、前記したクチクラ膜の役割が果たされなくなり、葉の変色や萎れなどの生育障害が生じると考えられる。また、界面活性剤の作用部位として(1)クチクラ膜の表面、(2)クチクラ層、(3)クチクラ膜直下の表皮細胞壁、(4)内部組織の細胞膜の4段階が挙げられている。細胞膜は親水基と疎水基をもつ極性物質でできており、このような特徴を持った脂質分子が親水基を外側に、疎水基を内側にして多数並び、脂質二重膜と呼ばれる構造が基本となっている。この細胞膜はリン脂質が主体であり、リン脂質はグリセリンなどを中心骨格として脂肪酸とリン酸が結合し、さらにリン酸にアルコールがエステル結合した構造をもつ。本発明の噴霧用土壌透水剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩)は、他の種類の界面活性剤と比較して、葉に付着した際に、極めて生育障害が生じにくいが、これは葉面に付着した後、内部組織の細胞膜にまで作用しても、その細胞膜を構成するリン脂質に類似した構造を有しているからではないかと考えられる。また、本発明の噴霧用土壌透水剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩)はエチレンオキサイド付加モル数が増えるにしたがって植物への生育障害が生じにくい傾向が見られているが、これは細胞壁を貫通して細胞膜同士をつなぐ原形質連絡の通過限界が分子量800程度であるといわれており、本発明の噴霧用土壌透水剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩)のエチレンオキサイド付加モル数が増え、分子量が大きくなることで細胞膜を通過しにくくなり、植物への生育障害が抑制されると考えられる。
【0019】
本発明の噴霧用土壌透水剤は、その剤型は特に限定されず、溶液状、固体状、ゲル状等が挙げられる。その中でも、噴霧が容易であるという観点から、溶媒にポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩を溶解または分散した溶液状であることが好ましい。
【0020】
溶媒としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩を溶解または分散できるものであれば特に限定されず、水、有機溶媒、およびこれらの混合物等が挙げられる。これらの中でも、水が好ましい。
【0021】
溶液とした場合におけるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩の濃度は、粘度、土壌への浸透性の点から1~99質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましく、15~30質量%がさらに好ましい。
【0022】
本発明の噴霧用土壌透水剤には、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記以外の他の成分を原料として添加することができる。このような他の成分としては、特に限定されないが、例えば、アルコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩以外のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、塩類、消泡剤、増粘剤、減粘剤、殺菌剤、溶剤、香料、着色料、pH調整剤、栄養源やミネラル等の肥料分等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、炭素数1~8の1価アルコール、炭素数1~8の2価アルコール、炭素数1~8の3価アルコール、および炭素数2~8のアルコキシアルコールが挙げられ、炭素数1~8の1価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノール、ペンタノール、2-メチル-2-ブタノール、ヘキサノール、メチルペンタノール、ジメチルブタノール、2-エチルブタノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール等が挙げられる。
【0024】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩以外のアニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、スルホン酸塩型のアニオン性界面活性剤、硫酸エステル塩型のアニオン性界面活性剤、カルボン酸塩型のアニオン性界面活性剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
スルホン酸塩型のアニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、スルホコハク酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホ脂肪酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩等が挙げられる。
硫酸エステル塩型のアニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。
カルボン酸塩型のアニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸塩(N-アシル-L-グルタミン酸塩、N-アシル-L-アルギニンエチル-DL-ピロリドンカルボン酸塩等)、アルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩等が挙げられる。
【0026】
カチオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、N,N-ジアルキロイルオキシエチル-N-メチル,N-ヒドロキシエチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ステアリルジメチルベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0027】
非イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ヒマシ油脂肪酸エステル、硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセライド、ポリエチレングリコール脂肪酸モノエタノールアミド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラノリンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ラウリン酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油ピログルタミン酸脂肪酸ジエステル、ピログルタミン酸脂肪酸グリセリル、ポリオキシエチレングリセリルピログルタミン酸脂肪酸ジエステル、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。
【0028】
両性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、レシチン、水添レシチン、アルキルオキシヒドロキシプロピルアルギニン塩酸塩、ラウリルヒドロキシスルタイン、ラウリミノジプロピオン酸、ウンデシルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ラウリルアミノジフ酢酸ナトリウム、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N-[3-アルキルオキシ-2-ヒドロキシプロピル]-L-アルギニン塩酸塩、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルアミノジプロピオン酸ナトリウム、ジヒドロキシアルキルメチルグリシン、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム等が挙げられる。
【0029】
本発明の噴霧用土壌透水剤は、植物が生育している土壌に噴霧しても、植物が生育していない土壌に噴霧してもよい。
【0030】
土壌としては、植物を生育させるための土壌であれば、特に限定されないが、例えば、野菜や果樹等の畑、ゴルフ場のグリーン、フェアーウェイ、ラフ等、公園等の芝生、育苗培土、鉢土等の透水性が低下した土壌等が挙げられる。
【0031】
本発明の噴霧用土壌透水剤を噴霧する手段も特に限定されず、細かい粒子にして土壌に散布することができる。例えば、土壌透水剤が溶液状などであれば、容器に収容した土壌透水剤をスプレー、霧吹きなどのような手段で噴霧する方法が挙げられる。
【0032】
(土壌の透水性向上方法)
本発明は、以上に説明した本発明の噴霧用土壌透水剤を土壌に噴霧する、土壌の透水性向上方法である。
噴霧用土壌透水剤の土壌への噴霧量は、特に限定されないが、本発明の噴霧用土壌透水剤を1~15質量%水溶液とし、この水溶液を土壌1m2あたり、0.5~5L噴霧するのが好ましい。
土壌は潅水ムラや土壌の固結、土壌の撥水性等によって透水性が低下し、特に一旦土壌の含水率が低下して撥水性を示すようになると、潅水しても水が浸透しにくくなり、植物の生育に悪影響を及ぼす。本発明の透水性向上方法によれば、上記のような噴霧量で土壌に噴霧すれば、簡便に土壌の含水率低下を抑制し、土壌の濡れ性を改善することができると共に、潅水管理の負担を軽減できる。また、噴霧して土壌に添加したときに生育する葉に触れても、葉が枯れる生育障害を抑制できる。
【実施例0033】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)噴霧用土壌透水剤の製造
溶媒として水を使用し、表1に示す界面活性剤を有効分1%溶液となるようにし、室温で撹拌混合して噴霧用土壌透水剤を製造した。
【0034】
(2)培土の製造
培土構成素材(ピートモス:50%、バーミキュライト:40%、珪砂:10%)を使用した。
【0035】
(3)評価
上記において製造した各実施例および比較例の噴霧用土壌透水剤および培土について以下の評価を行った。
<透水性>
[透水スピード]
農水省規格セルトレイ(30角、128穴)に播種機を用いて一定量の培土を充填し、展圧した後、表1に示す界面活性剤を一定量上面から灌水した。該水が培土中へ浸水するまで(水浮きがない状態)の時間(秒)を計測し、透水スピードを評価した。結果を表1に示す。
【0036】
[透水性]
農水省規格セルトレイ(30角、128穴)に播種機を用いて一定量の培土を充填し、展圧した後、表1に示す界面活性剤を一定量上面から灌水した。灌水1分後、スパチュラで培土を掘り起し、全体に対する透水性について、以下の評価基準で観察評価した。結果を表1に示す。
◎:90%以上
〇:60%以上90%未満
△:40%以上60%未満
×:40%未満
【0037】
<生育性>
[葉面噴霧試験]
セルトレイに充填した培土にコマツナの種子を1セルにつき1粒ずつ播種し、一定量の培土で覆土し、一定量を潅水して播種作業を完了した。播種後、1日1回一定量を潅水して育苗し、播種後20日の苗に噴霧用土壌透水剤を噴霧し、葉の様子について、図1および以下の評価基準で、観察評価した。結果を表1に示す。
◎:葉色に変化なし
〇:葉の一部が変色
△:葉が全体的に変色、葉の萎れ
×:葉の枯れ
【0038】
上記評価の結果を表1に示す。実施例8、比較例2、比較例3の葉面噴霧試験後の葉の様子を参考として図2に示した。
【0039】
【表1】
図1
図2